説明

ホーム先端転落防止材

【課題】車両との接触抵抗の軽減と踏みつけによる局所的な沈下量の減少とが有利に実現可能なホーム先端転落防止材を提供する。
【解決手段】プラットホームと車両との隙間内において、上下方向に延び且つプラットホームの端縁部の延出方向において間隔を開けて位置するように、ゴム状弾性体からなる複数の板状リブ12を、基体部10に一体的に突設すると共に、それら複数の板状リブ12のうちの互いに隣り合う少なくとも二つのものを、ゴム状弾性体からなる連結部26にて連結して、構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホーム先端転落防止材に係り、特に、プラットホーム先端(前端)と車両との間の隙間を塞ぐためにプラットホーム先端の端縁に沿設されるホーム先端転落防止材の改良された構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道の駅構内に鉄道車両(以下、車両と言う)が到着したとき、プラットホーム先端と車両との間に隙間が生ずるが、この隙間内に、乗客の手荷物や傘等が落下することがしばしばある。また、プラットホームがカーブしている場合には、プラットホーム先端と車両との間の隙間が大きくなるため、そのような隙間から、乗客が軌道上に転落する事故が生ずる恐れさえもある。
【0003】
そこで、従来から、プラットホーム先端と車両との間の隙間を塞いで、かかる隙間からの物品の落下や乗客の転落を防止するホーム先端転落防止材が、種々、提案されている。例えば、特開2004−84173号公報(特許文献1)には、プラットホーム先端側の端縁に、ゴム状弾性体からなる厚肉板状の隙間充填材を幾つか重ね合わせた状態で沿設してなる構造のホーム先端転落防止材(プラットホーム取付材)が開示されている。
【0004】
このような構造のホーム先端転落防止材では、隙間充填材の数と厚さを適宜に調節することによってプラットホーム先端と車両との間の隙間の大小に対応可能となっているものの、ホーム先端転落防止材全体がブロック形態とされている。それ故、例えば、車両が、プラットホーム側に傾いた状態で、或いは横揺れしながら駅構内に進入し、ホーム先端転落防止材に接触した場合、ホーム先端転落防止材が弾性変形するものの、ホーム先端転落防止材との接触時に生ずる衝撃が大きく、しかも、車両とホーム先端転落防止材との間での接触抵抗(摺動抵抗)が大きいために、車両が損傷乃至は破損する可能性もあった。
【0005】
また、特開平5−287710号公報(特許文献2)には、プラットホーム先端側の端縁に沿設される、ゴム状弾性体からなる基体部と、プラットホーム先端側の端縁部と車両との間の隙間内に、上下方向に延び且つプラットホームの端縁部の延出方向において互いに所定距離を隔てて位置するように、基体部に対して一体的に突設された、基体部と同材質の複数の板状リブとを有してなる構造のホーム先端転落防止材(プラットホーム先端材)が、提案されている。
【0006】
このような構造のホーム先端転落防止材では、例えば、車両が、プラットホーム側に傾いた状態や横揺れした状態で駅構内に進入し、ホーム先端転落防止材に接触した際に、車両の進行方向において互いに間隔を開けて配置された複数の板状リブが、それぞれ撓み変形した状態で、車両と接触する。そのため、車両とホーム先端転落防止材との接触時に生ずる衝撃が効果的に小さくされ、また、車両とホーム先端転落防止材との間での接触抵抗(摺動抵抗)も小さくなって、車両の損傷が解消乃至は十分に軽減され得ることとなる。
【0007】
ところが、かかる従来のホーム先端転落防止材にあっては、複数の板状リブが、互いに独立し、且つ相互に所定距離を隔てて配置されている。それ故、複数の板状リブのうちの少数のものに乗降客の踵が載る等して、それら少数の板状リブに対して、荷重が集中的に加わった際に、荷重が加えられた板状リブが、座屈するように上下方向において屈曲(以下、単に座屈という)し、また、そのように座屈した板状リブの隣りやその近傍に位置する幾つかの板状リブが、座屈した板状リブに押圧されて、座屈した板状リブから逃げるように撓み変形する現象が生ずる。そして、そのために、人が踏みつけた部分が局所的に大きく沈み込んでしまうといった不具合が生じていたのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−84173号公報
【特許文献2】特開平5−287710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、プラットホームに沿って走行する車両との接触抵抗を有利に軽減でき、しかも、踏みつけによる局所的な沈下量を効果的に小さく為し得るように改良されたホーム先端転落防止材の構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記した課題、又は本明細書全体の記載や図面から把握される課題を解決するために、以下に列挙する各種の態様において、好適に実施され得るものである。また、以下に記載の各態様は、任意の組み合わせにおいても、採用可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載並びに図面に開示の発明思想に基づいて、認識され得るものであることが、理解されるべきである。
【0011】
(1) プラットホームの端縁部に沿設される基体部と、該プラットホームの端縁部と車両との間の隙間内に、上下方向に延び且つ該端縁部の延出方向において互いに所定距離を隔てて位置するように、前記基体部に対して一体的に突設された、ゴム状弾性体からなる複数の板状リブとを有して構成されたホーム先端転落防止材において、前記複数の板状リブのうちの互いに隣り合う少なくとも二つのものを相互に連結する、ゴム状弾性体からなる連結部を、該少なくとも二つの板状リブ間に一体的に架設したことを特徴とするホーム先端転落防止材。
【0012】
(2) 前記連結部が、前記少なくとも二つの板状リブを、前記隙間内での上下の延出方向の全長に亘って相互に連結している上記態様(1)に記載のホーム先端転落防止材。
【0013】
(3) 前記連結部が、前記少なくとも二つの板状リブの突出先端部間に架設されている上記態様(1)又は(2)に記載のホーム先端転落防止材。
【0014】
(4) 前記隙間内で上下方向に延びる、前記連結部の側面のうち、前記板状リブの突出方向前側に位置する側面が、該板状リブの突出方向に凸の円弧面とされている上記態様(3)に記載のホーム先端転落防止材。
【0015】
(5) 前記連結部が、前記少なくとも二つの板状リブの突出先端部間に、直線的に延びる部分を有して架設されている上記態様(3)に記載のホーム先端転落防止材。
