説明

ボンディング装置及びボンディング方法

【課題】ボンディング装置10において、電極とパッド及びワイヤ双方の表面洗浄を効果的に行う。
【解決手段】内部を不活性ガス雰囲気に保持するチャンバ12と、チャンバ12に取付けられ、プラズマ化したガスをチャンバ12内に置かれた基板41と半導体チップ42に照射してパッドと電極の表面処理を行う第1のプラズマトーチ20と、チャンバ12に取付けられ、プラズマ化したガスをチャンバ12内に位置するキャピラリ17先端のイニシャルボール19又はワイヤ18に照射してイニシャルボール19又はワイヤ18の表面処理を行う第2のプラズマトーチ30と、表面処理されたパッドと電極とに表面処理されたイニシャルボール19、ワイヤ18をチャンバ12内でボンディングするボンディング処理部100を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボンディング装置の構造及びそのボンディング装置を用いるボンディング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップの電極部のパッドと回路基板の電極との間を金属細線のワイヤで接続するワイヤボンディング装置において、パッド又は電極にワイヤを超音波あるいは熱圧着によって接続する際には、パッド又は電極の表面状態がボンディング品質にとって重要となる。つまり、パッド或いは電極の金属層表面に汚染、水分或いは異物の付着があると、パッド或いは電極とワイヤとの間で良好な電気的接合を行うことができず、また機械的接合強度も弱くなってしまうという問題が発生する。そこで、ボンディング処理を行う前に、パッド或いは電極の汚染、水分或いは異物を除去する表面処理が行われることが多い。
【0003】
従来、このような金属表面の汚染、或いは異物の除去を行う表面処理は、水分除去溶剤、有機物汚染除去溶剤をそれぞれ接合する金属表面に向かってスプレーした後、不活性ガス雰囲気で乾燥、除電するウェット洗浄が用いられていた。しかし、このようなウェット洗浄を行う装置は洗浄液の供給、排出、廃液処理が必要なため、装置全体が大型となってしまいワイヤボンディング装置に組み込みにくいという問題があった。
【0004】
そこで、溶剤を用いず、ドライ状態で金属表面の洗浄を行う方法として、金属表面にプラズマを照射して洗浄を行う方法が提案されている。例えば、特許文献1には、半導体チップのパッド表面にアルゴンガスのプラズマを照射して金属表面を洗浄する方法が提案されている。また、特許文献1には、良好なボンディングを行うために、ワイヤをスパークによってボールに成形する際にスパーク電圧や電流を調整して結晶粒を大径化させ、ボールを軟らかくしてから半導体チップのパッドに押圧して接合する方法が提案されている。この方法はボールを軟らかくすることによって、パッドに押圧した際のボールの変形を大きくし、変形によってボール形成の際にボール表面に形成される酸化膜や付着物による殻を破り、金属の新生面を露出させ、その新生面を洗浄されたパッド表面に押圧することによって良好なボンディングを行おうとするものである。
【0005】
また、特許文献2には、半導体チップをリードフレームあるいは基板にフリップチップ実装する際に、リードフレームあるいは基板の表面の電極にアルゴンガスのプラズマを照射して洗浄を行うと共に、半導体チップの電極上に形成されたスタッドバンプの表面にレーザーを照射し、スタッドバンプの結晶粒を大径化してスタッドバンプを軟らかくし、スタッドバンプを電極に押圧する方法が提案されている。この方法は、スタッドバンプがリードフレームあるいは基板の電極に押圧された際の変形を大きくし、この変形によってスタッドバンプ表面の酸化膜や付着物による殻を破り金属の新生面を露出させ、その新生面を洗浄されたパッド表面に押圧することによって良好なボンディングを行おうとするものである。
【0006】
また、特許文献3には、マイクロアークによってキャピラリ先端に延出したワイヤをボールに成形し、ボールが溶融状態のままパッドにボンディングすることによって超音波を使わずに少ない荷重でワイヤをパッドにボンディングする方法、及び電極の金属表面にアルゴンのマイクロプラズマアークを照射して金属表面の洗浄を行った後、電極にワイヤをボンディングする方法が提案されている。
【0007】
【特許文献1】特開2006−332152号公報
【特許文献2】特開2006−332151号公報
