説明

ポジ型レジスト材料及びパターン形成方法

【解決手段】紫外線、遠紫外線、電子線、X線、エキシマレーザー、γ線、又はシンクロトロン放射線照射の高エネルギー線に感応して酸を発生する特定の構造の繰り返し単位と酸不安定単位を有し、酸によってアルカリ溶解性が向上する高分子化合物(A)、特定の構造のスルホニウム塩(B)を共に含むことを特徴とするポジ型レジスト組成物。
【効果】本発明は、酸拡散の抑制と溶解コントラスト向上を両立し、かつケミカルフレア耐性を高めることにより、微細パターン、特にトレンチ(溝)パターンやホール(穴)パターンのリソグラフィー性能(形状、DOF、エッジラフネス)を改善させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子等の製造工程における微細加工、例えば波長193nmのArFエキシマレーザーを光源とするリソグラフィー、特に投影レンズとウエハーの間に水を挿入する液浸フォトリソグラフィーで用いるレジスト材料、及びこれを用いたレジストパターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が求められている中、現在汎用技術として用いられている光露光では、光の波長に由来する本質的な解像度の限界に近づきつつある。
【0003】
これまでレジストパターン形成の際に使用する露光光として、水銀灯のg線(436nm)又はi線(365nm)が広く用いられた。そして、更なる微細化のための手段として、露光光の波長を短波長化する方法が有効とされ、64Mビット(加工寸法が0.25μm以下)DRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー)以降の量産プロセスには、露光光としてi線(365nm)に代わって短波長のKrFエキシマレーザー(248nm)が利用された。
【0004】
しかし、更に微細な加工技術(加工寸法が0.2μm以下)を必要とする集積度256M及び1G以上のDRAMの製造には、より短波長の光が必要とされ、ArFエキシマレーザー(193nm)を用いたフォトリソグラフィーが本格的に検討されてきた。
【0005】
当初、ArFリソグラフィーは180nmノードのデバイス作製から適用されるはずであったが、KrFリソグラフィーが130nmノードデバイス量産まで延命され、ArFリソグラフィーの本格適用は90nmノードからである。更に、NAを0.9にまで高めたレンズと組み合わせて65nmノードデバイスの検討が行われている。
【0006】
次の45nmノードデバイスには露光光の短波長化が推し進められ、波長157nmのF2リソグラフィーが候補に挙がった。しかし、投影レンズに高価なCaF2単結晶を大量に用いることによるスキャナーのコストアップ、ソフトペリクルの耐久性が極めて低いためのハードペリクル導入に伴う光学系の変更、レジスト膜のエッチング耐性低下等の種々の問題により、F2リソグラフィーの先送りと、ArF液浸リソグラフィーの早期導入が提唱された(非特許文献1:Proc. SPIE Vol.4690 xxix参照)。
【0007】
ArF液浸リソグラフィーにおいて、投影レンズとウエハーの間に水を含浸させることが提案されている。193nmにおける水の屈折率は1.44であり、NA1.0以上のレンズを使ってもパターン形成が可能で、理論上はNAを1.35にまで上げることができる。NAの向上分だけ解像力が向上し、NA1.2以上のレンズと強い超解像技術の組み合わせで45nmノードの可能性が示されている(非特許文献2:Proc. SPIE Vol.5040 p.724参照)。
【0008】
しかし、回路線幅の縮小に伴い、レジスト材料においては、酸拡散によるコントラスト劣化の影響が一層深刻になってきた。これは、パターン寸法が酸の拡散長に近づくためであり、マスク忠実性の低下やパターン矩形性の劣化を招く。従って、露光光の短波長化及び高NA化による恩恵を十分に得るためには、従来材料以上に溶解コントラストの増大、又は酸拡散の抑制が必要となる。
【0009】
酸拡散を抑制するために、光酸発生剤をベースポリマーにバウンドする試みが検討されている。中でも、光照射後に発生する酸がバウンドされた構造となる設計においては、酸拡散が強く抑制されることとなり、露光量依存性やパターン疎密依存性が改善することが知られている(特許文献1:特開2008−133448号公報)。
【0010】
しかし、酸拡散が強く抑制されることは酸触媒反応(化学増幅)が抑制されることにも繋がり、感度低下や溶解コントラスト低下による解像度低下のおそれが生じる。特に、微細なトレンチ(溝)パターンやホール(穴)パターンにおいては光学コントラストが低い傾向があるため、溶解コントラスト低下による焦点深度(DOF)等のリソグラフィー性能の劣化が懸念される。
【0011】
また、ArFリソグラフィー用の光酸発生剤としてはスルホニウム塩が広く使用されているが、スルホニウム塩のカチオン構造を工夫することにより、溶解コントラストを向上させる試みが種々行われている。例えば、4−アルコキシナフチル−1−テトラヒドロチオフェニウムカチオン等が開発されており(特許文献2:特許第3632410号公報)、複数の酸不安定基を有する樹脂等を組み合わせたレジスト組成物(特許文献3:特許第3995575号公報)も開示されている。
【0012】
一方、溶解コントラスト向上策の弊害としてパターン形状への影響が懸念される。高コントラスト化によりパターン矩形化が期待できるものの、レジスト膜ベークプロセス中における膜表層での組成物揮発や再付着(ケミカルフレア)による形状変化が顕在化し易い傾向がある。特に、トレンチパターンにおいては、ライン&スペースパターンに比べてケミカルフレアによりレジスト膜表層が閉塞し易い傾向があり、DOF不足やエッジラフネスが問題となることが懸念される。
【0013】
従って、微細なトレンチパターンやホールパターンにおいて良好なリソグラフィー性能を発揮させるために、酸拡散を適度に抑制すると共に溶解コントラストが高く、かつケミカルフレアの影響を受け難いレジスト材料の開発が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2008−133448号公報
【特許文献2】特許第3632410号公報
【特許文献3】特許第3995575号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Proc. SPIE Vol.4690 xxix
【非特許文献2】Proc. SPIE Vol.5040 p.724
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、酸拡散の抑制と溶解コントラスト向上を両立し、かつケミカルフレア耐性を高めることにより、微細パターン、特にトレンチパターンやホールパターンのリソグラフィー性能(形状、DOF、エッジラフネス)を改善するポジ型レジスト材料、及びパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記した問題を解決するため鋭意検討及び研究を重ねた結果、高エネルギー線の照射により酸を発生する特定の構造の繰り返し単位と酸不安定単位とを有し、酸によってアルカリ溶解性が向上する高分子化合物(A)、特定の構造のスルホニウム塩(B)を共に含むことを特徴とするポジ型レジスト材料が、微細パターン、特にトレンチパターンやホールパターンにおいて極めて高い解像性を示し、形状、DOF、ラフネスが改善されることを知見するに至った。
【0018】
高分子化合物(A)において露光後に生じる発生酸の低拡散性とスルホニウム塩(B)による高透明性及び高溶解コントラスト特性により、光学コントラストの低い条件下においても高い潜像コントラストが確保できると共に、高分子化合物(A)における発生酸が高分子化合物中に固定化されていることにより、レジスト膜表層の酸揮発によるケミカルフレアが抑制されることで、良好なリソグラフィー性能が発揮されたものと考えられる。
【0019】
即ち、本発明は、高エネルギー線の照射により特定の構造の酸を発生する繰り返し単位及び酸不安定単位を有し、酸によってアルカリ溶解性が向上する高分子化合物(A)、特定の構造のスルホニウム塩(B)を共に含むことを特徴とするポジ型レジスト材料、及びこれを用いたパターン形成方法を提供する。
【0020】
本発明のポジ型レジスト材料は、紫外線、遠紫外線、電子線、X線、エキシマレーザー、γ線及びシンクロトロン放射線から選ばれる高エネルギー線の照射により酸を発生する特定の構造の繰り返し単位と酸不安定単位を有し、酸によってアルカリ溶解性が向上する高分子化合物(A)、及び特定の構造のスルホニウム塩(B)を共に含むことを特徴とするポジ型レジスト材料を提案するものである(請求項1)。
【0021】
本発明の高分子化合物(A)に含まれる酸を発生する繰り返し単位は、下記一般式(1−1)又は(1−2)のいずれかで示される(請求項1)。
【化1】

