説明

ボイラ負荷変化時先行制御方法及び装置

【課題】最終値が不明な負荷変化時にも適切なボイラ入力加速指令を出力して対応でき、燃料や給水等の制御の安定化を図り得るボイラ負荷変化時先行制御方法及び装置を提供する。
【解決手段】負荷上昇指令40又は負荷降下指令41が入力された時点から時間をカウントし、負荷上昇指令40又は負荷降下指令41の継続時間46に応じて予め設定されたボイラ入力加速指令25を出力するBIR回路26を備えることにより、ボイラの負荷変化時に対応するための先行制御系統23を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラ負荷変化時先行制御方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、一般家庭や工場等に電力を供給する電気事業の中で火力発電プラントは重要な役割を担っており、該火力発電プラントには、ボイラが設けられている。
【0003】
図5はボイラの一例を表わすものであって、図5中、1は火炉1aと後部伝熱部1bとを有するボイラ本体、2はボイラ本体1の火炉1a内へ燃料を噴射して燃焼させるバーナ、3は一次過熱器、4は二次過熱器、5は三次過熱器、6は最終過熱器、7は一次再熱器、8は二次再熱器、9は節炭器であり、バーナ2からボイラ本体1の火炉1a内へ燃料を噴射して燃焼させることにより、燃焼ガスを生成し、生成された燃焼ガスを流通させ、二次過熱器4、三次過熱器5、最終過熱器6、二次再熱器8、一次過熱器3、一次再熱器7及び節炭器9と熱交換させ、熱交換した後の排ガスを排ガスダクト10へ流出させ、下流側に設けられた脱硝、脱硫等の排煙処理装置(図示せず)で窒素酸化物や硫黄酸化物等を除去した後、大気へ放出するようになっている。
【0004】
一方、図6は前述のボイラの給水・蒸気系統を表わすものであり、ボイラ給水は、燃料が燃焼されるボイラ本体1の火炉1aの炉壁に形成される蒸発器11で加熱され、ノーズ部12を経て、汽水分離器13で水と蒸気に分離され、該汽水分離器13で水と分離された蒸気は、ボイラ本体1の天井並びに後部伝熱部周壁14を通過し、一次過熱器3、二次過熱器4、三次過熱器5及び最終過熱器6で過熱され、高圧タービン15へ導かれ、該高圧タービン15が駆動されて発電が行われると共に、前記高圧タービン15を駆動した後の蒸気は、一次再熱器7及び二次再熱器8へ導かれ、該一次再熱器7及び二次再熱器8で再熱された後、中・低圧タービン16へ導入され、該中・低圧タービン16が駆動されて発電が行われ、前記中・低圧タービン16を駆動した後の蒸気は、復水器17へ導かれてボイラ給水に戻され、該ボイラ給水は、復水脱塩装置18と低圧給水加熱器19と脱気器20とを経由し、給水ポンプ21により高圧給水加熱器22を介して節炭器9へ圧送され、該節炭器9で加熱され、前記蒸発器11へ送給され、循環されるようになっている。
【0005】
ところで、前述の如きボイラの場合、負荷変化時には、ボイラの応答遅れによって過渡的にボイラ出口即ち高圧タービン15入口の主蒸気圧力等が変動することから、これを補償するために、負荷変化状態に応じて燃料や給水等のボイラ入力指令を先行的に操作するためのボイラ入力加速指令を出力する、いわゆるBIR(Boiler Input Ratio)回路が設置されている。
【0006】
図7は従来のボイラ制御系の一例を示す制御ブロック図であって、ボイラの負荷変化時に対応するための先行制御系統23’と、フィードバック制御系統24とを備えたものである。
【0007】
前記先行制御系統23’は、
ボイラの負荷変化時にボイラ入力加速指令25’を出力するBIR回路26’と、
発電機出力指令27に対しBIR回路26’から出力されるボイラ入力加速指令25’を加算し発電機出力指令28として出力する第一加算器29と
を備えてなる構成を有している。
【0008】
又、前記フィードバック制御系統24は、
高圧タービン15入口の主蒸気圧力設定値30が記憶された設定器31と、
該設定器31に記憶された主蒸気圧力設定値30と圧力検出器32で実際に検出された高圧タービン15入口の主蒸気圧力33との主蒸気圧力偏差34を求めて出力する減算器35と、
