説明

ボールジョイント

【課題】ボールシートの成形性を向上できるとともに、ボールシートの早期劣化およびソケットからのフローを防止できるボールジョイントを提供する。
【解決手段】ソケット2の下端部に設けた開口部13に中心軸方向に向けて突設した閉塞部21に、ボールシート4の下端部に中心軸方向へと厚さ寸法が大きくなるように設けた受部47を当接させてボールシート4をソケット2にて軸方向に支持することで、ソケット2の開口部13からのボールシート4のフローを防止できる。ボールシート4の上端部から、軸方向に沿ってスリット45を設けることで、ボールシート4の成形性を向上できるとともに、ボールシート4の開口部13側の強度を確保でき、ボールシート4の早期劣化を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸方向の一端部に開口部を有する略筒状のソケット内に設けられたボールシートを備えたボールジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車の懸架装置、あるいは操舵装置などに用いられるボールジョイントとしては、内面が略球面状の内室とこの内室に連通する開口部とを備えたソケットに、合成樹脂製などのボールジョイントを収容し、このボールジョイントにて、ボールスタッドのボール部を摺動可能に保持し、このボールスタッドのスタッド部をソケットの開口部から突出させる構成が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、このようなボールジョイントでは、ソケットの内室の内面が球形状に形成されているため、ボールシートが内室に取り付けられた状態でこの内室の内面に沿って球形状に変形していることにより、特に開口部方向に引っ張り荷重が加わるテンションタイプである場合に、ボールシートが開口部側へとずれて開口部からのボールシートのはみ出し、いわゆるフローが生じるおそれがある。
【0004】
そこで、ソケットの内室の内面を円筒形状とし、開口部の内周縁部から中心軸方向に向けて閉塞部を突設して、内室に収容されたボールシートを軸方向に支持することで、ボールシートのフローを防止するボールジョイントの構成が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平11−82473号公報(第3−5頁、図1)
【特許文献2】特開2002−257127号公報(第3−4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなボールジョイントでは、ボールシートの内面の受圧面積を増加させるため、および、ボールシートの内面をボールスタッドのボール部の外形に応じた球形状とする成形上、複数のスリットを開口部側の端部から軸方向に沿って設けることが考えられる。
【0006】
しかしながら、上述のようなボールジョイントを、ボールスタッドが下向きとなるように取り付け、下向きに引っ張り荷重が加わる、いわゆるテンションタイプとした場合には、スリットが開口部側に設けられているため、開口部方向に加わる引っ張り荷重によりボールシートが早期劣化するおそれがあるという問題点を有している。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、ボールシートの成形性を向上できるとともに、ボールシートの早期劣化およびソケットからのフローを防止できるボールジョイントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載のボールジョイントは、軸方向の一端部に開口部を備えた略筒状のソケットと、このソケット内に設けられた略筒状のボールシートと、このボールシート内に摺動可能に保持され前記ソケット内に収容されたボール部、および、このボール部から突設され前記開口部に挿通されるスタッド部を備えたボールスタッドとを具備し、前記ソケットが、前記開口部に中心軸方向に向けて突設された閉塞部を備え、前記ボールシートが、軸方向の一端部に中心軸方向へと厚さ寸法が大きくなるように設けられ前記閉塞部に当接して軸方向に支持される受部と、軸方向の他端部から軸方向に沿って設けられたスリットとを備えているものである。
【0009】
そして、略筒状のソケットの軸方向の一端部に設けられた開口部に中心軸方向に向けて突設した閉塞部に、ボールシートの軸方向の一端部に中心軸方向へと厚さ寸法が大きくなるように設けた受部が当接してボールシートが軸方向に支持されることで、ボールシートのソケットの開口部からのフローが防止され、また、ボールシートの軸方向の他端部から、軸方向に沿ってスリットを設けることで、ボールシートの成形性が向上するとともに、ボールシートの開口部側の強度が確保され、ボールシートの早期劣化が防止される。
【0010】
請求項2記載のボールジョイントは、請求項1記載のボールジョイントにおいて、ボールシートが、軸方向の一端部に設けられた受部、および、軸方向の他端部から軸方向に沿って設けられたスリットをそれぞれ備えた第1のシート体と、この第1のシート体の軸方向の他端部に取り付けられ、ボール部の外周面を弾性的に押圧する第2のシート体とを備えているものである。