(式中、R1は水素原子又はメチル基を示す。R2は水素原子又はトリフルオロメチル基を示す。上記式(1−1)中、R3、R4及びR5は、それぞれ独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、アルケニル基又はオキソアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示す。R3、R4及びR5のうちのいずれか2つは、相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。上記式(1−2)中、R6及びR7は、それぞれ独立に置換又は非置換の炭素数6〜18のアリール基を示す。)
【0022】
また、上記スルホニウム塩(B)は下記一般式(2−1)又は(2−2)のいずれかで示される(請求項1)。
【化2】

(式中、R8は、水素原子又はトリフルオロメチル基を示す。R9は、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数4〜30の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示す。上記式(2−2)中、nは1〜4の整数を示す。)
【0023】
上記高分子化合物(A)は上記式(1−1)又は(1−2)のいずれかで示される高エネルギー線の照射により酸を発生する繰り返し単位と酸不安定単位に加えて、更にラクトン環を含む構造の繰り返し単位を含有することが好ましい(請求項2)。
【0024】
また、上記高分子化合物(A)及びスルホニウム塩(B)のほかに、更に下記一般式(3)で示される含窒素有機化合物(C)を含むことが好ましい(請求項3)。
【化3】

(式中、R10は、水素原子、炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜15のアリール基を示す。R11とR12は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜15のアリール基を示す。R11とR12は、互いに結合して炭素数6〜14の芳香環を形成してもよい。R13は、炭素数6〜15のアリール基を示す。)
【0025】
更に本発明は、上記ポジ型レジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後、高エネルギー線で露光する工程と、現像液を用いて現像する工程とを含むパターン形成方法を提供する(請求項4)。
【0026】
もちろん、露光後加熱処理を加えた後に現像してもよいし、エッチング工程、レジスト除去工程、洗浄工程等その他の各種の工程が行われてもよいことは言うまでもない。
【0027】
この場合、上記高エネルギー線は、波長180〜250nmの範囲のものとすることが好ましい(請求項5)。
【0028】
また、上記高エネルギー線で露光する工程を液体を介して露光する液浸露光により行うことができ(請求項6)、上記液浸露光において、レジスト膜と液体の間に保護膜を形成して投影レンズの間に液体を挿入し、該液体を介して上記基板を露光することができる(請求項7)。
【0029】
上記液浸露光において、180〜250nmの範囲の波長の露光光を用い、上記レジスト材料及び保護膜を塗布した基板と投影レンズとの間に液体を挿入し、該液体を介して上記基板を露光することができる(請求項8)。また、上記液体として水を用いることができる(請求項9)。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、微細パターン、特にトレンチパターンやホールパターンのリソグラフィー性能(形状、DOF、エッジラフネス)を改善させるレジスト材料、及びパターン形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明のポジ型レジスト材料は、紫外線、遠紫外線、電子線、X線、エキシマレーザー、γ線及びシンクロトロン放射線から選ばれる高エネルギー線に感応して酸を発生する一般式(1−1)又は(1−2)のいずれかで示される構造の繰り返し単位と酸不安定単位とを有し、酸によってアルカリ溶解性が向上する高分子化合物(A)、及び一般式(2−1)又は(2−2)のいずれかで示されるスルホニウム塩(B)を共に含むことを特徴とする。
【0032】
上記高分子化合物(A)に含まれる酸を発生する繰り返し単位は、下記一般式(1−1)又は(1−2)で示される。
【化4】

(式中、R1は水素原子又はメチル基を示す。R2は水素原子又はトリフルオロメチル基を示す。上記式(1−1)中、R3、R4及びR5は、それぞれ独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、アルケニル基又はオキソアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示す。R3、R4及びR5のうちのいずれか2つは、相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。上記式(1−2)中、R6及びR7は、それぞれ独立に置換又は非置換の炭素数6〜18のアリール基を示す。)
【0033】
上記式(1−1)、(1−2)中、R1は水素原子又はメチル基を示す。R2は水素原子又はトリフルオロメチル基を示す。上記式(1−1)中、R3、R4及びR5は、それぞれ独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、アルケニル基又はオキソアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示す。
【0034】
上記アルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロプロピルメチル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。上記オキソアルキル基として具体的には、2−オキソシクロペンチル基、2−オキシシクロヘキシル基、2−オキソプロピル基、2−オキソエチル基、2−シクロペンチル−2−オキソエチル基、2−シクロヘキシル−2−オキソエチル基、2−(4−メチルシクロヘキシル)−2−オキソエチル基等を挙げることができる。上記アルケニル基として具体的には、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。上記アリール基として具体的には、フェニル基、ナフチル基、チエニル基、4−ヒドロキシフェニル基等のヒドロキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、2−メトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、4−tert−ブトキシフェニル基、3−tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシフェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基等のアルキルフェニル基、メチルナフチル基、エチルナフチル基等のアルキルナフチル基、メトキシナフチル基、エトキシナフチル基等のアルコキシナフチル基、ジメチルナフチル基、ジエチルナフチル基等のジアルキルナフチル基、ジメトキシナフチル基、ジエトキシナフチル基等のジアルコキシナフチル基等が挙げられる。上記アラルキル基として具体的には、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基等が挙げられる。上記アリールオキソアルキル基として具体的には、2−フェニル−2−オキソエチル基、2−(1−ナフチル)−2−オキソエチル基、2−(2−ナフチル)−2−オキソエチル基等の2−アリール−2−オキソエチル基等が挙げられる。また、これらの基の水素原子の一部が、フッ素原子や水酸基で置換されていてもよい。R3、R4及びR5のうちのいずれか2つは、相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよく、その場合には、下記式で示される基等が挙げられる。
【化5】

(式中、Rは、上記R3、R4及びR5として例示した基と同じものを示す。)
【0035】
上記式(1−2)中、R6及びR7は独立に置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基を示す。上記R6及びR7としてのアリール基は、上記R3、R4及びR5として例示したアリール基と同じものが挙げられる。
【0036】
上記式(1−1)、(1−2)で示される繰り返し単位は、下記一般式(1−1’)、(1−2’)で示される単量体を、酸不安定単位を有する重合性単量体等その他単量体と共重合することで得ることができる。
【化6】

(式中、R1〜R7は上記の通り。)
【0037】
上記式(1−1)の具体例としては、以下に示す構造の化合物を例示できるが、これらに限定されるものではない。
【化7】

【0038】
また、上記式(1−2)の具体例としては以下に示す構造の化合物を例示できるが、これらに限定されるものではない。
【化8】

【0039】
また、上記高分子化合物(A)は酸を発生する繰り返し単位と共に、酸不安定単位を1つ以上含むことを特徴とする。酸不安定単位とは、カルボン酸、フェノール、フルオロアルコール等の酸性基が酸不安定基により保護された構造を有する繰り返し単位であり、酸によって脱保護し、アルカリ現像液に対するポリマーの溶解性を向上させることができる。酸不安定基としては種々用いることができるが、具体的には下記一般式(L1)で示されるアルコキシメチル基、下記一般式(L2)〜(L8)で示される三級アルキル基、下記一般式(L9)で示されるアルコキシカルボニル基又はアルコキシカルボニルアルキル基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。特に好ましい酸不安定基は、下記式(L2)〜(L5)で示される基である。
【化9】

【0040】
上記式中、破線は結合手を示す。RL01、RL02は、水素原子、又は炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、アダマンチル基等が例示できる。RL03は、炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10の酸素原子等のヘテロ原子を有してもよい一価の炭化水素基を示し、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基等に置換されたものを挙げることができる。具体的には、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基としては上記RL01、RL02と同様のものが例示でき、置換アルキル基としては下記の基等が例示できる。
【0041】
【化10】

