説明

ボイラバーナへの油燃料供給装置および供給方法

【課題】アスファルト等の重質油よりも高粘度の油燃料を活用することができる油燃料供給装置を提供する。
【解決手段】油燃料を貯蔵するタンク2と、油燃料を加熱するタンク内加熱手段4と、油燃料をタンク2から送り出すポンプ6と、油燃料をボイラバーナ7で燃焼させる温度まで更に加熱する燃料加熱器8と、ボイラバーナ7へ油燃料を導く導入管10と、導入管10から分岐し、油燃料の一部をタンク2へ戻すタンク戻り管12と、ボイラバーナ7で燃焼されなかった油燃料をタンク戻り管12に合流させるバーナ戻り管14と、油燃料の気化を抑制する気化抑制手段24と、油燃料を合流点15へ供給する第1バルブ16と、ボイラバーナ7へ供給する第2バルブ18と、ボイラバーナ7で燃焼されなかった油燃料を合流点15へ供給する第3バルブ20とを備え、起動時から通常運転時までの油燃料の流れを制御可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラバーナへの油燃料供給装置および供給方法に係り、特に、アスファルト等の重質油よりも高粘度の油燃料を使用するボイラの起動時から通常運転時までのボイラバーナへの油燃料供給装置および供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油精製プロセスにおいて、ナフサやガソリン等のような軽質油を求める市場の傾向から、例えば、重質留分(ブライトストック)が余剰になる状況にある。このため、余剰となる重質留分をボイラプラントの燃料として利用しようとする試みがなされている。重質留分のなかでも、溶剤脱れき法(solvent deasphalting process)の残渣物であるSDAピッチは、特に余剰になりやすいため、SDAピッチの付加価値の高い活用方法がより一層求められている。
【0003】
SDAピッチは、従来、ボイラ燃料として使用されている重質油のアスファルトに比べてさらに重質で高粘度であるため、配管、機器において流動性を確保し、ボイラバーナで噴霧燃焼させるためには、従来よりも更に高温に加熱して粘度を低下させる必要がある。
しかし、SDAピッチは、大気圧下で例えば260℃を超えると気化率が増加するとともに、SDAピッチに含まれる硫黄分に起因した鋼材の硫化腐食が加速される可能性がある。
【0004】
また、油燃料を使用するボイラでは、ボイラ起動時から通常運転に移るまでのあいだに、油燃料を循環させて系内の暖機を行い、ボイラバーナ燃焼量を徐々に上げている。ボイラ起動時から通常運転に移る過程において、加熱器を通した高温の油燃料は、一部をボイラバーナで燃焼し、一部を噴燃ポンプ出口から戻る油燃料と合流し、タンクに流入される。この場合、油燃料の合流後の混合および温度について、特に考慮されていなかった。
そのため、合流後の油燃料がタンクへ戻る配管内で気化してしまったり、高温の油燃料がそのままタンク内に流入してタンク内で気化しベント量が増加してしまったりする恐れがある。また、合流後の混合が不十分な場合、油燃料の温度に偏りのために、タンク内に局所加熱が生じる可能性がある。
【0005】
そこで、SDAピッチのように高粘度ではないが、特許文献1には、C重油と重質油のような粘度の異なる油燃料をボイラバーナに供給する手法が提案されている。特許文献1では、C重油と重質油の粘度が同程度になるようにそれぞれ加熱し、温度が異なったC重油と重質油とをバーナに供給する前にミキサーで混合させて供給するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭59−29918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1は、油燃料としてSDAピッチを対象としていないため、ボイラバーナで燃焼できるように油燃料の粘度を調整しているものの、油燃料の加熱による気化率増加や硫化腐食の加速については考慮されていない。
