説明

ボタン型胃瘻チューブ

【課題】胃瘻に挿入されるチューブ本体と、可撓性を有しチューブ本体の先端に設けられ胃の内壁に係止されるバンパー部と、チューブ本体の基端に設けられ体表に係止される体表係止部とを備えるボタン型胃瘻チューブにおいて、作業性を向上させると共に、製造コストを抑えることができるボタン型胃瘻チューブを提供する。
【解決手段】体表係止部4は、チューブ本体2の基端部に連設された連設部41と、チューブ本体2を挿通する挿通孔42aを有しチューブ本体2の外周面を摺動自在に設けられた摺動部42と、摺動部42を弾性力により連設部41に対してチューブ本体2の先端側に付勢する弾性部43とで構成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胃瘻(瘻孔)を介して胃に直接栄養を注入する際に用いられるボタン型胃瘻チューブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食物を経口摂取できない患者のために、体外から胃内に貫通した瘻孔(胃瘻)を患者に穿設し、そこに胃瘻チューブを挿入して直接胃に栄養物を供給することが行われている。胃瘻チューブにはボタン型とチューブ型とがあり、ボタン型胃瘻チューブはチューブの長さが固定されるものの体表からの突出が少なく邪魔にならないというメリットがある。しかしながら、ボタン型胃瘻チューブはチューブの長さが固定されるため、体重増加等により腹壁や胃壁が厚くなり胃瘻長が長くなるとバンパー埋没症候群が発生する等の問題がある。
【0003】
そこで、腹壁や胃壁がある程度厚くなっても交換することなく対応することができるボタン型胃瘻チューブが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のボタン型胃瘻チューブは、チューブ本体とバンパー部と体表係止部とを備え、体表係止部に媒体注入通路を有するバルーンを設け、バルーン内の媒体量を調節することにより、バルーンがチューブ本体の先端側に拡縮しチューブ本体の実質的な長さを調節自在にしている。
【0004】
しかしながら、特許文献1のボタン型胃瘻チューブは、胃瘻長の変化に伴いチューブ本体の実質的な長さを調節すべく、バルーン内の媒体を出し入れする必要があり、作業が面倒であるという問題がある。また、ガスや水蒸気等の透過性の高い材料でバルーンを成型すると、バルーン内に媒体を再注入する頻度が多くなり、作業が面倒である。
【0005】
また、ガスや水蒸気等の透過性の小さい材料を用いてバルーンを成型すれば、再注入の頻度は低下するものの、ガス等の透過性の小さい材料は高価であり、製造コストが嵩むという問題がある。また、バルーン内に媒体を注入する注入通路を設け、媒体をバルーン内に注入する注入具も必要となり、製造コストが嵩むという問題がある。
【特許文献1】特開2003−38655
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、作業性を向上させると共に、製造コストを抑えることができるボタン型胃瘻チューブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、胃瘻に挿入されるチューブ本体と、可撓性を有しチューブ本体の先端に設けられ胃の内壁に係止されるバンパー部と、チューブ本体の基端に設けられ体表に係止される体表係止部とを備えるボタン型胃瘻チューブにおいて、前記体表係止部は、前記チューブ本体の基端部に連設された連設部と、前記チューブ本体を挿通する挿通孔を有し前記チューブ本体の外周面を摺動自在に設けられた摺動部と、該摺動部を弾性力により前記連設部に対して前記チューブ本体の先端側に付勢する弾性部とで構成されることを特徴とする。
【0008】
かかる構成によれば、患者の体重増加等により腹壁や胃壁が厚くなり胃瘻長が長くなると、弾性部の弾性力に効して摺動部がチューブ本体の基端側に移動しチューブ本体の実質的な長さが長くなる。逆に、胃瘻長が短くなると、弾性部の弾性力により摺動部がチューブ本体の先端側に移動し、チューブ本体の実質的な長さが短くなる。
【0009】
このため、胃瘻長の変化に応じて自然にチューブ本体の実質的な長さが変化するため、従来品のように体表係止部に設けられたバルーン内の媒体を出し入れしてチューブ本体の実質的な長さを調節する手間が省け、作業性を向上させることができる。
【0010】
