説明

ボロンナイトライドナノチューブペースト組成物、それを利用して製造された電子放出源、該電子放出源を含む電子放出素子、該電子放出素子を適用したバックライト装置及び電子放出ディスプレイ装置

【課題】ボロンナイトライドナノチューブペースト組成物、それを利用して製造された電子放出源、該電子放出源を含む電子放出素子、該電子放出素子を適用したバックライト装置及び電子放出ディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】ボロンナイトライドナノチューブ100重量部と、ガラスフリット250ないし1000重量部と、フィラー500ないし1000重量部と、有機溶媒1000ないし2000重量部と、バインダーポリマー2000ないし3000重量部と、を含むことを特徴とするボロンナイトライドナノチューブペースト組成物である。該ボロンナイトライドナノチューブペースト組成物を使用して形成された電子放出源を含む電子放出素子は、長寿命を具現し、画素間の均一度が向上する効果を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボロンナイトライドナノチューブペースト組成物、それを利用して製造された電子放出源、前記電子放出源を含む電子放出素子、前記電子放出素子を適用したバックライト装置及び電子放出ディスプレイ装置に係り、特に長寿命及び向上した画素間の均一度を具現できる電子放出源を製造できるボロンナイトライドナノチューブペースト組成物、それを利用して製造された電子放出源、前記電子放出源を含む電子放出素子、前記電子放出素子を適用したバックライト装置及び電子放出ディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電子放出素子は、電子放出源として熱陰極を利用する方式と冷陰極を利用する方式とがある。冷陰極を利用する方式の電子放出素子としては、FEA(Field Emitter Array)型、SCE(Surface Conduction Emitter)型、MIM(Metal Insulator Metal)型、MIS(Metal Insulator Semiconductor)型及びBSE(Ballistic electron Surface Emitting)型などが知られている。
【0003】
前述したような電子放出素子のうち、電子を放出させる電子放出源をなす物質として、カーボン系物質、例えば伝導性、電界集中効果及び電界放出特性に優れ、仕事関数の低いカーボンナノチューブが広く使われている。
【0004】
しかし、炭素ナノチューブは、電子放出時に非常に高温であるので、微量であっても酸素が存在する場合、COまたはCOに燃焼反応が起こって末端部分が焼けうる。また、炭素ナノチューブが巻かれた方向によってバンドギャップなどの特性が変わるが、その巻かれる方向を統制できずに導体または半導体性特性を制御できないという短所がある。すなわち、炭素ナノチューブは、材料の均一性及び寿命などに多くの問題点を有している。
【0005】
最近、炭素ナノチューブのかかる短所を解決するために、低価のカーバイド系列の化合物から炭素ナノチューブを代替できる物質を開発するための研究が進められており、具体的に、特許文献1は、カーバイドを炭素前駆物質として使用して運搬孔隙率を有する作業片を形成し、熱化学処理により前記作業片にナノサイズの孔隙を形成するステップを含む多孔性炭素製品の製造方法、及び前記製造された多孔性炭素製品を電気層キャパシタで電極物質として使用することを開示している。また、特許文献2によれば、所定のサイズを有するナノ気孔が分布されたナノ多孔性炭素を冷陰極として採用することを開示している。
【特許文献1】韓国公開特許第2001−13225号公報
【特許文献2】ロシア公開特許第2,249,876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、前記のように炭素ナノチューブにおける問題点を解決するためのものであって、安定性及び寿命改善、及び画素間の均一度の向上効果を有するボロンナイトライドナノチューブペースト組成物を提供するところにある。
【0007】
