ホットプレート
【課題】ワークをワックスによって接着する面に超硬の被膜層を形成した耐摩耗性に優れたホットプレートであって、工作機械に備える万力や電磁チャックの上にセットしたら即加工を開始できるように、固定枠と一体化したホットプレートを提供する。
【解決手段】銅合金からなる基材部の側壁および底部の夫々外周面に断熱材層を周設し、さらに、これらの断熱材層の側壁および底部の夫々外周面に固定枠を周設したホットプレートであって、前記基材部の底部に凹部を形成してヒータを収納し、かつ、前記基材部の上面に超硬溶射による皮膜材層を形成することを特徴とするホットプレートである。
【解決手段】銅合金からなる基材部の側壁および底部の夫々外周面に断熱材層を周設し、さらに、これらの断熱材層の側壁および底部の夫々外周面に固定枠を周設したホットプレートであって、前記基材部の底部に凹部を形成してヒータを収納し、かつ、前記基材部の上面に超硬溶射による皮膜材層を形成することを特徴とするホットプレートである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、種々の材質あるいは種々形状のワークを保持することのできる工業用のホットプレートに関する。詳しくは、ワークをワックスにより接着、保持する面に超硬の被膜層を形成した耐摩耗性に優れるホットプレートであって、しかも工作機械に備える万力や電磁チャックの上にセットして直ぐに加工を開始できるように工夫したホットプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
機械加工をするためにワークを保持する方法として、従来から万力により機械的に挟持する方法、電磁力あるいは真空により吸着する方法がある。
【0003】
これらの中、鋼等金属製の堅固なブロック状のワークを保持するには、一般的に万力が使用される。万力の基本的な構造は、例えば、しゃこ万力に見られるように、対向して配置した挟持体を、その一方の挟持体が他方の挟持体に対して進退できるように設け、その可動の挟持体側に螺子軸を連結し、この螺子軸をレバーで回動操作することによって、前記可動の挟持体を固定の挟持体に向け移動させ、両挟持体間にワークを挟持しワークを位置固定するものである。万力はワークのあらゆる材質あるいは形状に対応できるが、脆性材料で特に扁平状のワークを挟持するには不向きでありワークが破損する。
【0004】
一方、極薄の磁性体からなるワークを保持する場合、電磁石あるいは永久磁石式のチャックが使用される。しかしながら、例えば、シリコンウエハー、アルミナセラミック等のような非磁性体からなるワークの場合、電磁石あるいは永久磁石式のチャックではワークを吸着することができない。
【0005】
そこで、このような非磁性体の扁平状ワークの場合は、真空チャックを使用する。しかしながら、例えば、厚さが0.1ミリメートル程度の極薄のワークになるとワークを吸着する真空の力によってワークが破壊する。
【0006】
一方、従来から、食材の調理から工業部品の加熱処理まで、種々の分野でホットプレートが用いられている。例えば、調理用ホットプレートにおいては、その構成材料はアルミニウムやその合金が多用されてきた。しかしながら、アルミニウム製ホットプレート では、アルミニウム自体の熱伝導率が低いために、食材を載せた部分のみ温度が下がるという問題が生じる。そこで、食材を載せた際に温度が下がったとしても、例えば食材を焼き上げることが可能な温度を維持するように、ホットプレート の温度を高く設定する必要があった。
【0007】
このようなアルミニウム製ホットプレートに対して、熱伝導率が高い銅をホットプレートに使用することが提案されている。銅製ホットプレートは設定温度までの立上げ時間が短く、また食材を載せても加熱源の熱が速やかに伝わるため、部分的な温度低下を起こしにくいものの、比熱が小さく蓄熱量が少ないために急熱・急冷となりやすく、均一な温度コントロールが難しいという問題を有している。
【0008】
そこで、銅製ホットプレート においては、その肉厚を厚くして蓄熱量を確保することが提案されているが、アルミニウムに比べて密度が大きいため重くて持ち運びが大変である。
【0009】
一方、ホットプレートの表面は、耐熱性、非粘着性の他金属製のヘラ等で容易に傷が付いたり剥がれたりすることの無いような耐磨耗性が要求される。しかしながら、銅製ホットプレートは柔らかいために、金属製のヘラを使って擦ると素地に達する傷が生じるといった耐摩耗性に劣る。
【0010】
