説明

ボトル缶の測定方法

【課題】 より精度よくネジ部を測定することができるボトル缶の測定方法を提供すること。
【解決手段】 外周面にネジ部14が形成された口金部13を有し、前記ネジ部14が山部17を介して形成された第1及び第2谷部18、19を有する金属製のボトル缶の測定方法において、前記口金部13の輪郭線を取得し、該輪郭線上で前記山部17の頂点P3と前記第1谷部17の底点P1との間に設けられた2点間を結ぶ直線L5と、前記輪郭線上で前記頂点P3と前記第2谷部19の底点P2との間に設けられた2点間を結ぶ直線L6とを設定し、前記直線L5と前記直線L6とがなす角度を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップが被着、ネジ成形される口金部に形成されたネジ部を測定するボトル缶の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属製のボトル缶は、アルミニウムやアルミニウム合金からなる金属板を絞加工(Drawing)と、続いて行われるしごき加工(Ironing)とによって形成されるため、一般にDI缶と呼ばれている。このようなボトル缶は、飲料用の缶として広く使用されており、金属板から有底筒状の缶胴を形成した後、その上部がネックイン加工によって縮径されることによって缶胴より小径の口金部が形成され、この口金部にネジ部が形成されている。そして、このボトル缶の口金部にキャップが被着、ネジ成形されることで、キャップ付ボトル缶となる。
【0003】
一般に、ネジ部はネジ成形装置を用いて形成されている(例えば、特許文献1参照)。このネジ成形装置は、ボトル缶の口金部の外周面に当接する外子と口金部の内周面に当接する中子とを備えている。そして、外子と中子とが互いに口金部を挟持しながらボトル缶の缶軸回りに回転することで口金部にネジ部を形成する。
しかし、口金部に対する外子の当接位置と中子の当接位置との間にズレが生じた場合には、外子と中子とで挟持したときに外子と中子との間隙の幅が一定でなくなるので、形成されたネジ部の肉厚が一定でなくなる。これにより、ネジ部のネジ角にズレが生じる。以上より、ネジ部における座屈強度の低下やボトル缶内部の耐圧強度の変化などが発生する。
【0004】
そこで、成形されたネジ部の外形を測定することで、ネジ部を評価することが行われている。ネジ部の外形の測定方法としては、口金部の側面を撮像して得られた画像からネジ部の輪郭線を取得し、この輪郭線から評価を行う方法がある。これは、取得した輪郭線から、ネジ部の山部の頂点及びこの山部に隣接する2つの谷部の底点の位置を検出し、頂点と各底点とのボトル缶の缶軸方向での距離を算出する。そして、頂点と各底点との缶軸方向における距離を比較することでネジ部の評価を行う。ここで、山部の輪郭線において缶軸に対して最も径方向外方の点を頂点として検出し、谷部の輪郭線において缶軸に対して最も径方向内方の点を底点として検出している。
【特許文献1】特開2002−66674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の測定方法には以下の課題がある。すなわち、上記従来の測定方法では、山部の輪郭線において缶軸に対して最も径方向外方の点を頂点として検出しているのが、山部における輪郭線に歪みが生じている場合には頂点を精度よく検出することが困難である。このように、頂点の位置を精度よく検出できないことで、頂点と一方の底点との缶軸に沿った距離と、頂点と他方の底点との缶軸に沿った距離との測定誤差が大きくなり、ネジ部の形状を精度よく測定することが困難となる。
【0006】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたもので、より精度よくネジ部を測定することができるボトル缶の測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、本発明にかかるボトル缶の測定方法は、外周面にネジ部が形成された口金部を有し、前記ネジ部が山部を介して形成された2つの谷部を有する金属製のボトル缶の測定方法において、前記口金部の輪郭線を取得し、該輪郭線上で前記山部の頂点と前記一方の谷部の底点との間に設けられた2点間を結ぶ第1直線と、前記輪郭線上で前記頂点と前記他方の谷部の底点との間に設けられた2点間を結ぶ第2直線とを設定し、前記第1直線と前記第2直線とがなす角度を測定することを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、山部の頂点と缶軸方向両方で隣接する谷部の底点との間に設けられた2点を結ぶ直線それぞれ設定し、この2直線がなす角度を測定することでネジ部の形状を測定するので、山部の頂点を基準としてネジ部の形状を測定することと比較して、精度のよい測定を行うことができる。すなわち、頂点と底点との間の2点を基準として測定しているので、山部の輪郭線に凹凸が生じている場合であっても、凹凸の影響を小さくすることができる。また、頂点や底点の検出位置がずれた場合であっても、2直線がなす角度でネジ部の形状を測定しているので、検出位置のズレによる影響を小さくすることができる。したがって、精度のよいネジ部の測定を行うことができる。