【特許文献3】特開2001−68500号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1又は2に記載された従来技術は、ボール又はスタッドバンプを軟らかくし、ボール又はスタッドバンプが電極面に押し付けられる際に表面の酸化膜や付着物の殻が破れるようにして金属の新生面が電極面に接触できるようにすることにより良好なボンディングを行おうとする方法であり、表面の酸化膜の或いは付着物を除去するものではない。このため、特許文献1又は2に記載された従来技術では、ボール又はスタッドバンプ表面の酸化膜や付着物の殻はボンディングの際に金属表面とボール或いはスタッドバンプとの間に挟まれてしまい、良好な接合を行うことができない場合がある。
【0009】
また、特許文献1から3に記載された従来技術では、半導体チップのパッド或いはリードフレーム又は基板の電極の表面についてはプラズマ照射によって洗浄が行えるものの、パッド或いは電極にボンディングされるボール又はワイヤの洗浄が行えず、ボール又はワイヤ表面の付着物によって良好な接合ができない場合がある。
【0010】
本発明は、ボンディング対象及びイニシャルボール、ワイヤ双方の表面処理を効果的に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によるボンディング装置は、ボンディングツールに挿通したワイヤによってボンディング対象にボンディング処理を行うボンディング装置であって、内部を不活性ガス雰囲気に保持するチャンバと、チャンバに取付けられ、プラズマ化したガスをチャンバ内に置かれたボンディング対象に照射してボンディング対象の表面処理を行う第1のプラズマトーチと、チャンバに取付けられ、プラズマ化したガスをチャンバ内に位置するボンディングツール先端のイニシャルボールとワイヤのいずれか一方又は両方に照射してイニシャルボールとワイヤのいずれか一方又は両方の表面処理を行う第2のプラズマトーチと、
表面処理されたボンディング対象に表面処理されたイニシャルボールとワイヤのいずれか一方又は両方をチャンバ内でボンディングするボンディング処理部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明によるボンディング装置において、チャンバは架台に取り付けられ、ボンディング処理部は、ボンディング対象のボンディング面に沿った方向にボンディング対象を移動させるステージと、ボンディング対象に接離する方向にボンディングツールを移動させるボンディングヘッドとを含むこと、としても好適であるし、プラズマ化したガスは、希ガスと水素との混合ガスをプラズマ化したものであること、としても好適であるし、プラズマ化した希ガスに水素を混入する混入ノズルを備えること、としても好適である。
【0013】
本発明によるボンディング方法は、ボンディングツールに挿通したワイヤによってボンディング対象にボンディング処理を行うボンディング方法であって、内部を不活性ガス雰囲気に保持するチャンバに取付けられた第1のプラズマトーチによってプラズマ化したガスをチャンバ内に置かれたボンディング対象に照射してボンディング対象の表面処理を行う第1の表面処理工程と、チャンバに取付けられた第2のプラズマトーチによってプラズマ化したガスをチャンバ内に位置するボンディングツール先端のイニシャルボールとワイヤのいずれか一方又は両方に照射してイニシャルボールとワイヤのいずれか一方又は両方の表面処理を行う第2の表面処理工程と、表面処理されたボンディング対象に表面処理されたイニシャルボールとワイヤのいずれか一方又は両方をチャンバ内でボンディングするボンディング工程と、を備えることを特徴とする。また、本発明によるボンディング方法において、希ガスと水素との混合ガスをプラズマ化すること、としても好適であるし、第1、第2の表面処理工程は、それぞれプラズマ化した希ガスに水素を混入して、ボンディング対象と、イニシャルボールとワイヤのいずれか一方又は両方と、に照射すること、
としても好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、ボンディング対象及びイニシャルボール、ワイヤ双方の表面処理を効果的に行うことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1に示すように、本実施形態のボンディング装置10は、架台11と、架台11の上に取り付けられたボンディングステージ13と、ボンディング対象である表面に半導体チップ42が取り付けられた基板41を図中のX方向に向けて搬送する搬送路14と、ボンディングツールであるキャピラリ17と、キャピラリ17が取り付けられたボンディングアーム16と、架台11に固定され、ボンディングアーム16を駆動するボンディングヘッド15と、架台11に取り付けられ、ボンディングステージ13と搬送路14とを囲むチャンバ12と、チャンバ12に取り付けられた第1のプラズマトーチ20と、2つの第2のプラズマトーチ30と、各プラズマトーチ20,30とにプラズマ用ガスを供給するプラズマ用ガス供給部60と、各プラズマトーチ20,30にプラズマ発生用の高周波電力を供給する高周波電力供給部70と、ボンディングヘッド15とプラズマ用ガス供給部60と高周波電力供給部70と搬送路14とボンディングステージ13が接続され、各要素を一体として制御する制御部80と、図2に示すように、搬送路14に半導体チップ42が表面に取り付けられた基板41を供給する供給スタック53と、ボンディングステージ13でボンディング処理の終了した基板41をストックする製品スタック54とを備えている。
