説明

ペースト印刷用スキージ、ペースト印刷装置、配線基板の製造方法

【課題】ペースト侵入による印刷性の不安定化を解消し、良好な印刷層を形成することができるペースト印刷用スキージを提供すること。
【解決手段】このペースト印刷用スキージ22は、先端部に保持凹部32を有するホルダ31と、弾性体製かつ板状のブレード41とを備える。このスキージ22は、ブレード進行方向43側にペーストP1を供給した状態で被印刷面14に沿って移動し、ペーストP1を印刷する。ブレード22におけるブレード突出部42は、その一部が保持凹部32の開口部38から突出している。ホルダ31は爪部51を有する。爪部51は、保持凹部32の開口部38の内面においてブレード41の外表面44に圧接する。爪部51は、ブレード進行方向43側となる位置に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホルダとブレードとを備えるペースト印刷用スキージ、及びそれを用いたペースト印刷装置、配線基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品等を配線基板の接続端子に接合する方法として、はんだバンプを介して接合する方法がよく知られている。通常、このようなはんだバンプは、配線基板となる基板の被印刷面に形成された複数の接続端子上にはんだペースト印刷装置を用いてはんだペーストを印刷した後、リフローを行ってはんだペースト印刷層を溶融することにより形成される。
【0003】
図13には、ホルダ102とブレード103とを有するペースト印刷用スキージ104を備えたはんだペースト印刷装置101の従来例が示されている。はんだペースト印刷装置101により接続端子106上にはんだペーストP1を印刷する手順は、次のとおりである。
【0004】
図示しないテーブル上に基板107を水平に保持させた状態で、基板107の被印刷面上にマスク105を重ねて配置する。次に、マスク105の上面にスキージ104のブレード103を接触させ、その進行方向側にはんだペーストP1を供給する。この状態でスキージ104を所定角度で前傾させるとともに、マスク105の上面に沿って水平に移動させる。すると、ブレード103によってマスク貫通孔内にはんだペーストP1が充填され、接続端子106上にはんだペースト印刷層が形成される。さらに、マスク105を取り除いた後にリフローを行えば、はんだペースト印刷層が溶融して、はんだバンプが形成された配線基板となる。なお、このようなはんだペースト印刷装置及びこれを用いた印刷方法としては、例えば特許文献1に記載されたものが従来知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−20128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記従来のはんだペースト印刷装置101では、印刷圧力、スピード、ペーストP1の抵抗などの要因により、スキージ104のブレード103が進行方向の反対側に撓む。すると、ブレード103の進行方向側の面とホルダ102の内面との間に僅かな隙間111が生じてしまい、その隙間111にペーストP1が入り込んで固まってしまう。その結果、ブレード103の角度が変わることでペースト印刷性が不安定になり、印刷厚みがばらついてしまう。また、隙間111の内部に入り込んだペーストP1を除去するための清掃作業に時間がかかり、煩雑になるという欠点もある。さらに、ブレード103が短命化したり、印刷物の歩留まりが低下したりするといった欠点もある。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ペースト侵入による印刷性の不安定化を解消し、良好な印刷層を形成することができるペースト印刷用スキージ、ペースト印刷装置を提供することにある。また、本発明の別の目的は、形状が揃った良好な導体部を有する配線基板を高歩留まりで製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして上記課題を解決するための手段(手段1)としては、先端部に保持凹部を有するホルダと、前記保持凹部に保持され、一部が前記保持凹部の開口部から突出したブレード突出部を有する弾性体製かつ板状のブレードとを備え、ブレード進行方向側にペーストを供給した状態で被印刷面に沿って移動することにより前記ペーストを印刷するペースト印刷用スキージであって、前記ホルダは、前記保持凹部の前記開口部の内面において前記ブレードの外表面に圧接する爪部を有し、前記爪部は、少なくとも前記ブレード進行方向側となる位置に設けられていることを特徴とするペースト印刷用スキージがある。