該減算器35から出力される主蒸気圧力偏差34を比例積分処理して該主蒸気圧力偏差34をなくすための制御指令36を出力する比例積分調節器37と、
前記先行制御系統23’における第一加算器29から出力される発電機出力指令28に前記比例積分調節器37から出力される制御指令36を加算しボイラ入力指令38として出力する第二加算器39と
を備えてなる構成を有している。
【0009】
図7に示される従来のボイラ制御系の場合、ボイラの負荷変化時には、先行制御系統23’におけるBIR回路26’からボイラ入力加速指令25’が第一加算器29へ出力され、該第一加算器29において、発電機出力指令27に対しBIR回路26’から出力されるボイラ入力加速指令25’が加算され発電機出力指令28として第二加算器39へ出力される。尚、ボイラの負荷変化が生じていない静定時には、発電機出力指令27がそのまま第一加算器29を通過し発電機出力指令28として第二加算器39へ出力される形となる。
【0010】
これと同時に、フィードバック制御系統24の減算器35においては、設定器31に記憶された主蒸気圧力設定値30と圧力検出器32で実際に検出された高圧タービン15入口の主蒸気圧力33との主蒸気圧力偏差34が求められて比例積分調節器37へ出力され、該比例積分調節器37において、前記減算器35から出力される主蒸気圧力偏差34が比例積分処理されて該主蒸気圧力偏差34をなくすための制御指令36が前記第二加算器39へ出力され、該第二加算器39において、前記先行制御系統23’における第一加算器29から出力される発電機出力指令28に前記比例積分調節器37から出力される制御指令36が加算されボイラ入力指令38として、図示していない燃料制御系統や給水制御系統へ出力される。
【0011】
尚、前述の如きBIR回路を備えたボイラに関連する技術を示すものとしては、例えば、特許文献1がある。
【特許文献1】特開2000−199622号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来の先行制御系統23’におけるBIR回路26’では、図8に示される如く、発電機出力指令27の最終値Bを指標としてボイラ入力加速指令25’の過剰量Aを決定し先行操作しているため、最終値Bが不明な負荷変化時、即ち実負荷が必要な値になればそこで止める負荷変化時には対応できないという欠点を有していた。
【0013】
このように最終値Bが不明である場合、ボイラ入力加速指令25’をある一定の値とせざるを得ないが、予想に反して負荷変化が短くなった場合や長くなった場合にはボイラ入力加速指令25’に過不足が発生し、必要以上に燃料や水を投入したり、必要以上に燃料や水の投入量を絞ってしまう虞があった。
【0014】
因みに、最終値Bが不明な負荷変化としては、例えば、電力系統周波数調整のための負荷変化が挙げられ、これは、電力系統周波数が降下した場合にパルス信号としての負荷上昇指令が出力されて、該電力系統周波数が元に戻れば負荷上昇指令が停止される一方、電力系統周波数が上昇した場合にパルス信号としての負荷降下指令が出力されて、該電力系統周波数が元に戻れば負荷降下指令が停止されるようなものである。
【0015】
本発明は、斯かる実情に鑑み、最終値が不明な負荷変化時にも適切なボイラ入力加速指令を出力して対応でき、燃料や給水等の制御の安定化を図り得るボイラ負荷変化時先行制御方法及び装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、ボイラの負荷変化時、発電機出力指令にボイラ入力加速指令を加算するようにしたボイラ負荷変化時先行制御方法において、
負荷上昇指令又は負荷降下指令が入力された時点から時間をカウントし、負荷上昇指令又は負荷降下指令の継続時間に応じて予め設定されたボイラ入力加速指令を出力するようにしたことを特徴とするボイラ負荷変化時先行制御方法にかかるものである。
【0017】
前記ボイラ負荷変化時先行制御方法においては、ボイラ入力加速指令の変化率を負荷上昇指令又は負荷降下指令の継続時間の長さに応じて段階的に大きくなるよう設定し且つボイラ入力加速指令の上下限を設定することができる。
