説明

ペプチド骨格およびC末端改変を持つ改変したコンプスタチン

C3タンパク質に結合でき、かつ補体活性化を抑制できるペプチドを含む化合物が開示される。これらの化合物は、現在利用可能な化合物と比較して、非常に改善された補体活性化抑制活性を示す。この化合物は、8位(グリシン)の拘束された骨格、および所望により、13位のトレオニンについての特定の置換を有するコンプスタチンアナログを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内の補体カスケードの活性化に関する。本発明は、特に、C3タンパク質を結合し、補体活性化を抑制できるペプチドおよびペプチドミメティック(peptidomimetics)を提供する。
【0002】
(政府支援)
米国特許法第202(c)より、米国政府が、助成番号GM62134下で国立衛生研究所からの基金で部分的になされた、本明細書に記載された発明にある権利をし得ると認められる。
【背景技術】
【0003】
特許、出願公開、技術文献および学術文献を含めた種々の刊行物を本明細書の全体に引用する。これらの各引用刊行物をここに出典明示してそのすべてを本明細書の一部とみなす。
【0004】
ヒト補体系は、病原性生物に対する防御および免疫反応の媒介において強力なプレーヤーである。補体は3つの異なる経路:古典的、レクチンおよび代替経路を介して活性化できる。3つの経路すべてにより共有される主要な活性化事象は、C3転化酵素によるその活性化生成物C3aおよびC3bへの補体系の中心的なタンパク質C3の蛋白質分解切断である。これらの断片の生成は、C3bおよびiC3bによる病原性細胞のオプソニン作用、すなわち、それらを食作用またはクリアランスを受け易くするプロセス、および補体受容体との相互作用を介して免疫細胞の活性化に導く (Markiewski & Lambris, 2007, Am J Pathol 171: 715-727)。また、標的細胞上のC3bの沈着は、新しい転化酵素複合体の形成を引き起こし、それにより、自己増幅ループを始める。
【0005】
血漿および細胞表面結合タンパク質のアンサンブルは、補体カスケードにより自己攻撃から宿主細胞を予防するように、注意深く補体活性化を調節する。しかしながら、補体の過剰な活性化または不適当な調節は、自己免疫ないし炎症性疾患の範囲にある多数の病理学疾患に導きかねない(Holers, 2003, Clin Immunol 107: 140-51; Markiewski & Lambris, 2007,前記; Ricklin & Lambris, 2007, Nat Biotechnol 25: 1265-75; Sahuら, 2000, J Immunol 165: 2491-9)。したがって、治療的補体抑制物質の開発は高度に望ましい。この状況において、C3およびC3bは、そのカスケード中のそれらの中心的な役割が補体の開始、増幅および下流の活性化の同時の抑制を可能とするために、有望な標的として出現した(Ricklin & Lambris, 2007, 前記)。
【0006】
コンプスタチンは、3つの活性化経路のすべてをブロックできることが示された最初の非宿主由来の補体抑制物質であった(Sahuら, 1996, J Immunol 157: 884-91; 米国特許第6,319,897号)。この環状トリデカペプチドは、C3およびC3bの双方に結合し、C3転化酵素により天然のC3の切断を防止する。その高い抑制効力は、治療剤としてその可能性を示す実験モデルを用いて、一連の研究により確認された(Fianeら, 1999a, Xenotransplantation 6: 52-65; Fianeら, 1999b, Transplant Proc 31:934-935; Nilssonら, 1998 Blood 92: 1661-1667; Ricklin & Lambris, 2008, Adv Exp Med Biol 632: 273-292; Schmidtら, 2003, J Biomed Mater Res A 66: 491-499; Soulikaら, 2000, Clin Immunol 96: 212-221)。コンプスタチンの連続的な最適化は、活性の改善を持つアナログを与えた(Ricklin & Lambris, 2008, 前記; WO2004/026328; WO2007/062249)。これらのアナログの1つは、先進国の高齢患者における盲目の主要原因である加齢黄斑変性症(AMD)の治療についての治験で現在試験されている(Colemanら, 2008, Lancet 372: 1835-1845; Ricklin & Lambris, 2008,前記)。AMDおよび他の疾患におけるその治療可能性に徴して、さらなる大きな効力を達成するコンプスタチンのさらなる最適化は相当に重要なものである。
【0007】
初期の構造活性研究は、コンプスタチンペプチドの環状性質、ならびにβ−ターンおよび疎水性クラスターの双方の存在を分子的な鍵となる特徴として同定した(Morikisら, 1998, Protein Sci 7: 619-627; WO99/13899; Morikisら, 2002, J Biol Chem 277:14942-14953; Ricklin & Lambris, 2008,前記)。4および7位での疎水性残基は特に重要であることが判明し、非天然のアミノ酸でのそれらの改変は、元来のコンプスタチンペプチドの264倍の活性改善を持つアナログを生成した(Katragaddaら, 2006, J Med Chem 49: 4616-4622; WO2007/062249)。
【0008】
従前の最適化工程は組合せスクリーニング試験、溶液構造および計算モデルに基づいた(Chiuら, 2008, Chem Biol Drug Des 72: 249-256; Mulakalaら, 2007, Bioorg Med Chem 15: 1638-1644; Ricklin & Lambris, 2008,前記)が、補体断片C3cと複合したコンプスタチンの共結晶構造の最近の公開は、合理的な最適化を始めるための重要な一里塚を表わす。結晶構造は、C3cのマクログロブリン(MG)ドメイン4および5の界面で浅い結合部位を明らかにし、13のアミノ酸のうち9つが水素結合または疎水性効果のいずれかにより直接的に結合に関与することを示した。溶液中のコンプスタチンペプチドの構造(Morikisら, 1998,前記)と比較して、コンプスタチンの結合形態は、残基5〜8ないし8〜11のβ−ターンの位置のシフトを含む立体構造変化を経験した(Janssenら, 2007,前記; WO2008/153963)。
【0009】
前記に徴して、さらに大きな活性を持つ改変したコンプスタチンペプチドまたはミメティックの開発が、当該技術分野におけるかなりの進歩を構成することは明らかである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、体内の補体カスケードの活性化に関する。本発明は、特に、C3タンパク質を結合し、補体活性化を抑制できるペプチドおよびペプチドミメティックを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、コンプスタチン(ICVVQDWGHHRCT(環状C2−C12);配列番号:1)と比較して補体抑制活性の改善を有する、補体抑制ペプチドのコンプスタチンのアナログおよびミメティックを提供する。
【0012】
本発明の1つの態様は、改変したコンプスタチンペプチド(ICVVQDWGHHRCT;配列番号:1(環状C2−C12))を含む化合物またはそのアナログを要旨とし、ここに、8位のGlyを改変して、その位置にてペプチドの骨格立体配置を抑制する。1つの具体例において、骨格はGlyをN−メチルGlyに置換することにより抑制される。ペプチドは、1以上の以下のもの:Alaでの9位のHisの置換;TrpまたはTrpのアナログでの4位のValの置換;Trpのアナログでの7位のTrpの置換;N末端のアセチル化;およびIle、Leu、Nle、N−メチルThrまたはN−メチルIleでの13位のThrの置換によりさらに改変し得る。特定の具体例において、4位のTrpのアナログは、1−メチル−Trpまたは1−ホルミル−Trpであって、7位のTrpのアナログは存在するならば、ハロゲン化Trpである。
【0013】
ある具体例は、配列番号:2の配列を有するペプチドを含むコンプスタチンアナログを要旨とし、それは:
Xaa1−Cys−Val−Xaa2−Gln−Asp−Xaa3−Gly−Xaa4−His−Arg−Cys−Xaa5(環状C2−C12)であり、
[式中、8位のGlyを改変して、その位置でのペプチドの骨格立体構造を拘束し、
Xaa1は、Ile、Val、Leu、Ac−Ile、Ac−Val、Ac−Leu、またはGly−Ileを含むジペプチドであり;
Xaa2はTrpまたはTrpのアナログであり、ここに、Trpのアナログは、Trpと比較して疎水性特性を増加させ;
Xaa3は、Trp、またはインドール環の水素結合ポテンシャルを増加させる、そのインドール環に対する化学的修飾を含むTrpのアナログであり;
Xaa4は、His、Ala、PheまたはTrpであり;および
Xaa5は、Thr、Ile、Leu、Nle、N−メチルThrまたはN−メチルIleのいずれかのカルボキシ末端の−OHが、−NHにより所望により置換されていてもよいThr、Ile、Leu、Nle、N−メチルThrまたはN−メチルIleである]である。
【0014】
ある具体例において、Xaa2はC3との無極性相互作用に関与する。他の具体例において、Xaa3はC3との水素結合に関与する。種々の具体例において、Xaa2のTrpのアナログは、5−フルオロ−l−トリプトファンまたは6−フルオロ−l−トリプトファンのごときハロゲン化トリプトファンである。他の具体例において、Xaa2のTrpアナログは、5位での低級アルコキシルまたは低級アルキル置換基、例えば、5−メトキシトリプトファンまたは5−メチルトリプトファンを含む。他の具体例において、Xaa2のTrpアナログは1位での低級アルキルまたは低級アルケノイル置換基を含み、例示的具体例は、1−メチルトリプトファンまたは1−ホルミルトリプトファンを含む。他の具体例において、Xaa3のTrpのアナログは、5−フルオロ−l−トリプトファンまたは6−フルオロ−l−トリプトファンのごときハロゲン化トリプトファンである。特定の具体例において、Xaa2は1−メチルトリプトファンまたは1−ホルミルトリプトファンであって、Xaa3は所望により5−フルオロ−l−トリプトファンを含む。
【0015】
ある具体例において、8位のGlyはN−メチル化され、Xaa1はAc−Ileであり、Xaa2は1−メチル−Trpまたは1−ホルミル−Trpであり、Xaa3はTrpであり、Xaa4はAlaであって、Xaa5はThr、Ile、Leu、Nle、N−メチルThrまたはN−メチルIleである。特に、Xaa5はIle、N−メチルThrまたはN−メチルIleであり得る。特に、コンプスタチンアナログは、配列番号:5、7、8、9、10または11のいずれか1つを含む。
【0016】
いくつかの具体例において、化合物は、そのペプチドをコード化するポリヌクレオチドの発現により生成されたペプチドを含む。他の具体例において、化合物は、ペプチド合成により少なくとも部分的に生成される。また、合成法の組合せを用いることができる。
【0017】