【0016】
ボンディングステージ13は、ボンディングを行うボンディング面の表面に基板41を固定する真空吸着孔を備え、図示しない真空装置によって真空吸着孔を真空とすることによってボンディング面に基板41を吸着固定する。また、図1に示すようにボンディングステージ13は、XY方向駆動機構によって基板41のボンディング面に沿って図中のXY方向に移動するよう構成されている。搬送路14は、搬送方向の両側で基板41を支持し、図2に示す供給スタック53から製品スタック54に向かって図中のX方向に基板41を搬送すると共に、図1に示すように、搬送路14の途中にある洗浄位置27に基板41を停止させ、また洗浄位置27からボンディングステージ13に基板41を移動させ、或いはボンディングステージ13から製品スタック54に基板41を搬送する。
【0017】
ボンディングヘッド15は、内部にボンディングアーム16を揺動駆動して、ボンディングアーム16の先端をボンディングステージ13に吸着固定された基板41の接離方向であるZ方向に駆動するZ方向モータが設けられている。ボンディングアーム16のボンディングステージ13に向かう先端にはボンディングツールであるキャピラリ17が取り付けられている。キャピラリ17の先端側は先端に向かって細くなるテーパ形状で、根元側は円筒形状であり、円筒部分でボンディングアーム16に取り付けられている。キャピラリ17は、その中心に貫通孔を有し、貫通孔には金製の細線であるワイヤ18が挿通されている。キャピラリ17の先端から延出したワイヤ18の先端にはスパーク等によってイニシャルボール19が形成される。ボンディングヘッド15とボンディングアーム16とキャピラリ17とボンディングステージ13とは基板41と基板41に取り付けられた半導体チップ42との間をワイヤ18で接続するボンディング処理部100を構成する。
【0018】
図1及び図2に示すようにチャンバ12は、架台11に取り付けられ、ボンディングステージ13と搬送路14とを囲む段差の有る箱形形状で、供給スタック53からチャンバ12内部の搬送路14に供給される基板41が入る側の側板には入口スロット51が設けられ、チャンバ12の搬送路14からボンディング処理の終了した製品を製品スタック54に排出する側の側板には出口スロット52が設けられている。また、チャンバ12のボンディングステージ13を囲む側の上面板12aは、ボンディングステージ13とボンディングアーム16との間に設けられ、上面板12aにはボンディングアーム16に取り付けられたキャピラリ17が貫通するキャピラリ用孔55が設けられている。ボンディングステージ13よりも搬送路14の搬送方向上流側にある洗浄位置27を覆う上面板12bは上面板12aと段差を持って配置されている。
【0019】
図1及び図2に示すように、チャンバ12の洗浄位置27側の上面板12bにはプラズマ化したガスを洗浄位置27に停止している基板41に照射する第1のプラズマトーチ20が洗浄位置27に停止した基板41に対して略垂直となるように取り付けられている。第1のプラズマトーチ20は、チャンバ12内にあって、プラズマ化したガスが噴出する開口を有する先端部21と、プラズマガス発生用の高周波電力が供給される外部電極22と、プラズマ用ガスが導入されるガス導入管23とを備え、ガス導入管23は上面板12bを貫通してチャンバ12外部に突出し、ガス導入管23に接続されたガス配管24によってプラズマ用ガス供給部60に接続され、外部電極22は上面板12bを貫通する電線25によって高周波電力供給部70に接続されている。
【0020】
図1及び図2に示すように、チャンバ12のボンディングステージ13側の上面板12aには、キャピラリ用孔55の両側に対向するように2つの第2のプラズマトーチ30が設けられている。各第2のプラズマトーチ30はチャンバ12の内部にボンディングステージ13のボンディング面に略平行で、プラズマ化したガスが噴出する先端部31はキャピラリ17先端に成形されたイニシャルボール19に向かうように取り付けられている。また、第2のプラズマトーチ30は、プラズマガス発生用の高周波電力が供給される外部電極32と、プラズマ用ガスが導入されるガス導入管33とを備えている。ガス導入管33はチャンバ12の内部で屈曲し上面板12aを貫通してチャンバ12の外部に突出し、ガス導入管33に接続されたガス配管34によってプラズマ用ガス供給部60に接続され、外部電極32は上面板12bを貫通する電線35によって高周波電力供給部70に接続されている。