この具体例として従来のホットプレートを図5に示す。銅製のホットプレートHの上にワークを載せ、内蔵されたヒータによってワックスを溶融する。ホットプレートHの外周面には補助プレート11を周設している。内蔵されたヒータは外部の温度制御箱Tに導通され、ホットプレートHの表面温度が制御される。工作機械の外でホットプレートHにワークを載せて温度150〜200℃でワックスを溶融し、冷めればワックスが硬化してワークが固着される。しかる後、ワークを載せたままホットプレートHを工作機械の上に移し螺子等を使って定位置にセットし、次いで、例えば図示のような丸穴や角穴の加工を開始する。このような作業によれば、工作機械にホットプレートHをセットする際、その都度螺子等による締め付け作業が面倒で加工前の準備に時間がかかり効率が悪い。
【0011】
ホットプレートの他の例として、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるホットプレート等の面に、セラミック顔料と六チタン酸カリウムウイスカーを含む耐摩耗性に優れた皮膜を形成する発明が提供されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0012】
【特許文献1】特開平10−323283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以上の通りであって、従来のホットプレートには、まとめると次のような問題点がある。即ち、従来のホットプレートは、皮膜材層が金属製のヘラ等で擦ると傷が発生し易い。また、工作機械にホットプレートHをセットする際、その都度螺子等による締め付けに時間を要する。
【0014】
そこで、本発明のホットプレートは、このような従来の持つ問題点を解決するためになされたもので、表面が耐摩耗性に優れた皮膜材層を有するホットプレートを提供することを目的としている。即ち、ワークをワックスによって接着する面に超硬の被膜層を形成した耐摩耗性に優れるホットプレートであって、工作機械に備える万力や電磁チャックの上にセットしたら即加工を開始できるように、固定枠と一体化したホットプレートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そこで、本発明者等は、極薄のシリコンウハーをワックスにより接着できることに着目し、ワックスを溶融させるためにヒータを組み込むことへ着想を発展させた。この着想に基づきホットプレートを試作したところ、チップ等小片を精度良く切断することができるという知見を得た。本発明のホットプレートはかかる知見を基に具現化したもので、請求項1の発明は、銅合金からなる基材部の側壁および底部の夫々外周面に断熱材層を周設し、さらに、これらの断熱材層の側壁および底部の夫々外周面に固定枠を周設したホットプレートであって、前記基材部の底部に凹部を形成してヒータを収納し、かつ、前記基材部の上面に超硬溶射による皮膜材層を形成することを特徴とするホットプレートである。
【0016】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明の上記特徴に加えて、前記皮膜材層に研磨を施すことを特徴とするホットプレートである。
【0017】
また、請求項3の発明は、請求項1の発明の上記特徴に加えて、前記固定枠の側壁および底部の夫々外周面に研磨を施すことを特徴とするホットプレートである。
【発明の効果】
【0018】
材質が磁性体であろうと非磁性体であろうとその材質にかかわらずワックスによってワークを接着、保持することが可能である。しかも、ワークは極薄の脆性材料で特に非磁性のシリコンウエハー、アルミナ等セラミックの扁平板であっても確実に接着、保持することができる。また、真空チャックの場合のようにワークの大きさに制限を受けることなく、極小のワークであってもワックスにより接着できる。そして、ホットプレートの上面に超硬材を溶射した皮膜材層を形成したので耐磨耗性に優れ、ワックスの付着分を擦り取るために金属製のヘラを使っても傷が発生し難い。その結果、ホットプレート上面の皮膜材層におけるワークの良好な基準面を維持することができ、ワーク加工の精度、特に直角度の精度を上げることができる等の効果を奏するものである。一方、工作機械へセットするために設けた固定枠と一体化したホットプレートの構造にしたので、工作機械に備える万力や電磁チャックの上にセットしたら即加工を開始することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施の形態を、添付図面に例示した本発明の実施例に基づいて以下に具体的に説明する。
【実施例】
【0020】