本発明のもう一つの態様は、その化合物のin vivo保持を延長するさらなる成分をさらに含む前記の請求項のいずれかの化合物を要旨とする。さらなる成分は、1つの具体例においてポリエチレングリコール(PEG)である。さらなる成分は、もう一つの具体例において、アルブミン結合低分子である。もう一つの具体例において、さらなる成分はアルブミン結合ペプチドである。
アルブミン結合ペプチドは、配列RLIEDICLPRWGCLWEDD(配列番号:14)を含み得る。特定の具体例は、アルブミン結合ペプチドに結合した配列番号:5、7、8、9、10または11のいずれか1つを含む。所望により、化合物およびアルブミン結合ペプチドをスペーサーにより分離する。スペーサーは、ミニ−PEGまたはミニ−PEG3のごときポリエチレングリコール(PEG)分子であり得る。
【0018】
本発明のもう一つの態様は、配列番号:5、7、8、9、10または11のいずれか1つの非ペプチドまたは部分的なペプチドミメティックを含む、補体活性化を抑制する化合物を要旨とし、ここに、化合物はC3に結合し、等価なアッセイ条件下で配列番号:1を含むペプチドより少なくとも500倍大きな活性で補体活性化を抑制する。
【0019】
本発明のコンプスタチンアナログ、コンジュゲートおよびミメティックは、当該技術分野において知られ本明細書により詳細に記載したように、コンプスタチン自体が利用されるいずれの目的でも、実際に有用なものである。これらのある使用は、患者への投与のための医薬組成物中の化合物の処方を含む。かかる処方は、化合物の医薬上許容される塩、ならびに当業者の範囲内にある1以上の医薬上許容される希釈剤、担体 賦形剤等を含み得る。
【0020】
本発明の種々の特徴および利点は、以下の詳細な記載、図面および実施例に対する参照により理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0021】
例示的具体例の詳細な記載
定義:
本発明の方法および他の態様に関する種々の用語は、本明細書および特許請求の範囲の全体にわたって用いる。特記しない限りは、かかる用語は、当該技術分野におけるそれらの通常の意味を与えるものである。他の具体的に定義された用語は、本明細書に提供された定義と一致するように解釈されるものである。
【0022】
量、一時的な期間等のごとき測定可能な値を参照する場合の本明細書に用いた「約」なる用語は、特定の値からの±20%または±10%、いくつかの具体例において±5%、いくつかの具体例において±1%、いくつかの具体例において±0.1%の変動を包含することを意味し、かかる変動は開示された化合物および組成物を調製および用いるのに適当である。
【0023】
本明細書に用いた「コンプスタチン」なる用語は、配列番号:1のICVVQDWGHHRCT(環状C2−C12)よりなるペプチドをいう。「コンプスタチンアナログ」なる用語は、本明細書により詳細に記載し、当該技術分野において知られた天然および非天然のアミノ酸、またはアミノ酸アナログの置換、ならびに種々のアミノ酸内またはアミノ酸間の改変を含む改変したコンプスタチンをいう。コンプスタチンまたはコンプスタチンアナログ内の特定のアミノ酸またはアナログの位置を参照する場合、それらの位置は、時々、ペプチド内の「位置」をいい、その位置は、1(コンプスタチン中のIle)〜13(コンプスタチン中のThr)まで番号が付与される。例えば、Gly残基は「8位」を占める。
【0024】
「医薬上活性」および「生物学的活性」という用語は、C3またはその断片に結合し、補体活性化を抑制する本発明の化合物の能力をいう。この生物学的活性は本明細書中により詳細に説明されているように、1以上のいくつかの公知のアッセイにより測定され得る。
【0025】
本明細書に用いた「アルキル」とは、約1〜約10の炭素原子(さらに、本明細書中の炭素原子の範囲および特定数のすべての組み合わせおよびサブコンビネーション)を有する、所望により置換されていてもよい飽和直鎖状、分岐鎖状、環状の炭化水素を意味し、約1〜約7の炭素原子が好ましい。アルキル基は、特に限定されるものではないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、シクロピエンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、シクロヘキシル、シクロオクチル、アダマンチル、3−メチルペンチル、2,2−ジメチルブチルおよび2,3−ジメチルブチルを含む。「低級アルキル」なる用語とは、約1〜約5の炭素原子(さらに、本明細書中の炭素原子の範囲および特定数のすべての組み合わせおよびサブコンビネーション)を有する、所望により置換されていてもよい飽和直鎖状、分岐鎖状、環状の炭化水素をいう。低級アルキル基は、特に限定されるものではないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、シクロペンチル、イソペンチルおよびネオペンチルを含む。
【0026】
本明細書に用いた「ハロ」は、F、Cl、BrまたはIをいう。
本明細書に用いた「アルカノイル」とは、「アシル」とも互換的に用いられるが、約1〜約10の炭素原子(さらに、本明細書中の炭素原子の範囲および特定数のすべての組み合わせおよびサブコンビネーション)を有する、所望により置換されていてもよい直鎖状または分岐鎖状の脂肪族アシル残基をいい、約1〜約7の炭素原子が好ましい。アルカノイル基は、特に限定されるものではないが、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリルペンタノイル、イソペンタノイル、2−メチル−ブチル、2,2−ジメチルプロピオニル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル等を含む。「低級アルカノイル」なる用語は、約1〜約5の炭素原子(さらに、本明細書中の炭素原子の範囲および特定数のすべての組み合わせおよびサブコンビネーション)を有する、所望により置換されていてもよい直鎖状または分岐鎖状の脂肪族アシル残基をいう。低級アルカノイル基は、特に限定されるものではないが、ホルミル、アセチル、n−プロピオニル、イソ−プロピオニル、ブチリル、イソ−ブチリル、ペンタノイル、イソ−ペンタノイル等を含む。
【0027】
本明細書に用いた「アリル」は、約5〜約14の炭素原子(さらに、本明細書中の炭素原子の範囲および特定数のすべての組み合わせおよびサブコンビネーション)を有する、所望により置換されていてもよい、一または二環性の芳香環系をいい、約6〜約10の炭素が好ましい。非限定の例は、例えば、フェニルおよびナフチルを含む。
【0028】
本明細書に用いた「アラルキル」は、約6〜約20の炭素原子(さらに、本明細書中の炭素原子の範囲および特定数のすべての組み合わせおよびサブコンビネーション)を有する、アリル置換基を担持するアルキルラジカルをいい、約6〜約12の炭素原子が好ましい。アラルキル基は、所望により置換され得る。非限定の例は、例えば、ベンジル、ナフチルメチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、フェニルエチルおよびジフェニルエチルを含む。
【0029】
本明細書に用いた「アルコキシ」および「アルコキシル」は、所望により置換されていてもよいアルキル−O−基をいい、ここに、アルキルとは前記に定義されたものである。例示的なアルコキシおよびアルコキシル基は、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシおよびヘプトキシを特に含む。
【0030】
本明細書に用いた「カルボキシ」は、−C(=O)OH基をいう。
本明細書に用いた「アルコキシカルボニル」は、アルキルが前記に定義されものである−C(=O)O−アルキル基をいう。
本明細書に用いた「アロイル」は、アリル基が前記に定義されものである−C(=O)−アリール基をいう。例示的なアロイル基はベンゾイルおよびナフトイルを含む。
【0031】
典型的には、置換された化学的部分は、分子上の選択された位置における水素を置換した1以上の置換基を含む。例示的な置換基は、例えば、ハロ、アルキル、シクロアルキル、アラルキル、アリル、スルフヒドリル、ヒドロキシル(−OH)、アルコキシル、シアノ(−CN)、カルボキシル(−COOH)、アシル(アルカノイル:−C(=O)R);−C(=O)O−アルキル、アミノカルボニル(−C(=O)NH)、−N−置換されたアミノカルボニル(−C(=O)NHR”)、CF、CFCF等である。前記の置換基の関係において、各R”部分には、独立して、H、アルキル、シクロアルキル、アリル、またはアラルキル等のいずれであってもよい。
【0032】
本明細書に用いた「L−アミノ酸」は、タンパク質に通常存在する天然発生の左旋性のアルファ−アミノ酸、またはそれらのアルファ−アミノ酸のアルキルエステルをいう。「D−アミノ酸」なる用語は、右旋性のアルファ−アミノ酸をいう。特記しない限りは、本明細書中に言及したすべてのアミノ酸はL−アミノ酸である。
【0033】
「疎水性の」または「無極性の」は本明細書において同義語として用いられ、双極子により特徴付けられるのではなく、いずれかの分子間または分子内相互作用をいう。
【0034】
「PEG化」とは、大きさは関係なく、少なくとも一つのポリエチレングリコール(PEG)部分がタンパク質またはペプチドと結合して、PEG−ペプチドコンジュゲートを形成する反応をいう。「PEG化は、大きさは関係なく、少なくとも1つのPEG部分が、ペプチドまたはタンパク質と化学的に結合することを意味する。PEGなる用語は、一般的にPEGポリマーの近似平均分子量を示す数的接尾語とともに使われる;例えば、PEG−8,000とは平均分子量が8000のポリエチレングリコールをいう。
【0035】
本明細書に用いた「医薬上許容される塩」とは、開示された化合物の誘導体をいい、親化合物はその酸性または塩基性塩を形成することにより修飾される。医薬上許容される塩の例として、特に限定されるものではないが、アミンのごとき塩基残基の無機質または有機酸塩;カルボキシル酸のごとき酸性残基のアルカリまたは有機酸塩等が挙げられる。かくして、「酸付加塩」は、酸の付加により調製された親化合物の対応する塩誘導体をいう。医薬上許容される塩は、無機または有機酸から形成された親化合物の従来の塩または四級アンモニウム塩を含む。例えば、かかる従来の塩は、特に限定されるものではないが、塩化水素、臭化水素、硫化、リン化、窒化等のごとき無機酸;および酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸等の有機酸から調製された塩に由来するものを含む。本発明のある酸性または塩基性化合物は、双性イオンとして存在し得る。遊離酸、遊離塩基、双性イオンを含めた化合物のすべての形態は、本発明の範囲内であると考えられる。
【0036】
(説明)
本発明によれば、C3に結合するコンプスタチンの生物学的および物理化学的特徴についての情報は、親コンプスタチンペプチドと比較してかなり改善した活性を持つ改変したコンプスタチンペプチドを設計するために利用された。いくつかの具体例において、アナログは、コンプスタチンよりも少なくとも300倍大きな活性を有する。他の具体例において、アナログは、実施例に記載したアッセイを利用して比較すると、コンプスタチンより350、400、450、500、550および600倍またはそれを超えて大きな活性を有する。
【0037】
