説明

ボンネット及びボンネットの製造方法

【課題】バックホーやローダ等の作業機を備える作業車両のボンネットにおいて、補強部材を開口部に配置することなく、軽量で剛性の高いボンネットを安価に構成するとともに、外観向上及びエンジンルームのメンテナンス性の向上を図るものである。
【解決手段】後部及び下部が開放されたボンネット1の前面または側面に、吸気用グリルを形成する開口部1aを設けたボンネット1であって、開口部1a以外のボンネット1全体を中空に成形し、前記ボンネット1の前端部中央に設けた開口部1aにフロントガード7を埋め込んで配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両のエンジンを覆うボンネットの構造に関し、特に、ボンネット上方にローダ等の作業機が位置する可能性がある作業車両のボンネット構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ローダやトラクタ等の作業車両においては、エンジンルームをボンネットで被覆した構造としており、ボンネットを前後方向の回動により開閉自在に構成したものは公知となっている。
そして、このボンネットの構造に関しては、樹脂材料で形成するとともに、先端部に設けた開口部に補強部材を入れて強度の向上を図った技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
また、一般的に、ボンネットの開口部に設けた連結プレートを保護するために、連結プレート前面にフロントガードを設けることが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平8−268337号公報
【特許文献2】特開平9−309393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の如く、特許文献1を一例とする従来のボンネット構造においては、十分な強度を確保するため、前面に設けた開口部に補強部材を配する必要があった。
また、ボンネットの開口部において、ボンネットを開閉する際にフロントガードを脱着する必要があったり、土砂の積み込みの際にフロントガードが邪魔になるため作業機の移動軌跡が制限されたりする不具合が生じていたのである。
以上のような問題点を鑑み、本発明においては、開口部に補強部材がなくても十分な強度が得られ、軽量で剛性の高いボンネットを安価に提供することを目的としている。
また、それとともに、ボンネットの外観向上と共に、エンジンルームのメンテナンス性の向上を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、後部及び下部が開放されたボンネットの前面または側面に、吸気用グリルを形成する開口部を設けたボンネットであって、開口部以外のボンネット全体を中空に成形したものである。
【0006】
請求項2においては、前記ボンネットを回転成形により形成したものである。
【0007】
請求項3においては、前記ボンネットの前端部中央に設けた開口部にフロントガードを埋め込んで配置したものである。
【0008】
請求項4においては、前記フロントガードの後方であって、前記開口部の全体を覆うように防塵ネットを取付けたものである。
【0009】
請求項5においては、前記フロントガードの下部後方にボンネットロックを取付けたものである。
【0010】
請求項6においては、前記ボンネットの後部及び下部が開放された部分の開放辺に段差部を設けたものである。
【0011】
請求項7においては、前記ボンネットの内面側に凹凸を設けたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
請求項1においては、簡素な構造で剛性の高いボンネット構造を安価に提供することができる。
【0014】
請求項2においては、製造工程を削減し、材料コスト及び製造コストを低減することができる。
【0015】
請求項3においては、ボンネット上方に落下物が落下した際など、多大な衝撃に耐え得る強固な剛性を得ることができる。
【0016】
請求項4においては、ボンネット開閉時に、ボンネットと一体に開閉できるためメンテナンス性を向上することができる。
【0017】
請求項5においては、ボンネットの開閉時にボンネットロックに生じるショックを、フロントガードを介してボンネット全体で緩和することができ、ボンネットロック部に集中して荷重を受けることがなく、ボンネットロックの破損を防止することができる。
【0018】
請求項6においては、段差部により騒音が直接外部に出ることがなくなり、防音効果を向上することができる。
【0019】
請求項7においては、ボンネット内面側の騒音周波数を変化させて、防音効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1は本発明に係るボンネットの構造を示す前方斜視図、図2はフロントガードを装着したボンネットの構造を示す前方斜視図、図3は同じく縦断側面図、図4は同じく後方斜視図、図5は装着時のボンネットを示す前方斜視図、図6は図3におけるB−B矢視断面図である。
【0021】
