説明

ボンベ用プリンタ

【課題】 ターンテーブル上のボンベの中心軸が傾いていても、これを垂直に補正して外周面の所定位置に印刷できるようにしたボンベ用プリンタを提供する。
【解決手段】 ボンベ用プリンだ10として、ターンテーブル13を上部ターンテーブル部13aと下部回転駆動部13bとに分割し、これらの間にバランス制御手段15を配設する。バランス制御手段15を、圧電センサを用いた3つの重量センサ16,16,16と、油圧シリンダを用いた3つの昇降手段17,17,17と、バランス制御回路18とで構成する。ボンベ25の外周筒と底板とが傾いて接合されていて、ボンベ25が上部ターンテーブル部13aに傾いて載置された場合に、バランス制御手段15が上部ターンテーブル部13aを傾斜させてボンベ25の中心軸CL2を垂直方向に補正し、さらに位置決め手段26がボンベ25の中心軸CL2をターンテーブル13の回転中心軸CL1に芯合せする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体や液体を充填して運搬するボンベの外周面に、文字や記号,絵がら等を印刷するボンベ用プリンタに係り、特に、ボンベの底板が傾いていても、ボンベを立てた状態で回転させながら外周面にきれいに印刷することができるボンベ用プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
プロパンガスや窒素ガス等の液体あるいは気体を充填する容器として、一般に円筒状の鋼鉄製ボンベが用いられており、このようなボンベの内容物や管理者等を識別するために、ボンベの外周面に文字や記号,マーク等を印刷することが行われている。
このような印刷は、ターンテーブル上に立て置きしたボンベの外周面にインクジェットヘッド列よりインクを噴射して、回転するボンベの外周面にプリントするボンベ用プリントが知られている(例えば、特開平10−100392号公報、特開2004−291444号公報参照)。
【0003】
特許文献1は、ボンベを載置する回転装置に関するもので、固定した受台と回転テーブルとの間に5個のボールベアと4個のカムフロアを配置してあり、この回転テーブル上にボンベを載置し、このボンベの外周面に接触する駆動輪によってボンベを回転し、ボンベの調芯はボンベの自重による前記カムフロアとボールベアによって行うようにしている。
【0004】
また特許文献2は、ターンテーブルに載置したボンベの位置決め装置に関するもので、2組の支持ローラと、該支持ローラをボンベの外周面に圧接する位置決めシリンダとでこの位置決め装置を構成している。
【特許文献1】特開平10−100392号公報
【特許文献2】特開2004−291444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、液体あるいは気体充填容器としてのボンベは、外周筒と底板とが別体に形成され、これらを溶接によって接合しており、溶接にあたっては液漏れや気体漏れ対策には重点がおかれるものの、それ以外にはさほど精密な作りを要求されるものではなく、外周筒と底板とが直角とならずに若干傾いて接合されるなどバラつきも多い。
図6は、このようなボンベに特許文献1,2のボンベ用プリンタを用いてプリントする様子を示しており、ボンベ1をターンテーブル2に載置したとき、本来図6の二点鎖線のように位置すべきボンベ1が実線のように傾いて置かれ、ボンベ1の外周面1aとインクジェットヘッド列3との間が部位ごとに不等距離となり、印刷が不均一になってしまうばかりか、回転中の重量バランスがわるくなる虞があり、好ましくない。
【0006】
本発明は、かかる実情を背景にしてなされたもので、その目的とするところは、外周筒に対して底板が傾いた状態で接合されたボンベであっても、回転中の重量バランスを良好に保って、ボンベ外周面の所定位置に短時間で確実できれいに印刷することのできるボンベ用プリンタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明のボンベ用プリンタは、立設したボンベを回転するターンテーブルと、前記ボンベの外周面に対峙して縦方向に配設されるインクジェットヘッド列と、前記ボンベの外周面とインクジェットヘッド列と間の距離を常時一定に保持する位置制御手段と、前記ボンベの中心軸を前記ターンテーブルの回転中心軸上に位置させる位置決め手段とを備えたボンベ用プリンタにおいて、前記ターンテーブルを、前記ボンベを支承する上部ターンテーブル部と、該上部ターンテーブル部を回転駆動する下部回転駆動部とに分割するとともに、前記上部ターンテーブル部に載置したボンベの傾きを検知し、該ボンベの傾斜に合わせて前記上部ターンテーブル部を傾斜させて、前記ボンベの中心軸を垂直方向に補正するバランス制御手段を備えたことを特徴としている。