【0009】
従って、手段1に記載の発明によると、保持凹部の開口部の内面に設けられた爪部がブレードの外表面に圧接しているため、ブレードが撓んだとしてもブレードとホルダとの間に隙間が生じにくくなる。よって、隙間へのペーストの侵入、固化といった事態が回避され、ブレードを好適な角度に維持することができるため、ペースト印刷性の不安定化が解消される。その結果、良好な印刷層を形成することが可能となる。
【0010】
本発明のペースト印刷用スキージを構成するホルダは、その先端部に保持凹部を有している。このようなホルダは、例えば、ブレードを厚さ方向から挟み込んで保持する一対の挟持部材で構成され、一対の挟持部材における各挟持部材が互いに対向する対向面は保持凹部の内面を形成するものであってもよい。この構成によると、対向面に対してブレードが面接触して保持されるため、保持凹部にブレードがより安定的に保持される。
【0011】
ここで、ホルダを形成する材料は特に限定されず任意に選択可能であるが、弾性体からなるブレードに比べて硬度や剛性の高いもの(金属、セラミック、樹脂などの材料)を使用することが好適である。その理由は、印刷時においてスキージには押圧力が加わるが、その際にブレードを位置ずれさせることなく確実に保持する必要があるからである。
【0012】
爪部は、開口部内面の少なくともブレード進行方向側となる位置に設けられるが、ブレード進行方向とは反対側となる位置にも設けられていてもよい。後者の構成によると、爪部がブレードに対して厚さ方向に互いに向かい合う二方向から圧接することになるため、保持凹部にブレードがより安定的に保持される。この場合、爪部同士が対向するように配置されていることが好ましい。
【0013】
爪部は、ブレード進行方向と交差するスキージ幅方向に延びるように形成されていることが好ましく、特にスキージ幅方向の全域にわたって連続して形成されていることが好ましい。この構成であると、例えば爪部が当該方向に非連続的に形成されている場合に比べて、隙間が生じにくくなる。そのため、スキージ幅方向の全域にわたって、隙間へのペーストの侵入、固化といった事態を確実に回避することができる。
【0014】
本発明のペースト印刷用スキージを構成するブレードは、ウレタンゴムやシリコンゴム等の硬質ゴムのような弾性体製かつ板状であって、ホルダの保持凹部に保持される。また、ブレードは、保持凹部の開口部から突出したブレード突出部を有している。上記のようにホルダが一対の挟持部材で構成されている場合、ブレードはこれらに挟み込まれて保持される。
【0015】
スキージ進行方向側の挟持部材及びスキージ進行方向とは反対側の挟持部材は、ブレードが突出する方向における長さが等しくなるように形成されていてもよい。この構成によると、ホルダが中心線を基準として対称な形状になるため、ホルダの前後を反転させて使用すること等が可能となる。
【0016】
また、スキージ進行方向とは反対側の挟持部材は、スキージ進行方向側の挟持部材よりも、ブレードが突出する方向における長さが長くなるように形成されていてもよい。この構成によると、スキージ進行方向とは反対側の挟持部材が相対的に長いと、印刷時におけるブレードの撓みが抑制されるため、ブレードとホルダとの間に隙間が生じにくくなる。
【0017】
爪部の表面を含む保持凹部の開口部内面には、樹脂コーティングが施されていてもよい。樹脂コーティングとしては特に限定されないが、例えば、表面の離形性を改善しうるような樹脂材料を用いたコーティングがよく、具体的にはフッ素樹脂等のコーティングが好適である。このような構成によると、樹脂コーティングがない場合に比べてホルダとブレードとの密着性が向上し、ブレードが位置ずれしにくくなる。ゆえに、保持凹部にブレードがより安定的に保持される。なお、爪部はペーストに晒されやすい開口部内面に配置されているが、表面が樹脂コーティングで覆われていることで、付着したペーストを容易に除去することができる。このような樹脂コーティングは、保持凹部の外部の領域、即ちホルダの外表面にまで広く及んでいてもよい。例えばホルダ先端部の外表面にペースト案内面があるような場合には、ペーストの摺動抵抗増大を回避することができ、ペーストのローリング性を向上することができる。勿論、ペースト案内面に付着したペーストを容易に除去することができる。
