ボディエリアネットワークの改善
無線センサネットワーク内において非常事態の状態を宣言する方法であって、無線センサネットワークは、少なくとも一つの生体又は他のエンティティを監視するべく構成されたセンサ(11)を含む複数の装置(10、11、2)を有し、この方法は、センサ(11)のうちの一つによって生体に関連するパラメータの値を検知するステップと、情報を上記のセンサによってネットワーク内の他の装置(10)に無線送信するステップと、上記の検知された値又は上記の送信された情報を使用することにより、上記の生体に影響を及ぼす非常事態の状態の存在の有無を判定するステップと、非常事態の状態の存在の有無をネットワーク内の少なくとも一つの他の装置(例えば、10)に宣言するステップと、を有する。判定ステップは、センサ(11)、無線センサネットワークのコーディネータ(10)、又はコーディネータとの通信状態にある中央モニタ(12)のうちのいずれかにおいて実行可能である。宣言ステップは、フレームに基づいた無線センサネットワークのフレームコントロールフィールドを非常事態フレームを表す予め定義された値に設定することにより実行可能である。受信器は、アクノリッジメントフレームを使用し、非常事態の宣言の受信をアクノリッジ可能であり、この後に、非常事態手順が実行される。非常事態手順は、例えば、センサからの後続の情報の信頼性を保証するように、センサに割り当てられた帯域幅を増大させるステップを含んでもよい。この方法は、例えば、IEEE802.15.6に従って稼働するMBANを使用する病院内における患者の監視に適用可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーソナルエリアネットワークを含む無線センサネットワークに関し、更に詳しくは、但し、限定を伴うことなしに、人間又は動物の身体上に又はその周囲に配設されるか又はその内部に埋植される無線通信センサを含むボディエリアネットワークに関する。
【背景技術】
【0002】
様々なタイプの無線センサネットワークが提案されている。それらのうち、所謂ボディエリアネットワーク又はBANは、相対的に短い距離において情報を搬送するべく使用される無線パーソナルエリアネットワーク(Wireless Personal Area Network, WPA)の一例である。無線ローカルエリアネットワーク(Wireless Local Area Network, WLAN)とは異なり、WPANを介して実現される接続は、インフラストラクチャをほとんど又はまったく必要としない。この特徴により、様々な装置のために、小型で電力効率に優れた廉価なソリューションを実現可能である。特に興味深い点は、センサを使用して患者の状態を監視する医療BAN(Medical BAN, MBAN)の可能性である。検知されたデータをデータシンクに供給するべく主にセンサを利用しているBANが、無線センサネットワーク(Wireless Sensor Network, WSN)の一例である。但し、アクチュエータなどの更に能動的な装置をMBANに包含することも可能である。
【0003】
IEEE802.15.4規格は、低データレートのWPAN用の物理レイヤ(PHY)及びMAC(Medium Access Control)サブレイヤの仕様を規定している。IEEE802.15.4は、高データレートのWPAN用の規格であるIEEE802.15.3との間に、いくつかの類似点を具備する。IEEE Std 802.15.4-2006及びIEEE Std 802.15.3-2003は、本引用により、そのすべてが本明細書に包含される。
【0004】
IEEE802.15.4において想定されているタイプのWPANは、産業用の監視などのアプリケーションには好適であるが、MBANに必要とされる種類のデータ信頼性を提供しない。医療アプリケーションには、信頼性及びプロセスの自動化を向上させると共にヒューマンエラーを低減しつつ、人間の労働と関連した費用を低減するという要件が存在している。センサは、必要とされるインテリジェンスを提供可能であり、且つ、医療装置内において既に広く利用されている。これには、病院での回復治療、自宅治療、集中治療ユニット、及び高度な手術手技が含まれる。脈拍や体温などのための外部センサ、体液との接触状態となるセンサ、(切れ込みを通じて)カテーテル内において使用されるセンサ、外部アプリケーション用のセンサ、無線センサを有する使い捨て型のスキンパッチ、及び埋植可能なセンサを含む医療用途に利用される多くの異なるタイプのセンサが存在している。
【0005】
病院又は病室内の患者周辺のセンサのWPANは、患者の移動性、監視の柔軟性、現在監視されていない治療エリアへの監視の拡大、臨床過誤の低減、及び監視費用の全体的な低減を含む多数の臨床的利益を提供可能であろう。身体着用型センサは、一人の患者の身体上において様々なセンサタイプを包含可能である。これらは、患者の身体に迅速に着脱される能力を必要としている。
【0006】
このようなセンサは、個別には、最低で患者当たりに1〜2kbpsのビットレートを具備可能であり、且つ、集合的には、10kbpsのビットレートを必要としよう。レンジは、わずかに数メートルで十分であろう。但し、医療WSNアプリケーションは、臨床環境においては、ミッションクリティカルなアプリケーションである。限られたデータ消失及び限られたレイテンシーのための安定した無線リンク、患者及びセンサ密度のための能力、他の無線との共存、数日にもわたる連続動作のための電池寿命、及び身体装着型装置のための小さなフォームファクタは、医療WSN又はMBANにおける要件の例である。これらの要件は、前方誤り訂正(Forward Error Correction, FEC)及び適応再送要求(Adaptive Repeat reQuest, ARQ)、センサ情報レートのための低デューティサイクルのTDMA、及び相対的に効率的な小さなアンテナを含む時間及び周波数ドメインにおけるダイバーシティ及び誤り制御法などの技術を利用して満足させることができる。
【0007】
したがって、特に、医療アプリケーション用のボディエリアネットワークの特性を規定することを目的とした更なるIEEE802.15.6規格を規定するための作業が進行中である。IEEE802.15.6の主要な要件の一つは、医療アプリケーションにおける高い信頼性である。これは、患者の生命が医療WSNアプリケーションの無線リンクの信頼性によって左右される非常事態の状況においては、特に重要である。IEEE802.15.4などの既存の規格は、商用アプリケーションのために設計されており、このような非常事態の救命シナリオを考慮してはいない。
【0008】
具体的には、このような非常事態の状況に関与するセンサなどのネットワーク装置との間の通信の信頼性を保証するという課題に対処するニーズが存在している。
【発明の概要】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、エンティティを監視する一つ又は複数のセンサを含む装置の無線センサネットワークが提供され、この無線センサネットワークは、エンティティに関係したパラメータの値を検出すると共に情報をネットワーク内の他の装置に無線送信するべく構成された上記のセンサと、上記の無線送信された情報を受信するべく構成されたコーディネータと、上記の検出された値又は上記の送信された情報に応答して、エンティティの非常事態の状態の存在を判定する判定手段と、を含む。
【0010】
エンティティは、例えば、医療を目的として監視される人間などの生体である。
【0011】
前述のネットワークにおいて、判定手段は、センサ及びコーディネータのうちのいずれかに配置可能であり、或いは、ネットワークがコーディネータとの通信状態にある中央モニタに接続されている場合には、中央モニタに備えられていてもよい。
【0012】
その場所とは無関係に、判定手段は、検出された値又は送信された情報を少なくとも一つの閾値と比較することにより、非常事態の状態(或いは、更に正確には、非常事態の状態が存在する状態への移行)の判定を実行可能である。例えば、二つの閾値を使用して範囲を規定可能である。
【0013】
判定手段は、検出された値又は送信された情報を少なくとも一つの閾値と比較することにより、非常事態の状態の不存在(或いは、換言すれば、非常事態の状態の解除)を判定するべく更に動作可能である。
【0014】
いずれの場合にも、好ましくは、判定手段は、非常事態の状態の宣言を無線センサネットワーク内の少なくとも一つの他の装置に送信するべく構成されている。この他の装置は、好ましくは、宣言に応答して、アクノリッジメントを判定手段に送信する。判定手段が非−非常事態の状態を判定するべく構成されている場合には、好ましくは、判定手段は、この判定結果をも一つ又は複数の他の装置に宣言するべく動作可能である。
【0015】
無線センサネットワークは、通常、情報が、ネットワーク内において、それぞれがフレームコントロールフィールドを具備するフレーム内において無線送信され、非常事態の状態の宣言が、フレームコントロールフィールド内の値を予め定義された値に設定することにより、実行される。このようなフレームは、コーディネータによって規定される相対的に大きなスーパーフレームフォーマットにおいて規定可能である。
【0016】
好ましくは、フレームは、異なるタイプのフレームを含み、且つ、予め定義された値は、非常事態フレームタイプを表す。他の好適なフレームタイプが、アクノリッジメントフレームであり、この場合に、宣言に応答して送信されるアクノリッジメントは、アクノリッジメントフレームの形態を有する。ここで、フレームコントロールフィールドは、非常事態の状態の存在の有無を通知するための少なくとも一つのビットを含んでもよい。
【0017】
或いは、新しいコマンドタイプを表すコマンドフレーム識別子の値を規定することにより、新しいMACコマンドタイプを非常事態通知のために使用可能である。
【0018】
このようなフレームに基づいたシステムは、IEEE802.15.6に基づいたMBANを含むことができる。好適なアプリケーションにおいては、上記のエンティティは生体であり、センサは、患者の生体の生命パラメータを検知するためのものであり、且つ、非常事態の状態は、医学的な非常事態である。
【0019】
本発明の第2の態様によれば、無線センサネットワーク内において使用され、且つ、その判定手段を含むセンサが提供される。
【0020】
本発明の第3の態様によれば、無線センサネットワーク内において使用され、且つ、その判定手段を含むコーディネータが提供される。
【0021】
本発明の第4の態様によれば、無線センサネットワーク内において非常事態の状態を宣言する方法が提供され、無線センサネットワークは、少なくとも一つのエンティティを監視するべく構成されたセンサを含む複数の装置を有し、この方法は、センサのうちの一つによってエンティティと関係するパラメータの値を検知するステップと、情報をセンサによってネットワーク内の他の装置に無線送信するステップと、検知された値又は送信された情報を使用することにより、エンティティに影響を及ぼす非常事態の状態の存在の有無を判定するステップと、非常事態の状態の存在の有無をネットワーク内の少なくとも一つの他装置に宣言するステップと、を有する。
【0022】
本発明の更なる態様によれば、無線通信によってデータ転送を実行する装置のネットワーク内において使用されるフレームフォーマットが提供され、このフレームフォーマットは、非常事態の状態の存在をネットワーク内の他の装置に宣言するべく使用される非常事態フレームを表すためのサブフィールドを含むフレームコントロールフィールドを規定している。このようなフレームフォーマットは、例えば、IEEE802.15.4において提案されているスーパーフレーム構造において使用可能である。
【0023】
本発明の更なる態様は、無線センサネットワークのセンサ装置又はコーディネータのプロセッサによって実行された際に、それぞれ、上記のセンサ又はコーディネータを提供するソフトウェアを提供する。このようなソフトウェアは、コンピュータ可読媒体上に保存可能である。
【0024】
本発明を更に十分に理解するべく、且つ、本発明を実施可能な方法を更に明瞭に示すべく、以下、添付図面を参照するが、これは、例示を目的としたものに過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】IEEE802.15.4のWPANにおけるプロトコルレイヤを示す。
【図2】IEEE802.15.4のWPANの可能なPHY帯域を示す。
【図3】WPANのスター及びピアツーピアトポロジーを示す。
【図4】ビーコン対応型のIEEE802.15.4のWPANにおけるスーパーフレームの構造を示す。
【図5】IEEE802.15.4のWPANにおけるネットワーク装置とコーディネータの間におけるデータ転送の可能なモードを示す。
【図6】IEEE802.15.4のWPANにおけるネットワーク装置とコーディネータの間におけるデータ転送の可能なモードを示す。
【図7】IEEE802.15.4のWPANにおけるネットワーク装置とコーディネータの間におけるデータ転送の可能なモードを示す。
【図8】IEEE802.15.4のWPANにおけるネットワーク装置とコーディネータの間におけるデータ転送の可能なモードを示す。
【図9】IEEE802.15.4のWPANにおけるデータフレームに使用されるフレームフォーマットを示す。
【図10A】図9のフレームフォーマットにおけるフレームコントロールフィールドの構造を示す。
【図10B】図10Aのフレームコントロールフィールドにおけるフレームタイプビットの従来の規定値の表である。
【図11A】IEEE802.15.4のMACコマンドフレームに使用されるフレームフォーマットの一部を示す。
【図11B】図11Aのフレームフォーマットにおけるコマンドフレーム識別子の従来の規定値の表である。
【図12】本発明の一実施例における非常事態を宣言する第1手順のステップのフローチャートである。
【図13】本発明の一実施例における非常事態を解除する第1手順のステップのフローチャートである。
【図14】本発明の一実施例における非常事態を宣言する第2手順のステップのフローチャートである。
【図15】本発明の一実施例における非常事態を解除する第2手順のステップのフローチャートである。
【図16】本発明の一実施例における非常事態を宣言する第3手順のステップのフローチャートである。
【図17】本発明の一実施例における非常事態を解除する第3手順のステップのフローチャートである。
【図18】本発明の一実施例において提案されるフレームコントロールフィールドの新しい構造を示す。
【図19】図18のフレームコントロールフィールドにおけるフレームタイプビットの可能な値の表である。
【図20】本発明の他の実施例に従って変更されたフレームフォーマットにおけるフレームコントロールフィールドの構造を示す。
【図21】図20のフレームコントロールフィールドにおけるフレームタイプ値の表である。
【図22A】本発明の他の実施例における図11A及び図11Bのコマンドフレーム識別子の変形を示す。
【図22B】本発明の他の実施例における図11A及び図11Bのコマンドフレーム識別子の変形を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施例について説明する前に、現在開発中のIEEE802.15.6規格及び/又はMBANを含むボディエリアネットワークに関連すると思われるIEEE802.15.4の各部分についてその背景を少し説明しておくこととする。
【0027】
図1は、無線トランシーバ及びその低レベルコントロールを含むPHYレイヤを介して物理媒体にアクセスする層状のOSIモデルの観点におけるIEEE802.15.4のWPANの概略的なアーキテクチャを示しており、これには、参照符号100が付与されている。図示のように、PHY用の二つの代替周波数帯域101、102が存在しており、これらが図2に示されている。低周波数帯域101は、868.3MHzを中心とする単一の20kb/sのチャネル及び/又は915MHzを中心とするそれぞれが40kb/sの10個のチャネルを提供する。高い周波数帯域102は、それぞれが250kb/sであり、且つ、2.44GHzの周波数を中心とする16個のチャネルを提供する。これらの帯域のうちのいずれが使用されるかは、当該地域の規制要件によって左右されることになる。
【0028】
このPHYに対するアクセスは、図1に参照符号105によって示されているMAC(Medium Access Control)サブレイヤによって提供される。従って、この上位には、且つ、WPAN100の外部には、他のネットワークからのWPANに対するアクセスを許容するLLC(Link Layer Control)が提供されており、これは、IEEE802.2規格によるものであってもよく、或いは、他のタイプのものであってもよい。最後に、LLCより上方の上位レイヤ109は、ネットワークの構成、操作、及びメッセージのルーティングを提供するためのネットワークレイヤと、意図されている全体的な機能を提供するアプリケーションレイヤと、を含む。
【0029】
MACサブレイヤの一つのタスクは、ネットワークトポロジーを制御することにある。スター及びピアツーピアが、通信ネットワーク内における二つの既知のトポロジーであり、且つ、いずれも、IEEE802.15.4において提供されている。いずれの場合にも、トポロジーは、装置とコーディネータという二つの基本的な種類のネットワークノードを区別している。図3に示されているように、スタートポロジーにおいては、いくつかの装置11が、中央コーディネータ10と直接通信しており、ピアツーピア構成においては、装置11Aによるコミュニケータとの通信は、中継装置として機能する中間の装置11B及び11Cにより、一つ又は複数のホップに沿って実行される。コーディネータは、上位レイヤへのアクセスポイントとして機能しており、WSNの場合には、コーディネータは、センサによって収集されたデータ用のシンクとして機能する。それぞれの装置の通信レンジを相当に限定することができる場合には(数メートル)、ピアツーピアトポロジーによれば、相対的に大きなエリアをカバー可能である。従って、ピアツーピアは、通常、いくつかのネットワーク装置が、コーディネータとの直接的な無線通信のレンジ外にある場合に、使用可能である。トポロジーは、動的であってよく、装置のネットワークへの追加又は除去に伴って変化する。
【0030】
MBANの場合には、例えば、コーディネータがそれぞれの患者サイト(病院のベッドなど)に提供され、これにより、一人の患者上の装置と信号を交換する場合には、スターネットワークが適当であろう。ピアツーピアは、複数の患者に対してサービスするべく一つのコーディネータが提供される場合に、より適切なトポロジーであろう(コーディネータは、病室内の固定された地点に配置可能であろう)。従って、装置11は、一般に、移動型となり、コーディネータは、移動型又は固定型であってよい。又、ピアツーピアネットワークは、ネットワークを迅速にセットアップ又は変更したり、或いは、ネットワークの自己組織化及び自己回復の実現が必要とされる高速で変化する環境に好適であろう。自己回復は、例えば、既存のコーディネータに障害が発生するか又は既存のコーディネータがネットワークを離脱した場合に、新しいコーディネータを確立するステップを包含可能である。
【0031】
病院などの同一の場所に、多数のスター及び/又はピアツーピアネットワークをセットアップ可能であり、そのそれぞれが、独自のコーディネータを有する。この場合には、相互干渉を回避すると共にデータの共有又は照合を許容するべく、個々のコーディネータが協働する必要がある。IEEE802.15.4においては、このようなネットワークをクラスタと呼んでおり、且つ、クラスタ用の全体的なコーディネータを確立するステップと、クラスタを分割及びマージするステップと、が提供されている。