本発明の他の目的は、前記ボロンナイトライドナノチューブペースト組成物を使用して形成されたボロンナイトライドナノチューブ電子放出源を提供するところにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、前記ボロンナイトライドナノチューブ電子放出源を備える電子放出素子を提供するところにある。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、前記電子放出素子を適用したバックライト装置を提供するところにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、前記電子放出素子を適用した電子放出ディスプレイ装置を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記目的を達成するための第1態様において、ボロンナイトライドナノチューブ100重量部と、ガラスフリット250ないし1000重量部と、フィラー500ないし1000重量部と、有機溶媒1000ないし2000重量部と、バインダーポリマー2000ないし3000重量部と、を含むことを特徴とするボロンナイトライドナノチューブペースト組成物を提供する。
【0012】
前記ボロンナイトライドナノチューブは、望ましくは、B及びNの含量比が1:0.5ないし1.5である。
【0013】
前記ボロンナイトライドナノチューブペースト組成物は、その他にも、必要に応じて通常的に使われる粘度改善剤、レベリング向上剤、分散制及び消泡剤などをさらに含む。
【0014】
また、本発明は、前記他の目的を達成するための第2態様において、前記本発明によるボロンナイトライドナノチューブペースト組成物を印刷及び焼成する工程を通じて形成されたボロンナイトライドナノチューブ電子放出源を提供する。
【0015】
また、本発明は、前記さらに他の目的を達成するための第3態様において、基板と、前記基板上に配置されたカソード電極と、前記カソード電極と電気的に絶縁されるように配置されたゲート電極と、前記カソード電極と前記ゲート電極とを絶縁させる絶縁体層と、前記カソード電極の一部を露出させる電子放出源ホールと、前記電子放出源ホールに備えられて前記カソード電極と電気的に連結された電子放出源と、前記電子放出源と対向する蛍光体層と、を備える電子放出素子であって、前記電子放出源は、ボロンナイトライドナノチューブ100重量部、ガラスフリット250ないし1000重量部、フィラー500ないし1000重量部及びバインダーポリマー2000ないし3000重量部を含むボロンナイトライドナノチューブ電子放出源であることを特徴とする電子放出素子を提供する。
【0016】
望ましくは、前記電子放出源は、比抵抗が25℃で10−3Ω・cmないし10−8Ω・cmである。
【0017】
前記電子放出素子は、前記ゲート絶縁層の上面に形成されたゲート電極をさらに備えて3極構造を形成できる。
【0018】
また、本発明は、前記さらに他の目的を達成するための第4態様において、本発明による電子放出素子を備えることを特徴とする電子放出型バックライト装置を提供する。
【0019】
また、本発明は、前記さらに他の目的を達成するための第5態様において、本発明による電子放出素子を備えることを特徴とする電子放出ディスプレイ装置を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明による電子放出素子は、炭素ナノチューブの代わりにボロンナイトライドナノチューブを使用してエミッタを形成しているため、炭素ナノチューブを使用した場合に惹起された酸化による寿命劣化を解決して長寿命を具現できる。また、従来の炭素ナノチューブエミッタにおいて、炭素ナノチューブの一定な電気的特性を具現しないことによって、電子放出素子の駆動時に明滅現象が発生した問題点があったが、本発明による電子放出素子は、一定な電気的特性を有するボロンナイトライドナノチューブを使用して解決したところ、画素間の均一度が向上する効果をもたらす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0022】
本発明は、ボロンナイトライドナノチューブ100重量部と、ガラスフリット250ないし1000重量部と、フィラー500ないし1000重量部と、有機溶媒1000ないし2000重量部と、バインダーポリマー2000ないし3000重量部と、を含むことを特徴とするボロンナイトライドナノチューブペースト組成物を提供する。
【0023】
ボロンナイトライドナノチューブは、炭素ナノチューブと同じ構造を有しているが、酸素と反応しないため、安定性に優れており、高温での耐熱性もさらに優秀である。