(式中、破線は結合手を示す。)
【0042】
L01とRL02、RL01とRL03、RL02とRL03とは、互いに結合してこれらが結合する炭素原子や酸素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合には、環の形成に関与するRL01とRL02、RL01とRL03、又はRL02とRL03は、それぞれ炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す。
【0043】
L04、RL05、RL06は、それぞれ独立に炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基等が例示できる。
【0044】
L07は、炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示す。上記置換されていてもよいアルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルホ基等に置換された基、又はこれらのメチレン基の一部が酸素原子又は硫黄原子に置換された基等が例示できる。上記置換されていてもよいアリール基としては、具体的にはフェニル基、メチルフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基等が例示できる。式(L3)において、mは0又は1、nは0,1,2,3のいずれかであり、2m+n=2又は3を満足する数である。
【0045】
L08は、炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示す。具体的には、RL07と同様のもの等が例示できる。RL09〜RL18は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜15の一価の炭化水素基を示す。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルホ基等に置換されたもの等が例示できる。RL09とRL10、RL09とRL11、RL09とRL12、RL10とRL12、RL11とRL12、RL13とRL14、RL15とRL16、又はRL16とRL17は、互いに結合して環を形成していてもよく、その場合、環の形成に関与するRL09とRL10、RL09とRL11、RL09とRL12、RL10とRL12、RL11とRL12、RL13とRL14、RL15とRL16、又はRL16とRL17は、炭素数1〜15の二価の炭化水素基を示し、具体的には上記一価の炭化水素基で例示したものから水素原子を1個除いたもの等が例示できる。また、RL09とRL11、RL11とRL17、又はRL15とRL17は、隣接する炭素に結合するもの同士で何も介さずに結合し、二重結合を形成してもよい。
【0046】
L19は、炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、具体的にはRL07と同様の基等が例示できる。
【0047】
L20は、炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、具体的にはRL07と同様の基等が例示できる。
【0048】
Xは、これが結合する炭素原子と共に置換又は非置換のシクロペンタン環、シクロヘキサン環、又はノルボルナン環を形成する二価の基を示す。RL21、RL22は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基を示す。RL21とRL22は、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、その場合、置換又は非置換のシクロペンタン環、又はシクロヘキサン環を形成する二価の基を示す。pは1又は2を示す。
【0049】
L23は、炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、具体的にはRL07と同様の基等が例示できる。
【0050】
Yは、これが結合する炭素原子と共に置換又は非置換のシクロペンタン環、シクロヘキサン環、又はノルボルナン環を形成する二価の基を示す。RL24、RL25は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基を示す。RL24とRL25は、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、その場合、置換又は非置換のシクロペンタン環、又はシクロヘキサン環を形成する二価の基を示す。qは1又は2を示す。
【0051】
L26は、炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、具体的にはRL07と同様の基等が例示できる。
【0052】
Zは、これが結合する炭素原子と共に置換又は非置換のシクロペンタン環、シクロヘキサン環、又はノルボルナン環を形成する二価の基を表す。RL27、RL28は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基を示す。RL27とRL28は、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、その場合、置換又は非置換のシクロペンタン環、又はシクロヘキサン環を形成する二価の基を示す。
【0053】
L29は、炭素数4〜20、好ましくは炭素数4〜15の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基からなるトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基又は上記式(L1)で示される基を示す。上記三級アルキル基として、具体的にはtert−ブチル基、tert−アミル基、1,1−ジエチルプロピル基、2−シクロペンチルプロパン−2−イル基、2−シクロヘキシルプロパン−2−イル基、2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)プロパン−2−イル基、2−(アダマンタン−1−イル)プロパン−2−イル基、1−エチルシクロペンチル基、1−ブチルシクロペンチル基、1−エチルシクロヘキシル基、1−ブチルシクロヘキシル基、1−エチル−2−シクロペンテニル基、1−エチル−2−シクロヘキセニル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基等が例示できる。上記トリアルキルシリル基として、具体的にはトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチル−tert−ブチルシリル基等が例示できる。上記オキソアルキル基として、具体的には3−オキソシクロヘキシル基、4−メチル−2−オキソオキサン−4−イル基、5−メチル−2−オキソオキソラン−5−イル基等が例示できる。yは0〜3の整数である。
【0054】
上記式(L1)で示される酸不安定基のうち直鎖状又は分岐状のものとしては、具体的には下記の基等が例示できる。
【化11】

(式中、破線は結合手を示す。)
【0055】
上記式(L1)で示される酸不安定基のうち環状のものとしては、具体的にはテトラヒドロフラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロフラン−2−イル基、テトラヒドロピラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロピラン−2−イル基等が例示できる。
【0056】
上記式(L2)の酸不安定基としては、具体的にはtert−ブチル基、tert−アミル基、及び下記の基等が例示できる。
【化12】

(式中、破線は結合手を示す。)
【0057】
上記式(L3)の酸不安定基としては、具体的には1−メチルシクロペンチル基、1−エチルシクロペンチル基、1−n−プロピルシクロペンチル基、1−イソプロピルシクロペンチル基、1−n−ブチルシクロペンチル基、1−sec−ブチルシクロペンチル基、1−シクロヘキシルシクロペンチル基、1−(4−メトキシ−n−ブチル)シクロペンチル基、1−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)シクロペンチル基、1−(7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)シクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロヘキシル基、3−メチル−1−シクロペンテン−3−イル基、3−エチル−1−シクロペンテン−3−イル基、3−メチル−1−シクロヘキセン−3−イル基、3−エチル−1−シクロヘキセン−3−イル基等が例示できる。
【0058】
上記式(L4)の酸不安定基としては、下記一般式(L4−1)〜(L4−4)で示される基が特に好ましい。
【化13】

(式中、RL41は上記の通り。)
【0059】
上記式(L4−1)〜(L4−4)中、破線は結合位置及び結合方向を示す。RL41は、それぞれ独立に炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の一価炭化水素基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を例示できる。
【0060】
上記式(L4−1)〜(L4−4)には、エナンチオ異性体(enantiomer)やジアステレオ異性体(diastereomer)が存在し得るが、上記式(L4−1)〜(L4−4)は、これらの立体異性体の全てを代表して表す。これらの立体異性体は単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0061】
例えば、上記式(L4−3)は下記一般式(L4−3−1)、(L4−3−2)で示される基から選ばれる1種又は2種の混合物を代表して表すものとする。
【化14】

(式中、RL41は上記の通り。)
【0062】
また、上記式(L4−4)は下記一般式(L4−4−1)〜(L4−4−4)で示される基から選ばれる1種又は2種以上の混合物を代表して表すものとする。
【化15】

(式中、RL41は上記の通り。)
【0063】
上記式(L4−1)〜(L4−4)、(L4−3−1)、(L4−3−2)、及び式(L4−4−1)〜(L4−4−4)は、それらのエナンチオ異性体及びエナンチオ異性体混合物をも代表して示すものとする。
【0064】
なお、式(L4−1)〜(L4−4)、(L4−3−1)、(L4−3−2)、及び式(L4−4−1)〜(L4−4−4)の結合方向がそれぞれビシクロ[2.2.1]ヘプタン環に対してexo側であることによって、酸触媒脱離反応における高反応性が実現される(特開2000−336121号公報参照)。これらビシクロ[2.2.1]ヘプタン骨格を有する三級exo−アルキル基を置換基とする単量体の製造において、下記一般式(L4−1−endo)〜(L4−4−endo)で示されるendo−アルキル基で置換された単量体を含む場合があるが、良好な反応性の実現のためにはexo比率が50%以上であることが好ましく、exo比率が80%以上であることが更に好ましい。
【化16】