また、従来品のように、体表係止部にガスや水蒸気等の透過性の小さい材料を用いる必要がなく、また、バルーン内に媒体を注入する注入具も必要ないため、製造コストを抑えることができる。
【0011】
また、本発明の弾性部は、連設部の周縁と摺動部の周縁とを接続する複数の板状片により構成され、各板状片はチューブ本体の径方向外方に向かって屈曲自在であることが好ましい。かかる構成によれば、各板状片を屈曲させることにより摺動部をチューブ本体に沿って連設部側に移動させ、弾性部を折りたたむことができる。これにより、患者等が必要に応じて体表係止部を外部から目立たなくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のボタン型胃瘻チューブの実施形態を図1から図2を参照して説明する。
【0013】
図1に本発明の第1実施形態のボタン型胃瘻チューブ1を示す。ボタン型胃瘻チューブ1は、胃瘻に挿入されるチューブ本体2と、可撓性を有しチューブ本体2の先端に設けられ胃の内壁に係止されるバンパー部3と、チューブ本体2の基端に設けられ体表に係止される体表係止部4とを備える。
【0014】
体表係止部4は、シリコーンゴム製であり、チューブ本体2の基端部に連設された板状の連設部41と、中央にチューブ本体2を挿通する挿通孔42aを有しチューブ本体2の外周面を摺動自在に設けられた板状の摺動部42と、摺動部42を弾性力により連設部41に対してチューブ本体2の先端側に付勢する弾性部43とで構成される。摺動部42に形成された挿通孔42aは、チューブ本体2の外径よりも大きく形成され、摺動部42がチューブ本体2に沿って移動し易くしている。
【0015】
弾性部43は、連設部41の周縁から摺動部42の周縁に向かって外方に湾曲して延びる4つの湾曲片43aにより構成される。第1実施形態においては湾曲片43aが本発明の板状片に相当する。各湾曲片43aは周方向に間隔を存して配置されている。各湾曲片43aは、摺動部42がチューブ本体2の基端側に押圧されると、自己の復元力により摺動部42を連設部41に対してチューブ本体2の先端側に付勢する付勢力が発生する。また、体表係止部4には、チューブ本体2と連通する開口4aを閉塞するためのヒンジキャップ44が設けられている。
【0016】
ボタン型胃瘻チューブ1を胃瘻に挿入する際には、図示しない挿入補助具を用いてバンパー部3をしぼめて胃瘻に挿入する。そして、前記挿入補助具を取り除くことによりバンパー部3が自己の復元力により元の形状に戻り胃の内壁に係止される。このとき、ボタン型胃瘻チューブ1は、バンパー部3と体表係止部4とにより腹壁および胃壁を挟みこんだ状態となる。
【0017】
図2に本発明の第2実施形態のボタン型胃瘻チューブ5を示す。ボタン型胃瘻チューブ5は、体表係止部6以外は全て第1実施形態のボタン型胃瘻チューブ1と同一の構成であり、同一の構成については同一の符号を付して説明する。
【0018】
ボタン型胃瘻チューブ5の体表係止部6は、プラスチック製であり、チューブ本体2の基端部に連設された矩形板状の連設部61と、中央にチューブ本体2を挿通する挿通孔62aを有しチューブ本体2の外周面を摺動自在に設けられた矩形板状の摺動部62と、摺動部62を弾性力により連設部61に対してチューブ本体2の先端側に付勢する弾性部63とで構成される。摺動部62に形成された挿通孔62aは、チューブ本体2の外径よりも大きく形成され、摺動部62がチューブ本体2に沿って移動し易くしている。
【0019】
弾性部63は、連設部61の周縁から摺動部62の周縁に向かって外方に屈曲して延びる一対の板ばね片63aによりパンタグラフ状に構成される。第2実施形態においては、板ばね片63aが本発明の板状片に相当する。各板ばね片63aの屈曲する部分には、内側に位置させて断面が円弧状の溝63bが設けられ、肉厚が薄く形成され屈曲し易くされている。
【0020】
両板ばね片63aは、摺動部62がチューブ本体2の基端側に押圧されると、自己の復元力により摺動部62を連設部61に対してチューブ本体2の先端側に付勢する付勢力が発生する。また、体表係止部6には、チューブ本体2と連通する開口6aを閉塞するためのヒンジキャップ64が設けられている。
【0021】
ボタン型胃瘻チューブ5を胃瘻に挿入する際には、図示しない挿入補助具を用いてバンパー部3をしぼめて胃瘻に挿入する。そして、前記挿入補助具を取り除くことによりバンパー部3が自己の復元力により元の形状に戻り胃の内壁に係止される。このとき、ボタン型胃瘻チューブ5は、バンパー部3と体表係止部6とにより腹壁および胃壁を挟みこんだ状態となる。
