説明

ホップ苞ポリフェノールの製造方法

ホップ苞を原料とし、効率良く、かつ精製度の高いホップ苞ポリフェノールを製造する方法、およびその精製度の高いホップ苞ポリフェノールを用いた飲食品、化粧品、医薬品を提供する。ホップ苞をアルコール水溶液にて抽出したのち、その抽出液を、残存アルコール濃度0.5〜2%まで濃縮し、遠心分離および/またはろ過工程を施すことによりホップポリフェノールを製造する方法である。該ポリフェノールは飲食品、化粧品、医薬品等へ利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ホップ苞ポリフェノールの製造方法およびその用途に関する。
【背景技術】
ホップはアサ科の多年生植物であり、その毬花(未受精の雌花が成熟したもの)を一般にホップと呼んでいる。ホップにはこの花部の他、葉、蔓、根などの各部が存在する。ホップの毬花に存在するルプリン部分(毬花の内苞の根元に形成される黄色の顆粒)は、ホップの苦味、芳香の本体であり、ビール醸造において酵母、麦芽と並んで重要なビール原料である。またホップは、民間療法では鎮静剤や抗催淫剤として通用している。ホップ苞はホップ毬花よりルプリン部分を除いたものであり、ビール醸造には有用とされず、場合によってはビール醸造の際に取り除かれ、副産物として生じる。その際、ホップ苞は土壌改良用の肥料や、家畜の飼料として用いられる他に特に有効な利用法は見い出されておらず、より付加価値の高い利用法の開発が望まれている。
なお、本出願人の出願にかかる下記特許文献1〜6ではホップ、特にホップ苞由来のポリフェノール類について、抗酸化作用、発泡麦芽飲料に対する泡安定化作用、抗う蝕作用、消臭作用、癌細胞転移抑制作用、トポイソメラーゼ阻害作用を有することを確認している。
1.特開平09−2917号公報
2.特開平09−163969号公報
3.特開平9−295944号公報
4.特開平10−25232号公報
5.特開2000−327582号公報
6.特開平2001−39886号公報
このように、ホップ苞ポリフェノールには多様な有用性が報告されてきたが、産業的に積極的に利用されるには至っていないのが現状である。その理由としては、ホップ苞ポリフェノール製造の際に、ホップ苞に由来するワックス、繊維分などの夾雑物が、ホップ苞ポリフェノール精製の各工程において多量の沈殿を生じ、作業や工程管理を難しくしていることが挙げられる。
【発明の開示】
本発明者らは、上記の課題について鋭意検討した結果、ホップ苞をアルコール水溶液にて抽出したのち、その抽出液を、残存アルコール濃度2v/v%以下まで濃縮し、遠心分離および/またはろ過などの清澄化工程を行うことにより極めて簡便に、しかも精製度の高いホップ苞ポリフェノールを得ることができることを見出した。これまでホップ苞ポリフェノールの製造については、本出願人の出願にかかる先にあげた特許文献1〜6などにその製造法の記載があるが、そのいずれも本発明の要点である、ホップ苞をアルコール水溶液にて抽出したのち、その抽出液を、残存アルコール濃度2v/v%以下まで濃縮し、遠心分離および/またはろ過などの清澄化工程を行うことは述べられていない。本発明者らは、さらにこの物質を、飲食品、化粧品、医薬品等に利用することにより本発明を完成した。医薬品としては、抗炎症剤、抗エネルギー剤、歯垢形成抑制剤、抗癌剤、癌細胞転移抑制剤とすることができる。
【図面の簡単な説明】
図1は本発明に従って製造したホップ苞ポリフェノール(実施例1)と、従来法で製造したホップ苞ポリフェノール(比較例1)の不溶性グルカン生成酵素の阻害活性の差異を示すグラフである。図中、対照(無添加)に比べカラムが低いほど、不溶性グルカン生成酵素が阻害され不溶性グルカン生成量が少なくなっていることを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の原料となるホップ苞とは、ホップ毬花よりルプリン部分を取り除いて得られるものであり、一般に、ホップ毬花を粉砕後、ふるい分けによってルプリン部分を除くことによってホップ苞を得る。ホップ苞はルプリン部分を除いた後、そのままの状態で原料として用いてもよいし、輸送に便利なようにペレット状に加工形成したものでもなんら問題ない。その他、ホップ毬花そのものやホップ毬花の超臨界抽出残渣など、ホップ苞を含むものであれば特にこれを問題なく原料として用いることができる。