【0011】
そして、軸方向の他端部から軸方向に沿ってスリットが設けられた第1のシート体の軸方向の他端部に取り付けた第2のシート体にてボール部の外周面を弾性的に押圧することで、ボールシートにてボール部を確実に保持することが可能になる。
【0012】
請求項3記載のボールジョイントは、請求項1記載のボールジョイントにおいて、ボールシートが、軸方向の他端部側に向けて内面から傾斜状に突設されボール部の外周面を弾性的に押圧する延長部を備えているものである。
【0013】
そして、ボールシートの内面に、軸方向の他端部側に向けて傾斜状に突設した延長部にてボール部の外周面を弾性的に押圧することにより、ボールシートにてボール部を確実に保持することが可能になる。
【0014】
請求項4記載のボールジョイントは、請求項1ないし3いずれか一記載のボールジョイントにおいて、ボールシートが、軸方向の一端部側に複数設けられ、ボール部の外周面との間に潤滑剤を貯留可能な潤滑剤保持部を備えているものである。
【0015】
そして、ボール部の外周面との間に潤滑剤を貯留可能な潤滑剤保持部を、軸方向一端側に複数設けることで、潤滑域が拡がり、ボールシートとボール部との潤滑性が確保される。
【0016】
請求項5記載のボールジョイントは、請求項1ないし4いずれか一記載のボールジョイントにおいて、ソケットは、開口部が下側に位置し、ボールスタッドは、下方向に引っ張り荷重が加えられるものである。
【0017】
そして、ソケットの開口部が下側に位置し、ボールスタッドに下方向に引っ張り荷重が加えられることにより、ボールシートに下向きの荷重が加わるものの、開口部の内周縁部から中心軸方向に向けて突設した閉塞部に、ボールシートの受部を当接させてボールシートを軸方向に支持することで、ボールシートのフローが確実に防止される。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載のボールジョイントによれば、略筒状のソケットの軸方向の一端部に設けられた開口部に中心軸方向に向けて突設した閉塞部に、ボールシートの軸方向の一端部に中心軸方向へと厚さ寸法が大きくなるように設けた受部を当接させてボールシートを軸方向に支持することで、ボールシートのソケットの開口部からのフローを防止でき、また、ボールシートの軸方向の他端部から、軸方向に沿ってスリットを設けることで、ボールシートの成形性を向上できるとともに、ボールシートの開口部側の強度を確保でき、ボールシートの早期劣化を防止できる。
【0019】
請求項2記載のボールジョイントによれば、請求項1記載のボールジョイントの効果に加えて、軸方向の他端部から軸方向に沿ってスリットが設けられた第1のシート体の軸方向の他端部に取り付けた第2のシート体にてボール部の外周面を弾性的に押圧することで、ボールシートにてボール部を確実に保持できる。
【0020】
請求項3記載のボールジョイントによれば、請求項1記載のボールジョイントの効果に加えて、ボールシートの内面に、軸方向の他端部側に向けて傾斜状に突設した延長部にてボール部の外周面を弾性的に押圧することにより、ボールシートにてボール部を確実に保持できる。
【0021】
請求項4記載のボールジョイントによれば、請求項1ないし3いずれか一記載のボールジョイントの効果に加えて、ボール部の外周面との間に潤滑剤を貯留可能な潤滑剤保持部を、軸方向一端側に複数設けることで、潤滑域が拡がり、ボールシートとボール部との潤滑性を確保できる。
【0022】
請求項5記載のボールジョイントによれば、請求項1ないし4いずれか一記載のボールジョイントの効果に加えて、ソケットの開口部が下側に位置し、ボールスタッドに下方向に引っ張り荷重が加えられることにより、ボールシートに下向きの荷重が加わるものの、開口部の内周縁部から中心軸方向に向けて突設した閉塞部に、ボールシートの受部を当接させてボールシートを軸方向に支持することで、ボールシートのフローを確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の第1の実施の形態のボールジョイントの構成を図1および図2を参照して説明する。
【0024】
図1において、1はボールジョイントで、このボールジョイント1は、金属製などの略円筒状のソケット2、鋼鉄製などのボールスタッド3、ベアリングシートとしての合成樹脂製などのボールシート4、およびゴムあるいは軟質合成樹脂などにて略円筒状に形成されたダストカバー5を備えている。そして、このボールジョイント1は、ボールスタッド3が下向きに突出するように取り付けられ下方向に引っ張り荷重Fが加わる、いわゆるテンションタイプである。
【0025】
なお、以下、図1および図2に示す上下を、上下方向として説明する。
【0026】
