説明

ペプチド系化合物

本発明は、診断用造影剤又は治療薬として用いられる新規ペプチド系化合物であって、インテグリン受容体に結合するターゲティングベクターを含むペプチド系化合物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規ペプチド系化合物並びに治療効果のある処置及び画像診断法におけるそれらの使用に関する。さらに具体的には、本発明は、血管新生に関連する受容体、特にインテグリン受容体(例えばαvβ3インテグリン受容体など)に結合するターゲティングベクターとしての上記ペプチド系化合物の使用に関する。そこで、かかる造影剤は、例えば悪性疾患、心疾患、子宮内膜症、炎症関連疾患、関節リウマチ及びカポジ肉腫の診断に使用し得る。さらに、かかる薬剤は、これらの疾患の治療にも使用し得る。
【背景技術】
【0002】
新しい血管は脈管形成と血管新生という2つの異なる機序で形成される。血管新生は既存の血管からの枝分れによる新しい血管の形成である。このプロセスに対する主な刺激として、組織内の細胞への栄養及び酸素の不十分な供給(低酸素)がある。細胞は血管新生因子の分泌によって応答することがある。血管新生因子は多数存在するが、しばしば言及されるその一例は血管内皮増殖因子(VEGF)である。これらの因子は、基底膜のタンパク質を分解するタンパク分解酵素の分泌だけでなく、かかる潜在的に有害な酵素の作用を制限する阻害剤の分泌も惹起する。血管新生因子のもう一つの顕著な作用は内皮細胞を遊走させ分裂させることである。血管の反管腔側に連続層をなす基底膜に付着した内皮細胞は有糸分裂を起こさない。付着の喪失と血管新生因子受容体からのシグナルとの複合作用によって、内皮細胞の移動、増殖及び再配列が起こり、最終的には新血管周囲に基底膜が合成される。
【0003】
血管新生は創傷治癒及び炎症過程を始めとする組織の増殖及びリモデリングに重要である。腫瘍は、ミリメートル大に達すると、その増殖速度を保つため血管新生を惹起しなければならない。血管新生は内皮細胞とそれらの周囲の環境に特徴的な変化を伴う。これらの細胞の表面は遊走に備えてリモデリングされ、基底膜が分解されて、タンパク分解の誘発と制御に関与する各種タンパク質に加えて、隠れた構造が露出される。腫瘍の場合、形成される血管ネットワークは通常はまとまりがなく、鋭いねじれや動静脈シャントの形成を伴う。血管新生の阻害も抗腫瘍療法の有望な方策であると考えられる。
【0004】
血管新生に伴う形質転換も診断に極めて有望であり、明らかな例は悪性疾患であるが、この方策は、炎症及びアテローム性動脈硬化症を始めとする様々な炎症関連疾患にも極めて有望であり、初期アテローム性動脈硬化病変のマクロファージは血管新生因子の潜在的発生源である。これらの因子は心筋梗塞の血管再生にも関与しており、狭窄が短時間で解放された場合にみられる。
【0005】
新脈管形成又は血管新生、つまり新血管の発生又は増殖に関連した望ましくない病態を以下に示す。これに関しては国際公開第98/47541号も参照できる。
【0006】
血管新生に関連した疾患及び適応症は例えば様々な形態の癌及び転移、例えば乳癌、皮膚癌、直腸結腸癌、膵臓癌、前立腺癌、肺癌又は卵巣癌である。
【0007】
その他の疾患及び適応症は、炎症(例えば慢性)、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ及び歯肉炎である。
【0008】
血管新生に関連したさらに別の疾患及び適応症は、動静脈奇形、星細胞腫、絨毛癌、グリア芽細胞種、神経膠腫、血管腫(小児性、毛細血管性)、肝細胞腫、過形成性子宮内膜症、虚血性心筋症、子宮内膜症、カポジ肉腫、黄斑変性症、黒色腫、神経芽細胞腫、閉塞性末梢動脈疾患、骨関節炎、乾癬、網膜症(糖尿病性、増殖性)、強皮症、精上皮腫及び潰瘍性大腸炎である。
【0009】
血管新生には、内皮細胞及び周囲組織に特有の受容体が関与する。これらのマーカーとしては、VEGFのような増殖因子受容体及びインテグリンファミリーの受容体がある。免疫組織化学的研究によって、様々なインテグリン(最も重要なのはおそらくαクラス)が血管の頂端面で発現され[Conforti, G., et al.(1992) Blood 80: 37−446]、循環リガンドによるターゲティングに利用できる[Pasqualini, R., et al. (1997) Nature Biotechnology 15: 542−546]ことが示されている。α5β1も、フィブロネクチンマトリックスの構築を促進し、フィブロネクチンへの細胞付着を起こす重要なインテグリンである。α5β1は細胞遊走[Bauer, J.S.,(1992) J. Cell Biol. 116:477−487]並びに腫瘍の浸潤及び転移[Gehlsen, K.R.,(1988) J. Cell Biol.106:925−930]にも重要な役割を果たす。
【0010】
インテグリンαvβ3は血管新生との関連が知られている受容体の一つである。αvβ3インテグリン受容体/リガンド相互作用の拮抗剤がアポトーシスを惹起して血管増殖を阻害するので、血管新生プロセスの臨界期における刺激を受けた内皮細胞の生存はこの受容体に依存していると考えられている。
【0011】
インテグリンはヘテロ二量体分子であり、αサブユニットとβサブユニットは細胞膜脂質二重層を貫通している。αサブユニットはその細胞外鎖に4つのCa2+結合ドメインを有し、βサブユニットはシステインリッチな細胞外ドメインを多数有している。
【0012】
細胞接着に関与するリガンド(例えばフィブロネクチン)の多くはアルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)のトリペプチド配列を含んでいる。RGD配列は、この配列を提示するリガンドと細胞表面の受容体との間の一次認識部位として作用すると思われる。リガンドと受容体の二次的相互作用は上記相互作用の特異性を高めると一般に考えられている。こうした二次的相互作用は、リガンドと受容体のRGD配列に直接隣接した部分又はRGD配列から離れた部位で起こり得る。
【0013】
RGDペプチドはある範囲のインテグリン受容体に結合することが知られており、臨床に重要な用途をもつ数多くの細胞事象を調節できる可能性がある(Ruoslahti, J. Clin. Invest., 87:1−5(1991)。おそらく最も広く研究されたRGDペプチドとその模倣体の作用は抗血栓剤としての使用に関するものであり、これらは血小板インテグリンGpIIbIIIaをターゲットとする。
