説明

ペリクルを収納した容器の収納密閉方法

【課題】 異物の侵入が無く、かつ、器具等を要さず、開封が容易な、製品包装袋による製品収納方法を提供する。
【解決手段】 製品収納袋の最奥部まで内容物を入れ、入れられた内容物の製品収納袋の開口側の端部位置と製品収納袋の開口部の距離の1/2の位置で一旦袋を折り曲げた後、更にその1/2の位置で袋を折り曲げ、その後内容物の端部に相当する位置で製品収納袋を折り返し、製品収納袋が開かないように折り返し部と収納物上の製品収納袋の外を粘着テープで留めることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーンルーム内で製造される製品(特にはペリクル)を収納する袋の密閉方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンルーム内で製造した製品、例えばペリクル(以下、ペリクルを代表として説明する)、は専用の容器に収納されるが、そのままクリーンルーム外に運び出せば、収納容器が空気中の塵埃によって汚染されるため、クリーンルーム内に持ち込んでペリクルを取り出した場合、ペリクルを汚染してしまう可能性があるばかりではなく、持ち込んだクリーンルームをも汚染してしまうことがある。
【0003】
そのため、ペリクルはそれ自身を汚染しないために何重もの袋に収納されて出荷され、例えばクリーンルーム内に持ち込まれる際には最外部の袋から直前に取り出される様にされている。
【0004】
クリーンルーム内で製造されたペリクル及びその容器を清浄に保つためには厳重な包装を行う必要があり、これまでは、包装袋は、熱シールによって密封されたり、チャック付きの袋に収納して口を閉じたり、或いは粘着テープによって口の全体を閉じたりしていた。さらには、これらを何重かに重複して完全に密封して出荷されていた。
【0005】
しかし、厳重に包装された製品は、汚染が無い一方で、袋が3重、4重となると開封していくことが大変になるばかりでなく、熱シールを行った場合には、開封する際にはさみやカッターを使用しなくてはならないため器具が必要になり、なおかつ切断面からの発塵も問題になることがあった。また、チャック付きの袋の場合、コストが掛かるという問題や、密閉が不完全で異物の侵入が有ることもあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上の事情に鑑みて、本発明は、異物の侵入が無く、かつ、器具等を要さず、開封が容易な、製品包装袋による製品収納方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の半導体リソグラフィ用ペリクルを収納した容器の収納密閉方法は、クリーンルーム内で製品を収納した製品収納袋の口を2回以上折り曲げて、折り曲げた部分を粘着テープによって固定し密閉することを特徴とする。また、製品収納袋の最奥部まで内容物を入れ、入れられた内容物の製品収納袋の開口側の端部位置と製品収納袋の開口部の距離の1/2の位置で一旦袋を折り曲げた後、更にその1/2の位置で袋を折り曲げ、その後内容物の端部に相当する位置で製品収納袋を折り返し、製品収納袋が開かないように折り返し部と収納物上の製品収納袋の外を粘着テープで留めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、折り曲げを繰り返すだけであるにも拘わらず外部からの空気の流入が十分に遮断され、かつ、格別の器具を要することなく容易・簡便に開封することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のペリクル収納方法の第一工程である第1の谷折り位置と、第1の谷折りとをそれぞれ示す説明図である。
【図2】本発明のペリクル収納方法の第二工程である第2の谷折り位置と、第2の谷折りとをそれぞれ示す説明図である。
【図3】本発明のペリクル収納方法の第三工程である第3の谷折り位置と、第3の谷折りとをそれぞれ示す説明図である。
【図4】本発明のペリクル収納方法の最終工程であるテープ留めを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、袋の口を熱シールやチャック付き袋を用いずに閉じ開封が極めて容易でなおかつ異物の侵入を許さず誰でも完全な密封が出来るというものであり、具体的には、袋の口を2回以上折り曲げてテープで閉じるというものである。
以下、図面を参照しながら、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明では、袋の口を以下の方法によって閉じる。
まず、製品1を製品収納袋2の最奥部まで挿入し、製品収納袋の底部に突き当てる(図1の左)。
【0011】
次いで、入れられた内容物(製品1)の製品収納袋2の開口側の端部位置と、製品収納袋2の開口部との距離の1/2の位置(図1中の(a)の位置)にて一旦袋を折り曲げた(図1の右)後、更にその1/2の位置(図2中の(b)の位置)で製品収納袋2を折り曲げ(図2)、その後、内容物の端部に相当する位置(図3中の(c)の位置)(入れられた内容物(製品1)の製品収納袋2の開口側の端部位置に同じ)で袋を折り返し(図3)、さらに、袋が開かないように、折り返し部と収納物上の袋の外を粘着テープで留める(図4)。
【0012】
粘着テープの位置は、適宜の位置を選ぶことができるが、図4に図示するとおり、製品収納袋の横幅の中央辺りが好ましい。更には、粘着テープを複数とすることもできる。
なお、図示例では、粘着テープは縦長に貼付しているが、これに限らず、折り目に沿う形で、横長に貼付するのでも差し支えない。
【0013】
このように、折り曲げにて袋の口を閉じると、袋の内側同士が折り曲げる力によって密着し外部からの空気の流入が遮断される。また、この折り曲げ方法によれば、僅かな折り曲げ回数で十分な遮断効果が得られる。
【0014】
本発明で使用される製品収納袋は、表面が平滑で、エンボス加工等の凹凸のあるものでなければ特に制限はないが、ある程度の厚みがあり、折り曲げた際に折り曲げやすく、且つ、袋の内側が袋を曲げる力によって互いに押しつけられ密着するものがよい。
その厚みとしては、50μm〜200μmのものが適当である。
【0015】
製品収納袋の材質としては、特に制限はないが、ポリエチレン、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエステル等の樹脂及びこれらの樹脂に金属薄膜を蒸着したものや、帯電防止剤を添加したもの、さらには前記樹脂を積層したもの、などが挙げられる。
【0016】
製品収納袋の開口部を折り曲げたのちこれを固定するための粘着テープは、特に制限はないが、製品収納袋からの剥離時に静電気が発生しないような、帯電防止タイプの粘着テープが好ましい。市販の商品名を例示すれば、日東電工(株)製帯電防止テープNo.3250等を挙げることができる。
【実施例】
【0017】
[実施例1]
以下に実施例を述べる。
厚さ70μmのポリエチレン製の製品収納袋の口をクリーンルーム内において以下の方法によって閉じた。
まず製品を製品収納袋の最奥部まで挿入し、製品収納袋の底部に突き当てる。製品としては、信越ペリクル(6N2HF−EXN 信越化学工業(株)製商品名、専用容器に収納)を用いた。
次いで、入れられた内容物(製品)の、製品収納袋の開口側の端部位置と、製品収納袋の開口部との距離の1/2の位置にて一旦袋を折り曲げた後、更にその1/2の位置で製品収納袋を再度折り曲げた。その後内容物の端部に相当する位置で製品収納袋を折り返し、製品収納袋が開かないように折り返し部と収納物上の製品収納袋の外を粘着テープで留めた。粘着テープの貼付態様は、図4に図示の態様とし、その縦方向長さは、40mm程度とした。
【0018】
このものをクリーンルーム外に1週間放置した。次いでこのものをクリーンルーム内に持ち込み、製品を入れた容器を取り出して、暗室内にて30万ルクスの集光ランプで表面に付着異物がないかを調べたが、10μm以上の付着異物は無かった。また、開封して製品を取り出すための時間は3秒であった。
【0019】
[比較例1]
厚さ70μmのポリエチレン製の製品収納袋の口をクリーンルーム内において以下の方法によって閉じた。
まず製品を入れた容器を製品収納袋の最奥部まで挿入し、製品収納袋の底部に突き当てる。
次いで、入れられた内容物の製品収納袋の開口側の端部位置と、製品収納袋の開口部との距離の1/2の位置にて熱シールを行った。このものをクリーンルーム外に1週間放置した。次いでこのものをクリーンルーム内に持ち込み、製品収納袋の熱シール部より内側をはさみで切断開封し、製品を入れた容器を取り出して、暗室内にて30万ルクスの集光ランプで表面に付着異物がないかを調べた。
容器表面に、製品収納袋の切断時に発生したと思われる付着異物が3個認められた。また、開封して製品を取り出すための時間は10秒であった。
【0020】
製品収納袋の密閉方法と製品の汚染について調べ、表1にまとめた。
【0021】
【表1】