【0018】
また、ホルダにペースト案内面を設けた場合、そのペースト案内面よりも基端側の位置には、スキージ幅方向に沿って延びる逃がし凹部が形成されていてもよい。この構成であると、ペースト案内面にて摺動案内されたペーストが当該ペースト案内面のさらに上方に行こうとしても、逃がし凹部があることでその移動が阻止される。その結果、ペーストが広い面積に付着することが防止される。従って、ローリング性を低下させる原因であるペーストの摺動抵抗増大を回避することができる。
【0019】
上記課題を解決するための別の手段(手段2)としては、手段1に記載のスキージを備えたペースト印刷装置がある。また、上記課題を解決するためのさらに別の手段(手段3)としては、手段1に記載のスキージを用いてペーストを印刷することにより、基板上に導体部を形成することを特徴とする配線基板の製造方法がある。従って、手段2、3に記載の発明によると、安定した印刷性の実現によって良好な印刷層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を具体化した一実施形態のペースト印刷用スキージを備えたペースト印刷装置を示す概略図。
【図2】実施形態のペースト印刷用スキージを示す分解斜視図。
【図3】実施形態のペースト印刷用スキージを示す要部拡大断面図。
【図4】実施形態のペースト印刷用スキージの使用状態を示す概略図。
【図5】実施形態においてペースト印刷後の基板を示す断面図。
【図6】実施形態においてリフローを経て導体部が形成された基板(配線基板)を示す断面図。
【図7】別の実施形態のペースト印刷用スキージを備えたペースト印刷装置の使用状態を示す概略図。
【図8】別の実施形態のペースト印刷用スキージを備えたペースト印刷装置の使用状態を示す概略図。
【図9】別の実施形態のペースト印刷用スキージを備えたペースト印刷装置の使用状態を示す概略図。
【図10】別の実施形態のペースト印刷用スキージを示す要部拡大断面図。
【図11】別の実施形態のペースト印刷用スキージを示す要部拡大断面図。
【図12】別の実施形態のペースト印刷用スキージを示す要部拡大断面図。
【図13】従来のペースト印刷用スキージを備えたペースト印刷装置を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した一実施形態のスキージを備えるはんだペースト印刷装置及びそれを使用した配線基板11の製造方法を図1〜図6に基づき詳細に説明する。
【0022】
図1は、本実施形態において使用されるはんだペースト印刷装置21を示す全体概略図である。このはんだペースト印刷装置21は、配線基板となる基板11を位置決めした状態で水平に保持するためのテーブル23を備えている。このテーブル23の上面には、矩形状をした基板11(例えば一辺の長さが300mm以上の大型の基板11)が収容可能な寸法の保持凹部23aが設けられている。テーブル23の下方位置には、テーブル駆動手段の一部をなす電動シリンダ24が配設されている。テーブル23の下面中央部は、上方に向かって延びる電動シリンダ24のロッド部によって支持されている。この電動シリンダ24は、テーブル駆動手段の一部をなすモータドライバ回路25aを介して、制御コンピュータ25に電気的に接続されている。従って、制御コンピュータ25から所定の制御信号が出力されると、モータドライバ回路25aを介して電動シリンダ24内の図示しないモータが駆動される。その結果、電動シリンダ24のロッド部が伸縮し、これに伴ってテーブル23が図1の上下方向(X軸方向)に移動する。その結果、テーブル23に保持された基板11が昇降するようになっている。
【0023】
このはんだペースト印刷装置21は、テーブル23の上方位置にマスク26を備えている。マスク26は、マスクプレート26aと、そのマスクプレート22を支持するプレート支持枠26bとを含んで構成されている。
【0024】