先ず、本発明の実施例1について、図1〜図4を参照しながら説明する。図1は、ホットプレートの全体を示す斜視図である。図2は、同上、断面図である。図3は、工作機械に備える万力にホットプレートを挟持した状態を示す。図4は、工作機械に備える電磁チャックにホットプレートを吸着した状態を示す。
【0021】
図1に示すように、ホットプレートHは略矩形状の箱体である。略矩形状の基材部1の上面を除く側壁外周面に断熱材層4、4、4、4を周設するとともに、基材部1の底部を覆うように断熱材層4を設ける。基材部1は矩形状の他、多角形でも円形状の箱体でも構わない。さらに、ホットプレートHの上面を除いて底部を含む断熱材層4の外周の5面に、焼き入れしたSK鋼からなる固定枠6を周設する。
【0022】
次に、図2の断面図に示すように、基材部1の上面に薄い皮膜材層3を形成する。基材部1には断面コ字状に形成された凹部2を備え、この凹部2にヒータ5が収納される。また、ホットプレートHの側壁からセンサー7が貫通し、この先端はヒータ5に導通し他端は温度制御箱Tに結線される。
【0023】
基材部1は銅あるいは銅合金からなり、熱伝導率が高くホットプレートの上面に亘ってワックスが均一に溶融させるような材料が好ましい。
【0024】
基材部1に蓄積された熱を外部と遮断するため、断熱材層4が設けられる。この材質として例えば、樹脂系のポリエーテル・エーテル・ケトンは耐熱性に優れ、しかも連続使用の最高温度は250℃であり、また、耐熱性、耐薬品性、耐摩耗性等に優れるので工業用途のホットプレート材として有効である。さらに、この樹脂材は難燃性を有するので高温状態での使用に好適である。場合によっては、絶縁性に優れる繊維入りのベークライト材を使用してもよい。
【0025】
基材部1の上面に超硬粉末を溶射することにより硬い皮膜材層3が形成される。超硬粉末材としてはパウダー状のWC−CO混合粉末あるいはWC−TiC−CO混合粉末を使用する。基材部1の上面に溶射された皮膜材層3は研磨せずにそのまま使用することも可能であるが、好ましくは皮膜材層3を鏡面研磨する。これによって、皮膜材層3におけるワークの接触抵抗が少なくなり、かつ、ワックスの付着分を剥離し易くなる。溶射された皮膜材層は0.3ミリメートル以上あればよいが、その上から鏡面研磨する場合は基材部1の黒皮が残らないように多少厚目がよい。
【0026】
以上のように構成され、次に作用について説明する。
【0027】
基材部1の側壁外周面に断熱材層4を周設し、かつ、底部を覆うように断熱材層4を設けるので、ホットプレートHから工作機械への熱伝導を遮断することができる。そのため、ホットプレートHの上面の全面に亘って均一に蓄熱され、150〜200℃でワックスが均一に溶融される。その後、ワックスの硬化によってワークWが固着されるが、ワックスの硬化は冷風を強制的に吹きつけて急冷あるいは自然放置する徐冷の方法による。このようにして、皮膜材層3の全面に亘ってワックスの硬化後の接着強度を均一に保つことができ、加工途中でワークWが剥がれる等のトラブルが生じ難い。
【0028】
工作機械の外で、ホットプレートの皮膜材層3の上にワークを並べ、ワークをワックスにより接着する。次に、ワークを接着したままこのホットプレートHを工作機械のテーブル上に移し、外周の固定枠6を介してテーブルに固着する。図2に示すホットプレートHは側壁外周に固定枠6を一体化した構造なので、例えば図3に示すように、工作機械に備える万力VにホットプレートHの側壁を瞬時に挟持し、直ぐ加工を開始できる。あるいは、図2に示すホットプレートHは底部に固定枠6を一体化した構造なので、図4に示すように、工作機械に備える電磁チャックMにホットプレートHの底部を瞬時に吸着させ、直ぐに加工を開始することができる。例えばシリコンウエハーに鏡面研磨を施し、次いで、チップ等の小片へ切断等の加工をする。
【0029】
基材部1の上面に超硬材を溶射した皮膜材層3を形成したので、ホットプレート表面における傷発生を抑止する効果がある。ホットプレート表面のワックスの付着分を擦りとるために金属製のヘラを使って擦っても傷が付き難いことがポイントである。硬い皮膜材層3なので、ワークをセットする基準面を凸凹状傷のない良好な面として維持することができ、加工後のワークの精度、特に直角度の精度を向上させる効果がある。
【0030】
固定枠6の側壁あるいは固定枠6の底部はホットプレートHを工作機械のテーブルに固着する際の基準面になるので精度よく研磨仕上げを施している。固定枠6は焼き焼き入れ処理されたSK鋼なので硬度が高く、表面に凸状の傷が発生し難い。従って、ホットプレートHが工作機械のテーブル面から傾斜したまま電磁チャックに吸着されるようなことが無い。あるいは、万力を使用して固定枠6の側壁を保持する際、固定枠6が傾いて挟持されるようなことが無い。その結果、ワークの加工精度、特に直角度の精度が向上する。以上のように、固定枠6はホットプレートHの上面を除く側壁および底部を構成する固定枠6の5面が焼き入れしたSK鋼なので硬く、表面に突起が生じ難いのでメンテナンスフリーにして加工の際の基準面を維持することができる。