(式中、RL41は上記の通り。)
【0065】
上記式(L4)の酸不安定基としては、具体的には下記の基等が例示できる。
【化17】

(式中、破線は結合手を示す。)
【0066】
上記式(L5)の酸不安定基としては、具体的には下記の基等が例示できる。
【化18】

(式中、破線は結合手を示す。)
【0067】
上記式(L6)の酸不安定基としては、具体的には下記の基等が例示できる。
【化19】

(式中、破線は結合手を示す。)
【0068】
上記式(L7)の酸不安定基としては、具体的には下記の基等が例示できる。
【化20】

(式中、破線は結合手を示す。)
【0069】
上記式(L8)の酸不安定基としては、具体的には下記の基等が例示できる。
【化21】

(式中、破線は結合手を示す。)
【0070】
上記式(L9)の酸不安定基としては、具体的には下記の基等が例示できる。
【化22】

(式中、破線は結合手を示す。)
【0071】
上記例示された酸不安定基を有する酸不安定単位の具体例を下記に示すが、これらに限定されるものではない。
【化23】

【0072】
【化24】

【0073】
【化25】

【0074】
【化26】

【0075】
【化27】

【0076】
【化28】

【0077】
【化29】

【0078】
【化30】

【0079】
【化31】

【0080】
【化32】

【0081】
【化33】

【0082】
また、上記高分子化合物(A)は、高エネルギー線で酸を発生する繰り返し単位及び酸不安定単位に加え、更にラクトン環の密着性基を有する繰り返し単位を1つ以上含むことが好ましい。具体的には以下のものが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0083】
【化34】

【0084】
【化35】

【0085】
【化36】

【0086】
更に、上記高分子化合物(A)は、必要に応じて水酸基、カルボキシル基、フルオロアルキル基、又はα−トリフルオロメチルアルコール基を含む単位等、その他の繰り返し単位を1つ以上含んでもよい。具体的には以下のものが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0087】
【化37】

【0088】
【化38】

【0089】
【化39】

【0090】
【化40】

【0091】
【化41】

【0092】
【化42】

【0093】
高分子化合物(A)を構成する各繰り返し単位の組成比について、上記式(1−1)又は(1−2)で示される高エネルギー線により酸を発生する単位の合計の含有率をaモル%、酸不安定単位の合計の含有率をbモル%、ラクトン環を有する単位の合計の含有率をcモル%、その他の単位の合計の含有率をdモル%とした場合、
a+b+c+d=100モル%
0<a≦30
0<b≦70
0≦c≦70
0≦d≦30
を満たし、特に、
a+b+c+d=100モル%
1≦a≦10
20≦b≦70
20≦c≦60
0≦d≦20
を満たす組成比が好ましい。
【0094】
高分子化合物(A)の分子量について、重量平均分子量(Mw)が小さすぎると水への溶解が起こり易くなるが、重量平均分子量が大きすぎるとアルカリ溶解性の低下やスピンコート時の塗布欠陥の原因になる可能性が高い。その観点から、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量として、1,000〜500,000、特に2,000〜30,000であることが好ましい。
【0095】
本発明のポジ型レジスト材料は、上記高分子化合物と共に下記一般式(2−1)又は下記一般式(2−2)で示されるスルホニウム塩(B)を含むことを特徴とする。
【化43】

(式中、R8は、水素原子又はトリフルオロメチル基を示す。R9は、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数4〜30の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示す。上記式(2−2)中、nは1〜4の整数を示す。)
【0096】
9の具体例としては、以下の炭化水素基を例示できるが、これらに限定されるものではない。
【化44】

(式中、破線は結合手を示す。)
【0097】
上記式(2−1)のスルホニウムカチオンの合成方法は公知であり、メタノール中で1−ナフトールとテトラメチレンスルホキシドの塩化水素ガスによる反応で合成することができる。上記式(2−2)のスルホニウム塩の合成も公知の方法で合成できる。n=1の場合、具体的には2−メトキシエチルクロリドと1−ナフトールを塩基性条件下で反応させ、1−(2−メトキシエトキシ)ナフタレンを合成する。次いで、これとテトラメチレンスルホキシドを五酸化二リン/メタンスルホン酸溶液中でスルホニウムカチオンを合成する。nが2〜4の場合にも、対応する置換アルキルハライド等を用いることで合成できる。
【0098】
上記式(2−1)又は(2−2)で示されるスルホニウム塩のアニオンは、特開2007−145797号公報や特開2008−299069号公報を参考に合成できる。
【0099】
上記カチオンとアニオンのイオン交換反応は、ジクロロメタン、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、アセトニトリル等の有機溶剤単独又は水を併用することで行うことができる。
【0100】
上記式(2−1)、(2−2)で示されるスルホニウム塩(B)の具体例を以下に示す。
【化45】

【0101】
本発明のレジスト材料におけるスルホニウム塩(B)の添加量はいずれでもよいが、本発明のレジスト材料中の高分子化合物(A)、又はそれ以外の高分子化合物も含む場合には、それら高分子化合物総量100質量部に対して、好ましくは0.1〜30質量部、より好ましくは2〜20質量部である。スルホニウム塩(B)が30質量部以下であれば、レジスト膜の透過率が十分大きく、解像性能の劣化が起こるおそれが少ない。上記スルホニウム塩(B)は、単独でも2種以上混合して用いることもできる。
【0102】
本発明のレジスト材料は、上記高分子化合物(A)及びスルホニウム塩(B)のほかに、クエンチャーを含むことが好ましい。クエンチャーには、光酸発生剤より発生する酸等がレジスト膜中に拡散する際の拡散速度を抑制することができる化合物が適しており、レジスト感度の調整が容易となることに加え、レジスト膜中での酸の拡散速度が抑制されて解像度が向上し、露光後の感度変化を抑制したり、基板や環境依存性を少なくし、露光余裕度やパターンプロファイル等を向上させることができる。
【0103】
このようなクエンチャーとしては、第一級、第二級、第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシル基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、水酸基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド類、イミド類、カーバメート類、アンモニウム塩類等が好適に用いられる。
【0104】
この場合、求核性の高い化合物や塩基性の強すぎる化合物は、本発明のスルホニウム塩(B)と反応するため不適である。好ましくは1級又は2級アミンをtBOC(tert−ブトキシカルボニル)保護化した化合物が挙げられる。また、特開2007−298569号公報、特開2010−20204号公報等に記載の化合物も好ましく用いることができる。
【0105】
また、本発明のレジスト材料に含まれることが特に好ましいクエンチャーは、下記一般式(3)で示される含窒素有機化合物(C)である。
【化46】

(式中、R10は、水素原子、炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜15のアリール基を示す。R11とR12は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜15のアリール基を示す。R11とR12は、互いに結合して炭素数6〜14の芳香環を形成してもよい。R13は、炭素数6〜15のアリール基を示す。)
【0106】
ここで、上記式(3)で示される含窒素有機化合物について詳述する。R1の炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基として、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ウンデカニル基、フェニル基等を例示でき、また、R2とR3の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基として、具体的にはメチル基、フェニル基等を例示できるが、これらに限定されるものではない。R2とR3が互いに結合して環を形成したものとして、具体的には下記一般式(4)に示される構造を例示できるが、これに限定されるものではない。
【化47】

(式中、R10、R13は上記の通り。R16、R17は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。)
【0107】
13の炭素数6〜15のアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基として、具体的にはフェニル基、4−メトキシフェニル基等を例示できるが、これに限定されるものではない。
【0108】
上記式(3)で示される化合物として、具体的には下記のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0109】
【化48】

【0110】
【化49】


(式中、Meはメチル基を示す。)
【0111】
上記式(3)で示される含窒素有機化合物は、例えば、下記反応式に示す方法により得ることができるが、これに限定されるものではない。
【化50】