【0032】
WPAN内のノードは、様々な能力のユニットによって構成可能である。一般に、コーディネータの役割は、なんらかの処理パワーを有する相対的に高機能な装置と、複数の供給源からの送信を同時に処理する能力を有するトランシーバと、を必要とすることになる。そして、この結果、電力の十分な供給を必要とすることになる(場合によっては、商用電源供給型であってよい)。一方、ネットワーク内の他の装置は、相対的に限られた処理能力を有し、電池電力のみへアクセス可能なものでよく、且つ、場合によっては、リレーホップとして機能することができないほどに単純なものであってもよい。非常にわずかな電力しか利用できない装置は、大部分の時間にわたってシャットダウン可能であり、且つ、例えば、センサデータを別のノードに送信する際にのみ、ときどき、「ウェークアップ」してもよい。従って、IEEE802.15.4規格は、「フル機能」装置と「部分的機能」装置を区別している。電力の利用可能性は、センサが、身体内に埋植可能であり、且つ、従って、大きな又は充電式の電池を具備することができないMBANの場合に、特有の課題である。
【0033】
IEEE802.15.4において想定されている二つのタイプのWAPANは、ビーコン対応型及びビーコン非対応型である。
【0034】
ビーコン対応型のネットワークにおいては、コーディネータが、ビーコンを定期的に送信し、且つ、装置が、そのビーコンを定期的に聴取して、ネットワークに対して同期化すると共にチャネルにアクセスする。チャネルアクセスは、図4に示されているスーパーフレーム構造による「スーパーフレーム」内において順番に送信される「フレーム」を単位としており、これは、コーディネータによって規定される。それぞれのスーパーフレーム30は、アクティブと非アクティブという二つの部分から構成されている。アクティブ部分は、コンテンションアクセス期間CAP36と、これに後続する、クオリティオブサービス要件を有するアプリケーション用の保証されたアクセスのための任意選択のコンテンションフリー期間CFP37と、に分割される。
【0035】
図4の垂直分割によって示されているように、スーパーフレームは、それぞれがコーディネータからの又は装置からのデータのフレームを搬送する能力を有する16個の等しく離隔したタイムスロットに分割される。したがって、一つのコーディネータと関連付けられた装置を考慮すれば、一つの装置のみが、スーパーフレーム内のそれぞれの連続したタイムスロットにおいて一つの時点においてコーディネータとの通信状態にあってよい。まず、コーディネータによって送信されたビーコンフレーム(以下を参照されたい)について、スロット31が到来する。この後に、いくつかのスロット32がCAP内において供給され、これにより、既知のCSMA-CAアルゴリズムに準拠して、コンテンション方式により、装置との間のデータ送信が許容される。要すれば、CSMA-CAにおいては、装置は、CAP内において送信を所望するたびに、ランダムな期間にわたって待機する。ランダムなバックオフに続いて、チャネルがアイドル状態にあると判明した場合に、装置は、そのデータを送信する。ランダムなバックオフに続いて、チャネルがビジー状態にあると判明した場合には、装置は、チャネルに再度アクセスするべく試行する前に、別のランダムな期間にわたって待機する。
【0036】
次に、CFPの一つ又は複数の保証タイムスロットGTS33が後続し、且つ、図示のように、これらのそれぞれは、複数の基本タイムスロットにわたって延長可能である。CFPという用語によって表されているように、これらのGTSは、ネットワーク装置によって争奪されることはなく、むしろ、TDMAに基づいたネットワーク装置による排他的な使用のために、それぞれがコーディネータによって予約されている。但し、GTSの割当は、スーパーフレームごとに、変化可能である。非アクティブ期間の満了の後に、コーディネータが他のビーコンフレーム31を送信することにより、次のスーパーフレームがマーキングされる。装置は、スーパーフレームの非アクティブ期間34において、スリープ状態に移行可能である。したがって、非アクティブ期間34の長さを拡張することにより、装置の電池電力を可能な限り節約可能である。
【0037】
ビーコン非対応型のネットワークにおいては、コーディネータは、(例えば、ネットワークディスカバリのために)要求されない限り、同期化のためにビーコンを送信する必要はない。チャネルアクセスは、スーパーフレーム構造によって制限されてはおらず、且つ、装置は、非同期であって、CSMA-CAによってすべてのデータ転送が実行される。これらの装置は、送信するデータを具備しない装置が大部分の時間にわたってアイドル状態において留まることが可能であると共に、データが到来した際に受信装置がウェークアップ状態にあることを保証するべく、コーディネータがウェークアッププリアンブルをそれぞれのデータフレームの前に付加するWiseMAC(sensor-MAC)などの特定のプロトコルに従って、その独自のスリープパターンを踏襲可能である。
【0038】
MBANアプリケーションの場合には、コーディネータは、監視対象の一つ又は複数の身体の外部に位置している。これは、PDA、携帯電話機、ベッドサイドのモニタステーション、或いは、場合によっては、一時的にコーディネータとして機能する十分に高機能なセンサであってよい。前述のように、ビーコン対応型ネットワーク内のコーディネータは、ネットワーク装置に対する同期化及びチャネルアクセスの提供を担当している。又、スーパーフレームの開始及び終了も、コーディネータによって規定される。コーディネータは、他のネットワークに対する潜在的な通信と、例えば、充電済みの電池の容易な交換による十分な電源に対するアクセスと、という二つの主要な機能を具備している。
【0039】
又、おそらくはいくつかのコーディネータを含むネットワークの全体的な監督のために中央治療及び監視ユニット(以下、「中央モニタ」と呼称する)を提供することも可能である。これは、複数の患者から非常事態データの連続した又は不定期のストリームを受信する能力を有する監視装置を具備した部屋の形態を有することができる。通常、中央ユニットには、患者のデータを継続的に観察及び監視する看護師又は医療専門家が待機することになる。彼らは、患者の状態の変化に応答して処置を講じることになる。中央治療及び監視ユニットは、一つの又はそれぞれのコーディネータに無線接続することも可能であり(この場合には、そのユニットは、MBANの一部と見なすことが可能であり)、或いは、それぞれのコーディネータに対する有線接続することも可能である(したがって、この場合には、そのユニットは、MBANの外部に位置すると見なすことができる)。
【0040】
図5〜図8は、IEEE802.15.4ネットワーク内における装置とコーディネータの間のデータ転送を示している。IEEE802.15.4には、以下のような3つの基本的な転送タイプが規定されている。
(i)装置(送信器)がそのデータを送信する先である受信器としてのコーディネータに対するデータ転送―スター及びピアツーピアトポロジーの両方において使用される。
(ii)装置がデータを受信する、送信器としてのコーディネータからのデータ転送―スター及びピアツーピアトポロジーの両方において使用される。
(iii)二つのピア間におけるデータ転送―ピアツーピアネットワークにおいてのみ使用される。
【0041】
図5及び図6は、それぞれ、ビーコン対応型及びビーコン非対応型の場合の両方における装置(ネットワーク装置11)とコーディネータ(コーディネータ10)からの転送を示す。相違点は、ビーコン対応型の場合には、装置1は、CFPにおいてCSMA-CAを使用して、又はCAPにおいてGTSを使用して、データ(データフレーム42)を送信する前に、コーディネータからビーコンフレーム41を受信するべく待機しなければならず、ビーコン非対応型の場合には、通常、ビーコンフレームが存在せず、且つ、装置11は、CSMA-CAを使用してデータフレーム42を自由に送信するという点にある。いずれの場合にも、コーディネータは、任意選択のアクノリッジメントフレーム又はACK43を送信することにより、データの正常な受信をアクノリッジする。これらの異なるタイプのフレームについては、更に詳細に後述する。
【0042】
受信器がなんらかの理由から受信したデータフレームを処理することができない場合には、そのメッセージはアクノリッジされない。送信器が所定の期間の後にアクノリッジメントを受信しない場合には、送信器は、その送信が不成功であったものと仮定し、且つ、フレーム送信を再試行する。何回かの再試行の後に、アクノリッジメントが依然として受信されない場合には、送信器は、そのトランザクションを終了させるか又は再度試行するべく選択可能である。アクノリッジメントが不要である際には、送信器は、送信が成功したものと仮定する。
【0043】
図7及び図8は、コーディネータ10から装置11へのデータ転送を示している。コーディネータがビーコン対応型WPAN(図7)においてデータを装置に転送すべく所望する際には、コーディネータは、データメッセージが保留中であるという旨をビーコンフレーム41内において通知する。装置は、定期的にビーコンフレームを聴取し、且つ、メッセージが保留中である場合には、データ要求(MACコマンド)44を送信し、CSMA-CAによってデータを要求する。コーディネータ10は、アクノリッジメントフレーム43を送信することにより、データ要求の正常な受信をアクノリッジする。次いで、保留中のデータフレーム42が、スロット型のCSMA-CAを使用して、或いは、可能な場合には、アクノリッジメントの直後に、送信される。装置11は、任意選択のアクノリッジメントフレーム43を送信することにより、データの正常な受信をアクノリッジ可能である。この段階で、トランザクションが完了する。データトランザクションが正常に完了した際に、そのメッセージは、ビーコン内の保留メッセージのリストから除去される。
【0044】
ビーコン非対応型の場合には、特定の装置11用の準備が整ったデータを具備するコーディネータ10は、コンテンションに基づいて送信される関係する装置からのデータ要求44を待たなければならない。この要求を受信した際に、コーディネータは、アクノリッジメントフレーム43を送信する(これは、該当する場合には、準備されたデータが存在しないことを通知するべく使用することも可能である)。次いで、データフレーム42が送信され、これに応答し、装置11は、返信として他のアクノリッジメントフレーム43を送信可能である。
【0045】
わかりやすくするべく、以上の手順においては、装置とコーディネータの間のデータ転送のうちの前述のケース(i)及び(ii)のみが考慮されているが、ピアツーピアネットワークにおいては、前述のように、データ転送は、一般に、一つ又は複数の中間ノードを伴うメカニズム(iii)を介して実行されることになり、その結果、関係する衝突及び遅延のリスクが増大する。
【0046】
図5〜図8に示されているように、IEEE802.15.4ネットワーク内における通信には、以下のように4つの異なるタイプのフレームが関係している。
−ビーコンを送信するべくコーディネータによって使用されるビーコンフレーム41
―すべてのデータ転送用に使用されるデータフレーム42
−正常なフレームの受信を確認するべく使用されるアクノリッジメントフレーム43
−データ要求などのすべてのMACピアエンティティの制御転送を処理するべく使用されるMACコマンドフレーム44
【0047】
4つのフレームタイプのそれぞれの構造は、非常に類似しており、且つ、例として、データフレーム42が図9に示されている。この図において、二つの水平のバーは、MACサブレイヤと、PHYレイヤと、をそれぞれ表している。時間は左から右に進行し、且つ、フレームのそれぞれの連続したフィールドの時間長が、関係するフィールドの上方に示されている(単位:オクテット)。すべてのフレームは、特定順序のフィールドのシーケンスから構成されており、これらは、左から右に、PHYによって送信される順序において示されており、最も左側のビットが、時間的に最初に送信される。それぞれのフィールド内のビットには、0(最も左側であり、且つ、最下位である)からk-1(最も右側であり、且つ、最上位である)までが付番されており、この場合に、フィールドの長さは、kビットである。
【0048】
データフレーム42を介して送信されるデータは、上位レイヤに由来している。データペイロードは、MACサブレイヤに伝達され、且つ、MACサービスデータユニット(MSDU)と呼称される。MACペイロードには、先頭にMACヘッダMHRが付加され、且つ、末尾にMACフッタMFRが付加される。MHRは、フレームコントロールフィールド50(以下を参照されたい)、データシーケンスナンバー(DSN)、アドレス指定フィールド、及び任意選択の補助セキュリティヘッダを含む。MFRは、16ビットのフレームチェックシーケンスFCSから構成されている。MHR、MACペイロード、及びMFRが、一つのMACデータフレーム(即ち、MPDU)を形成する。MPDUは、PHYサービスデータユニットPSDUとしてPHYに伝達され、これが、PHYペイロードになる。PHYペイロードには、先頭に、プリアンブルシーケンス及びフレーム開始デリミタSFDを含む同期化ヘッダSHRと、オクテットを単位とするPHYペイロードの長さを含むPHYヘッダPHRと、が付加される。プリアンブルシーケンス及びデータSFDにより、受信器は、シンボル同期化を実現可能である。SHR、PHR、及びPHYペイロードが、一つのPHYパケット(PHYプロトコルデータユニットPPDU)を形成する。
【0049】
ビーコンフレーム41、アクノリッジメントフレーム43、及びMACコマンドフレーム44は、MACペイロードがそれぞれのケースにおいて異なる機能を具備し、アクノリッジメントフレームがMACペイロードを具備していないことを除いて、類似の構造を具備している。又、ビーコンフレーム41、アクノリッジメントフレーム43、及びMACコマンドフレーム44は、MACサブレイヤに由来しており、上位レイヤの関与を伴っていない。
【0050】
図10Aには、それぞれのタイプのフレーム内において使用されるフレームコントロールフィールド50が更に詳細に示されている。これは、図示のように、異なる目的のためのサブフィールドに割り当てられた16ビットから構成されている。具体的には、フィールドの最初の3ビットは、ビーコンフレーム41、データフレーム42、アクノリッジメントフレーム43、又はMACコマンドフレーム44というフレームタイプ51を表している。フレームタイプを表記する方法が図10Bに示されている。フレームタイプビット51に後続するのが、単一ビットのセキュリティ有効化サブフィールド52であり、これは、セキュリティがMACサブレイヤによって有効化されているかどうかを表している。これに後続しているのが、フレームペンディングサブフィールド53であり、これは、送信器が受信器用の更なるデータを具備しているかどうかを通知する。次が、アクノリッジメントが受信器に対して要求されているかどうかを通知するアクノリッジメント要求サブフィールド54である。この後に、更なるいくつかのサブフィールド55〜59が後続しており、これらは、アドレス指定のために使用されるか、又は現在のIEEE802.15.4の仕様においては予備とされている。
【0051】
前述のように、図10Bは、フレームタイプサブフィールド51の可能なビット値の表であり、IEEE802.15.4の仕様においては、値100及び101が使用されていないことを示している。
【0052】
MACコマンドフレーム44は、図11Aに示されているように、構造において極めて類似している。この場合には、ペイロードは、MACコマンドフレームによって表されるコマンドのタイプを識別するべく、コマンドフレーム識別子440を含む。IEEE802.15.4においては、図11Bの表に示されているように、様々なタイプのコマンドが規定されており、この図には、識別子440の可能な値が示されており、いくつかの値は、将来使用されるように予備となっている。
【0053】
本発明の背景の概説を以上において終了し、以下、図12〜図21を参照し、いくつかの実施例について説明することとする。
【0054】
本発明は、例えば、少なくとも一人の患者が、その患者の身体上に又はその周辺に配設されるか又はその内部に埋植されるセンサのMBANを介して監視されている状況に対応するものである(「MBAN」及び「ネットワーク」という用語は、文脈に応じて、一人の患者のために提供されたそれぞれのコーディネータを有する複数のセンサに対して、或いは、集合的に複数の患者の複数のセンサ/一つ又は複数のコーディネータのすべてに対して、適用可能である)。センサのうちの少なくともいくつかは、患者の生命を脅かす状況を通知可能な心拍数などの一つ又は複数のパラメータの検知に関与しているものと仮定する。本発明の実施例は、このような生命を脅かす状況において患者をサポートするための非常事態アクノリッジメント(即ち、ACK)メカニズムを含むプロトコルを提供することにより、非常事態の状態を宣言すると共に非常事態の状態を解除する方法を提供する。検知されたデータ又は計測値を処理又は分析するためのネットワークの能力に応じて、3つの異なるプロトコル又はトリガタイプが提案される。
【0055】
以下の図において、「非常事態にある」とは、臨界レベルに到達した一つ又は複数のなんらかの検知されたパラメータに起因して、患者が、その生命が脅かされる状況にあることを意味しており、「ACK」とは、前述のアクノリッジメントフレーム43に対応しており、且つ、「非常事態手順」とは、非常事態の宣言に応答して実行可能な任意のステップを意味している。「非常事態動作状態」とは、非常事態にあるネットワーク装置を動作させるなんらかの方式のことであり、「正常動作状態」とは、ネットワーク装置が非常事態にはない際に適用される状態のことである。
【0056】
図12及び図13にそのフローチャートが示されている第1のプロトコルにおいては、センサ(ネットワーク装置)自体が、非常事態の状態を宣言するかどうか及び非常事態の状態を解除するかどうかを判定する。まず、図12を参照し、非常事態を宣言するプロセスについて説明する。センサは、「正常(非−非常事態)」状態から始まるものと仮定する。この正常な状態は、通常、センサが、患者に関係した特定のパラメータ(以下、「生命パラメータ」と呼ばれる)を特定の時間間隔において計測するステップを伴うことになり、この時間間隔は、内部的にセンサによって設定することも可能であり、外部から指示を受けることも可能であり、又はコーディネータによって又はこれを通じて指示を受けることも可能であろう。わかりやすくするべく、一つのセンサが「非常事態にある」ケースについて検討することになるが、説明対象のプロトコルは、(同一の人物を監視しているすべてのセンサなどの)センサのグループに適用することも可能である。
【0057】
非常事態の状態の宣言、トリガタイプ1(図12)
S11:既定の時間間隔において、ネットワーク装置又はセンサ11は、生命パラメータを計測する。センサは、検知された値をコーディネータに(スタートポロジーにおいては、直接的に、或いは、ピアツーピアネットワークの場合には、一つ又は複数のホップを介して)無線送信可能である。但し、非−非常事態の状態におけるすべての(又は、何れかの)検知された値の送信は、必須ではない。いずれの場合にも、検知された値は、少なくとも一時的にセンサ内に保存されることになる。
【0058】