【0024】
本発明で使われるボロンナイトライドナノチューブは、炭素ナノチューブと同じ構造を有しており、このとき、炭素の代わりにランダムにボロンまたは窒素が置換された構造である。かかるボロンナイトライドナノチューブは、ボロン及び窒素のみからなってもよく、炭素をさらに含んでもよい。
【0025】
望ましくは、本発明に使われるボロンナイトライドナノチューブにおいて、B及びNの含量比は1:0.5ないし1.5である。Nの含量が1:0.5未満でNの含量が相対的に少ない場合、構造が不安定であるという問題点があり、1:1.5を超えてNの含量が相対的に多い場合、電子放出電流密度が低いという問題点がある。
【0026】
また、前記ボロンナイトライドナノチューブがB、N及びCからなる場合、望ましくは、炭素の含量がボロン100重量部に対して0.01ないし100重量部である。炭素の含量がボロン100重量部に対して100重量部を超えて相対的に多い場合、電子放出時に酸化反応が起こるという問題点がある。
【0027】
前記ボロンナイトライドナノチューブは、炭素ナノチューブの製造法と同じ方法を利用して合成できる。
【0028】
まず、アーク放電法を利用して合成できる。黒鉛棒にホールを形成した後にボロンナイトライド粉末を充填して、それを正極として使用してアーク放電を実施すれば、B、N及びCを含むナノチューブを合成でき、黒鉛棒の代わりにタングステン棒を利用すれば、Cの含量のないボロンナイトライドナノチューブを合成できる。
【0029】
また、化学気相蒸着法を利用してボロンナイトライドナノチューブを合成できる。反応器内に触媒金属(Ni,Co,Feまたはそれらの合金物質)を装着した後、温度を約700ないし900℃で加熱しつつBを含むガス(例えば、BCl)とNを含むガス(例えば、NH)とを供給すれば、ボロンナイトライドナノチューブを形成できる。
【0030】
以下、本発明によるボロンナイトライドナノチューブペースト組成物について詳述する。
【0031】
前記ガラスフリットの含量が前記ボロンナイトライドナノチューブ100重量部を基準として250重量部未満である場合には、ペーストの付着性に劣り、放出電流密度が低くなるという問題点があり、1000重量部を超える場合には、組成物の粘度が高すぎて印刷しがたく、放出電流密度も低くなるという問題点がある。
【0032】
前記フィラーは、ボロンナイトライドナノチューブの配列性を改善するために使われ、その例としてAg,Al,In,SnOなどが挙げられる。前記フィラーの含量が前記ボロンナイトライドナノチューブの100重量部を基準として500重量部未満である場合には、電子放出源の形成時にボロンナイトライドナノチューブがよく配列されずに結果的に優秀な電子放出特性が得られないという問題点があり、1000重量部を超える場合には、組成物の粘度が高すぎて印刷しがたいという短所がある。
【0033】
前記有機溶媒は、本発明の組成物の粘度を調節するために使われ、テルピネオール、ブチルカルビトールアセテート、トルエンまたはテキサノールを使用することが望ましい。また、前記有機溶媒の含量は、前記ボロンナイトライドナノチューブの100重量部を基準として1000ないし2000重量部であることが望ましい。前記有機溶媒の含量が1000重量部未満である場合には、組成物の粘度が高すぎて印刷しがたいという問題点があり、2000重量部を超える場合には、組成物の粘度が低すぎて適当な印刷厚さを確保しがたい。
【0034】
前記バインダーポリマーは、ペースト内で各成分の結合力を向上させるために使われ、その例として、MMA−MAA(メチルメタクリレート−メチルアクリル酸)、MMA−AA−PS(メチルメタクリレート−アクリル酸−ポリスチレン)などが挙げられる。前記バインダーポリマーの含量が前記ボロンナイトライドナノチューブの100重量部を基準として2000重量部未満である場合には、結合力が弱いという問題点があり、3000重量部を超える場合には、印刷性及び電子放出特性が低いという問題点がある。
【0035】
また、本発明のボロンナイトライドナノチューブペースト組成物は、粘度改善剤、レベリング向上剤、分散剤、消泡剤などをさらに含む。前記粘度改善剤、レベリング向上剤、分散剤、消泡剤のような添加剤の含量は、それぞれ0重量%より多く、10重量%以下であることが望ましい。前記分散剤としては、一般的に使用される界面活性剤及び消泡剤を使用する。