【0014】
αvβ3又はαvβ5拮抗剤の投与による組織内での血管新生の阻害は例えば国際公開第97/06791号及び同第95/25543号に記載されており、抗体又はRGD含有ペプチドが用いられている。欧州特許出願公開第578083号には、一群の単環式RGD含有ペプチドが記載されており、国際公開第90/14103号の特許請求の範囲には、RGD抗体が記載されている。Haubner et al., J. Nucl. Med. (1999);40:1061−1071には、腫瘍をターゲットとする新種の単環式RGD含有ペプチド系トレーサーが記載されている。ただし、全身オートラジオグラフィー画像法を用いた生体分布の研究では、125I標識ペプチドは血中クリアランスが非常に速く、肝胆道排泄経路が主であるので、高いバックグラウンドを生じる。
【0015】
複数の架橋を含む環状RGDペプチドも、国際公開第98/54347号及び同第95/14714号に記載されている。インビボバイオパニングで得られたペプチド(国際公開第97/10507号)が様々なターゲティング用途に使用されている。CDCRGDCFC(RGD−4C)配列が、細胞へのドキソルビシン(国際公開第98/10795号)、核酸及びアデノウイルス(国際公開第99/40214号、同第99/39734号、同第98/54347号、同第98/54346号、米国特許第5846782号参照)のような薬剤のターゲティングに使用されている。しかし、複数のシステイン残基を含むペプチドには、複数のジスルフィド異性体を生じかねないという短所がある。RGD−4Cのような4個のシステイン残基を有するペプチドは、3種類の異なるジスルフィド折り畳み構造を形成する可能性がある。RGDファルマコフォアは3つの異なる高次構造になるので、インテグリン受容体に対するこれらの異性体の親和性は種々異なる。
【0016】
RGD含有ペプチド系化合物のその他の例は、国際公開第01/77145号、同第02/26776号及び同第03/006491号にみられ、それらの開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。
【特許文献1】国際公開第98/47541号パンフレット
【特許文献2】国際公開第97/06791号パンフレット
【特許文献3】国際公開第95/25543号パンフレット
【特許文献4】欧州特許出願公開第578083号明細書
【特許文献5】国際公開第90/14103号パンフレット
【特許文献6】国際公開第98/54347号パンフレット
【特許文献7】国際公開第95/14714号パンフレット
【特許文献8】国際公開第97/10507号パンフレット
【特許文献9】国際公開第98/10795号パンフレット
【特許文献10】国際公開第99/40214号パンフレット
【特許文献11】国際公開第99/39734号パンフレット
【特許文献10】国際公開第98/54346号パンフレット
【特許文献11】米国特許第5846782号明細書
【特許文献12】国際公開第01/77145号パンフレット
【特許文献13】国際公開第02/26776号パンフレット
【特許文献14】国際公開第03/006491号パンフレット
【非特許文献1】Conforti, G., et al.(1992) Blood 80: 37−446
【非特許文献2】Pasqualini, R., et al. (1997) Nature Biotechnology 15: 542−546
【非特許文献3】Bauer, J.S.,(1992) J. Cell Biol. 116:477−487
【非特許文献4】Gehlsen, K.R.,(1988) J. Cell Biol.106:925−930
【非特許文献5】Ruoslahti, J. Clin. Invest., 87:1−5(1991)
【非特許文献6】Haubner et al., J. Nucl. Med. (1999);40:1061−1071
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
生体内での血管新生に関連するインテグリン受容体の効率的ターゲティング及びイメージングには、選択的で親和性が高く化学的に頑強で安定なRGD型ベクターが必要とされる。さらに、バックグラウンドの問題を軽減するための造影剤の設計に際しては、排泄経路が重要な要因である。これらの厳しい条件は、本明細書に記載した二環式構造によって満足される。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、血管新生に関連する疾患の治療及び画像診断に有用な新規ペプチド系化合物を提供する。血管新生に関連した疾患及び適応症は例えば様々な形態の癌及び転移、例えば乳癌、皮膚癌、直腸結腸癌、膵臓癌、前立腺癌、肺癌又は卵巣癌である。
【0019】
その他の疾患及び適応症は、炎症(例えば慢性)、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ及び歯肉炎である。
【0020】
血管新生に関連したさらに別の疾患及び適応症は、動静脈奇形、星細胞腫、絨毛癌、グリア芽細胞種、神経膠腫、血管腫(小児性、毛細血管性)、肝細胞腫、過形成性子宮内膜症、虚血性心筋症、子宮内膜症、カポジ肉腫、黄斑変性症、黒色腫、神経芽細胞腫、閉塞性末梢動脈疾患、骨関節炎、乾癬、網膜症(糖尿病性、増殖性)、強皮症、精上皮腫及び潰瘍性大腸炎である。
【0021】
さらに、本発明は、上述したような癌その他の血管新生が関与する疾患の診断に有用なペプチド系化合物であって、ターゲティング部分に造影性部分を組み込んでなるペプチド系化合物を提供する。造影性部分は、被検体に投与したときに被検体の少なくともペプチド系化合物が分布した部分の画像を、例えば放射線イメージング、SPECT、ポジトロン放出断層撮影(PET)、磁気共鳴断層撮影(MRI)、X線、光学イメージング(OI)、超音波(US)、電気インピーダンス又は磁気的画像モダリティで生成することができる造影性基であればよい。
【0022】
本発明はさらに、血管新生に関連した疾患の治療法及びイメージング法、かかる疾患に対する治療経過のモニタリング法も提供する。本発明はさらに、新規医薬組成物及び診断用造影剤の調製用前駆体を提供する。造影剤のキット、特に放射性造影剤の調製用キットも提供される。
【0023】
本発明のペプチド系化合物は、ペプチドベクターと任意要素たるリンカーWとZ又はZ部分のいずれかとを含み、以下の式(1)で表され、その薬学的に許容される塩も包含される。
【0024】
【化1】

