説明

ホログラム再生装置、ホログラム再生方法

【課題】光学系を簡素化させ且つ再生性能を向上させる。
【解決手段】可干渉性の記録用参照ビームと記録すべき画像データに対応しておりフーリエ変換レンズを介した可干渉性のデータビームとをホログラム記録用媒体へ入射させて形成された干渉縞としてのホログラムを、可干渉性の再生用参照ビームを前記ホログラム記録用媒体へ入射させて得られる回折光に基づいて再生を行うホログラム再生装置、媒体の一方の面側に配設され、前記記録用参照ビームと同一の光路で前記再生用参照ビームの光路を形成する第1光学系と、前記一方の面とは反対となる前記ホログラム記録用媒体の他方の面側における前記データビームの光路上に配設され、前記再生用参照ビームを前記ホログラム記録用媒体の一方の面側より入射させて得られる回折光を受光して前記画像データに応じた第2光学系と、前記第2光学系において取り込まれたデータに逆フーリエ変換処理を施す制御部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラム再生装置、ホログラム再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
=== ホログラム記録再生の概要 ===
デジタルデータがホログラムとして記録されるホログラム記録用媒体としては、例えばガラス基板で光感受性樹脂(例えば、フォトポリマー)を封止して設けられたものがある。ホログラム記録用媒体にデジタルデータをホログラムとして記録させる場合、先ず、レーザー装置からの可干渉性のレーザービームをPBS(Polarization Beam Splitter)にて2つのレーザービームに分割する。そして、一方のレーザービーム(以下、『参照ビーム』と称する。)と、デジタルデータが2次元濃淡画像パターンとして形成されたSLM(Spatial Light Modulator)に他方のレーザービームを照射させることによって当該2次元濃淡画像パターンの情報が反映されたレーザービーム(以下、『データビーム』と称する。)を、ホログラム記録用媒体に所定角度をもって照射させることで、デジタルデータがホログラム記録用媒体に記録されることとなる。
【0003】
詳述すると、ホログラム記録用媒体を構成する光感受性樹脂は、有限数のモノマー(Monomer)を有し、参照ビームとデータビームとからなるレーザービーム(以下、レーザービームと略する)が照射されることにより、当該レーザービームの光量及び照射時間からなるエネルギーに応じてモノマーがポリマー(Polymer)と変化する。そして、このモノマーがポリマーに変化することにより、レーザービームのエネルギーに応じたポリマーからなる干渉縞が形成されることとなる。よって、この干渉縞がホログラム記録用媒体中に形成されることで、デジタルデータがホログラムとして記録されたことになる。その後、モノマーが消費された所へと残ったモノマーが移動(拡散)し、更に、レーザービームが照射されることによって、ポリマーへと変化する。なお、ホログラム記録用媒体中において、レーザービームのエネルギーに応じてモノマーがポリマーへと変化するときの様子を模式的に示した図を図8に示す。
【0004】
また、ホログラム記録用媒体に記録させるデジタルデータが大量の場合、参照ビームのホログラム記録用媒体への入射角を変えることによって多数のホログラムを形成する、所謂角度多重記録を行うことが可能である。例えば、ホログラム記録用媒体へ形成された1つのホログラムをページと称し、多数のページからなる多重ホログラムをブックと称するとする。図9は、角度多重記録におけるブックとページを模式的に示した図である。図9に示すように、角度多重記録においては、1つのブックに対し、参照ビームの入射角を変えることによって、例えば10ページのホログラムが形成されることとなる。このように、角度多重記録によって、大量のデジタルデータが記録できる。
【0005】
また、ホログラム記録用媒体からデジタルデータを再生する場合、当該デジタルデータを示す干渉縞に、当該干渉縞が形成されたときと同じ入射角で参照ビームを照射し、当該干渉縞にて回折された参照ビーム(以下、再生ビームという)をイメージセンサ等で受光する。イメージセンサ等で受光した再生ビームは、前述したデジタルデータを示す2次元濃淡画像パターンとなっている。なお、この2次元濃淡画像パターンとしては、ホログラム記録用媒体に記録されたデジタルデータの実像(real image)が結像される場合と、共役像(conjugate image)が結像される場合とがある。そして、この2次元濃淡画像パターンからデジタルデータをデコーダ等で復調することで、デジタルデータを再生できる。
【0006】
このように、ホログラム記録用媒体に対してホログラムの記録再生を行うシステムとしては、例えば、以下の特許文献1の図1に開示される。
【0007】
=== 実像再生の場合の光学系 ===
図10は、ホログラム記録再生装置において角度多重記録ならびに実像再生の場合の光学系(以下、従来例1と称する。)を示す。
【0008】
まず、角度多重記録の光学系としては、参照ビームがスキャナレンズ52を介してミラー51の設定された角度に応じた入射角によって、ホログラム記録用媒体50の記録位置に対して入射される。また、SLM53において形成された2次元濃淡画像パターンを反映したデータビームが、PBS54及びフーリエ変換レンズ55を介して、ホログラム記録用媒体50の記録位置に対して入射される。なお、フーリエ変換レンズ55によって、ホログラム記録用媒体50には、SLM53において形成された2次元濃淡画像パターンに対して2次元フーリエ変換に基づくスペクトラムレンジのホログラムが記録されることとなる。このように、フーリエ変換レンズ55を使用する理由としては、光路上にノイズが発生した場合であってもスペクトラムに展開することでノイズの影響を減少させることが可能となるためである。
【0009】
そこで、実像再生の場合の光学系としては、ミラー51の角度調整等を行い、記録時の参照ビームと同一の光路とさせた参照ビームをホログラム記録用媒体50に入射させる必要がある。なお、この場合、イメージセンサ57において記録時とは逆方向な実像が得られることとなる。また、ホログラム記録用媒体50に記録されているホログラムは、フーリエ変換レンズ55によるスペクトラムレンジのパターンとなるため、元の2次元濃淡画像パターンを得るためには、イメージセンサ57で得られた状態の画像に対して逆フーリエ変換処理を実施する必要がある。このため、ホログラム記録用媒体50を透過した再生ビームがイメージセンサ57で受光されるまでの光路上に、記録時に使用されたフーリエ変換レンズ55と同一特性のフーリエ変換レンズ56を配設する必要がある。