【0036】
以下、本発明のボロンナイトライドナノチューブペースト組成物の製造方法を説明する。
【0037】
本発明のボロンナイトライドナノチューブペースト組成物は、電子放出源形成用組成物であって、まず、ボロンナイトライドナノチューブ粉末、ガラスフリット、フィラー粉末を混合して製造される。前記ボロンナイトライドナノチューブ粉末とガラスフリットとの混合時に、ボールミルを使用して5ないし100rpmの速度で1ないし24時間回転させて混合することもできる。
【0038】
これとは別途に、バインダーポリマーを準備する。それを有機溶媒に希釈させる。前記有機溶媒としては、テルピネオール、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、トルエンまたはテキサノールを使用することが望ましい。このとき、前記樹脂混合物に分散剤を添加することもできる。
【0039】
前記分散剤としては、一般的に使用される製品であるテゴ社のFoamex 810、BYK−164などを使用でき、分散剤の含量は、0重量%より多く、10重量%未満であることが望ましい。
【0040】
まず、ボロンナイトライドナノチューブ粉末及びガラスフリットの混合物をバインダーポリマーと混合する。前記ボロンナイトライドナノチューブ粉末とガラスフリットとの混合物が樹脂混合物と均一に混ざるように分散させる。前記ボロンナイトライドナノチューブ粉末とガラスフリットとの混合物及び樹脂混合物の混合物に消泡剤を0重量%より多く、10重量%以下の含量で添加でき、ここに分散剤0ないし10重量%を添加して1ないし10時間攪拌する。
【0041】
次いで、有機溶媒を添加して、粘度が10,000cPないし50,000cPである本発明のボロンナイトライドナノチューブペースト組成物を製造する。前記有機溶媒としては、テルピネオール、BCA、トルエンまたはテキサノールを使用することが望ましい。前記有機溶媒の含量は、20ないし40重量%であることが望ましい。前記有機溶媒の含量が40重量%を超える場合には、組成物の粘度が低すぎて適当な印刷厚さを確保しがたい。
【0042】
また、本発明は、前記本発明によるボロンナイトライドナノチューブペースト組成物を印刷及び焼成する工程を通じて形成されたボロンナイトライドナノチューブ電子放出源を提供する。
【0043】
また、本発明は、基板と、前記基板上に配置されたカソード電極と、前記カソード電極と電気的に絶縁されるように配置されたゲート電極と、前記カソード電極と前記ゲート電極とを絶縁させる絶縁体層と、前記カソード電極の一部を露出させる電子放出源ホールと、前記電子放出源ホールに備えられて前記カソード電極と電気的に連結された電子放出源と、前記電子放出源と対向する蛍光体層と、を備える電子放出素子であって、前記電子放出源は、ボロンナイトライドナノチューブ100重量部、ガラスフリット250ないし1000重量部、フィラー500ないし1000重量部及びバインダーポリマー2000ないし3000重量部を含むボロンナイトライドナノチューブ電子放出源であることを特徴とする電子放出素子を提供する。
【0044】
電子放出素子用の電子放出源として一般的に導体を使用するが、本発明によるボロンナイトライドナノチューブは、半導体的性質を有する。これによって発光特性が低下する恐れがあるが、これは、ゲート電圧を上昇させることによって補償が可能である。このとき、電圧はパルスで印加されるため、コストがあまり問題とならない。
【0045】
前記電子放出源は、炭素ナノチューブとは異なり、半導体的特性を有する。その比抵抗値は、約25℃で10−3Ω・cmないし10−8Ω・cmでありうる。
【0046】
望ましくは、前記電子放出源は、前述した本発明によるボロンナイトライドナノチューブペースト組成物として製造されたボロンナイトライドナノチューブである。
【0047】
したがって、前記電子放出源は、望ましくは、比抵抗が25℃で10−3Ω・cmないし10−8Ω・cmである。
【0048】
また、前記電子放出源において、望ましくは、ボロンナイトライドナノチューブのB及びNの含量比が1:0.5ないし1.5である。
【0049】
また、前記電子放出源において、前記ボロンナイトライドナノチューブが炭素をさらに含むことがある。前記炭素の含量は、望ましくは、ボロン100重量部に対して0.01ないし100重量部である。
【0050】