【0018】
一方、本発明は、ボイラの負荷変化時、発電機出力指令にボイラ入力加速指令を加算するようにしたボイラ負荷変化時先行制御装置において、
負荷上昇指令又は負荷降下指令が入力された時点から時間をカウントし、負荷上昇指令又は負荷降下指令の継続時間に応じて予め設定されたボイラ入力加速指令を出力するBIR回路を備えたことを特徴とするボイラ負荷変化時先行制御装置にかかるものである。
【0019】
前記ボイラ負荷変化時先行制御装置においては、負荷上昇指令が入力された場合には「1」の上昇・降下信号を出力し、負荷降下指令が入力された場合には「−1」の上昇・降下信号を出力するデジタル・アナログ変換器と、
負荷上昇指令又は負荷降下指令が入力された場合に「1」の論理和信号を出力するOR回路と、
該OR回路から出力される論理和信号に基づき負荷上昇指令又は負荷降下指令が入力された時点からの継続時間をカウントするタイマと、
該タイマでカウントされた負荷上昇指令又は負荷降下指令の継続時間に基づきボイラ入力加速指令を求めて出力する第一関数発生器と、
該第一関数発生器から出力されるボイラ入力加速指令に対し前記デジタル・アナログ変換器から出力される上昇・降下信号を掛けることにより、負荷上昇指令又は負荷降下指令に対応したボイラ入力加速指令を出力する第一乗算器と、
発電機出力指令に基づきゲインを求めて出力する第二関数発生器と、
該第二関数発生器から出力されるゲインを前記第一乗算器から出力されるボイラ入力加速指令に掛けることにより、その時点での発電機出力指令に対応したボイラ入力加速指令を出力する第二乗算器と、
負荷上昇指令又は負荷降下指令が入力されている状態では、前記第二乗算器から出力されるボイラ入力加速指令をそのまま出力する一方、前記第二乗算器から出力されるボイラ入力加速指令が負荷上昇指令又は負荷降下指令の入力停止に伴って急激に「0」に変化する場合には、その変化率を設定値以下の範囲内に制限する処理を行いつつボイラ入力加速指令を出力する変化率制限器と
からBIR回路を構成することができる。
【0020】
又、前記ボイラ負荷変化時先行制御装置においては、第一関数発生器に、ボイラ入力加速指令の変化率を負荷上昇指令又は負荷降下指令の継続時間の長さに応じて段階的に大きくし且つボイラ入力加速指令の上下限を決めた関数を設定することもできる。
【0021】
上記手段によれば、以下のような作用が得られる。
【0022】
本発明のボイラ負荷変化時先行制御方法及び装置においては、最終値が不明な負荷変化として、例えば、電力系統周波数が降下した場合にパルス信号としての負荷上昇指令が出力されて、該電力系統周波数が元に戻れば負荷上昇指令が停止される一方、電力系統周波数が上昇した場合にパルス信号としての負荷降下指令が出力されて、該電力系統周波数が元に戻れば負荷降下指令が停止されるような場合であっても、負荷上昇指令又は負荷降下指令の継続時間に応じてボイラ入力加速指令を、上限又は下限を越えない範囲で適切に出力することが可能となり、負荷変化の長さにかかわらず、ボイラ入力加速指令に過不足が発生しなくなり、必要以上に燃料や水を投入したり、必要以上に燃料や水の投入量を絞ってしまう心配もなくなる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の請求項1〜5記載のボイラ負荷変化時先行制御方法及び装置によれば、最終値が不明な負荷変化時にも適切なボイラ入力加速指令を出力して対応でき、燃料や給水等の制御の安定化を図り得るという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0025】
図1〜図4は本発明を実施する形態の一例であって、図中、図5〜図8と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、基本的な構成は図5〜図8に示す従来のものと同様であるが、本図示例の特徴とするところは、図1〜図4に示す如く、負荷上昇指令40又は負荷降下指令41が入力された時点から時間をカウントし、負荷上昇指令40又は負荷降下指令41の継続時間46に応じて予め設定されたボイラ入力加速指令25を出力するBIR回路26を備えることにより、ボイラの負荷変化時に対応するための先行制御系統23を構成した点にある。
