説明

ホウ素化された金属フタロシアニン、その調製方法、これを有する医薬組成物及びその使用

本発明は、ホウ素の同位体である11B又は10Bを有する群の少なくとも一つを、金属フタロシアニン核の軸位置に共有結合で支持する金属フタロシアニンに係り;さらに、その調製方法、これを有する医薬組成物及びPDT及び/又はBNCTにおける新生物及び異形成病態の処置への使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下記の一般式(I)で示すホウ素同位体である11B又は10Bを含む軸(axial)リガンドを支持する金属フタロシアニンに係り;さらに、本発明は、これらを有する医薬組成物及び新生物及び異形成病態の処置への使用に関する。
【背景技術】
【0002】
反磁性金属又はメタロイド(metaloid)で錯体を形成したフタロシアニン大員環に由来する有機分子であって適当な置換体を支持するものは、光を照射されて一度光活性化されると、反応性酸素種(ROS)を発生し得ることが知られている。
【0003】
斯かる化合物、及び特にZn(II)誘導体で末端が置換されたものは、科学論文、及び本願の出願人の名前で特許文献1乃至3に広く開示されており、これらでは、上述の標的に対する特徴的な選択性に従って、光診断(photodiagnosis)及びex vivoにおける安定化方法とともに微生物感染、腫瘍及び増殖性病態の光線力学療法(photodynamic therapy)について、特許請求の範囲としてクレームされている。光線感作物質の他の重要な群は、例えば、シリコン(IV)誘導体などの軸置換された(axial substituted)フタロシアニンからなる。これらの化合物は、M.E.Kenney及びその同僚らにより広く研究されている(特許文献4乃至6)。これらの特許及び特許出願に言及されている誘導体は、高い量子収量の一重項酸素の産生、可視光の赤領域における高い吸光度及び水性溶媒又は処方における最適な溶解性を組み合わせたものであって、局所投与に適したものである。一つの側からの側鎖は、感光特性に必要な物理−化学特性を提供し、他の側からの側鎖は、この物質の高い生物学的利用性、この誘導体の速い代謝性及び標的部位における活性分子の最適な局在性に関連する最終的なクリアランスを保障し、従って、その毒性を制限する。また、光と相互作用した後の元の誘導体の光分解工程に由来し得る副産物は、毒性を有するものではなく、光線力学処理の後のクリアランスを促進し得るとともに、可能性のある遅延した光毒性に由来する皮膚毒性の障害を結果として制限する。
【0004】
さらに、ホウ素中性子補足療法(BNCT)として公知の特に侵攻性新生物及び異形成病態の処理治療は、近年述べられており、これは、熱中性子と同時にホウ素の非放射性同位体である10Bの投与を基礎とするものである。先行技術で報告されているように、熱中性子と(非放射性の)10B同位体との相互作用により、He(α粒子)及びLiなどの高い線エネルギー粒子を発生し、細胞内でのイオン化を介して細胞障害を生じさせる。これらの分裂フラグメントは、哺乳細胞の平均径とほぼ等価の平均自由工程を有するので、腫瘍や過増殖細胞の不活性化においてBNCTが成功することは、ホウ素原子の十分大きい細胞内濃度を達成し得るかどうかに依存する。つまり、このキャリアの局在化の結果、これらが新生物及び異形成組織に結合する。
【0005】
従って、腫瘍組織又は細胞の過増殖を特徴とする他の病態に影響を受けた領域において適当なホウ素濃度を提供するため、光線感作促進特性及び特定の細胞及び細胞内への取込性を有し、且つホウ素原子の十分な量を有する置換体を支持する製品の利用可能性に関して強く要求されている;斯かる化合物は、これらの処置に関連した選択性及び活性の利点を有するPDT及びBNCTの順次適用を可能とする(非特許文献1)。この目的のため、11Bでホウ素化された対応する誘導体の調製は、以下の理由から、非常に重要である:つまり、1)10Bの中間体は、非常に高価で、見出しにくく、その合成方法は、豊富に存在する天然の同位体を有する産物に対して最適化する必要がある;2)組織への蓄積性、生物学的バリアの透過性、代謝経路の同定などの多くの生物学的実験は、先んじて、11Bでホウ素化された誘導体を用いて実行し得ること;3)フタロシアニンを有する11Bは、それ自体、PDT用の有用な光線感作物質であること、である。
【特許文献1】米国特許第5,965,598号明細書
【特許文献2】欧州特許第906758号明細書
【特許文献3】欧州特許第1164135号明細書
【特許文献4】米国特許第5,166,197号明細書
【特許文献5】米国特許第5,484,778号明細書
【特許文献6】米国特許第5,763,602号明細書
【非特許文献1】Hill J.S.ら著、Proc.Natl.Acad.Sci.、92巻、p.12126−12130
【非特許文献2】N.L.Oleinickら著、Photochemistry and Photobiology、1993年、57巻、2号、p.242−247
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願出願人は、驚くべきことに、下記の一般式(I)で示す新規のホウ素化金属フタロシアニンが、BNCT及びPDT療法における光線感作物質として使用し得ることを見出した。特に、ホウ素の同位体である11Bを含有する置換体を支持する場合、PDT用の光線感作物質として使用可能であり、ホウ素の同位体である10Bを含有する軸置換体の1つ又は2つを支持する場合、BNCT及びPDTの療法に効果的である。これらの産物は、BNCT処置の成功に必要な腫瘍細胞への最小限度の投与量よりも多くの量のホウ素を運搬可能である一方で、高い光力学特性と増殖細胞への急速で選択的な取込性を示す。この知見は、先行技術における文献及びノウハウの点で、予期し得ないものであった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本発明の主題は、下記の一般式(I)を有する化合物である。
【0008】
【化7】