【0022】
表1の結果から、袋の口を2回以上折り曲げることによって、袋の中への異物の侵入を防止できる事が分かった。折り曲げ位置の1/2の位置を次々に折り曲げていけばより密閉性は高くなるが、回数が多くなると折り曲げが難しくなり、6回以上折り曲げることは実質的に困難であって実用的ではない。熱シールやチャック付きの袋、口をほぼ完全に密閉するテープ留めの場合、封をした後の密閉性に関しては効果が高いものの、熱シールでは袋をハサミやカッターで切断しなくてはならず、発塵原因となったり、チャック付きの袋だと開封は容易であるが逆に封をする際にうまくチャックが閉まらなかったりする問題があり、またテープ留めの場合、密閉性良くテープで留めるために手間が掛かり、袋詰めのために余分な時間を取ってしまい生産性が悪いことが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の方法によれば、袋の内容物の密閉を特別な手段を用いずに容易に行う事が出来るため、様々な製品においても製品の収納、取り出しが容易で生産時間、製品品質、コストの面で優れた方法である。
【符号の説明】
【0024】
1:製品
2:製品収納袋
3:製品の製品収納袋開口側の端部位置
4:(製品収納袋の)開口部
5:粘着テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリーンルーム内で製品を収納した製品収納袋の口を2回以上折り曲げて、折り曲げた部分を粘着テープによって固定し密閉することを特徴とする半導体リソグラフィ用ペリクルを収納した容器の収納密閉方法。
【請求項2】
製品収納袋の最奥部まで内容物を入れ、入れられた内容物の製品収納袋の開口側の端部位置と製品収納袋の開口部の距離の1/2の位置で一旦袋を折り曲げた後、更にその1/2の位置で袋を折り曲げ、その後内容物の端部に相当する位置で製品収納袋を折り返し、製品収納袋が開かないように折り返し部と収納物上の製品収納袋の外を粘着テープで留めることを特徴とする半導体リソグラフィ用ペリクルを収納した容器の収納密閉方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−240946(P2011−240946A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112917(P2010−112917)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】