[式中、R10〜R13は上記の通り。R18は、ハロゲン原子又は−OR19を示す。R19は、下記式(7)
【化51】

(ここで、破線は結合手を示す。R13は上記の通り。)
で示される基を示す。]
【0112】
上記反応式で示されるイミダゾール誘導体(5)とアリールメトキシカルボニル化剤(6)を用いたカーバメート形成反応は、基本的には上記式(3)で示されるすべての化合物の合成へ適用可能である。
【0113】
上記アリールメトキシカルボニル化剤(6)としては、ハロ炭酸エステル(式(6)においてR18がハロゲン原子の場合)又は二炭酸ジエステル(式(5)においてR18が−OR19の場合)が好ましい。ハロ炭酸エステルを用いる場合は、無溶剤、又は塩化メチレン、アセトニトリル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、ヘキサン等の溶剤中、イミダゾール誘導体(5)、クロロ炭酸ベンジル、クロロ炭酸4−メトキシベンジル等の対応するハロ炭酸エステル、トリエチルアミン、ピリジン、2,6−ルチジン、N,N−ジメチルアニリン等の塩基を順次又は同時に加え、必要に応じ冷却又は加熱して行うのがよい。二炭酸ジエステルを用いる場合は、塩化メチレン、アセトニトリル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、ヘキサン等の溶剤中、イミダゾール誘導体(5)、二炭酸ジベンジル、二炭酸ジ−(4−メトキシベンジル)等の対応する二炭酸ジエステル、トリエチルアミン、ピリジン、2,6−ルチジン、N,N−ジメチルアニリン等の塩基を順次又は同時に加え、必要に応じ冷却又は加熱して行うのがよい。アリールメトキシカルボニル化剤(6)の使用量は、条件により種々異なるが、例えば、原料のイミダゾール誘導体(5)1モルに対して、1.0〜5.0モル、特に1.0〜2.0モルとすることが好ましい。塩基の使用量は条件により種々異なるが、例えば、原料のイミダゾール誘導体(5)1モルに対して、0〜5.0モル、特に0〜2.0モルとすることが好ましい。反応時間は、ガスクロマトグラフィー(GC)やシリカゲル薄層クロマトグラフィー(TLC)で反応を追跡して反応を完結させることが収率の点で望ましいが、通常0.5〜24時間程度である。反応混合物から通常の水系処理(aqueous work−up)により目的の含窒素有機化合物(3)を得ることができ、必要があれば蒸留、クロマトグラフィー、再結晶等の常法に従って精製することができる。水系後処理(aqueous work−up)を行わず、反応で生じた塩を濾別後又は反応液を直接精製にかけることが可能な場合もある。
【0114】
上記式(3)で示される含窒素有機化合物(C)は、本発明のレジスト材料の必須成分の1つであるスルホニウム塩(B)と反応することなくレジスト材料の保存安定性が確保できると共に、リソグラフィー性能の向上に寄与することが見出された。低塩基性、低求核性でありながら、高いクエンチャー能、即ち酸拡散抑制能を有しているものと考えられる。
【0115】
また、本発明のレジスト材料は、上記式(3)で示される含窒素有機化合物や前述した他のクエンチャー化合物のうち、2種以上のクエンチャー成分を含んでもよい。
【0116】
なお、上記式(3)で示される含窒素有機化合物の総添加量は、ベース樹脂100質量部に対して0.1〜8質量部、特に0.5〜5質量部が好適である。
【0117】
本発明のポジ型レジスト材料は、高分子化合物(A)のほかに別の高分子化合物を含んでもよい。例えば、下記式(R1)及び/又は下記式(R2)で示されるGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量が、好ましくは1,000〜100,000、より好ましくは3,000〜30,000の高分子化合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【化52】

【0118】
上記式中、R001は、水素原子、メチル基又は−CH2CO2003を示す。R002は、水素原子、メチル基又は−CO2003を示す。R003は、炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示し、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、エチルシクロペンチル基、ブチルシクロペンチル基、エチルシクロヘキシル基、ブチルシクロヘキシル基、アダマンチル基、エチルアダマンチル基、ブチルアダマンチル基等を例示できる。
【0119】
004は、水素原子、又は炭素数1〜15の含フッ素置換基、カルボキシル基、水酸基のいずれかを含有する1価の炭化水素基を示し、具体的には、水素原子、カルボキシエチル、カルボキシブチル、カルボキシシクロペンチル、カルボキシシクロヘキシル、カルボキシノルボルニル、カルボキシアダマンチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシブチル、ヒドロキシシクロペンチル、ヒドロキシシクロヘキシル、ヒドロキシノルボルニル、ヒドロキシアダマンチル、ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピルシクロヘキシル、ジ(ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)シクロヘキシル等が例示できる。
【0120】
005〜R008の少なくとも1個は、炭素数1〜15の含フッ素置換基、カルボキシル基、水酸基のいずれかを含有する1価の炭化水素基を示し、残りはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。炭素数1〜15の含フッ素置換基、カルボキシル基又は水酸基のいずれかを含有する1価の炭化水素基としては、具体的にはカルボキシル、カルボキシメチル、カルボキシエチル、カルボキシブチル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシブチル、2−カルボキシエトキシカルボニル、4−カルボキシブトキシカルボニル、2−ヒドロキシエトキシカルボニル、4−ヒドロキシブトキシカルボニル、カルボキシシクロペンチルオキシカルボニル、カルボキシシクロヘキシルオキシカルボニル、カルボキシノルボルニルオキシカルボニル、カルボキシアダマンチルオキシカルボニル、ヒドロキシシクロペンチルオキシカルボニル、ヒドロキシシクロヘキシルオキシカルボニル、ヒドロキシノルボルニルオキシカルボニル、ヒドロキシアダマンチルオキシカルボニル、ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピルシクロヘキシルオキシカルボニル、ジ(ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)シクロヘキシルオキシカルボニル等が例示できる。炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基としては、具体的にはR003で例示した基と同様の基が例示できる。
【0121】
005とR006、R006とR007又はR007とR008は、互いに結合してこれが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよく、その場合には、環を形成するR005〜R008の少なくとも1個は、炭素数1〜15の含フッ素置換基、カルボキシル基又は水酸基のいずれかを含有する2価の炭化水素基を示し、残りは単結合、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基を示す。炭素数1〜15の含フッ素置換基、カルボキシル基又は水酸基のいずれかを含有する2価の炭化水素基として、具体的には上記含フッ素置換基、カルボキシル基、水酸基のいずれかを含有する1価の炭化水素基として例示した基から水素原子を1個除いたもの等を例示できる。炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基として、具体的にはR003で例示した基から水素原子を1個除いたもの等を例示できる。
【0122】
009は、炭素数3〜15の−CO2−部分構造を含有する1価の炭化水素基を示し、具体的には2−オキソオキソラン−3−イル、4,4−ジメチル−2−オキソオキソラン−3−イル、4−メチル−2−オキソオキサン−4−イル、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル、5−メチル−2−オキソオキソラン−5−イル等を例示できる。
【0123】
010〜R013の少なくとも1個は、炭素数2〜15の−CO2−部分構造を含有する1価の炭化水素基を示し、残りはそれぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。炭素数2〜15の−CO2−部分構造を含有する1価の炭化水素基として、具体的には2−オキソオキソラン−3−イルオキシカルボニル、4,4−ジメチル−2−オキソオキソラン−3−イルオキシカルボニル、4−メチル−2−オキソオキサン−4−イルオキシカルボニル、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イルメチルオキシカルボニル、5−メチル−2−オキソオキソラン−5−イルオキシカルボニル等を例示できる。炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基としては、具体的にはR003で例示した基と同様の基が例示できる。
【0124】
010とR011、R011とR012又はR012とR013は、互いに結合してこれが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよく、その場合には、環を形成するR010〜R013の少なくとも1個は、炭素数1〜15の−CO2−部分構造を含有する2価の炭化水素基を示し、残りはそれぞれ独立に単結合又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基を示す。炭素数1〜15の−CO2−部分構造を含有する2価の炭化水素基として、具体的には1−オキソ−2−オキサプロパン−1,3−ジイル、1,3−ジオキソ−2−オキサプロパン−1,3−ジイル、1−オキソ−2−オキサブタン−1,4−ジイル、1,3−ジオキソ−2−オキサブタン−1,4−ジイル等のほか、上記−CO2−部分構造を含有する1価の炭化水素基で例示したものから水素原子を1個除いたもの等を例示できる。炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基として、具体的にはR003で例示した基から水素原子を1個除いたもの等を例示できる。
【0125】
014は、炭素数7〜15の多環式炭化水素基又は多環式炭化水素基を含有するアルキル基を示し、具体的にはノルボルニル、ビシクロ[3.3.1]ノニル、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル、アダマンチル、エチルアダマンチル、ブチルアダマンチル、ノルボルニルメチル、アダマンチルメチル等を例示できる。
【0126】
015は、酸不安定基を示す。Xは、−CH2又は酸素原子を示す。kは、0又は1である。
【0127】
015の酸不安定基としては、種々用いることができるが、具体的には前述の高分子化合物(A)に含まれる酸不安定基と同様の上記式(L1)〜(L4)で示される基、炭素数4〜20、好ましくは4〜15の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基等を挙げることができる。
【0128】
上記式(R2)中、R016、R018は、水素原子又はメチル基を示す。R017は、炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。
【0129】
上記式(R1)において、a1’、a2’、a3’、b1’、b2’、b3’、c1’、c2’、c3’、d1’、d2’、d3’、e’は0以上1未満の数であり、a1’+a2’+a3’+b1’+b2’+b3’+c1’+c2’+c3’+d1’+d2’+d3’+e’=1を満足する。上記式(R2)において、f’、g’、h’、i’、j’、k‘、l’、m‘は0以上1未満の数であり、f’+g’+h’+i’+j’+k‘+l’+m‘=1を満足する。x’、y’、z’は0〜3の整数であり、1≦x’+y’+z’≦5、1≦y’+z’≦3を満足する。
【0130】
更に、インデン類、ノルボルナジエン類、アセナフチレン類、ビニルエーテル類を共重合することもできる。
【0131】
上記式(R1)において、組成比a1’で導入される繰り返し単位として、具体的には高分子化合物(A)が含んでもよい単位として例示した水酸基、カルボキシル基、フルオロアルキル基、又はフルオロアルコール単位等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0132】
上記式(R1)において、組成比b1’で導入される繰り返し単位として、具体的には高分子化合物(A)が含んでもよい単位として例示したラクトン環の密着性基を有する繰り返し単位が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0133】
上記式(R1)において、組成比d1’で導入される繰り返し単位として、具体的には高分子化合物(A)が含む酸不安定単位と同様のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0134】
上記式(R1)において、組成比a3’、b3’、c3’、d3’の繰り返し単位で構成される高分子化合物として、具体的には以下のものが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【化53】