S12:ネットワーク装置又はセンサは、その独自の能力を使用することにより、患者が非常事態にあるかどうかを見出す。更に正確には、状態が非−非常事態から非常事態に変化したかどうかが判定される。例えば、ネットワーク装置又はセンサは、患者の心拍数が閾値レートを超過したかどうかをチェックする。したがって、通常は、センサは、閾値を保持するためのなんらかの形態のメモリを具備することになる。関係する生命パラメータに応じて、複数の閾値レベルを使用し、範囲を設定可能であろう。例えば、血圧センサは、例えば、検知された値が、160/120と80/60(mmHgを単位する収縮/拡張圧力)などの上部及び下部閾値によって境界が定められた許容可能な範囲を逸脱した時点において非常事態を判定可能であろう。
【0059】
S13:ネットワーク装置又はセンサは、非常事態の状態のインジケータをコーディネータ10に送信する。これを表現する方法については、後述する。ここでは、インジケータは、ネットワークの構成に応じて、直接的な送信を通じて又は中継装置として使用される他の装置を介して送信可能な特殊な種類のフレームとして送信されるという点に留意されたい。後者の場合には、インジケータに含まれた宛先IDを使用し、意図された宛先を示すことができる。
【0060】
S14:ネットワーク装置又はセンサ11は、コーディネータ10からのアクノリッジメント(ACK)の聴取又は検出を開始する。センサが非常事態の状態の宣言を送信するだけでなく、コーディネータ又は更に上位の権限者が適切な処置を講じることができるように、その宣言が受信されたことを確認することが重要である。
【0061】
S15:コーディネータ10は、ACKをネットワーク装置11に返送する。IEEE802.15.4などのフレームに基づいたシステムにおいては、アクノリッジメントフレームは、通常、この目的に使用されており、且つ、IEEE802.15.6においても、このフレームタイプが規定されることになると予想される。
【0062】
S16:いくつかの非常事態動作が後続することになる。例えば、センサ11は、生命パラメータの計測の頻度及び/又はメッセージをコーディネータ10に送信する頻度を増大させることがあり、これは、センサがそれまで実行していなかった場合にも、その検知された読取値のコーディネータに対する送信を開始するステップを含められる。そして、コーディネータは、例えば、関係するセンサのためにGTSを提供することにより、頻度の増大を可能にする。換言すれば、コーディネータは、センサに対する既定のクオリティオブサービスの提供を開始してもよい。コーディネータは、(図示されてはいない)中央監視ステーションに対して警告するなどの更なる処置を講じることも可能であり、或いは、(同一のネットワークが複数の患者を監視している場合には)リソースを同一の患者の他のセンサに振り向けることにより、その患者の他の生命パラメータの更に高度な精査を可能にすることも可能である。これは、コーディネータが、非常事態の状態について、MBAN内のすべての他のセンサに対して、又は懸念のある生命パラメータに関連した関係するセンサのグループに対して、通知することを含んでもよい。他の非常事態動作は、コーディネータが、可聴アラームやページャメッセージなどのなんらかの形態の警告をシステムの外部に対して送信することを含むことになろう。
【0063】
非常事態動作は、関係するセンサの電力消費量を増大させると共にコーディネータによって割り当てられた帯域幅の他のセンサからの転用をもたらす可能性が高く、したがって、非常事態の状態は、無制限に長引かせるべきではないことに留意されたい(以下を参照されたい)。
【0064】
又、上述のプロトコルにおいては、検知された値のセンサによる送信は、常に必要とされるわけではなく、閾値に到達した際にのみ、センサが(検知された値などの)情報(又は、おそらくは、非常事態の状態のインジケータのみ)を送信することで十分であることに留意されたい。この代わりに、又はこれに加えて、センサは、いくつかのセンサ読取値を保存しておき、そのすべてを一度に送信することも可能である。これらの方法によれば、おそらくは不必要な電力消費と、ネットワーク内における日常的なセンサデータの送信と、を最小限に低減可能である。
【0065】
検知された生命パラメータが非臨界レベルに戻った場合には、センサは、この事実を使用して非常事態の状態を解除可能であり、これにより、コーディネータは、高優先順位を他のセンサ及びタスクに付与可能である。このための手順が図13に示されている。関係するセンサが、現在、非常事態の状態にあり、これには、例えば、相対的に短い時間間隔において生命パラメータを検知することと、頻繁にメッセージをコーディネータに送信することとが含まれるものと仮定する。
【0066】
非常事態の解除の宣言、トリガタイプ1(図13)
S21:ネットワーク装置又はセンサ11は、生命パラメータを計測する。検知された値は、前述のように、通常、ネットワークに直接送信されることになる。これは、コーディネータ及び任意の外部エンティティが患者の非常事態の状況を監視できるようにするべく、非常事態の状態においては、重要であろう。
【0067】
S22:ネットワーク装置又はセンサは、その独自の能力を使用することにより、患者が依然として非常事態にあるかどうかを見出す。更に正確には、状態が非常事態から非−非常事態に変化したかどうか(非常事態の解除)が判定される。例えば、検知されたパラメータが、閾値レベルを下回るか又は許容可能な範囲内にある場合には、(少なくとも、検知されたパラメータが関係する限りにおいては)、患者は、もはや危険な状態にはないと仮定できる。例示を目的として、脈拍センサの場合には、例えば、50〜120(分当たりの脈拍数)の範囲内の脈拍値は、危険な状態ではないと解釈してもよいであろう。したがって、それまでこのレンジを上回っていた患者の脈拍が、最新のセンサ読取値において、120未満に低下していることが判明した場合には、センサによる非−非常事態の判定がもたらされることになろう。
【0068】
S23:もはや非常事態にはない場合には、ネットワーク装置又はセンサ11は、非常事態の状態の解除のインジケータをコーディネータ10に送信する。当然のことながら、この送信は、センサからコーディネータへの直接的な送信である必要はない。ピアツーピアトポロジーにおいては、センサは、その最も近い近隣の装置に対してのみ送信し、メッセージは、一連のホップを介してコーディネータに到達することになろう。
【0069】
S24:ネットワーク装置又はセンサは、コーディネータ10からのACKの聴取を開始する。
【0070】
S25:コーディネータは、ACKをネットワーク装置に返送する。
【0071】
S26:非常事態を解除するべく、いくつかの動作が後続することになる。例えば、センサは、そのセンサ読取値及び/又はコーディネータとの間の通信の頻度を低減することにより、おそらくは、更に多くの時間にわたってシャットダウンして電力を節約することも可能であり、或いは、センサは、それぞれのセンサ読取値の直接的な送信を一時中断することにより、おそらくは、代わりに定期的に送信するべく、それらを保存しておくことも可能である。通常、センサは、図12のフローチャートの開始時点において仮定されていた非−非常事態の状態に戻ることになる。尚、コーディネータは、それまでセンサに割り当てられていたGTSを他の目的のために割り当てしなおすことができる。又、コーディネータは、メッセージを外部に送信することにより、非常事態が終了したことを更に上位の権限者(人間又は装置)に通知することも可能であろう。
【0072】
第2のプロトコル又はトリガタイプにおいては、センサ自体は、検知されたパラメータに関連して非常事態の状況が存在するかどうかを判定することができないものと仮定している。この原因は、多くの場合に、これを実行するには不十分な処理パワーしかセンサが具備していないということになろう。或いは、検知されたパラメータ自体が、非常事態を宣言するには不十分であり、且つ、他の要因をも考慮しなければならないというものであろう。その相対的に大きな処理パワーと、他の供給源から情報を入手する能力とに起因して、コーディネータ10が、これを実行するための位置を占めることになろう。
【0073】
このような他の要因の一例は、時間であろう。検知された生命パラメータが、短時間にわたって又は離散した読取値について、閾値を超過することは、許容可能であろうが、多数のこのような読取値が特定の時間内に存在する場合には、おそらくは、非常事態の状態を示すことになろう。一例として、患者の脈拍数は、なんらかの外部的な刺激に起因して、瞬間的に、臨界レベルに上昇し、再度迅速に降下することがあり、これは、非常事態を示すことにはならないであろう。通常、コーディネータは、ストレージと、このような判定を実行するための計数能力と、を具備することになろう。
【0074】
他の要因の他の例は、同一の患者の他の生命パラメータを検出するべく使用されているセンサからのセンサデータ又は通知となろう。独立した一つのパラメータだけでは、最終的な非常事態の判定が不可能である場合にも、他のセンサからの情報と組み合わせられた際には、実行可能となろう。
【0075】
このプロセスは、先程概説したものに類似しているが、図14及び図15に示されているように、いくつかの相違点が存在する。この場合にも、第1のケース(図14)においては、初期状態は、非−非常事態であり、且つ、第2のケース(図15)は、非常事態の状態において始まるものと仮定する。
【0076】
非常事態の宣言、トリガタイプ2(図14)
S31:ネットワーク装置又はセンサ11は、以前と同様に、生命パラメータを計測する。
【0077】
S32:ネットワーク装置は、生命パラメータの一つ又は複数の検知された値をコーディネータに送信する。尚、説明対象のプロセスのいずれにおいても、これは、検知された値の明示的な通知によるものであってよいと共に/又は、値の変化の送信によるものであってよく、或いは、位置している範囲などの値のなんらかの通知の送信によるものであってもよいであろう。又、前述のように、非−非常事態の状態においては、すべての検知された値を送信する必要はない。
【0078】
S33:コーディネータは、情報を分析し、患者が「非常事態にある」かどうかを見出す。このステップは、独立して検知された値の分析を含んでもよく、或いは、前述のように、他の要因を考慮してもよい。このような要因は、同一の患者において他のセンサによって検知された値又は検知されたパラメータが危険な状態となってからの時間を含んでもよい。
【0079】
S34:非常事態が存在している場合に、コーディネータ10は、非常事態状態の確認をネットワーク装置に送信する。この動作は、S31の特定のネットワーク装置に対する確認の送信に限定する必要はなく、ネットワーク内のすべての装置に対して、或いは、同一の生命パラメータの責任を担う装置のグループに対して、実行することも可能であろう。
【0080】
S35:コーディネータは、この確認を受信したという旨のセンサからのACKの聴取又は検出を開始する。
【0081】
S36:ネットワーク装置は、ACKをコーディネータに返送する。
【0082】
S37:以前のものと同様に、なんらかの非常事態動作が後続することになる。例えば、コーディネータは、センサ読取値を取得すると共に/又はその読取値の通知を非−非常事態の状態におけるよりも高頻度で送信するように、センサに対して指示する。単純な構成においては、ステップS34におけるセンサによる非常事態の状態の受信は、別個の指示を必要とせずにセンサにおける必要な変化を起動するのに十分であろう。但し、一般的には、S34における非常事態の通知は、ステップS37におけるコーディネータからのコントロールメッセージによって後続される必要があり、このメッセージは、おそらくは、その送信のための新しいリソース割当についてセンサに通知するものである。
【0083】
非常事態の解除の宣言、トリガタイプ2(図15)
S41:ネットワーク装置又はセンサは、生命パラメータを計測する。
【0084】
S42:ネットワーク装置は、生命パラメータをコーディネータに送信する。
【0085】
S43:コーディネータは、情報を分析し、患者がもはや非常事態にないかどうか(即ち、非常事態の状態が終了し、且つ、非−非常事態の状態が始まっているかどうか)を見出す。これは、基本的に、ステップS33と逆のプロセスであるが、関係する任意の閾値又は期間は同一である必要はない。例えば、非−非常事態を判定するべく使用される期間は、危機的な状態が本当に終了したことを確認するべく、非常事態を宣言するためのものよりも格段に長いものであってよいであろう。
【0086】
S44:もはや非常事態にない場合には、コーディネータは、ネットワーク装置に非常事態状態の確認を送信する。
【0087】
S45:コーディネータは、ACKの聴取又は検出を開始する。
【0088】
S46:ネットワーク装置は、ACKをコーディネータに返送する。
【0089】
S47:非常事態を解除するべく、なんからの適切な動作が後続することになり、例えば、センサは、この確認を、エネルギーを節約する相対的に活動性の低いスリープ/ウェークアップパターンへの切り替え命令として解釈可能である。
【0090】
以上の内容は、非常事態の解除を宣言するための唯一の可能な方法ではない。例えば、病院などの同一の場所において多数の非常事態が宣言される状況においては、非常事態の状態を無制限に維持することは、ネットワークの輻輳と医療スタッフの過負荷の両方の観点において、有用ではないであろう。したがって、既定の時間が経過した後に非常事態を解除するべく対策を実施可能であろう。そのような対策は、検知されたパラメータに応じて、選択的に適用可能であり、例えば、患者は、非常に高い血圧においては、ほとんど無制限に生存可能であり、したがって、必要に応じて、非常事態を解除することが可能であるが、血圧が非常に低い場合には、解除は不可能である。
【0091】
以上の二つのプロトコルは、センサ及びコーディネータのみを伴っている。但し、MBANは、前述のように、いくつかのコーディネータがなんらかの形態の中央モニタに対して報告する方式によって実装することも可能であり、これは、自動なものであってもよく、或いは、人間の監督下におけるものであってもよい。例えば、このような中央モニタは、病院内において何人かの患者を管理している病室担当看護師の机上に配置可能であろう。このシナリオにおいては、中央モニタは、非常事態が存在するかどうかの判定を以下のように実行可能である。
【0092】
非常事態の状態の宣言、トリガタイプ3(図16)
S51:ネットワーク装置又はセンサ11は、非−非常事態の状態において始まるものと仮定されおり、生命パラメータを計測する。
【0093】
S52:ネットワーク装置は、検知された生命パラメータデータをなんらかの形態においてコーディネータ10に送信する。
【0094】
S53:コーディネータ10は、なんらかの手段を通じて、生命パラメータを中央監視ユニット12に転送する。この場合に、送信手段は、MBAN自体でなくてもよく、携帯電話ネットワークなどの別個の無線通信ネットワーク又は病院内の有線LANなどのなんらかの形態の有線接続であってもよいことに留意されたい。したがって、中央モニタは、必ずしも、MBANの一部として見なされるものではない。この場合にも、送信されるデータは、検知された値の直接的な送信である必要はなく、特定の閾値又は範囲への到達の通知であってもよいであろう。検知された値をコーディネータが中央モニタに通知する方法は、センサがコーディネータに送信するために使用されるものと同一である必要はない。
【0095】
S54:中央監視システム12は、情報を分析し、患者が非常事態にあるかどうか(非常事態に移行しているかどうか)を見出す。この場合に、判定は、(更に重篤な状態にあり、且つ、したがって、更に周到な注意を払うに値する)監視対象の任意の他の患者の状況などのその患者とは関係のない要因を伴うものであってよい。最終的な判断は、人間が介入して下すことも可能であり、或いは、自動的なものであってもよいであろう。
【0096】
S55:非常事態の状態が判定された場合には、中央監視システム12は、通常は、ステップS53と同一の送信ルートにより、非常事態状態の確認をコーディネータに送信する。
【0097】
S56:S55における確認に応答して、コーディネータも、非常事態状態の確認をネットワーク装置に送信する。
【0098】
S57:コーディネータは、ACKの聴取又は検出を開始する。
【0099】
S58:ネットワーク装置は、ACKをコーディネータに返送する。
【0100】
S59:いくつかの非常事態動作が後続することになる(これらの動作は、ステップS56及びステップS57の完了を待つ必要はない)。患者の様子を見るように促すべく、例えば、医療スタッフメンバのワークステーションにおいてアラームを鳴動させることができよう。中央モニタは、非常事態の状態について、存在する場合には、更なるコーディネータを含む他のネットワークに通知可能であり、且つ/又は、その動作を起動可能であろう。
【0101】
同様に、中央モニタは、コーディネータを通して中継又はフィルタリングされた検知された情報と、自身が認知している任意の他の要因と、に基づいて、非常事態を解除するための判定を下すことができる。
【0102】
非常事態の状態の解除の宣言、トリガタイプ3(図17)
S61:非常事態の状態において始まり、ネットワーク装置又はセンサ11は、生命パラメータを計測する。
【0103】
S62:ネットワーク装置は、生命パラメータをコーディネータ10に送信する。
【0104】
S63:コーディネータは、S53におけると同様に、なんらかのネットワークを通じて、生命パラメータを中央監視ユニットに転送する。
【0105】
S64:中央監視システム12は、情報を分析し、患者がもはや非常事態にないかどうか、即ち、既存の非常事態の状態が終了したかどうかを見出す。
【0106】
S65:非常事態にない場合には、中央監視システムは、非常事態状態の確認をコーディネータに送信する。
【0107】
S66:応答して、コーディネータも、非常事態状態の確認をネットワーク装置に送信する。
【0108】
S67:コーディネータは、ACKの聴取又は検出を開始する。
【0109】
S68:ネットワーク装置は、ACKをコーディネータに返送する。
【0110】
S69:いくつかの動作が後続することになり、ネットワーク装置は、以前と同様に、その送信及び/又はスリープ/ウェークアップパターンを変更可能であり、且つ、例えば、コーディネータは、ネットワーク装置が非−非常事態の状態に戻ったことを中央モニタ12に通知可能である。
【0111】
ステップの順序は、フローチャートに示されているものを厳格に踏襲する必要はないことに留意されたい。例えば、図12において、コーディネータは、ACKを送信するステップを、GTS(又は、拡張型GTS)の割り当て及びこの事実のセンサへの通知と組み合わせることができよう。同様に、センサ11又はコーディネータ10は、自身が非常事態の状態の変化について認知したら、他方の側からのACKを待つことなしに、即座に、非常事態(又は、非常事態解除)手順の実行を開始可能であろう。
【0112】
必ずしも、「非常事態」及び「非−非常事態」が唯一の二つの可能な状態であるということではない。例えば、「異常」などの第3の状態を導入し、患者(又は、更に正確には、特定の検知された生命パラメータの値)が、まだ非常事態の状態には至っていないが、懸念の原因となっていることを通知可能であろう。これは、前述の手順を拡張することによって明示的に宣言することも可能であり、或いは、直ぐに非−非常事態に戻らずに、むしろ、検知された値が正常な読取値に戻る時点まで待機することにより、黙示的に規定することも可能であろう。換言すれば、それぞれ、非常事態又は非−非常事態の状態を判定するべく使用される任意の一つ又は複数の閾値は、同一である必要はない。或いは、後程更に詳述するように、状況の深刻さに応じて、非常事態の程度を、一連の段階にわたって、上昇又は降下させることも可能であろう。
【0113】