式中、
Gはグリシンを表し、
Dはアスパラギン酸を表し、
は−(CH−又は(CH−C−を表し(式中、nは1〜10の正の整数である。)、
hは1又は2の正の整数であり、
は酸又はアミン基のような官能性側鎖を有するアミノ酸残基であり
及びXは一緒にジスルフィド結合を形成するアミノ酸残基を独立に表し、
はアルギニン、N−メチルアルギニン又はアルギニン模倣体を表し、
はチオール含有アミノ酸残基を表し、
は疎水性アミノ酸又はその誘導体であり、
はバイオモディファイヤー部分であるか、或いは存在せず、
又はZの少なくとも一方が存在していて抗悪性腫瘍薬又は造影性部分を表し、
はスペーサーであるか、或いは存在しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
一態様では、本発明は、特許請求の範囲に規定する式(I)の新規ペプチド系化合物を提供する。この化合物のペプチドベクターは、インテグリン受容体に対する親和性、例えばインテグリンαvβ3に対する親和性を有するターゲティング部分をなす。
【0026】
式(I)の化合物は2つの架橋を含んでいて、1つの架橋がジスルフィド結合を形成し、第二の架橋はチオエーテル(スルフィド)結合を含んでおり、これらの架橋によってペプチド部分は「交差」立体配置に折り畳まれる。
【0027】
そこで、本発明の化合物は1分子部分当たり最大1つのジスルフィド架橋を有する。本発明で規定する化合物は、生体内だけでなく、標識化(例えばテクネチウムでの標識化)の際に用いられる条件下で驚異的な安定性を有する。
【0028】
これらの新規化合物は、治療効果のある処置及びイメージング用に使用し得る。
【0029】
本発明の新規ペプチド系化合物は、次の式(1)で規定され、その薬学的に許容される塩も包含される。
【0030】
【化2】

式中、
Gはグリシンであり、
Dはアスパラギン酸であり、
は−(CH−又は(CH−C−(式中、nは1〜10の正の整数である。)であるが、好ましくはRは−(CH)であり、
hは1又は2の正の整数であり、
は酸又はアミン基のような官能性側鎖を有するアミノ酸残基、好ましくはアスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、ホモリシン、ジアミノプロピオン酸その他のジアミノアルキル酸であり、
及びXは一緒にジスルフィド結合を形成するアミノ酸残基を独立に表すが、該アミノ酸残基は好ましくは独立にシステイン残基又はホモシステイン残基であり、
はアルギニン、N−メチルアルギニン又はアルギニン模倣体、好ましくはアルギニンであり、
はチオール含有アミノ酸残基、好ましくはシステイン残基又はホモシステイン残基であり、
は疎水性アミノ酸又はその誘導体、好ましくはチロシン残基、フェニルアラニン残基、3−ヨード−チロシン残基又はナフチルアラニン残基、さらに好ましくはフェニルアラニン残基又は3−ヨード−チロシン残基であり、
は存在しないか、或いは均質バイオモディファイヤー部分、好ましくは単分散PEG構成単位を1〜10単位含むものであり、バイオモディファイヤーは薬剤の薬物動態及び血中クリアランス速度を変化させる機能を有する。また、Xは1〜10個のアミノ酸残基、好ましくはグリシン、リシン、アスパラギン酸又はセリンを表すものでもよい。本発明の好ましい実施形態では、Xは式(II)の単分散PEG様構造17−アミノ−5−オキソ−6−アザ−3,9,12,15−テトラオキサヘプタデカン酸の重合で得られるバイオモディファイヤー単位を表す。
【0031】
【化3】

式中、mは1〜10の整数であり、C末端単位はアミド又は酸部分である。
【0032】
バイオモディファイヤーXが化合物の薬物動態及び血中クリアランス速度を変化させることが判明した。バイオモディファイヤー基は化合物の組織(筋肉、肝臓など)への取り込みを低減し、バックグラウンド干渉が低減するので診断画像が向上する。バイオモディファイヤーの追加の利点として、分泌は主に腎臓を経る。
【0033】
は存在しないか、或いはスペーサー部分、好ましくはグルタル酸及び/又はコハク酸及び/又はポリエチレングリコール系単位及び/又は上記の式(II)の単位から誘導されるものである。
【0034】
その他の代表的なスペーサー(W)要素としては、構造多糖類、貯蔵多糖類、ポリアミノ酸及びそのメチルエステル及びエチルエステル、ポリペプチド、オリゴ糖及びオリゴヌクレオチドが挙げられ、酵素切断部位を含んでいても含んでいなくてもよい。
【0035】
スペーサー部分Wの役割は、ペプチド成分の活性部位から比較的嵩高い造影性部分を離隔することである。スペーサー部分Wは、ペプチドの活性部位から嵩高い抗悪性腫瘍薬を離隔するのにも応用できる。
【0036】
及びZの少なくとも一方が存在していて、抗悪性腫瘍薬又は造影性部分を表す。以下、Z及びZの少なくともいずれかをZで表す。
【0037】
診断、特にインビボ診断に有用な造影剤用には、Z部分は1以上の造影性部分を含む。造影性部分をW、X又はペプチドに直接結合させることができない場合、例えば、造影性部分が金属粒子又は金属イオン(以下、Mという)である場合には、ZはAMを含んでなる。ここで、AはW、X又はペプチドに結合し得る部分であるとともに、Mを保持する。保持とは、化学結合(例えば共有結合又はイオン結合)又は吸着その他の種類の会合など、A基とMとのあらゆる形態の結合を意味する。
【0038】
後述の式(III)及び式(VIII)のキレート剤も、特に好ましい。
【0039】
Mが金属である場合、Aはキレート剤を表し、金属は金属イオン、常磁性金属、金属放射性核種、重金属及び重金属酸化物を表す。Z及び/又はAMの性状は、診断に利用される画像モダリティに依存する。Z及び/又はAMはインビボ画像診断で直接又は間接的に検出できるものでなければならず、例えば、検出可能な放射線を(放射性崩壊、蛍光励起、スピン共鳴励起などによって)放出する成分もしくは放出を誘起する成分、局所的電磁場に影響を与える成分(例えば、常磁性、超常磁性、フェリ磁性もしくは強磁性種)、放射線エネルギーを吸収又は散乱する成分(例えば、発色団、粒子(気体又は液体含有ベシクルも包含する。)、重元素及びその化合物など)、並びに検出可能な物質を生成する成分(例えば、気体マイクロバブル発生剤)などである。
【0040】
インビボイメージングでの検出に適した広範な成分が、例えば国際公開第98/47541号から知られており、その開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。
【0041】
以下、造影性部分Z及びMについてさらに詳しく説明する。
【0042】
第一の実施形態では、式(I)の化合物のZは、放射線及びSPECT画像モダリティに有用な1以上の造影性部分Mを保持する部分Aを含む。好ましくは、Mはα線及びβ線をほとんど或いは全く放出しない半減期1時間以上のγ放射体である。好ましいM基は、放射性核種67Ga、111In、123I、125I、131I、81mKr、99Mo、99mTc、201Tl及び133Xeである。最も好ましいのは99mTcである。
【0043】
Mは、イメージング及び治療の両用途において、以下に挙げる同位体又は同位体対であってもよく、放射性標識法又はキレート剤を変更する必要はない:47Sc21141Ce58188Re75177Lu71199Au7947Sc211315367Cu291315312353188Re7599mTc439039873947Sc2144Sc21903912353146Sm62153Sm62、及び9039111In49
【0044】
Mが金属放射性核種を表す場合、Aは、Mとの安定キレートの形成に適したキレート剤を表す。かかるキレート剤は当技術分野で周知であり、かかるキレート剤の典型例は国際公開第01/77145号の表Iに記載されている。
【0045】
特に好ましいのは、次の式(III)のキレート剤である。
【0046】
【化4】