ボロンナイトライドナノチューブ電子放出源は、カソード電極上に一般的な炭素ナノチューブ電子放出源の製造時に使われるペースト法を適用できる。このとき、炭素ナノチューブペースト組成物の代わりに、本発明によるボロンナイトライドナノチューブペースト組成物を使用する。すなわち、ペースト形態のボロンナイトライドナノチューブペースト組成物をカソード電極上に印刷した後、それを焼成する工程を通じてボロンナイトライドナノチューブ電子放出源を形成できる。このとき、ボロンナイトライドナノチューブは、単一壁及び多重壁いずれも使用することが可能である。
【0051】
例えば、本発明のボロンナイトライドナノチューブ電子放出源は、次のように製造される。まず、前記した方法のように製造されたボロンナイトライドナノチューブペースト組成物をカソード電極に印刷して厚膜を形成し、それを90ないし110℃の温度で10分ないし1時間乾燥させる。
【0052】
次いで、マスクを使用して前記厚膜を露光する。このとき、露光エネルギーは、100ないし20,000mJ/cmであることが望ましく、所望の膜厚さによって調節できる。前記露光された膜を0.4ないし5%の炭酸ナトリウム水溶液とアセトンの混合溶液、またはエタノールで現像し、超音波クリーナを利用して残渣を除去する。
【0053】
前記現像膜を空気及び窒素雰囲気下で400ないし500℃の温度で10ないし30分間焼成して、ボロンナイトライドナノチューブ電子放出源を製造する。前記焼成温度が400℃未満である場合には、有機物成分が除去されず、ガラスフリットを溶かすことができないという問題点があって望ましくなく、500℃を超える場合には、カソード電極が不安定であるという問題点があって望ましくない。
【0054】
図1Aないし図1Eは、本発明の望ましい第1実施形態による電子放出素子の製造方法を概略的に示す図面である。以下、本発明による電子放出素子の製造方法を、図1Aないし図1Eを参照して説明する。
【0055】
図1Aに示したように、基板10上にカソード電極11を形成する。前記基板10は、一般的にガラス基板が使われる。そして、前記カソード電極11は、透明な導電性物質、例えばITO(Indium Tin Oxide)からなる。
【0056】
具体的に、基板10上にカソード電極層を蒸着した後、それを所定の形状、例えばライン状にパターニングしてカソード電極11を形成する。望ましくは、前記カソード電極は、ライン状である。
【0057】
図1Bに示したように、前記カソード電極11上にエミッタを積層してエミッタ層を形成する。前記エミッタ層としてボロンナイトライドナノチューブ電子放出源を使用する。すなわち、前記ペースト形態のボロンナイトライドナノチューブ組成物を前記カソード電極11上に塗布してエミッタ層を形成する。
【0058】
前記カソード電極11上にエミッタ層を形成した後には、前記エミッタ層を所望のエミッタパターンによってパターニングしてエミッタ12を形成する。かかるパターニングは、公知の任意の技術によって行われ、一例を挙げて説明すれば、次の通りである。
【0059】
透明基板10の下部にマスク(図示せず)を整列し、前記透明基板10に向かってUVを照射する。前記マスクには、所望のエミッタパターンに対応するパターンがあらかじめ形成されている。したがって、前記マスクを通じてUVを照射すれば、前記エミッタ層は、マスクのパターンによって感光される。最後に、例えばアセトンなどを利用して前記エミッタ層を洗浄すれば、図1Bに示したような電子放出素子用のエミッタ12が完成する。
【0060】
図1Cに示したように、前記エミッタ12が形成された基板構造物の表面に前記エミッタ12を埋め込むように、感光性ガラスペースト13aを塗布する。それを乾燥して得られた結果物を背面露光する。これにより、エミッタの上部に存在する感光性ガラスペーストは、露光されていない領域として残っており、残りの部分の感光性ガラスペーストは、露光された領域となる。このとき、望ましくは、200ないし500mJ/cmの強度で露光させる。
【0061】
感光性ガラスペーストは、ガラス粉末、感光性樹脂及び溶剤を含有するペースト型組成物である。
【0062】