【0022】
両実施形態のボタン型胃瘻チューブ1,5によれば、患者の体重増加等により腹壁や胃壁が厚くなり胃瘻長が長くなると、弾性部43,63の弾性力に抗して摺動部42,62がチューブ本体2の基端側に移動しチューブ本体2の実質的な長さ(具体的には、チューブ本体2におけるバンパー部3と摺動部42,62との間の長さ)が長くなる。逆に、胃瘻長が短くなると、弾性部43,63の弾性力により、摺動部42,62がチューブ本体2の先端側に移動し、チューブ本体の実質的な長さが短くなる。
【0023】
このため、胃瘻長の変化に応じて自然にチューブ本体2の実質的な長さが変化するため、従来品のように体表係止部に設けられたバルーン内の媒体を出し入れしてチューブ本体の実質的な長さを調節する手間が省け、作業性を向上させることができる。
【0024】
また、従来品のように、体表係止部にガスや水蒸気等の透過性の小さい材料を用いる必要がなく、また、バルーン内に媒体を注入する注入具も必要ないため、製造コストを抑えることができる。
【0025】
また、弾性部43,63は、連設部41,61の周縁と摺動部42,62の周縁とを接続する複数の湾曲片43aまたは板ばね片63aにより構成され、湾曲片43aまたは板ばね片63aはチューブ本体2の径方向外方に向かって屈曲自在であるため、湾曲片43aまたは板ばね片63aを屈曲させることにより摺動部42,62をチューブ本体2に沿って連設部41,61側に移動させ、弾性部43,63を折りたたむことができる。これにより、患者等が必要に応じて体表係止部4,6を外部から目立たなくすることができる。弾性部43,63を折りたたんだ状態でテープ等で固定しその状態を維持させるようにしてもよい。
【0026】
なお、実施形態においては、弾性部として湾曲片43aまたは板ばね片63aで構成したものを説明したが、弾性部は、弾性力により摺動部をチューブ本体の先端側に付勢するものであれば他のものでもよく、例えば、つるまきバネであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態のボタン型胃瘻チューブを示す斜視図。
【図2】本発明の第2実施形態のボタン型胃瘻チューブを示す斜視図。
【符号の説明】
【0028】
1…ボタン型胃瘻チューブ(第1実施形態)、 2…チューブ本体、 3…バンパー部、 4…体表係止部(第1実施形態)、 41…連設部、 42…摺動部、 42a…挿通孔、 43…弾性部、 43a…湾曲片(板状片)、 44…ヒンジキャップ、 5…ボタン型胃瘻チューブ(第2実施形態)、 6…体表係止部(第2実施形態)、 61…連設部、 62…摺動部、 62a…挿通孔、 63…弾性部、 63a…板ばね片(板状片)、 63b…溝、 64…ヒンジキャップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胃瘻に挿入されるチューブ本体と、可撓性を有しチューブ本体の先端に設けられ胃の内壁に係止されるバンパー部と、チューブ本体の基端に設けられ体表に係止される体表係止部とを備えるボタン型胃瘻チューブにおいて、
前記体表係止部は、前記チューブ本体の基端部に連設された連設部と、前記チューブ本体を挿通する挿通孔を有し前記チューブ本体の外周面を摺動自在に設けられた摺動部と、該摺動部を弾性力により前記連設部に対して前記チューブ本体の先端側に付勢する弾性部とで構成されることを特徴とするボタン型胃瘻チューブ。
【請求項2】
前記弾性部は、前記連設部の周縁と前記摺動部の周縁とを接続する複数の板状片により構成され、各板状片は前記チューブ本体の径方向外方に向かって屈曲自在であることを特徴とする請求項1記載のボタン型胃瘻チューブ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−89927(P2009−89927A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−264038(P2007−264038)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【出願人】(390029676)株式会社トップ (106)
【Fターム(参考)】