説明

ボトル把持体及びボトル口部を把持する方法

【課題】ボトルを搬送する際に発生するボトルの遠心力傾斜を抑制し、搬送中のボトルの姿勢が安定すると共にボトル受渡し時における把持ミスが生ずることのないボトル把持体を提供する。
【解決手段】ボトルを把持する開閉式グリップ装置10に於いて、ボトル口部110の円筒部113を把持するグリップ部11と、ボトル口部の雄ネジ部111を把持するネジサポート部12とを備え、かつ、ボトル口部の円筒部からボトル口部の雄ネジ部までを一体的に把持できるように、前記グリップ部とネジサポート部とが上下方向の厚みを有し一体として形成されていることを特徴とするボトル把持体10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボトルを把持する開閉式グリップ装置に於いて、ボトルを搬送する際に発生する遠心力傾斜を抑制したボトル把持体及びボトル口部を把持する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるPETボトルに代表される樹脂製ボトルや、壜、缶等の容器に飲料水などの液体を充填し、開口部に蓋或いはキャップを装着する処理ラインに配設されている充填機、中間搬送装置、キャッピング機または蓋巻締機等に採用されているボトル搬送装置は、いずれも回転体を有し、回転体の周縁には周方向に間隔をおいて複数の開閉式グリップ装置が備えられていて、ボトルの口部を把持して受渡しを行なっている。
【0003】
先ず、図6を参照して、搬送されるボトルの一形態について説明する。
例えば、搬送されるボトル100としては、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂素材を用いてブロー成形された樹脂ボトルが最も汎用的な搬送対象となるが、ボトル100のボトル口部110の開口端外周面には雄ネジが設けられた雄ネジ部111が形成され、
雄ネジ部111の下端の直下方には、径が雄ネジ部111のネジ部ネジ内径と略一致する小径の円筒部117が連続して形成され、その下方には、周縁が拡径された環状の根茎(かぶら)部112が形成されている。
【0004】
根茎(かぶら)部112の下方には上下方向に一定の距離を有する円筒部113が形成され、円筒部113の下方には、周縁が外方に拡径された環状の鍔部114が延設されている。更に、鍔部114の直下方には鍔部114よりも小径の円筒部115がボトル口部の長手方向に一定の長さを有して形成され、円筒部115の下方には肩部116が形成されている。
肩部116は円筒部115の下端から胴部に向かうに従って末広がりに拡大されている。円筒部113と円筒部115の外径は略同径をなし、それぞれ一定の軸方向長さを有している。ボトル100の上端部開口端から円筒部115までの領域は、ボトル口部110をなしている。
【0005】
次に、図7を用いて、開閉式グリップ装置を用いたボトル搬送装置によって行われるボトル搬送を簡略的に説明する。
ボトル搬送は、供給コンベア30、出口コンベア90間を、入口搬送装置40、充填機50、中間搬送装置60、キャッピング機70、出口搬送装置(出口ターレット)80などの回転搬送装置間で順次受渡が行われ、出口コンベア90によって所定の場所に搬送される。
上記回転搬送装置には、それぞれ回転体が備えられ、出口搬送装置(出口ターレット)80を除き、回転体の周縁部には周方向に等間隔に複数の開閉式グリップ装置が備えられている。
【0006】
上記開閉式グリップ装置の各々にはボトル口部110を把持するボトル把持体120(図6参照)が備えられ、ボトル100は、各ボトル搬送装置において、ボトル口部がボトル把持体120に把持されて吊り下げられた状態で搬送円軌道に沿って搬送され、各搬送装置間でのボトルの受渡しを、各搬送装置が備えたボトル把持体120の開閉動作により行われる。
【0007】
しかし、従来のボトル搬送装置は、ボトル口部110を把持して吊り下げた状態で円軌道搬送されボトルの下部が遠心力によって外方に振られた状態になり、充填や蓋締め等の処理に不具合が発生したり、ボトルの受け渡し時においてボトル把持ミスが生ずる等の不都合が発生するという問題があった。
特に、充填機によって内溶液を充填した後のボトルを搬送する場合には、ボトルの総重量が大きくなるため遠心力がさらに強く作用し、より外方に傾斜して搬送される状態になり、ボトル受取り時におけるボトル把持ミスの頻度が増すなどのおそれがあった。
【0008】