ガラス粉末の具体例としては、(1)酸化鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素、酸化カルシウム(PbO−B−SiO−CaO系)(2)酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素(ZnO−B−SiO系)(3)酸化鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素、酸化アルミニウム(PbO−B−SiO−Al系)(4)酸化鉛、酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素(PbO−ZnO−B−SiO系)(5)酸化鉛、酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素、酸化チタン(PbO−ZnO−B−SiO−TiO系)などが挙げられる。また、それらのガラス粉末に、例えば、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化マンガンなどの無機酸化物化合物粉末を混合して使用することもできる。
【0063】
前記感光性樹脂は、電子放出源のパターニングに使われる物質であって、かかる感光性樹脂の具体的な例としては、これに制限されるものではないが、熱分解性アクリレート系のモノマー、ベンゾフェノン系モノマー、アセトフェノン系モノマーまたはチオキサントン系モノマーなどがあり、さらに具体的には、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、2,4−ジエチルオキサントンまたは2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンを使用できる。
【0064】
前記感光性物質の含量は、ガラス粉末100重量部を基準として3ないし7重量部でありうる。感光性樹脂の含量がガラス粉末100重量部を基準として3重量部未満である場合には、露光感度が低下し、7重量部を超える場合には、現像がよく行われないために望ましくない。
【0065】
前記溶剤としては、BCA、テルピネオール(TP)、トルエン、テキサノール及びブチルカルビトール(BC)からなる群から選択された一つ以上を組み合わせて使用できる。
【0066】
本発明の組成物での溶剤の含有割合としては、ペースト組成物の粘度を望ましい範囲に維持する観点で、ガラス粉末100重量部に対して10ないし20重量部であることが望ましい。前記範囲の溶剤の含量で印刷工程が効率的に行われるように調節できる。
【0067】
本発明で使われる感光性ガラスペーストは、光開始剤、粘度改善剤、解像度改善剤、分散剤及び消泡剤からなる群から選択された一つ以上の添加剤をさらに含むこともできる。光開始剤は、前記感光性樹脂が露光される時に感光性樹脂の架橋結合を開始する役割を行う。前記光開始剤の非制限的な例としては、ベンゾフェノンなどがある。
【0068】
図1Cでの結果物を露光させた後に現像すれば、エミッタ層の上部の露光されていない領域が除去され、それを450ないし500℃の温度で焼成及び硬化させることによって、図1Dに示したようにゲート絶縁層13bを形成する。
【0069】
本発明による電子放出素子は、前記ゲート絶縁層の上面にゲート電極を形成するステップをさらに含むことによって、3極構造を形成できる。図1Eに示したように、前記ゲート絶縁層13b上にゲート電極14を形成する。ゲート電極14は、前記エミッタの上部の貫通孔に対応するゲートホールを有し、いわゆる薄膜工程である金属物質の蒸着及びパターニングまたは厚膜工程である金属ペーストのスクリーンプリンティングなどにより形成される。
【0070】
前記電子放出素子は、多様な電子装置、例えばLCD(Liquid Crystal Display)などのバックライト装置などに使われるか、または電子放出ディスプレイ装置に使われる。
【0071】
本発明は、本発明による電子放出素子を備えている電子放出型バックライト装置を提供する。
【0072】
前記バックライト装置は、所定の間隔で平行に配置された上部基板及び下部基板と、前記上部基板に形成されたアノード電極と、前記アノード電極上に所定厚さに形成された蛍光層と、前記上部基板と前記下部基板との間に介在された本発明による電子放出素子と、を備える。
【0073】
前記バックライト装置の作用を説明すれば、まず、ゲート電極に所定の電圧を印加し、アノード電極に所定の電圧を印加すれば、電子放出源から電子が放出される。このように放出された電子は、アノード電極に向かって進められ、蛍光層に衝突する。このとき、蛍光層から可視光線が排出され、この可視光線は、上部基板及び/または下部基板を通過する。