ホップ苞ポリフェノールの製造法としては、まず原料であるホップ苞またはホップ苞ペレットなどを、50v/v%以下のアルコール水溶液で抽出する。好適な例として、50v/v%以下の含水エタノールが挙げられる。原料と抽出溶媒の割合は、1:10〜20(重量比)程度が望ましく、また抽出は30〜60℃、攪拌下、60〜180分間程度行われることが望ましい。ろ過により抽出液を得るが、その際必要があればベルトプレスなどで圧搾して抽出液の回収量を上げることもできる。また、圧搾したホップ苞に再度加水し、再度圧搾することにより、抽出物の回収量を上げることもできる。
このようにして得られたホップ苞抽出液は、緑色〜緑白色の液体であり、続いて残存アルコール濃度2v/v%以下まで濃縮した後、清澄化工程を行う。もしもこの清澄化工程を行わずに以降の工程を行った場合、各工程でワックスや繊維分に由来する沈殿を多量に生じ、作業に重大な障害を生じる。
ホップ苞抽出液を残存アルコール濃度2v/v%以下まで濃縮する際には、加熱濃縮、減圧濃縮など通常の方法であれば、特に問題なく用いることができる。また、この際にアルコールを回収して、再利用することもできる。
清澄化工程は、残存アルコール濃度2v/v%以下まで濃縮したホップ苞抽出液に遠心分離および/またはろ過工程を施すことにより行う。遠心分離は、通常の遠心分離機であれば、連続式、遠心管を用いる方式を問わず、特に問題なく用いることができる。好適な例としては、50〜10,000G程度の遠心力を生じうる連続式の遠心分離機による処理が挙げられる。
また必要があればホップ苞抽出液を10℃以下の低温で数日〜1ケ月程度保存し、沈殿を十分に発生させた後で取り除くこともできる。
上記清澄化工程で得られた原料液について、合成吸着剤にホップ苞ポリフェノールを吸着させる吸着工程、水またはエタノール水溶液、好ましくは水または10v/v%以下のエタノール水溶液によりゲル型合成吸着剤を洗浄する洗浄工程、30v/v%以上のエタノール水溶液またはエタノールによりゲル型合成吸着剤から吸着画分を溶出する溶出工程を行い、ホップ苞ポリフェノールを得る。
吸着工程とは、同抽出溶液を15〜30℃の室温程度まで冷却した後、合成吸着剤を充填したカラムに通液し、吸着剤に抗う蝕性素材を吸着させる工程である。ゲル型合成吸着剤の材質としては、親水性ビニルポリマー、ヒドロキシプロピル化デキストラン、スチレン−ジビニルベンゼン重合体などを挙げることができる。通液時間は、SV値が0.5〜10の間となるように設定するのが好ましい。なお、ここで言うSV値とは、以下の式で定義される値である。
SV値=(通液量(L))/{(樹脂量(L))×(通液時間(h))}
洗浄工程は、ホップ苞ポリフェノールを保持したゲル型合成吸着剤を洗浄する工程であり、この工程により夾雑成分を除き、ホップ苞ポリフェノールの精製度をよりあげることが可能となる。洗浄に用いる溶媒としては、水ないし1〜10v/v%のエタノール水溶液が好適であり、樹脂量の1〜5倍程度の溶媒量を通液し、洗浄することが望ましい。
溶出工程は、ホップ苞ポリフェノールを保持したゲル型合成吸着剤より抗う蝕性素材を脱離溶出する工程であり、溶出に用いる溶媒としては含水アルコール、含水アセトン、含水アセトニトリルなどを用いることができるが、特に好適な例としては30v/v%以上のエタノール水溶液またはエタノールが挙げられる。溶出溶媒の通液量は樹脂量の1〜6倍程度が望ましい。
得られた溶出液を減圧濃縮し、凍結乾燥、スプレードライなどの通常の方法により溶媒を除き、ホップ苞ポリフェノールを粉末として得ることができる。また減圧濃縮の際、アルコール、アセトン、アセトニトリルなどの溶媒を回収し、再利用することもできる。このようにして得られたホップ苞ポリフェノールは、かすかに苦味を呈した無臭の肌色、褐色ないし淡黄色の粉末である。
なお収率は、ホップ苞重量換算で1〜10.0w/w%である。使用したゲル型合成吸着剤は、アルコール水溶液、0.05N程度の水酸化ナトリウム水溶液などで洗浄した後、繰り返し使用することができる。
得られたホップ苞ポリフェノールは、それぞれの用途に合わせて、必要な量を飲食品、化粧品、医薬部外品、医薬品などに配合することができる。例えば、ホップ苞ポリフェノールを歯垢形成抑制剤として用いる場合は、菓子類、食品類、飲料などの飲食品、特に好ましくは、キャンディ、チョコレート、キャラメル、チューインガムなど、口腔滞留時間の比較的長い飲食品に用いることができる。また、うがい液、歯磨剤、マウスウォッシュ剤などの口腔用剤に添加して用いることもできる。これらの飲食品、口腔用剤にホップ苞ポリフェノールを添加する際には、ホップ苞ポリフェノールを粉末のまま添加してもよいが、好ましくは、ホップ苞ポリフェノールを1〜2v/v%の水溶液またはアルコール水溶液あるいはアルコール溶液とし、飲食品または口腔用剤に対し最終濃度が10〜5000ppm、好ましくは100〜1000ppmとなるように添加することが望ましい。