図12〜図17のフローチャートは、わかりやすくするべく、単一のセンサのみを考慮している。但し、関係する生命パラメータに応じて、複数のセンサを同一の患者上に提供するか又はその内部に埋植することにより、例えば、体温などの同一の生命パラメータを監視可能であろう。このような場合には、当然のことながら、単一のセンサとの関係において前述したステップは、実際には、それらの複数のセンサのすべてと関係することになろう。
【0114】
同様に、前述の手順は、例えば、それぞれがその独自のコーディネータを有するいくつかのクラスタが単一の中央監視ユニットに報告しているピアツーピアの設定においては、複数のコーディネータと関係することになろう。この場合には、所与のコーディネータから中央モニタへのメッセージは、常に、直接的に送信される必要はなく、一つ又は複数の他のコーディネータによって中継可能であろう。
【0115】
以上の説明においては、中央モニタを含んでもよいものの、無線センサネットワーク内におけるセンサ及びコーディネータのみを参照しているが、MBANは、これらの種類以外の他の装置を含んでもよい。潜在的に、投薬メカニズムなどの患者の治療に介入するなんからの手段を、コーディネータ及び/又は任意の中央モニタの無線による制御下において、ネットワーク内に配置可能であろう。したがって、「非常事態手順」は、センサ及びその通信の制御に限定する必要はなく、例えば、薬品を患者に供給して非常事態の状態にある生命パラメータ(例えば、心拍数)を安定化させることにも拡張可能であろう。
【0116】
以上の説明は、一人又は複数人の患者の医学的な非常事態又は非−非常事態を判定する技術に関するものであり、その理由は、これが、本発明の重要な用途として考えられるためである。但し、これは、唯一の可能な用途ではない。センサを使用し、非医学的な状況において生体を監視可能であろう。例えば、前述のものと同一の技術を使用することにより、リスクを有する任意の人物(例えば、高齢の又は虚弱な人々や子供、危険な環境にある人々など)を監視可能であろう。この場合には、非常事態の状態は、事故などのなんらかの形態の物理的な脅威を表すことになろう。この状況においては、脈拍、体温、加速度などの生命パラメータ用のセンサが特に有用であろう。
【0117】
人間の又は他の生体のBAN以外にも、本発明を適用するための多数の可能性が存在している。一つの可能性は、ミッションクリティカルな産業環境(例えば、発電所)における多数の潜在的なシナリオなどの産業的な非常事態を検出する能力を有するWSNである。これは、工場の環境における多数の制御点に提供可能である。例えば、本発明者らは、工場の加熱設備内の温度センサ又は食品製造ライン用の圧力閾値を想定できる。即時アクノリッジメントプロトコルは、医学的な非常事態の場合と同様に、これらのシステム内における非常事態にも適用可能である。したがって、請求項中における「エンティティ」という用語は、生物に加えて、このような任意の産業環境をも包含するものと解釈されたい。
【0118】
以下、上述のプロトコルを、IEEE802.15.4に基づいて現在開発中のIEEE802.15.6などの通信規格に含める方法について、更に説明することとする。
【0119】
図18及び図19は、「非常事態」という名称が付与された新しいビットを追加することによって非常事態の状況を収容すると共にIEEE802.15.6に適合したものにするための本発明の一実施例におけるIEEE802.15.4のフレームフォーマットに対する第1の可能な変更を示している。この第1の可能な変更においては、IEEE802.15.4のフレームタイプに対する他の変更を実施することなしに、新しい非常事態フレームタイプが許容されている。
【0120】
既に概説したように、IEEE802.15.4は、ビーコンフレーム41、データフレーム42、アクノリッジメントフレーム43、及びMACコマンドフレーム44を含む様々なフレームタイプを提供している。IEEE802.15.6において前述の手順を実装するための一つの方法は、規定されているMACフレームタイプに、非常事態フレームという更なるフレームタイプを導入するというものである。
【0121】
図18は、IEEE802.15.4について既に提案されている図10Aのフレームコントロールフィールド50に対応したフレームコントロールフィールド500の構造を示している。図18を図10Aと比較することによって理解されるように、ビット0〜2は、IEEE802.15.4と同様に、フレームタイプ501を表しているが、可能なフレームタイプ値は、図19に示されているように変更されている。以前の予備の値100〜111(図10Bを参照されたい)のうち、ビット値「111」が、この場合には、新しい非常事態フレームタイプを表すべく使用されている。値100、101、及び110は、将来使用するための予備の値として残されている。
【0122】
フレームコントロールフィールド500の残りのサブフィールド内には、第7ビットが非常事態の状態のためのフラグとして新しく使用されていることを除いて(例えば、「1」=非常事態であり、且つ、「0」=非−非常事態である)、基本的に、図10Aのフレームコントロールフィールド50と同一の構成要素が存在している。ここで、第8ビットは、(図10Aのアクノリッジメント要求サブフィールドに対応した)アクノリッジメントポリシーを表すべく使用されている。セキュリティ有効化ビット502、フレームペンディングビット503、PAN ID圧縮506、宛先アドレス指定モード507、フレームバージョン508、及び発信元アドレス指定モード509の各サブフィールドは、IEEE802.15.4のフレームコントロールフィールド50と同一の機能を具備している。
【0123】
図20及び図21は、非常事態フレームタイプのみならず、例えば、非常事態において使用される所謂即時アクノリッジメントを含む相対的に柔軟なアクノリッジメントの提供、ネットワーク装置の電池状態の通知、及び「緊急事態」の通知を含む他の新しい特徴を収容するための本発明の他の実施例におけるIEEE802.15.4のフレームフォーマットに対する第2の可能な変更を示している。
【0124】
図20のフレームコントロールフィールド500’のフォーマットは、主には、アクノリッジメントポリシー用の単一のビット505が、異なるアクノリッジメントタイプを定義するための二つのビットによって置換され、且つ、電池状態(即ち、残っている電荷又は電圧レベル)及び「緊急事態」の通知が、追加のビット(図には、「拡張ビット」0〜3という名称が付与されている)を必要とする新しいサブシールド511及び512によって表されているという点において、図18のフレームコントロールフィールド500と異なっている。図示のように、二つのビットが、それぞれ、「緊急事態」及び「電池レベル」のそれぞれに対して割り当てられており、これにより、それぞれについて最大で4つのレベルを定義可能である。これらの新しいサブフィールドの意味及び使用法は、本発明の範囲外であるが、ここでは、これらを本発明の非常事態の状態との関連において使用することにより、BANの装置間の更に柔軟なシグナリングを提供可能であることに留意されたい。
【0125】
この場合におけるIEEE802.15.4の変更済みのフレームタイプ値が図21に示されており、これを図10B/図10B及び図19と比較されたい。図19の実施例と比較した場合の相違点は、これまで予備とされていた値100及び101が、ここでは、即時アクノリッジメントと遅延アクノリッジメントというアクノリッジメントの二つのタイプを表すべく使用されているという点にあり、即時アクノリッジメントとは、例えば、非常事態にある装置が、更に信頼性の高い通信のために、受信したデータのそれぞれの個別のフレームをアクノリッジするべく使用するものである。即時アクノリッジメントは、本出願人による同時係属中の出願の主題である。
【0126】
本発明の新しい機能を既に提案済みのフレーム構造に含めるための更なる技術として、MACコマンドフレームのコマンドフレーム識別子(図11A及び図11Bを再度参照されたい)を使用可能である。図22A及び図22Bは、MACコマンドフレーム44’に必要な変更を示しており、新しいコマンドタイプである「非常事態通知」が追加されている。図22Aは、MACコマンドフレームフォーマット44’の一部を示しており、且つ、図22Bは、コマンドフレーム識別子440’の可能な値の表を示しており、新しいタイプである「非常事態通知」は、これまで使用されていない値0x0aを占めている(図22Bを参照されたい)。この新しいコマンドタイプの規定に加えて、コマンドフレーム識別子440’に後続するペイロードを使用し、コマンドのなんらかの情報(コンテキスト)を付与する。図22Aに示されているMACコマンドフレーム44’の場合のペイロードの一例は、非常事態の状態を宣言する又は非常事態の状態を取り消す(解除する)ための一つのビットであり(例えば、「1」=非常事態、「0」=非−非常事態)、これには、非常事態の状態を上昇又は下降させるいくつかのレベルを導入するための3つのビットが後続している(非−非常事態の状態を含む合計で9つのレベルのために、8つのレベルの非常事態が可能である)。又、例えば、非常事態宣言の持続時間を相対時間(ms)において又は(現在のエポックの開始時点からの)絶対時間(ms)において通知するべく、更なるビットをペイロードとして提供することも可能であろう。
【0127】
要すれば、本発明の実施例は、以下の特徴及び利点を提供可能である。
・医学的な非常事態の状況をIEEE802.15.6のための新しい非常事態アクノリッジシグナリングに結び付ける。
・新しいフレームタイプ「非常事態」を規定する。
・センサ又はネットワーク装置が非常事態の存在の有無を判定する医学的な非常事態のためのトリガタイプ1の可能性を導入する。
・トリガタイプ1と関連した非常事態のトリガプロトコルを提供する。
・コーディネータが状況を評価すると共に非常事態の有無を判定する医学的な非常事態のためのトリガタイプ2の可能性を導入する。
・トリガタイプ2と関連した非常事態のトリガプロトコルを提供する。
・状況を評価すると共に非常事態の有無を判定するべくコーディネータが生命パラメータを中央治療システムに転送する医学的な非常事態のためのトリガタイプ3の可能性を導入する。
・トリガタイプ3と関連した非常事態のトリガプロトコルを提供する。
・IEEE802.15.6のための新しいコントロールフレーム構造を規定する。
・IEEE802.15.6のための非常事態の状況を通知するコントロールフレームにおける新しいビットを規定する。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の実施例は、MBANを使用して非常事態の管理を円滑に実行する際に極めて重要な役割を果たすことができる。以下のシナリオに留意されたい。
【0129】
(i)心臓に問題を有する世界中の数億人の患者を、彼らの身体上においてMBANを形成する無線センサを利用することにより、病院において、又は自宅において、監視可能である。MBANは、このような患者に更なる移動性を提供可能である。但し、心機能の異常や心臓発作などの更に深刻なケースなどの状況にある患者のグループの場合には、信頼性の高い通信チャネルを確保して非常事態又はアラーム信号を見逃さないことを保証することが極めて重要である。本発明は、「非常事態アクノリッジ」を送信することにより、関与しているすべてのエンティティに非常事態について認知させるための信頼性の高い非常事態トリガメカニズムを提供する。
【0130】
(ii)世界中で数億人の人々が糖尿病を患っている。最近、グルコースの測定のための埋植可能な又は非侵襲的な方法が検討されている。MBANを使用し、24時間にわたって患者のグルコースレベル情報を監視可能である。患者のグルコースレベルがチャートを逸脱し、且つ、患者のための非常ジオロケーション及び他の必要な緊急的な医学的手順が必要とされる状況が存在する。
【0131】
(iii)MBANを使用することにより、データの消失によって生命が脅かされる可能性がある集中治療の状態にある患者を監視しつつ、検知データを収集可能である。
【0132】
(iv)医療システムにおける非常事態への応答の人件費及び効率が改善される。
【0133】
(v)医療MBANシステムにおける非常事態の認知度が改善される。
【0134】
(vi)非常事態応答プロセスを自動化することにより、人件費が低減される。
【0135】
(vii)主には、低データレートのアプリケーションが想定されているが、MBANは、個々のパケットの消失が致命的であると共に品質に影響を及ぼすストリーミングビデオ/オーディオデータの転送に適用することも可能であろう。非常事態の状況においては、誤ったデータは、疾病の診断に悪影響を与えるおそれがある。
【0136】
(viii)医療診断の場合には、MMR又はX線画像は、医師が患者を適切に診断するべく、非常に明瞭であることを要する。したがって、この場合にも、信頼性の高いデータ転送が不可欠である。
【0137】
要すれば、本発明は、無線センサネットワーク内において非常事態の状態を宣言する方法を提供可能であり、無線センサネットワークは、少なくとも一つのエンティティを監視するべく構成されたセンサ(11)を含む複数の装置(10、11、12)を有し、この方法は、センサ(11)のうちの一つによってエンティティに関連するパラメータの値を検知するステップと、情報をセンサによってネットワーク内の他の装置(10)に無線送信するステップと、検知された値又は送信された情報を使用することにより、エンティティに影響を及ぼす非常事態の状態の有無を判定するステップと、非常事態の状態の有無をネットワーク内の少なくとも一つの他の装置(例えば、10)に宣言するステップと、を有する。判定するステップは、センサ(11)、無線センサネットワークのコーディネータ(10)、又はコーディネータとの通信状態にある中央モニタ(12)のいずれかにおいて実行可能である。宣言するステップは、フレームに基づいた無線センサネットワークのフレームコントロールフィールドを非常事態フレームを表す予め定義された値に設定することにより、実行可能である。受信器は、アクノリッジメントフレームを使用し、非常事態の宣言の受信をアクノリッジ可能であり、この後に、非常事態手順が実行される。非常事態手順は、例えば、センサからの後続の情報の信頼性を保証するように、センサに割り当てられた帯域幅を増大させるステップを伴ってもよい。この方法は、例えば、IEEE802.15.6に従って稼働するMBANを使用する病院内における患者の監視に適用可能である。
【0138】
本発明は、新しいセンサ、コーディネータ、又はこれらのためのハードウェアモジュールの形態をとることが可能であり、且つ、一つ又は複数のセンサ及び/又はコーディネータのプロセッサによって実行されるソフトウェアを置換又は変更することにより、実装可能である。
【0139】
したがって、本発明の実施例は、ハードウェアにおいて、或いは、一つ又は複数のプロセッサ上において稼働するソフトウェアモジュールとして、或いは、これらの組合せとして、実装可能である。又、本発明は、本明細書に記述されている技術のいずれかの一部又はすべてを実行する一つ又は複数の装置又は機器プログラム(例えば、コンピュータプログラム及びコンピュータプログラムプロダクト)として実施可能である。このような本発明を実施するプログラムは、コンピュータ可読媒体上に保存可能であり、或いは、例えば、一つ又は複数の信号の形態を有することも可能であろう。このような信号は、インターネットウェブサイトからダウンロード可能なデータ信号であってよく、或いは、搬送波信号上において、又は任意の他の形態において、提供することも可能である。
【0140】
以上の説明においては、一例として、IEEE802.15.4及びIEEE802.15.6を参照しているが、本発明は、IEEE802.15.6に従って動作するかどうかとは無関係に、任意のタイプのフレームに基づいた無線センサネットワーク又はMBANに対して、且つ、医療ボディエリアネットワークではない場合にも、非常事態の状況における通信の信頼性の改善に対する要件を具備する他のタイプのBANに対して、適用可能である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーソナルエリアネットワークを含む無線センサネットワークに関し、更に詳しくは、但し、限定を伴うことなしに、人間又は動物の身体上に又はその周囲に配設されるか又はその内部に埋植される無線通信センサを含むボディエリアネットワークに関する。
【背景技術】
【0002】
様々なタイプの無線センサネットワークが提案されている。それらのうち、所謂ボディエリアネットワーク又はBANは、相対的に短い距離において情報を搬送するべく使用される無線パーソナルエリアネットワーク(Wireless Personal Area Network, WPA)の一例である。無線ローカルエリアネットワーク(Wireless Local Area Network, WLAN)とは異なり、WPANを介して実現される接続は、インフラストラクチャをほとんど又はまったく必要としない。この特徴により、様々な装置のために、小型で電力効率に優れた廉価なソリューションを実現可能である。特に興味深い点は、センサを使用して患者の状態を監視する医療BAN(Medical BAN, MBAN)の可能性である。検知されたデータをデータシンクに供給するべく主にセンサを利用しているBANが、無線センサネットワーク(Wireless Sensor Network, WSN)の一例である。但し、アクチュエータなどの更に能動的な装置をMBANに包含することも可能である。
【0003】
IEEE802.15.4規格は、低データレートのWPAN用の物理レイヤ(PHY)及びMAC(Medium Access Control)サブレイヤの仕様を規定している。IEEE802.15.4は、高データレートのWPAN用の規格であるIEEE802.15.3との間に、いくつかの類似点を具備する。IEEE Std 802.15.4-2006及びIEEE Std 802.15.3-2003は、本引用により、そのすべてが本明細書に包含される。
【0004】
IEEE802.15.4において想定されているタイプのWPANは、産業用の監視などのアプリケーションには好適であるが、MBANに必要とされる種類のデータ信頼性を提供しない。医療アプリケーションには、信頼性及びプロセスの自動化を向上させると共にヒューマンエラーを低減しつつ、人間の労働と関連した費用を低減するという要件が存在している。センサは、必要とされるインテリジェンスを提供可能であり、且つ、医療装置内において既に広く利用されている。これには、病院での回復治療、自宅治療、集中治療ユニット、及び高度な手術手技が含まれる。脈拍や体温などのための外部センサ、体液との接触状態となるセンサ、(切れ込みを通じて)カテーテル内において使用されるセンサ、外部アプリケーション用のセンサ、無線センサを有する使い捨て型のスキンパッチ、及び埋植可能なセンサを含む医療用途に利用される多くの異なるタイプのセンサが存在している。
【0005】
病院又は病室内の患者周辺のセンサのWPANは、患者の移動性、監視の柔軟性、現在監視されていない治療エリアへの監視の拡大、臨床過誤の低減、及び監視費用の全体的な低減を含む多数の臨床的利益を提供可能であろう。身体着用型センサは、一人の患者の身体上において様々なセンサタイプを包含可能である。これらは、患者の身体に迅速に着脱される能力を必要としている。
【0006】