【0009】
ここで、Mは、Si、Al及びGeからなる群から選択され、
qは、0又は1であり、
Rは、G−(Q)−((X)−((Y)−Z)であり、
Gは、O及びO−Si(CHから選択され、
Qは、T、Ph、CH−Ph及びトリアジンからなる群から選択され、
Tは、
【0010】
【化8】



【0011】
【化9】


、及び−(CH−から選択され、
vは、1〜5の整数であり、
Xは、O、S、T、O−T、S−T、T−O−T、T−S−T、Ph及びO−Phからなる群から選択され、
Tは、上述で定義した通りであり、
Yは、−(CH−、O−(CH−、−(CH−O−(CH−、フェニル、O−Ph、Ph−CH、O−Ph−CH及び
【0012】
【化10】


からなる群から選択され、
vは、上述で定義した通りであり、
Zは、o,m,p−カルボラニル、ウンデカヒドロ−クロソ−ドデカボラニル、1−メチル−o,m,p−カルボラニル、ウンデカヒドロ−クロソ−ドデカボロメルカプチル、ニド−7,8−カルボラニル、ニド−7,9−カルボラニル、ニド−7,8−メチルカルボラニル及びビス−p−カルボラニルからなる群から選択された10B又は11Bのホウ素クラスターであり、
mは、0又は1であり、
lは、0〜3の整数であり、
kは、0又は1であり、
nは、1〜3の整数であり、
tは、1〜3の整数であり、
は、R、CH、OH、O−グルサイド、(OCHCH−OR及びポリペプチドからなる群から選択され、
Rは、上述で定義した通りであり、
は、H、メチル及びエチルからなる群から選択され、
sは、1〜10の整数であり、
は、H及び(W)−(OCHCH−ORから選択され、
Wは、S−(CH及びOPhから選択され、
pは、0又は1であり、
v及びRは、上述で定義した通りであり、
は、H及びRから選択されるか、
及びRが2、3、9、10、16、17、23及び24位にある場合、R及びRは、共に一体で、縮合芳香核であり、
及びRは、1、4、8、11、15、18、22若しくは25又は2、3、9、10、16、17、23若しくは24位に存在し、
MがSi又はGeである場合、qは、1であり、
MがAlである場合、qは、0であり、
及びこの化合物の医薬的に許容可能な塩である。
【0013】
本発明のさらなる主題は、上述の一般式(I)の化合物を有する医薬組成物、これらの化合物の調製方法及びPDT及び/又はBNCT療法への使用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の特徴及び利点をより詳細に記載する。
【0015】
本発明において、用語「Ph」は、フェニル基を意味する。
【0016】
本発明において、好適な化合物は、ホウ素化されたシリコンフタロシアニンであって、つまり、上述の式(I)の化合物において、MがSiのものである。
【0017】
本発明の好適実施例によれば、本発明の化合物は、mが1であり、tが1であり、lが0である一般式(I)であって、Rが、G−Q−((Y)−Z)であり、G、Q、Y、k及びnは、上述で定義した通りである。
【0018】
本発明において、用語「グルサイド」は、単糖類残基を意味し、特に、モノ−又はジ−単糖類の残基である。本発明において、グルサイドの例としては、限定されないが、グルコース、ガラクトース及びラクトースが挙げられる。好ましくは、O−グルサイドは、O−グルコースである。
【0019】
本発明において、用語「縮合芳香核」とは、芳香族基を意味し、フタロシアニン核のベンゼン環とともに縮合芳香基を形成する。つまり、2と3、9と10、16と17、及び23と24の2つの炭素原子が、フタロシアニン核のベンゼン環及び縮合芳香核で共有しているものである。好ましくは、この縮合芳香核は、ナフタロシアニン核を形成するように、フタロシアニン核のベンゼン環と縮合したベンゼン環である。
【0020】
本発明の好適実施例によると、Qは、Ph、トリアジン、CHPh、CH
【0021】
【化11】