マスクプレート26aは、ステンレス等の金属板(厚さ40μm)からなり、平面視で矩形状を呈している。マスクプレート26aにおける中央部には、直径140μm程度の略円形状の貫通孔26cが複数個かつ規則的に形成されている。これらの貫通孔26cは、基板11上の被印刷面14の側にある印刷部位であるフリップチップパッド16(接続端子)に対応して形成されている。なお、基板11におけるフリップチップパッド16は、直径約120μmの略円形状であり、基板11表面にて露出した状態となっている(図4参照)。印刷時においてマスクプレート26aは、基板11の被印刷面14上に重ねて配置可能となっている。より具体的にいうと、マスクプレート26aの下面(マスク22の内面)は、印刷時において基板11表面に当接した状態で配置可能となっている。
【0025】
プレート支持枠26bはマスクプレート26aよりも剛性のある矩形枠状の金属部材であって、マスクプレート26aの外周部を支持している。プレート支持枠26bは、テーブル23の上面から水平方向の外周側に張り出した位置に配置されている。
【0026】
このはんだペースト印刷装置21は、テーブル23の上方位置に、さらにスキージ22とスキージ駆動手段27とを備えている。スキージ22は、スキージ駆動手段27の下端面に支持されるとともに、全体的に前傾した状態で配置されている。本実施形態のスキージ駆動手段27は、スキージ22を図1の上下方向(X軸方向)及び図1の左右方向(Y軸方向)に移動させるための手段であって、モータを利用した一対のボールねじ(図示略)を含んで構成されている。かかるX軸方向駆動用モータ及びY軸方向駆動用モータは、それぞれモータドライバ回路25cを介して、制御コンピュータ25に電気的に接続されている。従って、制御コンピュータ25から所定の制御信号が出力されると、モータドライバ回路25cを介して各モータが駆動される。その結果、スキージ22がX軸方向及びY軸方向に動作するようになっている。なお、スキージ22は、X軸方向への動作によりマスクプレート26aの上面に対して所定の圧力で押し付けられる。また、スキージ22は、Y軸方向への動作によりはんだペーストP1の充填印刷を行うようになっている。なお、本実施形態においては図1に示すマスクプレート26aの左端側がスキージ22の移動始端側であり、右端側がスキージ22の移動終端側である。
【0027】
このはんだペースト印刷装置21は、上端面にピン28aを有するマスクリフタ28を備えている。版離れ手段であるマスクリフタ28は、モータを利用した電動シリンダのロッド部の先端にピン28aを取り付けた構成となっている。このマスクリフタ28はマスク26におけるスキージ22の移動始端側の下方に配置されており、ピン28aの先端はプレート支持枠26bの下面に常時当接されている。かかるマスクリフタ28は、押圧手段駆動手段であるモータドライバ回路25dを介して、制御コンピュータ25に電気的に接続されている。従って、制御コンピュータ25から所定の制御信号が出力されると、前記モータドライバ回路25dを介して電動シリンダ内の図示しないモータが駆動される。その結果、ピン28aが垂直方向に突出し、これに伴ってスキージ22の移動始端側となるプレート支持枠26b(マスク26の片側)が図1の上方向(X軸方向)に所定速度で持ち上げられる。その結果、基板11の被印刷面14上に重ねて配置されたマスク26の片側が、数mmほど被印刷面14に対して離間するようになっている。
【0028】
図2〜図4に示されるように、本実施形態のスキージ22は、いわゆる平スキージと呼ばれるタイプのものであり、ホルダ31とブレード41とを備えている。このホルダ31は、寸法及び形状が等しい一対の挟持板(挟持部材)33,34を重ね合わせることで構成されている。ホルダ31はその先端部(図1,図2,図4では下端部)にて開口する保持凹部32を有している。保持凹部32はスキージ幅方向45に長く延びている。これら挟持板33,34は、例えばアルミニウムやステンレス等といった強度及び剛性の高い金属材料で構成されている。
【0029】