式中、R、R、R及びRは各々独立にH又はC1〜10アルキル、C3〜10アルキルアリール、C2〜10アルコキシアルキル、C1〜10ヒドロキシアルキル、C1〜10アルキルアミン、C1〜10フルオロアルキルであるか、或いは2以上のR基がそれらに結合した原子と共に炭素環、複素環、飽和又は不飽和環を形成するものである。
【0047】
さらに好ましいのは、R、R及びRが水素又はメチル基であり、Rがアルキルアミン基である式(III)のキレート剤であり、特に次の式(IV)の化合物である。
【0048】
【化5】

最も好ましくは、Aは式(IV)のキレートであり、造影性部分Mは99mTcである。
【0049】
他の好ましいキレート剤は次の式(V)のものである。
【0050】
【化6】

式中、Y〜Yは独立にH、アルキル、アリール又はその組合せであり、Y〜Y基は、該キレートを式(I)のペプチド系化合物のW又はXに結合させることができる1以上の官能基、例えば、好ましくはアルキルアミン、アルキルスルフィド、アルコキシアルキルカルボキシレート、アリールアミン、アリールスルフィド又はα−ハロアセチルを含む。
【0051】
123I、125I及び131Iのような非金属放射性核種は、当技術分野で周知の置換又は付加反応によって、W基(存在する場合)又はXに共有結合させることができる。
【0052】
第二の実施形態では、式(I)の化合物は、PET画像モダリティに有用な部分Zを含む。この場合、Zは陽電子放出性をもつ放射線放出体を表す。好ましいZ基は、放射性核種11C、18F、13N及び15Oである。18Fが特に好ましい。キレート剤Aでキレートした放射線放出性金属82Rb及び68Gaも好ましい。
【0053】
チオールカップリングの化学、18Fシントン及びチオールカップリング反応を用いて調製される標識ペプチドは、国際公開第03/080544号に記載されており、その開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。
【0054】
18Fのような非金属放射性核種は、当技術分野で周知の置換又は付加反応によって、W基(存在する場合)又はXに共有結合させることができ、例えば国際公開第03/080544号に記載されている(その開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。)。
【0055】
チオールカップリング反応を用いた標識ペプチドの詳細は、国際公開第2005/012335号に記載されており、その開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。
【0056】
好ましい実施形態では、AはDOTAキレート剤であり、Mは68Gaであってマイクロ波化学で容易にキレート剤に導入し得る。
【0057】
第三の実施形態では、式(I)の化合物は、MR画像モダリティに有用な1以上の造影性部分Mを保持する部分Aを含む。この場合、Mは米国特許第4647447号に記載されているような常磁性金属を表す。Gd3+、Dy3+、Fe3+及びMn2+が特に好ましく、Zはキレート剤、特に米国特許第4647447号及び国際公開第86/02841号などに記載されているような非環式又は環式ポリアミノカルボキシレートのようなキレート剤(例えばDTPA、DTPA−BMA、DOTA及びDO3A)を表す。また、Mは、超常磁性種、フェリ磁性種又は強磁性種のような金属酸化物であってもよく、これらは例えばZが金属酸化物のコーティングとして機能するようにZに吸着される。MR造影剤として用いられる金属酸化物は、例えば米国特許第6230777号に記載されており、その開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。
【0058】
第四の実施形態では、式(I)の化合物は、X線画像モダリティに有用な1以上の造影性部分Mを保持する部分Aを含む。この場合、MはW、Au及びBiのような重金属であり、好ましくは酸化物の形態である。Zは、X線造影剤として周知のヨウ素化アリール誘導体、例えばIopamiron(商標)及びOmnipaque(商標)であってもよい。これらの造影剤は、そのアミド又はアミン官能基を介して式(I)のペプチドに結合させることができる。
【0059】
他の実施形態では、式(I)の化合物はガス充填マイクロベシクルの形態のZを含む。かかる超音波造影剤は受容体のイメージングに利用することができ、例えば国際公開第98/18500号のような従来技術に記載の通り、官能化してペプチドに結合させればよい。
【0060】
本発明の第六の実施形態では、式(I)の部分Zは、光学イメージング法で直接又は間接的に検出し得る基であってもよい。検出性基は、光散乱体(例えば着色又は無着色粒子)でも、光吸収体でも、光放射体でもよい。さらに好ましくは、Zは発色団又は蛍光化合物のような色素である。Z基は紫外乃至近赤外域の波長を有する電磁スペクトルの光と相互作用する色素であればよい。最も好ましくはZは蛍光性を有する。
【0061】
好ましい有機色素部分としては、広く非局在化した電子系を有する基、例えばシアニン、メロシアニン、インドシアニン、フタロシアニン、ナフタロシアニン、トリフェニルメチン、ポルフィリン、ピリリウム色素、チアピリリウム色素、スクアリリウム色素、クロコニウム色素、アズレニウム色素、インドアニリン、ベンゾフェノキサジニウム色素、ベンゾチアフェノチアジニウム色素、アントラキノン、ナフトキノン、インダスレン、フタロイルアクリドン、トリスフェノキノン、アゾ色素、分子内及び分子間電荷移動色素及び色素鎖体、トロポン、テトラジン、ビス(ジチオレン)鎖体、ビス(ベンゼン−ジチオレート)鎖体、ヨードアニリン色素、ビス(S,O−ジチオレン)鎖体が挙げられる。蛍光タンパク質、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)及び吸収/発光特性の異なるGFPの修飾物も有用である。ある種の希土類金属(例えばユーロピウム、サマリウム、テルビウム又はジスプロシウム)の鎖体も、蛍光ナノ結晶(量子ドット)のような特定の状況で用いられる。
【0062】
光学イメージング法に適した基の詳細は、国際公開第2005/003166号に記載されており、その開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。
【0063】
本発明の一態様では、式(I)のZは抗悪性腫瘍薬である。この態様では、本化合物は癌に関連した血管新生部位をターゲティングし、抗悪性腫瘍薬を疾患領域に運搬する。抗悪性腫瘍薬の例として、シクロホスファミド、クロラムブシル、ブスルファン、メトトレキセート、シタラビン、フルオロウラシル、ビンブラスチン、パクリタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、テニポシド、シスプラチン、アムサクリン、ドセタキセルが挙げられるが、その他幅広い種類の抗悪性腫瘍薬も使用し得る。
【0064】
本明細書に記載するペプチド系化合物のペプチドベクターは好ましくは遊離アミノ及びカルボキシ末端をもたない。これによって、これらの化合物は酵素分解に対する耐性が格段に向上し、多くの公知の遊離ペプチドに比べてインビボ安定性が増す。
【0065】
本明細書で用いる「アミノ酸」という用語は、広義には、タンパク新生L−アミノ酸、D−アミノ酸、化学修飾アミノ酸、N−メチル、Cα−メチル及びアミノ酸側鎖模倣体並びにナフチルアラニンのような非天然アミノ酸をいう。天然アミノ酸又はかかる天然アミノ酸の模倣体が好ましい。
【0066】
式(I)の化合物の好ましい実施形態として、次の化合物が挙げられる。
【0067】
【化7】