【0010】
=== 共役像再生の場合の光学系 ===
図11は、ホログラム記録再生装置において角度多重記録ならびに共役像再生の場合の光学系(以下、従来例2と称する。)を示す。なお、従来例1を示す図10と同様の構成要素については同一の符号を付してある。
【0011】
共役像再生の場合、記録時とは反対方向から参照ビームをホログラム記録用媒体50に入射させる必要がある。このため、記録時の参照ビームを生成するためのミラーシステム(ミラー51ならびにスキャナレンズ52)とはまた別に、再生時の参照ビームを生成するためのミラーシステムとして、ホログラム記録用媒体50を介した記録時の参照ビームの光路上にミラー58ならびにスキャナレンズ59を設けることとなる。そして、共役像再生の際には、再生ビームが、記録時のデータビームと同一光路上にあるフーリエ変換レンズ55並びにPBS54を再び通過し、PBS54の分離先に配設したイメージセンサ57において受光される。このように、共役像再生の場合、同一特性のフーリエ変換レンズ55、56のペアを設ける必要がなくなる。
【特許文献1】特開2004−177958号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、図10に示したような従来例1の場合、同一特性のフーリエ変換レンズ55、56のペアを使用しなければならないが、同一特性のフーリエ変換レンズ55、56のペアを製造する事は非常に困難である。また、フーリエ変換レンズ55、56の配置において高精度な位置決めが要求される。このように、従来例1では、高精度なフーリエ変換レンズ55、56ならびにそれらの高精度な配置が必要となり、他のホログラム記録再生装置によって記録されたホログラムを正常に再生できないといった、所謂、再生互換性(Interchangeability)の問題が発生する恐れがある。
【0013】
一方、図11に示したような従来例2の場合、従来例1の場合におけるフーリエ変換レンズ55、56のペアの代わりに、参照ビームを生成するためのミラーシステムが記録時と再生時夫々において必要となる。これらのミラーシステムは、従来例1の場合のフーリエ変換レンズ55、56のように同一特性を強く求められることはない。しかしながら、記録時と再生時の参照ビームは、一般的に、同一の入射角であることが必要であり、そのため、高精度なミラー制御が求められる。また、従来例2の場合、データビームと再生ビームが同一のフーリエ変換レンズ55を通過するため、SLM53とイメージセンサ57では必ず同一のフォーマットが要求される。このように、従来例2においては、従来例1よりも光学系の複雑さがさらに助長する恐れがある。
【0014】
このように、ホログラム記録再生装置において、従来例1を採用する場合であっても、従来例2を採用する場合であっても、複雑且つ高精度な光学系が要求されることとなる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述した課題を解決するための主たる本発明は、可干渉性の記録用参照ビームと記録すべき画像データに対応しておりフーリエ変換レンズを介した可干渉性のデータビームとをホログラム記録用媒体へ入射させて形成された干渉縞としてのホログラムを、可干渉性の再生用参照ビームを前記ホログラム記録用媒体へ入射させて得られる回折光に基づいて再生を行うホログラム再生装置において、前記ホログラム記録用媒体の一方の面側に配設され、前記記録用参照ビームと同一の光路で前記再生用参照ビームの光路を形成する第1光学系と、前記一方の面とは反対となる前記ホログラム記録用媒体の他方の面側における前記データビームの光路上に配設され、前記再生用参照ビームを前記ホログラム記録用媒体の一方の面側より入射させて得られる回折光を受光して前記画像データに応じたキャプチャ画像データを取り込む第2光学系と、前記第2光学系において取り込まれたキャプチャ画像データに逆フーリエ変換処理を施す制御部と、を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、光学系を簡素化させ且つ再生性能を向上させたホログラム再生装置ならびにホログラム再生方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
===ホログラム記録再生装置の全体構成===
図1をもとに、本発明の一実施形態に係るホログラム再生装置の構成について説明する。なお、図1に示すホログラム再生装置は、ホログラム再生のみに限らず、ホログラム記録も併せて行うホログラム記録再生装置とする。
【0018】
ホログラム記録再生装置は、CPU1、メモリ2、インタフェース3、接続端子4、バッファ5、再生・記録判別部6、エンコーダ7、マッピング処理部8、SLM(Spatial Light Modulator・空間光変調器)9、レーザー装置10、第1シャッター11、第1シャッター制御部12、PBS(Polarization Beam Splitter)13、第2シャッター14、第2シャッター制御部15、ガルボミラー16、ガルボミラー制御部17、ダイクロックミラー18、サーボレーザー装置19、スキャナレンズ20、フーリエ変換レンズ21、ディテクタ23、ディスク制御部24、ディスク駆動部25、カメラ27、DSP(Digital Signal Processor)28、デコーダ30、1/2波長板31を有する。
【0019】
インタフェース3は、接続端子4を介して接続されるホスト機器(パーソナルコンピュータ、ワークステーション等)と、ホログラム記録再生装置と、の間のデータ授受を行う。
【0020】
バッファ5は、ホログラム記録用媒体22に記憶されているデータを再生するためのホスト機器からの再生指示データが記憶される。また、バッファ5は、ホスト機器からのデータをホログラム記録用媒体22に記録させるための記録指示データが記憶される。更に、バッファ5は、ホログラム記録用媒体22に記録させるデータが記憶される。
【0021】