【0008】
また、本発明のバランス制御手段は、上部ターンテーブル部と下部回転駆動部との間で、上部ターンテーブル部の重量バランスを検知する少なくとも3個の重量センサと、同じく上部ターンテーブル部と下部回転駆動部との間で、上部ターンテーブル部を傾動する少なくとも3個の昇降手段と、重量センサからの電気信号に基づいて前記昇降手段を傾動させるバランス制御回路とを備えた構成とすることができる。
【0009】
本発明のボンベ用プリンタにおいて、上部ターンテーブル部は通常水平状態にあり、バランス制御手段の重量センサは、この上部ターンテーブル部に載置されたボンベの重量を部位ごとに検出する。
例えば、外周筒と底板とが直角に接合された正常なボンベが上部ターンテーブル部に載置された場合には、重量センサごとに計測される重量が等しいので、バランス制御回路から昇降手段への信号指令はなく、上部ターンテーブル部は水平状態を保ったまま回転する。
また、外周筒と底板とが傾いて接合されたボンベが上部ターンテーブル部に載置された場合には、ボンベから重量センサに作用する荷重が部位ごとに異なり、これを電気信号で受けたバランス制御回路が、各昇降手段に指令を出してそれぞれの昇降手段を個別に作動する。昇降手段は、重量センサからの検出荷重に基づいて上部ターンテーブル部を傾斜させ、これによってボンベの中心軸を垂直方向に補正し、さらに位置決め手段がボンベの中心軸をターンテーブルの回転中心軸上に位置させる。
【0010】
昇降手段として、油圧シリンダやエアシリンダのほか、送りねじによる上下機構,ラック&ピニオンなどの移動装置を利用することができる。上部ターンテーブル部の各部位の重量を検出するセンサとして、圧電センサや磁歪センサ,ピエゾ抵抗センサなどがある。
【発明の効果】
【0011】
本発明のボンベ用プリンタは、ボンベの外周筒と底板とが傾いて接合されていて、ボンベが上部ターンテーブル部上に傾いて載置されることがあっても、バランス制御手段が、ボンベの中心軸を垂直方向に補正するので、回転中の重量バランスが良好に保て、ボンベ外周面の所定位置に所望の印刷を精度よく短時間で美麗に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下,本発明のボンベ用プリンタの一実施例を図1〜図5に基づいて説明する。図中、図1はボンベ用プリンタの概略図、図2は図1の補正前の状態を示す概略図、図3は図1のターンテーブルの駆動部概略平面図、図4はボンベの位置決め機構の平面概略図、図5はボンベ用プリンタの制御系統図である。なお、理解を容易にするために、各図におけるボンベの傾きを誇張して示してある。
【0013】
図1〜図4に示すように、ボンベ用プリンタ10は、基台11に電動機12を有するターンテーブル13とプリント手段14とが設置されている。ターンテーブル13は、電動機12の駆動によって回転する上部ターンテーブル部13aと、電動機12の回転軸に直結する下部回転駆動部13bとの上下二分割となっている。
上部ターンテーブル部13aは、円筒部の上部を円板で塞いだ縦断面下向きのコ字状に形成され、また下部回転駆動部13bは、ほぼ円盤状に形成されていて、下部回転駆動部13bの外縁に上部ターンテーブル部13aの円筒部が被るように組み合わせされるとともに、これらの間に介装されるバランス制御手段15によって、上部ターンテーブル部13aが所定範囲傾斜可能で且つ回転可能に支持されている。
【0014】
図1〜図3に示す通り、上部ターンテーブル部13aと下部回転駆動部13bとの間には、圧電センサを用いた3つの重量センサ16,16,16と、油圧シリンダを用いた3つの昇降手段17,17,17とが、ターンテーブル13の回転中心軸CL1からほぼ等距離の位置に交互で且つ等間隔に配設されており、昇降手段17の駆動源である小型モータ17a及び重量センサ16と、後述するバランス制御回路18とをケーブル19a,19bで接続して前述のバランス制御手段15を構成している。
各昇降手段17のシリンダロッド17aは、上端が上部ターンテーブル部13aの下面を支承しており、シリンダロッド17aのそれぞれの伸縮によって、上部ターンテーブル部13aの傾斜度合いを調節するようになっている。
【0015】