このため、樹脂ボトルを安定した姿勢で搬送し、受け渡しをする装置が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−281184号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の搬送処理システムにおけるボトル把持装置は、樹脂ボトルの円筒部を把持するグリッパーの上方に樹脂ボトルの口部に当接する支持体を設けたもので、グリッパーが把持している円筒部よりも上方の口部を支持体によって半径方向内方側から押圧してボトル傾斜を抑え、ボトルが振れないように支持している。
しかし、その支持体に当接する樹脂ボトルの口部とのクリアランスは、組立調整が難しいという問題がある。
【0010】
本発明は上記従来の問題を解決するためになされたもので、広範囲の装置に適用でき、搬送する際に発生するボトルの遠心力傾斜を抑制し、充填時や蓋締時のボトル傾斜による不良発生やボトル受渡し時における把持不良が生ずることのない開閉式グリップ装置におけるボトル把持体及びボトル口部を把持する方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に記載のボトル把持体は、ボトルを把持する開閉式グリップ装置に於いて、ボトル口部の円筒部を把持するグリップ部と、ボトル口部の雄ネジ部を把持するネジサポート部とを備え、かつ、ボトル口部の円筒部からボトル口部の雄ネジ部までを一体的に把持できるように、前記グリップ部とネジサポート部とが上下方向の厚みを有し一体として形成されていることを特徴とする。
請求項2に記載のボトル把持体は、請求項1において、前記ボトル口部の雄ネジ部を把持するネジサポート部が、ボトル口部の雄ネジ部最上段までを把持するように、前記グリップ部とネジサポート部とが上下方向の厚みを有し一体として形成されていることを特徴とする。
請求項3に記載のボトル口部を把持する方法は、ボトル口部の円筒部を把持するグリップ部と、ボトル口部の雄ネジ部を把持するネジサポート部とを備え、かつ、ボトル口部の円筒部からボトル口部の雄ネジ部までを一体的に把持できるように、前記グリップ部とネジサポート部とが上下方向の厚みを有し一体として形成されている開閉式グリップを備えたボトル把持体を用いて、ボトル口部を把持する方法であって、ボトル口部を把持した際に、グリップ部の内径をAとし、ボトル口部の円筒部の外径をBとし、前記ネジサポート部の内径をCとし、ボトル口部の雄ネジ部の外径をDとすると、(C−D)>(A−B)となるようにすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のボトル把持体は、ボトル口部の円筒部113又は円筒部115からボトル口部の雄ネジ部111までを一体的に把持できるように、前記グリップ部とネジサポート部とが上下方向の厚みを有し一体として形成されているので、ボトルの傾き方向X(図3参照)に対して反回転作用が生ずることにより、ボトル底部に働く遠心力方向に対向してボトルの傾斜を防ぐことができる。
また、ボトル口部を把持した際に、ボトル口部とボトル把持体との寸法関係が一定の関係にあるので、強固にボトル口部を把持することができ、把持ミスがなく生産効率性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のボトル把持体について図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明のボトル把持体を示す斜視図であり、図2は、本発明のボトル把持体でボトル口部を把持した状態を示す図1におけるH−H断面図である。図1、図2において、ボトル把持体10は、ボトル口部110の円筒部113を把持するグリップ部11と、雄ネジ部111を把持するネジサポート部12とを備え、かつ、ボトル口部110の円筒部113からボトル口部110の雄ネジ部111までを一体的に把持できるように、グリップ部11とネジサポート部12とが分離されておらずに上下方向の厚み(距離)を有し一体として形成されている。
なお、ボトル口部110の雄ネジ部111を把持するネジサポート部12が、ボトル口部110の雄ネジ部最上段(複数条ある雄ネジ山の一番上の雄ネジ部)までを把持できるように、グリップ部11とネジサポート部12とが上下方向のさらなる厚みを有し一体として形成されていると、ボトル100の傾斜をさらに有効に防止できてボトル口部を安定して把持できるので好ましい。
【0014】
また、図2に示すように、ボトル把持体10を閉にしてボトル口部110を把持した際において、