式中、Zは上記で定義した通りである。
【0068】
本発明では、式(I)に規定するいずれのアミノ酸残基も好ましくは天然アミノ酸を表し、立体配置は独立にD又はLのいずれでもよい。
【0069】
ほとんどの場合、ペプチドのアミノ酸はすべてL型であるのが好ましい。ただし、本発明のある実施形態では、ペプチドの1、2又は3個以上のアミノ酸は好ましくはD型である。かかるD型アミノ酸の導入は化合物の血清中安定性に多大な影響をもつことがある。
【0070】
本発明は、一般式(I)の化合物又はその塩の有効量(例えばインビボイメージングでの画像コントラストの強調に有効な量)を、薬学的に許容される1種以上の補助剤、賦形剤又は希釈剤と共に含んでなる医薬組成物も提供する。
【0071】
本発明は、さらに、一般式(I)の化合物又はその酸付加塩の有効量を、薬学的に許容される1種以上の補助剤、賦形剤又は希釈剤と共に含んでなる疾患治療用の医薬組成物も提供する。
【0072】
本発明の好ましい一実施形態は、画像診断用の一般式(I)の放射線標識剤に関する。
【0073】
本発明の化合物は、当業者の技術常識に属する方法で、生理学的に許容される担体又は賦形剤を用いて投与用に製剤化し得る。例えば、薬学的に許容される賦形剤を適宜添加した化合物を、水性媒体に懸濁又は溶解し、次いで得られた溶液又は懸濁液を滅菌すればよい。
【0074】
式(I)の化合物は、疾患の治療に治療効果をもつとともにインビボイメージングで検出可能なものにすることもできる。例えば、ペプチドベクターによって化合物は受容体をターゲットとするし、また造影性部分Zは例えばキレート剤Aを介して化合物に結合した放射性核種Mの放射線治療効果などによって、治療効果を有し得る。
【0075】
そこで、治療用組成物(医薬)の製造、並びにヒト又は動物の身体の治療又は予防的治療、好ましくは癌の治療における、式(I)の化合物の使用は本発明の別の態様をなすと考えられる。
【0076】
本発明の一態様では、式(I)のペプチド系化合物は画像診断における造影剤として使用される。
【0077】
別の態様では、本発明は、造影剤をヒト又は動物の身体に投与して身体の少なくとも一部分の画像を生成させる診断法に用いられる造影剤の製造における式(I)の化合物の使用を提供する。
【0078】
さらに別の態様では、本発明は、造影剤をヒト又は動物の身体(例えば血管系)に投与し、造影剤が分布した身体の少なくとも一部分の画像をシンチグラフィー、PET又はSPECTモダリティ、MRI、X線、超音波又は光学イメージングを用いて生成させることを含むヒト又は動物の身体の画像を生成させる方法であって、上記造影剤として式(I)の化合物を用いることを特徴とする方法を提供する。
【0079】
さらに別の態様では、本発明は、式(I)で定義される化合物を含む造影剤組成物を予め投与しておいたヒト又は動物の身体の強調画像を生成させる方法であって、身体の少なくとも一部分の画像を生成させることを含む方法を提供する。
【0080】
さらに別の態様では、本発明は、癌に関連した病態(好ましくは血管新生)に対処するための薬剤(例えば細胞毒性剤)によるヒト又は動物の身体の治療効果をモニタリングする方法であって、式(I)の化合物を身体に投与し、細胞受容体(好ましくは内皮細胞受容体、特にαvβ3受容体)による上記薬剤の取り込みを検出し、任意ではあるが好ましくは、投与と検出を、例えば上記薬剤による治療の前後途中のいずれかに繰り返すことを含む方法を提供する。
【0081】
本発明の化合物は、あらゆる公知の化学合成法で合成できるが、特に有用な方法は自動ペプチド合成装置を用いたMerrifieldの固相法である(J.Am.Chem.Soc.85:2149(1964))。典型的には、所望の配列を固相ペプチド合成で構築する。本発明の実施例で用いた合成法の標準的手順は、E.Atherton & R.C.Sheppard, “Solid phase peptide synthesis: a practical approach, 1989, IRL Press, Oxfordに記載されている。
【0082】
例えば、酸不安定リンカー基を有する樹脂を用いて、これに、所望のアミノ保護C末端アミノ酸残基をエステル化したものを結合させる。次いでアミノ保護基を外し、適当な縮合剤を用いて配列の第二のアミノ酸をカップリングさせる。一時的なアミノ保護基と官能性側鎖のための永続的な保護基をもつアミノ酸を使用する。次にアミノ脱保護とカップリングのサイクルを目的配列が構築されられるまで交互に繰り返す。
【0083】
別法として、ペプチドは、全体的な又は最小限の保護戦略を用いて、当技術分野で公知の溶液ペプチド合成法によって、カルボキシル末端から段階的に及び/又はセグメント縮合もしくはライゲーション法を用いて合成することもできる。溶液−固相セグメント縮合法の組合せを利用することもできる。