【0008】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、気化を抑制しながらアスファルト等の重質油よりも高粘度の油燃料を活用することができるボイラバーナへの油燃料供給装置および供給方法を提供することを目的とする。
【0009】
本発明に係るボイラバーナへの油燃料供給装置は、油燃料を主燃料として燃焼するボイラバーナへの油燃料供給装置において、アスファルト等の重質油よりも高粘度の油燃料を貯蔵するタンクと、前記タンク内に設けられ、前記タンクに貯蔵された前記油燃料を加熱するタンク内加熱手段と、前記タンク内加熱手段により加熱された前記油燃料を前記タンクから送り出すポンプと、前記ポンプにより送り出された前記油燃料を前記ボイラバーナで燃焼させる温度まで更に加熱する燃料加熱器と、前記タンク、前記ポンプおよび前記燃料加熱器を連結し、前記ボイラバーナへ前記油燃料を導く導入管と、前記導入管から分岐し、前記ポンプにより送り出された前記油燃料の一部を前記タンクへ戻すタンク戻り管と、前記ボイラバーナで燃焼されなかった前記油燃料を前記タンク戻り管に合流させるバーナ戻り管と、前記タンク戻り管に配置され、前記ポンプ出口からの圧力を一定にして前記油燃料を前記タンク戻り管と前記バーナ戻り管との合流点へ供給する第1バルブと、前記導入管に配置され、前記燃料加熱器により加熱された前記油燃料の流量を前記ボイラバーナの負荷に基づいて調節し、前記油燃料を前記ボイラバーナへ供給する第2バルブと、前記バーナ戻り管に配置され、前記ボイラバーナで燃焼されなかった前記油燃料を前記合流点へ供給する第3バルブと、前記第1バルブ、前記第2バルブおよび前記第3バルブによって、前記油燃料が前記ボイラバーナへ徐々に供給されるようにボイラの起動時から通常運転時までの前記油燃料の流れを制御する油燃料供給制御手段と、前記タンク戻り管の前記合流点と前記タンクとのあいだで前記油燃料の気化を抑制する気化抑制手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
上記ボイラバーナへの油燃料供給装置では、アスファルト等の重質油よりも高粘度の油燃料を主燃料とし、燃料加熱器によって油燃料をボイラバーナで燃焼させる温度まで加熱しているので、油燃料の流動性およびボイラバーナでの噴霧性が維持できる。また、油燃料を高温に加熱しながらもタンク戻り管の合流点とタンクとのあいだで油燃料の気化を抑制するので、油燃料に含まれる硫黄分に起因した鋼材の硫黄腐食を抑制することができる。よって、気化を抑制しながらアスファルト等の重質油よりも高粘度の油燃料を活用することが可能となる。
本明細書において、重質油とは、アスファルトのように常温(15〜25℃)で固化する原油成分とする。アスファルトは、原油の減圧蒸留において、残留物として得られるもので、軟化点は通常65℃以下である。
【0011】
上記ボイラバーナへの油燃料供給装置において、前記気化抑制手段は、前記タンク戻り管と前記バーナ戻り管との前記合流点の下流側に配置され、合流した前記油燃料を撹拌する撹拌手段を有してもよい。
これにより、温度の異なる油燃料が合流後に撹拌されるので、容易に油燃料の温度を均一化して高温部位の発生を回避することができる。そのため、合流後の油燃料がタンクへ戻る配管内で気化することを抑制でき、硫化腐食を抑制して鋼材の使用可能な温度域を維持することができる。また、高温の油燃料がそのままタンク内に流入することを防ぐので、タンク内の局所加熱を防止する。
【0012】
あるいは、前記気化抑制手段は、前記タンク戻り管と前記バーナ戻り管との前記合流点の下流側に配置され、前記合流点で合流した前記油燃料の温度を検出する温度検出手段と、前記バーナ戻り管に配置され、前記第3バルブにより供給される前記油燃料の流量を検出する流量検出手段と、前記温度検出手段および前記流量検出手段の検出結果に基づいて前記第3バルブにより供給される前記油燃料の流量を制御する第3バルブ制御手段とを有してもよい。