、及び
【0022】
【化12】


からなる群から選択から選択され;
Yは、CH、OCH及びCH−O−CHからなる群から選択される。
【0023】
好ましくは、Zは、O−カルボラニル、1−メチル−o−カルボラニル、ニド−7,8−カルボラニル及びニド−7,8−メチルカルボラニルからなる群から選択された10B又は11Bのホウ素クラスターであり;さらに好ましくは、Zは、O−カルボラニル、1−メチル−o−カルボラニルからなる群から選択された10B又は11Bのホウ素クラスターである。
【0024】
本発明は、上記の要件の一つを満たすことにより、上述の式(I)の恩恵を受ける。上記の分子構造から期待されるものとは異なり、且つin vivoにおける安定性を低下させることにより側鎖の数及び/又は嵩高さの両方がフタロシアニンの大員環の最適な挙動、光力学的特性及び腫瘍局在特性に影響を及ぼし得ることを考慮するものとは異なり、本願出願人は、驚くべきことに、本発明の産物は、感光特性、特にその波長、蛍光強度、及び一重項酸素産生の量子収量並びにモル吸光係数に関連した物理−化学的特性を保持することを見出した。これらの産物は、全身投与の後に腫瘍に効率よく局在化することが可能であり、且つ色素性メラノーマなどの処置し難い腫瘍を、PDT及び/又はBNCTの両方に効率よく感作し得る。
【0025】
11B又は10Bの同位体クラスターを支持する1つ又は2つの軸置換体の存在により、モデル細胞について算定される細胞局在化を阻害せず、且つ光分解を起こすこともなく、最適な特性を提供する。
【0026】
本発明に開示の産物のおかげで、治療標的に対する特定の毒性が協調的な効果で実質的に向上する一方、健常な細胞を寛容する。従って、細胞は、フタロシアニンキャリア上に十分大きな数のホウ素元素が存在すること、及び実験的腫瘍モデルに対してホウ素化されたフタロシアニンが十分高い親和性により、フタロシアニン骨格に関連した光力学特性を介して不活性化され得るし、BNCTにより腫瘍細胞を不活性化され得る。
【0027】
PDT/BNCTの組み合わされた作用の結果として細胞の変異及び/又はトランスフォーメーションに関連した耐性は、期待されない;事実、光力学工程故の細胞不活性化は、核物質の関与なしに細胞膜障害の結果をもたらし;さらに、BNCTにより惹起される不活性化は、放射線に耐性の細胞クローン選択性を誘導するのに十分エネルギーの高いものである。
【0028】
本願出願人は、PDT−BNCTに適用するためのこの種類の分子から受ける利点がかなりのものであることを見出した。事実、本発明のフタロシアニンは、腫瘍組織に高い選択性で蓄積性を示す。さらに、この大員環の軸位置にホウ素クラスターを導入することにより、合成の観点から、低いコストでさらに調節可能な化合物を得る可能性を与える。これは、下記に詳細に示すように、このホウ素クラスターが合成ステップの最終段階でフタロシアニン核に結合され得るためである。軸位置における金属に結合された1つ又は2つのホウ素化された鎖を支持する本発明の化合物のさらなる利点は、このホウ素化された鎖に結合される2つの位置のみに関連するという事実に拘わらず、この分子当たりのホウ素の数が非常に大きいことである。さらに、より高い細胞による取込特性及びより高い光毒性を伴った式(I)の化合物の両性特性は、フタロシアニン環上及び/若しくはその軸位置のいずれかに1つ以上の親水性基を挿入することにより、又はニド−カルボランを有する単一の軸置換基を挿入することにより、制御され得る。
【0029】
式(I)に示す本発明による化合物の調製方法は、本技術分野で実質的に公知の収束合成経路に基づくものであってもよく、以下のステップを有する:
i)末端を適当に官能化して所望の軸鎖R、Rを調製するステップと;
ii)ステップi)に由来する、末端が適当に官能化された鎖R及びRと反応させるのに適した、反応性軸置換基を支持する金属フタロシアニンを調製するステップと;
iii)ステップi)に由来する所望に適当に官能化された軸鎖R、Rを、ステップii)に由来する金属フタロシアニン上に挿入するステップと;
を有するものであって、R及びRは、上述に定義した通りものである。
【0030】
1〜9のホウ素クラスターを支持するホウ素化された鎖R及びRは、文献及び当業者公知の合成方法を用いて、調製すればよい。
【0031】
qが1でありRがRとは異なる式(I)の化合物に関する限り、Rは、本質的に親水性鎖からなる。この場合、市販の化合物を若干改変(保護/脱保護又は官能化)して、フタロシアニンに結合し得る鎖を製造する必要がある。
【0032】
ステップii)における反応性軸置換基を支持する金属フタロシアニンは、例えば、Cl、OH又はOCHの軸基を支持する金属フタロシアニンであってもよく、且つ文献に報告されている方法に従って調製されてもよい、例えば、以下のステップa)〜c)を有する方法であってもよい:a)適当なフタロニトリル又は1,3−ジイミノイソインドリンを調製するステップ、b)4量体化するステップ、c)金属を挿入するステップ(可能であれば、4量体化を伴った1つのポット(pot))、である。
