説明

ボンディング装置及び半導体装置の製造方法

【課題】リードフレームの搬送が停止されてもリードフレームの酸化が防止できるボンディング装置を提供する。
【解決手段】本発明のボンディング装置は、酸化防止ガスが流れる筒様の搬送路5の所定位置の下部にヒータ8を配置し、搬送路内に酸化防止ガス7を供給し、搬送路の所定位置の上方に形成された作業孔10から上に逃げ出して陽炎12となる熱気体を吹き飛ばすための気体を吹き出す陽炎防止ブロワ13を設け、この陽炎防止ブロワから作業孔に吹き付けられる気体14が作業孔から搬送路内に流れ込まないように当該気体の流れをガイドするために、作業孔よりも陽炎防止ブロワの気体吹出口側に整流板20を設置したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボンディング装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体製造装置であるボンディング装置は1つの電子部品に別の電子部品を位置決めして接合する装置をいう。
【0003】
以下、従来例としてフリップチップボンディング装置を例にして説明する。図5に示すように、半導体ウェハを載置するウェハ載置部1、リードフレームを搬送する搬送装置2、ウェハ載置部1上の半導体ウェハから半導体電子部品を吸着して取り出し、反転させた後に搬送装置2上の所定の位置まで移送し、さらに、搬送装置2の所定位置においてリードフレームに対してこの半導体電子部品を圧着させるデバイスハンドリング装置3を備えている。そして電子部品をリードフレームにボンディングするのに必要な各工程で電子部品やボンディング状態を監視するためにカメラ群が設置されている。ウェハ載置部1上にはウェハカメラC1、移送中の電子部品を監視するためのデバイスカメラC2、電子部品を反転させた後の表面(ウェハ上では裏面側)を監視する裏面カメラC3、そしてリードフレームに対する電子部品の位置合わせ認識用のフレームカメラC4が設置されている。
【0004】
そして、上記のボンディング装置の搬送装置2の部分には、図6〜図8に示すように、内部に酸化防止ガスを流しながらリードフレームを搬送する筒様の搬送路5が形成されており、この搬送路5内でリードフレーム6を搬送し、また搬送路5の下部材5Aに設けられたガス吹込み孔5Bを通して酸化防止ガス7を搬送路5内に吹込んで流通させ、銅のような易酸化性金属で形成されているリードフレーム6の酸化を防止するようにしている。
【0005】
搬送路5のデバイス熱圧着作業位置の下部には半導体電子部品とリードフレームの該当箇所を加熱するためのヒータ8が設置してある。搬送路5の上部材5Cにおけるヒータ8の直上位置には開口部5Dが形成してあり、そこにカバー9が取り付けてある。カバー9の中央部には作業孔10が形成してある。この作業孔10は、そこを通してツール11が吸着して移送してきた電子部品を搬送路5内に挿入し、リードフレーム6のヒータ8による加熱箇所に圧着させるためのものである。
【0006】
この電子部品の作業孔10を通しての搬送路5内への挿入工程やそれに続く熱圧着工程を監視するために、作業孔10の直上方には、図5に示したように、フレームカメラC4が設置されている。そしてこのフレームカメラC4にてボンディング作業中の作業孔10内の電子部品の位置を監視する場合、ヒータ7にて加熱された熱気体が作業孔10から上側に出てくるが、これが熱気体であるゆえに周囲の外気と大きな温度差、密度差があり、それが陽炎12を発生させ、フレームカメラC4による作業孔10内の電子部品のボンディング位置認識の精度を悪くする。そこで、ボンディング装置では、従来から、搬送路5の上部材5Cの上方に陽炎防止ブロワ13を設置して、この陽炎防止ブロワ13から気体14を作業孔10の部分に吹き付けて熱気体を吹き飛ばし、陽炎12が発生しないようにしている。
【0007】
ところが、このような従来のボンディング装置では、半導体電子部品をリードフレームにボンディングし、ボンディングが完了すればリードフレームを一定寸法分だけ搬送し、次の電子部品を同じようにしてリードフレームの所定位置にボンディングするという作業を繰り返し、その間、陽炎防止のために陽炎防止ブロワ13にて気体14を噴射させているが、リードフレーム6の搬送が停止した際には、陽炎防止ブロワ13から噴射される気体14が作業孔10を通して搬送路5内に進入して搬送路5内の酸化防止ガスの濃度を低下させるため、加熱されている易酸化性のリードフレーム6が酸化してしまい、その酸化したリードフレームは廃棄してしまわなければならない無駄が発生する問題点があった。