【0135】
【化54】

【0136】
本発明の高分子化合物と他の高分子化合物との配合比率は、100:0〜30:70、特に100:0〜50:50の質量比の範囲内にあることが好ましい。本発明の高分子化合物の配合比がこれより少ないと、レジスト材料として好ましい性能が得られないことがある。上記の配合比率を適宜変えることにより、レジスト材料の性能を調整することができる。
【0137】
なお、上記ベース樹脂を構成する高分子化合物は、1種に限らず2種以上を添加することができる。複数種の高分子化合物を用いることにより、レジスト材料の性能を調整することができる。
【0138】
本発明のレジスト材料には、高エネルギー線照射により酸を発生する繰り返し単位を有する高分子化合物(A)と酸発生能を有するスルホニウム塩(B)が含まれるが、その他に高エネルギー線照射により酸を発生する別の酸発生剤を含んでもよい。好適なその他の光酸発生剤としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、N−スルホニルオキシジカルボキシイミド、オキシム−O−アリ−ルスルホネート型酸発生剤等があり、特開2009−269953号公報に記載の(F−1)(下記の(F))で定義された化合物等を用いることができる。
【0139】
【化55】

【0140】
式中、R405、R406、R407は、それぞれ独立に水素原子、又はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の1価の炭化水素基を示す。特に、アルキル基又はアルコキシ基であることが好ましい。ヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基として、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、エチルシクロペンチル基、ブチルシクロペンチル基、エチルシクロヘキシル基、ブチルシクロヘキシル基、アダマンチル基、エチルアダマンチル基、ブチルアダマンチル基、これらの基の任意の炭素−炭素結合間に−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−NH−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−C(=O)NH−等のヘテロ原子団が挿入された基、任意の水素原子が−OH、−NH2、−CHO、−CO2H等の官能基で置換された基等を例示することができる。R408は、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数7〜30の直鎖状、分岐状又は環状の1価の炭化水素基を示す。
【0141】
なお、本化合物の安定性を損ねる可能性があるため、トリフェニルスルホニウム 4−トルエンスルホネートやトリフェニルスルホニウム 10−カンファースルホネート等のフッ素置換されていないアルカンスルホン酸やアリールスルホン酸を使用することは不適である。好ましくは、特開2009−269953号公報に記載の(F−1)で定義される化合物、イミドスルホネート、オキシムスルホネート等の非オニウム塩系光酸発生剤等である。
【0142】
本発明のレジスト材料において、スルホニウム塩(B)のほかに添加してもよい光酸発生剤の添加量はいずれでもよいが、レジスト材料中の高分子化合物(A)及び任意の他の樹脂成分を含めたベース樹脂総量100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.1〜10質量部である。スルホニウム塩(B)のほかに添加してもよい光酸発生剤が20質量部以下であれば、レジスト膜の透過率が十分大きく、解像性能の劣化が起こるおそれが少ない。上記光酸発生剤は、単独でも2種以上混合して用いることもできる。更に、露光波長における透過率が低い光酸発生剤を用い、その添加量でレジスト膜中の透過率を制御することもできる。
【0143】
また、本発明のレジスト材料には、酸により分解し酸を発生する化合物(酸増殖化合物)を添加してもよい。これらの化合物については特開2009−269953号公報を参照できる。
【0144】
本発明のレジスト材料における酸増殖化合物の添加量は、レジスト材料中のベース樹脂100質量部に対して、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。添加量が多すぎる場合は拡散の制御が難しく、解像性の劣化、パターン形状の劣化が起こることがある。
【0145】
また、本発明のレジスト材料には、有機酸誘導体や酸の作用によりアルカリ現像液への溶解性が変化する重量平均分子量3,000以下の化合物(溶解阻止剤)を添加してもよく、具体的には上記各成分と同様に特開2009−269953号公報に記載の化合物を参照できる。
【0146】
本発明のレジスト材料に使用される有機溶剤としては、ベース樹脂、酸発生剤、その他の添加剤等が溶解可能な有機溶剤であればいずれでもよい。このような有機溶剤としては、例えば、シクロヘキサノン、メチル−2−n−アミルケトン等のケトン類、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート等のエステル類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。本発明では、これらの有機溶剤の中でもレジスト成分中の酸発生剤の溶解性が最も優れているジエチレングリコールジメチルエーテルや1−エトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びそれらの混合溶剤が好ましく使用される。
【0147】
有機溶剤の使用量は、レジスト材料中のベース樹脂100質量部に対して200〜4,000質量部、特に400〜3,000質量部が好適である。
【0148】
本発明のレジスト材料中には、界面活性剤を添加することができる。上記界面活性剤としては、特開2009−269953号公報に記載の(E)成分を参照することができる。また、特開2008−122932号公報、特開2010−134012号公報、特開2010−107695号公報、特開2009−276363号公報、特開2009−192784号公報、特開2009−191151号公報、特開2009−98638号公報も参照でき、通常の界面活性剤並びにアルカリ可溶型界面活性剤を用いることができる。
【0149】
上記界面活性剤の添加量は、レジスト材料のベース樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001〜20質量部、より好ましくは0.01〜10質量部の範囲である。これらは特開2007−297590号公報に詳しい。
【0150】
本発明では、上述したレジスト材料を用いたパターン形成方法も提供する。
本発明のレジスト材料を使用してパターンを形成するには、公知のリソグラフィー技術を採用して行うことができ、例えば、集積回路製造用の基板(Si,SiO2,SiN,SiON,TiN,WSi,BPSG,SOG,有機反射防止膜等)、あるいはマスク回路製造用の基板(Cr,CrO,CrON,MoSi等)にスピンコーティング等の手法で膜厚が0.05〜2.0μmとなるように塗布し、これをホットプレート上で60〜150℃で1〜10分間、好ましくは80〜140℃で1〜5分間プリベークする。次いで、目的のパターンを形成するためのマスクを上記のレジスト膜上にかざし、遠紫外線、エキシマレーザー、X線等の高エネルギー線又は電子線を露光量1〜200mJ/cm2、好ましくは10〜100mJ/cm2となるように照射する。あるいは、パターン形成のためのマスクを介さずに電子線を直接描画する。露光は通常の露光法のほか、場合によってはマスクとレジストの間を液浸するImmersion法を用いることも可能である。その場合には水に不溶な保護膜を用いることも可能である。次いで、ホットプレート上で、60〜150℃で1〜5分間、好ましくは80〜140℃で1〜3分間ポストエクスポージャーベーク(PEB)する。更に、0.1〜5質量%、好ましくは2〜3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、0.1〜3分間、好ましくは0.5〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像することで、基板上に目的のパターンが形成される。なお、本発明のレジスト材料は、特に高エネルギー線の中でも180〜250nmの遠紫外線やエキシマレーザー、X線及び電子線による微細パターニングに最適である。また、上記範囲が上限又は下限から外れる場合は、目的のパターンを得ることができない場合がある。
【0151】
上述した水に不溶な保護膜は、レジスト膜からの溶出物を防ぎ、膜表面の滑水性を上げるために用いられ、大きく分けて2種類ある。1種類はレジスト膜を溶解しない有機溶剤によってアルカリ現像前に剥離が必要な有機溶剤剥離型と、もう1種類はアルカリ現像液に可溶でレジスト膜可溶部の除去と共に保護膜を除去するアルカリ可溶型である。
【0152】
後者は、特に水に不溶でアルカリ現像液に溶解する1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する高分子化合物をベースとし、炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、及びこれらの混合溶剤に溶解させた材料が好ましい。
【0153】
上述した水に不溶でアルカリ現像液に可溶な界面活性剤を炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、又はこれらの混合溶剤に溶解させた材料とすることもできる。
【実施例】
【0154】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの記載によって限定されるものではない。
【0155】
[合成例]
本発明のレジスト材料に含まれる高分子化合物(A)の合成例について以下に記載する。
【0156】
[合成例1]ポリマー1の合成
窒素雰囲気としたフラスコに、7.98gのトリフェニルスルホニウム 1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−メタクリロイルオキシプロパン−1−スルホネート(特開2008−133448号公報に記載)、13.34gのメタクリル酸4−エチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカニル、11.03gのメタクリル酸2−オキソテトラヒドロフラン−3−イル、7.66gのメタクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル、1.11gの2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、70.0gのMEK(メチルエチルケトン)をとり、単量体溶液を調製した。窒素雰囲気とした別のフラスコに、23.3gのMEKをとり、撹拌しながら80℃まで加熱した後、上記単量体溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、重合液の温度を80℃に保ったまま2時間撹拌を続け、次いで室温まで冷却した。得られた重合液を、激しく撹拌した400gのヘキサンに滴下し、析出した共重合体を濾別した。共重合体をMEK45.4gとヘキサン194.6gとの混合溶剤で2回洗浄した後、50℃で20時間真空乾燥して38.7gの白色粉末状の共重合体を得た。共重合体を13C−NMRで分析したところ、共重合組成比は上記の単量体順で10/30/40/20モル%であった。また、分子量及び分散度はゲルパーミエーションクロマトグラフにより確認した。
【0157】
【化56】