【0033】
この反応性分子種は、時折単離されず(特に、ジクロロ−Si(IV)−フタロシアニンにおいて)、上述の軸鎖と直接反応される。
【0034】
異なる軸基を支持する上述の式(I)の化合物に関して、複数のステップが要求されるが、ホウ素化された鎖は、一つの脱保護ステップがこのステップの後に行われ得るように、効果なホウ素化された中間体、特に10Bを多く有する化合物の浪費を避ける目的で、この方法の最後に常に挿入される。
【0035】
この場合、官能化された金属フタロシアニンは、例えばCl及びCHなどの2つの異なる軸基を有する必要があり;ホウ素化された鎖Rは、一つの側鎖がこの基Rで軸的に置換され、且つ他の側鎖上で基CHで置換された金属フタロシアニンを与えるように、挿入される(Clの置換)。これらの誘導体は、所望の適用に既に適しているが、基R及び基OHで軸置換された金属フタロシアニンを調製する中間体として使用されてもよい。より多くのR基(OH又はCHとは異なるもの)を支持する化合物の調製のため、Rの親水性基は、R及びCHで置換された金属フタロシアニンを与えるように、Cl及びCHで置換された金属フタロシアニン上に最初に挿入され;その後、当業者公知の方法により、メチル基が、OHに変換され、このOHが、ホウ素化された鎖Rで置き換えられる。
【0036】
対象に軸置換された式(I)の化合物を所望する場合、つまり、qが1でありRがRである場合、その調製方法は、上述とほぼ同様であるが、ステップiii)において、反応性金属フタロシアニンは、通常、塩基の存在下、ステップi)に由来する適当に官能化された鎖で処理される。
【0037】
上述の通り、本発明に開示の全ての反応は、シリコンフタロシアニンの文献に公知である(非特許文献2)。
【実施例】
【0038】
以下の例は、本発明を限定することなく、述べるものである。
【0039】
(例1)
ビス(3−o−カルボラニルプロピル−1−オキシ)シリコンフタロシアニンの合成
水素化ナトリウム(0.122g、51ミリモル)を、無水トルエン(2mL)中にシリコンフタロシアニンジクロライド(0.100g、16ミリモル)と3−o−カルボラニル−プロパン−1−オール(0.099g、49ミリモル)とを有する混合物に添加した。80度で72時間、窒素下で加熱した後、その混合物を、蒸留水(20mL)に投入し、トルエン(50mL)で3回抽出した。得た有機層を、NaSO上で乾固し、減圧下で乾燥して蒸留した。シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(石油エーテル/テトラヒドロフラン=3:1)で精製して、所望の産物を得た(0.030g、20%)。UV−vis(DMF中のλmax)は、674nmであった。
【0040】
H−NMR(300MHz,CDCl):9.65(m,8H),8.40(m,8H),2.92−0.84(bm,20H),−0.96(m,2H),−1.48(m,2H)、−2.06(t,2H)
【0041】
13C−NMR(300MHz,d−DMSO):193.7,157.5,148.9,138.8,136.0,131.9,126.5,126.1,125.9,124.9,122.7,118.1
【0042】
ESI−MS:m/z943.6[0425020Si]
【0043】
例1で述べた方法に従って、以下の化合物を得た:
【0044】
(例2)
{ビス[3,5−ビス(o−カルボラニルメチルオキシ)−1−フェノキシ]}シリコンフタロシアニン
ESI−MS: m/z1411.9[C567040Si]
UV−vis(DMFにおけるλmax):678nm
【0045】
(例3)
{[3,5−ビス(o−カルボラニルメチルオキシ)−1−フェノキシ]メチル}シリコンフタロシアニン
ESI−MS:m/z993.6[C454820Si]
UV−vis(DMF中におけるλmax):678nm
【0046】
(例4)
{ビス[3,5−ジ(o−カルボラニルメチルオキシ)−1−フェノキシ]−1,4,8,11,15,18,22,25−オクタ[2−(2−エトキシ エトキシ)エトキシ]}シリコンフタロシアニン
ESI−MS:m/z2473.6[C1041704030Si]
UV−vis(DMF中におけるλmax):749nm
【0047】
(例5)
{ビス[3,5−ジ−(m−カルボラニルメチル)−2,4,6−トリアジン−1−イルオキシ]}シリコンフタロシアニン
ESI−MS:m/z1357.9[C50684014Si]
UV−vis(DMF中におけるλmax):676nm
【0048】
(例6)
{[3,5−ビス(m−カルボラニルメチル)−2,4,6−トリアジン−1−イルオキシ]メチル}シリコンフタロシアニン