【特許文献1】特開2003−77943号公報
【特許文献2】特開平11−214427号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような従来の技術的課題に鑑みてなされたもので、搬送路内のリードフレームの搬送が停止されてもリードフレームの酸化が防止できるボンディング装置及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、酸化防止ガスが流れる筒様の搬送路内を搬送されるリードフレームに対して、その所定の位置に電子部品を移送する搬送装置を有し、前記電子部品に他の電子部品を位置決めして加熱圧着するボンディング装置において、前記搬送路の所定位置の下部に配置された、当該搬送路内を搬送される前記リードフレームの所定部位を加熱するためのヒータと、前記搬送路内に酸化防止ガスを供給する酸化防止ガス供給手段と、前記搬送路の前記所定位置の上方に形成された作業孔から上に逃げ出す熱気体を吹き飛ばすため気体を吹き出す陽炎防止ブロワと、前記陽炎防止ブロワから前記作業孔に吹き付けられる気体が前記作業孔から前記搬送路内に流れ込まないように当該気体の流れをガイドする、前記作業孔よりも前記陽炎防止ブロワの気体吹出口側に設置された整流板とを備えたものである。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1のボンディング装置において、前記整流板は、前記搬送路の上面に固定され、前記陽炎防止ブロワからの気体の主流をガイドする主体部と、当該主体部の側方に延出し、前記作業孔に前記搬送路の側方から回り込む気体の流れを抑止する側翼部とを備えたことを特徴とするものである。
【0011】
請求項3の発明の半導体装置の製造方法は、請求項1又は2に記載のボンディング装置により、第1の電子部品と第2の電子部品とを接合する工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のボンディング装置によれば、整流板を筒様の搬送路における陽炎防止ブロワの気体吹出口の前方に設置したことで、搬送路の作業孔から上方に逃げ出す熱気体を吹き飛ばすために陽炎防止ブロワから噴射される気体が搬送装置停止時に当該作業孔から搬送路内に流れ込まないように当該気体の流れをガイドすることができ、リードフレームの搬送が停止されてもその間にリードフレームが酸化されるのを防止でき、酸化してしまったリードフレームを廃棄するという無駄の発生を防止できる。
【0013】
また、前記整流板を主体部とその側方の側翼部にて構成することで、主体部にて陽炎防止ブロワから噴射され、搬送路上方を流れる気体の主流の作業孔への流れ込みを防止し、また整流板の側翼部にて搬送路側方を流れる気体の副流の作業孔への流れ込みも防止することができ、搬送装置の停止時のリードフレームの酸化防止をより効果的に行える。
【0014】
本発明の半導体装置の製造方法によれば、ボンディング装置を用いた半導体装置の製造において、リードフレームの搬送が停止されてもその間にリードフレームが酸化されるのを防止でき、酸化してしまったリードフレームを廃棄するという無駄の発生を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳説する。図1〜図3は本発明の1つの実施の形態のボンディング装置の構成を示している。本実施の形態の適用されるボンディング装置は、図5に示した一般的なフリップチップボンディング装置と同様であり、したがって、以下、図5〜図8に示した従来例と共通する構成要素については、共通する符号を用いて説明する。
【0016】
図1〜図3に示すように、本実施の形態のボンディング装置の搬送装置2の部分には、内部に酸化防止ガス7を流しながらリードフレーム6を搬送する筒様の搬送路5が形成されており、この搬送路5内でリードフレーム6を搬送し、また搬送路5の下部材5Aに設けられたガス吹込み孔5Bを通して酸化防止ガス7を搬送路5内に吹込んで流通させ、銅のような易酸化性金属のリードフレーム6の酸化を防止するようにしている。
【0017】