【0084】
一般に、反応性側鎖基(例えばアミノ、ヒドロキシル、グアニジノ及びカルボキシル基)は、上述の通り合成の全期間にわたって保護される。アミノ酸に対する保護基については幅広い選択肢が知られている(例えばGreene, T.W. & Wuts, P.G.M. (1991) Protective groups in organic synthesis, John Wiley & Sons, New York参照)。使用し得るアミノ保護基としては、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)及びt−ブチルオキシカルボニル(Boc)が挙げられる。使用し得る側鎖保護基としては、t−ブチル(tBu)、トリチル(Trt)、Boc及び2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−スルホニル(Pmc)が挙げられる。かかる保護基としてその他多種多様なものが当技術分野で公知である。
【0085】
最後に、永続的な側鎖保護基を外し、ペプチドを樹脂から切断するが、これらは、例えばトリフルオロ酢酸(TFA)のような適当な酸性試薬での処理によって同時に行われるのが一般的である。
【0086】
複数の架橋を含むペプチド系ベクターは、ベクターの最終的な折り畳み構造が曖昧とならないように、様々なシステイン保護基を用いて合成される。チオエーテル及びジスルフィド架橋を含むペプチドの形成について記載された国際公開第03/006491号に記載の合成法を使用し得る。チオエーテル環化は例えば以下の通り実施できる。Cys(t−Bu)保護ペプチドを水/アセトニトリルに溶解する(1mg/ml)。希アンモニア溶液で混合物のpHを8に調節し、混合物を一晩攪拌する。ジスルフィド架橋は、次のようにDMSO/THF酸化によって形成させることができる。ペプチドを5%DMSO/THFに溶解し(1mg/ml)、混合物を30分間攪拌する。
【0087】
及び/又はXとペプチドとのカップリング:
及び/又はXは公知の化学合成法を用いてペプチドに結合させることができる。特に有用なものは、ペプチドN末端の脱離基をW及び/又はXの求核基で置換する求核置換反応である。かかる脱離基は、カルボニル基にα位で結合した臭素とすることができ、求核基は窒素とすることができる。
【0088】
Zとペプチド、W及び/又はXとのカップリング:
Zは、W及び/又はXとペプチドとの結合法と同様の方法を用いてペプチドに直接に結合させることができる。ZがW又はXを介してペプチドに連結する場合、ZとW又はXの結合にはあらゆる化学合成法を使用できる。特に有用なものはアミド結合の形成である。
【0089】
ペプチドベクター及びペプチド系化合物は、インビトロスクリーニングでの試験前に、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で精製し、質量分析及び分析用HPLCで特性決定してもよい。
【0090】
以下の非限定的な実施例によって本発明をさらに例示する。
【実施例】
【0091】
実施例1
[Cys2−8]シクロ[CHCONH−Asp−Cys−Arg−Gly−Asp−Cys]−Phe−Cys−Gly−NH−(CHCHO)CHCHNHとcarba−Pn216キレートとのコンジュゲート
1a)ClCHCONH−Asp−Cys(tBu)−Arg−Gly−Asp−Cys−Phe−Cys(tBu)−Gly−NH−(CHCHO)CHCHNHの合成
【0092】
【化8】

上記ペプチドの合成は、ABI 433A自動ペプチド合成装置で、1mmolアミノ酸及びクロロ酢酸カートリッジを用いて、0.25mmolスケールのO−ビス−(アミノエチル)エチレングリコールトリチル樹脂から開始した。アミノ酸及びクロロ酢酸はカップリング前にHBTUを用いて予め活性化しておいた。樹脂からのペプチドと側鎖保護基(tBu以外)の同時除去は、TIS(5%)、H0(5%)及びフェノール(2.5%)を含有するTFA中で2時間行った。
【0093】
後処理後、粗ペプチドを白色固体として得た(分析用HPLC;勾配:10分間で5〜50%B(A=HO/0.1%TFA及びB=CHCN/0.1%TFA);カラム:Phenomenex Luna 3μ C18 50×4.6mm;検出:UV214nm;生成物の保持時間:6.50分)。エレクトロスプレー質量分析法でさらに生成物の特性決定を行った(M+Hの予測値1293.5、実測値1293.5)。
【0094】
1b)シクロ[CHCONH−Asp−Cys(tBu)−Arg−Gly−Asp−Cys]−Phe−Cys(tBu)−Gly−NH−(CHCHO)CHCHNHの合成
【0095】
【化9】