このようなセンサは、個別には、最低で患者当たりに1〜2kbpsのビットレートを具備可能であり、且つ、集合的には、10kbpsのビットレートを必要としよう。レンジは、わずかに数メートルで十分であろう。但し、医療WSNアプリケーションは、臨床環境においては、ミッションクリティカルなアプリケーションである。限られたデータ消失及び限られたレイテンシーのための安定した無線リンク、患者及びセンサ密度のための能力、他の無線との共存、数日にもわたる連続動作のための電池寿命、及び身体装着型装置のための小さなフォームファクタは、医療WSN又はMBANにおける要件の例である。これらの要件は、前方誤り訂正(Forward Error Correction, FEC)及び適応再送要求(Adaptive Repeat reQuest, ARQ)、センサ情報レートのための低デューティサイクルのTDMA、及び相対的に効率的な小さなアンテナを含む時間及び周波数ドメインにおけるダイバーシティ及び誤り制御法などの技術を利用して満足させることができる。
【0007】
したがって、特に、医療アプリケーション用のボディエリアネットワークの特性を規定することを目的とした更なるIEEE802.15.6規格を規定するための作業が進行中である。IEEE802.15.6の主要な要件の一つは、医療アプリケーションにおける高い信頼性である。これは、患者の生命が医療WSNアプリケーションの無線リンクの信頼性によって左右される非常事態の状況においては、特に重要である。IEEE802.15.4などの既存の規格は、商用アプリケーションのために設計されており、このような非常事態の救命シナリオを考慮してはいない。
【0008】
具体的には、このような非常事態の状況に関与するセンサなどのネットワーク装置との間の通信の信頼性を保証するという課題に対処するニーズが存在している。
【発明の概要】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、エンティティを監視する一つ又は複数のセンサを含む装置の無線センサネットワークが提供され、この無線センサネットワークは、エンティティに関係したパラメータの値を検出すると共に情報をネットワーク内の他の装置に無線送信するべく構成された上記のセンサと、上記の無線送信された情報を受信するべく構成されたコーディネータと、上記の検出された値又は上記の送信された情報に応答して、エンティティの非常事態の状態の存在を判定する判定手段と、を含む。
【0010】
エンティティは、例えば、医療を目的として監視される人間などの生体である。
【0011】
前述のネットワークにおいて、判定手段は、センサ及びコーディネータのうちのいずれかに配置可能であり、或いは、ネットワークがコーディネータとの通信状態にある中央モニタに接続されている場合には、中央モニタに備えられていてもよい。
【0012】
その場所とは無関係に、判定手段は、検出された値又は送信された情報を少なくとも一つの閾値と比較することにより、非常事態の状態(或いは、更に正確には、非常事態の状態が存在する状態への移行)の判定を実行可能である。例えば、二つの閾値を使用して範囲を規定可能である。
【0013】
判定手段は、検出された値又は送信された情報を少なくとも一つの閾値と比較することにより、非常事態の状態の不存在(或いは、換言すれば、非常事態の状態の解除)を判定するべく更に動作可能である。
【0014】
いずれの場合にも、好ましくは、判定手段は、非常事態の状態の宣言を無線センサネットワーク内の少なくとも一つの他の装置に送信するべく構成されている。この他の装置は、好ましくは、宣言に応答して、アクノリッジメントを判定手段に送信する。判定手段が非−非常事態の状態を判定するべく構成されている場合には、好ましくは、判定手段は、この判定結果をも一つ又は複数の他の装置に宣言するべく動作可能である。
【0015】
無線センサネットワークは、通常、情報が、ネットワーク内において、それぞれがフレームコントロールフィールドを具備するフレーム内において無線送信され、非常事態の状態の宣言が、フレームコントロールフィールド内の値を予め定義された値に設定することにより、実行される。このようなフレームは、コーディネータによって規定される相対的に大きなスーパーフレームフォーマットにおいて規定可能である。
【0016】
好ましくは、フレームは、異なるタイプのフレームを含み、且つ、予め定義された値は、非常事態フレームタイプを表す。他の好適なフレームタイプが、アクノリッジメントフレームであり、この場合に、宣言に応答して送信されるアクノリッジメントは、アクノリッジメントフレームの形態を有する。ここで、フレームコントロールフィールドは、非常事態の状態の存在の有無を通知するための少なくとも一つのビットを含んでもよい。
【0017】
或いは、新しいコマンドタイプを表すコマンドフレーム識別子の値を規定することにより、新しいMACコマンドタイプを非常事態通知のために使用可能である。
【0018】
このようなフレームに基づいたシステムは、IEEE802.15.6に基づいたMBANを含むことができる。好適なアプリケーションにおいては、上記のエンティティは生体であり、センサは、患者の生体の生命パラメータを検知するためのものであり、且つ、非常事態の状態は、医学的な非常事態である。
【0019】
本発明の第2の態様によれば、無線センサネットワーク内において使用され、且つ、その判定手段を含むセンサが提供される。
【0020】
本発明の第3の態様によれば、無線センサネットワーク内において使用され、且つ、その判定手段を含むコーディネータが提供される。
【0021】
本発明の第4の態様によれば、無線センサネットワーク内において非常事態の状態を宣言する方法が提供され、無線センサネットワークは、少なくとも一つのエンティティを監視するべく構成されたセンサを含む複数の装置を有し、この方法は、センサのうちの一つによってエンティティと関係するパラメータの値を検知するステップと、情報をセンサによってネットワーク内の他の装置に無線送信するステップと、検知された値又は送信された情報を使用することにより、エンティティに影響を及ぼす非常事態の状態の存在の有無を判定するステップと、非常事態の状態の存在の有無をネットワーク内の少なくとも一つの他装置に宣言するステップと、を有する。
【0022】
本発明の更なる態様によれば、無線通信によってデータ転送を実行する装置のネットワーク内において使用されるフレームフォーマットが提供され、このフレームフォーマットは、非常事態の状態の存在をネットワーク内の他の装置に宣言するべく使用される非常事態フレームを表すためのサブフィールドを含むフレームコントロールフィールドを規定している。このようなフレームフォーマットは、例えば、IEEE802.15.4において提案されているスーパーフレーム構造において使用可能である。
【0023】
本発明の更なる態様は、無線センサネットワークのセンサ装置又はコーディネータのプロセッサによって実行された際に、それぞれ、上記のセンサ又はコーディネータを提供するソフトウェアを提供する。このようなソフトウェアは、コンピュータ可読媒体上に保存可能である。
【0024】
本発明を更に十分に理解するべく、且つ、本発明を実施可能な方法を更に明瞭に示すべく、以下、添付図面を参照するが、これは、例示を目的としたものに過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】IEEE802.15.4のWPANにおけるプロトコルレイヤを示す。
【図2】IEEE802.15.4のWPANの可能なPHY帯域を示す。
【図3】WPANのスター及びピアツーピアトポロジーを示す。
【図4】ビーコン対応型のIEEE802.15.4のWPANにおけるスーパーフレームの構造を示す。
【図5】IEEE802.15.4のWPANにおけるネットワーク装置とコーディネータの間におけるデータ転送の可能なモードを示す。
【図6】IEEE802.15.4のWPANにおけるネットワーク装置とコーディネータの間におけるデータ転送の可能なモードを示す。
【図7】IEEE802.15.4のWPANにおけるネットワーク装置とコーディネータの間におけるデータ転送の可能なモードを示す。
【図8】IEEE802.15.4のWPANにおけるネットワーク装置とコーディネータの間におけるデータ転送の可能なモードを示す。
【図9】IEEE802.15.4のWPANにおけるデータフレームに使用されるフレームフォーマットを示す。
【図10A】図9のフレームフォーマットにおけるフレームコントロールフィールドの構造を示す。
【図10B】図10Aのフレームコントロールフィールドにおけるフレームタイプビットの従来の規定値の表である。
【図11A】IEEE802.15.4のMACコマンドフレームに使用されるフレームフォーマットの一部を示す。
【図11B】図11Aのフレームフォーマットにおけるコマンドフレーム識別子の従来の規定値の表である。
【図12】本発明の一実施例における非常事態を宣言する第1手順のステップのフローチャートである。
【図13】本発明の一実施例における非常事態を解除する第1手順のステップのフローチャートである。
【図14】本発明の一実施例における非常事態を宣言する第2手順のステップのフローチャートである。
【図15】本発明の一実施例における非常事態を解除する第2手順のステップのフローチャートである。
【図16】本発明の一実施例における非常事態を宣言する第3手順のステップのフローチャートである。
【図17】本発明の一実施例における非常事態を解除する第3手順のステップのフローチャートである。
【図18】本発明の一実施例において提案されるフレームコントロールフィールドの新しい構造を示す。
【図19】図18のフレームコントロールフィールドにおけるフレームタイプビットの可能な値の表である。
【図20】本発明の他の実施例に従って変更されたフレームフォーマットにおけるフレームコントロールフィールドの構造を示す。
【図21】図20のフレームコントロールフィールドにおけるフレームタイプ値の表である。
【図22A】本発明の他の実施例における図11A及び図11Bのコマンドフレーム識別子の変形を示す。
【図22B】本発明の他の実施例における図11A及び図11Bのコマンドフレーム識別子の変形を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施例について説明する前に、現在開発中のIEEE802.15.6規格及び/又はMBANを含むボディエリアネットワークに関連すると思われるIEEE802.15.4の各部分についてその背景を少し説明しておくこととする。
【0027】
図1は、無線トランシーバ及びその低レベルコントロールを含むPHYレイヤを介して物理媒体にアクセスする層状のOSIモデルの観点におけるIEEE802.15.4のWPANの概略的なアーキテクチャを示しており、これには、参照符号100が付与されている。図示のように、PHY用の二つの代替周波数帯域101、102が存在しており、これらが図2に示されている。低周波数帯域101は、868.3MHzを中心とする単一の20kb/sのチャネル及び/又は915MHzを中心とするそれぞれが40kb/sの10個のチャネルを提供する。高い周波数帯域102は、それぞれが250kb/sであり、且つ、2.44GHzの周波数を中心とする16個のチャネルを提供する。これらの帯域のうちのいずれが使用されるかは、当該地域の規制要件によって左右されることになる。
【0028】
このPHYに対するアクセスは、図1に参照符号105によって示されているMAC(Medium Access Control)サブレイヤによって提供される。従って、この上位には、且つ、WPAN100の外部には、他のネットワークからのWPANに対するアクセスを許容するLLC(Link Layer Control)が提供されており、これは、IEEE802.2規格によるものであってもよく、或いは、他のタイプのものであってもよい。最後に、LLCより上方の上位レイヤ109は、ネットワークの構成、操作、及びメッセージのルーティングを提供するためのネットワークレイヤと、意図されている全体的な機能を提供するアプリケーションレイヤと、を含む。
【0029】
MACサブレイヤの一つのタスクは、ネットワークトポロジーを制御することにある。スター及びピアツーピアが、通信ネットワーク内における二つの既知のトポロジーであり、且つ、いずれも、IEEE802.15.4において提供されている。いずれの場合にも、トポロジーは、装置とコーディネータという二つの基本的な種類のネットワークノードを区別している。図3に示されているように、スタートポロジーにおいては、いくつかの装置11が、中央コーディネータ10と直接通信しており、ピアツーピア構成においては、装置11Aによるコミュニケータとの通信は、中継装置として機能する中間の装置11B及び11Cにより、一つ又は複数のホップに沿って実行される。コーディネータは、上位レイヤへのアクセスポイントとして機能しており、WSNの場合には、コーディネータは、センサによって収集されたデータ用のシンクとして機能する。それぞれの装置の通信レンジを相当に限定することができる場合には(数メートル)、ピアツーピアトポロジーによれば、相対的に大きなエリアをカバー可能である。従って、ピアツーピアは、通常、いくつかのネットワーク装置が、コーディネータとの直接的な無線通信のレンジ外にある場合に、使用可能である。トポロジーは、動的であってよく、装置のネットワークへの追加又は除去に伴って変化する。
【0030】
MBANの場合には、例えば、コーディネータがそれぞれの患者サイト(病院のベッドなど)に提供され、これにより、一人の患者上の装置と信号を交換する場合には、スターネットワークが適当であろう。ピアツーピアは、複数の患者に対してサービスするべく一つのコーディネータが提供される場合に、より適切なトポロジーであろう(コーディネータは、病室内の固定された地点に配置可能であろう)。従って、装置11は、一般に、移動型となり、コーディネータは、移動型又は固定型であってよい。又、ピアツーピアネットワークは、ネットワークを迅速にセットアップ又は変更したり、或いは、ネットワークの自己組織化及び自己回復の実現が必要とされる高速で変化する環境に好適であろう。自己回復は、例えば、既存のコーディネータに障害が発生するか又は既存のコーディネータがネットワークを離脱した場合に、新しいコーディネータを確立するステップを包含可能である。
【0031】
病院などの同一の場所に、多数のスター及び/又はピアツーピアネットワークをセットアップ可能であり、そのそれぞれが、独自のコーディネータを有する。この場合には、相互干渉を回避すると共にデータの共有又は照合を許容するべく、個々のコーディネータが協働する必要がある。IEEE802.15.4においては、このようなネットワークをクラスタと呼んでおり、且つ、クラスタ用の全体的なコーディネータを確立するステップと、クラスタを分割及びマージするステップと、が提供されている。
【0032】
WPAN内のノードは、様々な能力のユニットによって構成可能である。一般に、コーディネータの役割は、なんらかの処理パワーを有する相対的に高機能な装置と、複数の供給源からの送信を同時に処理する能力を有するトランシーバと、を必要とすることになる。そして、この結果、電力の十分な供給を必要とすることになる(場合によっては、商用電源供給型であってよい)。一方、ネットワーク内の他の装置は、相対的に限られた処理能力を有し、電池電力のみへアクセス可能なものでよく、且つ、場合によっては、リレーホップとして機能することができないほどに単純なものであってもよい。非常にわずかな電力しか利用できない装置は、大部分の時間にわたってシャットダウン可能であり、且つ、例えば、センサデータを別のノードに送信する際にのみ、ときどき、「ウェークアップ」してもよい。従って、IEEE802.15.4規格は、「フル機能」装置と「部分的機能」装置を区別している。電力の利用可能性は、センサが、身体内に埋植可能であり、且つ、従って、大きな又は充電式の電池を具備することができないMBANの場合に、特有の課題である。
【0033】
IEEE802.15.4において想定されている二つのタイプのWAPANは、ビーコン対応型及びビーコン非対応型である。
【0034】
ビーコン対応型のネットワークにおいては、コーディネータが、ビーコンを定期的に送信し、且つ、装置が、そのビーコンを定期的に聴取して、ネットワークに対して同期化すると共にチャネルにアクセスする。チャネルアクセスは、図4に示されているスーパーフレーム構造による「スーパーフレーム」内において順番に送信される「フレーム」を単位としており、これは、コーディネータによって規定される。それぞれのスーパーフレーム30は、アクティブと非アクティブという二つの部分から構成されている。アクティブ部分は、コンテンションアクセス期間CAP36と、これに後続する、クオリティオブサービス要件を有するアプリケーション用の保証されたアクセスのための任意選択のコンテンションフリー期間CFP37と、に分割される。
【0035】
図4の垂直分割によって示されているように、スーパーフレームは、それぞれがコーディネータからの又は装置からのデータのフレームを搬送する能力を有する16個の等しく離隔したタイムスロットに分割される。したがって、一つのコーディネータと関連付けられた装置を考慮すれば、一つの装置のみが、スーパーフレーム内のそれぞれの連続したタイムスロットにおいて一つの時点においてコーディネータとの通信状態にあってよい。まず、コーディネータによって送信されたビーコンフレーム(以下を参照されたい)について、スロット31が到来する。この後に、いくつかのスロット32がCAP内において供給され、これにより、既知のCSMA-CAアルゴリズムに準拠して、コンテンション方式により、装置との間のデータ送信が許容される。要すれば、CSMA-CAにおいては、装置は、CAP内において送信を所望するたびに、ランダムな期間にわたって待機する。ランダムなバックオフに続いて、チャネルがアイドル状態にあると判明した場合に、装置は、そのデータを送信する。ランダムなバックオフに続いて、チャネルがビジー状態にあると判明した場合には、装置は、チャネルに再度アクセスするべく試行する前に、別のランダムな期間にわたって待機する。
【0036】
次に、CFPの一つ又は複数の保証タイムスロットGTS33が後続し、且つ、図示のように、これらのそれぞれは、複数の基本タイムスロットにわたって延長可能である。CFPという用語によって表されているように、これらのGTSは、ネットワーク装置によって争奪されることはなく、むしろ、TDMAに基づいたネットワーク装置による排他的な使用のために、それぞれがコーディネータによって予約されている。但し、GTSの割当は、スーパーフレームごとに、変化可能である。非アクティブ期間の満了の後に、コーディネータが他のビーコンフレーム31を送信することにより、次のスーパーフレームがマーキングされる。装置は、スーパーフレームの非アクティブ期間34において、スリープ状態に移行可能である。したがって、非アクティブ期間34の長さを拡張することにより、装置の電池電力を可能な限り節約可能である。
【0037】
ビーコン非対応型のネットワークにおいては、コーディネータは、(例えば、ネットワークディスカバリのために)要求されない限り、同期化のためにビーコンを送信する必要はない。チャネルアクセスは、スーパーフレーム構造によって制限されてはおらず、且つ、装置は、非同期であって、CSMA-CAによってすべてのデータ転送が実行される。これらの装置は、送信するデータを具備しない装置が大部分の時間にわたってアイドル状態において留まることが可能であると共に、データが到来した際に受信装置がウェークアップ状態にあることを保証するべく、コーディネータがウェークアッププリアンブルをそれぞれのデータフレームの前に付加するWiseMAC(sensor-MAC)などの特定のプロトコルに従って、その独自のスリープパターンを踏襲可能である。
【0038】