再生・記録判別部6は、バッファ5に再生指示信号又は記録指示信号が記録されているか否かを所定のタイミングで判別する。再生・記録判別部6は、バッファ5に再生指示データが記憶されていると判別すると、ホログラム記録再生装置にて再生処理を実行するための指示信号をCPU1に送信する。また、再生・記録判別部6は、バッファ5に記録指示データが記憶されていると判別すると、ホログラム記録再生装置にて記録処理を実行するための指示信号をCPU1に送信し、ホスト機器からのホログラム記録用媒体22に記憶させるデータをエンコーダ7に送信させる。更に、再生・記録判別部6は、ホログラム記録用媒体22に記憶させるデータ量の情報をCPU1に送信する。
【0022】
エンコーダ7は、バッファ5からのデータに対して誤り訂正符号の付与等のエンコード処理を行う。
【0023】
マッピング処理部8は、エンコーダ7からのデータを、2次元のデータ配列(例えば縦1280ビット×横1280ビット≒1.6メガビット)に並び替えて単位ページ配列データを形成する。
【0024】
SLM9は、マッピング処理部8にて形成された単位ページ配列データに基づいた2次元濃淡画像パターンを形成する。ここで、2次元濃淡画像パターンとは、例えば単位ページ配列データを構成するビットの一方のビット値(1)に対して明点(濃)、他方のビット値(0)に対して暗点(淡)として形成されるものである。なお、当該明点を反映したデータビームはモノマーを消費させる光強度を有し、当該暗点を反映したデータビームはモノマーの消費には至らない光強度を有する。
【0025】
ここで、SLM9は、例えば、縦1280ピクセル×横1280ピクセルの2次元濃淡画像パターンを形成可能であるものとすると、マッピング処理部8からの約1.6メガビットのデータを、1ビットデータに対して1ピクセルの明点又は暗点の2次元濃淡画像パターンとして形成することとなる。SLM9は、後述するように、レーザー装置10からのレーザービームが入射されるとフーリエ変換レンズ21へと反射する。この反射されたレーザービームは、SLM9にて形成された2次元濃淡画像パターンの情報が反映されたレーザービーム(以下、『データビーム』と称する。)となる。
【0026】
なお、図1に示すように、PBS13からの他方のレーザービームが直接的にSLM9に入射される場合に限らない。例えば、図2に示すように、第2シャッター14とSLM9との光路上にPBS90を設けて、そのPBS90から分離したレーザービームがSLM9に入射される場合としてもよい。
【0027】
レーザー装置10は、時間的コヒーレンス、空間的コヒーレンスに優れた可干渉性のレーザービームを第1シャッター11に出射する。レーザー装置10としては、ホログラムをホログラム記録用媒体22に形成すべく、例えば、ヘリウムネオンレーザー、アルゴンネオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザー、半導体レーザー、色素レーザー、ルビーレーザー等が用いられる。
【0028】
CPU1は、ホログラム再生装置を統括制御する。CPU1は、再生・記録判別部6からの記録指示データに基づく指示信号を受信すると、ホログラム記録用媒体22に形成されているピットからアドレス情報を読出す。そして、CPU1は、サーボレーザー装置19からのレーザービーム(以下、『サーボレーザービーム』と称する。)を、次のアドレス情報を示すホログラム記録用媒体22に設けられたピットに照射させるべく、ホログラム記録用媒体22を回転させるための指示信号をディスク制御部24に送信する。また、CPU1は、ガルボミラー制御部17によるガルボミラー16の角度調整を実行させるべく、当該ガルボミラー制御部17に指示信号を送信する。
【0029】
さらに、CPU1は、再生・記録判別部6からのデータ量の情報に基づいて、ホログラム記録用媒体22に形成されるホログラムの数(つまり、ページ数)を算出する。また、CPU1は、第1シャッター制御部12、第2シャッター制御部15に、第1シャッター11、第2シャッター14をそれぞれ開状態とするための指示信号を送信する。この結果、ホログラム記録用媒体22へのホログラム記録が開始される。そして、CPU1は、記録指示データに基づく記録処理が終了した場合、第1シャッター制御部12と第2シャッター制御部15に対して、第1シャッター11と第2シャッター14をそれぞれ閉状態とするための指示信号を送信する。この結果、ホログラム記録用媒体22へのホログラム記録が終了する。
【0030】
一方、CPU1は、再生・記録判別部6からの再生指示データに基づく指示信号を受信すると、ホログラム記録用媒体22に形成されている当該再生指示信号に応じたアドレス情報を示すピットに対して、サーボレーザー装置19からのサーボレーザービームを照射させるべく、ホログラム記録用媒体22を回転させるための指示信号をディスク制御部24に送信する。さらに、CPU1は、再生指示データに基づく指示信号を受信すると、第1シャッター制御部12に第1シャッター11を開状態とするための指示信号を送信するとともに、第2シャッター制御部15に第2シャッター14を閉状態とするための指示信号を送信する。また、CPU1は、ガルボミラー制御部17によるガルボミラー16の角度調整を実行させるべく、当該ガルボミラー制御部17に指示信号を送信する。この結果、ホログラム記録用媒体22からのホログラム再生が開始される。そして、CPU1は、再生指示データに基づく再生処理において所定時間が経過したと判別すると、第1シャッター制御部12に第1シャッター11を閉状態とするための指示信号を送信する。この結果、ホログラム記録用媒体22からのホログラム再生が終了する。なお、CPU1は、DSP28からの判別結果に基づく信号より再生処理を終了する場合もある。
【0031】
第1シャッター制御部12は、CPU1からの指示信号に基づいて、第1シャッター11を開状態又は閉状態とするための制御を行う。また、第1シャッター制御部12は、DSP28からの指示信号に基づいて、第1シャッター11を閉状態とするための制御を行う。第1シャッター制御部12は、第1シャッター11を開状態とするとき、第1シャッター11に開状態指示信号を送信する。また、第1シャッター制御部12は、第1シャッター11を閉状態とするとき、第1シャッター11に閉状態指示信号を送信する。
【0032】
第1シャッター11は、第1シャッター制御部12からの開状態指示信号に基づいて開状態となる。或いは、第1シャッター11は、第1シャッター制御部12からの閉状態指示信号に基づいて閉状態となる。第1シャッター11が閉状態となると、レーザー装置10からのレーザービームの1/2波長板31への入射が遮断されることとなる。
【0033】
1/2波長板31は、レーザー装置10からのレーザービームがPBS13へ入射される角度を定めるために、所定の傾きで設けられる。なお、この所定の傾きは、PBS13において2つのレーザービームに分離される割合を所望の割合とすべく定められる。