【0021】
チャンバ12には図示しない不活性ガス供給装置が接続され、チャンバ12内に不活性ガスを供給している。不活性ガスとしては、窒素などが用いられる。チャンバ12内に供給された不活性ガスは入口スロット51、出口スロット52或いはキャピラリ用孔55から流出し、これらの開口部から外気がチャンバ12内に浸入することを防止し、チャンバ12の内部を不活性ガス雰囲気に保持する。また、入口、出口スロット51,52に蓋を取り付けて不活性ガスの流出を抑制するよう構成しても良い。
【0022】
図3に示すように、第1のプラズマトーチ20は、絶縁体からなる円筒形状で先端の開口からプラズマ化したガスを噴出する先端部21と、先端部21の外部に設けられた円筒形状の外部電極22と、先端部21に接続され、導電性材料で構成された円筒形状のガス導入管23と、ガス導入管23の内部に設けられ、一端がガス導入管23の内面に接触し、他端が先端部21の内部に延びる内部電極28とを備えている。ガス導入管23は電気的に接地されている。プラズマ用ガス供給部60は、プラズマの源となるガスを供給する機能を有し、具体的には、還元処理用ガスを希ガスに混合するための混合ボックス61と、希ガス源としてのアルゴンガスが充填されたアルゴンガスボンベ62と還元処理用の水素ガスが充填された水素ガスボンベ63と各ガスボンベ62,63と混合ボックス61とを接続する接続配管64,65とプラズマ用ガスを供給するプラズマ用ガス供給管66とを備えている。プラズマ用ガス供給管66はガス配管24によってガス導入管23に接続されている。本実施形態では、希ガスとしてアルゴンガスを用いることとして説明するが、窒素ガスなどを用いてもよい。
【0023】
図3に示すように、高周波電力供給部70は、第1のプラズマトーチ20の外部電極22にプラズマの発生を維持するための高周波電力を供給するもので、整合回路71と高周波電源72とを備えている。整合回路71は外部電極22に高周波電力を供給する際の電力反射を抑制するための回路で、例えばLCR共振回路などが用いられる。高周波電源72は例えば100Mzから500MHz等の周波数の電源を用いることができる。供給する電力の大きさは、プラズマ用ガス供給部60から供給されるプラズマ用ガスの種類、流量、プラズマの安定性を考慮して決定される。高周波電源72の制御は制御部80によって行われる。高周波電源72と整合回路71は高周波電力接続線73によって接続され、高周波電力は整合回路71から高周波電力出力線74を通って電線25に出力される。
【0024】
図3に示すように、第1のプラズマトーチ20は、内部電極28、接地されたガス導入管23と外部電極22との間に高周波電力を通電することによってガス導入管23から導入されたガスをプラズマ化し、プラズマ化したガスを先端部21の開口から基板41と基板の上に取り付けられている半導体チップ42に向かって照射する。図3中のクロスハッチングした領域はプラズマ化したガスの噴流26を示す。図3に示すように、先端部21から噴出したプラズマ化したガスの噴流26は、基板41と半導体チップ42に向かって広がるように噴出し、半導体チップ42の表面に形成されているパッド43と基板41の上に形成されている電極44のボンディングする領域をカバーしている。このため、基板41を洗浄位置27に停止させ、第1のプラズマトーチ20によってプラズマ化したガスを照射すると、半導体チップ42の各パッド43と基板41の各電極44とを同時に表面処理することができる。本実施形態では、第1のプラズマトーチ20は1本で各パッド43と電極44をカバーすることとして説明したが、第1のプラズマトーチ20を複数本設けるようにしても良いし、第1のプラズマトーチ20からプラズマ化したガスを基板41、半導体チップ42に向けて照射した状態で基板41を移動させて各パッド43,電極44の表面処理を行うように構成してもよい。
【0025】