搬送路5のデバイス熱圧着作業位置の下部には半導体電子部品とリードフレーム6の該当箇所を加熱するためのヒータ8が設置してある。搬送路5の上部材5Cにおけるヒータ8の直上位置には開口部5Dが形成してあり、そこにカバー9が取り付けてある。カバー9の中央部には作業孔10が形成してある。ツール11は、吸着し移送してきた電子部品をこの作業孔10を通して搬送路5内に挿入し、リードフレーム6のヒータ8による加熱箇所に圧着させる。従来例と同様に、この電子部品の作業孔10を通しての搬送路5内への挿入工程やそれに続く熱圧着工程を監視するために、作業孔10の直上方には、図5に示したようにフレームカメラC4が設置されている。従来例と同様に、搬送路5の上部材5Cの上方に陽炎防止ブロワ13が設置してある。この陽炎防止ブロワ13は、その気体吹出口から気体14を噴射し、作業孔10の部分に吹き付けて熱気体を吹き飛ばし、陽炎12の発生を防止する。
【0018】
陽炎防止ブロワ13からカバー9の作業孔10に吹き付けられる気体14が当該作業孔10から搬送路5内に流れ込まないように、当該気体14の流れをガイドするために、作業孔10よりも陽炎防止ブロワ13の気体吹出口側の位置において、搬送路5に対して整流板20を取り付けている。
【0019】
この整流板20は、搬送路5の上面を跨ぎ、陽炎防止ブロワ13からの気体14の主流をガイドする主体部21と、この主体部21の側方に延出し、作業孔10に搬送路5の側方から回り込む気体の流れを抑止する側翼部22、そして主体部21から延出する基部23から構成され、この基部23を搬送路5の上面に取着することで整流板20の全体を搬送路5の上面に固定している。
【0020】
次に、上記構成のボンディング装置の動作について説明する。ヒータ8を加熱させ、また筒様の搬送路5内に酸化防止ガス7を供給しつつ、搬送装置2を起動し、リードフレーム6を搬送路5内で間欠移動させながら、ツール11にて吸着し移送してきた電子部品を作業孔10を通して搬送路5内に挿入し、リードフレーム6の所定の位置に加熱圧着する。この作業中、図5に示した作業孔10の上方に位置するフレームカメラC4が作業孔10内のリードフレーム6と電子部品の位置認識を行い、リードフレーム6上の所定の位置に電子部品を加熱圧着、つまり、ボンディングする。
【0021】
この作業中、陽炎防止ブロワ13は作動していて、気体を噴射して作業孔10から逃げ出してくる酸化防止ガスを含む熱気体を吹き飛ばし、陽炎12が発生するのを防止する。尚、この陽炎防止の作用中、整流板20は陽炎防止ブロワ13からの気体14の流れをある程度ガイドし作業孔10から搬送路5内に流入するのを防止するが、気体14が作業孔10の上方に到達して熱気体を吹き飛ばす作用を妨害することはない。
【0022】
前後の工程におけるエラーの発生などが原因となり、搬送装置2の搬送動作が一時的に停止した時でも、加工点の環境を一定程度に保つためにヒータ8は加熱動作を継続し、また陽炎防止ブロワ13も気体14の噴射動作を継続する。その間、リードフレーム8は一定箇所が加熱され続け、また陽炎防止ブロワ13から気体14が噴射され続けるが、その気体14が作業孔10を通して搬送路5内に入り込まないように整流板20が気体14の流れをガイドする。これにより、加熱中の易酸化性のリードフレーム6の加熱部分が搬送路5内に入り込んだ外気によって酸化されるのを防止する。
【0023】
図4のフローチャートは、このボンディング装置による電子部品のボンディング作業の流れを示すものである。1つの電子部品のボンディングが完了すれば(ステップS1)、リードフレーム6を一定寸法だけ搬送し(ステップS2,S3)、次の電子部品のボンディングを行う工程を繰り返す。
【0024】
いま何らかの原因、例えば、前後の工程におけるエラーの発生などによってリードフレーム6の搬送が不可となれば、ステップS2でNOに分岐し、時間経過のカウントを開始する(ステップS4)。そして、所定のタイムアウト時間である、例えば3分以内に搬送が再開できるようになれば、リードフレーム6の搬送を再開し(ステップS5,S3)、ステップS1〜S3の電子部品のボンディング作業を再開する。この搬送装置2の停止期間中もヒータ8は加熱動作を継続し、また陽炎防止ブロワ13も気体14の噴射を継続しているので、従来であれば気体14が作業孔10から搬送路5内に入り込み、加熱されているリードフレーム6の加熱されている部分を酸化してしまっていた。しかしながら、本実施の形態の場合には、上述したように、その間、気体14が作業孔10を通して搬送路5内に入り込まないように整流板20が気体14の流れをガイドし、これにより、加熱中の易酸化性のリードフレーム6の加熱部分が搬送路5内に入り込んだ外気によって酸化されるのを防止する。