MBANアプリケーションの場合には、コーディネータは、監視対象の一つ又は複数の身体の外部に位置している。これは、PDA、携帯電話機、ベッドサイドのモニタステーション、或いは、場合によっては、一時的にコーディネータとして機能する十分に高機能なセンサであってよい。前述のように、ビーコン対応型ネットワーク内のコーディネータは、ネットワーク装置に対する同期化及びチャネルアクセスの提供を担当している。又、スーパーフレームの開始及び終了も、コーディネータによって規定される。コーディネータは、他のネットワークに対する潜在的な通信と、例えば、充電済みの電池の容易な交換による十分な電源に対するアクセスと、という二つの主要な機能を具備している。
【0039】
又、おそらくはいくつかのコーディネータを含むネットワークの全体的な監督のために中央治療及び監視ユニット(以下、「中央モニタ」と呼称する)を提供することも可能である。これは、複数の患者から非常事態データの連続した又は不定期のストリームを受信する能力を有する監視装置を具備した部屋の形態を有することができる。通常、中央ユニットには、患者のデータを継続的に観察及び監視する看護師又は医療専門家が待機することになる。彼らは、患者の状態の変化に応答して処置を講じることになる。中央治療及び監視ユニットは、一つの又はそれぞれのコーディネータに無線接続することも可能であり(この場合には、そのユニットは、MBANの一部と見なすことが可能であり)、或いは、それぞれのコーディネータに対する有線接続することも可能である(したがって、この場合には、そのユニットは、MBANの外部に位置すると見なすことができる)。
【0040】
図5〜図8は、IEEE802.15.4ネットワーク内における装置とコーディネータの間のデータ転送を示している。IEEE802.15.4には、以下のような3つの基本的な転送タイプが規定されている。
(i)装置(送信器)がそのデータを送信する先である受信器としてのコーディネータに対するデータ転送―スター及びピアツーピアトポロジーの両方において使用される。
(ii)装置がデータを受信する、送信器としてのコーディネータからのデータ転送―スター及びピアツーピアトポロジーの両方において使用される。
(iii)二つのピア間におけるデータ転送―ピアツーピアネットワークにおいてのみ使用される。
【0041】
図5及び図6は、それぞれ、ビーコン対応型及びビーコン非対応型の場合の両方における装置(ネットワーク装置11)とコーディネータ(コーディネータ10)からの転送を示す。相違点は、ビーコン対応型の場合には、装置1は、CFPにおいてCSMA-CAを使用して、又はCAPにおいてGTSを使用して、データ(データフレーム42)を送信する前に、コーディネータからビーコンフレーム41を受信するべく待機しなければならず、ビーコン非対応型の場合には、通常、ビーコンフレームが存在せず、且つ、装置11は、CSMA-CAを使用してデータフレーム42を自由に送信するという点にある。いずれの場合にも、コーディネータは、任意選択のアクノリッジメントフレーム又はACK43を送信することにより、データの正常な受信をアクノリッジする。これらの異なるタイプのフレームについては、更に詳細に後述する。
【0042】
受信器がなんらかの理由から受信したデータフレームを処理することができない場合には、そのメッセージはアクノリッジされない。送信器が所定の期間の後にアクノリッジメントを受信しない場合には、送信器は、その送信が不成功であったものと仮定し、且つ、フレーム送信を再試行する。何回かの再試行の後に、アクノリッジメントが依然として受信されない場合には、送信器は、そのトランザクションを終了させるか又は再度試行するべく選択可能である。アクノリッジメントが不要である際には、送信器は、送信が成功したものと仮定する。
【0043】
図7及び図8は、コーディネータ10から装置11へのデータ転送を示している。コーディネータがビーコン対応型WPAN(図7)においてデータを装置に転送すべく所望する際には、コーディネータは、データメッセージが保留中であるという旨をビーコンフレーム41内において通知する。装置は、定期的にビーコンフレームを聴取し、且つ、メッセージが保留中である場合には、データ要求(MACコマンド)44を送信し、CSMA-CAによってデータを要求する。コーディネータ10は、アクノリッジメントフレーム43を送信することにより、データ要求の正常な受信をアクノリッジする。次いで、保留中のデータフレーム42が、スロット型のCSMA-CAを使用して、或いは、可能な場合には、アクノリッジメントの直後に、送信される。装置11は、任意選択のアクノリッジメントフレーム43を送信することにより、データの正常な受信をアクノリッジ可能である。この段階で、トランザクションが完了する。データトランザクションが正常に完了した際に、そのメッセージは、ビーコン内の保留メッセージのリストから除去される。
【0044】
ビーコン非対応型の場合には、特定の装置11用の準備が整ったデータを具備するコーディネータ10は、コンテンションに基づいて送信される関係する装置からのデータ要求44を待たなければならない。この要求を受信した際に、コーディネータは、アクノリッジメントフレーム43を送信する(これは、該当する場合には、準備されたデータが存在しないことを通知するべく使用することも可能である)。次いで、データフレーム42が送信され、これに応答し、装置11は、返信として他のアクノリッジメントフレーム43を送信可能である。
【0045】
わかりやすくするべく、以上の手順においては、装置とコーディネータの間のデータ転送のうちの前述のケース(i)及び(ii)のみが考慮されているが、ピアツーピアネットワークにおいては、前述のように、データ転送は、一般に、一つ又は複数の中間ノードを伴うメカニズム(iii)を介して実行されることになり、その結果、関係する衝突及び遅延のリスクが増大する。
【0046】
図5〜図8に示されているように、IEEE802.15.4ネットワーク内における通信には、以下のように4つの異なるタイプのフレームが関係している。
−ビーコンを送信するべくコーディネータによって使用されるビーコンフレーム41
―すべてのデータ転送用に使用されるデータフレーム42
−正常なフレームの受信を確認するべく使用されるアクノリッジメントフレーム43
−データ要求などのすべてのMACピアエンティティの制御転送を処理するべく使用されるMACコマンドフレーム44
【0047】
4つのフレームタイプのそれぞれの構造は、非常に類似しており、且つ、例として、データフレーム42が図9に示されている。この図において、二つの水平のバーは、MACサブレイヤと、PHYレイヤと、をそれぞれ表している。時間は左から右に進行し、且つ、フレームのそれぞれの連続したフィールドの時間長が、関係するフィールドの上方に示されている(単位:オクテット)。すべてのフレームは、特定順序のフィールドのシーケンスから構成されており、これらは、左から右に、PHYによって送信される順序において示されており、最も左側のビットが、時間的に最初に送信される。それぞれのフィールド内のビットには、0(最も左側であり、且つ、最下位である)からk-1(最も右側であり、且つ、最上位である)までが付番されており、この場合に、フィールドの長さは、kビットである。
【0048】
データフレーム42を介して送信されるデータは、上位レイヤに由来している。データペイロードは、MACサブレイヤに伝達され、且つ、MACサービスデータユニット(MSDU)と呼称される。MACペイロードには、先頭にMACヘッダMHRが付加され、且つ、末尾にMACフッタMFRが付加される。MHRは、フレームコントロールフィールド50(以下を参照されたい)、データシーケンスナンバー(DSN)、アドレス指定フィールド、及び任意選択の補助セキュリティヘッダを含む。MFRは、16ビットのフレームチェックシーケンスFCSから構成されている。MHR、MACペイロード、及びMFRが、一つのMACデータフレーム(即ち、MPDU)を形成する。MPDUは、PHYサービスデータユニットPSDUとしてPHYに伝達され、これが、PHYペイロードになる。PHYペイロードには、先頭に、プリアンブルシーケンス及びフレーム開始デリミタSFDを含む同期化ヘッダSHRと、オクテットを単位とするPHYペイロードの長さを含むPHYヘッダPHRと、が付加される。プリアンブルシーケンス及びデータSFDにより、受信器は、シンボル同期化を実現可能である。SHR、PHR、及びPHYペイロードが、一つのPHYパケット(PHYプロトコルデータユニットPPDU)を形成する。
【0049】
ビーコンフレーム41、アクノリッジメントフレーム43、及びMACコマンドフレーム44は、MACペイロードがそれぞれのケースにおいて異なる機能を具備し、アクノリッジメントフレームがMACペイロードを具備していないことを除いて、類似の構造を具備している。又、ビーコンフレーム41、アクノリッジメントフレーム43、及びMACコマンドフレーム44は、MACサブレイヤに由来しており、上位レイヤの関与を伴っていない。
【0050】
図10Aには、それぞれのタイプのフレーム内において使用されるフレームコントロールフィールド50が更に詳細に示されている。これは、図示のように、異なる目的のためのサブフィールドに割り当てられた16ビットから構成されている。具体的には、フィールドの最初の3ビットは、ビーコンフレーム41、データフレーム42、アクノリッジメントフレーム43、又はMACコマンドフレーム44というフレームタイプ51を表している。フレームタイプを表記する方法が図10Bに示されている。フレームタイプビット51に後続するのが、単一ビットのセキュリティ有効化サブフィールド52であり、これは、セキュリティがMACサブレイヤによって有効化されているかどうかを表している。これに後続しているのが、フレームペンディングサブフィールド53であり、これは、送信器が受信器用の更なるデータを具備しているかどうかを通知する。次が、アクノリッジメントが受信器に対して要求されているかどうかを通知するアクノリッジメント要求サブフィールド54である。この後に、更なるいくつかのサブフィールド55〜59が後続しており、これらは、アドレス指定のために使用されるか、又は現在のIEEE802.15.4の仕様においては予備とされている。
【0051】
前述のように、図10Bは、フレームタイプサブフィールド51の可能なビット値の表であり、IEEE802.15.4の仕様においては、値100及び101が使用されていないことを示している。
【0052】
MACコマンドフレーム44は、図11Aに示されているように、構造において極めて類似している。この場合には、ペイロードは、MACコマンドフレームによって表されるコマンドのタイプを識別するべく、コマンドフレーム識別子440を含む。IEEE802.15.4においては、図11Bの表に示されているように、様々なタイプのコマンドが規定されており、この図には、識別子440の可能な値が示されており、いくつかの値は、将来使用されるように予備となっている。
【0053】
本発明の背景の概説を以上において終了し、以下、図12〜図21を参照し、いくつかの実施例について説明することとする。
【0054】
本発明は、例えば、少なくとも一人の患者が、その患者の身体上に又はその周辺に配設されるか又はその内部に埋植されるセンサのMBANを介して監視されている状況に対応するものである(「MBAN」及び「ネットワーク」という用語は、文脈に応じて、一人の患者のために提供されたそれぞれのコーディネータを有する複数のセンサに対して、或いは、集合的に複数の患者の複数のセンサ/一つ又は複数のコーディネータのすべてに対して、適用可能である)。センサのうちの少なくともいくつかは、患者の生命を脅かす状況を通知可能な心拍数などの一つ又は複数のパラメータの検知に関与しているものと仮定する。本発明の実施例は、このような生命を脅かす状況において患者をサポートするための非常事態アクノリッジメント(即ち、ACK)メカニズムを含むプロトコルを提供することにより、非常事態の状態を宣言すると共に非常事態の状態を解除する方法を提供する。検知されたデータ又は計測値を処理又は分析するためのネットワークの能力に応じて、3つの異なるプロトコル又はトリガタイプが提案される。
【0055】
以下の図において、「非常事態にある」とは、臨界レベルに到達した一つ又は複数のなんらかの検知されたパラメータに起因して、患者が、その生命が脅かされる状況にあることを意味しており、「ACK」とは、前述のアクノリッジメントフレーム43に対応しており、且つ、「非常事態手順」とは、非常事態の宣言に応答して実行可能な任意のステップを意味している。「非常事態動作状態」とは、非常事態にあるネットワーク装置を動作させるなんらかの方式のことであり、「正常動作状態」とは、ネットワーク装置が非常事態にはない際に適用される状態のことである。
【0056】
図12及び図13にそのフローチャートが示されている第1のプロトコルにおいては、センサ(ネットワーク装置)自体が、非常事態の状態を宣言するかどうか及び非常事態の状態を解除するかどうかを判定する。まず、図12を参照し、非常事態を宣言するプロセスについて説明する。センサは、「正常(非−非常事態)」状態から始まるものと仮定する。この正常な状態は、通常、センサが、患者に関係した特定のパラメータ(以下、「生命パラメータ」と呼ばれる)を特定の時間間隔において計測するステップを伴うことになり、この時間間隔は、内部的にセンサによって設定することも可能であり、外部から指示を受けることも可能であり、又はコーディネータによって又はこれを通じて指示を受けることも可能であろう。わかりやすくするべく、一つのセンサが「非常事態にある」ケースについて検討することになるが、説明対象のプロトコルは、(同一の人物を監視しているすべてのセンサなどの)センサのグループに適用することも可能である。
【0057】
非常事態の状態の宣言、トリガタイプ1(図12)
S11:既定の時間間隔において、ネットワーク装置又はセンサ11は、生命パラメータを計測する。センサは、検知された値をコーディネータに(スタートポロジーにおいては、直接的に、或いは、ピアツーピアネットワークの場合には、一つ又は複数のホップを介して)無線送信可能である。但し、非−非常事態の状態におけるすべての(又は、何れかの)検知された値の送信は、必須ではない。いずれの場合にも、検知された値は、少なくとも一時的にセンサ内に保存されることになる。
【0058】
S12:ネットワーク装置又はセンサは、その独自の能力を使用することにより、患者が非常事態にあるかどうかを見出す。更に正確には、状態が非−非常事態から非常事態に変化したかどうかが判定される。例えば、ネットワーク装置又はセンサは、患者の心拍数が閾値レートを超過したかどうかをチェックする。したがって、通常は、センサは、閾値を保持するためのなんらかの形態のメモリを具備することになる。関係する生命パラメータに応じて、複数の閾値レベルを使用し、範囲を設定可能であろう。例えば、血圧センサは、例えば、検知された値が、160/120と80/60(mmHgを単位する収縮/拡張圧力)などの上部及び下部閾値によって境界が定められた許容可能な範囲を逸脱した時点において非常事態を判定可能であろう。
【0059】
S13:ネットワーク装置又はセンサは、非常事態の状態のインジケータをコーディネータ10に送信する。これを表現する方法については、後述する。ここでは、インジケータは、ネットワークの構成に応じて、直接的な送信を通じて又は中継装置として使用される他の装置を介して送信可能な特殊な種類のフレームとして送信されるという点に留意されたい。後者の場合には、インジケータに含まれた宛先IDを使用し、意図された宛先を示すことができる。
【0060】
S14:ネットワーク装置又はセンサ11は、コーディネータ10からのアクノリッジメント(ACK)の聴取又は検出を開始する。センサが非常事態の状態の宣言を送信するだけでなく、コーディネータ又は更に上位の権限者が適切な処置を講じることができるように、その宣言が受信されたことを確認することが重要である。
【0061】
S15:コーディネータ10は、ACKをネットワーク装置11に返送する。IEEE802.15.4などのフレームに基づいたシステムにおいては、アクノリッジメントフレームは、通常、この目的に使用されており、且つ、IEEE802.15.6においても、このフレームタイプが規定されることになると予想される。
【0062】
S16:いくつかの非常事態動作が後続することになる。例えば、センサ11は、生命パラメータの計測の頻度及び/又はメッセージをコーディネータ10に送信する頻度を増大させることがあり、これは、センサがそれまで実行していなかった場合にも、その検知された読取値のコーディネータに対する送信を開始するステップを含められる。そして、コーディネータは、例えば、関係するセンサのためにGTSを提供することにより、頻度の増大を可能にする。換言すれば、コーディネータは、センサに対する既定のクオリティオブサービスの提供を開始してもよい。コーディネータは、(図示されてはいない)中央監視ステーションに対して警告するなどの更なる処置を講じることも可能であり、或いは、(同一のネットワークが複数の患者を監視している場合には)リソースを同一の患者の他のセンサに振り向けることにより、その患者の他の生命パラメータの更に高度な精査を可能にすることも可能である。これは、コーディネータが、非常事態の状態について、MBAN内のすべての他のセンサに対して、又は懸念のある生命パラメータに関連した関係するセンサのグループに対して、通知することを含んでもよい。他の非常事態動作は、コーディネータが、可聴アラームやページャメッセージなどのなんらかの形態の警告をシステムの外部に対して送信することを含むことになろう。
【0063】
非常事態動作は、関係するセンサの電力消費量を増大させると共にコーディネータによって割り当てられた帯域幅の他のセンサからの転用をもたらす可能性が高く、したがって、非常事態の状態は、無制限に長引かせるべきではないことに留意されたい(以下を参照されたい)。
【0064】
又、上述のプロトコルにおいては、検知された値のセンサによる送信は、常に必要とされるわけではなく、閾値に到達した際にのみ、センサが(検知された値などの)情報(又は、おそらくは、非常事態の状態のインジケータのみ)を送信することで十分であることに留意されたい。この代わりに、又はこれに加えて、センサは、いくつかのセンサ読取値を保存しておき、そのすべてを一度に送信することも可能である。これらの方法によれば、おそらくは不必要な電力消費と、ネットワーク内における日常的なセンサデータの送信と、を最小限に低減可能である。
【0065】
検知された生命パラメータが非臨界レベルに戻った場合には、センサは、この事実を使用して非常事態の状態を解除可能であり、これにより、コーディネータは、高優先順位を他のセンサ及びタスクに付与可能である。このための手順が図13に示されている。関係するセンサが、現在、非常事態の状態にあり、これには、例えば、相対的に短い時間間隔において生命パラメータを検知することと、頻繁にメッセージをコーディネータに送信することとが含まれるものと仮定する。
【0066】
非常事態の解除の宣言、トリガタイプ1(図13)
S21:ネットワーク装置又はセンサ11は、生命パラメータを計測する。検知された値は、前述のように、通常、ネットワークに直接送信されることになる。これは、コーディネータ及び任意の外部エンティティが患者の非常事態の状況を監視できるようにするべく、非常事態の状態においては、重要であろう。
【0067】