ESI−MS:m/z964.6[C42452011OSi]
UV−vis(DMF中におけるλmax):676nm
【0049】
(例7)
{ビス[1,3−ビス(o−メチルカルボラニルメチルオキシ)−プロピル−2−オキシ]}シリコンフタロシアニン
ESI−MS:m/z1348.0[C507840Si]
UV−vis(DMF中におけるλmax):674nm
【0050】
(例8)
{ビス{3,5−ビス[3,5−ジ(o−メチルカルボラニルメチル)−1−フェノキシ]−1−フェノキシ}}シリコンフタロシアニン
ESI−MS:m/z2344.9[C9213880Si]
UV−vis(DMF中におけるλmax):680nm
【0051】
(例9)
{[1,3−ビス(p−カルボラニル)−プロピル−2−オキシ]メチル}シリコンフタロシアニン
ESI−MS:m/z899.6[C404620OSi]
UV−vis(DMF中におけるλmax):674nm
【0052】
(例10)
{[3,5−ビス(10B−o−カルボラニルメチルオキシ)−1−フェノキシ]ヒドロキシ}シリコンフタロシアニン
ESI−MS:m/z980.1[C444620Si]
UV−vis(DMF中におけるλmax):678nm
【0053】
(例11)
{[3,5−ビス(10B−o−カルボラニルメチルオキシ)−1−フェノキシ]6−O−α−D−グルコピラノシル}シリコンフタロシアニン
ESI−MS:m/z1142.1[C505620Si]
UV−vis(DMF中におけるλmax):678nm
【0054】
(例12)
{[3,5−ビス(10B−o−カルボラニルメチルオキシ)−1−フェノキシ]}{[2−(2−エトキシエトキシ)エトキシ]}シリコンフタロシアニン
ESI−MS:m/z1096.1[C505820Si]
UV−vis(DMF中におけるλmax):679nm
【0055】
(例13)
{ビス[3,5−ビス(10B−o−カルボラニルメチルオキシ)−1−フェノキシ]}シリコンフタロシアニン
ESI−MS:m/z1380.9[C567040Si]
UV−vis(DMF中におけるλmax):680nm
【0056】
(例14)
{ビス[3,5−ビス((2−メチル−10B−o−カルボラン−1−イル)メチルオキシ)−1−フェノキシ]}シリコンフタロシアニン
ESI−MS:m/z1441.0[C608240Si]
UV−vis(DMF中におけるλmax):678nm
【0057】
(例15)
{ビス[3,5−ビス((2−メチル−10B−o−カルボラン−1−イル)メチルオキシ)−1−フェノキシ]−1,4,8,11,15,18,22,25−オクタ((2−エトキシエトキシ)エトキシ)}シリコンフタロシアニン
ESI−MS:m/z2498.6[C1081784030Si]
UV−vis(DMF中におけるλmax):749nm
【0058】
(例16)
{ビス[3,5−ビス(10B−o−カルボラニルメチルオキシ)−1−フェノキシ]−1,4,8,11,15,18,22,25−オクタ[(2−エトキシエトキシ)エトキシ]}シリコンフタロシアニン
ESI−MS:m/z2442.6[C1041704030Si]
UV−vis(DMF中におけるλmax):749nm
【0059】
(例17)
{ビス(3−10B−o−カルボラニルプロピル−1−オキシ)}シリコンフタロシアニン
ESI−MS:m/z928.1[C425020Si]
UV−vis(DMF中におけるλmax):674nm
【0060】
(例18)
{ビス[3−(2−メチル−10B−o−カルボラン−1−イル)プロピル−1−オキシ]}シリコンフタロシアニン
ESI−MS:m/z956.1[C445420Si]
UV−vis(DMF中におけるλmax):674nm
【0061】
(例19)
{ビス[3−10B−o−カルボラニルプロピル−1−オキシ]−1,4,8,11,15,18,22,25−オクタ[(2−エトキシエトキシ)エトキシ]}シリコンフタロシアニン
ESI−MS:m/z956.1[C901462026Si]
UV−vis(DMF中におけるλmax):745nm
【0062】
(例20)
ビス(3−o−カルボラニルプロピル−1−オキシ)シリコンナフタロシアニン
ESI−MS:m/z1143.6[C585820Si]
UV−vis(DMF中におけるλmax):770nm
【0063】
(例21)
ビス(3−10B−o−カルボラニルプロピル−1−オキシ)シリコンナフタロシアニン
ESI−MS:m/z1128.1[C585820Si]
UV−vis(DMF中におけるλmax):770nm
【0064】
(例22)
{ビス[3−(2−メチル−10B−o−カルボラン−1−イル)プロピル−1−オキシ]}シリコンナフタロシアニン
ESI−MS:m/z1156.1[C606220Si]
UV−vis(DMF中におけるλmax):770nm