グリップ部11の内径寸法をAとし、ボトル口部110の円筒部113の外径寸法をBとし、ネジサポート部12の内径寸法をCとし、雄ネジ部111の外径寸法をDとすると、(C−D)>(A−B)となるようにしている。
即ち、軸と穴のはめあいという考え方で説明すると、ボトル口部110が軸でありボトル把持体10が穴という関係になるが、本発明のボトル把持体10では、ネジサポート部12の内径寸法C(穴)と雄ネジ部111の外径寸法D(軸)との寸法許容差を、グリップ部11の内径寸法A(穴)と円筒部113の外径寸法B(軸)との寸法許容差よりも大きくなるようにしている。
ここで(C−D)は、ネジサポート部12の内径寸法Cと雄ネジ部111の外径寸法D(軸)との寸法許容差であるが、これを−0.5〜2.0mm、より好適には0.10〜0.15mmの範囲とすることが好ましい。
また、(A−B)はグリップ部11の内径寸法Aと円筒部113の外径寸法Bとの寸法許容差であるが、これを−1.0〜1.0mm、より好適には0〜0.05mmの範囲とすることが好ましい。
その理由は、雄ネジ部111はボトルの主要構成部位でありその部分を主に把持して変形や傷を付けてしまうとボトルの性能、主に巻き締め性を著しく低下させてしまう恐れがある。また直接口に触れる部分であるためバリなどが出来てしまうと消費者が怪我をする可能性もある。
従って、本発明では、ボトル把持体10のグリップ部11でボトル口部110の円筒部113を強く把持し、雄ネジ部111にはネジサポート部12を添える程度とすることが好ましい。
このような考え方から、ボトル口部110とボトル把持体10のとの寸法関係を(C−D)>(A−B)となるようにしたのである。
なお、ボトル口部110の円筒部113の外径寸法Bや雄ネジ部111の外径寸法Dは、ボトルの設計時に予め規定されているので、本発明のボトル把持体10の設計においては、ボトル寸法との関連で(C−D)>(A−B)となるように規定する。
【0015】
本発明のボトル把持体10を構成する左右把持体10a、10bのそれぞれは、その搬送円軌道外方部の内側面に、把持対象であるボトル口部110の円筒部113を把持するグリップ部11a、11bを対向して円弧状に設けると共に、グリップ部11a、11bの上部には雄ネジ部111を把持するネジサポート部12a、12bと、を有している。
そして、左右把持体10a、10bの搬送円軌道内方部には、ボトル把持体10を開閉させるための、回転軸挿着用の装着孔10c、10dが設けられている。
【0016】
ボトル把持体10とボトル口部110との寸法関係は、上述したように、(C−D)>(A−B)とされているので、ボトル把持体10でボトル口部110を把持する際には、寸法差が小さいグリップ部11が円筒部113に当接して、ボトル口部を強く把持すると同時に、寸法差が大きいネジサポート部12が雄ネジ部111に略当接してサポートとして把持する。
【0017】
図3は本発明のボトル把持体の作用を説明した側面図である。搬送装置において、ボトル把持体10によって吊り下げられたボトル100には、円軌道搬送による遠心力が付加され、この遠心力により、ボトル底部が搬送円軌道外方向(遠心力方向)Xに振られる向きに傾斜が発生する。
しかしながら、本発明のボトル把持体10が上下方向に厚みを持って一体的に形成されていることで、グリップ部11部で上円筒部113を強固に把持し、サポート部12で雄ネジ部111をサポートとして把持することによって遠心力方向Xに対向して把持し、遠心力によってボトル底部が搬送円軌道外方に振られる向きに傾斜するのを抑制することができる。
【0018】
以上、本発明によるボトル把持体の第一の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形あるいは修正が可能である。
例えば、図4に示すように、ボトル把持体10は、雄ネジ部111を把持するように一定の厚みを有するように構成されていれば、グリップ部11がボトル口部110の下円筒部115を把持するようにしてもよい。
この場合のボトル把持体10は、先の第一の実施形態のボトル把持体10よりもさらに上下方向の厚みを有するものとなる。
また、グリップ部11がボトル口部110の円筒部117を把持するようにしてもよく、ボトル口部110の範囲であればグリップ部11が把持する部位は、根茎(かぶら)部112、鍔部114を含めて状況に応じて選択することができる。
【0019】
次に、本発明によるボトル把持体を組み込んだ開閉式グリップ装置について説明する。図5は本発明のボトル把持体を組み込んだ開閉式グリップ装置の斜視図である。