【0016】
(6) 前記連結部が、前記板状リブの少なくとも三つのものの突出方向先端部間に架設されていると共に、前記隙間内で上下方向に延びる、該連結部の側面のうち、前記板状リブの突出方向前側に位置する側面が、半円状の円弧面を連設させてなる形状とされている上記態様(1)又は(2)に記載のホーム先端転落防止材。
【0017】
(7) 前記連結部が、前記少なくとも二つの板状リブの突出方向中間部間に架設されている上記態様(1)乃至(6)のうちの何れか一つに記載のホーム転落防止材。
【0018】
(8) 前記板状リブの基端側角部が、湾曲形状とされている上記態様(1)乃至(7)のうちの何れか一つに記載のホーム先端転落防止材。
【0019】
(9) 少なくとも前記複数の板状リブとは非接合の、平板状のゴム状弾性体からなる踏み板部が、該複数の板状リブを上側から覆って配設されている上記態様(1)乃至(8)のうちの何れか一つに記載のホーム先端転落防止材。
【0020】
(10) 前記基体部が、前記複数の板状リブと同じゴム状弾性体にて構成されていると共に、かかる基体部に対して、剛性の補強板が取り付けられている上記態様(1)乃至(9)のうちの何れか一つに記載のホーム先端転落防止材。
【発明の効果】
【0021】
すなわち、本発明に従うホーム先端転落防止材にあっては、複数の板状リブが、プラットホームに沿って走行する車両との接触により車両の進行方向前方に倒れ込むように撓み変形した際に、連結部にて連結された隣り合う板状リブの先端部同士の間に、隣り合う板状リブを連結する連結部の存在によって、空間が形成される。このため、複数の板状リブが、非連結で互いに独立しているために、車両との接触により撓み変形した複数の板状リブが互いに重なり合ってソリッド状乃至はブロック状となる従来品とは異なって、本発明に係るホーム先端転落防止材では、連結部にて連結された板状リブ同士の間に形成される空間により、撓み変形した各板状リブの更なる撓み代が有効に確保され、それによって、より柔らかなゴム状弾性(ばね特性)が発揮されるようになる。そして、その結果、プラットホームに沿って走行する車両との接触抵抗の低減化が、複数の板状リブが互いに独立した構造を有する従来品と同等以上のレベルで有利に実現され得ることとなる。
【0022】
また、本発明に係るホーム先端転落防止材においては、互いに隣り合う少なくとも二つの板状リブが連結部にて連結されているところから、例えば、複数の板状リブのうちの幾つかに荷重が集中的に加わった際に、荷重が直接に加えられた板状リブと、それに対して連結部にて連結された、荷重が加えられていない板状リブとの間で、入力荷重が分散される。また、荷重が直接に加えられた板状リブが座屈した際には、荷重が直接に入力された板状リブと連結部を介して連結された、荷重が加えられていない板状リブも、連結部に引っ張られて、上下方向において屈曲するように弾性変形する。そのため、荷重が入力された板状リブと、それに連結された、荷重が加えられていない板状リブの両方のものの復元力の協働作用により、直接の入力荷重により座屈した板状リブの変形量(屈曲変形量)が効果的に低減される。更に、一つの連結部にて連結された幾つかの板状リブの全てが、直接の荷重入力により座屈した際にも、連結部が撓み乃至は圧縮変形することで、座屈による屈曲方向とは逆側(屈曲方向の外側)に位置する板状リブの変形量が、屈曲側(屈曲方向の内側)に位置する板状リブの変形量よりも小さくされる。そして、そのようにして板状リブの変形量が抑えられることにより、荷重が加えられて座屈した板状リブの隣りやその近傍に位置する、かかる板状リブとは連結されておらず、荷重も入力されていない幾つかの板状リブが、座屈した板状リブに押圧されて、かかる板状リブから逃げるように撓み変形する現象が、効果的に軽減される。また、座屈した板状リブと連結された板状リブも、連結部にて拘束されているため、座屈した板状リブから逃げるように撓み変形することがない。
【0023】
従って、かくの如き本発明に従うホーム先端転落防止材にあっては、プラットホーム側に傾いた状態や横揺れした状態で、プラットホームに沿って走行する車両と接触した際の接触抵抗が有利に低減され、しかも、人が踏みつけた部分が局所的に大きく沈み込んでしまうようなことが、効果的に解消乃至は抑制され得る。そして、その結果として、ホーム先端転落防止材と車両との接触時に、大きな衝撃が生ずることや車両が損傷するようなことが、より効果的に防止され得ると共に、踏みつけによる局所的な沈み込みにより、踏みつけた者が、不安定な感覚や不快な感覚を感ずることも、効果的に解消され得るのである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に従う構造を有するホーム先端転落防止材の一例を示す平面説明図である。
【図2】図1のII矢視説明図である。
【図3】図1のIII−III断面説明図である。
【図4】図1に示されたホーム先端転落防止材のプラットホームへの設置状態を示す、一部切欠図を含む説明図である。
【図5】図1に示されたホーム先端転落防止材の使用状態を示す部分拡大説明図であって、ループ状リブが車両の側面に接触した状態を示している。
【図6】本発明に従う構造を有するホーム先端転落防止材の別の例を示す図1に対応する図である。
【図7】図6のVII−VII断面説明図図である。
【図8】図6に示されたホーム先端転落防止材のプラットホーム先端への設置状態を示す、図4に対応する図である。
【図9】本発明に従う構造を有するホーム先端転落防止材の更に別の例を示す図1に対応する図である。
【図10】本発明に従う構造を有するホーム先端転落防止材の他の例を示す図1に対応する図である。
【図11】本発明に従う構造を有するホーム先端転落防止材の更に他の例を示す図1に対応する図である。
【図12】本発明に従う構造を有するホーム先端転落防止材の別の例を示す図1に対応する図である。
【図13】本発明に従う構造を有するホーム先端転落防止材の更に別の例を示す図1に対応する図である。
【図14】本発明に従う構造を有するホーム先端転落防止材の他の例を示す図1に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0026】
先ず、図1には、本発明に従う構造を有するホーム先端転落防止材の一実施形態が、その平面形態において示されており、また、図2には、かかるホーム先端転落防止材の正面形態が、更に、図3には、その縦断面形態が、それぞれ示されている。それらの図から明らかなように、本実施形態のホーム先端転落防止材は、ホーム先端転落防止材本体としての基体部10と、かかる基体部10に一体形成された複数の板状リブ12とを有している。
【0027】