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)
【化1】


の化合物であって、
Mは、Si、Al及びGeからなる群から選択され、
qは、0又は1であり、
Rは、G−(Q)−((X)−((Y)−Z)であり、
Gは、O及びO−Si(CHから選択され、
Qは、T、Ph、CH−Ph及びトリアジンから選択され、
Tは、
【化2】



【化3】


及び−(CH−から選択され、
vは、1〜5の整数であり、
Xは、O、S、T、O−T、S−T、T−O−T、T−S−T、Ph及びO−Phからなる群から選択され、
Tは、上述で定義した通りであり、
Yは、−(CH−、O−(CH−、−(CH−O−(CH−、フェニル、O−Ph、Ph−CH、O−Ph−CH及び
【化4】


からなる群から選択され、
vは、上述で定義した通りであり、
Zは、o,m,p−カルボラニル、ウンデカヒドロ−クロソ−ドデカボラニル、1−メチル−o,m,p−カルボラニル、ウンデカヒドロ−クロソ−ドデカボロメルカプチル、ニド−7,8−カルボラニル、ニド−7,9−カルボラニル、ニド−7,8−メチルカルボラニル及びビス−p−カルボラニルからなる群から選択された10B又は11Bのホウ素クラスターであり、
mは、0又は1であり、
lは、0〜3の整数であり、
kは、0又は1であり、
nは、1〜3の整数であり、
tは、1〜3の整数であり、
は、R、CH、OH、O−グルサイド、(OCHCH−OR及びポリペプチドからなる群から選択され、
Rは、上述で定義した通りであり、
は、H、メチル及びエチルからなる群から選択され、
sは、1〜10の整数であり、
は、H及び(W)−(OCHCH−ORから選択され、
Wは、S−(CH及びOPhから選択され、
pは、0又は1であり、
v及びRは、上述で定義した通りであり、
は、H及びRから選択され、
及びRが2、3、9、10、16、17、23、24位に存在する場合、R及びRは、共に一体で、縮合芳香核であり;
及びRは、1、4、8、11、15、18、22、25位又は2、3、9、10、16、17、23、24位に存在し、
MがSi又はGeである場合、qは、1であり、
MがAlである場合、qは、0である、ことを特徴とする化合物、及びこの化合物の医薬的に許容可能な塩。
【請求項2】
Zは、10Bのホウ素クラスターであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Zは、11Bのホウ素クラスターであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Mは、Siであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
mは、1であり、
tは、1であり、
lは、0であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
前記のグルサイドは、モノ−又はジ−単糖類の残基であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
前記のグルサイドは、グルコース、ガラクトース及びラクトースからなる群から選択されることを特徴とする請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
前記O−グルサイドは、O−グルコースであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
Zは、o−カルボラニル、1−メチル−o−カルボラニル、ニド−7,8−カルボラニル及びニド−7,8−メチルカルボラニルからなる群から選択された10B又は11Bのホウ素クラスターであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
Zは、o−カルボラニル、1−メチル−o−カルボラニルからなる群から選択された10B又は11Bのホウ素クラスターであることを特徴とする請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
Qは、Ph、トリアジン、CHPh、CH
【化5】