これにより、温度検出手段および流量検出手段の検出結果に基づいて第3バルブにより供給される油燃料の流量を制御するので、タンク戻り管内での気化を緩和する温度以下に維持することができる。よって、合流後の油燃料がタンクへ戻る配管内で気化することを抑制できる。
【0013】
また、あるいは、前記気化抑制手段は、前記タンク戻り管と前記バーナ戻り管との前記合流点の下流側に配置され、前記合流点と前記タンクとのあいだの管内圧力を検出する管内圧力検出器と、前記タンク戻り管の前記タンク入口側に設けられ、前記合流点と前記タンクとのあいだの前記タンク戻り管内を圧力調節する圧力調節手段と、前記管内圧力検出器の検出結果に基づいて圧力調節手段を制御する圧力制御部とを有してもよい。
これにより、管内圧力検出器の検出結果に基づいて、合流点とタンクとのあいだのタンク戻り管内を圧力調節するので、タンク戻り管内での気化を緩和する圧力以下に維持することができる。よって、合流後の油燃料がタンクへ戻る配管内で気化することを抑制できる。
【0014】
本発明に係るボイラバーナへの油燃料供給方法は、油燃料を主燃料として燃焼するボイラバーナへの油燃料供給方法において、アスファルト等の重質油よりも高粘度の油燃料を貯蔵するタンク内で前記油燃料を加熱するタンク内加熱工程と、前記タンク内加熱工程で加熱された前記油燃料をポンプにより前記タンクから送り出す工程と、前記ポンプにより送り出された前記油燃料を前記ボイラバーナで燃焼させる温度まで更に加熱する燃料加熱工程と、前記燃料加熱工程を介さずに、前記ポンプにより送り出された前記油燃料の一部を前記タンクへ戻すタンク戻り工程と、前記燃料加熱工程で加熱された前記油燃料を前記ボイラバーナへ導く工程と、前記ボイラバーナで燃焼されなかった前記油燃料を、前記タンク戻り工程で前記ポンプから前記タンクへ戻る前記油燃料の一部に合流させる油燃料合流工程と、
前記油燃料が前記ボイラバーナへ徐々に供給されるようにボイラの起動時から通常運転時までの前記油燃料の流れを制御する制御工程と、前記油燃料合流工程の後、前記タンクに戻すまでのあいだに前記合流させた前記油燃料の気化を抑制する気化抑制工程とを備えることを特徴とする。
【0015】
上記ボイラバーナへの油燃料供給方法では、アスファルト等の重質油よりも高粘度の油燃料を主燃料とし、油燃料をボイラバーナで燃焼させる温度まで加熱しているので、油燃料の流動性およびボイラバーナでの噴霧性が維持できる。また、油燃料を高温に加熱しながらも、油燃料を合流させてタンクに戻すまでのあいだ、合流させた油燃料の気化を抑制するので、油燃料に含まれる硫黄分に起因した鋼材の硫黄腐食を抑制することができる。よって、気化を抑制しながらアスファルト等の重質油よりも高粘度の油燃料を活用することが可能となる。
【0016】
上記ボイラバーナへの油燃料供給方法において、前記気化抑制工程では、前記油燃料合流工程の後、前記合流させた前記油燃料を撹拌してもよい。
これにより、温度の異なる油燃料が合流後に撹拌されるので、容易に油燃料の温度を均一化して高温部位の発生を回避することができる。そのため、合流後の油燃料がタンクへ戻る配管内で気化することを抑制でき、硫化腐食を抑制して鋼材の使用可能な温度域を維持することができる。また、高温の油燃料がそのままタンク内に流入することを防ぐので、タンク内の局所加熱を防止する。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、アスファルト等の重質油よりも高粘度の油燃料を主燃料とし、油燃料をボイラバーナで燃焼させる温度まで加熱しているので、油燃料の流動性およびボイラバーナでの噴霧性が維持できる。また、油燃料を高温に加熱しながらも、油燃料を合流させてタンクに戻すまでのあいだ、合流させた油燃料の気化を抑制するので、油燃料に含まれる硫黄分に起因した鋼材の硫黄腐食を抑制することができる。よって、気化を抑制しながらアスファルト等の重質油よりも高粘度の油燃料を活用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態1に係るボイラバーナへの油燃料供給装置を示す概略構成図である。