より詳細には、基体部10は、全体として、長手矩形状を呈する比較的に厚肉の平板材からなっている。なお、この基体部10の材質は、人の踏みつけや各種の物品の落下による衝撃等によって損傷したり破損したりしない程度の強度を有するものであれば、特に限定されるものではない。しかしながら、図示されるように、一般的には、複数の板状リブ12が、基体部10に対して、一体成形により形成される。そのため、基体部10は、通常、複数の板状リブ12と同じ材質、即ち、ゴム状弾性体にて構成され、本実施形態では、かかるゴム状弾性体として、エチレンプロピレンゴムが用いられている。そして、例えば、基体部10と複数の板状リブ12とが、それぞれ別途に成形されて、後接着等により一体化される場合には、基体部10の形成材料として、ゴム状弾性体材料の他に、上記の如き強度を有する各種の材料の中から、例えば、樹脂材料や金属材料、セラミックス材料等が、適宜に選択されて、使用されることとなる。
【0028】
かかる基体部10においては、厚さ方向一方側(図3の右側)の面の幅方向(図1の上下方向)に所定間隔を隔てた三箇所に、長さ方向(図1の左右方向)に延びる突条からなる滑り止め突起14が、それぞれ設けられている。また、基体部10の幅方向の中央よりも幅方向一方側(図1の上側)に偏倚した箇所には、長孔形状を呈するボルト挿通孔16が、基体部10の長さ方向の両端部側に、それぞれ2個ずつ、穿設されている。なお、以下からは、後述する如きホーム先端転落防止材のプラットホーム(32)先端(前端)への固定状態(図4参照)を基準として、基体部10の滑り止め突起14の形成面を上面、それとは反対側の面を下面、基体部10の厚さ方向を上下方向、幅方向のボルト挿通孔16側の端部を後端部、それとは反対側の端部を前端部と言うこととする。
【0029】
基体部10の前端部の下面には、基体部10よりも薄肉の平板状乃至は壁状を呈する係止突起18が、垂直に突出し且つ基端部10の全長に亘って連続して延びるように一体形成されている。この係止突起18は、基体部10がプラットホーム(32)の前端部(先端部)上に載置された際に、プラットホームの前端面(先端面)に係止するようになっている(図4参照)。そして、かかる平板状の係止突起18が基体部10の前端部の下面に一体形成されていることで、基体部10の前端面が、基体部10の長さ方向一方側の端面と係止突起18の前側板面とにて構成されて、かかる前端面の面積が、基体部10の長さ方向他方側の端面からなる後端面の面積よりも、平板状の係止突起18の前側板面の面積分だけ大きくされている。
【0030】
また、基体部10の下面には、金属製の補強板20が取り付けられている。この補強板20は、全体として、基体部10の下面に略対応した大きさの長手矩形形状を有している。そして、かかる補強板20の幅方向一端部には、かかる一端部を直角に屈曲してなる裏当て部22が一体形成されている。また、補強板20の幅方向の中央よりも裏当て部22側とは反対側に偏倚した箇所には、基体部10に設けられたボルト挿通孔16よりも一周り小さな長孔形状を呈する貫通孔24が、補強板20の長さ方向の両端部側に、それぞれ2個ずつ形成されている。
【0031】
このような補強板20が、4個の貫通孔24,24,24,24を、基体部10の4個のボルト挿通孔16,16,16,16にそれぞれ対応位置させた状態で、係止突起18の後側板面と基体部10の下面とに対して、加硫接着されている。これによって、基体部10の曲げ剛性が有利に高められており、また、後述するように、各ボルト挿通孔16と各貫通孔24とに挿通されたボルトによる、基体部10と補強板20のプラットホームへの一体的な強固な固定が可能となっている。なお、補強板20は、十分な剛性を有するものであれば、金属製のものに、何等限定されない。
【0032】
そして、本実施形態では、上記の如き構造とされた基体部10に一体形成された複数の板状リブ12が、従来品と同様な材質と形状とを有しつつも、従来品には見られない特別な構造をもって構成されているのである。
【0033】
すなわち、複数の板状リブ12は、何れも、互いに同一大きさと比較的に薄い一定の肉厚を有する長手矩形平板形状を呈している。また、それら複数の板状リブ12が、ゴム状弾性体材料を用いて形成されている。この板状リブ12を形成するゴム状弾性体材料の種類は、特に限定されるものではなく、ゴム材料や熱可塑性エラスマ材料等のゴム状弾性を有する公知の各種の材料の中から、成形性や耐摩耗性、耐候性等を考慮して、適宜に決定される。本実施形態では、かかる板状リブ12とそれが一体形成される前記基体部10の形成材料として、エチレンプロピレンゴムが用いられている。
【0034】
そして、そのような複数の板状リブ12が、基体部10の前端面に、基体部10の上面から係止突起18の下端面に至る全高に亘って、基体部10の上面に対して垂直な角度で下方(基体部10のプラットホームへの固定状態下での鉛直方向)に直線的に延び、且つ基体部10の前端面の長さ方向(基体部10のプラットホームへの固定状態下での水平方向)において互いに所定の距離を隔てて対向配置された状態で、一体的に突設されている。即ち、複数の板状リブ12が、基体部10の前端面に、その長さ方向において、それぞれの板面を相互に対向させつつ、並列的に配置されているのである。
【0035】
かくして、複数の板状リブ12に対して、それぞれの延出方向において基体部10の上面側から荷重が加えられた際に、それら複数の板状リブ12が、容易には弾性変形乃至撓み変形することなく、可及的に大きな耐荷重特性を発揮するようになっている。その一方、複数の板状リブ12に対して、それぞれの厚さ方向に荷重が加えられた際には、それら各板状リブ12が、容易に撓み変形して、柔らかいばね特性を発揮するようになっている。なお、そのような板状リブ12の厚さや延出長さ及び配置間隔、更には基体部10からの突出高さ等は、何等限定されるものではなく、ホーム先端転落防止材が設置されるべきプラットホームと車両との間に形成される隙間の大きさを加味しつつ、各板状リブ12の延出方向における耐荷重特性とその板厚方向におけるばね特性等のバランスを考慮して、適宜に決定される。
【0036】
また、板状リブ12は、その基端側において、厚さ方向の両サイドに位置する角部、つまり、板状リブ12の上下方向に延びる二つの側面と基体部10の前端面とにてそれぞれ形成される基端側角部25が、円弧形状(湾曲形状)とされている。これにより、板状リブ12の基端側角部25が角張った形状とされている場合とは異なって、板状リブ12に対して、その厚さ方向に荷重が加えられた際に、板状リブ12の基端側角部25の一部分に応力が集中しないようになっている。
【0037】