、及び
【化6】


からなる群から選択され、
Yは、CH、OCH及びCH−O−CHからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
前記縮合芳香核は、ナフタロシアニン核を形成するように、フタロシアニン核のベンゼン環と縮合したベンゼン環であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
ビス(3−o−カルボラニルプロピル−1−オキシ)シリコンフタロシアニン(1)
{ビス[3,5−ビス(o−カルボラニルメチルオキシ)−1−フェノキシ]}シリコンフタロシアニン(2)
{[3,5−ビス(o−カルボラニルメチルオキシ)−1−フェノキシ]メチル}シリコンフタロシアニン(3)
{ビス[3,5−ジ(o−カルボラニルメチルオキシ)−1−フェノキシ]−1,4,8,11,15,18,22,25−オクタ[2−(2−エトキシ エトキシ)エトキシ]}シリコンフタロシアニン(4)
{ビス[3,5−ジ−(m−カルボラニルメチル)−2,4,6−トリアジン−1−イルオキシ]}シリコンフタロシアニン(5)
{[3,5−ビス(m−カルボラニルメチル)−2,4,6−トリアジン−1−イルオキシ]メチル}シリコンフタロシアニン(6)
{ビス[1,3−ビス(o−メチルカルボラニルメチルオキシ)−プロピル−2−オキシ]}シリコンフタロシアニン(7)
{ビス{3,5−ビス[3,5−ジ(o−メチルカルボラニルメチル)−1−フェノキシ]−1−フェノキシ}}シリコンフタロシアニン(8)
{[1,3−ビス(p−カルボラニル)−プロピル−2−オキシ]メチル}シリコンフタロシアニン(9)
{[3,5−ビス(10B−o−カルボラニルメチルオキシ)−1−フェノキシ]ヒドロキシ}シリコンフタロシアニン(10)
{[3,5−ビス(10B−o−カルボラニルメチルオキシ)−1−フェノキシ]6−O−α−D−グルコピラノシル}シリコンフタロシアニン(11)
{[3,5−ビス(10B−o−カルボラニルメチルオキシ)−1−フェノキシ]}{[2−(2−エトキシエトキシ)エトキシ]}シリコンフタロシアニン(12)
{ビス[3,5−ビス(10B−o−カルボラニルメチルオキシ)−1−フェノキシ]}シリコンフタロシアニン(13)
{ビス[3,5−ビス((2−メチル−10B−o−カルボラン−1−イル)メチルオキシ)−1−フェノキシ]}シリコンフタロシアニン(14)
{ビス[3,5−ビス((2−メチル−10B−o−カルボラン−1−イル)メチルオキシ)−1−フェノキシ]−1,4,8,11,15,18,22,25−オクタ((2−エトキシエトキシ)エトキシ)}シリコンフタロシアニン(15)
{ビス[3,5−ビス(10B−o−カルボラニルメチルオキシ)−1−フェノキシ]−1,4,8,11,15,18,22,25−オクタ[(2−エトキシエトキシ)エトキシ]}シリコンフタロシアニン(16)
{ビス(3−10B−o−カルボラニルプロピル−1−オキシ)}シリコンフタロシアニン(17)
{ビス[3−(2−メチル−10B−o−カルボラン−1−イル)プロピル−1−オキシ]}シリコンフタロシアニン(18)
{ビス[3−10B−o−カルボラニルプロピル−1−オキシ]−1,4,8,11,15,18,22,25−オクタ[(2−エトキシエトキシ)エトキシ]}シリコンフタロシアニン(19)