前記ボトル把持体10は、開閉式グリップ装置に組み込まれて、回転軸24a,24bの端部にカムレバー27を嵌着し、該カムレバー27を延出させた端部に固定軸27bを設け、該固定軸27bと同軸にカムフォロア26を回転自在に設けると共に、該カムフォロア26と環状カム25とを相対的に回転させることにより、ボトル把持体10を開閉させる。このカム式の開閉グリップ装置は、周知の形態のものでよく、本明細書に於いてはこれらの各手段の詳細な説明を省略する。
【0020】
上述の実施形態においては、本発明を合成樹脂製ボトルを例に説明したが、ボトル口部の形状に類似した形状を持つ金属製ボトルあるいはガラス製ボトルなどにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明のボトル把持体によれば、飲料用ボトル等の容器を円軌道搬送する際に発生する容器の遠心力傾斜を抑制し、搬送中のボトルの姿勢を安定させると共に容器受渡し時にも実質的に傾斜状態にない略垂直の姿勢で受け取られ、安定した姿勢で搬送されるので、充填時や蓋締時のボトル傾斜による不良発生や把持不良が生ずることのない開閉式グリップ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のボトル把持体の斜視図である。
【図2】図1におけるH−H断面図である。
【図3】開閉式グリップ装置の作用を示す概略側面図である。
【図4】本発明のボトル把持体の他の実施形態を示す図1におけるH−H断面図である。
【図5】本発明のボトル把持体が組み込まれた開閉式グリップ装置の平面図である。
【図6】ボトルの形態についての概略的説明図である。
【図7】ボトル搬送装置の簡略的説明図である。
【符号の説明】
【0023】
10 ボトル把持体
11 グリップ部
12 ネジサポート部
10a、10b 把持体
11a、11b グリップ部
12a、12b ネジサポート部
10c、10d 装着孔
20 開閉グリップ装置
22 カムレバー
24a,24b 回転軸
25 環状カム
26 カムフォロア
27 カムレバー
27b 固定軸
30 ボトル供給コンベア
40 入口搬送装置
50 充填機
60 中間搬送装置
70 キャッピング機
80 出口搬送装置(出口ターレット)
90 出口コンベア
100 ボトル
110 ボトル口部
111 雄ネジ部
112 カブラ部
113 円筒部
114 鍔部
115 円筒部
116 肩部
A グリップ部の内径
B 上円筒部の外径
C ネジサポート部の内径
D 雄ネジ部の外径
X 遠心力方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボトルを把持する開閉式グリップ装置に於いて、ボトル口部の円筒部を把持するグリップ部と、ボトル口部の雄ネジ部を把持するネジサポート部とを備え、かつ、ボトル口部の円筒部からボトル口部の雄ネジ部までを一体的に把持できるように、前記グリップ部とネジサポート部とが上下方向の厚みを有し一体として形成されていることを特徴とするボトル把持体。
【請求項2】
前記ボトル口部の雄ネジ部を把持するネジサポート部が、
ボトル口部の雄ネジ部最上段までを把持するように、
前記グリップ部とネジサポート部とが上下方向の厚みを有し一体として形成されていることを特徴とする請求項1に記載のボトル把持体。
【請求項3】
ボトル口部の円筒部を把持するグリップ部と、ボトル口部の雄ネジ部を把持するネジサポート部とを備え、かつ、ボトル口部の円筒部からボトル口部の雄ネジ部までを一体的に把持できるように、前記グリップ部とネジサポート部とが上下方向の厚みを有し一体として形成されている開閉式グリップを備えたボトル把持体を用いて、ボトル口部を把持する方法であって、
ボトル口部を把持した際に、グリップ部の内径をAとし、ボトル口部の円筒部の外径をBとし、前記ネジサポート部の内径をCとし、ボトル口部の雄ネジ部の外径をDとすると、(C−D)>(A−B)となるように、ボトル口部を把持する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−327679(P2006−327679A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−158221(P2005−158221)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(391035430)東洋食品機械株式会社 (11)
【Fターム(参考)】