前記プリント手段14は、多数のインクジェットノズル20を縦方向に配列したインクジェットヘッド列21と、基台11に立設される支柱22と、該支柱22にインクジェットヘッド列21を支持する支持枠23と、該支持枠23を支柱22に沿って上下方向に駆動するエレベータ部24のほか、インクジェットヘッド列21とボンベ25との間を一定間隔に維持するための位置決め手段26とを備えている。
【0016】
位置決め手段26は、位置決めシリンダ27と、該位置決めシリンダ27の伸縮で基台11の上面に沿って進退するアーム28と、該アーム28の先端でボンベ25の外周面25aに接触するように設けられた2個1組の支持ローラ29,29とからなっている。
アーム28の先端は二股状になっており、それぞれの先端に1組の支持ローラ29,29が回転可能に軸支され、位置決めシリンダ27の伸長によってボンベ25の外周面25aに接触して支持するようになっている。
【0017】
位置決め手段26を用いたボンベ25の位置決めは、位置決めシリンダ27を伸縮させて、支持ローラ29,29をボンベ25の外周面25aに接触させ、ボンベ25の中心軸CL2をターンテーブル13の回転中心軸CL1に合致させることによって行われ、位置決め手段26は、ターンテーブル13に対するボンベ25の最初の搭載位置を特定すれば、ボンベ25の片側に設けるだけでよいが、ボンベ25の両側に配置してもよい。
【0018】
前記エレベータ部24は、一般的によく知られるねじ送り機構で、電動モータの出力軸に接続されるねじ式の回転棒30に支持枠23の移動体23aを噛合させ、電動モータの作動により移動体23aを上下動させて、支持枠23とインクジェットヘッド列21をボンベ25の外周面25aに沿って上下動すようになっている。
インクジェットヘッド列21は、ボンベ25の外周面25aとの距離を一定に保つために、位置検知センサ31をインクジェットヘッド列21の上端に配置してあり、位置検知センサ31からの出力信号によってインクジェットヘッド列駆動機構32を作動し、インクジェットヘッド列21を駆動して高さ調節する。位置検知センサ31は、反応の速い光センサが好ましく、特にレーザーセンサがより好適である。この位置検知センサ31は、インクジェットヘッド列21の上端だけでなく、上下端にはいちしてもよい。
【0019】
図5は、ボンベ25の位置決めとインクジェットヘッド列21の位置を制御するための系統図で、タッチパネル式の表示器33及び操作盤34と、中央制御盤35,CPR36,インクジェットノズルコントローラ37,ヘッド駆動制御部38,エレベータ制御部39,ターンテーブル駆動制御部40,位置決めシリンダ27を駆動するためのエア電磁弁41,ボンベ25を前後に移動するための前後移動制御部42を備えている。
【0020】
位置検知センサ31からの出力信号は前後移動制御部42に入り、前後移動制御部42からの指令によってインクジェットヘッド列駆動機構32を位置調節する。中央制御盤35は、所定のシーケンスに従ってエア電磁弁41やターンテーブル駆動制御部40,エレベータ制御部39を制御して、前記ボンベ25を位置決めするとともに、ターンテーブル13の上部ターンテーブル部13aを調節し、支持枠23を上下動してインクジェットヘッド列21の前後移動を実行する。またCPR24は、中央制御盤35およびインクジェットノズルコントローラ37を制御して、ボンベ25の外周面25aに印刷を行う。
【0021】
次に、以上のように構成される本実施例のボンベ用プリンタ10の使用手順を説明する。
まず、ボンベ25をターンテーブル13の上部ターンテーブル部13aに載置する。ボンベ25は、外周筒と底板とが傾いて接合されていたるめ、上部ターンテーブル部13aに載置した際には、その中心軸CL2がターンテーブル13の回転中心軸CL1に対して傾斜している。
【0022】
このように傾いたボンベ25の荷重は、上部ターンテーブル部13aへ偏荷重として作用し、さらにその下側に位置する3つの重量センサ16に作用する。各重量センサ16は、それぞれに検出した部位ごとの荷重を検出してバランス制御回路18へ出力し、さらにバランス制御回路18がこれら出力信号を比較検討して電気信号を小型モータ17aに出力する。
【0023】
各小型モータ17aは、それぞれに連結される3つの昇降手段17を個別に作動し、上部ターンテーブル部13aをボンベ25の傾いた角度と反対方向に同一傾斜角度傾かせ、これによりボンベ25の中心軸CL2が垂直に補正される。このとき、位置検知センサ31の検知信号をバランス制御回路18に出力することにより、ボンベ25の位置をより正確に制御することができる。
【0024】