【0026】
本図示例の場合、前記BIR回路26は、
負荷上昇指令40が入力された場合には「1」の上昇・降下信号42を出力し、負荷降下指令41が入力された場合には「−1」の上昇・降下信号42を出力するデジタル・アナログ変換器43と、
負荷上昇指令40又は負荷降下指令41が入力された場合に「1」の論理和信号44を出力するOR回路45と、
該OR回路45から出力される論理和信号44に基づき負荷上昇指令40又は負荷降下指令41が入力された時点からの継続時間46をカウントするタイマ47と、
該タイマ47でカウントされた負荷上昇指令40又は負荷降下指令41の継続時間46に基づきボイラ入力加速指令48を求めて出力する第一関数発生器49と、
該第一関数発生器49から出力されるボイラ入力加速指令48に対し前記デジタル・アナログ変換器43から出力される上昇・降下信号42を掛けることにより、負荷上昇指令40又は負荷降下指令41に対応したボイラ入力加速指令50を出力する第一乗算器51と、
発電機出力指令27に基づきゲイン52を求めて出力する第二関数発生器53と、
該第二関数発生器53から出力されるゲイン52を前記第一乗算器51から出力されるボイラ入力加速指令50に掛けることにより、その時点での発電機出力指令27に対応したボイラ入力加速指令54を出力する第二乗算器55と、
負荷上昇指令40又は負荷降下指令41が入力されている状態では、前記第二乗算器55から出力されるボイラ入力加速指令54をそのままボイラ入力加速指令25として第一加算器29へ出力する一方、前記第二乗算器55から出力されるボイラ入力加速指令54が負荷上昇指令40又は負荷降下指令41の入力停止に伴って急激に「0」に変化する場合には、その変化率を設定値以下の範囲内に制限する処理を行いつつボイラ入力加速指令25を第一加算器29へ出力する変化率制限器56と
から構成してある。
【0027】
又、前記第一関数発生器49には、図2に示す如く、ボイラ入力加速指令48の変化率を負荷上昇指令40又は負荷降下指令41の継続時間46の長さに応じて段階的に大きくし且つボイラ入力加速指令48の上限をαとして決めた関数を設定するようにしてある。尚、図2に示すボイラ入力加速指令48の上限としてのαは、負荷降下指令41が入力された場合には、前記第一乗算器51において、デジタル・アナログ変換器43から出力される「−1」の上昇・降下信号42が掛けられることにより、−αとなって下限の値となる。
【0028】
更に又、前記第二関数発生器53には、図3に示す如く、発電機出力指令27の増減に対し略比例させる形でゲイン52を増減させるような関数を設定するようにしてある。
【0029】
次に、上記図示例の作用を説明する。
【0030】
図1に示すボイラ制御系の場合、ボイラの負荷変化時には、先行制御系統23におけるBIR回路26のデジタル・アナログ変換器43に負荷上昇指令40又は負荷降下指令41のいずれかが入力され、負荷上昇指令40が入力された場合には「1」の上昇・降下信号42が第一乗算器51へ出力される一方、負荷降下指令41が入力された場合には「−1」の上昇・降下信号42が第一乗算器51へ出力される。
【0031】
前記負荷上昇指令40又は負荷降下指令41が入力された場合、OR回路45から「1」の論理和信号44がタイマ47へ出力され、該タイマ47において、前記OR回路45から出力される論理和信号44に基づき負荷上昇指令40又は負荷降下指令41が入力された時点からの継続時間46がカウントされつつ第一関数発生器49へ出力され、該第一関数発生器49において、前記タイマ47でカウントされた負荷上昇指令40又は負荷降下指令41の継続時間46に基づきボイラ入力加速指令48が求められて前記第一乗算器51へ出力される。
【0032】
