説明

ボイラ給水方法及びボイラ給水システム

【課題】 コストを低減する。
【解決手段】 ボイラユニット4の起動時及び停止動作時には、蒸気は、補助蒸気ヘッダ8から、タービンに供給され、タービン駆動ポンプが駆動され、ボイラユニット4へ給水される。また、ボイラユニット4の定常運転時には、蒸気は、タービン部5から、タービンに供給され、タービン駆動ポンプが駆動され、ボイラユニット4へ給水される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、汽力発電設備等の火力発電設備において、発電機を駆動する蒸気タービンに蒸気を供給するボイラユニットに給水するためのボイラ給水方法及びボイラ給水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、汽力発電設備等の火力発電設備においては、発電機を駆動する蒸気タービンに蒸気を供給するボイラユニットの定常運転時には、ボイラユニットへ給水を行う給水ポンプとして、タービン駆動ポンプを用い、このタービン駆動ポンプを駆動するタービンに、蒸気タービンから抽気した蒸気を供給して、タービン駆動ポンプを運転している。また、ボイラユニットの起動時及び停止動作時には、給水ポンプとして電動ポンプを使用している(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
すなわち、ボイラユニット起動時には、ボイラユニットへの水張りを行う際に、電動ポンプを起動し、定常運転移行後、電動ポンプからタービン駆動ポンプに切換えを行って、電動ポンプを停止する。また、ボイラユニット停止動作時には、電動ポンプを起動して、タービン駆動ポンプから電動ポンプへ切り換えた後に、ボイラユニットの火炉を消火し、その後に、電動ポンプを停止している。
【特許文献1】特開平8−296809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来技術においては、ボイラ給水用の電動ポンプは、大型補機であることから、コストが嵩むという問題がある。すなわち、こうした電動ポンプは、メタルクラッドスイッチギアから電力供給される大容量電動機によって駆動され、使用時の電流値が大きい(例えば略300A)ために、使用時間が長くなると、多大な電力を消費し、コスト損失が増大してしまう。例えば、週末起動停止(土曜日停止、月曜日起動)の場合、ボイラユニット起動時に略6時間、停止動作時に略1時間を要する。
【0005】
この発明は、前記の課題を解決し、コストを低減することができるボイラ給水方法及びボイラ給水システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、請求項1の発明は、発電機を駆動する第1の蒸気タービンに蒸気を供給するボイラユニットに給水するためのボイラ給水方法であって、前記ボイラユニットに給水する給水ポンプを、第2の蒸気タービンによって駆動し、前記ボイラユニットの起動時又は/及び停止動作時には、前記ボイラユニット及び前記第1の蒸気タービンとは別の蒸気供給源から、蒸気が前記第2の蒸気タービンに供給されて、前記給水ポンプが駆動され、前記ボイラユニットの定常運転時には、前記第1の蒸気タービンから抽気された蒸気が、前記第2のタービンに供給されて、前記給水ポンプが駆動されることを特徴としている。
【0007】
請求項1の発明では、ボイラユニットの起動時又は/及び停止動作時には、ボイラユニット及び第1の蒸気タービンとは別の蒸気供給源から、蒸気が第2の蒸気タービンに供給されて、給水ポンプが駆動され、ボイラユニットの定常運転時には、第1の蒸気タービンから抽気された蒸気が、第2のタービンに供給されて、給水ポンプが駆動される。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のボイラ給水方法であって、前記蒸気供給源は、別の第1の蒸気タービンに蒸気を供給する別のボイラユニット、又は所定の機器若しくは装置に蒸気を供給するボイラユニットからなり、前記蒸気供給源から、蒸気が前記第2の蒸気タービンに供給されることを特徴としている。
【0009】