【0034】
PBS13は、1/2波長板31からのレーザービームを2つのレーザービームに分離する。PBS13にて分離された一方のレーザービームは、第2シャッター14に入射される。また、他方のレーザービーム(以下、『参照ビーム』と称する。)は、ガルボミラー16に入射される。
【0035】
ガルボミラー16は、PBS13からの参照ビームをダイクロックミラー18へ反射する。
ガルボミラー制御部17は、CPU1からの指示信号に基づいて、ガルボミラー16にて反射された参照ビームがダイクロックミラー18やスキャナレンズ20を介してホログラム記録用媒体22に入射される角度を調整すべく、当該ガルボミラー16の角度を制御する。ホログラム記録用媒体22への記録時において、ガルボミラー制御部17によるガルボミラー16の角度調整は、ホログラム記録用媒体22に2次元濃淡画像パターンの情報をホログラムとして記録させるために行われる。
【0036】
詳述すると、データビームと参照ビームがホログラム記録用媒体22内で干渉されることにより三次元の干渉縞(ホログラム)が形成される。つまり、このホログラム記録用媒体22にホログラムが形成されることによって、SLM9で設定された2次元濃淡画像パターンの情報が記録される。また、カルボミラー制御部17は、カルボミラー16の角度を調整、すなわち、参照ビームのホログラム記録用媒体22への入射角を変えることで、角度多重記録を可能としている。以下、ホログラム記録用媒体22に形成された1つのホログラムをページと称し、角度多重記録にて多数のページが重なってなる多重記録ホログラムをブックと称する。
【0037】
また、ホログラム再生時において、カルボミラー制御部17は、ホログラム記録用媒体22に形成されたホログラムに参照ビームを入射させるべく、ガルボミラー16の角度を制御する。なお、ホログラム再生時のカルボミラー16の角度調整は、ホログラム記録時の参照ビームと同一入射角で参照ビームをホログラムに入射させるべく実行される。
【0038】
サーボレーザー装置19は、ホログラム記録用媒体22に設けられたピットを照射することによって、当該ピットが示すアドレス情報に基づいて、当該ホログラム記録用媒体22に形成されたホログラムの位置を検出すべく、サーボレーザービームをダイクロックミラー18に出射する。サーボレーザー装置19から出射されるサーボレーザービームは、ホログラム記録用媒体22に形成されたホログラムに影響のない所定波長のビームである。なお、本実施形態においては、レーザー装置10から出射されるレーザービームに青色レーザービームを使用し、当該青色レーザービームよりも長い波長である赤色レーザービームをサーボレーザービームとして使用するものとする。
【0039】
サーボレーザー装置19からのサーボレーザービームの出射は、例えば、ホログラム記録再生装置が起動開始するとともにサーボレーザービームの出射を開始し、当該ホログラム記録再生装置が起動している間、サーボレーザービームを出射し続けるものである。しかし、サーボレーザー装置19はサーボレーザービームを出射し続けるものとしているが、これに限定するものではない。例えば、ホログラム記録再生装置によるホログラム記録用媒体22へのデータの記録時には、当該ホログラム記録用媒体22は停止状態となる。そのため、サーボレーザービームのピットへの照射が必ずしも必要とされない期間では、サーボレーザー装置19によるサーボレーザービームの照射を停止するようにしても良い。この結果、サーボレーザー装置19のサーボレーザービームの出射に係る負荷を減じることができる。
【0040】
ダイクロックミラー18は、ガルボミラー16にて反射された参照ビームを透過してスキャナレンズ20へと入射させるものである。また、ダイクロックミラー18は、サーボレーザー装置19から出射されたサーボレーザービームを反射してスキャナレンズ20へと入射させるものである。
【0041】
スキャナレンズ20は、ダイクロックミラー18を介して入射されるガルボミラー制御部17にて角度調整されたガルボミラー16からの参照ビームを、ホログラム記録用媒体22に確実に照射させるべく当該参照ビームを屈折させる。また、スキャナレンズ20は、ダイクロックミラー18にて反射させたサーボレーザー装置19からのサーボレーザービームを、ホログラム記録用媒体22に入射させる。
【0042】
第2シャッター制御部15は、CPU1からの指示信号に基づいて、第2シャッター14を開状態又は閉状態とするための制御を行う。第2シャッター制御部15は、第2シャッター14を開状態とするとき、第2シャッター14に開状態指示信号を送信する。また、第2シャッター制御部15は、第2シャッター14を閉状態とするとき、第2シャッター14に閉状態指示信号を送信する。
【0043】
第2シャッター14は、第2シャッター制御部15からの開状態指示信号に基づいて開状態となる。或いは、第2シャッター14は、第2シャッター制御部15からの閉状態指示信号に基づいて閉状態となる。第2シャッター14が閉状態となると、PBS13にて分離された一方のレーザービームのSLM9への入射が遮断されることとなる。なお、第2シャッター14は、SLM9からフーリエ変換レンズ21を介してホログラム記録用媒体22へ入射されるデータビームの光路上に設けてもよい。
【0044】
フーリエ変換レンズ21は、SLM9からのデータビームを集光しつつ、当該データビームに対してフーリエ変換処理を施した後にホログラム記録用媒体22に入射させるものである。
【0045】
ホログラム記憶用媒体22は、データをホログラムとして記憶可能な光感受性樹脂(例えばフォトポリマー・銀塩乳剤・重クロム酸ゼラチン・フォトレジスト等)が用いられ、当該光感受性樹脂をガラス基板で封止して構成されている。ホログラム記録用媒体22には、フーリエ変換レンズ21からの2次元濃淡画像パターンを示すフーリエ変換されたデータビームと、スキャナレンズ20からの参照ビームとの干渉からホログラムが形成される。そして、ホログラム記録用媒体22は、ガルボミラー制御部17によるガルボミラー16の角度調整が行われ、当該角度調整後のガルボミラー16からの参照ビームとデータビームとの干渉によりホログラムが再び形成されることにより角度多重記録が行われブックが形成される。
【0046】