図4に示すように、第2のプラズマトーチ30は、第1のプラズマトーチ20と同様、絶縁体からなる円筒形状で先端の開口からプラズマ化したガスの噴流36を噴出する先端部31と、先端部31の外部に設けられた円筒形状の外部電極32と、先端部31に接続され、導電性材料で構成された円筒形状のガス導入管33と、ガス導入管33の内部に設けられ、一端がガス導入管33の内面に接触し、他端が先端部31の内部に延びる内部電極38とを備えている。ガス導入管33は図3に示したプラズマ用ガス供給部60に接続され、外部電極32は高周波電力供給部70に接続されている。また、ガス導入管33は接地されている。2つの第2のプラズマトーチ30は、内部電極38、接地されたガス導入管33と外部電極32との間に高周波電力を通電することによってガス導入管33に導入されたプラズマ用ガスをプラズマ化し、プラズマ化したガスを先端部31の開口からキャピラリ17の先端に延出したイニシャルボール19に向かって照射する。
【0026】
以上のように構成されたボンディング装置10によって基板41表面の電極44、半導体チップ42表面のパッド43、イニシャルボール19、ワイヤ18の表面処理工程とボンディング工程とについて説明する。
【0027】
図2に示すように、供給スタック53にストックされている基板41は入口スロット51から搬送路14に供給される。基板41には前の工程で半導体チップ42が取り付けられている。制御部80は搬送路14によって基板41を不活性ガス雰囲気に保持されたチャンバ12の内部に導入し、第1のプラズマトーチ20の取り付けられている洗浄位置27まで移動させる。基板41を洗浄位置27まで移動させると、制御部80は、第1の表面処理工程を行う。制御部80は、第1のプラズマトーチ20にプラズマ用ガス供給部60からプラズマ用ガスを供給すると共に、外部電極22に高周波電力供給部70から高周波電力を供給し、第1のプラズマトーチ20の内部でプラズマ用ガスをプラズマ化し、図3に示した様にプラズマ化したガスを基板41の電極44の表面と半導体チップ42のパッド43の表面とに向かって噴出させ、パッド43と電極44の表面処理を行う。この際、常時プラズマ化したガスを噴出させても良いし、基板又は半導体チップごとに噴出させるようにしてもよい。プラズマ化したガスはチャンバ12内部の不活性ガス雰囲気の中でパッド43と電極44の表面に照射され、パッド43と電極44表面の汚染、水分或いは異物を除去し、清浄表面とする。また、プラズマ用ガスには還元ガスとしての水素が混合されているので、パッド43と電極44表面の酸化膜の除去も同時に行う。所定の時間だけ第1のプラズマトーチ20からのプラズマ化したガスの照射を行うと、制御部80は第1の表面処理工程を終了する。
【0028】
制御部80は、第1の表面処理工程を終了すると、搬送路14によって基板41をボンディングステージ13の上に搬送し、ボンディングステージ13の真空吸着孔を真空として基板41をボンディングステージ13のボンディング面に吸着固定する。制御部80は、図示しないスパーク装置によってキャピラリ17の先端から延出するワイヤ18をイニシャルボール19に成形する。そして、ボンディングヘッド15内部のZ方向モータを駆動して、形成したイニシャルボール19の位置が不活性ガス雰囲気に保持されているチャンバ12の内部であって、第2のプラズマトーチ30から噴出したプラズマ化したガスが当たる位置に調整する。
【0029】
図5に示すように、イニシャルボール19の高さの調整が終了したら、制御部80は、2つの第2のプラズマトーチ30にプラズマ用ガス供給部60からプラズマ用ガスを供給すると共に、外部電極32に高周波電力供給部70から高周波電力を供給し、第2のプラズマトーチ30の内部でプラズマ用ガスをプラズマ化し、プラズマ化したガスをイニシャルボール19の側面に向かって噴出させ、イニシャルボール19表面の表面処理を行う。プラズマ化したガスはチャンバ12内部の不活性ガス雰囲気の中でイニシャルボール19の表面に対向する2方向から照射され、イニシャルボール19表面の汚染、水分或いは異物を除去し、清浄表面とする。また、プラズマ用ガスには還元ガスとしての水素が混合されているので、スパークによってイニシャルボール19を成形した際に表面に成形された酸化膜の除去も同時に行う。所定の時間だけ第2のプラズマトーチ30からのプラズマ化したガスの照射を行うと、制御部80は第2の表面処理工程を終了する。
【0030】
第1の表面処理工程、第2の表面処理工程とも不活性ガス雰囲気に保持されたチャンバ12の内部で行われているため、プラズマ化したガスの照射によって表面処理したパッド43,電極44の表面やイニシャルボール19の表面は清浄な状態を保っている。また、プラズマ化したガスを照射することによって金属表面が活性化され、接合しやすい状態となっている。
【0031】