そして、本実施形態においては、特に、複数の板状リブ12のうち、基体部10の前端面の長さ方向一端部からの並び順において2n−1番目と2n番目(n=1,2,3,・・・・、以下、同一の意味で使用する)に位置するものが、それぞれの突出先端部同士において、連結部26にて互いに連結されている。換言すれば、基体部10の前端面の長さ方向一端部からの並び順において2n−1番目と2n番目に位置する板状リブ12の各先端部間に、連結部26が、一体的に架設されているのである。これにより、基体部10の前端面の長さ方向一端部からの並び順において2n−1番目と2n番目に位置する板状リブ12の2個ずつが、それぞれ、連結部26にて互いに連結されて、ループ形状とされたループ状リブ28として、構成されている。
【0038】
すなわち、基体部10の前端面に、互いに隣り合う2個の板状リブ12,12が連結部26にて互いに連結されてなるループ状リブ28が、基体部10の前端面の長さ方向において互いに対向し且つ互いに一定の距離を隔てて、一体的に突設されている。そして、それら各ループ状リブ28を構成する板状リブ12同士の間には、空間30が、板状リブ12の突出方向に一定の幅をもって延びるように形成されている。また、各ループ状リブ28は、互いに非連結で、相互に独立した形態とされている。
【0039】
なお、ここでは、ループ状リブ28内の空間30の幅(板状リブ12の対向面間距離):W1 が、全てのループ状リブ28の間で同一の大きさとされており、また、互いに隣り合うループ状リブ28同士の間の距離:W2 よりも狭くされている。しかしながら、複数のループ状リブ28のうちの全てのループ状リブ28内の空間30の幅:W1 が、或いは複数のループ状リブ28のうちの幾つかのループ状リブ28内の空間30の幅:W1 が、互いに異なる大きさとされていても良い。また、各空間30の幅:W1 と互いに隣り合うループ状リブ28同士の間の距離:W2 の大きさは、互いに同一とされていても良く、若しくは前者が後者よりも広くされていても良い。
【0040】
そして、本実施形態においては、複数のループ状リブ28に対して、板状リブ12の厚さ方向(基体部10の長さ方向)に荷重が入力されて、それら複数のループ状リブ28が、押し倒されるように撓み変形したときに、1個のループ状リブ28を構成する2個の板状リブ12,12の先端部同士が密接することなく、それらの間に空間30が部分的に残存する程度の大きさにおいて、ループ状リブ28内の空間の幅:W1 が設定されている。また、そのような荷重入力による複数のループ状リブ28の撓み変形状態下で、互いに隣り合うループ状リブ28のそれぞれの基端側部分同士の間にも、ある程度の隙間が残され得る大きさにおいて、互いに隣り合うループ状リブ28同士の間の距離:W2 の大きさが設定されている。
【0041】
一方、ループ状リブ28の連結部26は、板状リブ12と同じ材質で同一の厚さを有し、隣り合う2個の板状リブ12を、それらの上下方向に延びる延出方向の全長に亘って互いに連結している。また、かかる連結部26は、互いに隣り合う2個の板状リブ12のうちの一方から他方に向かって、板状リブ12の突出方向に凸の半円弧形状をもって、一定の厚さで延び出している。これによって、上下方向に延びる連結部26の2個の側面、即ち、ループ状リブ28の空間30側とは反対側に位置する外面31aと、かかる空間側の内面31bとが、何れも、板状リブ12の突出方向に凸の半円弧面とされている。
【0042】
そして、かくの如き構造とされた本実施形態のホーム先端転落防止材は、例えば、図4に示されるようにして、鉄道の駅のプラットホームの先端に設置される。
【0043】
すなわち、基体部10の係止突起18が、補強板20の裏当て部22を介して、プラットホーム32の前端面34に係止される一方、係止突起18以外の基体部10部分が、補強板20の裏当て部22以外の部分と共に、プラットホーム32の前端部に設けられた凹所36内に嵌め込まれる。そして、基体部10の各ボルト挿通孔16と補強板20の各貫通孔24とに挿通された取付ボルト38にて、基体部10がプラットホーム32に固定される。これにより、ホーム先端転落防止材が、プラットホーム32の前端部に対して、基体部18と複数のループ状リブ28とを所定位置に位置決め配置した状態で、設置されるのである。また、そのような設置状態下では、基体部10が、その長さを方向をプラットホーム32の延出方向と同一方向とし、且つ上面を、プラットホーム32の上面と略面一とした状態で配置される。更に、複数のループ状リブ28が、プラットホーム32の前端面(前端縁)34と駅構内に進入した鉄道車両の側面40との間に形成される隙間42内に、鉄道車両の側面40と可及的に近い非接触の位置で、上下方向に延び且つプラットホーム32の延出方向において互いに一定の距離を隔てて配置される。
【0044】
かくして、ホーム先端転落防止材にあっては、プラットホーム32の前端部に設置されて、プラットホーム32の前端面34と車両側面40との間の隙間42を、複数のループ状リブ28にて塞ぐようになっている。そして、それにより、かかる隙間42内に、乗客の手荷物や傘等が落下したり、乗客が転落したりすることを防止し得るようになっている。
【0045】
また、かかるホーム先端転落防止材では、プラットホーム32と車両側面40との間の隙間42内に配置される複数のループ状リブ28のそれぞれが、上下方向に延びる板状リブ12からなることで、上からの荷重に対して、容易に撓み変形することなしに、大きな耐荷重特性を発揮する。
【0046】
その上、そのような板状リブ12の2個ずつが、連結部26にて一体的に連結されて、ループ状リブ28がそれぞれ形成されているところから、例えば、各ループ状リブ28を構成する2個の板状リブ12,12のうちの一方のみに上からの荷重が加わった際にも、かかる一方の板状リブ12と、それに対して連結部26にて連結された、荷重が加えられていない他方の板状リブ12との間で、入力荷重が分散されるようになる。
【0047】
また、上からの荷重が直接に加えられた一方の板状リブ12が座屈するように屈曲した際には、上からの荷重が加えられていない他方の板状リブ12も、連結部26にて引っ張られて、上下方向において屈曲するように弾性変形する。そのため、上からの荷重が一方の板状リブ12のみに加わっていても、かかる一方と他方の2個の板状リブ12のそれぞれの復元力の協働作用により、座屈するように屈曲変形した一方の板状リブ12変形量(屈曲変形量)が効果的に低減される。しかも、他方の板状リブ12は、連結部26にて拘束されているため、屈曲した一方の板状リブ12に押圧されて、かかる一方の板状リブ12から逃げるように撓み変形することもない。
【0048】