ビス(3−o−カルボラニルプロピル−1−オキシ)シリコンナフタロシアニン(20)
ビス(3−10B−o−カルボラニルプロピル−1−オキシ)シリコンナフタロシアニン(21)
{ビス[3−(2−メチル−10B−o−カルボラン−1−イル)プロピル−1−オキシ]}シリコンナフタロシアニン(22)
から選択されることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
請求項1乃至13に記載の一般式(I)の化合物の調製方法であって、
i)末端を適当に官能化して所望の軸鎖R、Rを調製するステップと;
ii)ステップi)に由来する、末端が適当に官能化された鎖R及びRと反応させるのに適した、反応性軸置換基を支持する金属フタロシアニンを調製するステップと;
iii)ステップi)に由来する所望に適当に官能化された軸鎖R、Rを、ステップii)に由来する金属フタロシアニン上に挿入するステップと;
を有する方法であって、
R、Rは、請求項1で定義した通りであることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1乃至13に記載の一般式(I)の化合物を少なくとも活性本体として含有する、腫瘍、前癌状態及び細胞過増殖を特徴とする病的疾病を処置するための医薬組成物であって、
医薬的に許容可能な賦形剤及び/又は希釈剤を可能に組み合わせたことを特徴とする医薬組成物。
【請求項16】
請求項2に記載の一般式(I)の化合物の使用であって、
ホウ素中性子補足療法(BNCT)用の医薬組成物の調製のための使用。
【請求項17】
請求項2又は3に記載の一般式(I)の化合物の使用であって、
光線力学療法(PDT)用の医薬組成物の調製のための使用。
【請求項18】
請求項2に記載の一般式(I)の化合物の使用であって、光線力学療法(PDT)及びホウ素中性子補足療法(BNCT)の連続適用用の医薬組成物の調製のための使用。
【請求項19】
請求項1乃至13に記載の一般式(I)の化合物の使用であって、
腫瘍、前癌状態及び細胞過増殖を特徴とする病的疾病の処置のための医薬組成物の調製のための使用。
【請求項20】
請求項1乃至13に記載の一般式(I)の化合物を活性本体として含有する診断薬であって、医薬的に許容なキャリアと可能に組み合わせたことを特徴とする診断薬。
【請求項21】
請求項1乃至13に記載の一般式(I)の化合物の使用であって、ex vivo/in vitroでの診断としての使用。

【公表番号】特表2008−512404(P2008−512404A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530594(P2007−530594)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【国際出願番号】PCT/EP2004/052131
【国際公開番号】WO2006/027028
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(504394102)エル.モルテニ アンド シー.デイ フラテッリ アリッチ ソシエタ’ディ エセルチヅィオ ソシエタ ペル アチオニ (7)
【Fターム(参考)】