ポリマー1(Polymer−1)
a/b/c/d=10/30/40/20
分子量(Mw)=7,900
分散度(Mw/Mn)=1.70
【0158】
次に、本発明のレジスト材料に含まれるスルホニウム塩(B)の合成例について以下に記載する。
【0159】
[合成例2]4−ヒドロキシナフチル−1−テトラヒドロチオフェニウム 2−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホネート(PAG−B1)の合成
1−ナフトール10g(0.069モル)、テトラメチレンスルホキシド7.2g(0.069モル)をメタノール50gに溶解させ、−16℃に冷却した。20℃を超えない温度で塩化水素の過剰量をフィードした。窒素をバブリングして過剰量の塩化水素ガスを追い出した後に反応液を濃縮し、水及びジイソプロピルエーテルを加えて水層を分取し、4−ヒドロキシナフチル−1−テトラヒドロチオフェニウムクロリド水溶液を得た。次に、特開2007−145797号公報に記載の処方に準じて合成した1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)プロパンスルホン酸ナトリウム水溶液(0.021モル相当)と上記4−ヒドロキシナフチル−1−テトラヒドロチオフェニウムクロリド水溶液(0.023モル相当)を混合し、ジクロロメタン100gとメチルイソブチルケトン50gを用いて抽出を行った。有機層を水洗し、溶剤を減圧留去した後にイソプロピルエーテルを加えて結晶化させ濾過、乾燥して目的物を得た(白色結晶6.2g、収率43%)。
【0160】
[合成例3]4−(2−メトキシエトキシ)ナフタレン−1−テトラヒドロチオフェニウム 2−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホネート(PAG−B2)の合成
1−ナフトール50.0g(0.0347モル)、2−メトキシエチルクロリド34.4g(0.0364モル)、水酸化ナトリウム14.6g(0.0364モル)、ヨウ化ナトリウム2.6g(0.017モル)をエタノール100gに溶解させ、80℃で8時間加熱撹拌を行った。冷却後に水100gとトルエン200gを加えて有機層を分取し、5質量%水酸化ナトリウム水溶液100gで5回洗浄した。次いで、水100gで4回洗浄した後に有機層を濃縮し、油状物45gを得た。これを減圧蒸留し(110℃/13Pa)、1−(2−メトキシエトキシ)−ナフタレンを41g得た(収率58%)。次に、1−(2−メトキシエトキシ)−ナフタレン5.0g(0.024モル)をアルドリッチ社製Eaton’s試薬(五酸化二リン−メタンスルホン酸溶液)10gに分散させ、テトラメチレンスルホキシド5.1g(0.049モル)を滴下混合した。室温で一晩熟成を行い、水30gとジイソプロピルエーテル30gを加えて水層を分取した。水層を再度ジイソプロピルエーテル30gで洗浄し、この水溶液に特開2007−145797号公報に記載の処方に準じて合成した1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)プロパンスルホン酸ナトリウム水溶液(0.007モル相当)、ジクロロメタン50gを用いて2回抽出を行った。有機層を水洗し、溶剤を減圧留去した後にイソプロピルエーテルを加えて結晶化させ、濾過、乾燥して目的物を得た(白色結晶7.9g、収率94%)。
【0161】
(高分子化合物の組成及び分子量/分散度)
本評価に用いた高分子化合物を構成する繰り返し単位の組成比(モル%)と分子量及び分散度を表1に示す。また、各繰り返し単位の構造を表2〜5に示す。表2中、モノマー1〜7は本発明の高分子化合物(A)において必須の高エネルギー線に感応して酸を発生する繰り返し単位であり、表3中、ALU−1〜11は高分子化合物(A)において必須の酸不安定単位である。従ってPolymer−1〜34が本発明の高分子化合物(A)に該当する。Polymer−35〜36は比較例のポリマーである。
【0162】
【表1】