ここで、ホルダ31においてスキージ進行方向43側に配置されるものを前方側挟持板34とし、スキージ進行方向43とは反対側に配置されるものを後方側挟持板33とする。これら挟持板33,34は、上記のとおり寸法及び形状が等しいことから、ブレード41が突出する方向における長さが等しくなっている。また、これら挟持板33,34において互いに対向する対向面S1,S2は、平行な位置関係にあり、かつ、保持凹部32の内面を形成している。そしてブレード41は、これら対向面S1,S2に面接触するとともに、挟持板33,34により厚さ方向から挟み込まれることで保持されるようになっている。ここで、本実施形態のブレード41は、硬質ゴムからなる平板状の弾性体である。ブレード41における下側の一部は、保持凹部32から突出したブレード突出部42となっている。ブレード突出部42の突出量は、印刷条件の設定に応じて適宜調整可能となっている。
【0030】
本実施形態のホルダ31では、前方側挟持板34の保持凹部32の開口部38の内面には、爪部51が一体的に設けられている。同様に、後方側挟持板33の保持凹部32の開口部の内面にも、爪部51が一体的に設けられている。これらの爪部51同士は対向して配置されている。本実施形態の爪部51は断面四角形状を呈している。爪部51の高さの好適範囲は0.5mm〜5mmであり、ここでは約2mmに設定している。なお、これらの爪部51は、基本的に一対の挟持板33,34と同じ材料で形成されていることから、スキージ41よりも硬度及び剛性が高くなっている。従って、スキージ41を保持凹部32に保持させたときに、爪部51は特に変形することなくブレード41の外表面44に食い込んで圧接した状態となる。また、これらの爪部51は、挟持板33,34において、ブレード進行方向43と交差するスキージ幅方向45の全域にわたって連続して形成されている。
【0031】
次に、このはんだペースト印刷装置21を用いて基板11上にフリップチップ用はんだバンプ13(導体部)を有する配線基板を形成する手順を説明する。
【0032】
図4に示されるように、印刷を行うにあたり、まず、被印刷物である大型の基板11を保持凹部23aに保持させる。この後、テーブル23を上昇させて基板11の被印刷面14をマスクプレート26aに当接させる。このとき、マスク26の内面と配線基板11の被印刷面14とは、ほぼ平行な位置関係となる。また、マスク26の各貫通孔26cは、フリップチップパッド16に対応した位置関係となる。なお、マスクリフタ28のピン28aはこの時点ではまだ没入している。
【0033】
次に、スキージ駆動手段27を駆動してスキージ22を下動させ、スキージ22のブレード41の下端縁をマスクプレート26aの移動始端側に接触させる。マスクプレート26aの上面かつスキージ22の進行方向側(即ち図4では右側)の位置には、図示しないペースト供給手段によって、適量のはんだペーストP1(Pb−Sn系はんだ、Sn−Ag系はんだ、Sn−Ag−Cu系はんだ、Sn−Zn系はんだ等の公知の材料)を供給しておく。
【0034】
そして、移動速度及び印圧を適宜設定したうえで、スキージ22をマスク面方向及び被印刷面14の面方向に沿って(具体的には図4の左側から右側へ向けて)移動させる。これにより、はんだペーストP1が貫通孔26cに充填され、マスク26の厚さに相当する高さのはんだペースト印刷層が形成される(図5参照)。このはんだペースト印刷層は、後にフリップチップ用はんだバンプ13となるべきものである。
【0035】
次に、マスクリフタ24を所定のタイミングで駆動し、ピン28aを上方に突出させることにより、マスク26を離間させる。すると、はんだペースト印刷層がマスク26の貫通孔26cから抜け出す。
【0036】
以上のようなはんだペースト印刷を経た基板11については、次いで所定条件下でリフローを行い、はんだペースト印刷層を溶融させる。その結果、高さ及び形状の揃ったフリップチップ用はんだバンプ13を有する配線基板が完成する(図6参照)。
【0037】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態のはんだペースト印刷装置21では、ホルダ31における保持凹部32の開口部38の内面に爪部51を設けている。そして、爪部51はブレード41の外表面44に圧接している。ゆえに、ブレード41が撓んだとしても、ブレード41とホルダ31との間に隙間が生じにくくなる。よって、隙間へのペーストP1の侵入、固化といった事態が回避され、印刷時にブレード41を好適な角度に維持することができる。このため、ペースト印刷性の不安定化が解消される。その結果、良好なはんだペースト印刷層を形成することが可能となる。また、このはんだペースト印刷装置21を用いた配線基板の製造方法によれば、形状が揃った良好なはんだバンプ13を有する配線基板を高歩留まりで製造することができる。