図6に示すように、制御部80は、第2の表面処理工程を終了すると、ボンディング工程を開始する。表面に半導体チップ42の取り付けられた基板41をボンディング面に吸着しているボンディングステージ13は、制御部80の指令によって、1次ボンディングしようとするパッド43の上にキャピラリ17の中心が来るようにXY方向に移動する。そして、パッド43の位置がキャピラリ17の中心位置になったら、制御部80はボンディングステージ13のXY方向の移動を停止し、ボンディングヘッド15のZ方向モータを駆動してボンディングアーム16を下動させ、キャピラリ17をボンディングステージ13に向けて降下させる。そして、キャピラリ17の先端のイニシャルボール19をパッド43に押し付ける。イニシャルボール19はパッド43に押し付けられると変形して圧着ボール19aとなってワイヤ18とパッド43の接合が行われる。この接合は、不活性ガスの雰囲気を保持しているチャンバ12の中で行われ、パッド43とイニシャルボール19の各表面が清浄で活性のある状態で行われるので、超音波加振或いはパッド43の加熱を用いなくとも良好なボンディングを行うことができる。このボンディング工程中、第2のプラズマトーチ30からのプラズマ化したガスの照射は継続して行ってもよいし、ボンディング工程中は停止していてもよい。
【0032】
図7に示す様に、パッド43へのイニシャルボール19のボンディングが終了したら、制御部80は、ボンディングヘッド15のZ方向モータを駆動してキャピラリ17の先端からワイヤ18を繰り出しながらキャピラリ先端のワイヤ18に第2のプラズマトーチ30から噴出するプラズマ化したガスが当たる高さまで上昇させる。そして、制御部80は、第2のプラズマトーチ30からのプラズマ化したガスの照射を行い、繰り出されたワイヤ18の表面処理を行う。
【0033】
図8に示す様に、キャピラリ17が所定の高さまで上昇したらキャピラリ17の先端からワイヤ18を繰り出しながらボンディングステージ13をXY方向に移動させて2次ボンディングしようとする電極44の上にキャピラリ17の中心が来るようにワイヤ18をルーピングする。ルーピングの際、キャピラリ17の先端に繰り出されたワイヤ18は第2のプラズマトーチ30から噴出するプラズマ化したガスの中を通った状態となるので、繰り出されたワイヤ18の表面は連続的に洗浄、表面処理される。
【0034】
図9に示すように、キャピラリ17の中心が2次ボンディングしようとする電極44の上に来ると、制御部80は、ボンディングステージ13の移動を停止し、ボンディングヘッド15のZ方向モータを駆動してボンディングアーム16を下動させ、キャピラリ17をボンディングステージ13に向けて降下させてキャピラリ17の先端に繰り出したワイヤ18を電極44に押し付けてワイヤ18と電極44を接合する。この接合は、不活性ガス雰囲気を保持しているチャンバ12の中で行われ、電極44とワイヤ18双方の各表面が清浄で活性のある状態で行われるので、超音波加振或いは電極44の加熱を用いなくとも良好なボンディングを行うことができる。
【0035】
以上説明したように、本実施形態のボンディング装置10は、不活性ガス雰囲気のチャンバ12の中で第1のプラズマトーチ20によってパッド43と電極44との表面処理を行った後、チャンバ12の中でボンディングステージ13に移動し、チャンバ12の中でイニシャルボール19の表面処理を行った後、チャンバ12の中で表面処理されたパッド43に表面処理されたイニシャルボール19を押し付けて接合するので、パッド43、イニシャルボール19双方の表面を清浄で活性のある状態でボンディングすることができ、良好な接合を行うことができるという効果を奏する。また、清浄で活性のある表面同士の接合となるので、超音波加振や加熱を行わなくとも良好な接合をすることができることから、超音波振動や加熱によって半導体チップ42の受けるダメージを抑制することができるという効果を奏する。
【0036】
本実施形態のボンディング装置10は、イニシャルボール19を接合したパッド43からワイヤ18を第2のプラズマトーチ30によって表面処理しながら2次ボンディングする電極44の上にルーピングして、表面処理されたワイヤ18を表面処理された電極44に押し付けて接合するので、ワイヤ18の電極44への接合の際も、電極44の表面処理された面にワイヤ18の表面処理された面を接合するので、電極44、ワイヤ18双方の表面が清浄で活性のある状態でボンディングすることができ、良好な接合を行うことができるという効果を奏する。また、清浄で活性のある表面同士の接合となるので、超音波加振や加熱を行わなくとも良好な接合をすることができ、簡便にボンディングを行うことができるという効果を奏する。
【0037】
また、本実施形態のボンディング装置10では、プラズマ用ガスに還元ガスである水素ガスを混合しているので、プラズマ化したガスを照射することによって表面の汚染、水分或いは異物の除去に加えて表面の酸化皮膜の除去も同時に行うことができるという効果を奏する。