また、ホログラム記録用媒体22を構成するガラス基板には、例えば予めウォブル(Wobble)が形成されており、当該ホログラム記録用媒体22に形成されるホログラムの位置を定めるためのアドレス情報が、ピットとして当該ウォブルに予め形成されている。そして、スキャナレンズ20から入射されるサーボレーザー装置19からのサーボレーザービームがアドレス情報を示すピットに照射される。アドレス情報を示すピットを照射した後のサーボレーザービームは、ディテクタ23に入射される。
【0047】
カメラ27は、ホログラム記録用媒体22からのデータの再生時において、フーリエ変換された2次元濃淡画像パターンを示すホログラムによって参照ビームが回折されたビーム(以下、再生ビームと称する。)が直接的に入射される。なお、再生ビームには、参照ビームがホログラム記録用媒体22に入射されたときの入射角によって、当該参照ビームが回折されたときのホログラムに基づくフーリエ変換された2次元濃淡画像パターンの情報が含まれている。
【0048】
よって、カメラ27は、入射された再生ビームから、SLM9で設定された2次元濃淡画像パターンに対応した光学像を結像させる。また、カメラ27は、DSP28からの指示信号に基づいて、結像させた光学像の明暗の光量に応じたアナログ量の画像データ(以下、『キャプチャ画像データ』と称する。)をDSP28へと送信する。
【0049】
DSP28は、カメラ27において所定の座標位置、所定の倍率、所定の光量等のパラメータに基づいて所望のキャプチャ画像データを取り込ませるべく、カメラ27をサーボ駆動させるためのサーボ制御を行う。ここで、DSP28は、カメラ27において所望のキャプチャ画像データが再現されたか否かを判別するとともに、当該判別結果に基づく信号をCPU1へと送信することとする。また、DSP28は、カメラ27において所望のキャプチャ画像データが再現された旨を判別したとき、第1シャッター制御部12に第1シャッター11を閉状態とするための指示信号を送信する。そして、DSP28は、再現されたキャプチャ画像データに対して所定のフィルタ処理を施した後、さらに、逆フーリエ変換処理を施すこととなる。
【0050】
デコーダ30は、DSP28において各種処理が施されたキャプチャ画像データに対して誤り訂正処理等のデコード処理を行う。
【0051】
ディテクタ23は、サーボレーザー装置19からのサーボレーザービームが、ホログラム記録用媒体22に形成されたアドレス情報を示すピットを照射した後の当該サーボレーザービームが入射される。ディテクタ23は、例えば、4分割フォトダイオードから構成され、当該4分割フォトダイオードが検出するサーボレーザービームの光量情報をディスク制御部24に送信する。また、ディテクタ23は、アドレス情報を示すピットを照射したサーボレーザービームに基づいて、当該アドレス情報をCPU1に送信する。
【0052】
ディスク制御部24は、ディテクタ23からのサーボレーザービームの光量情報に基づいて、ディスク駆動部25をサーボ制御する。また、ディスク制御部24は、再生(又は記録)時において、CPU1からの指示信号に基づいて、ホログラム記録用媒体22の所望のアドレス情報を示すピットにサーボレーザービームを照射させるべく、ホログラム記録用媒体22を回転させるための指示信号をディスク駆動部25に送信する。また、ディスク制御部24は、前述したブックがホログラム記録用媒体22に形成されたとき、ホログラム記録用媒体22のその他の位置にホログラムを形成させるべく、当該ホログラム記録用媒体22を回転させるための指示信号をディスク駆動部25に送信する。
【0053】
メモリ2は、CPU1が前述した処理を行うためのプログラムデータが予め記憶されている。また、メモリ2は、前述したCPU1からのホログラム記録用媒体22に形成されているピットからのアドレス情報が記憶される。メモリ2は、データを電気消去することによりデータを繰り返し書き込み読み出しできる不揮発性記憶素子で構成される。
【0054】
=== ホログラム記録再生装置の光学系===
図2をもとに、本発明の一実施形態に係るホログラム記録再生装置の光学系を詳細に説明する。なお、図2に示す光学系は、ガルボミラー16の角度調整による角度多重記録と、記録時と再生時夫々の参照ビームを同一光路(すなわち、夫々の入射角が同一角度となる場合)とする実像再生を行うものである。
【0055】
まず、角度多重記録の光学系として、SLM9において形成された2次元濃淡画像パターンを反映したデータビームが、PBS90及びフーリエ変換レンズ21を介して、ホログラム記録用媒体22の記録位置の一方の面側へ入射される。また、記録時の参照ビーム(以下、『記録用参照ビーム』と称する。)がスキャナレンズ20を介してガルボミラー16の設定された角度に応じた入射角によって、ホログラム記録用媒体22の記録位置の一方の面側へ入射される。この結果、ホログラム記録用媒体22には、SLM9において形成された2次元濃淡画像パターンに対して2次元フーリエ変換に基づくスペクトラムレンジのホログラムが多重記録される。
【0056】
一方、実像再生の場合の光学系として、ガルボミラー16の角度調整等を行い、記録用参照ビームと同一の光路とする再生時の参照ビーム(以下、『再生用参照ビーム』と称する。)を、ホログラム記録用媒体22の一方の面側へ入射させる必要がある。そこで、再生用参照ビームの光路を形成するための光学系は、データビームの光路を形成するための光学系と同様に、ホログラム記録用媒体22の一方の面側に配設されて、記録用参照ビームの光路と同一な再生用参照ビームの光路を形成させるものである。再生用参照ビームの光路を形成するための光学系は、例えば、図1に示すように、ガルボミラー16、PBS18、スキャナレンズ20によって構成される。ここで、再生用参照ビームの光路を形成する光学系は、本発明に係る『第1光学系』の一実施形態である。
【0057】
また、再生用参照ビームがホログラム記録用媒体22の一方の面側へと入射した結果得られる回折光(再生ビーム)を受光して、キャプチャ画像データを取り込むべく、ホログラム記録用媒体22の他方の面側におけるデータビームの光路上にカメラ27を配設する。ここで、カメラ27は、本発明に係る『第2光学系』の一実施形態である。
【0058】
カメラ27は、図2に示すように、焦点距離を可変とするズームレンズ271の光学系や、各種サーボ駆動をさせるためのカメラサーボ機構272、CCDセンサやCMOSセンサ等のイメージセンサ274を搭載したカメラ基板273等によって構成され、ズーム機能やトリミング機能が具備されることとする。そして、カメラ27は、前述したように、入射された再生ビームより、SLM9で設定された2次元濃淡画像パターンに対応した光学像をズームレンズ271を介して結像させるとともに、カメラ基板273上のイメージセンサ274の光電変換によってキャプチャ画像データを生成する。