ホップ苞ポリフェノールは、一般に使用される担体、助剤、添加剤等とともに製剤化することができ、常法に従って経口、非経口の製品として医薬品として用いることができる。医薬品としては抗炎症剤、抗アレルギー剤、歯垢形成抑制剤、抗癌剤、癌細胞転移抑制剤などとすることができる。
医薬品は経口剤として錠剤、カプセル剤、顆粒剤、シラップ剤などが、非経口剤として軟膏剤、クリーム、水剤などの外用剤、無菌溶液剤や懸濁剤などの注射剤などがある。これらの製品を医薬として人体に投与するときは、2mg〜500mgを1日に1ないしは数回、すなわち2mg〜1000mgの全日量で投与し、十分にその効果を奏しうるものである。
本発明のホップ苞ポリフェノールを含有する医薬品は、生理的に認めうるベヒクル、担体、賦形剤、統合剤、安定剤、香味剤などとともに要求される単位容量形態を取ることができる。錠剤、カプセル剤に混和される佐薬は次のようなものである。トラガント、アラビアゴム、コーンスターチ、ゼラチンのような結合剤、微晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、全ゼラチン化澱粉、アルギン酸のような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤、ショ糖、サッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油、チェリーのような香味剤など。また、カプセル剤の場合は上記の材料に更に油脂のような液体担体を含有することができ、また、他の材料は被覆剤として、または製剤の物理的形態を別な方法で変化させることができる。例えば、錠剤はシェラック、砂糖で被覆することができる。シロップまたはエリキシル剤は、甘味剤としてショ糖、防腐剤としてメチルまたはプロピルパラベン、色素およびチェリーまたはオレンジ香味のような香味剤を含有することができる。
注射剤のための無菌組成物は、注射用水のようなベヒクル中の活性物質、ゴマ油、ヤシ油、落花生油、綿実油のような天然産出植物油、またはエチルオレートのような合成脂肪ベヒクルを溶解または懸濁させる通常の方法によって処方することができる。また、緩衝剤、防腐剤、酸化防止剤などを必要に応じて配合することができる。外用剤としては基材としてワセリン、パラフィン、油脂類、ラノリン、マクロゴールなどを用い、通常の方法によって軟膏剤、クリーム剤などとすることができる。
また本発明のホップ苞ポリフェノールは、飲食品に添加することもできる。本発明のホップ苞ポリフェノールを含有した飲食品は、上記製剤の形態でもよいが、あめ、せんべい、クッキー、飲料などの形態でそれぞれの食品原料に所要量を加えて、一般の製造法により加工製造することもできる。健康食品、機能性食品としての摂取は、病気予防、健康維持に用いられるので、経口摂取として1日数回に分けて、全日量として5mg〜500mgを含む加工品として摂取される。
これらの飲食品にホップ苞ポリフェノールを添加する際には、ホップ苞ポリフェノールを粉末のまま添加してもよいが、好ましくはホップ苞ポリフェノールを1〜2%の水溶液またはアルコール水溶液あるいはアルコール溶液とし、飲食品に対し最終濃度が10〜5000ppm、好ましくは100〜1000ppmとなるように添加することが望ましい。
【実施例】
以下、実施例を示すが本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1(清澄化工程を含むホップ苞ポリフェノールの調製)
ホップ苞50gを、1リットルの40v/v%エタノール水溶液で攪拌下、40℃、60分間抽出した。ガーゼで圧搾ろ過し、さらに加水して再圧搾して抽出液1リットルを得た。この抽出液を、ロータリーエバポレータを用いて500ミリリットルまで濃縮した。この際の残存エタノール濃度は約1%であった。この濃縮液を、4,000G、15分間遠心処理し、ろ紙でろ過した。このろ過液をスチレン−ジビニルベンゼン樹脂(三菱化学社製SP850)30gを充填したカラムにSV=1で通液し、次いでカラムを100ミリリットルの水で洗浄した。さらに同カラムに65v/v%エタノール水溶液120ミリリットルを通液し、同溶出液120ミリリットルを回収した。この溶出液を、ロータリーエバポレータを用いて30ミリリットルまで濃縮した後、凍結乾燥して、ホップ苞ポリフェノール1.7gを無臭のかすかに苦味を呈した褐色の粉末として得た。