【図2】起動時から通常運転に移るまでの各部の油燃料流量の一例を示す図である。
【図3】実施形態2に係るボイラバーナへの油燃料供給装置を示す概略構成図である。
【図4】実施形態3に係るボイラバーナへの油燃料供給装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0020】
[実施形態1]
図1は、本発明の実施形態1に係るボイラバーナへの油燃料供給装置を示す概略構成図である。
【0021】
油燃料供給装置1は、油燃料を主燃料として燃焼するボイラバーナ7へ供給するものであり、図1に示すように、主として、タンク2と、ポンプ6と、燃料加熱器8と、導入管10と、タンク戻り管12と、バーナ戻り管14と、第1バルブ16と、第2バルブ18と、第3バルブ20と、油燃料供給制御部22と、気化抑制手段(撹拌手段)24とにより構成される。
【0022】
タンク2は、アスファルト等の重質油よりも高粘度の油燃料を貯蔵する。「アスファルト等の重質油よりも高粘度の油燃料」とは、例えば、溶剤脱れき法の残渣物であるSDAピッチを用いてもよい。SDAピッチは、アスファルトよりも高粘度であるため、配管内での流動性を考慮してタンク内加熱手段4によって、例えば200℃で保持されることが好ましい。タンク内加熱手段4は、タンク2内に設けられ、タンク2に貯蔵された油燃料を加熱する。
【0023】
ポンプ6は、タンク内加熱手段4により加熱された油燃料をタンク2から送り出す。
燃料加熱器8は、ポンプ6により送り出された油燃料をボイラバーナ7で燃焼させる温度まで更に加熱する。ボイラバーナ7で燃焼させる温度は、油燃料がSDAピッチの場合、例えば320℃とすることが好ましい。
【0024】
導入管10は、タンク2、ポンプ6および燃料加熱器8を連結し、ボイラバーナ7へ油燃料を導くようになっている。
タンク戻り管12は、導入管10から分岐し、ポンプ6により送り出された油燃料の一部をタンク2へ戻す。
バーナ戻り管14は、ボイラバーナ7で燃焼されなかった油燃料をタンク戻り管12に合流させる。
【0025】
第1バルブ16は、タンク戻り管12に配置され、ポンプ6出口からの圧力を一定にして油燃料をタンク戻り管12とバーナ戻り管14との合流点15へ供給する。
第2バルブ18は、導入管10に配置され、燃料加熱器8により加熱された油燃料の流量をボイラバーナ7の負荷に基づいて調節し、油燃料をボイラバーナ7へ供給する。
第3バルブ20は、バーナ戻り管14に配置され、ボイラバーナ7で燃焼されなかった油燃料を合流点15へ供給する。
【0026】
油燃料供給制御部22は、図1に示すように、第1バルブ16、第2バルブ18および第3バルブ20によって、油燃料がボイラバーナ7へ徐々に供給されるようにボイラの起動時から通常運転時までの油燃料の流れを制御する。
例えば、図2に示すように、油燃料供給装置1の各部(1)〜(6)の油燃料流量は、第1バルブ16、第2バルブ18および第3バルブ20によって徐々に変化する。図2では、ボイラ最大負荷時の燃料消費量を100%とし、各部の油燃料流量を記載している。
【0027】
具体的には、ボイラを起動させると、最初にポンプ6の暖機を行う。この場合、ポンプ6出口部(1)の油燃料流量と、第1バルブ16出口部(2)の油燃料流量は120%であり、油燃料はポンプ6から送り出された後、全量がタンク戻り管12を介してタンク2に戻る。
次に、油燃料供給装置1の配管暖機を行う。この場合、ポンプ6から送り出された油燃料は、第1バルブ16と燃料加熱器8とのそれぞれに供給される。例えば、第1バルブ16出口部(2)の油燃料流量は85%、燃料加熱器8入口部(3)の油燃料流量は35%としてもよい。
【0028】