本発明に係るボンネットは、ボンネット上方にフロントローダ等の作業機が位置する可能性がある作業車両に取付けられ、エンジン及びラジエータ、バッテリー等の補器を被覆するように取付けられるものである。また、当該ボンネットは一端を作業車両の機体フレームを支点として回動可能に支持され、開閉可能に機体に装着されているものとする。
なお、以下では、図1のA方向をボンネットの前方として説明するものとする。
【0022】
図1に示すように、本発明に係る作業車両のボンネット1は前端部の前面中央部に吸気用グリルを形成するための開口部1aを開口して、後部及び下部は開放して、ボンネットの開放側周囲を開放辺1bとしている。そして、ボンネット1の前方側が作業車両の前方に向けて配置されるものである。
前記ボンネット1は回転成形により樹脂材料で中空状に形成されている。言い換えれば、ボンネット1は全体に中空層を有する構成としており、軽量化が図られている。
【0023】
前記開口部1aはボンネット1の前端部において、前面中央部に略四角形状に開口した構造としている。
即ち、ボンネット1は上部面を構成する上板10と、該上板10の両側から下方に垂設されて側面を形成する側板11・11と、開口部1aの下方に位置して両側板11・11の下前部間を連結する顎部12とからなり、これらは一体的に形成されており、開口部1aの周囲は閉じられている。そして、前記開口部1aの上部には上板10の前端から下方に延設した前面部13を有し、該前面部13は顎部12の前面と略同一面に形成している。開口部1aの両側は側板11・11の前部に食い込む構成として、開口部1aの両側は一部側方から空気の取り入れを可能としている。このように、開口部1aの周囲を開放しないボンネット構造とすることで撓み作用を低減してボンネットの変形を防止でき、剛性の強化を図ることができる。
【0024】
また、前述の如く、前記上板10、側板11、顎部12から構成されるボンネット1は全体的に中空層を有して形成されているものである。
このようにボンネット1を中空状に形成することにより、一枚板で構成するよりも曲げや凹み作用に対して強固になり、復元性も有し、軽量かつ剛性の高いボンネットを安価に提供することが可能となるのである。
【0025】
図2に示すように、前記開口部1aには防塵ネット2が取付けられ、該防塵ネット2の前方側には板金製のフロントガード7が組付けられている。
前記防塵ネット2は開口部1aの全体を隙間なく覆うように配置され、ボンネット1内に塵埃等が侵入しないようにしている。該防塵ネット2は開口部1aの内側から取り付けられ、網またはパンチングメタル等で構成されている。
前記フロントガード7は正面視四角形状の枠体3と、枠体3の左右の縦フレーム3a・3a間を水平方向に連結する連結プレート4・4とからなり、該左右の縦フレーム3a・3aはプレート状として適宜間隔を開けて開口部3c・3c・・・を開口して軽量化を図り、該縦フレーム3a・3aの上端と下端は横フレーム3b・3bで連結されている。
前記連結プレート4は前記横フレーム3b・3b間の上下中途部に適宜間隔を開けて左右水平方向に配置され、全体として梯子状に構成して剛性をアップしている。そして、該連結プレート4・4は後方から前方に向けて下方傾斜して構成して、空気の流れを整えている。即ち、エンジンの配置や該エンジンと開口部の間に配置されるラジエータやバッテリー等の配置を考慮して、冷却効果が高められるように、縦フレーム3a・3aと連結プレート4・4を傾斜させて冷却風の向きを変更する風向板の役目を果たす構成としている。該フロントガード7の後面に前記防塵ネット2が配置される。
【0026】
そして、このように構成されるフロントガード7はボンネット1の前端中央部に設けた開口部1aに埋め込むように取付けているものである。
ここで、図3に示すように、前記開口部1aに面する上板10の前面部13の下端面及び、顎部12の上面は水平に形成されており、水平に形成された前面部13の下端及び顎部12の上面に前記フロントガード7を設置している。
より具体的には、前記フロントガード7の上下の横フレーム3b・3bは側面断面視略「L」字状に形成されており、前面部13の下面に形成された水平面10aとその後部上方の内面に形成された垂直面10bに上側の横フレーム3bが嵌合して固定され、顎部12の上面に形成された水平面12aとその後部下方に形成され内面に形成された垂直面12bに下側の横フレーム3bが嵌合して固定されている。即ち、フロントガード7を開口部1aの後方より嵌め込んで固定して埋め込む構成とし、該フロントガード7の前端は前面部13及び顎部12の前端と同一または内側となるように構成している。
【0027】
このようなフロントガード7の設置手段によりボンネット1の開口部1aに配置したフロントガード7が前方に突出することがないため、防塵ネット2の保護だけでなく、作業車両に装着されるフロントローダやバックホー等の作業機での作業時に邪魔になる懸念を排除し、外観も向上されるのである。
また、フロントガード7が開口部1aに対して内部に組み込まれた構成としているため、剛性がアップされ、ボンネット1上に石等が落下してボンネット上方に多大な荷重が加わった場合でも、破損することがなく内部を保護できるのである。
さらに、前記フロントガード7は、ボンネット1に組付けられているため、ボンネット1の開閉による回動時にボンネット1と一体的に回動することができる。即ち、ボンネット1とフロントガード7とを連動させるために、別段にヒンジやリンク等を設ける必要がなく、構造の簡略化を図ることができる。