【0038】
(2)また、このはんだペースト印刷装置21では、爪部51がスキージ幅方向45の全域にわたって連続して形成されている。そのため、爪部51が非連続的に形成されている場合に比べて隙間が生じにくくなる。よって、スキージ幅方向45の全域にわたって、隙間へのはんだペーストP1の侵入、固化といった事態を確実に回避することができる。従って、印刷時にブレード41を好適な角度に維持することができ、ペースト印刷性の安定化を図ることができる。
【0039】
(3)このはんだペースト印刷装置21では、ホルダ31がブレード41を厚さ方向から挟み込んで保持する一対の挟持板(即ち前方側挟持板34及び後方側挟持板33)で構成されている。そして、これら一対の挟持板33,34における対向面S1,S2は保持凹部32の内面を形成しており、その対向面S1,S2に対してブレード41が面接触して保持されている。よって、保持凹部32にブレード41をより安定的に保持することができる。また、このはんだペースト印刷装置21では、一対の挟持板33,34における対向面S1,S2にそれぞれ爪部51が配置されている。換言すると、開口部38の内面のブレード進行方向43側となる位置ばかりでなく、ブレード進行方向43とは反対側となる位置にも爪部51が設けられている。従って、爪部51がブレード41に対して厚さ方向に互いに向かい合う二方向から圧接するようになり、このことによっても保持凹部32にブレード41をより安定的に保持することができる。よって、印刷時にブレード41を好適な角度に維持することができ、ペースト印刷性の安定化を図ることができる。
【0040】
(4)本実施形態のはんだペースト印刷装置21では、スキージ進行方向43側の挟持部材である前方側挟持板34と、当該方向とは反対側の挟持部材である後方側挟持板33とが、等しい寸法及び形状を有している。よって、これら一対の挟持板33,34は、ブレード41が突出する方向における長さが等しくなっている。このような構成であると、ホルダ31が自身の中心線を基準として対称な形状になるため、ブレード41を取り換えずに固定したままで、ホルダ31の前後を反転させて使用すること等が可能となる。ゆえに、このはんだペースト印刷装置21を用いた配線基板の製造方法によれば、生産性の向上や製造コストの低減を達成しやすくなる。
【0041】
(5)本実施形態のはんだペースト印刷装置21では、ブレード41に比べて硬度及び剛性の高い金属材料を用いて一対の挟持板33,34が形成されるとともに、爪部51がそれらに一体形成されている。そのため、印刷時にスキージ41に押圧力が加わったときでも、ブレード41を位置ずれさせることなく確実に保持することができる。このこともペースト印刷性の安定化に寄与している。
【0042】
なお、本発明の実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0043】
・上記実施形態では、スキージ進行方向43側の挟持部材である前方側挟持板34と、当該方向とは反対側の挟持部材である後方側挟持板33とが、等しい寸法及び形状を有していたが、これに限定されない。例えば、図7に示す別の実施形態のはんだペースト印刷装置21Aのスキージ22Aのようにしてもよい。このスキージ22Aでは、ホルダ31Aを構成する前方側挟持板34及び後方側挟持板33Aの寸法及び形状が若干異なっている。即ち、前方側挟持板34よりも後方側挟持板33Aのほうが、ブレード41が突出する方向における長さが長くなるように形成されている。従って、スキージ進行方向43とは反対側の後方側挟持板33Aにより、印刷時におけるブレード41の撓みが抑制される。ゆえに、ブレード41とホルダ31Aとの間に隙間が生じにくくなる。
【0044】