従前のアプローチにより合成されたコンプスタチンアナログは、親ペプチドと比較して99倍(Mallik, B.ら , 2005,前記; WO2004/026328)までおよび約264倍(Katragaddaら, 2006,前記;WO2007/062249)まで、活性の改善を所有することが示されている。本発明により生成されたアナログは、これまで利用されていないコンプスタチンの位置の改変を介して活性の改善を示し、コンプスタチンまたはいずれかの現在記載されたアナログに対する活性の改善を与えることができる。かくして、本発明のアナログは、本明細書の図および実施例に示したin vitroアッセイにより示された、親ペプチドまたは現在まで生成されたそのアナログのいずれよりもさらに大きな活性を所有する。
【0038】
以下の表は、コンプスタチン(Ic[CVVQDWGHHRC]T;配列番号:1)を超えてかなり改善された活性を持つ、選択された例示的アナログのアミノ酸配列および補体抑制活性を示す。選択されたアナログは、WO2007/062249に記載した強力なコンプスタチンアナログ(Ac−Ic[CV(1−MeW)QDWGAHRC]T−NH、配列番号:4、実施例1においてペプチド14ともいう)と比較して、指定の位置(1〜13)の特定の改変により引用される。配列番号:5および7〜11のペプチド(実施例1において、ペプチド15および17〜21ともいう)は、本発明によりなされた改変の代表例であり、その結果、かなりより強力なコンプスタチンアナログを生じる。
【0039】
【表1】

【0040】
本発明による1つの改変は、そのペプチドの8位のペプチド骨格の拘束を含む。特定の具体例において、骨格は8位のグリシン(Gly)をN−メチルグリシンに置換することにより拘束される。実施例1で言及されるごとく、例示的なペプチド8および15に参照がなされる。
【0041】
理論により拘束および制限されることを意図することなく、N−メチル化がいくつかの方法においてペプチドに影響できることが注目される。第1に、潜在的な水素結合供与体は、水素結合を形成できないメチル基と置換される。第2に、N−メチル基は弱電子供与性であり、これは、それが近隣のカルボニル基の塩基度をわずかに増加できることを意味する。第3に、N−メチル基のサイズは立体的拘束を引き起こすことができる。最後に、N−メチル化は、アミド結合のトランス/シス集団を変更し、かくして、プロリンと同様の方法で局所のペプチド立体構造を変更できる。
【0042】
[Trp(Me)Gly(N−Me)Ala]−Ac−コンプスタチン(配列番号:5;ペプチド15)の活性増加は、従前に最も活性なアナログの[Trp(Me)GlyAla]−Ac−コンプスタチン(配列番号:4;ペプチド14)に比較して注目すべき改善である。GlyのN−メチル化は、境界様β−ターンの強化、局所骨格拘束の増大、Trp7の側鎖に関与する疎水的相互作用の改善により、標的認識および複雑な安定性を改善するようである。
【0043】
特定の具体例において、8位の改変は、13位のThrをIle、Leu、Nle(ノルロイシン)、N−メチルThrまたはN−メチルIleに置換することを含むさらなる改変で補足される。実施例1に言及した例示的なペプチド16、17、18、19、20および21(配列番号:6、7、8、9、10および11)に参照がなされる。再度、理論により制限および拘束されることなく、Thrの疎水性Ileへの置換は有益であることが判明した。Ileの2つの異性体(すなわち、LeuおよびNle)に観察された同様の効果は、その物理化学的および立体的特性が、特定の接触よりも、この改善を担い得ることを示唆する。しかしながら、親和性および活性におけるより区別される改善は、Thr13およびIle13の双方の骨格N−メチル化で観察された。観察された改善が増加した骨格拘束、したがって、結合上のより低い立体構造のエントロピーペナルティー(entropic penalties)に起因し得るが、立体的にまたは分子内の疎水性接触の形成を介してのいずれかで、13位の残基の性質が活性立体構造の形成および安定化にさらに影響することができるそのケースでもある。
【0044】
8位および13位の前記改変は、従前に活性を改善したことが示されたコンプスタチンの他の改変と組み合わせて、かなり改善された補体抑制活性を持つペプチドを生成できる。例えば、N末端のアセチル化は、典型的にはコンプスタチンおよびそのアナログの補体抑制活性を増加させる。結果的に、N−アセチル化に限定されるものではないが、ペプチドのアミノ末端のアシル基の付加は、ペプチドが合成的に調製される場合に特に有用な本発明の1つの好ましい具体例である。しかしながら、原核生物または真核生物の発現系におけるペプチドをコードする核酸分子の発現、またはin vitro転写および翻訳によりペプチドを調製することは時々利点がある。これらの具体例について、自然発生のN末端を利用し得る。
【0045】
もう一つの実施例として、9位のHisに対するAlaの置換がコンプスタチンの活性を改善し、同様に本発明のペプチドの好ましい改変であることは知られている。4位のValに対するTyrの置換の結果、活性における適度の改善を生じることができることがさらに決定された(Klepeisら, 2003, J Am Chem Soc 125:8422-8423)。
【0046】
WO2004/026328およびWO2007/0622249において、Trpおよび4位のあるTrpアナログ、ならびに7位のあるTrpアナログ、特に、9位のAlaと組み合わせたものが、コンプスタチンのものより多数倍の大きな活性を与えることが開示されている。これらの改変を本発明に利点に同様に用いる。
【0047】
特に、4位にて、5−フルオロ−l−トリプトファンまたは5−メトキシ−、5−メチル−もしくは1−メチル−トリプトファン、または1−ホルミル−トリプトファンを含むペプチドは、コンプスタチンよりも31〜264倍大きな活性を所有することが示されている。1−メチルおよび1−ホルミル−トリプトファンが特に好ましい。インドール「N」−媒介水素結合は、コンプスタチンの結合および活性につき4位に必要ではないと考えられる。4位にて水素を低級アルキル、アルカノイルまたはインドール窒素に置換することによる、この水素結合の不存在または極性特性の低下は、コンプスタチンの結合および活性を増強する。いずれかの特定の理論または作用機序に制限することを意図することなく、4位の疎水的相互作用または効力はC3とのコンプスタチンの相互作用を強くすると考えられる。結果的に、4位でのTrpの改変(例えば、当該技術分野においてよく知られた方法による側鎖構造の改変)、または前記の疎水的相互作用を維持または増強するTrpアナログの4位または7位の置換は、本発明において、前記の8位および13位での改変と組み合わせた有利な改変とと考えられる。かかるアナログは当該技術分野においてよく知られ、限定されるものではないが、本明細書に例示されたアナログ、ならびに非置換または別法の置換のその誘導体を含む。適当なアナログの例は、次の刊行物および多数の他のもの:Beene,ら, 2002, Biochemistry 41:10262-10269 (特に、単一または複数のハロゲン化Trpアナログを記載する);Babitzky & Yanofsky, 1995, J. Biol. Chem. 270:12452-12456 (特に、メチル化およびハロゲン化Trpおよび他のTrpおよびインドールアナログを記載する);および米国特許第6,214,790号、第6,169,057号、第5,776,970号、第4,870,097号、第4,576,750号および第4,299,838号への参照により見出し得る。当該技術分野に知られるごとく、Trpアナログはin vitroまたはin vivo発現、またはペプチド合成によりコンプスタチンペプチドに導入し得る。
【0048】
ある具体例において、コンプスタチンの4位のTrpは、前記定義のごとき1−アルキル置換基、より詳しくは、低級アルキル(例えば、C1−C5)置換基を含むアナログで置換される。これらは、限定されるものではないが、N(α)メチルトリプトファン、N(α)ホルミルトリプトファンおよび5−メチルトリプトファンを含む。他の具体例において、コンプスタチンの4位のTrpは、1−アルカノイル置換基、より詳しくは、前記定義の低級アルカノイル(例えばC1−C5)を含むアナログで置換される。例示されたアナログに加えて、これらは、限定されるものではないが、1−アセチル−L−トリプトファンおよびL−β−ホモトリプトファンを含む。
【0049】
WO2007/0622249において、コンプスタチンにおける7位の5−フルオロ−l−トリプトファンの組込みが、野性型コンプスタチンに対し、コンプスタチンとC3との間の相互作用のエンタルピーを増加させたが、コンプスタチンにおける4位の5−フルオロ−トリプトファンの組込みがこの相互作用のエンタルピーを減少させたことが開示された。結果的に、WO2007/0622249に記載された7位のTrpの改変は、前記の8位および13位に対する改変と組み合わせた有用な改変と考えられる。
【0050】
本発明の改変したコンプスタチンペプチドは、従来のペプチド合成方法により、1以上のアミノ酸残基の縮合を介してペプチド合成の種々の合成法により調製し得る。例えば、ペプチドは標準的固相方法により合成され、製造者の指示により、Applied Biosystems Model 431Aペプチド合成機(Applied Biosystems, Foster City, Calif.)で行い得る。固相方法によるかまたは液相中でペプチドまたはペプチドミメティックを合成する他の方法は、当業者によく知られている。ペプチド合成の経過中に、分岐鎖のアミノ基およびカルボキシル基は、一般的に知られた保護基を用いて、必要に応じて保護/脱保護し得る。適切なペプチド合成法の一例は、実施例1に記載されている。ペプチドおよびペプチド誘導体についての別法の保護基を利用する改変は、当該技術分野に明白であろう。
【0051】
別法として、本発明のあるペプチドは、適切な原核生物または真核生物系における発現により生成し得る。例えば、DNA構築体は、細菌細胞(例えば、大腸菌)または酵母菌(例えば、Saccharomyces cerevisiae)中の発現に適したプラスミドベクターに、または昆虫細胞中の発現用バキュロウイルス・ベクターに、または哺乳動物細胞中の発現用のウイルスベクターに挿入し得る。かかるベクターは、宿主細胞中のDNAの発現を可能とする方法で配置された、宿主細胞中のDNAの発現に必要な調節要素を含む。発現に必要なかかる調節要素は、プロモーター配列、転写開始配列および所望によりエンハンサー配列を含む。
【0052】
また、ペプチドは、in vitroまたはin vivoにて核酸分子の発現により生成できる。コンカテマーの上限が利用される発現系に依存する、ペプチドのコンカテマーをコードするDNA構築体は、in vivo発現系に導入し得る。コンカテマーが生成された後、C末端Asnおよび次のN末端G間の切断は、ヒドラジンへのポリペプチドの曝露により達成される。
【0053】
組換え原核生物または真核生物系における遺伝子発現により生成されたペプチドは、当該技術分野において知られた方法により精製し得る。また、遺伝子発現および合成法の組合せは、コンプスタチンアナログを生成するために利用し得る。例えば、アナログは遺伝子発現により生成し、その後、1以上の翻訳後合成プロセスに付して、例えば、NまたはC末端を改変できるか、または分子を環化できる。
【0054】