ClCHCONH−Asp−Cys(tBu)−Arg−Gly−Asp−Cys−Phe−Cys(tBu)−Gly−NH−(CHCHO)CHCHNHを水/アセトニトリルに溶解した。アンモニア溶液で混合物のpHを8に調節し、4時間攪拌した。
【0096】
後処理後、粗ペプチドを白色粉末として得た(分析用HPLC;勾配:10分間で5〜50%B(A=HO/0.1%TFA及びB=CHCN/0.1%TFA);カラム:Phenomenex Luna 3μ C18 50×4.6mm;検出:UV214nm;生成物の保持時間:5.90分)。エレクトロスプレー質量分析法でさらに生成物の特性決定を行った(M+Hの予測値1257.5、実測値1257.5)。
【0097】
1c)[Cys2−8]シクロ[CHCONH−Asp−Cys−Arg−Gly−Asp−Cys]−Phe−Cys−Gly−NH−(CHCHO)CHCHNHの合成
【0098】
【化10】

シクロ[CHCONH−Asp−Cys(tBu)−Arg−Gly−Asp−Cys(tBu)−Phe−Cys]−Gly−NH−(CHCHO)CHCHNHを、アニソール(500μl)とDMSO(4ml)を含むTFA(200ml)に溶解した。混合物を15分間攪拌してから、TFAを減圧除去し、ジエチルエーテルを添加してペプチドを沈殿させた。
【0099】
分取用HPLC(Phenomenex Luna 5μ C18(2) 250×21.20mmカラム)による粗物質の精製は、0〜30%のB(A=HO/0.1%TFA及びB=CHCN/0.1%TFA)を用いて10mL/分の流速で40分間実施した。凍結乾燥後、18.7mgの純物質を得た(分析用HPLC;勾配:10分間で0〜30%のB(A=HO/0.1%TFA及びB=CHCN/0.1%TFA);カラム:Phenomenex Luna 3μ C18 50×4.6mm;検出:UV214nm;生成物の保持時間:5.73分)。エレクトロスプレー質量分析法でさらに生成物の特性決定を行った(M+Hの予測値1143.4、実測値1143.5)。
【0100】
1d)ペプチドとcarba−Pn216キレートの結合
【0101】
【化11】

carba−Pn216キレート活性エステル、N−メチルモルホリン及び[Cys2−8]シクロ[CHCONH−Asp−Cys−Arg−Gly−Asp−Cys]−Phe−Cys−Gly−NH(CHCHO)CHCHNHをN,N−ジメチルホルムアミド(0.5mL)に溶解する。混合物を24時間攪拌する。水を加え、生成物を分取用HPLCで精製する。
【0102】
実施例2
[Cys2−8]シクロ[CHCONH−Lys−Cys−Arg−Gly−Asp−Cys]−Phe−Cys−CCX−NHとcarba−Pn216キレートとのコンジュゲート
2a)ClCHCONH−Lys−Cys(tBu)−Arg−Gly−Asp−Cys−Phe−Cys(tBu)−CCX−NHの合成
【0103】
【化12】

上記ペプチドの合成は、ABI 433A自動ペプチド合成装置で、1mmolアミノ酸及びクロロ酢酸カートリッジを用いて、0.25mmolスケールのRink Amide AM樹脂から開始する。アミノ酸及びクロロ酢酸はカップリング前にHBTUを用いて予め活性化しておく。樹脂からのペプチドと側鎖保護基(tBu以外)の同時除去は、TIS(5%)、H0(5%)及びフェノール(2.5%)を含有するTFA中で2時間実施する。後処理後に、粗ペプチドが白色固体として得られる。
【0104】
2b)シクロ[CHCONH−Lys−Cys(tBu)−Arg−Gly−Asp−Cys]−Phe−Cys(tBu)−CCX−NHの合成
【0105】
【化13】

ClCHCONH−Lys−Cys(tBu)−Arg−Gly−Asp−Cys−Phe−Cys(tBu)−CCX−NHを、水/アセトニトリルに溶解する。アンモニア溶液で混合物のpHを8に調節し、4時間攪拌する。凍結乾燥後、粗ペプチドが白色固体として得られる。
【0106】
2c)[Cys2−8]シクロ[CHCONH−Lys−Cys−Arg−Gly−Asp−Cys]−Phe−Cys−CCX−NHの合成
【0107】
【化14】

DMSO(4mL)を含むTFA(200mL)に、シクロ[CHCONH−Lys−Cys(tBu)−Arg−Gly−Asp−Cys]−Phe−Cys(tBu)−CCX−NHを溶解する。混合物を30分間攪拌してから、TFAを減圧除去し、ジエチルエーテルを添加してペプチドを沈殿させる。
【0108】
2d)ペプチドとcarba−Pn216キレートの結合
【0109】
【化15】

carba−Pn216キレート活性エステル、N−メチルモルホリン及び[Cys2−8]シクロ[CHCONH−Lys−Cys−Arg−Gly−Asp−Cys]−Phe−Cys−CCX−NHを、N,N−ジメチルホルムアミド(0.5ml)に溶解する。混合物を24時間攪拌する。水を加え、生成物を分取用HPLCで精製する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の一般式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化1】