【0059】
DSP28は、カメラ制御部281、逆フーリエ変換処理部282、フィルタ処理部283、を有する。また、DSP28は、所定のメモリ284とアクセス可能とする。ここで、DSP28は、本発明に係る『制御部』の一実施形態である。なお、本発明に係る『制御部』は、DSP28に限定されず、CPU1や、カメラ基板273上に集積化した回路としてもよい。
【0060】
カメラ制御部281は、所望のキャプチャ画像データを正常に取り込むべく、カメラ27をサーボ駆動させるための制御を行う。このような制御としては、カメラ27を所定の座標位置とさせるための位置サーボや、ズームレンズ271を所定の倍率とさせるズームサーボがある。また、カメラ制御部281は、キャプチャ画像データの画像サイズを指定倍率に拡大すべくズームサーボを行い、当該ズームサーボによって拡大されたキャプチャ画像データのうち指定範囲のものを取り込む、所謂トリミング処理を行う。さらに、カメラ制御部281は、データビームや参照ビームの光路上にある各種レンズの収差に伴うキャプチャ画像データの補正処理を行うことも可能である。
【0061】
逆フーリエ変換処理部282は、A/D変換後のキャプチャ画像データに対して逆フーリエ変換処理を施すものである。すなわち、ホログラム記録時には、データビームがフーリエ変換レンズ21を通過するため、ホログラム記録用媒体22には2次元フーリエ変換が施された2次元濃淡画像パターンが記録されることとなる。ここで、2次元空間におけるフーリエ変換は、直交座標g(x、y)に対して、以下の(式1)で表される。
【数1】

【0062】
ここで、逆フーリエ変換処理部282は、A/D変換後のキャプチャ画像データに対してフーリエ変換レンズ21による2次元フーリエ変換の効果を取り除くために、以下の(式2)で表されるような逆フーリエ変換処理を行うこととなる。なお、この逆フーリエ変換処理は、高速フーリエ変換アルゴリズムに従って実施する。
【数2】

【0063】
フィルタ処理部283は、逆フーリエ変換処理が施されたキャプチャ画像データに対して、デコーダ30による2値化処理の分離性を高めるべく所定のフィルタ処理を行う。すなわち、カメラ27にて再現されたキャプチャ画像データは、データビームや再生ビーム等が受けるノイズなどにより、SLM9にて形成された2次元濃淡画像パターンの明暗の濃淡に比べ、明確な濃淡が再現されない場合がある。そのため、カメラ27にて再現されたキャプチャ画像データが、‘明’を示すレベルであるか‘暗’を示すレベルであるかを判別できず、デコード処理が適切に行われない場合がある。そこで、フィルタ処理部283は、自身のフィルタ処理によって、キャプチャ画像データのレベル補正を行うこととする。
【0064】
メモリ284は、カメラ制御部281の各種制御に用いられる制御情報が格納される記憶素子である。なお、メモリ284は、CPU1がアクセス可能なメモリ2と兼用してもよい。
【0065】
このように、本発明に係るホログラム記録再生装置では、記録用参照ビームと同一光路とする再生用参照ビームの光路を形成して実像を再生するための光学系を備える。また、図10に示したようにホログラム記録用媒体50の一方の面と他方の面の両側に配設されていたフーリエ変換レンズ(55、56)を、データビーム及び記録用/再生用参照ビームを入射する側であるホログラム記録用媒体22の一方の面側のみに配設する。また、ホログラム記録用媒体22の他方の面側には、フーリエ変換レンズ56の代わりにカメラ27を配設し、カメラ27においてフーリエ変換レンズ56を介さずにキャプチャ画像データを直接的に取り込むこととする。そして、キャプチャ画像データに対して逆フーリエ変換処理を施すためのDSP28を設ける。
【0066】
よって、図10に示したような従来例1と比べて、ホログラム記録用媒体50の他方の面側に配設されていたフーリエ変換レンズ56が除去された分、同一特性のフーリエ変換レンズ(55、56)のペアを設けなければならないという制約がなくなる。また、図11に示したような従来例2と比べて、記録用参照ビームと再生用参照ビームを同一光路とする実像再生の場合の光学系を採用したので、記録用参照ビームと再生用参照ビームを同一の入射角とさせるための高精度なミラー制御を行わずに済む。このように、本発明に係るホログラム記録再生装置は、従来例1、2と比べて光学系が簡素化され、複雑な光学系とならない分、レンズの収差や配設位置のズレ等に起因した光路上のノイズの影響が少なくなり、ホログラム再生の品位を向上させることが可能となる。
【0067】
また、本発明に係るホログラム記録再生装置では、DSP28が、逆フーリエ変換処理の前に、ズームレンズ271やカメラ27自体をサーボ駆動させてキャプチャ画像データを正常に取り込ませることで、データビーム入射側に残しておいたフーリエ変換レンズの製造バラツキや配設位置のズレ等に起因したキャプチャ画像データの歪みや位置ズレを解消することができる。また、この結果、他のホログラム記録装置によってホログラムが記録されたホログラム記録用媒体22からホログラムを再生する場合であっても、ズームレンズ271やカメラ27自体をサーボ駆動させてキャプチャ画像データをより確実に取り込めることとなり、所謂、再生互換性の向上につながる。さらに、データビーム入射側にフーリエ変換レンズ21を残しておくことで、データビーム入射側のフーリエ変換を高速に行えることとなる。
【0068】
=== キャプチャ画像データの座標調整 ===
図3、図4、図5をもとに、DSP28及びカメラ27において実施されるキャプチャ画像データの座標調整について説明する。
【0069】
例えば、再生用参照ビームをもとに形成された再生ビームの光路に対して、ズームレンズ27の配設位置にズレが生じている場合とする。この場合、当然のことながら、カメラ27において取り込まれたキャプチャ画像データの座標位置にズレが生じることとなる。例えば、図3に示すように、カメラ基板273のイメージセンサ274においてX軸ならびにY軸を設定しておいた上で、キャプチャ画像データがX軸方向にずれる場合がある。また、同様に、図4に示すように、キャプチャ画像データがY軸方向にずれる場合がある。さらに、図5に示すように、X軸ならびにY軸をもとに規定される円周の回転方向θにずれる場合がある。
【0070】