比較例1(従来法によるホップ苞ポリフェノールの調製)
ホップ苞50gを、1リットルの40v/v%エタノール水溶液で攪拌下、40℃、60分間抽出した。ガーゼで圧搾ろ過し、さらに加水して再圧搾して抽出液1リットルを得た。この抽出液を、ロータリーエバポレータを用いて500ミリリットルまで濃縮した。この際の残存エタノール濃度は約1%であった。この濃縮液を、スチレン−ジビニルベンゼン樹脂(三菱化学社製SP850)30gを充填したカラムにSV=1で通液し、次いでカラムを100ミリリットルの水で洗浄した。さらに同カラムに65v/v%エタノール水溶液120ミリリットルを通液し、同溶出液120ミリリットルを回収した。この溶出液を、ロータリーエバポレータを用いて30ミリリットルまで濃縮した後、凍結乾燥して、ホップ苞ポリフェノール1.8gを無臭のかすかに苦味を呈した褐色の粉末として得た。
実施例2(歯磨剤)
第2リン酸カルシウム 42.0
グリセリン 18.0
カラギナン 0.7
ラウリル硫酸ナトリウム 1.2
サッカリンナトリウム 0.09
パラオキシ安息香酸ブチル0.005
実施例1で得たホップ苞ポリフェノール0.005
香料 1.0
水 37.0
合計 100.0
上記の各重量部の各成分を用い、常法に従って歯磨剤とした。
実施例3(洗口液)
グリセリン 7.0
ソルビトール 5.0
エチルアルコール 15.0
ラウリル硫酸ナトリウム 0.8
サッカリンナトリウム 0.1
1−メントール 0.05
香料 0.045
実施例1で得たホップ苞ポリフェノール0.005
水 72.0
合計 100.0
上記の各重量部の各成分を用い、常法に従って洗口液とした。
実施例4(トローチ剤)
アラビアゴム 6.0
ステアリン酸マグネシウム 3.0
ブドウ糖 73.0
乳糖 17.6
リン酸第2カリウム 0.2
リン酸第1カリウム 0.1
香料 0.095
実施例1で得たホップ苞ポリフェノール0.005
合計 100.0
上記の各重量部の各成分を用い、常法に従ってトローチ剤とした。
実施例5(飴)
ショ糖 20.0
水飴(75%固形分) 70.0
水 9.5
着色料 0.45
香料 0.045
実施例1で得たホップ苞ポリフェノール0.005
合計 100.0
上記の各重量部の各成分を用い、常法に従って飴とした。
実施例6(チューインガム)
ガムベース 20.0
炭酸カルシウム 2.0
乳糖 77.0
ステビオサイド 0.095
実施例1で得たホップ苞ポリフェノール0.005
香料 0.9
合計 100.0
上記の各重量部の各成分を用い、常法に従ってチューインガムとした。
実施例7(ジュース)
濃縮ミカン果汁 15.0
果糖 5.0
クエン酸 0.2
香料 0.1
色素 0.15
アスコルビン酸ナトリウム 0.048
実施例1で得たホップ苞ポリフェノール0.002
水 79.5
合計 100.0
上記の各重量部の各成分を用い、常法に従ってジュースとした。
実施例8(クッキー)
薄力粉 32.0
全卵 16.0
バター 16.0
砂糖 25.0
水 10.8
ベーキングパウダー 0.198
実施例1で得たホップ苞ポリフェノール0.002
合計 100.0
上記の各重量部の各成分を用い、常法に従ってクッキーとした。
実施例9(キャラメル)
グラニュー糖 31.0
水飴(75%固形分) 20.0
粉乳 40.0
硬化油 5.0
食塩 0.6
香料 0.025
実施例1で得たホップ苞ポリフェノール0.005
水 3.37
合計 100.0
上記の各重量部の各成分を用い、常法に従ってキャラメルとした。
実施例10(錠剤、カプセル剤)
実施例1で得たホップ苞ポリフェノール10.0
乳糖 75.0
ステアリン酸マグネシウム 15.0
合計 100.0
上記の各重量部を均一に混合し、常法に従って錠剤、カプセル剤とした。
【0037】
実施例11(散剤、顆粒剤)
実施例1で得たホップ苞ポリフェノール20.0
澱粉 30.0
乳糖 50.0
合計 100.0
上記の各重量部を均一に混合し、常法に散剤、顆粒剤とした。
【0038】
実施例12(注射剤)
実施例1で得たホップ苞ポリフェノール 1.0
界面活性剤 9.0