配管暖機を行った後、ボイラバーナ7を点火する。例えば、ボイラバーナ7の燃焼量(4)を15%とした場合、第1バルブ16出口部(2)の油燃料流量は85%、燃料加熱器8入口部(3)の油燃料流量は35%、ボイラバーナ7からの戻り(5)は20%となり、タンク2への油燃料の戻り(6)は105%となる。
ボイラバーナ7の点火後は、油燃料がボイラバーナ7へ徐々に供給されるように流量検出器28で調節し、ボイラ負荷を上昇させる。そして、ボイラ最大負荷時において、各部の油燃料流量は、図2に示すように、第1バルブ16出口部(2)で20%、燃料加熱器8入口部(3)で100%、ボイラバーナ7からの戻り(5)で0%となる。なお、ボイラ最大負荷時とは、ボイラバーナ7の燃焼量(4)が100%であり、ボイラの通常運転時である。
【0029】
気化抑制手段は、タンク戻り管12の合流点15とタンク2とのあいだで油燃料の気化を抑制する。
本実施形態では、気化抑制手段は、タンク戻り管12とバーナ戻り管14との合流点15の下流側に配置され、合流した油燃料を撹拌する撹拌手段24を有してもよい。撹拌手段24は、撹拌することができるものであれば特に限定されないが、例えば、ラインミキサーであってもよい。ラインミキサーは、撹拌性がよく単純な構成であるので、複雑な制御が不要で、容易に油燃料の温度を均一化できる。また、メンテナンスも簡易である。さらに、ラインミキサーは油燃料の流路を大きく確保できるので、詰まりや固着等の懸念がない。
【0030】
上述のように、撹拌手段24によって温度の異なる油燃料が合流後に撹拌されるので、容易に油燃料の温度を均一化して高温部位の発生を回避することができる。そのため、合流後の油燃料がタンク2へ戻るタンク戻り管12内で気化することを抑制でき、硫化腐食を抑制して鋼材の使用可能な温度域を維持することができる。また、高温の油燃料がそのままタンク2内に流入することを防ぐので、タンク2内の局所加熱を防止する。
【0031】
なお、気化抑制手段は、撹拌手段24の他に、図1に示すように、現場温度計26と、現場圧力計27とを有してもよい。現場温度計26および現場圧力計27は、タンク戻り管12に配置され、合流後の油燃料の温度および圧力を計測する。合流後の油燃料の温度および圧力を計測することで、撹拌手段24で撹拌された油燃料の状態を確認することができる。
【0032】
上記構成のボイラバーナへの油燃料供給装置1では、アスファルト等の重質油よりも高粘度の油燃料を主燃料とし、燃料加熱器8によって油燃料をボイラバーナ7で燃焼させる温度まで加熱しているので、油燃料の流動性およびボイラバーナ7での噴霧性が維持できる。また、油燃料を高温に加熱しながらもタンク戻り管12の合流点15とタンク2とのあいだで油燃料の気化を抑制するので、油燃料に含まれる硫黄分に起因した鋼材の硫黄腐食を抑制することができる。よって、気化を抑制しながらアスファルト等の重質油よりも高粘度の油燃料を活用することが可能となる。
【0033】
[実施形態2]
次に、実施形態2のボイラバーナへの油燃料供給装置について説明する。図3は、実施形態2に係るボイラバーナへの油燃料供給装置を示す概略構成図である。
実施形態2は、気化抑制手段が異なる点を除けば、実施形態1で説明した油燃料供給装置1と同一の構成であるので、その詳細な説明を省略する。
【0034】
本実施形態において、油燃料供給装置1の気化抑制手段は、図3に示すように、温度検出器30と、流量検出器32と、第3バルブ制御部35とを有する。
【0035】
温度検出器30は、タンク戻り管12とバーナ戻り管14との合流点15の下流側に配置され、合流点15で合流した油燃料の温度を検出する。
流量検出器32は、バーナ戻り管14に配置され、第3バルブ20により供給される油燃料の流量を検出する。
第3バルブ制御部35は、温度検出器30および流量検出器32の検出結果に基づいて第3バルブ20により供給される油燃料の流量を制御する。なお、第3バルブ20は、油燃料の流量を調節する機能を備えることが好ましい。