【0028】
また、図4に示すように、前記フロントガード7の下部後方にはボンネットロック5を固設しており、該ボンネットロック5により作業時の振動等でボンネット3が意図せず開くことがないようにしている。
前記ボンネットロック5は、フロントガード7に固定される固定座5aと、該固定座5aに取付けられたリング状の係止体5bから構成されており、作業車両の本体側に設けられるロックピン等(不図示)で前記係止体5bを係止できるようにしている。
そして、このように前記フロントガード7の下部にボンネットロック5を設けていることで、ボンネット3の開閉をロックできるだけでなく、ボンネット1の開閉時における衝撃をフロントガード7を介してボンネット1の全体で受け止めることができる。即ち、ボンネット1の開閉時の衝撃による圧力がボンネットロック5へ集中的に加わることを防止でき、ボンネットロック5の長寿命化を図ることができる。
【0029】
また、ボンネット1の上板10後端の開放辺1bの左右中央にはボンネット1の回動支点となるヒンジ6が設けられている。該ヒンジ6は作業車両の本体側に固定される固定座6aと、該固定座6aに対して回動可能に取付けられた一対のボンネット支持体6b・6bと、該ボンネット支持体6b・6bに懸架された補強体6cとから構成されている。
前記一対のボンネット支持体6b・6bは「U」字状に形成されており、前方側を屈曲させてボンネット1に対して水平に支持している。
このように構成されたヒンジ6により、ボンネット1は、固定座6aに対してボンネット支持体6b・6bを回動させることで開閉できるように構成されている。そして、ボンネット1を前下部から上方に回動させて開くことができるようにしているのである。
このように、ボンネット1を前下部から上方に回動させて開くことができるようにすることで、メンテナンス性が向上するのである。
なお、ヒンジ6の構成は上記の機構に限定されるものではない。
【0030】
また、図2、図4、図6に示すようにボンネット1の開放辺1bには段差部8を形成している。
該段差部8はボンネット1の開放辺1bの外側部分が内側に凹んで形成されている。
即ち、ボンネット1を閉じたときには、機体フレーム15と開放辺1bとの間には隙間が生じるが、この隙間がダイレクトにボンネット1の内外を連通するものであると、騒音も直接外部に出てしまうことになる。そこで、ボンネット1の外面の延長上に位置する機体フレーム15の端部とボンネット1の合わせ部分において、機体フレーム15の端部がボンネット1の開放辺1bに設けた段差部8に臨むように配置することで、所謂、機体フレーム15の端部と段差部8との間にラビリンスを構成することができて、ボンネット内部から発生する騒音が直接外部に漏れ出すことができなくなり、防音効果を高めることができるのである。
また、図3、図4に示すように、ボンネット1の内面、本実施例では側板11の内面には凹凸部9・9を形成しており、該凹凸部9・9によりボンネット内部の騒音周波数を変化させて防音効果を高める構成としている。
なお、本実施の形態においては前記凹凸部9・9を左右各一個ずつ設けたものであるが、これに限定されるものではなく、上板10内面に形成することもでき、形状及び数は騒音が共振しないように考慮して決定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係るボンネットの構造を示す前方斜視図。
【図2】フロントガードを装着したボンネットの構造を示す前方斜視図。
【図3】同じく縦断側面図。
【図4】同じく後方斜視図。
【図5】装着時のボンネットを示す前方斜視図。
【図6】図3におけるB−B矢視断面図。
【符号の説明】
【0032】
1 ボンネット
1a 開口部
1b 開放辺
2 防塵ネット
4 連結プレート
5 ボンネットロック
6 ヒンジ
7 フロントガード
8 段差部
9 凹凸部
10 上板
10a 水平面
11 側板
12 顎部
12a 水平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後部及び下部が開放されたボンネットの前面または側面に、吸気用グリルを形成する開口部を設けたボンネットであって、開口部以外のボンネット全体を中空に成形したことを特徴とするボンネット。
【請求項2】
前記ボンネットを回転成形により形成した請求項1に記載のボンネットの製造方法。
【請求項3】
前記ボンネットの前端部中央に設けた開口部にフロントガードを埋め込んで配置したことを特徴とする請求項1に記載のボンネット。
【請求項4】
前記フロントガードの後方であって、前記開口部の全体を覆うように防塵ネットを取付けたことを特徴とする請求項3に記載のボンネット。
【請求項5】
前記フロントガードの下部後方にボンネットロックを取付けた
ことを特徴とする請求項3または4に記載のボンネット。
【請求項6】
前記ボンネットの後部及び下部が開放された部分の開放辺に段差部を設けたことを特徴とする請求項1に記載のボンネット。
【請求項7】
前記ボンネットの内面側に凹凸を設けたことを特徴とする請求項1または6に記載のボンネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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