次に、位置決め手段26の位置決めシリンダ27を伸長または縮小して、アーム28先端の支持ローラ29,29をボンベ25下端部の外周面25aに圧接し、該ボンベ25の中心軸CL2をターンテーブル13の回転中心軸CL1に合致するよう位置決めする。
そして、ボンベ25の外周面25aに対向するインクジェットヘッド列21の位置検知センサ31により、ボンベ25の所定の印刷位置を検知し、エレベータ部24の作動によりインクジェットヘッド列21を上下動させ、また、インクジェットヘッド列駆動機構32を作動させる。
【0025】
上部ターンテーブル部13aに設置されたボンベ25は、上部ターンテーブル部13aとともに回転中心軸CL1を中心に回転し、ボンベ25の回転中に連れてインクジェットヘッド列21を上方または下方に移動ながらインクを噴射することにより、ボンベ25の外周面25aに文字や絵柄等を印刷する。
【0026】
このように、ボンベ25の外周筒と底板とが傾いて接合されていて、ボンベ25が上部ターンテーブル部13aに傾いて載置されても、バランス制御手段15が上部ターンテーブル部13aを傾斜させてボンベ25の中心軸CL2を垂直方向に補正し、さらに位置決め手段26がボンベ25の中心軸CL2をターンテーブル13の回転中心軸CL1に芯合せする。
この結果、ボンベ25を例えば毎秒1回転のような高速で回転させながらも、外周面25aの所定位置に正確で且つ短時間に印刷することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施例を示すボンベ用プリンタの正面概略図である。
【図2】本発明の一実施例を示す図1の補正前の状態を示す正面概略図である。
【図3】本発明の一実施例を示すターンテーブル駆動部の平面概略断面図である。
【図4】本発明の一実施例を示すボンベの位置決め機構の平面概略図である。
【図5】本発明の一実施例を示すボンベ用プリンタの制御系統図である。
【図6】従来のボンベ用プリンタの正面概略図である。
【符号の説明】
【0028】
10…ボンベ用プリンタ
13…ターンテーブル
13a…上部ターンテーブル部
13b…下部回転駆動部
14…プリント手段
15…バランス制御手段
16…重量センサ
17…昇降手段
17a…小型モータ
18…バランス制御回路
20…インクジェットノズル
21…インクジェットヘッド列
24…エレベータ部
25…ボンベ
25a…ボンベ25の外周面
26…位置決め手段
27…位置決めシリンダ
29…支持ローラ
31…位置検知センサ
32…インクジェットヘッド列駆動機構
CL1…ターンテーブル13の回転中心軸
CL2…ボンベ25の中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立設したボンベを回転するターンテーブルと、
前記ボンベの外周面に対峙して縦方向に配設されるインクジェットヘッド列と、
前記ボンベの外周面とインクジェットヘッド列と間の距離を常時一定に保持する位置制御手段と、
前記ボンベの中心軸を前記ターンテーブルの回転中心軸上に位置させる位置決め手段と
を備えたボンベ用プリンタにおいて、
前記ターンテーブルを、前記ボンベを支承する上部ターンテーブル部と、
該上部ターンテーブル部を回転駆動する下部回転駆動部とに分割するとともに、
前記上部ターンテーブル部に載置したボンベの傾きを検知し、該ボンベの傾斜に合わせて前記上部ターンテーブル部を傾斜させて、前記ボンベの中心軸を垂直方向に補正するバランス制御手段を備えた
ことを特徴とするボンベ用プリンタ。
【請求項2】
前記バランス制御手段は、前記上部ターンテーブル部と前記下部回転駆動部との間で、上部ターンテーブル部の重量バランスを検知する少なくとも3個の重量センサと、
同じく前記上部ターンテーブル部と前記下部回転駆動部との間で、上部ターンテーブル部を傾動する少なくとも3個の昇降手段と、
前記重量センサからの電気信号に基づいて前記昇降手段を傾動させるバランス制御回路とを備えている
ことを特徴とする請求項1に記載のボンベ用プリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−168594(P2008−168594A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−6319(P2007−6319)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【出願人】(000128371)株式会社エルエーシー (3)
【Fターム(参考)】