請求項3の発明は、発電機を駆動する第1の蒸気タービンに蒸気を供給するボイラユニットに給水するためのボイラ給水システムであって、前記ボイラユニットに給水する給水ポンプと、前記給水ポンプを駆動する第2の蒸気タービンとを備え、前記ボイラユニットの起動時又は/及び停止動作時には、前記ボイラユニット及び前記第1の蒸気タービンとは別の蒸気供給源から、蒸気が前記第2の蒸気タービンに供給されて、前記給水ポンプが駆動され、前記ボイラユニットの定常運転時には、前記第1の蒸気タービンから抽気された蒸気が、前記第2のタービンに供給されて、前記給水ポンプが駆動されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、ボイラユニットの起動時又は/及び停止動作時には、ボイラユニット及び第1の蒸気タービンとは別の蒸気供給源から、蒸気が第2の蒸気タービンに供給されて、給水ポンプが駆動され、ボイラユニットの定常運転時には、第1の蒸気タービンから抽気された蒸気が、第2のタービンに供給されて、給水ポンプが駆動されるため、起動時又は/及び停止動作時に、電動ポンプを用いる必要がないので、電力の消費を抑制することができ、コストを低減することができる。
【0011】
請求項2の発明によれば、例えば、所内用のボイラユニット等の他のボイラユニットで生成された蒸気を有効利用することができ、新たに設備を設ける必要がない。
【0012】
請求項3の発明によれば、ボイラユニットの起動時又は/及び停止動作時には、ボイラユニット及び第1の蒸気タービンとは別の蒸気供給源から、蒸気が第2の蒸気タービンに供給されて、給水ポンプが駆動され、ボイラユニットの定常運転時には、第1の蒸気タービンから抽気された蒸気が、第2のタービンに供給されて、給水ポンプが駆動されるため、起動時又は/及び停止動作時に、電動ポンプを用いる必要がないので、電力の消費を抑制することができ、コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、この発明の実施の形態について、図面を用いて詳しく説明する。
【0014】
(実施の形態)
図1は、この発明の一実施の形態に係る火力発電設備の構成を示す図、図2及び図3は、同火力発電設備の給水ユニットの構成を説明するための説明図である。図1に示すように、火力発電設備1は、例えば、汽力発電所であり、発電機2と、給水ユニット3と、給水ユニット3から圧縮水が供給され過熱蒸気を生成するボイラユニット4と、蒸気タービンからなり、ボイラユニット4から蒸気が供給され、発電機2を駆動するためのタービン部5と、タービン部5からの排気を凝縮復水させ給水ユニット3側へ送る復水部6とを備えている。この実施の形態では、給水ユニット3へは、補助蒸気ヘッダ8を介した蒸気の供給が可能とされている。この実施の形態のボイラ給水システム7は、給水ユニット3及び補助蒸気ヘッダ8を含み、補助蒸気ヘッダ8を介して、又はタービン部5からの抽気によって、蒸気の供給を受けて、後述するタービン15(16)によって駆動されるタービン駆動ポンプ17,18がボイラユニット4へ給水可能なように構成されている。
【0015】
補助蒸気ヘッダ8には、ボイラユニット4のほか、例えば、発電所内の機器や装置等に蒸気を供給する所内用のボイラユニット9や、他の発電用の蒸気タービン駆動のためのボイラユニット11,12からも蒸気が供給される。ボイラユニット11,12は、補助蒸気ヘッダ13に接続され、この補助蒸気ヘッダ13も、補助蒸気ヘッダ8に接続されている。すなわち、給水ユニット3へは、補助蒸気ヘッダ8を介して、ボイラユニット9,11,12からの蒸気の供給が可能とされている。したがって、ボイラ給水システム7において、給水ユニット3への蒸気の供給は、ボイラユニット4の起動時及び停止動作時には、補助蒸気ヘッダ8を介してなされ、定常運転時には、タービン部5からの抽気によってなされることが可能とされている。
【0016】
給水ユニット3は、図2に示すように、それぞれ、タービン15,16によって駆動されるタービン駆動ポンプ17,18と、モータ19によって駆動される電動ポンプ21とを有し、ボイラユニット4へ給水する。ここで、タービン駆動ポンプ17,18、電動ポンプ21は、並列に配置されている。