【0163】
【表2】

【0164】
【表3】

【0165】
【表4】

【0166】
【表5】

【0167】
[実施例1−1〜52、比較例1−1〜11]
(レジスト材料の調製)
次に、上記高分子化合物のほかに、各種光酸発生剤、各種クエンチャーを溶剤に溶解し、溶解後にテフロン(登録商標)製フィルター(孔径0.2μm)を用い濾過し、下記表6,7に示す本発明のレジスト材料(PR−1〜52)(実施例1−1〜52)を調製した。また、比較試料として下記表8に示すレジスト材料(PR−53〜63)(比較例1−1〜11)を調製した。表6〜8中の光酸発生剤の構造を表9,10に、クエンチャーとして用いた含窒素有機化合物の構造を表11に示す。表9中の光酸発生剤のうちPAG−B1〜B10は本発明のレジスト材料の必須成分のスルホニウム塩(B)に相当する。また、表11中のクエンチャーのうちQ−C1〜C4は本発明のレジスト材料が含むことが好ましい含窒素有機化合物(C)に相当する。
【0168】
【表6】

【0169】
【表7】

【0170】
【表8】

【0171】
【表9】

【0172】
【表10】

【0173】
【表11】

【0174】
また、表6〜8中に示した溶剤は以下の通りである。
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
GBL:γ−ブチロラクトン
【0175】
また、アルカリ可溶型界面活性剤SF−1(5.0質量部)と界面活性剤A(0.1質量部)を表6〜8に示したいずれのレジスト材料にも添加した。アルカリ可溶型界面活性剤SF−1及び界面活性剤Aの構造を以下に示す。
アルカリ可溶型界面活性剤SF−1(特開2008−122932号公報記載の化合物)
:ポリ(メタクリル酸3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−1,1−ジメチル−2−トリフルオロメチルプロピル・メタクリル酸1,1,1−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−6−メチル−2−トリフルオロメチルヘプタ−4−イル)(下記式)
【化57】

界面活性剤A:3−メチル−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシメチル)オキセタン・テトラヒドロフラン・2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール共重合物(オムノバ社製)(下記式)
【化58】

【0176】
[実施例2−1〜52、比較例2−1〜11]
(評価方法)
シリコン基板上に反射防止膜溶液(日産化学工業(株)製、ARC−29A)を塗布し、200℃で60秒間ベークして作製した反射防止膜(100nm膜厚)基板上にレジスト溶液をスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、90nm膜厚のレジスト膜を作製した。これをArFエキシマレーザースキャナー((株)ニコン製、NSR−S610C、NA=1.30、4重極、6%ハーフトーン位相シフトマスク)を用いて液浸露光し、任意の温度で60秒間ベーク(PEB)を施し、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で60秒間現像を行った。
【0177】
レジストの評価は、60nmトレンチ(スペース)/160nmピッチのパターンを対象とし、電子顕微鏡にて観察、トレンチ寸法幅が60nmとなる露光量を最適露光量(Eop、mJ/cm2)とした。最適露光量におけるパターン形状を比較し、以下の基準により良否を判別した。
良好:パターン側壁の垂直性が高い。好ましい形状。
表層難溶:トレンチパターン表層部が閉塞気味。好ましくない形状。
テーパー:基板に近い部分でトレンチ寸法幅が縮小する傾向が強い。好ましくない形
状。
【0178】
また、最適露光量におけるトレンチエッジ部のラフネスについて、寸法幅のバラツキ(30点測定、3σ値を算出)を求めることで数値化し、比較した(ラフネス、nm)。
【0179】
更に、最適露光量におけるトレンチ寸法のフォーカス依存性を調べ、解像しているフォーカス範囲を求め焦点深度(DOF、nm)とした。
【0180】
レジスト溶液の保存安定性評価は、レジスト調製後30℃で1ヶ月経過後のEop値と初期Eop値とを比較することにより調べた。
また、下記式より感度変動値を求めた。
【数1】

負の値はレジストが高感度化したことを示す。絶対値が小さいほどレジスト中の組成物に経時変化が起こらず、保存安定性が高いことを示す。
【0181】
(評価結果)
上記表6,7に示した本発明のレジスト材料のPEB温度及び評価結果を下記表12,13に示す。また、上記表8に示した比較レジスト材料のPEB温度及び評価結果を下記表14に示す。
【0182】
【表12】

【0183】
【表13】

【0184】
【表14】

【0185】
上記表12〜14に示した結果より、特定の高分子化合物(A)と特定のスルホニウム塩(B)を共に含む本発明のレジスト材料が、トレンチパターンの形状、ラフネス、DOFにおいて良好な性能を示すことが確認できた。また、表12〜14に示した結果より、高分子化合物(A)とスルホニウム塩(B)を併用することなく片方のみ使用した場合においては、性能の向上がみられないことが明らかであった。
【0186】
また、表12中の実施例2−2〜5と表13中の実施例2−49〜52を比較することにより、本発明が提案する通り、上記高分子化合物(A)及び上記スルホニウム塩に加え、更に特定の含窒素有機化合物(C)を配合することにより、トレンチパターンのラフネスやDOF、または保存安定性において、より好ましい結果が得られることが確認できる。
【0187】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
例えば、上記では本発明のレジスト材料を液浸リソグラフィーで用いる場合を中心に述べたが、液浸でない通常のリソグラフィーにおいても本発明のレジスト材料を当然用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線、遠紫外線、電子線、X線、エキシマレーザー、γ線及びシンクロトロン放射線から選ばれる高エネルギー線に感応して酸を発生する下記一般式(1−1)又は(1−2)のいずれかで示される構造の繰り返し単位と酸不安定単位とを有し、酸によってアルカリ溶解性が向上する高分子化合物(A)、及び下記一般式(2−1)又は(2−2)のいずれかで示されるスルホニウム塩(B)を共に含むことを特徴とするポジ型レジスト材料。
【化1】

(式中、R1は水素原子又はメチル基を示す。R2は水素原子又はトリフルオロメチル基を示す。上記式(1−1)中、R3、R4及びR5は、それぞれ独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、アルケニル基又はオキソアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示す。R3、R4及びR5のうちのいずれか2つは、相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。上記式(1−2)中、R6及びR7は、それぞれ独立に置換又は非置換の炭素数6〜18のアリール基を示す。)
【化2】

(式中、R8は、水素原子又はトリフルオロメチル基を示す。R9は、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数4〜30の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示す。上記式(2−2)中、nは1〜4の整数を示す。)
【請求項2】
上記高分子化合物(A)が更にラクトン環を含む構造の繰り返し単位を含有することを特徴とする請求項1に記載のポジ型レジスト材料。
【請求項3】
上記高分子化合物(A)及びスルホニウム塩(B)のほか、更に下記一般式(3)で示される含窒素有機化合物(C)を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のポジ型レジスト材料。
【化3】

(式中、R10は、水素原子、炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜15のアリール基を示す。R11とR12は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜15のアリール基を示す。R11とR12は、互いに結合して炭素数6〜14の芳香環を形成してもよい。R13は、炭素数6〜15のアリール基を示す。)
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポジ型レジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後、高エネルギー線で露光する工程と、現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項5】
上記高エネルギー線を波長180〜250nmの範囲のものとすることを特徴とする請求項4に記載のパターン形成方法。
【請求項6】
上記高エネルギー線で露光する工程を、液体を介して露光する液浸露光により行うことを特徴とする請求項4又は5に記載のパターン形成方法。
【請求項7】
上記液浸露光において、レジスト膜と液体の間に保護膜を形成して投影レンズの間に液体を挿入し、該液体を介して上記基板を露光することを特徴とする請求項6に記載のパターン形成方法。
【請求項8】
上記液浸露光において、180〜250nmの範囲の波長の露光光を用い、上記レジスト材料及び保護膜を塗布した基板と投影レンズとの間に液体を挿入し、該液体を介して上記基板を露光することを特徴とする請求項7に記載のパターン形成方法。
【請求項9】
上記液体として水を用いることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載のパターン形成方法。

【公開番号】特開2012−113143(P2012−113143A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262389(P2010−262389)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】