これらの場合において、DSP28は、カメラ制御部281によって、キャプチャ画像データの座標位置を調整すべくカメラサーボ機構272のX軸、Y軸又は回転方向への位置サーボを制御することとする。例えば、カメラ27にて再現されたキャプチャ画像データ中の任意ピクセルをターゲットマークとし、当該ターゲットマークがカメラ基板273上のイメージセンサ274の所定位置と照合するか否かを判別する。そして、当該位置サーボ制御後の座標調整がなされたキャプチャ画像データに対して逆フーリエ変換処理やフィルタ処理を施すこととする。
【0071】
このように、DSP28が、カメラ制御部281によって、カメラサーボ機構272の位置サーボを駆動することで、キャプチャ画像データの座標位置を調整する仕組みを設けることとする。この結果として、キャプチャ画像データの座標位置のズレを解消することが可能となりホログラムの再生性能を向上させることが可能となる。また、他のホログラム再生装置でのホログラム再生をより確実なものとする、所謂、再生互換性を向上させることができる。
【0072】
=== キャプチャ画像データの画像サイズ調整 ===
図6をもとに、DSP28及びカメラ27において実施されるキャプチャ画像データの画像サイズ調整について説明する。
【0073】
例えば、再生用参照ビームや再生ビームの光路上でのレンズの収差や配設位置のズレに基づくノイズ要因によって、カメラ27において取り込まれたキャプチャ画像データの画像サイズが、図6に示すように、SLM9において設定された2次元濃淡画像パターンの画像サイズ(縦1280ピクセル×横1280ピクセル)と適合せず、拡大若しくは縮小される場合がある。また、他のホログラム記録再生装置において倍率X.XXのフーリエ変換レンズ21を介してホログラム記録されたホログラム記録用媒体22を、倍率X.XXとは異なる倍率Y.YYのフーリエ変換レンズ21を備えた本発明に係るホログラム記録再生装置において再生する場合、ホログラム記録用媒体22に記録されたホログラムの実サイズと、キャプチャ画像データの画像サイズが適合しない場合が起こり得る。
【0074】
そこで、DSP28は、カメラ制御部281によって、カメラ27において取り込ませるキャプチャ画像データの画像サイズを拡大若しくは縮小することで、キャプチャ画像データの画像サイズを、メモリ284に予め格納しておいた2次元濃淡画像パターンの画像サイズ情報(Pixel、Pitch等)に適合すべく、カメラサーボ機構272のズームサーボを制御する。そして、当該ズームサーボ制御後の画像サイズ調整がなされたキャプチャ画像データに対して逆フーリエ変換処理やフィルタ処理を施すこととする。
【0075】
なお、本発明に係るホログラム記録再生装置のみでホログラム記録/再生を実施する場合には、ホログラム再生時におけるキャプチャ画像データの画像サイズ調整に備えて、ホログラム記録時に設定された2次元濃淡画像パターンの画像サイズ情報をメモリ284に格納しておくこととする。
【0076】
一方、本発明に係るホログラム記録再生装置が、他のホログラム記録再生装置でホログラム記録されたホログラム記録用媒体22よりホログラム再生する場合、他のホログラム記録再生装置がホログラム記録した際の記録画像情報(2次元濃淡画像パターンの画像サイズ情報等)をメモリ284へ予め転送しておくこととする。
【0077】
ここで、ホログラム記録用媒体22は光に対して感度を有するため、通常の状態ではホログラム記録用媒体22への光を遮蔽すべく、カートリッジ等の光遮蔽容器内部にホログラム記録用媒体22を格納しておく実施態様となる。そこで、前述したような他機種との再生互換性を想定する場合、ホログラム記録用媒体22が格納された光遮蔽容器内に所定のメモリを実装し、ホログラム記録の際に、その光遮蔽容器内の所定のメモリに記録画像情報を格納しておくこととする。また、本発明に係るホログラム再生装置は、ホログラム再生の際に、光遮蔽容器内の所定のメモリを介して画像情報をメモリ284へと転送する仕組みとする。なお、光遮蔽容器内の所定のメモリからメモリ284への記録画像情報の転送は、接点方式や、無接点方式(RFID方式等)を採用することができる。
【0078】
なお、将来的にホログラム記録用媒体22の物理フォーマットが確定すれば、ホログラム記録用媒体22にホログラムと併せてその記録画像情報も記録しておき、ホログラム再生時に、ホログラム記録用媒体22から記録画像情報を再生してメモリ284へと格納することも可能である。
【0079】
このように、DSP28が、カメラ制御部281によって、カメラサーボ機構272のズームサーボを駆動することで、キャプチャ画像データの画像サイズを調整する仕組みを設けることとする。この結果として、キャプチャ画像データの画像サイズのズレを解消することが可能となり、ホログラムの再生性能を向上させることが可能となる。また、従来のように、SLM9で設定される2次元濃淡画像パターンの画像サイズとカメラ27において取り込ませるキャプチャ画像データの画像サイズを予め合わせておく必要もなくなる。さらに、他のホログラム再生装置でのホログラム再生をより確実なものとする、所謂、再生互換性を向上させることができる。
=== キャプチャ画像のトリミング ===
図7をもとに、DSP28及びカメラ27において実施されるキャプチャ画像データのトリミングについて説明する。
例えば、カメラ27において取り込まれたキャプチャ画像データの一部を拡大ならびに切り出して高解像度で解析したい場合がある。
そこで、DSP28は、カメラ制御部281によって、カメラ27において取り込ませるキャプチャ画像データの画像サイズを指定された倍率に拡大すべく、カメラサーボ機構272のズームサーボを制御することとする。さらに、DSP28は、カメラ制御部281によって、指定倍率に拡大されたキャプチャ画像データの一部(指定範囲)を取り込む。そして、DSP28は、当該取り込んだ一部のキャプチャ画像データに対して逆フーリエ変換処理やフィルタ処理を施すこととする。
【0080】
このように、DSP28が、カメラ制御部281によって、カメラサーボ機構272のズームサーボを駆動することで、キャプチャ画像データをトリミングする仕組みを設けることとする。この結果、高解像度なキャプチャ画像データの処理が可能となる。また、将来的にホログラム記録再生装置の仕様が変更し、ホログラムの画素数や構成が変わったとしても、ホログラム再生が可能となる、所謂、上位互換性を向上させることが可能となる。
【0081】