【0031】
ホットプレートHには、ワークの処理量あるいはワックスの量、種類による異なる溶融温度および硬化速度を制御するためにセンサーを設ける。ワックスの溶融温度を正確に制御するので、基材部1の上面の全面に亘ってワークの接着強度を均一に保つことができ、加工途中にワークの剥がれる等のトラブルが生じない。
【産業上の利用可能性】
【0032】
なお、本発明の使途は、工業用を主として説明したが調理用の用途に使ってもよい。通常、調理用はテフロン(登録商標)によるコーティングのため金具を使うと傷ついて、その後付着しやすくなるが、本発明の超硬皮膜であれば金具を用いて少々荒っぽく食材を擦りとるような焼肉、お好み鉄板焼等の用途にも使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例に係わるホットプレートの全体斜視図である。
【図2】同上、断面図である。
【図3】同上、工作機械に備える万力にホットプレートを挟持した状態を示す。
【図4】同上、工作機械に備える電磁チャックにホットプレートを吸着した状態を示す。
【図5】従来例に係わるホットプレートの全体斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
H ホットプレート
M 電磁チャック
T 温度制御箱
V 万力
1 基材部
2 凹部
3 皮膜材層
4 断熱材層
5 ヒータ
6 固定枠
7 センサー
11 補助プレート
【技術分野】
【0001】
この発明は、種々の材質あるいは種々形状のワークを保持することのできる工業用のホットプレートに関する。詳しくは、ワークをワックスにより接着、保持する面に超硬の被膜層を形成した耐摩耗性に優れるホットプレートであって、しかも工作機械に備える万力や電磁チャックの上にセットして直ぐに加工を開始できるように工夫したホットプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
機械加工をするためにワークを保持する方法として、従来から万力により機械的に挟持する方法、電磁力あるいは真空により吸着する方法がある。
【0003】
これらの中、鋼等金属製の堅固なブロック状のワークを保持するには、一般的に万力が使用される。万力の基本的な構造は、例えば、しゃこ万力に見られるように、対向して配置した挟持体を、その一方の挟持体が他方の挟持体に対して進退できるように設け、その可動の挟持体側に螺子軸を連結し、この螺子軸をレバーで回動操作することによって、前記可動の挟持体を固定の挟持体に向け移動させ、両挟持体間にワークを挟持しワークを位置固定するものである。万力はワークのあらゆる材質あるいは形状に対応できるが、脆性材料で特に扁平状のワークを挟持するには不向きでありワークが破損する。
【0004】
一方、極薄の磁性体からなるワークを保持する場合、電磁石あるいは永久磁石式のチャックが使用される。しかしながら、例えば、シリコンウエハー、アルミナセラミック等のような非磁性体からなるワークの場合、電磁石あるいは永久磁石式のチャックではワークを吸着することができない。
【0005】
そこで、このような非磁性体の扁平状ワークの場合は、真空チャックを使用する。しかしながら、例えば、厚さが0.1ミリメートル程度の極薄のワークになるとワークを吸着する真空の力によってワークが破壊する。
【0006】
一方、従来から、食材の調理から工業部品の加熱処理まで、種々の分野でホットプレートが用いられている。例えば、調理用ホットプレートにおいては、その構成材料はアルミニウムやその合金が多用されてきた。しかしながら、アルミニウム製ホットプレート では、アルミニウム自体の熱伝導率が低いために、食材を載せた部分のみ温度が下がるという問題が生じる。そこで、食材を載せた際に温度が下がったとしても、例えば食材を焼き上げることが可能な温度を維持するように、ホットプレート の温度を高く設定する必要があった。
【0007】
このようなアルミニウム製ホットプレートに対して、熱伝導率が高い銅をホットプレートに使用することが提案されている。銅製ホットプレートは設定温度までの立上げ時間が短く、また食材を載せても加熱源の熱が速やかに伝わるため、部分的な温度低下を起こしにくいものの、比熱が小さく蓄熱量が少ないために急熱・急冷となりやすく、均一な温度コントロールが難しいという問題を有している。