有利には、非天然のアミノ酸、例えば、メチル化アミノ酸を組み込むペプチドは、適切な原核生物または真核生物系においてin vivoにより生成し得る。例えば、大腸菌栄養素要求体中の発現を介して非天然のTrpアナログをコンプスタチンに導入するための、KatragaddaおよびLambris (2006, Protein Expression and Purification 47:289-295)により記載されたもののごとき方法を利用して、コンプスタチンの選択された位置にてN−メチル化または他の非天然のアミノ酸を導入し得る。
【0055】
コンプスタチンの構造は当該技術分野において知られ、前記アナログの構造は同様の手段により決定される。一旦短いペプチドの特定の所望の立体構造が確認されたならば、その立体構造に適合するペプチドまたはペプチドミメティックを設計する方法は、当該技術分野においてよく知られている。本発明に特に関連するペプチドアナログの設計は、前記のごとき(すなわち、官能基の効果または立体的考察のために)、アミノ酸残基の種々の側鎖の寄与を考慮することによりさらに洗練し得る。
【0056】
ペプチドミメティックが、C3に結合し補体活性化の抑制に必要な特定の骨格立体構造および側鎖機能性を提供する目的で、ペプチドとして同様によく機能し得ることは当業者により理解されるであろう。結果的に、適切な骨格立体構造を形成するように連結できる天然発生アミノ酸、アミノ酸誘導体、アナログまたは非アミノ酸分子の使用を介してC3結合の補体抑制化合物を生成することは、本発明の範囲内にあると考えられる。非ペプチドアナログ、またはペプチドおよび非ペプチド成分を含むアナログは、本明細書において、本発明のペプチドの置換または誘導を指定するために時々「ペプチドミメティック」、「等立体的(isosteric)ミメティック」といい、それは補体活性化を抑制する例示されたペプチドと十分に類似するような同一の骨格立体構造特徴および/または他の機能性を所有する。
【0057】
高親和性ペプチドアナログの開発のためのペプチドミメティックの使用は、当該技術分野においてよく知られている(例えば、 Vagnerら, 2008, Curr. Opin. Chem. Biol. 12:292-296;Robinsonら, 2008, Drug Disc. Today 13:944-951参照)。ペプチド内のアミノ酸残基のものに類似する回転拘束を仮定すると、当該技術分野においてよく知られたいずれかの種類の計算技術により、非アミノ酸部分を含むアナログを分析でき、それらの立体構造モチーフを確認できる。
【0058】
本発明の改変したコンプスタチンペプチドは、ペプチドへのポリエチレングリコール(PEG)成分の付加により改変できる。当該技術分野においてよく知られているように、PEG化は、in vivoでの治療用ペプチドおよびタンパク質の半減期を増加できる。1つの具体例において、PEGは、約1,000〜約50,000の平均分子量を有する。もう一つの具体例において、PEGは、約1,000〜約20,000の平均分子量を有する。もう一つの具体例において、PEGは、約1,000〜約10,000の平均分子量を有する。例示的な具体例において、PEGは、約5,000の平均分子量を有する。ポリエチレングリコールは、分岐鎖または直鎖、好ましくは直鎖であり得る。
【0059】
本発明のコンプスタチンアナログは、連結基によりPEGに共有結合できる。かかる方法は当該技術分野においてよく知られている。(Kozlowski A.ら 2001, BioDrugs 15:419-29に概説され;また、 Harris JMおよびZalipsky S, eds. Poly(ethylene glycol), Chemistry and Biological Applications, ACS Symposium Series 680 (1997)参照)。受入れ可能な連結基の非限定例は、エステル基、アミド基、イミド基、カルバマート基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、炭水化物、スクシンイミド基(限定なくして、コハク酸スクシンイミジル(SS)、プロピオン酸スクシンイミジル(SPA)、スクシンイミジルカルボキシメチレート(SCM)、スクシンイミジルスクシンアミド(SSA)およびN−ヒドロキシルスクシンイミド(NHS)を含む)、エポキシド基、オキシカルボニルイミダゾール基(限定なくして、カルボニルジイミダゾール(CDI)を含む)、ニトロフェニル基(限定なくして、ニトロフェニルカーボネート(NPC)またはトリクロロフェニルカーボネート(TPC)を含む)、トリシレート基、アルデヒド基、イソシアネート基、ビニルスルホン基、チロシン基、システイン基、ヒスチジン基または第一級アミンを含む。ある具体例において、連結基はスクシンイミド基である。1つの具体例において、連結基はNHSである。
【0060】
本発明のコンプスタチンアナログは、別法として、アミノ基、スルフィド(sulfhydral)基、ヒドロキシル基またはカルボキシル基を介してPEG(すなわち、連結基なし)に直接的に結合できる。1つの具体例において、PEGは、コンプスタチンのC末端に付加されたリジン残基に結合される。
【0061】
また、PEG化の別法として、ペプチドのin vivoクリアランスは、ペプチドをある種の他の分子またはペプチドに連結することにより低減できる。例えば、静脈内ボーラスによりウサギに注入した場合、あるアルブミン結合ペプチドは、2.3hの非常に長い半減期を示す (Dennisら, 2002, J Biol Chem. 277:35035-35043)。このタイプのペプチドは、D3H44の抗組織因子Fabに融合し、組織因子を結合するFabの能力を保持しつつ、そのFabがアルブミンを結合することを可能にした (Nguyenら, 2006, Protein Eng Des Sel. 19:291-297)。アルブミンとのこの相互作用の結果、野生型のD3H44Fabと比較した場合、マウスおよびウサギにおいてin vivoクリアランスをかなり低減し、半減期を延長し、PEG化Fab分子、イムノアドヘシンおよびアルブミン融合につき見られたものに匹敵した。WO2007/062249は、アルブミン結合ペプチド(ABP)と融合したコンプスタチンアナログを記載し、融合タンパク質が補体活性化の抑制に活性であるということを報告する。しかしながら、その合成は長く、融合生成物の収率は所望のものより低かった。本明細書の実施例2は、ABPならびにアルブミン結合低分子(ABM)を利用し、所望により成分間のスペーサーを使用する改善された合成戦略を記載する。それらの手順の結果、補体活性化を抑制ができるABP−およびABM−コンプスタチンアナログのコンジュゲートを生成し、また、延長されたin vivo生存を示す。実際に、ABPは、その抑制活性をかなりには損なうことなく、コンプスタチンアナログの半減期を21倍改善できた。かくして、かかるコンジュゲートは、注入なくして、抑制物質の全身投与を可能にする。
【0062】
コンプスタチンアナログ、ペプチドミメティックおよびコンジュゲートの補体活性化抑制活性は、当該技術分野に知られた種々のアッセイにより試験し得る。1つの具体例において、実施例1に記載されたアッセイは利用される。他のアッセイの非網羅的なリストは、米国特許第6,319,897号、WO99/13899、WO2004/026328およびWO2007/062249に記載され、それらは、限定されるものではないが、(1)C3およびC3断片へのペプチド結合、(2)種々の溶血のアッセイ;(3)C3のC3転化酵素媒介切断の測定;および(4)D因子によるB因子切断の測定を含む。
【0063】
当該技術分野において知られるごとく、本明細書に記載したペプチドおよびペプチドミメティックは、コンプスタチン自体が利用されるいずれかの目的のための実際に有用なものである。かかる使用は、限定されるものではないが、(1)患者(ヒトまたは動物)の血清、組織または器官中の補体活性化の抑制、これは、限定されるものではないが、加齢黄斑変性症、慢性関節リウマチ、脊髄損傷、パーキンソン病、アルツハイマー病、癌、および喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー性炎、気腫、気管支炎、気管支拡張症、嚢胞性線維症、結核、肺炎、呼吸促迫症候群(RDS−新生児および成人)、鼻炎および副鼻腔炎のごとき呼吸器疾患を含めたある種の疾患または状態の治療を促進できる;(2)細胞または器官移植中に、または人工臓器または組織片の使用において生じる補体活性化の抑制(例えば、本発明のペプチドで細胞、器官、人工臓器または移植片を覆うかまたは処理することによる);(3)生理液(血液、尿)の体外シャンティング中に生じる補体活性化の抑制(例えば、生理液が本発明のペプチドでシャントされる管を覆うことによる);および(4)コンプスタチン活性化の他の抑制物質を同定する低分子ライブラリーのスクリーニング(例えば、C3またはC3断片と結合するコンプスタチンアナログと競合する試験化合物の能力を測定するように設計された液相または固相の高処理アッセイ)を含む。
【0064】
前記の1以上の有用性を実施するために、本発明のもう一つの態様は、本明細書に記載または例示されたコンプスタチンアナログまたはコンジュゲートを含む医薬組成物を要旨とする。かかる医薬組成物は、対象への投与に適した形態で、単独で有効成分よりなり得るか、または医薬組成物は、その有効成分および1以上の医薬上許容される担体、1以上のさらなる成分またはこれらのいくらかの組合せを含み得る。有効成分は、当該技術分野においてよく知られるごとく、例えば、生理学的に許容できるカチオンまたはアニオンと組み合わせて、生理学的に許容できるエステルまたは塩の形態で医薬組成物中に存在し得る。
【0065】
医薬組成物の処方は、薬理学の技術分野において知られたかまたはその後に開発されたいずれの方法によっても調製し得る。一般的に、かかる調製方法は、有効成分を担体または1以上の他の副成分と関連させ、次いで、必要または所望ならば、製品を所望の単一または複数投与単位に成形または包装する工程を含む。
【0066】
本明細書に用いた「医薬上許容される担体」なる用語は、補体抑制物質を組み合せでき、組合せ後に、それを用いて、哺乳動物にその補体抑制物質を投与できる化学組成物を意味する。
【0067】
以下の実施例は、本発明をより詳細に記載するために提供される。それらは、発明を例示することを意図し、発明を限定することを意図しない。
【0068】
実施例1
モノ−Nα−メチル化スキャンを[TyrAla]−Ac−コンプスタチン(Ac−Ic[CVYQDWGAHRC]T−NH;配列番号:3)に対して行った。これらのアナログのアッセイ結果に基づいて、13位の選択的なN−メチル化および置換を[Trp(Me)Ala]−Ac−コンプスタチン(Ac−Ic[CV(1−MeW)QDWGAHRC]T−NH;配列番号:4)に行った。選択したアナログは、表面プラズモン共鳴(SPR)および等温滴定熱量測定(ITC)を用いて、さらに特徴付けした。また、分子動態(MD)シミュレーションを行い、親和性の増加の観察のための可能な機序を調べた。
【0069】
材料および方法:
略語. Ac、アセチル基;Acm、アセトアミドメチル;Boc、tert−ブトキシカルボニル;CHARMM、Chemistry at Harvard Macromolecular Mechanics;DCM、ジクロロメタン;DIC、1,3−ジイソプロピルカルボジイミド;DIPEA、N,N−ジイソプロピルエチルアミン;DMF、N,N−ジメチル−ホルムアミド;ELISA、酵素結合免疫吸着定量法;ESI、エレクトロスプレーイオン化;Fmoc、9−フルオレニルメトシキカルボニル;HOAt、1−ヒドロキシ−7−アザ−ベンゾトリアゾール;ITC、等温滴定熱量測定;MALDI、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法;MBHA、4−メチルベンズ−ヒドリルアミン;MOE、分子操作環境;NAMD、ナノスケール分子動力学;Nle、L−ノルロイシン;NMP、N−メチルピロリジノン;RMSD、平均二乗偏差;SPR、表面プラズモン共鳴;TIPS、トリイソプロピルシラン;Trt、トリチル。
【0070】
化学薬品. 低負荷リンクアミドMBHA樹脂および以下のFmocアミノ酸:Ile、Cys(Acm)、Val、Tyr(tBu)、Gln(Trt)、Asp(OtBu)、Trp(Boc)、Gly、Sar、Ala、MeAla、His(Trt)、Arg(Pmc)、MeIle、Nle、PheおよびThr(tBu)をNovabiochem (San Diego, CA)から得た。 DICおよびFmoc−Trp(Me)−OHをAnaSpec (San Jose, CA)から購入した。HOAtはAdvanced ChemTech (Louisville, KY)から購入した。NMPおよびDCMは、Fisher Scientific (Pittsburgh, PA)から得た。合成用の他のすべての化学試薬はSigma-Aldrich (St. Louis, MO)から購入し、さらなる精製なくして用いた。
【0071】
ペプチド合成および精製. すべてのペプチドは、カップリング試薬としてDICおよびHOAtを用いて、Fmoc固相法によりマニュアルにて合成した。N−メチル化アミノ酸が商業的に入手可能ではなかった場合、Nα−メチル化は、Bironら (2006, J Peptide Sci 12:213-219)により報告された、最適化された方法を用いることにより行った。下記手順を直鎖ペプチドの合成に用いた:リンクアミドMBHA樹脂(294mg、0.34mmol/g)を、底部のフリットを持つ10mL HSWポリプロピレン製シリンジ(Torviq, Niles, MI)に入れ、30分間DCM(5mL)中で膨潤させた。Fmoc保護基(NMP中の25%ピペリジン、5mL、5および10分間)の除去後、樹脂をNMP(洗浄当たり5mL)およびDCM(洗浄当たり5mL)で4回洗浄し、個々のアミノ酸を樹脂にカップリングさせた。各カップリングについて、3当量(3mmol)のアミノ酸、HOAtおよびDICを用いて、NMP中で10分間前活性化した。すべてのカップリングを1時間行い、カイザー試験またはクロラニル試験のいずれかによりモニターした。陽性のテスト結果の場合には、陰性のテスト結果が観察されるまで、カップリングを繰り返した。
【0072】
N末端アミノ基は、5mLのDCM中の20当量の無水酢酸および2当量のDIPEAで30分間アセチル化した。Cyc(Acm)残基を含む直鎖ペプチドは、DMF/アニソール(19:1)の酢酸タリウムを用いて、周囲温度で3時間樹脂上で環化した。樹脂は、DMF、DCMおよびDCM/ジエチルエーテル(1:1)(洗浄当たり各5mL)で4回洗浄し、4時間真空下で乾燥させた。ペプチドは、3時間95%のTFA、2.5%の水および2.5%のTIPSの混合物で樹脂から切断した。真空下のTFAの蒸発後、ペプチドを沈殿させ、洗浄当たり30mLの冷エチルエーテルで3回洗浄した。液体を遠心分離により固体から分離し、デカントした。粗製ペプチドを空気乾燥し、アセトニトリルおよび水(1:3)に溶解した後、分取用RP−HPLC(Vydac C18 218TP152022 column, Western Analytical Products, Murrieta, CA)により精製し、15mL/分間の流速にて35分間にわたり0.1%TFA水溶液中の15〜50%アセトニトリルの直線濃度勾配で溶出させた。所望の生成物を含む画分を集め、濃縮し、凍結乾燥した。精製したペプチドを10〜15%の全収率で単離し、分析用RP−HPLC(Phenomenex 00G-4041-E0 Luna 5μ C18 100A column, 250x4.60 mm;Phenomenex, Torrance, CA)により決定した>95%純粋であった。各ペプチドの質量は、ThermoQuest Finnigan LCQ DuoおよびWaters MALDI micro MX instrumentsを用いて確認した。
【0073】
C3の精製. C3は、ペンシルバニア大学病院の血液銀行から得た新鮮なヒト血漿から精製した。略言すると、血漿は、15%(w/v)PEG 3350で分画し、ペレットをpH7.8の20mMリン酸塩緩衝液中で再懸濁し、次いで、同じ緩衝液でDEAE−HR 40カラム(50×5cm;Millipore Inc., Billerica, MA)上の陰イオン交換クロマトグラフィーに付した。タンパク質を500mM NaClを含有するpH7.8の20mMリン酸塩緩衝液の6Lの直線濃度勾配(15〜70%)で溶出した。C3は、サイズ排除Superdex 200 26/60 column (Amersham Biosciences) およびMono S column (Amersham Biosciences)でさらに精製して、C3(HO)からC3を分離した。
【0074】
補体活性化の抑制. 補体の古典経路の活性化を抑制するコンプスタチンアナログの能力をELISA(Mallikら, 2005, J Med Chem 48:274-86)により評価した。略言すれば、補体は、コンプスタチンアナログの存在または不存在下で抗原抗体複合体を用いて、ヒト血清中で活性化し、プレート表面上のC3断片の沈着物をHRP−コンジュゲートしたポリクローナル抗C3抗体を用いて検出した。405nmで得られた吸光度データは、100%の補体活性化に対応する吸光度に基づいて、%抑制に翻訳した。パーセント抑制は、ペプチド濃度に対してプロットし、得られたデータセットは、Origin 7.0ソフトウェアを用いて、ロジスティックス用量反応関数に適合させた。IC50値は、最低χ値を生成した適合パラメーターから得た。各アナログは少なくとも3〜7回アッセイした。標準偏差は、すべて平均値の30%以内にあった。
【0075】
ITC分析. すべてのITC実験は、シリンジ中の1.8〜5μM C3のタンパク質濃度および個々のコンプスタチンアナログの40〜100μMのペプチド濃度を用いて、Microcal VP-ITC 熱量計(Microcal Inc., Northampton, MA)で行った。すべての滴定は、2〜7μLの複数の各ペプチド注入を用いて、25℃のPBS(pH7.4の150mM NaClを含む10mMリン酸塩緩衝液)中で行った。未処理の等温線は緩衝液へのペプチド注入を表わす等温線を引くことにより、希釈熱につき補正した。得られた等温線は、Origin 7.0ソフトウェアを用いて、部位モデルの単一部位に適合し、最低のχ値を生成したモデルはそれぞれのデータセットに適切であると考えられた。ギブズの自由エネルギーは、ΔG=ΔH−TΔSとして計算した。各実験を少なくとも2回繰り返した。誤差は平均値の20%以内であった。
【0076】
SPR分析. 前記のごとく、C3bおよび各コンプスタチンアナログ間の相互作用の動力学は、泳動緩衝液としてPBS−T(10mMリン酸ナトリウム、150mM NaCl、0.005%Tween−20、pH7.4)を用いて、25℃にてBiacore 3000 instrument (GE Healthcare Corp., Piscataway, NJ)でSPRにより分析した。略言すると、ビオチン化C3b(30μg/mL)を、ストレプトアビジンを被覆したセンサーチップに固定化し、各アナログの二倍系列希釈系(1μM〜500pM)を5〜10分の解離相で30μl/分間にて2分間注入した。ペプチド[Trp(Me)]−Ac−コンプスタチンは内部の対照および基準として各実験系に含ませた。データ分析は、Scrubber (BioLogic Software, Campbell, Australia)を用いて行った。未処理フローセルおよび緩衝ブランク注入のアンサンブルからのシグナルを引いて、緩衝効果および注入アーティファクトにつき補正した。処理したバイオセンサーデータは、1:1ラングミュア結合モデルに全体的に適合し、平衡解離定数(K)は式K=k/kから計算した。ペプチド溶液は、すべての実験に2連にて注入し、各スクリーニングアッセイは少なくとも2回行った。kおよびkの誤差は平均値の10%以内にあった。
【0077】
分子動態シミュレーション. すべてのMDシミュレーションは、CHARMM27力場を用いて、プログラムNAMD(Phillips,ら, 2005, J. Comput. Chem. 26:1781-1802)で行った。自由なコンプスタチンアナログについて、NMR構造 (Morikis & Lambris, 2002, Biochem. Soc. Trans. 30:1026-1036) (PDBコード:1A1P)を採用して、出発構造を構築した。点変異は、プログラムMolecular Operating Environment (MOE, Chemical Computing Group, 2005)で導入した。コンプスタチンアナログの変異した残基は、CHARMM27 (MacKerellら, 1998, J. Phys. Chem. B 102:3586-3616) パラメーターセットを含むCHARMM(Brooks ら, 1983, J. Comput. Chem. 4:187-217)バージョンc33b1を用いて最小化し、一方、調和拘束を骨格原子に配置した。結晶構造から欠けている補体C3cの残基をホモロジーモデリングを用いて加え、またCHARMMを用いて最小化した。
【0078】
PDBファイル中の結晶学的水分子を維持し、構造はTIP3P (Jorgensenら, 1983, J. Chem. Phys. 79:926-935)水分子の立方体周期的なボックス中で溶媒和した。水シミュレーションボックスの縁と、溶質の最接近している原子との間の距離は、少なくとも10Åであった。次いで、系の電気的中性を維持するためにナトリウムおよび塩素対イオンをVMDプログラム(Humphreyら, 1996, J. Mol. Graphics 14:33-38, 27-28)を用いて加えた。
【0079】
系は、連続3ステップでまず最小化し、その間に、タンパク質を最初に固定しままとし、水分子を10,000コンジュゲート勾配ステップに向けて移動することを可能とし;次に、タンパク質骨格だけを100,000ステップの間固定したままとし;最後に、すべての原子をさらなる10,000ステップの間移動するのを可能とした。粒子メッシュエワルド法(Dardenら, 1993, J. Chem. Phys. 98:10089-10092)を用いて、Å当たり約1点のグリッドで周期的境界条件における長距離の静電的相互作用を処理した。非結合ファンデルワールス相互作用を9Å〜12Åの間で3Åを超えて滑らかに切り替えた。水素原子への結合に関与する結合長は、SHAKE(Ryckaertら, 1977, J. Comput. Phys. 23:327-341)を用いることにより拘束した。すべてのMDシミュレーション用の時間ステップは、2fsであった。Nose-Hoover Langevinピストン(Fellerら, 1995, J. Chem. Phys. 103:4613-4621;Martynaら, 1994, J. Chem. Phys. 101:4177-4189)を圧力制御のために用い、ピストン期間を200fs、ピストン遅延を100fsにセットした。100ピコセカンドのMDシミュレーションを一定体積で行い、その間に、系を30Kの増加で310Kまで加熱し;引き続いての等温等圧MDシミュレーションを20nsおよび5ns間に用いて、各々、自由なコンプスタチンアナログおよび複合体についてのすべての溶質原子に対する拘束のない溶媒密度を調節した。最後に、最低のエネルギー構造をMD平衡軌道ファイルから得、引き続いて、構造およびエントロピー寄与度分析に用いた。