さらに、複数のループ状リブ28の1個ずつを構成する2個の板状リブ12,12の両方に上からの荷重が加えられて、それら両方の板状リブ12,12が座屈するように屈曲した際には、連結部26も、撓み変形乃至は圧縮変形し、以て、屈曲側とは反対側に位置する板状リブ12の変形量が有利に小さくされる。そして、それにより、屈曲したループ状リブ28の屈曲側とは反対側に位置する、上からの荷重が加えられていないループ状リブ28が、屈曲したループ状リブ28に押圧されて、それから逃げるように撓み変形する現象が、効果的に軽減される。
【0049】
従って、本実施形態のホーム先端転落防止材では、車両の乗降客が、車両側面40とプラットホーム32との間の隙間42内に位置する複数のループ状リブ28の幾つかを部分的に踏みつけたときに、踏みつけられた幾つかのループ状リブ28が大きく座屈するように屈曲したり、屈曲したループ状リブ28の隣りに位置する別のループ状リブ28が、屈曲したループ状リブ28から逃げるように撓み変形することが軽減され、以て、複数のループ状リブ28のうちで踏みつけられた部分が局所的に大きく沈み込んでしまうようなことが効果的に解消乃至は抑制され得る。そして、その結果、踏みつけによる局所的な沈み込みにより、車両の乗降客が、不安定に感じたり、不快に感じたりすることも有利に解消され得るのである。
【0050】
また、かかるホーム先端転落防止材においては、複数のループ状リブ28のそれぞれが、プラットホーム32の延出方向の入力荷重により容易に撓み変形して、軟らかいばね特性を発揮する板状リブ12の連結部26による連結体からなっている。また、それら複数のループ状リブ28が、プラットホームの延出方向において一定の間隔を開けて、互いに非連結の状態で配置されており、更に、それら各ループ状リブ28を構成する板状リブ12同士の間に、一定幅の空間30が形成されている。
【0051】
それ故、図5に示されるように、プラットホーム32に沿って走行する車両の側面40と複数のループ状リブ28とが接触した際には、それら複数のループ状リブ28が、車両の進行方向前方(図5中、矢印:アの方向)に倒れ込むように、容易に撓み変形する。このとき、各ループ状リブ28を構成する2個の板状リブ12,12の先端部同士の間には、ループ状リブ28内の空間30が潰れずに残存する。このため、複数の板状リブが、非連結で互いに独立しているために、車両との接触により撓み変形した複数の板状リブが互いに重なり合ってソリッド状乃至はブロック状となる従来品とは異なって、各ループ状リブ28内に存在する空間30により、各ループ状リブ28を構成する板状リブ12の更なる撓み代が有効に確保され、それにより、各ループ状リブ28において、より柔らかなばね特性が発揮されるようになる。
【0052】
しかも、各ループ状リブ28は、車両側面40に対して、半円弧面とされた連結部26の外面31aにおいて接触する。このとき、非連結で互いに独立した板状リブが、撓み変形下で、その先端部において車両側面40と接触する場合とは異なって、各ループ状リブ28の連結部の外面31aが、車両側面40に対して、線接触に近い状態で接触するようになり、それによって、各ループ状リブ28の車両側面40に対する接触面積が、効果的に小さく為され得る。
【0053】
従って、かくの如き本実施形態のホーム先端転落防止材にあっては、プラットホーム32側に傾いた状態や横揺れした状態で、プラットホーム32に沿って走行する車両の側面40に対して、複数のループ状リブ28が接触した際の接触抵抗が、極めて有利に低減され、その結果として、車両側面40との接触時に、大きな衝撃が生ずることや車両が損傷するようなことが、より効果的に防止され得ることとなる。
【0054】
また、かかるホーム先端転落防止材においては、隣り合う板状リブ12,12が、上下の延出方向の全長に亘って、連結部26にて互いに連結されて、ループ状リブ28が構成されている。このため、ループ状リブ28を構成する2個の板状リブ12,12が、連結部26にて、より確実に且つ十分に互いに拘束され、それによって、ループ状リブ28に対する上からの荷重入力時におけるループ状リブ28の屈曲変形や、屈曲したループ状リブ28の隣りに位置する別のループ状リブ28の、屈曲したループ状リブ28の押圧による撓み変形が、より有利に軽減され得る。その結果、複数のループ状リブ28の部分的な踏みつけによる沈み込みも、更に効果的に緩和され得ることとなる。
【0055】
さらに、本実施形態では、ループ状リブ28を構成する板状リブ12の基端側角部25が湾曲形状とされていることで、板状リブ12の厚さ方向の撓み変形時における基端側角部25での応力集中が緩和されている。これによって、プラットホーム32の延出方向への荷重入力によるループ状リブ28の繰り返しの撓み変形に対する耐久性が有利に高められ得る。その結果、ホーム先端転落防止材の使用耐久性の向上が効果的に実現され得る。
【0056】
加えて、本実施形態においては、基体部10の前端部に係止突起18が垂下するように一体形成されて、基体部10の前端面の面積が有効に増大され、そして、そのような基体部10の前端面に、複数の板状リブ12が上下方向に延びるように形成されている。このため、各板状リブ12、更には各ループ状リブ28の上下方向の長さが有利に大きくされている。これによって、各ループ状リブ28の上からの荷重に対する耐荷重特性が、より効果的に高められ得るといった利点が得られる。
【0057】
ところで、図6乃至図8には、前記第一の実施形態とは一部異なる構造を有するホーム先端転落防止材が、示されている。なお、本実施形態、及び後述する図9乃至図14にそれぞれ示される各実施形態に関しては、前記第一の実施形態と同様な構造とされた部材及び部位について、図6乃至図14に、図1乃至図5と同一の符号を付すことにより、詳細な説明を省略する。
【0058】
すなわち、図6及び図7から明らかなように、本実施形態のホーム先端転落防止材は、踏み板44を有している。この踏み板44は、全体として、長手矩形状を呈し、基体部10や複数のループ状リブ28と同じゴム状弾性体を用いて形成された平板材にて構成されている。
【0059】
そして、踏み板44は、取付板部46と被覆板部48とを一体的に有している。取付板部46は、基体部10と略同一の大きさの長手矩形形状を呈する、基体部10よりも薄肉の平板材からなっている。また、かかる取付板部46の厚さ方向一方の面には、3個の滑り止め突起14が、一体形成されている。それら3個の滑り止め突起14,14,14は、前記第一の実施形態に係るホーム先端転落防止材の基体部10の上面に設けられたものと同一の形状及び構造を有している。このため、本実施形態では、基体部10には、滑り止め突起14が、何等設けられていない。
【0060】