【0038】
以上述べたように、本実施形態のボンディング装置10は、ボンディング対象及びイニシャルボール19、ワイヤ18双方の表面処理を効果的に行うことができ、良好な接合を行うことができるという効果を奏する。
【0039】
本実施形態の第1、第2のプラズマトーチ20,30は、希ガスと水素ガスとを混合ボックス61で混合した混合ガスをプラズマ化して対象に照射するものとして説明したが、プラズマ化した希ガスに水素ガスを混入したものとしても良い。図10に示すように、ガス導入管23,33には希ガスを導入し、内部電極28,38、ガス導入管23,33と外部電極22,32との間に高周波電力を通電することによってガス導入管23,33から導入された希ガスをプラズマ化し、先端部21,31に設けた水素混入ノズル67からプラズマ化した希ガスに水素ガスを混入させて先端部21,31の各開口からプラズマ化した希ガスに水素ガスを混入させたガスを噴出させるようにしてもよい。また、図10に示すように、各開口から噴出したプラズマ化した希ガスの各噴流26,36に延びてプラズマ化した希ガスに水素ガスを混入させるような水素混入ノズル68としてもよい。
【0040】
以上説明した本実施形態では、プラズマの源となるガスとしてアルゴンなどの希ガスを用いることとして説明したが、希ガスに換えて窒素をプラズマの源となるガスとして用いることとしても良い。また、水素ガスを希ガスに混合させてからプラズマ化したり、プラズマ化した希ガスに水素混入ノズル67,68から水素ガスを混入させたりすることとして説明したが、水素ガスの代わりに酸素ガスを混合或いは混入させることとしても良い。酸素ガスを混入させる場合には、図10で説明した水素混入ノズル67,68と同様の形状の酸素混入ノズルから酸素をプラズマ化したガスに混入させることができる。このように酸素を混入させることによって表面処理を行う基板41表面の電極44、半導体チップ42表面のパッド43、イニシャルボール19、ワイヤ18表面の有機物汚染の除去効果を向上させることができる。
【0041】
また、本実施形態では、基板41の電極44にワイヤ18をボンディングする場合について説明したが、本発明は、リードフレームのリードにワイヤ18をボンディングする場合にも適用することができる。
【0042】
本実施形態では、ワイヤ18の繰り出し、ルーピングの際に第2のプラズマトーチ30によってワイヤ18の表面処理を行うこととして説明したが、ワイヤ18の表面が清浄な状態であれば、ワイヤ18の繰り出し、ルーピングの際のワイヤ18の表面処理を省略してもよい。この場合には、ワイヤ18の繰り出し高さは第2のプラズマトーチ30のプラズマ化したガスの当たる高さよりも低い高さまでの繰り出しでよく、ワイヤループの高さを低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態のボンディング装置の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態のボンディング装置の構成を示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態のボンディング装置において、第1のプラズマトーチの構成とプラズマ化したガスの照射を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態のボンディング装置において、第2のプラズマトーチでプラズマ化したガスをイニシャルボールに照射する状態を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施形態のボンディング装置において、第2の表面処理工程を示す説明図である。
【図6】本発明の実施形態のボンディング装置において、パッドへのボンディング工程を示す説明図である。
【図7】本発明の実施形態のボンディング装置において、ワイヤ繰り出しを示す説明図である。
【図8】本発明の実施形態のボンディング装置において、ワイヤルーピングを示す説明図である。
【図9】本発明の実施形態のボンディング装置において、電極へのボンディング工程を示す説明図である。
【図10】本発明の実施形態のボンディング装置において、水素混入ノズルを備えるプラズマトーチの構成とプラズマ化したガスの照射を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0044】