【0008】
そこで、銅製ホットプレート においては、その肉厚を厚くして蓄熱量を確保することが提案されているが、アルミニウムに比べて密度が大きいため重くて持ち運びが大変である。
【0009】
一方、ホットプレートの表面は、耐熱性、非粘着性の他金属製のヘラ等で容易に傷が付いたり剥がれたりすることの無いような耐磨耗性が要求される。しかしながら、銅製ホットプレートは柔らかいために、金属製のヘラを使って擦ると素地に達する傷が生じるといった耐摩耗性に劣る。
【0010】
この具体例として従来のホットプレートを図5に示す。銅製のホットプレートHの上にワークを載せ、内蔵されたヒータによってワックスを溶融する。ホットプレートHの外周面には補助プレート11を周設している。内蔵されたヒータは外部の温度制御箱Tに導通され、ホットプレートHの表面温度が制御される。工作機械の外でホットプレートHにワークを載せて温度150〜200℃でワックスを溶融し、冷めればワックスが硬化してワークが固着される。しかる後、ワークを載せたままホットプレートHを工作機械の上に移し螺子等を使って定位置にセットし、次いで、例えば図示のような丸穴や角穴の加工を開始する。このような作業によれば、工作機械にホットプレートHをセットする際、その都度螺子等による締め付け作業が面倒で加工前の準備に時間がかかり効率が悪い。
【0011】
ホットプレートの他の例として、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるホットプレート等の面に、セラミック顔料と六チタン酸カリウムウイスカーを含む耐摩耗性に優れた皮膜を形成する発明が提供されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0012】
【特許文献1】特開平10−323283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以上の通りであって、従来のホットプレートには、まとめると次のような問題点がある。即ち、従来のホットプレートは、皮膜材層が金属製のヘラ等で擦ると傷が発生し易い。また、工作機械にホットプレートHをセットする際、その都度螺子等による締め付けに時間を要する。
【0014】
そこで、本発明のホットプレートは、このような従来の持つ問題点を解決するためになされたもので、表面が耐摩耗性に優れた皮膜材層を有するホットプレートを提供することを目的としている。即ち、ワークをワックスによって接着する面に超硬の被膜層を形成した耐摩耗性に優れるホットプレートであって、工作機械に備える万力や電磁チャックの上にセットしたら即加工を開始できるように、固定枠と一体化したホットプレートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そこで、本発明者等は、極薄のシリコンウハーをワックスにより接着できることに着目し、ワックスを溶融させるためにヒータを組み込むことへ着想を発展させた。この着想に基づきホットプレートを試作したところ、チップ等小片を精度良く切断することができるという知見を得た。本発明のホットプレートはかかる知見を基に具現化したもので、請求項1の発明は、銅合金からなる基材部の側壁および底部の夫々外周面に断熱材層を周設し、さらに、これらの断熱材層の側壁および底部の夫々外周面に固定枠を周設したホットプレートであって、前記基材部の底部に凹部を形成してヒータを収納し、かつ、前記基材部の上面に超硬溶射による皮膜材層を形成することを特徴とするホットプレートである。
【0016】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明の上記特徴に加えて、前記皮膜材層に研磨を施すことを特徴とするホットプレートである。
【0017】
また、請求項3の発明は、請求項1の発明の上記特徴に加えて、前記固定枠の側壁および底部の夫々外周面に研磨を施すことを特徴とするホットプレートである。
【発明の効果】
【0018】
材質が磁性体であろうと非磁性体であろうとその材質にかかわらずワックスによってワークを接着、保持することが可能である。しかも、ワークは極薄の脆性材料で特に非磁性のシリコンウエハー、アルミナ等セラミックの扁平板であっても確実に接着、保持することができる。また、真空チャックの場合のようにワークの大きさに制限を受けることなく、極小のワークであってもワックスにより接着できる。そして、ホットプレートの上面に超硬材を溶射した皮膜材層を形成したので耐磨耗性に優れ、ワックスの付着分を擦り取るために金属製のヘラを使っても傷が発生し難い。その結果、ホットプレート上面の皮膜材層におけるワークの良好な基準面を維持することができ、ワーク加工の精度、特に直角度の精度を上げることができる等の効果を奏するものである。一方、工作機械へセットするために設けた固定枠と一体化したホットプレートの構造にしたので、工作機械に備える万力や電磁チャックの上にセットしたら即加工を開始することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施の形態を、添付図面に例示した本発明の実施例に基づいて以下に具体的に説明する。