さらに、取付板部46の幅方向一端部の長さ方向両側には、長孔形状を呈する第一のボルト挿通孔50が、それぞれ、2個ずつ穿設されている。それら各第一のボルト挿通孔50は、基体部10に設けられるボルト挿通孔16と同じ大きさの長孔形状を有している。また、取付板部46の幅方向他端部には、円形状の第二のボルト挿通孔52が3個設けられ、更に、幅方向一端部の長さ方向中央部にも、円形状の第二のボルト挿通孔52が1個設けられている。そして、ここでは、基体部10にも、取付板部46の第二のボルト挿通孔52と略同一大きさの円形状を呈する第二のボルト挿通孔53が、基体部10の前端部に3個、その後端部に1個、それぞれ設けられている。なお、以下からは、後述する踏み板44の基体部10への取付状態と、本実施形態のホーム先端転落防止材のプラットホーム32への設置状態を考慮して、取付板部46の幅方向における第一のボルト挿通孔50の形成側の端部を後端部、それとは反対側の端部を前端部、取付板46の滑り止め突起14の形成面を上面、それとは反対側の面を下面と言うこととする。
【0061】
かかる取付板部46の下面には、踏み板用補強板54が固着(加硫接着)されている。この踏み板用補強板54は、取付板部46と略同一大きさの長手矩形形状を呈し、ここでは金属平板にて構成されている。また、踏み板用補強板54には、取付板部46の第一のボルト挿通孔50よりも一周り小さな長孔形状を呈する第一の貫通孔56と、第二のボルト挿通孔52よりも一周り小さな円形状を呈する第二の貫通孔58とが、それぞれ、4個ずつ設けられている。
【0062】
そして、そのような踏み板用補強板54が、第一の貫通孔56を、取付板部46の第一のボルト挿通孔50にそれぞれ対応位置させ、且つ第二の貫通孔58を、取付板部46の第二のボルト挿通孔52にそれぞれ対応位置させた状態で、取付板部46の下面に重ね合わされて、固着されている。
【0063】
一方、被覆板部48は、取付板部46の前端に一体形成され、取付板部46よりも薄肉で狭幅の長手平板形状を有している。それにより、かかる被覆板部48に対して、長手方向に所定の荷重が入力された際に、被覆板部48が、長手方向の幾つかの箇所で容易に撓み変形し得るようになっている。また、かかる被覆部48は、その前後方向長さが、基体部10の前端面に一体的に突設された各板状リブ12の基体部10からの突出高さよりも所定寸法だけ大きくされている。
【0064】
そして、そのような構造とされた踏み板44が、取付板部46の各第一のボルト挿通孔50と踏み板用補強板54の各第一の貫通孔56とを、基体部10の各ボルト挿通孔16にそれぞれ対応位置させると共に、取付板部46の各第二のボルト挿通孔52と踏み板用補強板54の各第二の貫通孔58とを、基体部10の各第二のボルト挿通孔53にそれぞれ対応位置させた状態で、基体部10の上面に、踏み板用補強板54の下面を重ね合わせて配置されている。また、かかる配置状態下において、被覆板部48は、その前端を、複数のループ状リブ28のそれぞれの前端(各連結部26の外面31a)に一致させた位置で、それら複数のループ状リブ28の上面に重ね合わされている。そして、踏み板44の取付板部46の各第二のボルト挿通孔52と踏み板用補強板54の各第二の貫通孔58とにそれぞれ挿通された固定ボルト60が、基体部10に取り付けられた補強板20に固設されるナット62に螺合されている。
【0065】
これによって、踏み板44が、取付板部46において、基体部10の上面に固定されて、基体部10と踏み板14とが一体化されている。また、そのような状態下において、踏み板44の被覆板部48が、複数のループ状リブ28(板状リブ12)のそれぞれとは非接合の状態で、それら複数のループ状リブ28の全てのものを上側から覆って、配置されている。
【0066】
そして、そのような構造とされた本実施形態のホーム先端転落防止材が、図8に示される如く、前記第一の実施形態と同様に、基体部10が、複数の取付ボルト38にて、プラットホーム32の前端部に設置される。また、かかる設置下で、プラットホーム32の前端面34と車両側面40との間に形成される隙間42内に、複数のループ状リブ28が、プラットホーム32の延出方向に所定間隔を隔てて、上下方向に延びるように配置される。そして、それと共に、踏み板44の被覆板部48が、それら複数のループ状リブ28の全部を上側から覆いつつ、プラットホーム32に沿って延びるように配置される。
【0067】
このように、本実施形態のホーム先端転落防止材では、プラットホーム32と車両側面40との間の隙間42内に、複数のループ状リブ28が配置されているため、前記第一の実施形態において奏される作用・効果と同様な作用・効果が有効に享受され得る。
【0068】
そして、本実施形態においては、特に、プラットホーム32と車両側面40との間の隙間42内に、平板状の被覆板部48が、複数のループ状リブ28の全部を上側から覆って配置されている。それ故、各ループ状リブ28内の上下方向に開口する空間30と、隣り合うループ状リブ28同士の間で上下方向に延びる隙間とが、被覆板部48に塞がれる。
【0069】
従って、このような本実施形態のホーム先端転落防止材では、車両の乗降客が、車両側面40とプラットホーム32との間の隙間42内に位置する被覆板部48を部分的に踏みつけた際に、その荷重が、被覆板部48の踏みつけ箇所以外の部分に有利に分散され、それによって、かかる踏みつけ箇所にて覆われるループ状リブ28に荷重が集中的に加えられることが有効に防止される。そして、その結果、被覆板部48の踏みつけ箇所が局所的に大きく沈み込んでしまうようなことが効果的に解消乃至は抑制され得る。
【0070】
また、本実施形態においては、各ループ状リブ28内の空間30や隣り合うループ状リブ28同士の間の隙間が被覆板部48にて塞がれるため、それらの空間30や隙間に、乗降客の傘の先やヒールの先端が入り込んでしまうことがなく、安全な使用性が効果的に確保され得る。
【0071】
さらに、本実施形態のホーム先端転落防止材では、被覆板部48が、その長手方向への荷重入力時に、容易に撓み変形可能とされている。そのため、ホーム先端転落防止材がプラットホーム32に設置された状態下で、プラットホーム32に沿って走行する車両の側面40が被覆板部48に接触しても、被覆板部48が容易に撓み変形する。それ故、複数のループ状リブ28に対する車両側面40の接触時に生ずる抵抗が、被覆板部48との接触により大きくなることが、可及的に回避され得る。
【0072】
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないのであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
【0073】