式中、
Gはグリシンを表し、
Dはアスパラギン酸を表し、
は−(CH−又は(CH−C−を表し(式中、nは1〜10の正の整数である。)、
hは1又は2の正の整数であり、
は酸又はアミン基のような官能性側鎖を有するアミノ酸残基を表し、
及びXは一緒にジスルフィド結合を形成するアミノ酸残基を独立に表し、
はアルギニン、N−メチルアルギニン又はアルギニン模倣体を表し、
はチオール含有アミノ酸残基を表し、
は疎水性アミノ酸又はその誘導体であり、
はバイオモディファイヤー部分であるか、或いは存在せず、
又はZの少なくとも一方が存在していて抗悪性腫瘍薬又は造影性部分を表し、
はスペーサーであるか、或いは存在しない。
【請求項2】
前記造影性部分が、キレート剤Aでキレートされた金属Mである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
いずれのアミノ酸残基の立体配置も独立にD又はLである、請求項1又は請求項2記載の化合物。
【請求項4】
が−(CH)−を表す、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の化合物。
【請求項5】
がアスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、ホモリシン又は他のジアミノアルキル酸もしくはその誘導体を表す、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の化合物。
【請求項6】
、X及びXが独立にシステイン又はホモシステイン残基を表す、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の化合物。
【請求項7】
がアルギニンを表す、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の化合物。
【請求項8】
がチロシン、フェニルアラニン、3−ヨード−チロシン又はナフチルアラニンを表す、請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の化合物。
【請求項9】
が1〜10単位の単分散PEG構成単位を含む、請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載の化合物。
【請求項10】
が次の式(II)を1〜10単位含む、請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の化合物。
【化2】

【請求項11】
が1〜10個のアミノ酸残基を表す、請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載の化合物。
【請求項12】
が、1個以上のグリシン、リシン、アスパラギン酸又はセリン残基、好ましくはグリシンを含む、請求項1乃至請求項8及び請求項11のいずれか1項記載の化合物。
【請求項13】
が次の式(III)のキレート剤である、請求項1乃至請求項12のいずれか1項記載の化合物。
【化3】

式中、R、R、R及びRは各々独立にR基であって、各R基は独立にH又はC1〜10アルキル、C3〜10アルキルアリール、C2〜10アルコキシアルキル、C1〜10ヒドロキシアルキル、C1〜10アルキルアミン、C1〜10フルオロアルキルであるか、或いは2以上のR基がそれらに結合した原子と共に炭素環、複素環、飽和又は不飽和環を形成するものである。
【請求項14】
が次の式(IV)のキレート剤である、請求項1乃至請求項13のいずれか1項記載の化合物。
【化4】

【請求項15】
Mが金属放射性核種、常磁性金属イオン、重金属イオン又はクラスターイオンを含む、請求項1乃至請求項14のいずれか1項記載の化合物。
【請求項16】
Mが90Y、99mTc、111In、47Sc、67Ga、51Cr、177mSn、67Cu、167Tm、97Ru、188Re、177Lu、199Au、203Pb又は141Ceを含む、請求項1乃至請求項15のいずれか1項記載の化合物。
【請求項17】
Mが99mTcである、請求項1乃至請求項16のいずれか1項記載の化合物。
【請求項18】
又はZが存在していて18Fを表す、請求項1乃至請求項12のいずれか1項記載の化合物。
【請求項19】
又はZが存在していて蛍光色素を表す、請求項1乃至請求項12のいずれか1項記載の化合物。
【請求項20】
又はZが存在していて抗悪性腫瘍薬である、請求項1乃至請求項12のいずれか1項記載の化合物。
【請求項21】
又はZが存在していてシクロホスファミド、クロラムブシル、ブスルファン、メトトレキセート、シタラビン、フルオロウラシル、ビンブラスチン、パクリタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、テニポシド、シスプラチン、アムサクリン又はドセタキセルを表す、請求項20記載の化合物。
【請求項22】
がグルタル酸又はコハク酸である、請求項1乃至請求項21のいずれか1項記載の化合物。
【請求項23】
インビボイメージングの画像コントラスト強調又は疾患治療に有効な量の一般式(I)の化合物又はその塩を、薬学的に許容される1種以上の補助剤、賦形剤又は希釈剤と共に含んでなる医薬組成物。
【請求項24】
造影剤をヒト又は動物の身体に投与してヒト又は動物の身体の少なくとも一部分の画像を生成させる診断法に用いられる造影剤の製造における、請求項1乃至請求項19及び請求項22のいずれか1項記載の化合物の使用。
【請求項25】
ヒト又は動物における癌又は関連疾患の治療又は予防的治療用の医薬の製造における、請求項1乃至請求項15及び請求項19乃至請求項22のいずれか1項記載の化合物の使用。
【請求項26】
造影剤をヒト又は動物の身体に投与して造影剤が分布した身体の少なくとも一部分の画像を生成させることを含むヒト又は動物の身体の画像を生成させる方法であって、上記造影剤が請求項1乃至請求項19及び請求項22のいずれか1項記載の化合物を含むことを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項1記載の化合物を含む造影剤組成物を予め投与しておいたヒト又は動物の身体の強調画像を生成させる方法であって、当該方法が身体の少なくとも一部分の画像を生成させることを含む方法。
【請求項28】
癌に関連した病態に対処するための薬剤によるヒト又は動物の身体の治療効果をモニタリングする方法であって、請求項1乃至請求項19及び請求項22のいずれか1項記載の化合物又は組成物を身体に投与し、細胞受容体による上記化合物又は組成物の取り込みを検出し、任意ではあるが好ましくは、投与と検出を、例えば上記化合物又は組成物による治療の前後途中のいずれかに繰り返すことを含んでなる方法。
【請求項29】
ヒト又は動物の身体の癌又は関連疾患の治療方法であって、請求項1乃至請求項15及び請求項19乃至請求項22のいずれか1項記載の化合物又は組成物の有効量を投与することを含む方法。
【請求項30】
癌の治療又は治療効果のモニタリングのための画像診断における造影剤として用いられる、請求項1乃至請求項22のいずれか1項記載の化合物。

【公表番号】特表2008−510679(P2008−510679A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−516411(P2007−516411)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【国際出願番号】PCT/NO2005/000209
【国際公開番号】WO2005/123767
【国際公開日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【出願人】(396019387)ジーイー・ヘルスケア・アクスイェ・セルスカプ (82)
【Fターム(参考)】