【0017】
タービン駆動ポンプ17(18)を駆動するタービン15(16)へは、図3に示すように、タービン部5から、比較的低圧の蒸気が低圧塞止弁23(25)を介して供給され、比較的高圧の蒸気が高圧塞止弁24(26)を介して供給されることが可能とされている。また、タービン15(16)へは、補助蒸気ヘッダ8から、蒸気が低圧塞止弁23(25)を介して供給されることが可能とされている。なお、タービン部5からは、例えば、略0.155MPa(略105MW時)の蒸気が供給されるのに対し、補助蒸気ヘッダ8からは、例えば、1.5MPaの蒸気が供給される。
【0018】
ボイラユニット4の起動時及び停止動作時には、蒸気は、補助蒸気ヘッダ8から、タービン15(16)に供給され、定常運転時には、蒸気は、タービン部5から、タービン15(16)に供給される。タービン駆動ポンプ17,18は、いずれか一方が、又は両方が同時に運転される。また、タービン15(16)への補助蒸気ヘッダ8を介した、又はタービン部5からの抽気による蒸気の供給は、図示せぬ制御装置の制御によって、低圧塞止弁23(25)や高圧塞止弁24(26)等の弁装置が操作されて行われる。なお、電動ポンプ21は、例えば、補助蒸気ヘッダ8を介して供給される蒸気の圧力が所定値以下に低下した場合等の非常時に用いられる。
【0019】
図4は、この発明の一実施の形態に係る火力発電設備のタービン部の構成を示す図である。この実施の形態のタービン部5は、図4に示すように、高圧タービン28と、中圧タービン29と、低圧タービン31とが直列に接続されて構成されている。
【0020】
次に、上記構成の給水ユニットの動作について説明する。図5は、この発明の一実施の形態に係る火力発電設備の給水ユニットの動作を説明するための説明図である。ボイラユニット4の起動時には、図5(a)に示すように、蒸気は、補助蒸気ヘッダ8から、開放状態とされた低圧塞止弁23(25)を介して、経路L0に沿って、タービン15(16)に供給され、タービン駆動ポンプ17(18)が駆動され、ボイラユニット4へ給水される。
【0021】
ボイラユニット4が定常運転に移行すると、図5(b)に示すように、蒸気は、タービン部5から、開放状態とされた低圧塞止弁23(25)又は高圧塞止弁24(26)を介して、経路La又は経路Lbに沿って、タービン15(16)に供給され、タービン駆動ポンプ17(18)が駆動され、ボイラユニット4へ給水される。
【0022】
ボイラユニット4の停止動作時には、図5(a)に示すように、蒸気は、補助蒸気ヘッダ8から、開放状態とされた低圧塞止弁23(25)を介して、経路L0に沿って、タービン15(16)に供給され、タービン駆動ポンプ17(18)が駆動され、ボイラユニット4へ給水される。
【0023】
発明者が試算したところによると、蒸気1tあたり、1500円として、使用量を7tとすると、タービン駆動ポンプ17(18)を1時間使用すると、略1万円となり、これに対して、電動ポンプ21を使用すると、1時間で略3万円となる。したがって、週末起動停止1回あたり、11万円程度のコスト削減量となる。月4回の起動停止があると、年間のコスト低減額は、530万円程度となり、著しいコスト削減効果が見込まれる。
【0024】
こうして、この実施の形態の構成によれば、ボイラユニット4の起動時及び停止動作時に、電動ポンプ21を用いる必要がないので、電力の消費を抑制することができ、コストを低減することができる。また、例えば、所内用のボイラユニット等の他のボイラユニット9,11,12で生成された蒸気を有効利用することができ、新たに設備を設ける必要がない。
【0025】
以上、この発明の実施の形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれる。例えば、上述した実施の形態では、タービン駆動ポンプを、起動時及び停止動作時に、運転する場合について述べたが、起動時及び停止動作時のうち、一方に用いて、他方で、電動ポンプを用いるようにしても良い。
【0026】