【0080】
結果:
補体活性化の抑制. 骨格N−メチル化スキャンを[TyrAla]−Ac−コンプスタチンテンプレート(ペプチド1;配列番号:3)に行い、アナログ2〜13(表1−1)を生成した。ペプチド1は現在のリード化合物[Trp(Me) Ala]−Ac−コンプスタチン(ペプチド14、配列番号:4)より強力ではなかったが、それは、低コストの合成のために最初のスキャンのために選定した。次いで、補体の活性化を抑制する各ペプチドの能力は、ELISAにより評価し、ペプチド1の活性と比較した(表1−1)。最もネガティブな効果は、Val、TyrおよびAlaのN−メチル化につき観察し、それはペプチド3、4および9を完全に不活性にした。対照的に、GlyおよびThr13のN−メチル化は、わずかに増加した効力(各々、1.7倍および1.3倍)を持つペプチド8および13を生成した。他のすべての位置のN−メチル化の結果、検知可能だが、まだかなり低減した抑制活性を生じた(表1−1)。
【0081】
【表2】

【0082】
次いで、本発明者らは、N−メチル化スキャンからの知見を現在の強力なアナログのAc−I[CV(1−MeW)QDWGAHRC]T−NH(配列番号:4;本明細書において[Trp(Me)Ala]−Ac−コンプスタチン(ペプチド14)ともいう)に適用し、8位および13位での選択的なN−メチル化およびアミノ酸置換を持つアナログを合成した(ペプチド15〜23;表1−2)。従来の研究が8位の側鎖を置換するための制限を示した(Morikisら, 1998, Protein Sci. 7:619-627;Furlongら, 2000, Immunopharmacology 48:199-212)ので、改変をN−メチル化の不存在(Gly)または存在(NMeGly、すなわち、Sar)に制限した。対照的に、従前の研究は、C末端13位が置換につきより多くの柔軟性を可能とすることを示し、Thrに対するIleについての優先をさらに示唆した(Morikis & Lambris, 2002, Biochem. Soc. Trans. 30:1026-1036)。したがって、本発明者らは、さらに13位の重要性を調べ、この位置に種々のN−メチル化残基、疎水性残基または芳香族残基を含めるように一連のSarアナログを設計した。N−メチル化スキャンからの結果と一致して、8位(Sar8;ペプチド15)での単一のN−メチル基の導入は、抑制効力を1.3倍増加させた(表1−3)。加えて、13位のIleによるThrの置換は、GlyおよびSarの双方のペプチドにつきかなりの増加に導いた。しかしながら、LeuまたはNleによるIleの置換およびHisまたはPheの導入のいずれも、Ile13アナログ上のいずれの改善も生成しなかった。対照的に、Thr13およびIle13の双方のN−メチル化の結果、抑制活性をかなり増加させ(各々、IC50=86および62nM)、これまで記載した最も強力なコンプスタチンアナログを生成した。
【0083】
【表3】

【0084】
結合動力学の特徴付け. C3bについての動力学のプロフィールおよび結合能に対する個々の置換の効果を評価するために、ペプチド15〜21をSPRによりさらに特徴付けした(表1−2)。一般的には、相対的なK値は、ELISA結果と良好な整合性を示した(R=0.79;表1−3)。GlyのN−メチル化(ペプチド14から15、16から17)は結合動力学および親和性を明確に改善し、双方の動力学速度定数に対してかなりの効果を有した。対照的に、ThrからIleへの置換(ペプチド、14から16、15から17)は、SPRプロフィールにわずかだけだが、さらに依然として有益な影響を有した。再度、双方の置換(ペプチド17)の組合せは相乗効果を有し、SarおよびIle13の単独の改変の影響(各々、2.2倍および1.1倍)と比較して、ペプチド14より2.7倍強い親和性を有した。13位の置換は、単独で、解離速度(k=3.4〜7.2×10−3−1)に主として影響するようであり;会合速度は、すべてのSarアナログにつき本質的に一定のままであった(k=1.3〜1.7×10−1−1)。この系において、Thr13(ペプチド20)およびIle13(ペプチド21)のN−メチル化は、再度、解離速度に最も強い影響を有し、アナログ21に最強の結合物質とさせ、ペプチド14の親和性を5倍を超えて増加させた。Ile13の評価した異性体(Leu、Nle;ペプチド18および19)は、動力学のプロフィールおよび親和性に無視できる影響を有し、この骨格につき共通の結合様式を示した。
【0085】
結合熱力学の特徴付け. ITC実験は、親和性および効力に対して観察した効果をそれらの熱力学的プロフィールと関連させるために、ペプチド15〜17および20〜21につき行った(表1−2および1−3)。ITC中の絶対的K値は、SPRからのものよりわずかに高い傾向があったが、それらはELISAおよびSPRの結果と高度に相関した(各々、R=0.89および0.96)。従前のリード化合物(ペプチド14)の高度に有益なエンタルピー値(ΔH=−17.6kcal/mol)は、新しく設計したアナログのいずれによっても超えられなかった。対照的に、ペプチド14(−TΔS=6.9kcal/mol)と比較した場合、全パネルは、エントロピー値をかなり改善した(−TΔS=0.6〜5.7kcal/mol)。
【0086】
【表4】

【0087】
ペプチド15(SarThr13;−TΔS=0.6kcal/mol)は、すべての報告されたコンプスタチンアナログの最低のエントロピーペナルティーを示した。しかしながら、大多数のこの大きなエントロピー獲得は、好ましいエンタルピー(ΔΔH=5.9kcal/mol)の損失により相殺された。同様の傾向は全パネルに観察し、エンタルピー−エントロピー補償の影響を示した。ペプチド17でのごときThr13についてのIle13のさらなる置換は、ペプチド15におけるエントロピー獲得(−TΔS=2.9kcal/mol)のいくらかを与えつつ、損失したエンタルピー(ΔH=−14.1kcal/mol)のいくらかを再捕捉した。ペプチド20〜21でのように13位のN−メチル化は、ペプチド14のそれにさらに近いそれらのエンタルピーをもたらした。全体として、これらのペプチド用の結合能の増加は、主としてエントロピーペナルティーの低下により達成されるようであった。さらに、ITCデータは、それが、ペプチド17の親和性の大きな増加に大部分は寄与したIle13置換ではなく、Sarであったことを示すSPR結果を確認した。
【0088】
MDシミュレーション. アナログの熱力学的プロフィールにおける小ペプチド改変さえの大きな影響は、C3cとのコンプスタチンのNMR構造および[Trp]−Ac−コンプスタチンの結晶構造に基づいたMDシミュレーションを用いて、さらに調べた(Morikisら, 1998,前記;Janssenら, 2007, J. Biol. Chem. 282:29241-29247)。8位でのN−メチル化の場合(ペプチド17)において、本発明者らは、この改変が、メチル化Gly窒素に直接的に連結し、タイトポケット(tight pocket)を占める非常に重要な残基Trpの側鎖に影響したと考えた。したがって、MDシミュレーションはペプチド14および17のTrp結合ポケット中の水分子の分布を比較するために行った。本発明者らは、4つの水分子をペプチド14につき観察できたが、ペプチド17でのシミュレーションを繰り返した後に、いずれも見出されないことが分かった。この結果は、8位のN−メチル化がTrpの側鎖が、C3c結合ポケットに良好に適合するのを可能とする。
【0089】
溶液ベースおよびタンパク質結合構造間の先の比較は、重要なβ−ターンにおけるシフトを含むかなりの立体構造再配列を明らかにした(Janssenら, 2007,前記)。N−メチル化がペプチド骨格の局所立体構造に影響することが報告されているので、本発明者らは、C3cの不存在および存在下でペプチド14および17につきMDシミュレーションを行ない、次いで、自由および結合したペプチドの得られた最低エネルギー配座異性体を比較した(Chatterjeeら, 2008, Acc. Chem. Res. 41:1331-1342)。結果は、β−ターンを包含する残基5〜8を開き、新たなターンを双方のペプチドの自由構造中の残基8および11間で形成したことを示した。また、そのβ−ターンは、結合構造中のもので覆われた。しかしながら、2.9Åの距離を持つTrpおよびArg11間の分子内水素結合はペプチド17のケースにおいてのみ形成され、恐らく自由な17の立体構造を拘束し、それをより強固にするようであった。
【0090】
実施例2
この実施例は、以下に示すアルブミン結合ペプチド(ABP)またはアルブミン結合低分子(ABM)にコンジュゲートした、コンプスタチンアナログ(実施例1に記載したペプチド17:Ac−Ilec[Cys−Val−Trp(Me)−Gln−Asp−Trp−Sar−Ala−His−Arg−Cys]−Ile−NH;配列番号:7)の合成の改善および血漿中半減期決定を記載する。
【0091】
ABP: Ac-RLIEDICLPRWGCLWEDD-NH2 (C-Cジスルフィド結合) (配列番号:14)
【0092】
【化1】

【0093】
2つのミニ−PEG-3分子をスペーサーとして用い、ペプチド17のC末端にカップリングした。
【0094】
【化2】

【0095】
比較については、コンジュゲートしていないペプチド17の血漿中半減期も決定した。
【0096】
材料および方法:
略語. Ac、アセチル;Acm、アセトアミドメチル;Acm、アセトアミドメチル;DCM、ジクロロメタン;DIC、1,3−ジイソプロピルカルボジイミド;
DIPEA、N,N−ジイソプロピルエチルアミン;DMF、N,N−ジメチル−ホルムアミド;ELISA、酵素結合免疫吸着定量法;ESI、エレクトロスプレーイオン化;Fmoc、9−フルオレニルメトシキカルボニル;HLB、親水性−親油性バランス;HOAt、1−ヒドロキシ−7−アザ−ベンゾトリアゾール;HSW、Henke Sass Wolf;ITC、等温滴定熱量測定;MALDI、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法;MBHA、4−メチルベンズ−ヒドリルアミン;Mmt、モノメトキシトリチル;ナノESI、ナノエレクトロスプレーイオン化;NMP、N−メチルピロリジノン;PyBOP、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート;SPR、表面プラズモン共鳴;TBTA、トリス−(ベンジルトリアゾリルメチル)アミン;TEA、トリエチルアミン;TFA、トリフルオロ酢酸;TIP、トリイソプロピルシラン;Trt、トリチル。
【0097】
材料.