S22:ネットワーク装置又はセンサは、その独自の能力を使用することにより、患者が依然として非常事態にあるかどうかを見出す。更に正確には、状態が非常事態から非−非常事態に変化したかどうか(非常事態の解除)が判定される。例えば、検知されたパラメータが、閾値レベルを下回るか又は許容可能な範囲内にある場合には、(少なくとも、検知されたパラメータが関係する限りにおいては)、患者は、もはや危険な状態にはないと仮定できる。例示を目的として、脈拍センサの場合には、例えば、50〜120(分当たりの脈拍数)の範囲内の脈拍値は、危険な状態ではないと解釈してもよいであろう。したがって、それまでこのレンジを上回っていた患者の脈拍が、最新のセンサ読取値において、120未満に低下していることが判明した場合には、センサによる非−非常事態の判定がもたらされることになろう。
【0068】
S23:もはや非常事態にはない場合には、ネットワーク装置又はセンサ11は、非常事態の状態の解除のインジケータをコーディネータ10に送信する。当然のことながら、この送信は、センサからコーディネータへの直接的な送信である必要はない。ピアツーピアトポロジーにおいては、センサは、その最も近い近隣の装置に対してのみ送信し、メッセージは、一連のホップを介してコーディネータに到達することになろう。
【0069】
S24:ネットワーク装置又はセンサは、コーディネータ10からのACKの聴取を開始する。
【0070】
S25:コーディネータは、ACKをネットワーク装置に返送する。
【0071】
S26:非常事態を解除するべく、いくつかの動作が後続することになる。例えば、センサは、そのセンサ読取値及び/又はコーディネータとの間の通信の頻度を低減することにより、おそらくは、更に多くの時間にわたってシャットダウンして電力を節約することも可能であり、或いは、センサは、それぞれのセンサ読取値の直接的な送信を一時中断することにより、おそらくは、代わりに定期的に送信するべく、それらを保存しておくことも可能である。通常、センサは、図12のフローチャートの開始時点において仮定されていた非−非常事態の状態に戻ることになる。尚、コーディネータは、それまでセンサに割り当てられていたGTSを他の目的のために割り当てしなおすことができる。又、コーディネータは、メッセージを外部に送信することにより、非常事態が終了したことを更に上位の権限者(人間又は装置)に通知することも可能であろう。
【0072】
第2のプロトコル又はトリガタイプにおいては、センサ自体は、検知されたパラメータに関連して非常事態の状況が存在するかどうかを判定することができないものと仮定している。この原因は、多くの場合に、これを実行するには不十分な処理パワーしかセンサが具備していないということになろう。或いは、検知されたパラメータ自体が、非常事態を宣言するには不十分であり、且つ、他の要因をも考慮しなければならないというものであろう。その相対的に大きな処理パワーと、他の供給源から情報を入手する能力とに起因して、コーディネータ10が、これを実行するための位置を占めることになろう。
【0073】
このような他の要因の一例は、時間であろう。検知された生命パラメータが、短時間にわたって又は離散した読取値について、閾値を超過することは、許容可能であろうが、多数のこのような読取値が特定の時間内に存在する場合には、おそらくは、非常事態の状態を示すことになろう。一例として、患者の脈拍数は、なんらかの外部的な刺激に起因して、瞬間的に、臨界レベルに上昇し、再度迅速に降下することがあり、これは、非常事態を示すことにはならないであろう。通常、コーディネータは、ストレージと、このような判定を実行するための計数能力と、を具備することになろう。
【0074】
他の要因の他の例は、同一の患者の他の生命パラメータを検出するべく使用されているセンサからのセンサデータ又は通知となろう。独立した一つのパラメータだけでは、最終的な非常事態の判定が不可能である場合にも、他のセンサからの情報と組み合わせられた際には、実行可能となろう。
【0075】
このプロセスは、先程概説したものに類似しているが、図14及び図15に示されているように、いくつかの相違点が存在する。この場合にも、第1のケース(図14)においては、初期状態は、非−非常事態であり、且つ、第2のケース(図15)は、非常事態の状態において始まるものと仮定する。
【0076】
非常事態の宣言、トリガタイプ2(図14)
S31:ネットワーク装置又はセンサ11は、以前と同様に、生命パラメータを計測する。
【0077】
S32:ネットワーク装置は、生命パラメータの一つ又は複数の検知された値をコーディネータに送信する。尚、説明対象のプロセスのいずれにおいても、これは、検知された値の明示的な通知によるものであってよいと共に/又は、値の変化の送信によるものであってよく、或いは、位置している範囲などの値のなんらかの通知の送信によるものであってもよいであろう。又、前述のように、非−非常事態の状態においては、すべての検知された値を送信する必要はない。
【0078】
S33:コーディネータは、情報を分析し、患者が「非常事態にある」かどうかを見出す。このステップは、独立して検知された値の分析を含んでもよく、或いは、前述のように、他の要因を考慮してもよい。このような要因は、同一の患者において他のセンサによって検知された値又は検知されたパラメータが危険な状態となってからの時間を含んでもよい。
【0079】
S34:非常事態が存在している場合に、コーディネータ10は、非常事態状態の確認をネットワーク装置に送信する。この動作は、S31の特定のネットワーク装置に対する確認の送信に限定する必要はなく、ネットワーク内のすべての装置に対して、或いは、同一の生命パラメータの責任を担う装置のグループに対して、実行することも可能であろう。
【0080】
S35:コーディネータは、この確認を受信したという旨のセンサからのACKの聴取又は検出を開始する。
【0081】
S36:ネットワーク装置は、ACKをコーディネータに返送する。
【0082】
S37:以前のものと同様に、なんらかの非常事態動作が後続することになる。例えば、コーディネータは、センサ読取値を取得すると共に/又はその読取値の通知を非−非常事態の状態におけるよりも高頻度で送信するように、センサに対して指示する。単純な構成においては、ステップS34におけるセンサによる非常事態の状態の受信は、別個の指示を必要とせずにセンサにおける必要な変化を起動するのに十分であろう。但し、一般的には、S34における非常事態の通知は、ステップS37におけるコーディネータからのコントロールメッセージによって後続される必要があり、このメッセージは、おそらくは、その送信のための新しいリソース割当についてセンサに通知するものである。
【0083】
非常事態の解除の宣言、トリガタイプ2(図15)
S41:ネットワーク装置又はセンサは、生命パラメータを計測する。
【0084】
S42:ネットワーク装置は、生命パラメータをコーディネータに送信する。
【0085】
S43:コーディネータは、情報を分析し、患者がもはや非常事態にないかどうか(即ち、非常事態の状態が終了し、且つ、非−非常事態の状態が始まっているかどうか)を見出す。これは、基本的に、ステップS33と逆のプロセスであるが、関係する任意の閾値又は期間は同一である必要はない。例えば、非−非常事態を判定するべく使用される期間は、危機的な状態が本当に終了したことを確認するべく、非常事態を宣言するためのものよりも格段に長いものであってよいであろう。
【0086】
S44:もはや非常事態にない場合には、コーディネータは、ネットワーク装置に非常事態状態の確認を送信する。
【0087】
S45:コーディネータは、ACKの聴取又は検出を開始する。
【0088】
S46:ネットワーク装置は、ACKをコーディネータに返送する。
【0089】
S47:非常事態を解除するべく、なんからの適切な動作が後続することになり、例えば、センサは、この確認を、エネルギーを節約する相対的に活動性の低いスリープ/ウェークアップパターンへの切り替え命令として解釈可能である。
【0090】
以上の内容は、非常事態の解除を宣言するための唯一の可能な方法ではない。例えば、病院などの同一の場所において多数の非常事態が宣言される状況においては、非常事態の状態を無制限に維持することは、ネットワークの輻輳と医療スタッフの過負荷の両方の観点において、有用ではないであろう。したがって、既定の時間が経過した後に非常事態を解除するべく対策を実施可能であろう。そのような対策は、検知されたパラメータに応じて、選択的に適用可能であり、例えば、患者は、非常に高い血圧においては、ほとんど無制限に生存可能であり、したがって、必要に応じて、非常事態を解除することが可能であるが、血圧が非常に低い場合には、解除は不可能である。
【0091】
以上の二つのプロトコルは、センサ及びコーディネータのみを伴っている。但し、MBANは、前述のように、いくつかのコーディネータがなんらかの形態の中央モニタに対して報告する方式によって実装することも可能であり、これは、自動なものであってもよく、或いは、人間の監督下におけるものであってもよい。例えば、このような中央モニタは、病院内において何人かの患者を管理している病室担当看護師の机上に配置可能であろう。このシナリオにおいては、中央モニタは、非常事態が存在するかどうかの判定を以下のように実行可能である。
【0092】
非常事態の状態の宣言、トリガタイプ3(図16)
S51:ネットワーク装置又はセンサ11は、非−非常事態の状態において始まるものと仮定されおり、生命パラメータを計測する。
【0093】
S52:ネットワーク装置は、検知された生命パラメータデータをなんらかの形態においてコーディネータ10に送信する。
【0094】
S53:コーディネータ10は、なんらかの手段を通じて、生命パラメータを中央監視ユニット12に転送する。この場合に、送信手段は、MBAN自体でなくてもよく、携帯電話ネットワークなどの別個の無線通信ネットワーク又は病院内の有線LANなどのなんらかの形態の有線接続であってもよいことに留意されたい。したがって、中央モニタは、必ずしも、MBANの一部として見なされるものではない。この場合にも、送信されるデータは、検知された値の直接的な送信である必要はなく、特定の閾値又は範囲への到達の通知であってもよいであろう。検知された値をコーディネータが中央モニタに通知する方法は、センサがコーディネータに送信するために使用されるものと同一である必要はない。
【0095】
S54:中央監視システム12は、情報を分析し、患者が非常事態にあるかどうか(非常事態に移行しているかどうか)を見出す。この場合に、判定は、(更に重篤な状態にあり、且つ、したがって、更に周到な注意を払うに値する)監視対象の任意の他の患者の状況などのその患者とは関係のない要因を伴うものであってよい。最終的な判断は、人間が介入して下すことも可能であり、或いは、自動的なものであってもよいであろう。
【0096】
S55:非常事態の状態が判定された場合には、中央監視システム12は、通常は、ステップS53と同一の送信ルートにより、非常事態状態の確認をコーディネータに送信する。
【0097】
S56:S55における確認に応答して、コーディネータも、非常事態状態の確認をネットワーク装置に送信する。
【0098】
S57:コーディネータは、ACKの聴取又は検出を開始する。
【0099】
S58:ネットワーク装置は、ACKをコーディネータに返送する。
【0100】
S59:いくつかの非常事態動作が後続することになる(これらの動作は、ステップS56及びステップS57の完了を待つ必要はない)。患者の様子を見るように促すべく、例えば、医療スタッフメンバのワークステーションにおいてアラームを鳴動させることができよう。中央モニタは、非常事態の状態について、存在する場合には、更なるコーディネータを含む他のネットワークに通知可能であり、且つ/又は、その動作を起動可能であろう。
【0101】
同様に、中央モニタは、コーディネータを通して中継又はフィルタリングされた検知された情報と、自身が認知している任意の他の要因と、に基づいて、非常事態を解除するための判定を下すことができる。
【0102】
非常事態の状態の解除の宣言、トリガタイプ3(図17)
S61:非常事態の状態において始まり、ネットワーク装置又はセンサ11は、生命パラメータを計測する。
【0103】
S62:ネットワーク装置は、生命パラメータをコーディネータ10に送信する。
【0104】
S63:コーディネータは、S53におけると同様に、なんらかのネットワークを通じて、生命パラメータを中央監視ユニットに転送する。
【0105】
S64:中央監視システム12は、情報を分析し、患者がもはや非常事態にないかどうか、即ち、既存の非常事態の状態が終了したかどうかを見出す。
【0106】
S65:非常事態にない場合には、中央監視システムは、非常事態状態の確認をコーディネータに送信する。
【0107】
S66:応答して、コーディネータも、非常事態状態の確認をネットワーク装置に送信する。
【0108】
S67:コーディネータは、ACKの聴取又は検出を開始する。
【0109】
S68:ネットワーク装置は、ACKをコーディネータに返送する。
【0110】
S69:いくつかの動作が後続することになり、ネットワーク装置は、以前と同様に、その送信及び/又はスリープ/ウェークアップパターンを変更可能であり、且つ、例えば、コーディネータは、ネットワーク装置が非−非常事態の状態に戻ったことを中央モニタ12に通知可能である。
【0111】
ステップの順序は、フローチャートに示されているものを厳格に踏襲する必要はないことに留意されたい。例えば、図12において、コーディネータは、ACKを送信するステップを、GTS(又は、拡張型GTS)の割り当て及びこの事実のセンサへの通知と組み合わせることができよう。同様に、センサ11又はコーディネータ10は、自身が非常事態の状態の変化について認知したら、他方の側からのACKを待つことなしに、即座に、非常事態(又は、非常事態解除)手順の実行を開始可能であろう。
【0112】
必ずしも、「非常事態」及び「非−非常事態」が唯一の二つの可能な状態であるということではない。例えば、「異常」などの第3の状態を導入し、患者(又は、更に正確には、特定の検知された生命パラメータの値)が、まだ非常事態の状態には至っていないが、懸念の原因となっていることを通知可能であろう。これは、前述の手順を拡張することによって明示的に宣言することも可能であり、或いは、直ぐに非−非常事態に戻らずに、むしろ、検知された値が正常な読取値に戻る時点まで待機することにより、黙示的に規定することも可能であろう。換言すれば、それぞれ、非常事態又は非−非常事態の状態を判定するべく使用される任意の一つ又は複数の閾値は、同一である必要はない。或いは、後程更に詳述するように、状況の深刻さに応じて、非常事態の程度を、一連の段階にわたって、上昇又は降下させることも可能であろう。
【0113】
図12〜図17のフローチャートは、わかりやすくするべく、単一のセンサのみを考慮している。但し、関係する生命パラメータに応じて、複数のセンサを同一の患者上に提供するか又はその内部に埋植することにより、例えば、体温などの同一の生命パラメータを監視可能であろう。このような場合には、当然のことながら、単一のセンサとの関係において前述したステップは、実際には、それらの複数のセンサのすべてと関係することになろう。
【0114】
同様に、前述の手順は、例えば、それぞれがその独自のコーディネータを有するいくつかのクラスタが単一の中央監視ユニットに報告しているピアツーピアの設定においては、複数のコーディネータと関係することになろう。この場合には、所与のコーディネータから中央モニタへのメッセージは、常に、直接的に送信される必要はなく、一つ又は複数の他のコーディネータによって中継可能であろう。
【0115】
以上の説明においては、中央モニタを含んでもよいものの、無線センサネットワーク内におけるセンサ及びコーディネータのみを参照しているが、MBANは、これらの種類以外の他の装置を含んでもよい。潜在的に、投薬メカニズムなどの患者の治療に介入するなんからの手段を、コーディネータ及び/又は任意の中央モニタの無線による制御下において、ネットワーク内に配置可能であろう。したがって、「非常事態手順」は、センサ及びその通信の制御に限定する必要はなく、例えば、薬品を患者に供給して非常事態の状態にある生命パラメータ(例えば、心拍数)を安定化させることにも拡張可能であろう。
【0116】
以上の説明は、一人又は複数人の患者の医学的な非常事態又は非−非常事態を判定する技術に関するものであり、その理由は、これが、本発明の重要な用途として考えられるためである。但し、これは、唯一の可能な用途ではない。センサを使用し、非医学的な状況において生体を監視可能であろう。例えば、前述のものと同一の技術を使用することにより、リスクを有する任意の人物(例えば、高齢の又は虚弱な人々や子供、危険な環境にある人々など)を監視可能であろう。この場合には、非常事態の状態は、事故などのなんらかの形態の物理的な脅威を表すことになろう。この状況においては、脈拍、体温、加速度などの生命パラメータ用のセンサが特に有用であろう。
【0117】
人間の又は他の生体のBAN以外にも、本発明を適用するための多数の可能性が存在している。一つの可能性は、ミッションクリティカルな産業環境(例えば、発電所)における多数の潜在的なシナリオなどの産業的な非常事態を検出する能力を有するWSNである。これは、工場の環境における多数の制御点に提供可能である。例えば、本発明者らは、工場の加熱設備内の温度センサ又は食品製造ライン用の圧力閾値を想定できる。即時アクノリッジメントプロトコルは、医学的な非常事態の場合と同様に、これらのシステム内における非常事態にも適用可能である。したがって、請求項中における「エンティティ」という用語は、生物に加えて、このような任意の産業環境をも包含するものと解釈されたい。
【0118】
以下、上述のプロトコルを、IEEE802.15.4に基づいて現在開発中のIEEE802.15.6などの通信規格に含める方法について、更に説明することとする。
【0119】
図18及び図19は、「非常事態」という名称が付与された新しいビットを追加することによって非常事態の状況を収容すると共にIEEE802.15.6に適合したものにするための本発明の一実施例におけるIEEE802.15.4のフレームフォーマットに対する第1の可能な変更を示している。この第1の可能な変更においては、IEEE802.15.4のフレームタイプに対する他の変更を実施することなしに、新しい非常事態フレームタイプが許容されている。
【0120】
既に概説したように、IEEE802.15.4は、ビーコンフレーム41、データフレーム42、アクノリッジメントフレーム43、及びMACコマンドフレーム44を含む様々なフレームタイプを提供している。IEEE802.15.6において前述の手順を実装するための一つの方法は、規定されているMACフレームタイプに、非常事態フレームという更なるフレームタイプを導入するというものである。
【0121】
図18は、IEEE802.15.4について既に提案されている図10Aのフレームコントロールフィールド50に対応したフレームコントロールフィールド500の構造を示している。図18を図10Aと比較することによって理解されるように、ビット0〜2は、IEEE802.15.4と同様に、フレームタイプ501を表しているが、可能なフレームタイプ値は、図19に示されているように変更されている。以前の予備の値100〜111(図10Bを参照されたい)のうち、ビット値「111」が、この場合には、新しい非常事態フレームタイプを表すべく使用されている。値100、101、及び110は、将来使用するための予備の値として残されている。
【0122】