【0025】
この後、停止時間が3分を経過すれば、搬送装置2を停止し、ヒータOFF、陽炎防止ブロワOFFにし(ステップS6,S7)、搬送再開まで待機する(ステップS8)。そして、搬送再開指令を受けると、ヒータON、陽炎防止ブロワONにし、搬送、ボンディング作業を再開する(ステップS8,S9,S3)。
【0026】
本実施の形態の場合、上記の整流板20を搬送路5に取り付けたことによって、搬送装置2が30分間停止した後にも、リードフレーム6の酸化が認められず、整流板20によるリードフレーム6の酸化防止効果を確認することができた。
【0027】
尚、上記の搬送装置2の本停止までの待ち時間は3分に限られるものではない。また搬送装置2の本停止の際にヒータ8をOFFとし、陽炎防止ブロワ13もOFFとする代りに、ヒータ8を下降させてリードフレーム6から離してリードフレーム6の温度を低下させる機構、あるいはヒータ8とリードフレーム6との間に断熱材を挿入して同様に温度を低下させる機構、逆にリードフレーム6を上昇させる機構にすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の1つの実施の形態のボンディング装置における搬送装置の平面図。
【図2】上記実施の形態における搬送装置の正面図。
【図3】上記実施の形態における搬送装置の側面図。
【図4】上記実施の形態のボンディング装置によるボンディング作業工程のフローチャート。
【図5】一般的なフリップチップボンディング装置の斜視図。
【図6】従来のボンディング装置における搬送装置の平面図。
【図7】従来のボンディング装置における搬送装置の正面図。
【図8】従来のボンディング装置における搬送装置の側面図。
【符号の説明】
【0029】
1 ウェハ載置部
2 搬送装置
3 デバイスハンドリング部
5 搬送路
5A 下部材
5B 酸化防止ガス吹込み孔
5C 上部材
5D 開口部
6 リードフレーム
7 酸化防止ガス
8 ヒータ
9 カバー
10 作業孔
11 ツール
12 陽炎
13 陽炎防止ブロワ
14 気体
20 整流板
21 主体部
22 側翼部
23 基部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化防止ガスが流れる筒様の搬送路内を搬送されるリードフレームに対して、その所定の位置に電子部品を移送する搬送装置を有し、前記電子部品に他の電子部品を位置決めして加熱圧着するボンディング装置において、
前記搬送路の所定位置の下部に配置された、当該搬送路内を搬送される前記リードフレームの所定部位を加熱するためのヒータと、
前記搬送路内に酸化防止ガスを供給する酸化防止ガス供給手段と、
前記搬送路の前記所定位置の上方に形成された作業孔から上に逃げ出す熱気体を吹き飛ばすため気体を吹き出す陽炎防止ブロワと、
前記陽炎防止ブロワから前記作業孔に吹き付けられる気体が前記作業孔から前記搬送路内に流れ込まないように当該気体の流れをガイドする、前記作業孔よりも前記陽炎防止ブロワの気体吹出口側に設置された整流板とを備えたボンディング装置。
【請求項2】
前記整流板は、前記搬送路の上面に固定され、前記陽炎防止ブロワからの気体の主流をガイドする主体部と、当該主体部の側方に延出し、前記作業孔に前記搬送路の側方から回り込む気体の流れを抑止する側翼部とを備えたことを特徴とする請求項1に記載のボンディング装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のボンディング装置により、第1の電子部品と第2の電子部品とを接合する工程を有する半導体装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−180210(P2007−180210A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−375953(P2005−375953)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】