・例えば、図8に示す別の実施形態のはんだペースト印刷装置21Bのスキージ22Bのようにしてもよい。このスキージ22Bの場合、ホルダ31Bを構成する前方側挟持板34Bの先端部には、はんだペーストP1のローリング性を高めるために所定角度をなすペースト案内面39が設けられている。そして、このペースト案内面39よりも基端側の位置には、スキージ幅方向に沿って延びる逃がし凹部36が形成されている。そしてこの構成であると、ペースト案内面39にて摺動案内されたはんだペーストP1がさらにその上方に行こうとしても、逃がし凹部36があることでその移動が阻止される。その結果、はんだペーストP1が広い面積に付着することを防止することができる。しかも、このスキージ22Bの場合、ホルダ31Bを構成する前方側挟持板34Bの下半部に樹脂コーティング37が施されている。ここでは、具体的にはフッ素樹脂がコーティングされている。樹脂コーティング37は、爪部51の表面を含む保持凹部32の開口部38の内面に形成されている。このような構成によると、樹脂コーティング37がない場合に比べてホルダ31Bとブレード41との密着性が向上し、ブレード41が位置ずれしにくくなる。ゆえに、保持凹部32にブレード41をより安定的に保持することができる。なお、爪部51ははんだペーストP1に晒されやすい開口部38の内面に配置されているが、表面が樹脂コーティング37で覆われていることで、付着したはんだペーストP1を容易に除去することができる。つまり、当該樹脂コーティング37はペースト付着防止層としても機能する。しかも、樹脂コーティング37は、ホルダ31Bの外表面におけるペースト案内面39にも及んで形成されている。このため、はんだペーストP1の摺動抵抗増大を回避することができ、はんだペーストP1のローリング性をいっそう向上することができる。
【0045】
・上記実施形態では、本発明をいわゆる平スキージを備えるペースト印刷装置21に具体化したが、平スキージ以外のタイプのスキージを備えるものに具体化することもできる。例えば、図9に示す別の実施形態のペースト印刷装置21Cは、いわゆる剣スキージを備えている。この実施形態におけるスキージ22Cはホルダ31Cとブレード41Aとを含んで構成されている。特にブレード41Aに関しては、その先端がテーパ状に形成され、それゆえ剣のような形状を有している。
【0046】
・上記実施形態では、ホルダ31を構成する前方側挟持板34及び後方側挟持板33に爪部51を1つずつ設けたが、これに限定されない。例えば、図9のペースト印刷装置21Cのように、前方側挟持板34及び後方側挟持板33に爪部51を2つずつ設けてもよい。つまり、個々の挟持板33,34について、爪部51は保持凹部32のブレード41の基端部に向って多段階的に設けてもよい。
【0047】
・上記実施形態では、爪部51の断面形状を四角形状としたが、これに限定されない。例えば、図10に示す別の実施形態のペースト印刷装置のスキージ22Dのように、ホルダ31Dを構成する挟持板33D,34Dについて、断面半円形状の爪部51Aを採用してもよい。また、図11に示す別の実施形態のペースト印刷装置のスキージ22Eのように、ホルダ31Eを構成する挟持板33E,34Eについて、断面三角形状の爪部51Bを採用してもよい。あるいは、図12に示す別の実施形態のペースト印刷装置のスキージ22Fのように、ホルダ31Fを構成する挟持板33F,34Fについて、1つの面に微細な凹凸を有する断面四角形状の爪部51Cを採用してもよい。
【0048】
・上記実施形態では、スキージ22により印刷されるペーストをはんだペーストP1としたが、これに限定されることはない。例えば、はんだ以外の導電性金属を含む金属ペーストのほか、導電性の如何を問わず何らかの粒子を含むペーストなどを、本発明のスキージ22で印刷してもよい。
【0049】
・上記実施形態では、被印刷物である基板11の被印刷面14に導体部を形成するべくはんだペースト印刷層を形成したが、導体部ははんだバンプ13に限定されない。例えば、配線パターンとなるべきペースト印刷層を被印刷面14上に印刷する際に本発明を適用してもよい。さらに、本発明のスキージ及びペースト印刷装置は、配線基板となる基板11を被印刷物とするばかりでなく、配線基板以外の用途のものを被印刷物としてもよい。
【0050】
次に、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0051】
(1)手段1乃至3のいずれか1項において、前記ペーストははんだペーストであり、前記導体部は前記はんだペーストをリフローして得られるはんだバンプであること。
(2)手段1乃至3のいずれか1項において、前記爪部は前記スキージの形成材料よりも硬質の材料を用いて形成されていること。