ソケット2は、円柱状の空間部である内室11を内部に備える略円筒状に形成され、軸方向の一端部である下端部に内室11に連通する開口部13が開口形成され、かつ、軸方向の他端部である上端部に内室11に連通する上側開口部14が開口形成されている。さらに、ソケット2の開口部13側すなわち下側の外周面には、ダストカバー5の上端部が係止されるダストカバー溝15が全周に形成されている。そして、ソケット2の側面などには、図示しない雄ねじ、雌ねじやアームなどを有する連結部が設けられている。
【0027】
開口部13の内周縁部には、ボールシート4の軸方向の一端部である下端部を支持して、ボールシート4の開口部13からのはみ出し、すなわちフローを防止する閉塞部21が中心軸方向に向けて略垂直に突設されている。
【0028】
この閉塞部21は、開口部13の内周縁部から、ボールシート4の厚み寸法ほど突出している。
【0029】
上側開口部14の周縁部には、略円板状のキャップであるプラグ22の周縁部の下部を支持する段部23が設けられている。そして、プラグ22は、段部23にて支持された状態で上側開口部14の周縁部から上側開口部14の内方へとかしめ変形されたかしめ部24により周縁部がソケット2に固定されて上側開口部14を閉塞している。
【0030】
また、ボールスタッド3は、ボールシート4に回動可能に保持される略ボール状のボール部31と、このボール部31から突設され開口部13に挿通される略円柱状のスタッド部32とを備えている。
【0031】
ボール部31は、ボールシート4に保持された状態でソケット2内に収容されている。
【0032】
スタッド部32は、先端部側が開口部13からソケット2の外部に突出している。そして、このスタッド部32の先端側の外周面には、図示しない被取付部に取り付け可能な雄ねじ部34が設けられている。
【0033】
さらに、ボールシート4は、ベアリングシートなどとも呼ばれるもので、第1のシート体としてのボールシート体41と、第2のシート体としてのクッションシート42とを備えている。
【0034】
ボールシート体41は、図2に示すように、例えばポリアセタールなどの合成樹脂で形成され、上端側の内周面には、中心軸方向に向けて突出部44が突設されている。さらに、ボールシート体41には、複数、例えば6つのスリット45と、これらスリット45の個数に対応した複数、例えば6つの潤滑剤保持部としての油溝46と、閉塞部21に当接する受部47とがそれぞれ設けられている。
【0035】
また、ボールシート体41は、軸方向の両端部である上下端部に、それぞれ連通開口48,49を有する円筒状に形成され、突出部44から連通開口49に亘る内面が球面状に形成されている。そして、連通開口48は、ボールシート4をソケット2に取り付けた状態で上側開口部14に連通し、連通開口49は、ボールシート4をソケット2に取り付けた状態で開口部13に連通する。
【0036】
突出部44は、ボールシート体41の内面に、このボールシート体41の周方向全体に連続して設けられている。そして、この突出部44の下面までのボールシート体41の内周面が、ボール部31の外周面に摺接する球面状に形成されている。
【0037】
また、スリット45は、ボールシート体41の軸方向の他端部、すなわちソケット2の開口部13と反対側の端部、言い換えるとボールシート体41の上端部から、ボールシート体41の軸方向に沿ってそれぞれ連続して細長状に設けられ、先端部がボールシート体41の赤道近傍に位置している。すなわち、これらスリット45の上端部は、ボールシート体41の上端部にてこのボールシート体41の外方に開放されている。そして、これらスリット45は、ボールシート体41の周方向に互いに略等角度に離間されている。
【0038】
なお、ボールシート体41の赤道とは、ボールシート体41の中心軸に直交する平面上での球面状の内面の半径が最大となる位置、すなわちボールスタッド3の中心軸に直交する平面上でのボール部31の半径が最大となる位置に対応する部分をいう。
【0039】
油溝46は、周方向に対して各スリット45とずれた位置、例えば周方向に対する各スリット45,45の略中間の位置にそれぞれ設けられている。すなわち、これら油溝46は、ボールシート体41の周方向に互いに略等角度に離間されている。また、これら油溝46は、ボールシート体41の軸方向の一端部、すなわちスリット45が設けられている端部と反対側の端部、言い換えるとボールシート体41の下端部近傍から、ボールシート体41の軸方向に沿って連続して細長状に設けられ、先端部がボールシート体41の赤道近傍にそれぞれ位置している。したがって、これら油溝46とスリット45とは、先端部が周方向に互いに重ならないように設けられている。そして、これら油溝46には、図示しないグリースなどの潤滑剤がボール部31の外周面との間に貯留可能となっている。
【0040】
また、受部47は、ボールシート体41の下端部に、このボールシート体41の厚さ寸法が中心軸方向に大きくなるように形成されている。そして、この受部47は、図1に示すように、閉塞部21に当接することで、この閉塞部21により軸方向に支持されている。
【0041】