【0036】
このようにして、温度検出器30および流量検出器32の検出結果に基づいて第3バルブ20により供給される油燃料の流量を制御するので、タンク戻り管12内での気化を緩和する温度以下に維持することができる。よって、合流後の油燃料がタンク2へ戻るタンク戻り管12内で気化することを抑制できる。
【0037】
[実施形態3]
次に、実施形態3のボイラバーナへの油燃料供給装置について説明する。図4は、実施形態3に係るボイラバーナへの油燃料供給装置を示す概略構成図である。
実施形態3は、気化抑制手段が異なる点を除けば、実施形態1で説明した油燃料供給装置1と同一の構成であるので、その詳細な説明を省略する。
【0038】
本実施形態において、油燃料供給装置1の気化抑制手段は、図4に示すように、管内圧力検出器36と、圧力調節手段38と、圧力制御部37とを有する。
【0039】
管内圧力検出器36は、タンク戻り管12とバーナ戻り管14との合流点15の下流側に配置され、合流点15とタンク2とのあいだの管内圧力を検出する。
圧力制御部37は、管内圧力検出器36の検出結果に基づいて圧力調節手段38を制御する。
【0040】
圧力調節手段38は、タンク戻り管12のタンク2入口側に設けられ、合流点15とタンク2とのあいだのタンク戻り管12内を圧力調節する。圧力調節手段38は、特に限定されず、圧力調節弁であってもよいし、タンク戻り管12に設置されるオリフィスであってもよい。
【0041】
ボイラの起動時や油燃料の循環運転時においては、ポンプ6出口からの圧力が一定の戻りと、ボイラバーナ7からの圧力が変化する戻りが合流点15で合流する。そのため、タンク戻り管12の戻り流量は、ボイラバーナ7の燃焼状態によって変化してしまう。そこで、タンク戻り管12内の油燃料が気化しない圧力を維持することによって、気化を抑制する。
なお、圧力調節手段38は、油燃料の気化量を出来るだけ減少させる観点から、タンク戻り管12のタンク2入口側に設けられることが好ましい。
【0042】
このようにして、管内圧力検出器36の検出結果に基づいて、合流点15とタンク2とのあいだのタンク戻り管12内を圧力調節するので、タンク戻り管12内での気化を緩和する圧力以下に維持することができる。よって、合流後の油燃料がタンク2へ戻るタンク戻り管12内で気化することを抑制できる。
【0043】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、実施形態で説明した構成を任意に組み合わせてもいいのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0044】
1 油燃料供給装置
2 タンク
4 タンク内加熱手段
6 ポンプ
7 ボイラバーナ
8 燃料加熱器
10 導入管
12 タンク戻り管
14 バーナ戻り管
15 合流点
16 第1バルブ
18 第2バルブ
20 第3バルブ
22 油燃料供給制御部
24 撹拌手段(気化抑制手段)
30 温度検出器
32 流量検出器
35 第3バルブ制御部
36 管内圧力検出器
37 圧力制御部
38 圧力調節手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油燃料を主燃料として燃焼するボイラバーナへの油燃料供給装置において、
重質油よりも高粘度の油燃料を貯蔵するタンクと、
前記タンク内に設けられ、前記タンクに貯蔵された前記油燃料を加熱するタンク内加熱手段と、
前記タンク内加熱手段により加熱された前記油燃料を前記タンクから送り出すポンプと、
前記ポンプにより送り出された前記油燃料を前記ボイラバーナで燃焼させる温度まで更に加熱する燃料加熱器と、
前記タンク、前記ポンプおよび前記燃料加熱器を連結し、前記ボイラバーナへ前記油燃料を導く導入管と、
前記導入管から分岐し、前記ポンプにより送り出された前記油燃料の一部を前記タンクへ戻すタンク戻り管と、
前記ボイラバーナで燃焼されなかった前記油燃料を前記タンク戻り管に合流させるバーナ戻り管と、