生理食塩水 90.0
合計 100.0
上記の各重量部を加熱混合、滅菌して注射剤とした。
【0039】
実施例13(ホップ苞ポリフェノール中のポリフェノール分の定量)
実施例1および比較例1で得たホップ苞ポリフェノールについて、フォーリンらの方法(O.Folin and W.Denis,J.Biol.Chem.22,305−308(1915))を参考にして、ポリフェノール含量を測定した。具体的には、試料溶液(20%メタノール水溶液)0.2ml、蒸留水0.8ml、フェノール試薬(関東化学)1.0ml、0.4M炭酸ナトリウム水溶液5.0mlを混和し、室温で30分間放置した後、分光光度計(日立U−2000)を用いて760nmにおける吸光度を測定した。標準試料として、一般的な天然ポリフェノールのひとつであるクロロゲン酸を用い、重量当りのクロロゲン酸含量として示した。実施例1および比較例1のポリフェノール含量測定結果を表1に示す。その結果、実施例1は、比較例1よりもポリフェノール含量が高かった。これは、前記方法に示した方法により、より精製度の高いホップ苞ポリフェノールを製造できたことを示している。

実施例14(虫歯菌の不溶性グルカン生成酵素に対する阻害作用)
実施例1および比較例1で得たホップ苞ポリフェノールについて、中原らの方法(K.Nakahara,S.Kawabata,H.Ono,K.Ogura,T.Tanaka,T.Ooshima,and S.Hamada,Appl.Environ.Microbiol.,59,968−973(1993))を参考にして虫歯菌の不溶性グルカン生成酵素に対する阻害作用を検討した。代表的な虫歯菌であるS.sobrinus(ATCC保存菌株33478)を培養し、遠心処理により菌体と培養上清を分離した。この培養上清を50%硫安で塩析し、沈殿を透析して不溶性グルカン生成酵素の粗液を得た。これらの酵素粗液、試験試料(終濃度200μg/ml)、シュークロース(終濃度50mM)を全量750μlの100mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.5)の混合溶液とし、30℃、16時間インキュベートした。インキュベート後、混合液を15,000rpm、10分間遠心処理し、上清を除いた後沈殿を100mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.5)とエタノールの1:1混合液で3回洗い込んだ。その沈殿を1Nの水酸化ナトリウム水溶液に溶解し、フェノール硫酸法で糖の定量を行った。
実施例1および比較例1の阻害率を図1に示す。その結果、実施例1は、比較例1よりも強い不溶性グルカン生成酵素阻害活性を示した。これは、本発明に示した方法により、より有用な、機能性の高いホップ苞ポリフェノールを製造できたことを示す。
【産業上の利用可能性】
本発明によれば、ホップ苞を原料として、従来のホップ苞ポリフェノールよりも精製度の高いホップ苞ポリフェノールを得ることができた。更に得られたホップ苞ポリフェノールは、飲食品、化粧品、医薬品等として容易に利用することができた。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホップ苞をアルコール水溶液にて抽出したのち、その抽出液を、残存アルコール濃度2v/v%以下まで濃縮し、清澄化工程を施すことによりホップ苞ポリフェノールを製造する方法。
【請求項2】
請求項1の方法で製造したホップ苞ポリフェノールを含有する飲食品。
【請求項3】
請求項1の方法で製造したホップ苞ポリフェノールを含有する化粧品。
【請求項4】
請求項1の方法で製造したホップ苞ポリフェノールを含有する医薬品。
【請求項5】
抗炎症剤、抗アレルギー剤、歯垢形成抑制剤、抗癌剤、または癌細胞転移抑制剤である請求項4記載の医薬品。

【国際公開番号】WO2004/052898
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【発行日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−558486(P2004−558486)
【国際出願番号】PCT/JP2003/015959
【国際出願日】平成15年12月12日(2003.12.12)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【Fターム(参考)】