例えば、板状リブ12に対する連結部26の形成位置や形成個数、連結部26の形状等は、上記に例示されたものに限定されるものではない。以下に、連結部26の具体的構造が種々異なる実施形態を示し、それらについて詳述する。
【0074】
図9に示されるホーム先端転落防止材では、互いに隣り合う板状リブ12のそれぞれの基体部10からの突出方向の中間部間に、連結部26が架設されている。また、ここでは、全ての板状リブ12が、互いに隣り合うもの同士において、連結部26にて連結されている。更に、連結部26の側面と各板状リブ12の側面とにて形成される角部が湾曲形状とされている。
【0075】
このように、本実施形態では、全ての板状リブ12が複数の連結部26にて相互に連結されている。そのため、全ての板状リブ12のうちの幾つかの板状リブ12に対する踏みつけ等により屈曲した板状リブ12の屈曲変形量や、屈曲した板状リブ12の隣りに位置する別の板状リブ12の、屈曲した板状リブ12の押圧による撓み変形量が、更に一層有利に減少され得る。その結果、複数の板状リブ12のうちの幾つかの板状リブ12に対する踏みつけによる沈み込みが、より一層効果的に緩和され得ることとなる。
【0076】
また、本実施形態においては、互いに隣り合う板状リブ12が、基体部10からの突出方向中間部において、複数の連結部26にて相互に連結されている。即ち、全ての板状リブ12が連結部26にて互いに連結されているものの、その突出先端側では連結されていない。それ故、各板状リブ12は、連結部26よりも先端側部分において、十分に且つ容易に撓み変形可能とされている。従って、全ての板状リブ12が連結部26にて互いに連結されているにも拘わらず、各板状リブ12の厚さ方向の入力荷重に対して、十分に軟らかいばね特性が発揮され得る。
【0077】
また、本実施形態においては、連結部26の板状リブ12との連結部分の角部が湾曲形状とされているため、かかる角部での、板状リブ12や連結部26の屈曲変形時の応力集中が緩和される。以て、そのような応力集中に起因した角部での破損の発生等が、効果的に抑制され得る。
【0078】
図10に示されるホーム先端転落防止材においては、互いに隣り合う2個の板状リブ12の先端部同士が、連結部26aにて連結されて、複数のループ状リブ28が形成されている。また、それらの複数のループ状リブ28のうちの互いに隣り合うものが、板状リブ12の突出方向の中間部同士において、連結部26bにて更に連結されている。即ち、図1に示される前記第一の実施形態と、図9に示される前記第三の実施形態がそれぞれ有する構造が組み合わされて、各連結部26a,26bや各ループ状リブ28が、それぞれ構成されているのである。
【0079】
従って、そのような構造によれば、前記第一の実施形態において奏される効果と、前記第三の実施形態とにおいて奏される効果の両方が、共に有効に享受され得ることとなる。
【0080】
図11に示されるホーム先端転落防止材では、互いに隣り合う2個の板状リブ12の先端部同士が、連結部26aにて連結されて、複数のループ状リブ28が形成されている。また、各ループ状リブ28を構成する2個の板状リブ12,12が、基体部10からの突出方向中間部同士において、連結部26bにて互いに連結されている。
【0081】
このような構造によれば、各ループ状リブ28を構成する2個の板状リブ12,12が、2種類の連結部26a,26bにて、より確実に相互に拘束される。それによって、複数のループ状リブ28のうちの幾つかのループ状リブ28に対する踏みつけ等により屈曲したループ状リブ28の屈曲変形量や、屈曲したループ状リブ28の隣りに位置する別のループ状リブ28の、屈曲したループ状リブ28の押圧による撓み変形量が、更に一層有利に減少され得る。その結果、複数のループ状リブ28に対する部分的な踏みつけによる沈み込みが、より一層効果的に緩和され得ることとなる。
【0082】
また、図12に示されるホーム先端転落防止材においては、互いに隣り合う2個の板状リブ12の先端部同士が、連結部26aにて連結されて、複数のループ状リブ28が形成されている。また、各ループ状リブ28を構成する2個の板状リブ12,12が、基体部10からの突出方向中間部同士において、連結部26bにて互いに連結されている。更に、互いに隣り合うループ状リブ28が、それらの突出方向中間部同士において、連結部26cにて相互に連結されている。即ち、図10に示された前記第四の実施形態と、図11に示された前記第五の実施形態がそれぞれ有する構造が組み合わされて、各連結部26a,26b,26cや各ループ状リブ28が構成されているのである。
【0083】
このような構造によれば、前記第四の実施形態において奏される効果と、前記第五の実施形態とにおいて奏される効果の両方が、共に有効に享受され得ることとなる。
【0084】
図13に示されるホーム先端転落防止材では、互いに隣り合う2個の板状リブ12,12の先端部同士が、連結部26にて連結されて、複数のループ状リブ28が形成されている。そして、ここでは、かかる連結部26が、2個の板状リブ12,12のうちの一方から他方に向かって直線的に延びる部分を有している。
【0085】
このような構造では、連結部26にて連結されるべき2個の板状リブ12,12の配置間隔が同じであるとき、それら2個の板状リブ12,12の先端部同士を、その一方から他方に向かって湾曲状乃至は円弧状に延びる連結部26にて連結する場合に比して、連結部26の延出長さを短くできる。それ故、全ての板状リブ12のうちの幾つかの板状リブ12に対する踏みつけ等により屈曲した板状リブ12の屈曲変形量や、屈曲した板状リブ12の隣りに位置する別の板状リブ12の、屈曲した板状リブ12の押圧による撓み変形量が、更に一層有利に減少され得る。その結果、複数の板状リブ12のうちの幾つかの板状リブ12に対する踏みつけによる沈み込みが、より一層効果的に緩和され得ることとなる。
【0086】
図14に示されるホーム先端転落防止材においては、互いに隣り合う3個の板状リブ12,12,12の先端部同士が、連結部26にて連結されて、3個の板状リブ12,12,12にて、ループ状リブ28が形成されている。そして、ここでは、ループ状リブ28を構成する3個の板状リブ12,12,12のうち、一方の端に位置する板状リブ12と中央に位置する板状リブ12とを連結する連結部26部分と、他方の端に位置する板状リブ12と中央に位置する板状リブ12とを連結する連結部26部分とが、それぞれ、半円弧形状を呈している。これにより、連結部26の上下方向に延びる側面のうち、板状リブ12の突出方向前側に位置する外面31aが、半円弧面を連設させてなる形状とされている。
【0087】