【実施例】
【0020】
先ず、本発明の実施例1について、図1〜図4を参照しながら説明する。図1は、ホットプレートの全体を示す斜視図である。図2は、同上、断面図である。図3は、工作機械に備える万力にホットプレートを挟持した状態を示す。図4は、工作機械に備える電磁チャックにホットプレートを吸着した状態を示す。
【0021】
図1に示すように、ホットプレートHは略矩形状の箱体である。略矩形状の基材部1の上面を除く側壁外周面に断熱材層4、4、4、4を周設するとともに、基材部1の底部を覆うように断熱材層4を設ける。基材部1は矩形状の他、多角形でも円形状の箱体でも構わない。さらに、ホットプレートHの上面を除いて底部を含む断熱材層4の外周の5面に、焼き入れしたSK鋼からなる固定枠6を周設する。
【0022】
次に、図2の断面図に示すように、基材部1の上面に薄い皮膜材層3を形成する。基材部1には断面コ字状に形成された凹部2を備え、この凹部2にヒータ5が収納される。また、ホットプレートHの側壁からセンサー7が貫通し、この先端はヒータ5に導通し他端は温度制御箱Tに結線される。
【0023】
基材部1は銅あるいは銅合金からなり、熱伝導率が高くホットプレートの上面に亘ってワックスが均一に溶融させるような材料が好ましい。
【0024】
基材部1に蓄積された熱を外部と遮断するため、断熱材層4が設けられる。この材質として例えば、樹脂系のポリエーテル・エーテル・ケトンは耐熱性に優れ、しかも連続使用の最高温度は250℃であり、また、耐熱性、耐薬品性、耐摩耗性等に優れるので工業用途のホットプレート材として有効である。さらに、この樹脂材は難燃性を有するので高温状態での使用に好適である。場合によっては、絶縁性に優れる繊維入りのベークライト材を使用してもよい。
【0025】
基材部1の上面に超硬粉末を溶射することにより硬い皮膜材層3が形成される。超硬粉末材としてはパウダー状のWC−CO混合粉末あるいはWC−TiC−CO混合粉末を使用する。基材部1の上面に溶射された皮膜材層3は研磨せずにそのまま使用することも可能であるが、好ましくは皮膜材層3を鏡面研磨する。これによって、皮膜材層3におけるワークの接触抵抗が少なくなり、かつ、ワックスの付着分を剥離し易くなる。溶射された皮膜材層は0.3ミリメートル以上あればよいが、その上から鏡面研磨する場合は基材部1の黒皮が残らないように多少厚目がよい。
【0026】
以上のように構成され、次に作用について説明する。
【0027】
基材部1の側壁外周面に断熱材層4を周設し、かつ、底部を覆うように断熱材層4を設けるので、ホットプレートHから工作機械への熱伝導を遮断することができる。そのため、ホットプレートHの上面の全面に亘って均一に蓄熱され、150〜200℃でワックスが均一に溶融される。その後、ワックスの硬化によってワークWが固着されるが、ワックスの硬化は冷風を強制的に吹きつけて急冷あるいは自然放置する徐冷の方法による。このようにして、皮膜材層3の全面に亘ってワックスの硬化後の接着強度を均一に保つことができ、加工途中でワークWが剥がれる等のトラブルが生じ難い。
【0028】
工作機械の外で、ホットプレートの皮膜材層3の上にワークを並べ、ワークをワックスにより接着する。次に、ワークを接着したままこのホットプレートHを工作機械のテーブル上に移し、外周の固定枠6を介してテーブルに固着する。図2に示すホットプレートHは側壁外周に固定枠6を一体化した構造なので、例えば図3に示すように、工作機械に備える万力VにホットプレートHの側壁を瞬時に挟持し、直ぐ加工を開始できる。あるいは、図2に示すホットプレートHは底部に固定枠6を一体化した構造なので、図4に示すように、工作機械に備える電磁チャックMにホットプレートHの底部を瞬時に吸着させ、直ぐに加工を開始することができる。例えばシリコンウエハーに鏡面研磨を施し、次いで、チップ等の小片へ切断等の加工をする。
【0029】