【0009】
また、本発明のボトル缶の測定方法は、前記輪郭線から前記口金部の上端面の輪郭を基準測定線として取得し、該基準測定線と前記第1直線とがなす第1角度と、前記基準測定線と前記第2直線とがなす第2角度との差を測定することが好ましい。
この発明によれば、口金部の上端面の輪郭を基準測定線とすることで、各ボトル缶における測定基準をそろえることができる。ここで、測定した第1及び第2角度の差が小さいほど2つの谷部が山部の頂点を基準として対称に形成されていると判断することができる。
【0010】
また、本発明のボトル缶の測定方法は、前記輪郭線から前記口金部の上端を基準測定線として取得し、該基準測定線に対する垂直線と前記谷部との接点を該谷部の底点として検出することが好ましい。
この発明によれば、変形の少ない谷部の谷点を測定基準とすることで、各ボトル缶における測定基準を一定にすることができ、ボトル缶の測定をより安定して行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のボトル缶の測定方法によれば、山部の頂点と缶軸方向両方で隣接する谷部の底点との間に設けられた2点を結ぶ直線それぞれ取得し、この2直線がなす角度を測定することでネジ部の形状を測定するので、山部の頂点を基準としてネジ部の形状を測定することと比較して、山部の凹凸の影響を受けにくくなり、精度のよい測定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明によるボトル缶の測定方法の一実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態において測定されるボトル缶10は、図1に示すように、大径の胴部11と、この胴部11の上端から上方に向かうにしたがって漸次縮径する肩部12と、この肩部12の上端に形成されて胴部11よりも小径の口金部13とを備えている。
口金部13には、ネジ部14と、このネジ部14の缶軸方向下端に連設されて径方向外方に膨出した膨出部15と、ネジ部14の缶軸方向上端に連設されてボトル缶10の上端縁部を折り返したカール部16とが形成されている。
ネジ部14は、山部17と山部17を介して形成された2つの谷部である第1及び第2谷部18、19を有している。また、ネジ部14は、山部17がネジ始まり位置からネジ終わり位置までを確実に口金部13の外周面に沿って一周するだけ形成することができるように、口金部13に対して2巻程度形成されている。
【0013】
このボトル缶10を測定する測定装置20は、図2に示すように、ボトル缶10を載置するステージ21と、ボトル缶10を撮像するカメラ22と、カメラ22と対応して設けられてステージ21上に載置されたボトル缶10を照射する照明装置23と、これらを制御する制御部24とを備えている。
ステージ21は、載置されたボトル缶10を缶軸Oの軸回りで回転可能となっている。
カメラ22は、ボトル缶10の口金部13を撮像するように配置されており、照明装置23とステージ21上に載置されたボトル缶10を挟んで対向配置されている。
【0014】
制御部24は、ステージ21の回転を制御するステージ制御部25と、カメラ22による撮像を制御する撮像制御部26と、カメラ22で撮像された画像データから口金部13の輪郭画像を抽出する輪郭画像抽出部27と、輪郭画像からネジ部14を測定する測定部28とを備えている。
ステージ制御部25は、ステージ21上に載置されたボトル缶10を缶軸回りで120°ずつ3回間欠的に回転させる。
撮像制御部26は、ボトル缶10が120°ずつ間欠的に回転して停止しているときに照明装置23でボトル缶10の口金部13を照明してカメラ22で口金部13を撮像させる。
輪郭画像抽出部27は、画像データから信号強度である輝度の変化部分を検出することで画像データから口金部13の輪郭画像を抽出する。
測定部28は、輪郭画像からネジ部14の形状を測定するが、この測定方法については後述する。
【0015】
次に、以上のように構成された測定装置20を用いたボトル缶10の測定方法について説明する。
最初に、ボトル缶10をステージ21上に載置する(図3に示すステップST11)。このとき、ステージ21の回転軸とボトル缶10の缶軸とが一致するように載置する。