前記第一乗算器51においては、前記第一関数発生器49から出力されるボイラ入力加速指令48に対し前記デジタル・アナログ変換器43から出力される上昇・降下信号42を掛けることにより、負荷上昇指令40又は負荷降下指令41に対応したボイラ入力加速指令50が第二乗算器55へ出力される。ここで、負荷上昇指令40に対応したボイラ入力加速指令50は正の値となり、負荷降下指令41に対応したボイラ入力加速指令50は負の値となる。
【0033】
一方、第二関数発生器53においては、発電機出力指令27に基づきゲイン52が求めて前記第二乗算器55へ出力され、該第二乗算器55において、前記第二関数発生器53から出力されるゲイン52を前記第一乗算器51から出力されるボイラ入力加速指令50に掛けることにより、その時点での発電機出力指令27に対応したボイラ入力加速指令54が変化率制限器56へ出力される。
【0034】
前記変化率制限器56において、負荷上昇指令40又は負荷降下指令41が入力されている状態では、前記第二乗算器55から出力されるボイラ入力加速指令54がそのままボイラ入力加速指令25として第一加算器29へ出力されるが、前記第二乗算器55から出力されるボイラ入力加速指令54が負荷上昇指令40又は負荷降下指令41の入力停止に伴って急激に「0」に変化する場合には、その変化率を設定値以下の範囲内に制限する処理が行われつつボイラ入力加速指令25が第一加算器29へ出力される。
【0035】
前記第一加算器29においては、発電機出力指令27に対し前記BIR回路26の変化率制限器56から出力されるボイラ入力加速指令25が加算され発電機出力指令28として第二加算器39へ出力される。尚、ボイラの負荷変化が生じていない静定時には、発電機出力指令27がそのまま第一加算器29を通過し発電機出力指令28として第二加算器39へ出力される形となる。
【0036】
これと同時に、フィードバック制御系統24の減算器35においては、従来と同様、設定器31に記憶された主蒸気圧力設定値30と圧力検出器32で実際に検出された高圧タービン15入口の主蒸気圧力33との主蒸気圧力偏差34が求められて比例積分調節器37へ出力され、該比例積分調節器37において、前記減算器35から出力される主蒸気圧力偏差34が比例積分処理されて該主蒸気圧力偏差34をなくすための制御指令36が前記第二加算器39へ出力され、該第二加算器39において、前記先行制御系統23’における第一加算器29から出力される発電機出力指令28に前記比例積分調節器37から出力される制御指令36が加算されボイラ入力指令38として、図示していない燃料制御系統や給水制御系統へ出力される。
【0037】
この結果、最終値Bが不明な負荷変化として、例えば、図4に示す如く、電力系統周波数が降下した場合にパルス信号としての負荷上昇指令40が出力されて、該電力系統周波数が元に戻れば負荷上昇指令40が停止される一方、電力系統周波数が上昇した場合にパルス信号としての負荷降下指令41が出力されて、該電力系統周波数が元に戻れば負荷降下指令41が停止されるような場合であっても、負荷上昇指令40又は負荷降下指令41の継続時間46に応じてボイラ入力加速指令25を、上限α又は下限−αを越えない範囲で適切に出力することが可能となり、負荷変化の長さにかかわらず、ボイラ入力加速指令25に過不足が発生しなくなり、必要以上に燃料や水を投入したり、必要以上に燃料や水の投入量を絞ってしまう心配もなくなる。
【0038】
こうして、最終値Bが不明な負荷変化時にも適切なボイラ入力加速指令25を出力して対応でき、燃料や給水等の制御の安定化を図り得る。
【0039】
尚、本発明のボイラ負荷変化時先行制御方法及び装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す制御ブロック図である。
【図2】図1に示す第一関数発生器に入力された関数を表わす線図である。
【図3】図1に示す第二関数発生器に入力された関数を表わす線図である。
【図4】本発明を実施する形態の一例において、負荷上昇指令と負荷降下指令とが出力された場合の発電機出力指令とボイラ入力加速指令とを示す線図である。
【図5】一般的なボイラの一例を示す全体概要構成図である。
【図6】図5に示されるボイラの給水・蒸気系統を示す概要構成図である。
【図7】従来のボイラ制御系の一例を示す制御ブロック図である。