一方、クッションシート42は、合成樹脂などで略円筒状に形成され、ボールシート体41の軸方向の他端部である上端部側、すなわちスリット45が設けられている側に密着し、ボールスタッド3のボール部31とプラグ22との間に位置している。また、このクッションシート42は、下端部が突出部44の上部に嵌合し、ボール部31の外周面を弾性的に押圧する。さらに、このクッションシート42の下面は、ボールシート体41の球面状の内面の延長上に位置するように球面状に形成されている。そして、このクッションシート42は、内面の一部がボール部31の上側の球面状の外周面に当接し、中心孔42aがボール部31の頂部に位置している。
【0042】
また、ダストカバー5は、ダストシールあるいはブーツなどとも呼ばれるもので、可撓性を有する合成樹脂などで略円筒状に形成されている。そして、このダストカバー5は、ボールスタッド3に挿通され、上端部がダストカバー溝15にそれぞれ係止され、下端部がスタッド部32の外周面に当接している。
【0043】
次に、上記第1の実施の形態の組み立て方法を説明する。
【0044】
まず、ボールシート体41の内面にボールスタッド3のボール部31を保持し、連通開口49にスタッド部32を挿通させ、これらボールシート体41とボールスタッド3とを、スタッド部32を開口部13に挿通させつつソケット2の上側開口部14から内室11に収容し、受部47を閉塞部21に当接させる。
【0045】
次いで、ボールシート体41の上端部にクッションシート42を配設した後、プラグ22を被せ、ソケット2の上側開口部14の周縁部を内方へとかしめ変形してかしめ部24を形成し、プラグ22をソケット2に係止固定する。
【0046】
このとき、プラグ22によりクッションシート42がボール部31の外周面に弾性的に押圧される。
【0047】
そして、ダストカバー5にボールスタッド3のスタッド部32を挿通させ、ダストカバー5の上端部をダストカバー溝15に係止固定する。
【0048】
このように、ソケット2の下端部に設けた開口部13の内周縁部から中心軸方向に向けて突設した閉塞部21に、ボールシート4の下端部に中心軸方向へと厚さ寸法が大きくなるように設けた受部47を当接させてボールシート4をソケット2にて軸方向に支持することで、ソケット2の開口部13からのボールシート4のフローを防止できる。
【0049】
また、ボールシート4の上端部から、軸方向に沿ってスリット45を設けることで、ボールシート4を成形するための金型をスリット45に沿って容易に抜くことができるので、ボールシート4の成形性を向上できるとともに、ボールシートの開口部側である下端部にスリットを設ける場合と比較して、ボールシート4の開口部13側の強度を確保でき、ボールシート4の早期劣化(へたり)を防止できる。
【0050】
さらに、ボールシート体41の上端部に取り付けたクッションシート42にてボール部31の外周面を弾性的に押圧することで、ボールシート4にてボール部31を確実に保持できる。
【0051】
しかも、ボールシート4を、別体のボールシート体41とクッションシート42とで構成し、クッションシート42をボールシート体41のスリット45が設けられている側に密着させることで、ボール部31の外周面の下側をボールシート体41で保持し、ボール部31の外周面の上側をクッションシート42で保持するので、ボールシート体41の球面状の内面を、スリット45側に必要以上に長く形成せずに済むから、ボールシート4の成形の際に、金型をスリット45の方向に、より容易に抜くことができ、ボールシート4の成形性をより向上できる。
【0052】
そして、ボール部31の外周面との間に潤滑剤を貯留可能な油溝46を、ボールシート4の下端側にそれぞれ設けることで、潤滑域が拡がり、ボールシート4とボール部31との潤滑性を確保できる。
【0053】
特に、本実施の形態のボールジョイント1は、下向きに取り付けられボールスタッド3に下向きの引っ張り荷重Fが加わるテンションタイプなので、ボールシート4にも下向きに荷重が加わり、ボールシート4のフローが発生し易く、また、ボールシート4の下側がへたりやすいため、上記のように構成することでボールシート4のフローおよびボールシート4の早期劣化を確実に防止できる。
【0054】
なお、上記第1の実施の形態において、油溝46に代えて、図3に示すように、凹面状に形成された円形状の潤滑剤保持部としての凹ディンプル54を、ボールシート体41の下端側に周方向に互いに略等間隔に離間して周方向に沿って設けても、油溝46と同様の作用効果を奏することができるとともに、各凹ディンプル54は、連通開口49から離間されているので、ボールスタッド3に下向きの引っ張り荷重Fが加わっても、潤滑剤が連通開口49を介して開口部13側に流出することなく凹ディンプル54内に保持され、ボールシート体41の耐摩耗性を向上できる。
【0055】
次に、第2の実施の形態を図4を参照して説明する。なお、上記第1の実施の形態と同様の構成および作用効果については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0056】