そして、撮像制御部26が、カメラ22及び照明装置23を用いてボトル缶10の口金部13の撮像を行う(図3に示すステップST12)。これは、照明光をボトル缶10の口金部13に照射してカメラ22で口金部13を撮像し、撮像した口金部13の画像データを輪郭画像抽出部27に送信する。
【0016】
そして、輪郭画像抽出部27が、画像データから口金部13の輪郭線を抽出する(図3に示すステップST13)。上述したように、ボトル缶10を挟んでカメラ22と照明装置23とが対向配置されているので、カメラ22で取得した画像データは光の中にボトル缶10のシルエットが現れた画像となっている。そこで、この画像データの信号強度である輝度の変化部分を検出することで、画像データから口金部13の輪郭線を抽出する。これにより、図4に示すような輪郭画像が得られる。
【0017】
次に、測定部28が基準測定線L1を設定する(図3に示すステップST14)。これは、図4及び図5に示すように、抽出した輪郭画像のうち口金部13の上端に相当する部分を検出して、該当部分の輪郭線を直線近似し、この直線を基準測定線L1と設定する。 そして、設定した基準測定線L1と直交する垂直線L2を設定する(図3に示すステップST15)。
その後、輪郭画像からネジ部14の第1及び第2谷部18、19のそれぞれの底点P1、P2を検出する(図3に示すステップST16)。これは、図5に示すように、輪郭画像において、基準測定線L1と直交する垂直線L2と第1谷部18との接点を検出することで、この接点を第1谷部18の底点P1と設定する。同様に、垂直線L2と第2谷部19との接点を検出して、第2谷部19の底点P2を設定する。
なお、本実施形態において、垂直線L2は、第1及び第2谷部18、19両方の接線となっている。
また、図4及び図5において、ネジ部14は山部17がほぼ2重となるように形成されているが、胴部11側のものを測定対象としている。これは、ボトル缶10は、口金部13にネジ部14を形成した後でカール部16の形成することによって製造されている。このため、カール部16側のネジ部14はカール部16の形成時にその加重によって変形することがある。したがって、ネジ部14の胴部11側のものを測定対象とすることで、各ボトル缶10における測定バラツキを抑制することができる。
【0018】
次に、輪郭画像から検出した底点P1と山部17の頂点P3との間と、底点P2と頂点P3との間とにそれぞれ2点ずつ設定する(図3に示すステップST17)。これは、各底点P1、P2を通る垂直線L2と平行であって垂直線L2より山部17の頂点P3方向に0.2mmだけ離間した垂直線L3と、0.5mmだけ離間した垂直線L4と輪郭線との交点P4、P5とを求める。同様に、垂直線L3及び垂直線L4と輪郭線との交点P6、P7を求める。
そして、輪郭画像から検出した底点P1、P2と山部17の頂点P3との間における2直線を設定する(図3に示すステップST18)。これは、交点P4、P5を結ぶ直線L5と、交点P6、P7を結ぶ直線L6を設定する。
【0019】
そして、基準測定線L1と直線L5とがなす角度と、基準測定線L1と直線L6とがなす角度とを測定する(図3に示すステップST19)。基準測定線L1と直線L5とがなす角度は、基準測定線L1と平行であって直線L5と直線L6との交点P8を通る直線L7と、直線L5とがなす第1角度θ1と等しい。また、基準測定線L1と直線L6とがなす角度は、直線L7と直線L6とがなす第2角度θ2と等しい。そこで、第1角度θ1及び第2角度θ2を測定する。また、第1角度θ1と第2角度θ2との差を算出する。
ここで、頂点P3及び底点P1と頂点P3及び底点P2との缶軸Oに沿ったそれぞれの距離の差が小さくなるほど、第1角度θ1と第2角度θ2との差が小さくなる。これにより、ネジ部14が設計値どおりに精度よく成形されていると判定することができる。
【0020】
その後、ステージ21の回転回数が2回未満であるか否かを判断する(図3に示すステップST20)。すなわち、ボトル缶10を0°、120°、240°の位置で3回測定しているか否かを判断する。
ステップST20において、ステージ21の回転回数が2回未満であれば、ステージ21を120°回転させて(図3に示すステップST21)ステップST12に戻り、再度ネジ部14の測定を行う。
一方、ステップST20において、ステージ21の回転回数が2回となっていれば、ボトル缶10を0°、120°、240°の位置で3回測定したと判断し、ボトル缶10をステージ21から搬出して(ステップST22)、終了する。
以上のようにして、ボトル缶10のネジ部14の形状を測定した後、この測定結果からボトル缶10の合否判定を行う。
【0021】