【0074】
本発明は、本発明による電子放出素子を備えている電子放出ディスプレイ装置を提供する。
【0075】
図2は、本発明による電子放出表示装置のうち、トップゲート型電子放出ディスプレイ装置の概略的な構成を示す部分斜視図であり、図3は、図2のII−II線の断面図である。
【0076】
図2及び図3に示したように、電子放出ディスプレイ装置100は、平行に配置されて真空の発光空間103を形成する本発明の電子放出素子101及び前面パネル102と、前記電子放出素子101と前面パネル102との間隔を維持するスペーサ60と、を備える。
【0077】
前記電子放出素子101は、第1基板110、前記第1基板110上に交差して配置されたゲート電極140及びカソード電極120、前記ゲート電極140と前記カソード電極120との間に配置されて、前記ゲート電極140と前記カソード電極120とを電気的に絶縁する絶縁体層130を備える。
【0078】
前記ゲート電極140と前記カソード電極120とが交差する領域には、電子放出源ホール131が形成されており、その内部に電子放出源150が配置されている。
【0079】
前記前面パネル102は、第2基板90、前記第2基板90の底面に配置されたアノード電極80、及び前記アノード電極80の底面に配置された蛍光体層70を備える。
【0080】
本発明による電子放出ディスプレイ装置は、前記図2及び図3を例として説明したが、第2絶縁体層及び/または集束電極をさらに備える電子放出表示装置のような多様な変形例が可能であることはいうまでもない。
【0081】
以下、下記の実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲が実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0082】
テルピネオール20gにボロンナイトライド粉末2g、バインダーポリマー50g、In粉末15g、ガラスフリット10g、分散剤であるBYK111 3gを添加及び攪拌して、ペースト状態の電子放出源形成用の組成物を製造した。
【0083】
ガラス基板上にITOカソード電極をラインパターニングし、ここに前記電子放出源形成用の組成物を塗布した後、1000mJ/cmの露光エネルギーで平行露光器を利用して照射した。次いで、アセトンを利用して現像して、電子放出源形成領域に電子放出源形成用の組成物を形成した。
【0084】
前記結果物に感光性ガラスペースト組成物を塗布して乾燥して、感光性ガラスペースト層を形成した。それを基板の後面で300mJ/cmの露光エネルギーで平行露光器を利用して照射した。アルカリ現像液としてカーボネートナトリウム塩を利用して現像し、500℃の温度及び空気ガス存在下で熱処理してゲート絶縁層を形成した。
【0085】
前記ゲート絶縁層上に、(ゲート電極の材料、例えばCr)ゲート電極を形成して電子放出素子を製造した。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、ディスプレイ装置関連の技術分野に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1A】本発明の一実施形態による電子放出素子の製造方法を説明するための図面である。
【図1B】本発明の一実施形態による電子放出素子の製造方法を説明するための図面である。
【図1C】本発明の一実施形態による電子放出素子の製造方法を説明するための図面である。
【図1D】本発明の一実施形態による電子放出素子の製造方法を説明するための図面である。
【図1E】本発明の一実施形態による電子放出素子の製造方法を説明するための図面である。
【図2】本発明による電子放出素子の構成を概略的に示す斜視図である。
【図3】図2のII−II線の断面図である。
【符号の説明】
【0088】
60 スペーサ
70 蛍光体層
80 アノード電極
90 第2基板
100 電子放出ディスプレイ装置
101 電子放出素子
102 前面パネル
103 発光空間
110 第1基板
120 カソード電極
130 第1絶縁体層
131 電子放出源ホール
140 ゲート電極
150 電子放出源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボロンナイトライドナノチューブ100重量部と、