(3)手段1乃至3のいずれか1項において、前記爪部は前記ホルダを構成する部材と一体形成されたものであること。
(4)手段1乃至3のいずれか1項において、前記爪部の高さが0.5mm以上5mm以下であること。
(5)手段1乃至3のいずれか1項において、前記爪部は前記保持凹部の前記ブレードの基端部に向って複数に設けられていること。
(6)手段1乃至3のいずれか1項において、前記樹脂コーティングは、前記ホルダの外表面にまで及ぶように形成されたペースト付着防止層であること。
【符号の説明】
【0052】
11…基板
13…導体部としてのはんだバンプ
14…被印刷面
21,21A〜21C…(はんだ)ペースト印刷装置
22,22A〜22F…ペースト印刷用スキージ
31,31A〜31F…ホルダ
32…保持凹部
33,33A〜33F…挟持部材としての前方側挟持板
34,34A〜34F…挟持部材としての後方側挟持板
37…樹脂コーティング
38…(保持凹部の)開口部
41,41A…ブレード
42…ブレード突出部
44…ブレードの外表面
43…ブレード進行方向
45…スキージ幅方向
51,51A〜51C…爪部
P1…(はんだ)ペースト
S1,S2…対向面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部に保持凹部を有するホルダと、前記保持凹部に保持され、一部が前記保持凹部の開口部から突出したブレード突出部を有する弾性体製かつ板状のブレードとを備え、ブレード進行方向側にペーストを供給した状態で被印刷面に沿って移動することにより前記ペーストを印刷するペースト印刷用スキージであって、
前記ホルダは、前記保持凹部の前記開口部の内面において前記ブレードの外表面に圧接する爪部を有し、前記爪部は、少なくとも前記ブレード進行方向側となる位置に設けられていることを特徴とするペースト印刷用スキージ。
【請求項2】
前記爪部は、前記ブレード進行方向と交差するスキージ幅方向の全域にわたって連続して形成されていることを特徴とする請求項1に記載のペースト印刷用スキージ。
【請求項3】
前記爪部は、前記保持凹部の前記開口部の内面において前記ブレード進行方向とは反対側となる位置に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のペースト印刷用スキージ。
【請求項4】
前記ホルダは、前記ブレードを厚さ方向から挟み込んで保持する一対の挟持部材で構成され、
前記一対の挟持部材における各挟持部材が互いに対向する対向面は、前記保持凹部の内面を形成し、
前記ブレードは、前記対向面に面接触して保持される
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のペースト印刷用スキージ。
【請求項5】
前記スキージ進行方向側の挟持部材及び前記スキージ進行方向とは反対側の挟持部材は、前記ブレードが突出する方向における長さが等しくなるように形成されていることを特徴とする請求項4に記載のペースト印刷用スキージ。
【請求項6】
前記スキージ進行方向とは反対側の挟持部材は、前記スキージ進行方向側の挟持部材よりも、前記ブレードが突出する方向における長さが長くなるように形成されていることを特徴とする請求項4に記載のペースト印刷用スキージ。
【請求項7】
前記爪部の表面を含む前記保持凹部の前記開口部内面には、樹脂コーティングが施されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のペースト印刷用スキージ。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のスキージを備えたペースト印刷装置。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のスキージを用いてペーストを印刷することにより、基板上に導体部を形成することを特徴とする配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−18195(P2013−18195A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153548(P2011−153548)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】