図4に示す実施の形態では、図1および図2に示す実施の形態のクッションシート42に代えて、ボールシート4の内面から、延長部55が上端側に向けて傾斜状に突設されている。さらに、この延長部55は、ボールシート4の周方向全体に連続して設けられ、ボール部31の外周面を弾性的に押圧して支持する。
【0057】
上記第2の実施の形態によれば、ソケット2の開口部13に突設した閉塞部21に、ボールシート4の受部47を当接させてボールシート4をソケット2にて軸方向に支持し、また、ボールシート4の上端部から、軸方向に沿ってスリット45を設けるなど、上記第1の実施の形態と同様の構成を有することにより、上記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することが可能になる。
【0058】
また、ボールシート4の内面に延長部55を設け、この延長部55にボール部31を弾性的に押圧するスプリング効果を持たせることで、上記第1の実施の形態と同様に、ボール部31を確実に保持できる。
【0059】
さらに、本実施の形態では、上記第1の実施の形態のクッションシート42などが必要ないので、ボールジョイント1を簡略化でき、製造性などを向上できる。
【0060】
なお、上記第2の実施の形態において、図5に示すように、図3に示す実施の形態と同様の複数の凹ディンプル54を、ボールシート4の下端側に設けてもよく、この場合にも上記第2の実施の形態および図3に示す実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0061】
また、上記各実施の形態において、スリット45および油溝46の個数は、任意に設定できる。
【0062】
さらに、ボールスタッド3のスタッド部32の形状、あるいはダストカバー5の形状などは任意に設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の第1の実施の形態のボールジョイントを示す縦断面図である。
【図2】同上ボールジョイントのボールシートを示す縦断面図である。
【図3】同上ボールシートの他の実施の形態を示す縦断面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態のボールジョイントのボールシートを示す縦断面図である。
【図5】同上ボールシートの他の実施の形態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 ボールジョイント
2 ソケット
3 ボールスタッド
4 ボールシート
13 開口部
21 閉塞部
31 ボール部
32 スタッド部
41 第1のシート体としてのボールシート体
42 第2のシート体としてのクッションシート
45 スリット
46 潤滑剤保持部としての油溝
47 受部
54 潤滑剤保持部としての凹ディンプル
55 延長部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の一端部に開口部を備えた略筒状のソケットと、
このソケット内に設けられた略筒状のボールシートと、
このボールシート内に摺動可能に保持され前記ソケット内に収容されたボール部、および、このボール部から突設され前記開口部に挿通されるスタッド部を備えたボールスタッドとを具備し、
前記ソケットは、前記開口部に中心軸方向に向けて突設された閉塞部を備え、
前記ボールシートは、
軸方向の一端部に中心軸方向へと厚さ寸法が大きくなるように設けられ前記閉塞部に当接して軸方向に支持される受部と、
軸方向の他端部から軸方向に沿って設けられたスリットとを備えている
ことを特徴としたボールジョイント。
【請求項2】
ボールシートは、
軸方向の一端部に設けられた受部、および、軸方向の他端部から軸方向に沿って設けられたスリットをそれぞれ備えた第1のシート体と、
この第1のシート体の軸方向の他端部に取り付けられ、ボール部の外周面を弾性的に押圧する第2のシート体とを備えている
ことを特徴とした請求項1記載のボールジョイント。
【請求項3】
ボールシートは、軸方向の他端部側に向けて内面から傾斜状に突設されボール部の外周面を弾性的に押圧する延長部を備えている
ことを特徴とした請求項1記載のボールジョイント。
【請求項4】
ボールシートは、軸方向の一端部側に複数設けられ、ボール部の外周面との間に潤滑剤を貯留可能な潤滑剤保持部を備えている
ことを特徴とした請求項1ないし3いずれか一記載のボールジョイント。
【請求項5】
ソケットは、開口部が下側に位置し、
ボールスタッドは、下方向に引っ張り荷重が加えられる
ことを特徴とした請求項1ないし4いずれか一記載のボールジョイント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−105306(P2006−105306A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−294169(P2004−294169)
【出願日】平成16年10月6日(2004.10.6)
【出願人】(000198271)株式会社ソミック石川 (91)
【Fターム(参考)】