フレームコントロールフィールド500の残りのサブフィールド内には、第7ビットが非常事態の状態のためのフラグとして新しく使用されていることを除いて(例えば、「1」=非常事態であり、且つ、「0」=非−非常事態である)、基本的に、図10Aのフレームコントロールフィールド50と同一の構成要素が存在している。ここで、第8ビットは、(図10Aのアクノリッジメント要求サブフィールドに対応した)アクノリッジメントポリシーを表すべく使用されている。セキュリティ有効化ビット502、フレームペンディングビット503、PAN ID圧縮506、宛先アドレス指定モード507、フレームバージョン508、及び発信元アドレス指定モード509の各サブフィールドは、IEEE802.15.4のフレームコントロールフィールド50と同一の機能を具備している。
【0123】
図20及び図21は、非常事態フレームタイプのみならず、例えば、非常事態において使用される所謂即時アクノリッジメントを含む相対的に柔軟なアクノリッジメントの提供、ネットワーク装置の電池状態の通知、及び「緊急事態」の通知を含む他の新しい特徴を収容するための本発明の他の実施例におけるIEEE802.15.4のフレームフォーマットに対する第2の可能な変更を示している。
【0124】
図20のフレームコントロールフィールド500’のフォーマットは、主には、アクノリッジメントポリシー用の単一のビット505が、異なるアクノリッジメントタイプを定義するための二つのビットによって置換され、且つ、電池状態(即ち、残っている電荷又は電圧レベル)及び「緊急事態」の通知が、追加のビット(図には、「拡張ビット」0〜3という名称が付与されている)を必要とする新しいサブシールド511及び512によって表されているという点において、図18のフレームコントロールフィールド500と異なっている。図示のように、二つのビットが、それぞれ、「緊急事態」及び「電池レベル」のそれぞれに対して割り当てられており、これにより、それぞれについて最大で4つのレベルを定義可能である。これらの新しいサブフィールドの意味及び使用法は、本発明の範囲外であるが、ここでは、これらを本発明の非常事態の状態との関連において使用することにより、BANの装置間の更に柔軟なシグナリングを提供可能であることに留意されたい。
【0125】
この場合におけるIEEE802.15.4の変更済みのフレームタイプ値が図21に示されており、これを図10B/図10B及び図19と比較されたい。図19の実施例と比較した場合の相違点は、これまで予備とされていた値100及び101が、ここでは、即時アクノリッジメントと遅延アクノリッジメントというアクノリッジメントの二つのタイプを表すべく使用されているという点にあり、即時アクノリッジメントとは、例えば、非常事態にある装置が、更に信頼性の高い通信のために、受信したデータのそれぞれの個別のフレームをアクノリッジするべく使用するものである。即時アクノリッジメントは、本出願人による同時係属中の出願の主題である。
【0126】
本発明の新しい機能を既に提案済みのフレーム構造に含めるための更なる技術として、MACコマンドフレームのコマンドフレーム識別子(図11A及び図11Bを再度参照されたい)を使用可能である。図22A及び図22Bは、MACコマンドフレーム44’に必要な変更を示しており、新しいコマンドタイプである「非常事態通知」が追加されている。図22Aは、MACコマンドフレームフォーマット44’の一部を示しており、且つ、図22Bは、コマンドフレーム識別子440’の可能な値の表を示しており、新しいタイプである「非常事態通知」は、これまで使用されていない値0x0aを占めている(図22Bを参照されたい)。この新しいコマンドタイプの規定に加えて、コマンドフレーム識別子440’に後続するペイロードを使用し、コマンドのなんらかの情報(コンテキスト)を付与する。図22Aに示されているMACコマンドフレーム44’の場合のペイロードの一例は、非常事態の状態を宣言する又は非常事態の状態を取り消す(解除する)ための一つのビットであり(例えば、「1」=非常事態、「0」=非−非常事態)、これには、非常事態の状態を上昇又は下降させるいくつかのレベルを導入するための3つのビットが後続している(非−非常事態の状態を含む合計で9つのレベルのために、8つのレベルの非常事態が可能である)。又、例えば、非常事態宣言の持続時間を相対時間(ms)において又は(現在のエポックの開始時点からの)絶対時間(ms)において通知するべく、更なるビットをペイロードとして提供することも可能であろう。
【0127】
要すれば、本発明の実施例は、以下の特徴及び利点を提供可能である。
・医学的な非常事態の状況をIEEE802.15.6のための新しい非常事態アクノリッジシグナリングに結び付ける。
・新しいフレームタイプ「非常事態」を規定する。
・センサ又はネットワーク装置が非常事態の存在の有無を判定する医学的な非常事態のためのトリガタイプ1の可能性を導入する。
・トリガタイプ1と関連した非常事態のトリガプロトコルを提供する。
・コーディネータが状況を評価すると共に非常事態の有無を判定する医学的な非常事態のためのトリガタイプ2の可能性を導入する。
・トリガタイプ2と関連した非常事態のトリガプロトコルを提供する。
・状況を評価すると共に非常事態の有無を判定するべくコーディネータが生命パラメータを中央治療システムに転送する医学的な非常事態のためのトリガタイプ3の可能性を導入する。
・トリガタイプ3と関連した非常事態のトリガプロトコルを提供する。
・IEEE802.15.6のための新しいコントロールフレーム構造を規定する。
・IEEE802.15.6のための非常事態の状況を通知するコントロールフレームにおける新しいビットを規定する。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の実施例は、MBANを使用して非常事態の管理を円滑に実行する際に極めて重要な役割を果たすことができる。以下のシナリオに留意されたい。
【0129】
(i)心臓に問題を有する世界中の数億人の患者を、彼らの身体上においてMBANを形成する無線センサを利用することにより、病院において、又は自宅において、監視可能である。MBANは、このような患者に更なる移動性を提供可能である。但し、心機能の異常や心臓発作などの更に深刻なケースなどの状況にある患者のグループの場合には、信頼性の高い通信チャネルを確保して非常事態又はアラーム信号を見逃さないことを保証することが極めて重要である。本発明は、「非常事態アクノリッジ」を送信することにより、関与しているすべてのエンティティに非常事態について認知させるための信頼性の高い非常事態トリガメカニズムを提供する。
【0130】
(ii)世界中で数億人の人々が糖尿病を患っている。最近、グルコースの測定のための埋植可能な又は非侵襲的な方法が検討されている。MBANを使用し、24時間にわたって患者のグルコースレベル情報を監視可能である。患者のグルコースレベルがチャートを逸脱し、且つ、患者のための非常ジオロケーション及び他の必要な緊急的な医学的手順が必要とされる状況が存在する。
【0131】
(iii)MBANを使用することにより、データの消失によって生命が脅かされる可能性がある集中治療の状態にある患者を監視しつつ、検知データを収集可能である。
【0132】
(iv)医療システムにおける非常事態への応答の人件費及び効率が改善される。
【0133】
(v)医療MBANシステムにおける非常事態の認知度が改善される。
【0134】
(vi)非常事態応答プロセスを自動化することにより、人件費が低減される。
【0135】
(vii)主には、低データレートのアプリケーションが想定されているが、MBANは、個々のパケットの消失が致命的であると共に品質に影響を及ぼすストリーミングビデオ/オーディオデータの転送に適用することも可能であろう。非常事態の状況においては、誤ったデータは、疾病の診断に悪影響を与えるおそれがある。
【0136】
(viii)医療診断の場合には、MMR又はX線画像は、医師が患者を適切に診断するべく、非常に明瞭であることを要する。したがって、この場合にも、信頼性の高いデータ転送が不可欠である。
【0137】
要すれば、本発明は、無線センサネットワーク内において非常事態の状態を宣言する方法を提供可能であり、無線センサネットワークは、少なくとも一つのエンティティを監視するべく構成されたセンサ(11)を含む複数の装置(10、11、12)を有し、この方法は、センサ(11)のうちの一つによってエンティティに関連するパラメータの値を検知するステップと、情報をセンサによってネットワーク内の他の装置(10)に無線送信するステップと、検知された値又は送信された情報を使用することにより、エンティティに影響を及ぼす非常事態の状態の有無を判定するステップと、非常事態の状態の有無をネットワーク内の少なくとも一つの他の装置(例えば、10)に宣言するステップと、を有する。判定するステップは、センサ(11)、無線センサネットワークのコーディネータ(10)、又はコーディネータとの通信状態にある中央モニタ(12)のいずれかにおいて実行可能である。宣言するステップは、フレームに基づいた無線センサネットワークのフレームコントロールフィールドを非常事態フレームを表す予め定義された値に設定することにより、実行可能である。受信器は、アクノリッジメントフレームを使用し、非常事態の宣言の受信をアクノリッジ可能であり、この後に、非常事態手順が実行される。非常事態手順は、例えば、センサからの後続の情報の信頼性を保証するように、センサに割り当てられた帯域幅を増大させるステップを伴ってもよい。この方法は、例えば、IEEE802.15.6に従って稼働するMBANを使用する病院内における患者の監視に適用可能である。
【0138】
本発明は、新しいセンサ、コーディネータ、又はこれらのためのハードウェアモジュールの形態をとることが可能であり、且つ、一つ又は複数のセンサ及び/又はコーディネータのプロセッサによって実行されるソフトウェアを置換又は変更することにより、実装可能である。
【0139】
したがって、本発明の実施例は、ハードウェアにおいて、或いは、一つ又は複数のプロセッサ上において稼働するソフトウェアモジュールとして、或いは、これらの組合せとして、実装可能である。又、本発明は、本明細書に記述されている技術のいずれかの一部又はすべてを実行する一つ又は複数の装置又は機器プログラム(例えば、コンピュータプログラム及びコンピュータプログラムプロダクト)として実施可能である。このような本発明を実施するプログラムは、コンピュータ可読媒体上に保存可能であり、或いは、例えば、一つ又は複数の信号の形態を有することも可能であろう。このような信号は、インターネットウェブサイトからダウンロード可能なデータ信号であってよく、或いは、搬送波信号上において、又は任意の他の形態において、提供することも可能である。
【0140】
以上の説明においては、一例として、IEEE802.15.4及びIEEE802.15.6を参照しているが、本発明は、IEEE802.15.6に従って動作するかどうかとは無関係に、任意のタイプのフレームに基づいた無線センサネットワーク又はMBANに対して、且つ、医療ボディエリアネットワークではない場合にも、非常事態の状況における通信の信頼性の改善に対する要件を具備する他のタイプのBANに対して、適用可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンティティを監視する一つ又は複数のセンサを含む装置の無線センサネットワークであって、
前記エンティティに関連するパラメータの値を検出し、且つ、情報を前記ネットワーク内の他の装置に無線送信するべく構成された前記センサと、
前記無線送信された情報を受信するべく構成されたコーディネータと、
前記検出された値又は前記送信された情報に応答して、前記エンティティの非常事態の状態の存在を判定する判定手段と、
を有する無線センサネットワーク。
【請求項2】
前記判定手段は、前記センサに配置される請求項1に記載の無線センサネットワーク。
【請求項3】
前記判定手段は、前記コーディネータに配置される請求項1に記載の無線センサネットワーク。
【請求項4】
前記コーディネータとの通信する中央モニタが提供され、且つ、前記判定手段は、前記中央モニタに備えられる請求項1に記載の無線センサネットワーク。
【請求項5】
前記判定手段は、前記検出された値又は前記送信された情報を少なくとも一つの閾値と比較することにより、前記判定を実行する請求項1〜4のいずれか一項に記載の無線センサネットワーク。
【請求項6】
前記判定手段は、前記検出された値又は前記送信された情報を少なくとも一つの閾値と比較することにより、前記非常事態の状態の不存在を判定するべく更に動作可能である請求項5に記載の無線センサネットワーク。
【請求項7】
前記判定手段は、前記非常事態の状態の宣言を前記無線センサネットワーク内の少なくとも一つの他の装置に送信するべく構成されている請求項1〜6のいずれか一項に記載の無線センサネットワーク。
【請求項8】
前記他の装置は、前記宣言に応答して、アクノリッジメントを前記判定手段に送信する請求項7に記載の無線センサネットワーク。
【請求項9】
情報が、前記ネットワーク内において、それぞれがフレームコントロールフィールドを具備するフレーム内において無線送信され、前記非常事態の状態の前記宣言は、前記フレームコントロールフィールド内の値を予め定義された値に設定することにより、実行される請求項7又は8に記載の無線センサネットワーク。
【請求項10】
前記フレームは、異なるタイプのフレームを含み、且つ、前記予め定義された値は、非常事態フレームタイプを表す請求項9に記載の無線センサネットワーク。
【請求項11】
前記フレームタイプのうちの一つは、アクノリッジメントフレームであり、且つ、前記宣言に応答して送信される前記アクノリッジメントは、アクノリッジメントフレームの形態を有する請求項8〜10の何れか一項に記載の無線センサネットワーク。
【請求項12】
コマンドがMACコマンドフレームを介して前記ネットワーク内において送信され、且つ、前記非常事態の状態の前記宣言は、MACコマンドフレームのコマンドフレーム識別子を非常事態通知コマンドフレームタイプに設定することにより、実行される請求項7又は8に記載の無線センサネットワーク。
【請求項13】
請求項2に記載の前記無線センサネットワークにおいて使用され、且つ、前記判定手段を含むセンサ。
【請求項14】
請求項3に記載の前記無線センサネットワークにおいて使用され、且つ、前記判定手段を含むコーディネータ。
【請求項15】
無線センサネットワーク内において非常事態の状態を宣言する方法であって、前記無線センサネットワークは、少なくとも一つのエンティティを監視するべく構成されたセンサを含む複数の装置を有する、方法であって、
前記センサのうちの一つによって前記エンティティに関連するパラメータの値を検知するステップと、
情報を前記センサによって前記ネットワーク内の他の装置に無線送信するステップと、
前記検知された値又は前記送信された情報を使用することにより、前記エンティティに影響を及ぼす非常事態の状態の存在の有無を判定するステップと、
前記非常事態の状態の存在の有無を前記ネットワーク内の少なくとも一つの他の装置に対して宣言するステップと、
を有する方法。
【請求項1】
エンティティを監視する一つ又は複数のセンサを含む装置の無線センサネットワークであって、
前記エンティティに関連するパラメータの値を検出し、且つ、情報を前記ネットワーク内の他の装置に無線送信するべく構成された前記センサと、
前記無線送信された情報を受信するべく構成されたコーディネータと、
前記検出された値又は前記送信された情報に応答して、前記エンティティの非常事態の状態の存在を判定する判定手段と、
を有する無線センサネットワーク。
【請求項2】
前記判定手段は、前記センサに配置される請求項1に記載の無線センサネットワーク。
【請求項3】
前記判定手段は、前記コーディネータに配置される請求項1に記載の無線センサネットワーク。
【請求項4】
前記コーディネータとの通信する中央モニタが提供され、且つ、前記判定手段は、前記中央モニタに備えられる請求項1に記載の無線センサネットワーク。
【請求項5】
前記判定手段は、前記検出された値又は前記送信された情報を少なくとも一つの閾値と比較することにより、前記判定を実行する請求項1〜4のいずれか一項に記載の無線センサネットワーク。
【請求項6】
前記判定手段は、前記検出された値又は前記送信された情報を少なくとも一つの閾値と比較することにより、前記非常事態の状態の不存在を判定するべく更に動作可能である請求項5に記載の無線センサネットワーク。
【請求項7】
前記判定手段は、前記非常事態の状態の宣言を前記無線センサネットワーク内の少なくとも一つの他の装置に送信するべく構成されている請求項1〜6のいずれか一項に記載の無線センサネットワーク。
【請求項8】
前記他の装置は、前記宣言に応答して、アクノリッジメントを前記判定手段に送信する請求項7に記載の無線センサネットワーク。
【請求項9】
情報が、前記ネットワーク内において、それぞれがフレームコントロールフィールドを具備するフレーム内において無線送信され、前記非常事態の状態の前記宣言は、前記フレームコントロールフィールド内の値を予め定義された値に設定することにより、実行される請求項7又は8に記載の無線センサネットワーク。
【請求項10】
前記フレームは、異なるタイプのフレームを含み、且つ、前記予め定義された値は、非常事態フレームタイプを表す請求項9に記載の無線センサネットワーク。
【請求項11】
前記フレームタイプのうちの一つは、アクノリッジメントフレームであり、且つ、前記宣言に応答して送信される前記アクノリッジメントは、アクノリッジメントフレームの形態を有する請求項8〜10の何れか一項に記載の無線センサネットワーク。
【請求項12】
コマンドがMACコマンドフレームを介して前記ネットワーク内において送信され、且つ、前記非常事態の状態の前記宣言は、MACコマンドフレームのコマンドフレーム識別子を非常事態通知コマンドフレームタイプに設定することにより、実行される請求項7又は8に記載の無線センサネットワーク。
【請求項13】
請求項2に記載の前記無線センサネットワークにおいて使用され、且つ、前記判定手段を含むセンサ。
【請求項14】
請求項3に記載の前記無線センサネットワークにおいて使用され、且つ、前記判定手段を含むコーディネータ。
【請求項15】
無線センサネットワーク内において非常事態の状態を宣言する方法であって、前記無線センサネットワークは、少なくとも一つのエンティティを監視するべく構成されたセンサを含む複数の装置を有する、方法であって、
前記センサのうちの一つによって前記エンティティに関連するパラメータの値を検知するステップと、
情報を前記センサによって前記ネットワーク内の他の装置に無線送信するステップと、
前記検知された値又は前記送信された情報を使用することにより、前記エンティティに影響を及ぼす非常事態の状態の存在の有無を判定するステップと、
前記非常事態の状態の存在の有無を前記ネットワーク内の少なくとも一つの他の装置に対して宣言するステップと、
を有する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【公表番号】特表2012−519521(P2012−519521A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552510(P2011−552510)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際出願番号】PCT/GB2010/050172
【国際公開番号】WO2010/100444
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際出願番号】PCT/GB2010/050172
【国際公開番号】WO2010/100444
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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