また、ボイラユニット4に接続した補助蒸気ヘッダ8に代えて又は加えて、補助蒸気ヘッダ13に、給水ユニット3を接続して、蒸気の供給を受けるようにしても良い。また、給水ユニット3に、例えば、複数の補助蒸気ヘッダを接続して、起動時及び停止動作時に蒸気を供給する複数の経路を確保した上で、最も圧力が高い蒸気が得られる補助蒸気ヘッダ等を選択しても良いし、他の蒸気供給源が停止状態の場合や、圧力が全て所定値以下の場合は、電動ポンプに切り換えるようにしても良い。また、タービン駆動ポンプ17,18,電動ポンプ21の前段に、給水ブースタポンプを配置しても良い。また、低圧塞止弁23(25)等のタービン15(16)側に圧力調整弁を配置しても良い。また、電動ポンプを廃しても良い。また、給水ユニットのタービン駆動ポンプは、3台以上としても良いし、単数台としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0027】
汽力発電設備のほか、コンバインドサイクル発電設備においても適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の一実施の形態に係る火力発電設備の構成を示す図である。
【図2】同火力発電設備の給水ユニットの構成を説明するための説明図である。
【図3】同火力発電設備の給水ユニットの構成を説明するための説明図である。
【図4】同火力発電設備のタービン部の構成を示す図である。
【図5】同火力発電設備の給水ユニットの動作を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0029】
1 火力発電設備
2 発電機
3 給水ユニット(ボイラ給水システムの一部)
4 ボイラユニット
5 タービン部(第1の蒸気タービン)
7 ボイラ給水システム
8 補助蒸気ヘッダ(ボイラ給水システムの一部)
9,11,12 ボイラユニット(蒸気供給源)
15,16 タービン(第2の蒸気タービン)
17,18 タービン駆動ポンプ(給水ポンプ)
21 電動ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機を駆動する第1の蒸気タービンに蒸気を供給するボイラユニットに給水するためのボイラ給水方法であって、
前記ボイラユニットに給水する給水ポンプを、第2の蒸気タービンによって駆動し、
前記ボイラユニットの起動時又は/及び停止動作時には、前記ボイラユニット及び前記第1の蒸気タービンとは別の蒸気供給源から、蒸気が前記第2の蒸気タービンに供給されて、前記給水ポンプが駆動され、
前記ボイラユニットの定常運転時には、前記第1の蒸気タービンから抽気された蒸気が、前記第2のタービンに供給されて、前記給水ポンプが駆動される
ことを特徴とするボイラ給水方法。
【請求項2】
前記蒸気供給源は、別の第1の蒸気タービンに蒸気を供給する別のボイラユニット、又は所定の機器若しくは装置に蒸気を供給するボイラユニットからなり、前記蒸気供給源から、蒸気が前記第2の蒸気タービンに供給されることを特徴とする請求項1に記載のボイラ給水方法。
【請求項3】
発電機を駆動する第1の蒸気タービンに蒸気を供給するボイラユニットに給水するためのボイラ給水システムであって、
前記ボイラユニットに給水する給水ポンプと、前記給水ポンプを駆動する第2の蒸気タービンとを備え、
前記ボイラユニットの起動時又は/及び停止動作時には、前記ボイラユニット及び前記第1の蒸気タービンとは別の蒸気供給源から、蒸気が前記第2の蒸気タービンに供給されて、前記給水ポンプが駆動され、
前記ボイラユニットの定常運転時には、前記第1の蒸気タービンから抽気された蒸気が、前記第2のタービンに供給されて、前記給水ポンプが駆動される
ことを特徴とするボイラ給水システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−139091(P2010−139091A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−312919(P2008−312919)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】