【図8】従来のボイラ制御系の一例における発電機出力指令とボイラ入力加速指令とを示す線図である。
【符号の説明】
【0041】
23 先行制御系統
25 ボイラ入力加速指令
26 BIR回路
27 発電機出力指令
29 第一加算器
38 ボイラ入力指令
40 負荷上昇指令
41 負荷降下指令
42 上昇・降下信号
43 デジタル・アナログ変換器
44 論理和信号
45 OR回路
46 継続時間
47 タイマ
48 ボイラ入力加速指令
49 第一関数発生器
50 ボイラ入力加速指令
51 第一乗算器
52 ゲイン
53 第二関数発生器
54 ボイラ入力加速指令
55 第二乗算器
56 変化率制限器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラの負荷変化時、発電機出力指令にボイラ入力加速指令を加算するようにしたボイラ負荷変化時先行制御方法において、
負荷上昇指令又は負荷降下指令が入力された時点から時間をカウントし、負荷上昇指令又は負荷降下指令の継続時間に応じて予め設定されたボイラ入力加速指令を出力するようにしたことを特徴とするボイラ負荷変化時先行制御方法。
【請求項2】
ボイラ入力加速指令の変化率を負荷上昇指令又は負荷降下指令の継続時間の長さに応じて段階的に大きくなるよう設定し且つボイラ入力加速指令の上下限を設定するようにした請求項1記載のボイラ負荷変化時先行制御方法。
【請求項3】
ボイラの負荷変化時、発電機出力指令にボイラ入力加速指令を加算するようにしたボイラ負荷変化時先行制御装置において、
負荷上昇指令又は負荷降下指令が入力された時点から時間をカウントし、負荷上昇指令又は負荷降下指令の継続時間に応じて予め設定されたボイラ入力加速指令を出力するBIR回路を備えたことを特徴とするボイラ負荷変化時先行制御装置。
【請求項4】
負荷上昇指令が入力された場合には「1」の上昇・降下信号を出力し、負荷降下指令が入力された場合には「−1」の上昇・降下信号を出力するデジタル・アナログ変換器と、
負荷上昇指令又は負荷降下指令が入力された場合に「1」の論理和信号を出力するOR回路と、
該OR回路から出力される論理和信号に基づき負荷上昇指令又は負荷降下指令が入力された時点からの継続時間をカウントするタイマと、
該タイマでカウントされた負荷上昇指令又は負荷降下指令の継続時間に基づきボイラ入力加速指令を求めて出力する第一関数発生器と、
該第一関数発生器から出力されるボイラ入力加速指令に対し前記デジタル・アナログ変換器から出力される上昇・降下信号を掛けることにより、負荷上昇指令又は負荷降下指令に対応したボイラ入力加速指令を出力する第一乗算器と、
発電機出力指令に基づきゲインを求めて出力する第二関数発生器と、
該第二関数発生器から出力されるゲインを前記第一乗算器から出力されるボイラ入力加速指令に掛けることにより、その時点での発電機出力指令に対応したボイラ入力加速指令を出力する第二乗算器と、
負荷上昇指令又は負荷降下指令が入力されている状態では、前記第二乗算器から出力されるボイラ入力加速指令をそのまま出力する一方、前記第二乗算器から出力されるボイラ入力加速指令が負荷上昇指令又は負荷降下指令の入力停止に伴って急激に「0」に変化する場合には、その変化率を設定値以下の範囲内に制限する処理を行いつつボイラ入力加速指令を出力する変化率制限器と
からBIR回路を構成した請求項3記載のボイラ負荷変化時先行制御装置。
【請求項5】
第一関数発生器に、ボイラ入力加速指令の変化率を負荷上昇指令又は負荷降下指令の継続時間の長さに応じて段階的に大きくし且つボイラ入力加速指令の上下限を決めた関数を設定するようにした請求項4記載のボイラ負荷変化時先行制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−97943(P2006−97943A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−283698(P2004−283698)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【Fターム(参考)】