ガラスフリット250ないし1000重量部と、
フィラー500ないし1000重量部と、
有機溶媒1000ないし2000重量部と、
バインダーポリマー2000ないし3000重量部と、を含むことを特徴とするボロンナイトライドナノチューブペースト組成物。
【請求項2】
前記ボロンナイトライドナノチューブにおいて、B及びNの含量比が1:0.5ないし1.5であることを特徴とする請求項1に記載のボロンナイトライドナノチューブペースト組成物。
【請求項3】
前記ボロンナイトライドナノチューブは、炭素をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のボロンナイトライドナノチューブペースト組成物。
【請求項4】
前記炭素の含量は、ボロン100重量部に対して0.01ないし100重量部であることを特徴とする請求項3に記載のボロンナイトライドナノチューブペースト組成物。
【請求項5】
前記フィラーは、Ag,Al,InまたはSnOであることを特徴とする請求項1に記載のボロンナイトライドナノチューブペースト組成物。
【請求項6】
前記有機溶媒は、テルピネオール、ブチルカルビトールアセテートまたはテキサノールであることを特徴とする請求項1に記載のボロンナイトライドナノチューブペースト組成物。
【請求項7】
前記バインダーポリマーは、MMA−MAAまたはMMA−AA−PSであることを特徴とする請求項1に記載のボロンナイトライドナノチューブペースト組成物。
【請求項8】
粘度改善剤、レベリング向上剤、分散剤及び消泡剤からなる群から選択された一つ以上をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のボロンナイトライドナノチューブペースト組成物。
【請求項9】
請求項1ないし8に記載のボロンナイトライドナノチューブペースト組成物を印刷及び焼成する工程を通じて形成されたことを特徴とするボロンナイトライドナノチューブ電子放出源。
【請求項10】
基板と、
前記基板上に配置されたカソード電極と、
前記カソード電極と電気的に絶縁されるように配置されたゲート電極と、
前記カソード電極と前記ゲート電極とを絶縁させる絶縁体層と、
前記カソード電極の一部を露出させる電子放出源ホールと、
前記電子放出源ホールに備えられて前記カソード電極と電気的に連結された電子放出源と、
前記電子放出源と対向する蛍光体層と、を備える電子放出素子であって、
前記電子放出源は、ボロンナイトライドナノチューブ100重量部、ガラスフリット250ないし1000重量部、フィラー500ないし1000重量部、及びバインダーポリマー2000ないし3000重量部を含むボロンナイトライドナノチューブ電子放出源であることを特徴とする電子放出素子。
【請求項11】
前記電子放出源は、比抵抗が25℃で10−3Ω・cmないし10−8Ω・cmであることを特徴とする請求項10に記載の電子放出素子。
【請求項12】
前記ボロンナイトライドナノチューブ電子放出源において、ボロンナイトライドナノチューブのB及びNの含量比が1:0.5ないし1.5であることを特徴とする請求項10に記載の電子放出素子。
【請求項13】
前記ボロンナイトライドナノチューブは、炭素をさらに含むことを特徴とする請求項12に記載の電子放出素子。
【請求項14】
前記炭素の含量は、ボロン100重量部に対して0.01ないし100重量部であることを特徴とする請求項13に記載の電子放出素子。
【請求項15】
前記カソード電極は、基板に平行な方向にラインパターンであることを特徴とする請求項10に記載の電子放出素子。
【請求項16】
前記ゲート絶縁層の上面に形成されたゲート電極をさらに備えて3極構造を形成することを特徴とする請求項10に記載の電子放出素子。
【請求項17】
請求項10に記載の電子放出素子を備えていることを特徴とする電子放出型バックライト装置。
【請求項18】
請求項10に記載の電子放出素子を備えていることを特徴とする電子放出ディスプレイ装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−117360(P2009−117360A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274785(P2008−274785)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】