DICおよびFmoc−Trp(Me)−OHは、AnaSpec (San Jose, CA)から購入した。低負荷NovaSyn(登録)TGR樹脂および他のFmocアミノ酸は、Novabiochem (San Diego, CA)から得た。ミニ−PEGおよびミニ−PEG−3はPeptide International (Louisville, Kentucky)から購入した。HOAtはAdvanced ChemTech (Louisville, KY)から購入した。ABMはEnamine Ltd. (Kiev, Ukraine)から得た。NMPおよびDCMはFisher Scientific (Pittsburgh, PA)から得た。水はMilli-Q水浄化システム(Millipore Corporate, Billerica, MA)を用いて精製した。合成用の他のすべての化学試薬はSigma-Aldrich (St. Louis, MO)から購入し、さらなる精製なくして用いた。
【0098】
直鎖ペプチド(ペプチド17のミニ−(PEG−3)−Lys(Mmt)−NHおよびABP)の合成. すべてのペプチドは、カップリング試薬としてDICおよびHOAtを用いて、Fmoc固相法によりマニュアルにて合成した。略言すると、樹脂(294mg、0.34mmol/g)を、底部にフリットを持つ10mL HSWポリプロピレン製シリンジ(Torviq, Niles, MI)に入れ、30分間DCM(5mL)中で膨潤させた。Fmoc保護基(NMP中の25%ピペリジン、5mL、5および10分間)の除去後、樹脂をNMP(洗浄当たり5mL)およびDCM(洗浄当たり5mL)で4回洗浄し、個々のアミノ酸を樹脂にカップリングさせた。各カップリングについて、3当量(3mmol)のアミノ酸、HOAtおよびDICを用いて、NMP中で10分間前活性化した。すべてのカップリングを1時間行い、カイザー試験またはクロラニル試験のいずれかによりモニターした。必要ならば、N末端アミノ酸は、5mLのDCM中の20当量の無水酢酸および2当量のDIPEAで30分間アセチル化した。
【0099】
ペプチドの環化、改変および切断. Cyc(Acm)残基を含む直鎖ペプチドは、周囲温度にて3時間DMF/アニソール(19:1)中の1.2当量のタリウムトリフルオロアセテートを用いて樹脂上で環化した。アジドペプチド17を合成するために、ペプチド17誘導体のC末端Lysの側鎖Mmt保護基を5%のTIPS含むDCM中で1% TFAを用いて除去した。次いで、2−アジド酢酸をNMP中のPyBOP/HOAt/DIPEAを用いて、側鎖にカップリングした。ペプチド17−ABMは同様の方法で合成した。アルキン−ABPを合成するために、プロピオル酸はNMP/DCM(1:1)中のDIC/HOAtを用いて、ABPのN末端にカップリングした。樹脂は、DCM、DCM/ジエチルエーテル(1:1)でよく洗浄し、4時間高真空下で乾燥させた後、ペプチドを95%TFA、2.5%水および2.5%TIPSの混合物で2時間切断した。真空下のTFAの蒸発後、ペプチドを沈殿させ、1洗浄当たり30mLの冷エチルエーテルを用いて、3回洗浄した。液体は遠心分離により固体から分離し、デカントした。粗製ペプチドは空気乾燥し、HPLC精製用のアセトニトリルおよび水(1:3)中の0.1%TFAに溶解した。
【0100】
ペプチド17−ABPの合成のための銅(I)媒介アジドアルキンヒュスゲン環化付加. 50mg(22μmol)の精製したアジドおよびアルキンペプチドの各々を5mLのt−BuOH/HO(2:1)に溶解した。10当量(220μmol)のTEAを添加して、溶液を塩基性にした。次いで、5%(1.1μmol)のCuSO、25%のアスコルビン酸ナトリウムおよび1%のTBTAをその混合物に添加した。混合物は一晩撹拌し、HPLC−MSによりモニターした。次いで、それを真空下で濃縮し、逆相HPLCにより精製した。
【0101】
ペプチド精製.
ペプチドは、分取用RP−HPLCカラム(Xbridge(商標)BEH130 Prep C18 5um 19x150mm, PN# 186003945, Waters, Milford, MA)に注入し、20mL/分間の流量にて15分間にわたり0.1%TFA中の15〜50%のアセトニトリルの直線濃度勾配で溶出させた。所望の生成物を含む画分を質量に基づいて集め、凍結乾燥した。分析用RP−HPLC(Xbridge(商標)BEH130 C18 5um, 4.6x150mm, PN# 186003580, Waters, Milford, MA)により決定した>95%純粋であった。各ペプチドの質量はWaters MALDIマイクロMX装置または SYNAPT HDMSを用いて確認した。
【0102】
補体活性化の抑制. 補体の古典経路の活性化を抑制するコンプスタチンアナログの能力を実施例1に記載されたELISAにより評価した。各コンジュゲートは少なくとも3回分析した。
【0103】
SPR分析. 実施例1に記載のごとく、C3bおよび各コンプスタチンアナログ間の相互作用の動力学は、泳動緩衝液としてPBS−T(10mMリン酸ナトリウム、150mM NaCl、0.005%Tween−20、pH7.4)を用いて、25℃にてBiacore 3000装置(GE Healthcare Corp., Piscataway, NJ)でSPRにより分析した。略言すると、ビオチン化C3b(30μg/mL)を、ストレプトアビジンを被覆したセンサーチップに固定化し、各アナログの二倍系列希釈系(1μM〜500pM)を5〜10分の解離相で30μl/分間にて2分間注入した。ペプチド17(コンジュゲートしていない)は内部対照および基準として各実験系に含ませた。データ分析は、Scrubber (BioLogic Software, Campbell, Australia)を用いて行った。未処理フローセルからのシグナルおよび緩衝ブランク注入を引いて、緩衝効果および注入アーティファクトにつき補正した。処理したバイオセンサーのデータは、1:1ラングミュア結合モデルに全体的に適合し、平衡解離定数(K)は式K=k/kから計算した。ペプチド溶液は、すべての実験に2連にて注入し、各スクリーニングアッセイは少なくとも2回行った。
【0104】
SPEによる血漿試料からのコンプスタチンアナログの抽出. 96ウェルプレート HLB Oasis 10mg(Waters, Milford, MA)を抽出のために使用した。SPE材料は、500μlのメタノールの添加に続いて500μLのmilli-Q水の添加により条件を整えた。試料は、内部標準に続いて4%HPOでの1:1希釈により調製した。試料を負荷後に、洗浄を0.1%ギ酸中の5%メタノールの500μLで行った。試料は、0.1%ギ酸中の65%メタノールの150μLで溶出し、収集プレート中に集めた。溶剤はスピードバック濃縮機中で乾燥まで蒸発させ、0.1%ギ酸中の5%アセトニトリル中で再構成した。試料は分析まで−20℃に維持した。
【0105】
消化による血漿試料からのペプチド17−ABPおよびペプチド17−ABMの単離.