このような構造によれば、2個の板状リブ12,12を連結部26にて連結してループ状リブ28を形成する場合に比して、複数のループ状リブ28のうちの幾つかのループ状リブ28に対する踏みつけによる沈み込みが、より一層効果的に緩和され得ることとなる。また、連結部26の外面31aが半円弧面を連設させてなる形状とされているため、3個の板状リブ12,12,12を連結しているにも拘わらず、連結部26の外面31aの半円弧面の曲率半径を可及的に小さくできる。そして、それによって、そのような連結部26の外面31aの車両側面40に対する接触面積を可及的に小さくでき、以て、複数のループ状リブ28が車両側面40に接触した際の接触抵抗が、より有利に低減され得ることとなる。
【0088】
なお、図示されてはいないものの、板状リブ12の4個以上のものを連結部26にて連結することも可能である。また、1個のホーム先端転落防止材において、連結部26にて連結される板状リブ12の数が、全て同数とされている必要はない。例えば、1個のホーム先端転落防止材に、板状リブ12の2個のものにて構成されたループ状リブ28と、その3個のものにて構成されたループ状リブ28と、その4個以上のものにて構成されたループ状リブ28とが混在していても、何等差し支えないのである。更に、1個のホーム先端転落防止材において、隣り合う複数の板状リブ12が連結されてなるループ状リブ28と、隣り合うものとは非連結で独立した板状リブ12の両方が設けられていても良い。
【0089】
また、板状リブ12やループ状リブ28の形成数や、隣り合う板状リブ12同士の配置間隔、及びループ状リブ28同士の配置間隔は、適宜に変更可能である。更に、各板状リブ12の基体部10からの突出高さは、必ずしも一定の大きさとされている必要はなく、複数の板状リブ12のうちの全てが、或いはそれらのうちの幾つかのものが、互いに異なる寸法とされていても良い。
【0090】
更にまた、板状リブ12の厚さも、複数の板状リブ12のうちの全てを、或いはそれらのうちの幾つかのものを、互いに異なる寸法としたり、1個の板状リブ12において部分的に異なる厚さとしたりすることも可能である。
【0091】
また、連結部26の形状や厚さ、或いは板状リブ12に対する形成位置等も、適宜に変更できる。例えば、それらを連結部26毎に変更しても、何等差し支えない。
【0092】
このように、本発明では、互いに隣り合う少なくとも2個の板状リブ12が、連結部26にて連結されておれば、それら板状リブ12や連結部26の具体的構造は、特に限定されるものではなく、上記に例示した幾つかの構造を組合せたり、或いはそれらの構造を更に改良したりすることが可能である。
【0093】
また、前記した幾つかの実施形態では、基体部10が、プラットホーム32の上面に載置されて、固定される構造とされていた。しかしながら、例えば、特開平5−287710号公報や特開平6−293256号公報に示されるように、基体部10が、プラットホーム32の前端面34に固定される構造を有していても良い。
【0094】
さらに、ホーム先端転落防止材が踏み板44を有する場合には、特開平6−293256号公報に示されるように、基体部10の前面の上端部に、踏み板部としての被覆板部48を、各板状リブ12とは非接合の状態で一体形成する構造も、採用可能である。また、踏み板部44と基体部10とを別体構造とする場合には、それら踏み板部44と基体部10の接合に際して、例示のボルトによる締結以外に、接着等を用いた方法等、公知の接合方法が、適宜に採用され得る。
【0095】
加えて、本発明は、例示した鉄道の駅構内のプラットホームの先端に設置されるホーム先端転落防止材以外に、例えば、トラックターミナル内のプラットホームの先端に設置されるホーム先端転落防止材等、車両との間に隙間が形成されるプラットホーム先端に設置される各種のホーム先端転落防止材に対して、有利に適用可能である。
【0096】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【符号の説明】
【0097】
10 基体部 12 板状リブ
25 基部側角部 26 連結部
28 ループ状リブ 30 空間
32 プラットホーム 34 前端面
40 車両側面 42 隙間
44 踏み板 46 被覆板部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラットホームの端縁部に沿設される基体部と、該プラットホームの端縁部と車両との間の隙間内に、上下方向に延び且つ該端縁部の延出方向において互いに所定距離を隔てて位置するように、前記基体部に対して一体的に突設された、ゴム状弾性体からなる複数の板状リブとを有して構成されたホーム先端転落防止材において、
前記複数の板状リブのうちの互いに隣り合う少なくとも二つのものを相互に連結する、ゴム状弾性体からなる連結部を、該少なくとも二つの板状リブ間に一体的に架設したことを特徴とするホーム先端転落防止材。
【請求項2】
前記連結部が、前記少なくとも二つの板状リブを、前記隙間内での上下の延出方向の全長に亘って相互に連結している請求項1に記載のホーム先端転落防止材。
【請求項3】
前記連結部が、前記少なくとも二つの板状リブの突出先端部間に架設されている請求項1又は請求項2に記載のホーム先端転落防止材。
【請求項4】
前記隙間内で上下方向に延びる、前記連結部の側面のうち、前記板状リブの突出方向前側に位置する側面が、該板状リブの突出方向に凸の円弧面とされている請求項3に記載のホーム先端転落防止材。
【請求項5】
前記連結部が、前記少なくとも二つの板状リブの突出先端部間に、直線的に延びる部分を有して架設されている請求項3に記載のホーム先端転落防止材。
【請求項6】
前記連結部が、前記少なくとも二つの板状リブの突出方向中間部間に架設されている請求項1乃至請求項5のうちの何れか1項に記載のホーム先端転落防止材。
【請求項7】
前記板状リブの基端側角部が、湾曲形状とされている請求項1乃至請求項6のうちの何れか1項に記載のホーム先端転落防止材。
【請求項8】
少なくとも前記複数の板状リブとは非接合の、平板状のゴム状弾性体からなる踏み板部が、該複数の板状リブを上側から覆って配設されている請求項1乃至請求項7のうちの何れか1項に記載のホーム先端転落防止材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−131402(P2012−131402A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285950(P2010−285950)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(504158881)東京地下鉄株式会社 (22)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】