基材部1の上面に超硬材を溶射した皮膜材層3を形成したので、ホットプレート表面における傷発生を抑止する効果がある。ホットプレート表面のワックスの付着分を擦りとるために金属製のヘラを使って擦っても傷が付き難いことがポイントである。硬い皮膜材層3なので、ワークをセットする基準面を凸凹状傷のない良好な面として維持することができ、加工後のワークの精度、特に直角度の精度を向上させる効果がある。
【0030】
固定枠6の側壁あるいは固定枠6の底部はホットプレートHを工作機械のテーブルに固着する際の基準面になるので精度よく研磨仕上げを施している。固定枠6は焼き焼き入れ処理されたSK鋼なので硬度が高く、表面に凸状の傷が発生し難い。従って、ホットプレートHが工作機械のテーブル面から傾斜したまま電磁チャックに吸着されるようなことが無い。あるいは、万力を使用して固定枠6の側壁を保持する際、固定枠6が傾いて挟持されるようなことが無い。その結果、ワークの加工精度、特に直角度の精度が向上する。以上のように、固定枠6はホットプレートHの上面を除く側壁および底部を構成する固定枠6の5面が焼き入れしたSK鋼なので硬く、表面に突起が生じ難いのでメンテナンスフリーにして加工の際の基準面を維持することができる。
【0031】
ホットプレートHには、ワークの処理量あるいはワックスの量、種類による異なる溶融温度および硬化速度を制御するためにセンサーを設ける。ワックスの溶融温度を正確に制御するので、基材部1の上面の全面に亘ってワークの接着強度を均一に保つことができ、加工途中にワークの剥がれる等のトラブルが生じない。
【産業上の利用可能性】
【0032】
なお、本発明の使途は、工業用を主として説明したが調理用の用途に使ってもよい。通常、調理用はテフロン(登録商標)によるコーティングのため金具を使うと傷ついて、その後付着しやすくなるが、本発明の超硬皮膜であれば金具を用いて少々荒っぽく食材を擦りとるような焼肉、お好み鉄板焼等の用途にも使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例に係わるホットプレートの全体斜視図である。
【図2】同上、断面図である。
【図3】同上、工作機械に備える万力にホットプレートを挟持した状態を示す。
【図4】同上、工作機械に備える電磁チャックにホットプレートを吸着した状態を示す。
【図5】従来例に係わるホットプレートの全体斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
H ホットプレート
M 電磁チャック
T 温度制御箱
V 万力
1 基材部
2 凹部
3 皮膜材層
4 断熱材層
5 ヒータ
6 固定枠
7 センサー
11 補助プレート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅合金からなる基材部の側壁および底部の夫々外周面に断熱材層を周設し、
さらに、これらの断熱材層の側壁および底部の夫々外周面に固定枠を周設したホットプレートであって、
前記基材部の底部に凹部を形成してヒータを収納し、
かつ、前記基材部の上面に超硬溶射による皮膜材層を形成することを特徴とするホットプレート。
【請求項2】
前記皮膜材層に研磨を施すことを特徴とする請求項1記載のホットプレート。
【請求項3】
前記固定枠の側壁および底部の夫々外周面に研磨を施すことを特徴とする請求項1記載のホットプレート。
【請求項1】
銅合金からなる基材部の側壁および底部の夫々外周面に断熱材層を周設し、
さらに、これらの断熱材層の側壁および底部の夫々外周面に固定枠を周設したホットプレートであって、
前記基材部の底部に凹部を形成してヒータを収納し、
かつ、前記基材部の上面に超硬溶射による皮膜材層を形成することを特徴とするホットプレート。
【請求項2】
前記皮膜材層に研磨を施すことを特徴とする請求項1記載のホットプレート。
【請求項3】
前記固定枠の側壁および底部の夫々外周面に研磨を施すことを特徴とする請求項1記載のホットプレート。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2008−77962(P2008−77962A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−255573(P2006−255573)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(506317554)株式会社石川精工 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(506317554)株式会社石川精工 (2)
【Fターム(参考)】
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