ヒヒ血漿試料(40μL)を内部標準と混合し、40mM炭酸アンモニウム緩衝液で1:1に溶解した。Rapigest洗浄剤を0.1%最終濃度まで添加した。ジスルフィド架橋は60℃にて30分間5mM DTT中で還元した。システインのアルキル化は、15mMの最終濃度までのヨードアセトアミドの添加、および暗所での30分間のインキュベーションにより行った。試料は、16μLの1μg/μLトリプシン溶液の添加および37℃にての一晩のインキュベーションにより酵素的に消化した。その後、試料pHは5% TFAで低下させて、洗浄剤分解を引き起した。非常に疎水性のペプチドの非特異的吸着を回避するために、アセトニトリルを20%まで添加した。試料は6℃および14000rpmにて30分間で遠心分離し、10kDaのカットオフmicrocon遠心フィルター(Millipore, Billerica, MA)での濾過に先立ち、上清を0.1%ギ酸で希釈して、10%までアセトニトリル濃度を低下させた。フィルターは、0.1%ギ酸中の10% ACNの50μLで洗浄し、集めた試料を乾燥まで蒸発させ、0.1%ギ酸中の10%ACNで再構成した。
【0106】
LC−MS/MSの分析. LC−MS/MSの分析は、MassLynx 4.1 software (Waters)に制御され、nanoESI sourceを装備したSYNAPT HDMS(Waters, Milford, MA)で行った。各試料を3連にて注入した。nanoACQUITY UPLC (Waters)システムは逆相液体クロマトグラフィー用のペプチド分離に用いた。注入後、分析物を5μm Symmetry C18カラム(180 μm x 20 mm, Waters)にて5μl/分にて3%移動相A(水中の0.1%ギ酸)で3分間捕捉し、1.7μm BEH130 C18カラム(75 μm x 150 mm, Waters)でさらに分離した。分析カラム温度は35℃に保持した。ペプチドは流速0.3μl/分にて分離した。勾配は、消化された試料につき50分間の長さまたは60分間の線形3〜40%B(アセトニトリル中の0.1%ギ酸)であった。毛細管電圧は3.2kVであり、コーン電圧は35Vであり、ソース温度は100℃であった。[Glu1]−フィブリノゲンペプチドは、30秒のサンプリング速度でロック質量矯正に用いた。質量スペクトルは、スキャン周波数0.6秒にてm/z400〜2000Daにわたり陽性モードで得た。MS/MS関数に用いた時間ウィンドウは、選択したペプチドの保持時間の±3分間であった。分析物の存在はMS/MSにより確認した。選択性はブランク試料の分析により試験して、分析物で共溶出するいずれかの干渉の存在を決定した。
【0107】
in vivo保持. 体重5〜8kgの若年ヒヒ(P. Anubis, Baboon Research Resources, University of Oklahoma)を用いた。3頭のヒヒを試験に用い;各化合物に1頭。すべての動物は、末梢静脈を介する注入によりボーラス用量のペプチド(10mg)を受けた。LC−MS/MSアッセイ用の血液サンプルは、50μgレピルジンを含む1mlのプラスチックチューブ中に集め、血漿分離のために4℃にて2000gで20分間遠心分離した。血漿試料は−70℃で保存した。血液サンプルはペプチド17の注入後、20、40、60、90および120分;ペプチド17−ABPおよびペプチド17−ABMの注入後、1分、30分、次いで、1、6、24および48時間にて集めた。
【0108】
結果:
ペプチド17−ABMの合成. 以下の反応図式に要約されるごとく、ペプチド17−ABMは、固相ペプチド合成およびHPLC精製後に得た。直鎖ペプチドは各アミノ酸の単一カップリングで合成した。タリウムトリフルオロアセテートおよびヨウ素の双方をジスルフィド結合形成につき評価した。前者は、よりきれいな反応を与え、その後、すべての環化に用いた。ペプチド17−ABMの質量は、HPLC−MSおよびESI−TOFにより確認した([MH]2+計算値 1211.05、実測値 1211.06)。
【0109】
【化3】

【0110】
ペプチド17−ABPの合成. 溶液中でアジドアルキンヒュスゲン環化付加は、以下の反応図式により、コンジュゲーションのために用いた。2−アジド酢酸を2−ブロモ酢酸およびアジ化ナトリウムから合成した。次いで、それを樹脂上のジスルフィド結合の形成後にC末端Lys側鎖にカップリングした。中間体2および3は、切断およびHPLC精製後に、各々、12.3%および12.7%の収率で得た。
【0111】
【化4】

【0112】
異なる3つの溶媒系をアジドアルキンヒュスゲン環化付加につき比較した。最良の結果はt−BuOH/HO系に続いて、ACN/HO系で観察した。DMFだけを溶媒して用いた場合に生成物は観察しなかった。また、三級塩基の重要性を評価した。過剰のTEAの添加なくして、2時間後に生成物は検出しなかった。最適化した条件下にて反応はきれいであり、ペプチド17−ABPをHPLC精製後に50%の収率で単離した。生成物の質量は、ESI−TOFによりさらに確認した([MH]4+計算値1131.52、実測値1131.78)。
【0113】
補体活性化の抑制. 古典経路補体活性化を抑制するペプチド17−ABMおよびペプチド17−ABPの能力は、ヒト血清を用いるELISAにより評価した。結果を表2−1に示す。
【0114】
【表5】

【0115】
ヒヒにおける血漿中濃度. ペプチド17ならびにABPおよびABMコンジュゲートの血漿中濃度は、ヒヒへの静脈内ボーラス注射後にLC−MS/MSを用いて測定した。ペプチド17は、約60分間の半減期を示した。ペプチド17−ABMは、5hの半減期を持ち、5倍の改善を示した。21時間の最長の半減期をペプチド17−ABPにつき観察し、それはコンジュゲートされていないペプチド17のものより21倍大きかった。
【0116】
本発明は前記に記載および例示された具体例に制限されず、添付した特許請求の範囲内で変形および改変できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
改変したコンプスタチンペプチド(ICVVQDWGHHRCT(環状C2−C12);配列番号:1)またはそのアナログを含む化合物であって、8位のそのGlyを改変して、その位置でのペプチドの骨格立体構造を拘束した該化合物。
【請求項2】
さらに、骨格が、GlyをN−メチルGlyに置換することにより拘束される請求項1記載の化合物。
【請求項3】
さらに、9位のHisのAlaへの置換を含む請求項2記載の化合物。
【請求項4】
さらに、4位のValのTrpまたはTrpアナログへの置換を含む請求項3記載の化合物。
【請求項5】
4位のTrpアナログが、1−メチルTrpまたは1−ホルミルTrpである請求項4記載の化合物。
【請求項6】
さらに、7位のTrpのTrpアナログへの置換を含む請求項4記載の化合物。
【請求項7】
7位のTrpアナログが、ハロゲン化Trpである請求項6記載の化合物。
【請求項8】
さらに、N末端残基のアセチル化を含む請求項3記載の化合物。
【請求項9】
さらに、13位のThrをIle、Leu、Nle、N−メチルThrまたはN−メチルIleに置換することを含む請求項1記載の化合物。
【請求項10】
Xaa1−Cys−Val−Xaa2−Gln−Asp−Xaa3−Gly−Xaa4−His−Arg−Cys−Xaa5(環状C2−C12)
ここに、、
[式中、第8位のGlyを改変して、その位置にて骨格立体構造を拘束し、
Xaa1は、Ile、Val、Leu、Ac−Ile、Ac−Val、Ac−Leu、またはGly−Ileを含むジペプチドであり;
Xaa2はTrpまたはTrpのアナログであり、ここに、Trpのアナログは、Trpと比較して疎水性特性を増加させ;
Xaa3は、Trp、またはインドール環の水素結合ポテンシャルを増加させる、そのインドール環に対する化学的修飾を含むTrpのアナログであり;
Xaa4は、His、Ala、PheまたはTrpであり;および
Xaa5は、Thr、Ile、Leu、Nle、N−メチルThrまたはN−メチルIleのいずれかのカルボキシ末端の−OHが、−NHにより所望により置換されていてもよいThr、Ile、Leu、Nle、N−メチルThrまたはN−メチルIleである]
である配列番号:2の配列を有するペプチドを含むコンプスタチンアナログである請求項1記載の化合物。
【請求項11】
8位のGlyがN−メチル化され、Xaa1がAc−Ileであり、Xaa2は1−メチル−Trpまたは1−ホルミル−Trpであり、Xaa3がTrpであり、Xaa4がAlaであって、Xaa5がThr、Ile、Leu、Nle、N−メチルThrまたはN−メチルIleである請求項10記載の化合物。
【請求項12】
Xaa5が、Ile、N−メチルThrまたはN−メチルIleである請求項11記載の化合物。
【請求項13】
配列番号:5、7、8、9、10または11のいずれかを含む請求項11記載の化合物.
【請求項14】
さらに、化合物のin vivo保持を延長するさらなる成分を含む請求項1〜13のいずれか1記載の化合物。
【請求項15】
さらなる成分が、ポリエチレングリコール(PEG)である請求項14記載の化合物。
【請求項16】
さらなる成分が、アルブミン結合低分子である請求項14記載の化合物。
【請求項17】
さらなる成分が、アルブミン結合ペプチドである請求項14記載の化合物。
【請求項18】
アルブミン結合ペプチドが、配列RLIEDICLPRWGCLWEDD(配列番号:14)を含む請求項15記載の化合物。
【請求項19】
アルブミン結合ペプチドに結合した配列番号:5、7、8、9、10または11のいずれか1つを含む請求項15記載の化合物。
【請求項18】
化合物およびアルブミン結合ペプチドがスペーサーにより分離される請求項15記載の化合物。
【請求項19】
スペーサーがポリエチレングリコール分子である請求項18記載の化合物。
【請求項20】
前記請求項のいずれかの化合物および医薬上許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項21】
補体活性化の抑制のための医薬製造における前記請求項のいずれかの化合物の使用。
【請求項22】
配列番号:5、7、8、9、10または11のいずれか1つの非ペプチドまたは部分的ペプチドミメティクスを含む、補体活性化を抑制する化合物であって、
化合物がC3に結合し、等価なアッセイ条件下で配列番号:1を含むペプチドより少なくとも500倍大きな活性で補体活性化を抑制する該化合物。

【公表番号】特表2012−525443(P2012−525443A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−508814(P2012−508814)
【出願日】平成22年5月3日(2010.5.3)
【国際出願番号】PCT/US2010/033345
【国際公開番号】WO2010/127336
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(500429103)ザ・トラスティーズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ペンシルバニア (102)
【Fターム(参考)】