このように構成されたボトル缶10の測定方法によれば、山部17の頂点と缶軸方向両方で隣接する第1及び第2谷部18、19の底点P1、P2との間に設けられた2点を結ぶ直線L5、L6をそれぞれ取得し、この2直線がなす角度を測定することでネジ部14の形状を測定するので、山部17の頂点P3を基準としてネジ部14の形状を測定することと比較して、精度のよい測定を行うことができる。
また、口金部13の上端を基準測定線L1として測定しているので、各ボトル缶10における測定基準を一定にして、より安定した測定を行うことが可能になる。
【0022】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、口金部13をカメラ22で撮像し、撮像した画像データから口金部13の輪郭画像を取得しているが、口金部13に例えばレーザ光などを照射して、口金部13の投影像を得ることで口金部13の輪郭画像を取得する構成など、他の構成としてもよい。また、口金部13の投影像を取得する構成に限らず、CCDなどで口金部13を撮像した画像を基に輪郭画像を取得する構成や、照明光を照射せずに輪郭画像を取得する構成としてもよい。また、非接触で口金部13の輪郭線を取得する構成に限らず、口金部13に接触子を当ててトレースするなど、口金部に接触して輪郭線を取得する構成としてもよい。
また、輪郭画像において口金部13の上端を基準測定線L1としているが、基準測定線L1を設定しないでネジ部14の測定を行ってもよい。このとき、底点P1、P2は、第1及び第2谷部18、19において最もボトル缶10の径方向内方に位置する点として測定を行う。
また、底点P1から缶軸Oに対して垂直な方向で頂点P3に向けて0.2mm移動した点P4と0.5mm移動した点P5とを結ぶ直線を直線L5として設定しているが、点P4、P5の位置は底点P1と頂点P3との間であればよい。ここで、直線L6の設定方法においても、同様である。
また、第1及び第2谷部18、19共に底点P1、P2を垂直線L2が通るようにボトル缶10の径方向での位置が一致しているが、一致していなくてもよい。
また、第1及び第2角度θ1、θ2の測定後にボトル缶10を回転しているが、ボトル缶10の口金部13を各回転角度で撮像してから、それぞれの画像データを基に各回転角度での第1及び第2角度θ1、θ2の測定を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0023】
この発明によれば、ボトル缶の測定方法において、より精度よくネジ部を測定することができるので、産業上の利用可能性が認められる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態におけるボトル缶を示す部分断面図である。
【図2】一実施形態における測定装置を示す該略図である。
【図3】一実施形態における測定方法を示すフローチャートである。
【図4】口金部の輪郭画像である。
【図5】図4の部分拡大図である。
【符号の説明】
【0025】
10 ボトル缶
13 口金部
14 ネジ部
17 山部
18 第1谷部(一方の谷部)
19 第2谷部(他方の谷部)
L1 基準測定線
L5 直線(第1直線)
L6 直線(第2直線)
P1、P2 底点
P3 頂点
θ1 第1角度
θ2 第2角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面にネジ部が形成された口金部を有し、前記ネジ部が山部を介して形成された2つの谷部を有する金属製のボトル缶の測定方法において、
前記口金部の輪郭線を取得し、
該輪郭線上で前記山部の頂点と前記一方の谷部の底点との間に設けられた2点間を結ぶ第1直線と、前記輪郭線上で前記頂点と前記他方の谷部の底点との間に設けられた2点間を結ぶ第2直線とを設定し、
前記第1直線と前記第2直線とがなす角度を測定することを特徴とするボトル缶の測定方法。
【請求項2】
前記輪郭線から前記口金部の上端面の輪郭を基準測定線として取得し、
該基準測定線と前記第1直線とがなす第1角度と、前記基準測定線と前記第2直線とがなす第2角度との差を測定することを特徴とする請求項1に記載のボトル缶の測定方法。
【請求項3】
前記輪郭線から前記口金部の上端を基準測定線として取得し、
該基準測定線に対する垂直線と前記谷部との接点を該谷部の底点として検出することを特徴とする請求項1または2に記載のボトル缶の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−24769(P2007−24769A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−210089(P2005−210089)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(305060154)ユニバーサル製缶株式会社 (219)
【Fターム(参考)】