以上、本発明の実施形態について説明したが、前述した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更/改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の一実施形態に係るホログラム記録再生装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るホログラム記録再生装置の光学系の構成を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るキャプチャ画像データの座標調整を説明する図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るキャプチャ画像データの座標調整を説明する図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るキャプチャ画像データの座標調整を説明する図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るキャプチャ画像データの画像サイズ調整を説明する図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るキャプチャ画像データのトリミングを説明する図である。
【図8】ホログラム記録用媒体中においてモノマーがポリマーへと変化するときの様子を模式的に示した図である。
【図9】ホログラム記録用媒体の記録フォーマットを説明する図である。
【図10】従来のホログラム記録再生装置の光学系の構成を示す図である。
【図11】従来のホログラム記録再生装置のその他の光学系の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0083】
1 CPU
2 メモリ
3 インタフェース
4 接続端子
5 バッファ
6 再生・記録判別部
7 エンコーダ
8 マッピング処理部
9、53 SLM
10 レーザー装置
11 第1シャッター
12 第1シャッター制御部
13、54、90 PBS
14 第2シャッター
15 第2シャッター制御部
16 ガルボミラー
17 ガルボミラー制御部
18 ダイクロックミラー
19 サーボレーザー装置
20、52、59 スキャナレンズ
21、55、56 フーリエ変換レンズ
22 ホログラム記録用媒体
23 ディテクタ
24 ディスク制御部
25 ディスク駆動部
27 カメラ
271 ズームレンズ
272 カメラサーボ機構
273 カメラ基板
274、57 イメージセンサ
28 DSP
281 カメラ制御部
282 逆フーリエ変換処理部
283 フィルタ処理部
284 メモリ
30 デコーダ
51、58 ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可干渉性の記録用参照ビームと記録すべき画像データに対応しておりフーリエ変換レンズを介した可干渉性のデータビームとをホログラム記録用媒体へ入射させて形成された干渉縞としてのホログラムを、可干渉性の再生用参照ビームを前記ホログラム記録用媒体へ入射させて得られる回折光に基づいて再生を行うホログラム再生装置において、
前記ホログラム記録用媒体の一方の面側に配設され、前記記録用参照ビームと同一の光路で前記再生用参照ビームの光路を形成する第1光学系と、
前記一方の面とは反対となる前記ホログラム記録用媒体の他方の面側における前記データビームの光路上に配設され、前記再生用参照ビームを前記ホログラム記録用媒体の一方の面側より入射させて得られる回折光を受光して前記画像データに応じたキャプチャ画像データを取り込む第2光学系と、
前記第2光学系において取り込まれた前記キャプチャ画像データに逆フーリエ変換処理を施す制御部と、
を有することを特徴とするホログラム再生装置。
【請求項2】
前記第2光学系は、ズームレンズ光学系ならびに当該ズームレンズ光学系を駆動させるサーボ機構を有しており、
前記制御部は、前記逆フーリエ変換処理を施す前に、前記キャプチャ画像データを正常に取り込むべく前記サーボ機構をサーボ制御すること、を特徴とする請求項1に記載のホログラム再生装置。
【請求項3】
前記サーボ機構は、前記ズームレンズ光学系のズームを調整するズームサーボ用機構を有しており、
前記制御部は、前記逆フーリエ変換処理を施す前に、前記キャプチャ画像データの画像サイズを前記画像データの画像サイズに適合すべく前記ズームサーボ用機構をサーボ制御すること、を特徴とする請求項2に記載のホログラム再生装置。
【請求項4】
前記サーボ機構は、前記ズームレンズ光学系のズームを調整するズームサーボ用機構を有しており、
前記制御部は、前記キャプチャ画像データの画像サイズを指定倍率に拡大すべく前記ズームサーボ用機構をサーボ制御し、当該サーボ制御によって拡大されたキャプチャ画像データの一部を取り込んだ後に前記逆フーリエ変換処理を行うこと、を特徴とする請求項2に記載のホログラム再生装置。
【請求項5】
前記サーボ機構は、前記ズームレンズ光学系の配設位置を調整する位置サーボ用機構を有しており、
前記制御部は、前記逆フーリエ変換処理を施す前に、前記キャプチャ画像データの座標位置を調整すべく前記位置サーボ用機構をサーボ制御すること、を特徴とする請求項2に記載のホログラム再生装置。
【請求項6】
可干渉性の記録用参照ビームと記録すべき画像データに対応しておりフーリエ変換レンズを介した可干渉性のデータビームとをホログラム記録用媒体へ入射させて形成された干渉縞としてのホログラムを、可干渉性の再生用参照ビームを前記ホログラム記録用媒体へ入射させて得られる回折光に基づいて再生を行うホログラム再生方法において、
前記ホログラム記録用媒体の一方の面側から、前記記録用参照ビームの光路と同一の光路で前記再生用参照ビームを前記ホログラム記録用媒体に入射し、
前記再生用参照ビームを前記ホログラム記録用媒体の一方の面側より入射させて得られる回折光を前記ホログラム記録用媒体の他方の面側において受光して前記画像データに応じたキャプチャ画像データを取り込み、
前記取り込まれたキャプチャ画像データに逆フーリエ変換処理を施すこと、
ことを特徴とするホログラム再生方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−244638(P2006−244638A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−60892(P2005−60892)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】