前記タンク戻り管に配置され、前記ポンプ出口からの圧力を一定にして前記油燃料を前記タンク戻り管と前記バーナ戻り管との合流点へ供給する第1バルブと、
前記導入管に配置され、前記燃料加熱器により加熱された前記油燃料の流量を前記ボイラバーナの負荷に基づいて調節し、前記油燃料を前記ボイラバーナへ供給する第2バルブと、
前記バーナ戻り管に配置され、前記ボイラバーナで燃焼されなかった前記油燃料を前記合流点へ供給する第3バルブと、
前記第1バルブ、前記第2バルブおよび前記第3バルブによって、前記油燃料が前記ボイラバーナへ徐々に供給されるようにボイラの起動時から通常運転時までの前記油燃料の流れを制御する油燃料供給制御手段と、
前記タンク戻り管の前記合流点と前記タンクとのあいだで前記油燃料の気化を抑制する気化抑制手段とを備えることを特徴とするボイラバーナへの油燃料供給装置。
【請求項2】
前記気化抑制手段は、前記タンク戻り管と前記バーナ戻り管との前記合流点の下流側に配置され、合流した前記油燃料を撹拌する撹拌手段を有することを特徴とする請求項1に記載のボイラバーナへの油燃料供給装置。
【請求項3】
前記気化抑制手段は、前記タンク戻り管と前記バーナ戻り管との前記合流点の下流側に配置され、前記合流点で合流した前記油燃料の温度を検出する温度検出手段と、前記バーナ戻り管に配置され、前記第3バルブにより供給される前記油燃料の流量を検出する流量検出手段と、前記温度検出手段および前記流量検出手段の検出結果に基づいて前記第3バルブにより供給される前記油燃料の流量を制御する第3バルブ制御手段とを有することを特徴とする請求項1に記載のボイラバーナへの油燃料供給装置。
【請求項4】
前記気化抑制手段は、前記タンク戻り管と前記バーナ戻り管との前記合流点の下流側に配置され、前記合流点と前記タンクとのあいだの管内圧力を検出する管内圧力検出器と、前記タンク戻り管の前記タンク入口側に設けられ、前記合流点と前記タンクとのあいだの前記タンク戻り管内を圧力調節する圧力調節手段と、前記管内圧力検出器の検出結果に基づいて圧力調節手段を制御する圧力制御部とを有することを特徴とする請求項1に記載のボイラバーナへの油燃料供給装置。
【請求項5】
油燃料を主燃料として燃焼するボイラバーナへの油燃料供給方法において、
重質油よりも高粘度の油燃料を貯蔵するタンク内で前記油燃料を加熱するタンク内加熱工程と、
前記タンク内加熱工程で加熱された前記油燃料をポンプにより前記タンクから送り出す工程と、
前記ポンプにより送り出された前記油燃料を前記ボイラバーナで燃焼させる温度まで更に加熱する燃料加熱工程と、
前記燃料加熱工程を介さずに、前記ポンプにより送り出された前記油燃料の一部を前記タンクへ戻すタンク戻り工程と、
前記燃料加熱工程で加熱された前記油燃料を前記ボイラバーナへ導く工程と、
前記ボイラバーナで燃焼されなかった前記油燃料を、前記タンク戻り工程で前記ポンプから前記タンクへ戻る前記油燃料の一部に合流させる油燃料合流工程と、
前記油燃料が前記ボイラバーナへ徐々に供給されるようにボイラの起動時から通常運転時までの前記油燃料の流れを制御する制御工程と、
前記油燃料合流工程の後、前記タンクに戻すまでのあいだに前記合流させた前記油燃料の気化を抑制する気化抑制工程とを備えることを特徴とするボイラバーナへの油燃料供給方法。
【請求項6】
前記気化抑制工程では、前記油燃料合流工程の後、前記合流させた前記油燃料を撹拌することを特徴とする請求項5に記載のボイラバーナへの油燃料供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−226745(P2011−226745A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99159(P2010−99159)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】