10 ボンディング装置、11 架台、12 チャンバ、12a,12b 上面板、13 ボンディングステージ、14 搬送路、15 ボンディングヘッド、16 ボンディングアーム、17 キャピラリ、18 ワイヤ、19 イニシャルボール、19a 圧着ボール、20 第1のプラズマトーチ、21,31 先端部、22,32 外部電極、23,33 ガス導入管、24,34 ガス配管、25,35 電線、26,36 噴流、27 洗浄位置、28,38 内部電極、30 第2のプラズマトーチ、41 基板、42 半導体チップ、43 パッド、44 電極、51 入口スロット、52 出口スロット、53 供給スタック、54 製品スタック、55 キャピラリ用孔、60 プラズマ用ガス供給部、61 混合ボックス、62 アルゴンガスボンベ、63 水素ガスボンベ、64,65 接続配管、66 プラズマ用ガス供給管、67,68 水素混入ノズル、70 高周波電力供給部、71 整合回路、72 高周波電源、73 高周波電力接続線、74 高周波電力出力線、80 制御部、100 ボンディング処理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボンディングツールに挿通したワイヤによってボンディング対象にボンディング処理を行うボンディング装置であって、
内部を不活性ガス雰囲気に保持するチャンバと、
チャンバに取付けられ、プラズマ化したガスをチャンバ内に置かれたボンディング対象に照射してボンディング対象の表面処理を行う第1のプラズマトーチと、
チャンバに取付けられ、プラズマ化したガスをチャンバ内に位置するボンディングツール先端のイニシャルボールとワイヤのいずれか一方又は両方に照射してイニシャルボールとワイヤのいずれか一方又は両方の表面処理を行う第2のプラズマトーチと、
表面処理されたボンディング対象に表面処理されたイニシャルボールとワイヤのいずれか一方又は両方をチャンバ内でボンディングするボンディング処理部と、
を備えることを特徴とするボンディング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のボンディング装置において、
チャンバは架台に取り付けられ、
ボンディング処理部は、ボンディング対象のボンディング面に沿った方向にボンディング対象を移動させるステージと、ボンディング対象に接離する方向にボンディングツールを移動させるボンディングヘッドとを含むこと、
を特徴とするボンディング装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のボンディング装置であって、
プラズマ化したガスは、希ガスと水素との混合ガスをプラズマ化したものであること、
を特徴とするボンディング装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のボンディング装置であって、
プラズマ化した希ガスに水素を混入する混入ノズルを備えること、
を特徴とするボンディング装置。
【請求項5】
ボンディングツールに挿通したワイヤによってボンディング対象にボンディング処理を行うボンディング方法であって、
内部を不活性ガス雰囲気に保持するチャンバに取付けられた第1のプラズマトーチによってプラズマ化したガスをチャンバ内に置かれたボンディング対象に照射してボンディング対象の表面処理を行う第1の表面処理工程と、
チャンバに取付けられた第2のプラズマトーチによってプラズマ化したガスをチャンバ内に位置するボンディングツール先端のイニシャルボールとワイヤのいずれか一方又は両方に照射してイニシャルボールとワイヤのいずれか一方又は両方の表面処理を行う第2の表面処理工程と、
表面処理されたボンディング対象に表面処理されたイニシャルボールとワイヤのいずれか一方又は両方をチャンバ内でボンディングするボンディング工程と、
を備えることを特徴とするボンディング方法。
【請求項6】
請求項5に記載のボンディング方法であって、
希ガスと水素との混合ガスをプラズマ化すること、
を特徴とするボンディング方法。
【請求項7】
請求項5に記載のボンディング方法であって、
第1、第2の表面処理工程は、それぞれプラズマ化した希ガスに水素を混入して、ボンディング対象と、イニシャルボールとワイヤのいずれか一方又は両方と、に照射すること、
を特徴とするボンディング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−141215(P2009−141215A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−317518(P2007−317518)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(000146722)株式会社新川 (128)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】