説明

ポジ型感光性樹脂組成物、パターン硬化膜の製造方法及び電子部品

【課題】露光時間を短縮できる高感度なポジ型感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(a)下記式(I)で表される構造を有する重合体、


(b)ナフトキノンジアジド化合物、
(c)溶剤、及び
(d)ヨードニウム化合物
を含み、下記条件i)及び条件ii)から選択されるいずれかの条件:
i)前記(d)ヨードニウム化合物が、2つ以上の単環式の芳香環が縮合した形の多環式の芳香環の骨格を有するを有すること、
ii)前記(d)ヨードニウム化合物と共に(e)2つ以上の単環式の芳香環が縮合した形の多環式の芳香環の骨格を有する光励起促進剤を含むこと
を満足することを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジ型感光性樹脂組成物、パターン硬化膜の製造方法及び電子部品に関する。さらに詳しくは、例えば半導体素子の表面保護膜及び/又は層間絶縁膜を成膜可能なポジ型感光性樹脂組成物、及び当該組成物を用いた耐熱性パターン硬化膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子の層間絶縁膜及び表面保護膜には、優れた耐熱性、電気特性及び機械特性を併せ持つポリイミド樹脂や、ポリベンゾオキサゾール樹脂が用いられていた。
近年、半導体素子のさらなる高集積化及び大型化が進む中、封止樹脂パッケージの薄型化、小型化が要求されている。また、LOC(リード・オン・チップ)や半田リフローによる表面実装等の方法がとられてきており、これまで以上に機械特性、耐熱性等に優れたポリイミド樹脂が必要とされるようになってきた。
【0003】
これらの要求に対し、ポリイミド樹脂自身に感光性を付与した感光性ポリイミドが用いられてきている。当該感光性ポリイミドを用いることにより、パターン作製工程を簡略化でき、煩雑な製造工程を短縮することができる。従来の感光性ポリイミド又はその前駆体を用いてなる耐熱性フォトレジストや、その用途についてはよく知られている。
【0004】
これらの技術の発展として、最近では、アルカリ水溶液で現像できるポジ型感光性樹脂組成物の提案がなされている。ポジ型感光性ポリイミドでは、ポリイミド前駆体にエステル結合を介して2-ニトロベンジル基を導入する方法(例えば非特許文献1)、可溶性ジヒドロキシルイミド又はポリベンゾオキサゾール前駆体にナフトキノンジアジド化合物を混合する方法(例えば特許文献1及び2)、ポリイミド前駆体にナフトキノンジアジドを混合する方法(例えば特許文献3)等が挙げられる。
【0005】
近年のさらなる集積化及びウェハサイズの大型化により、より生産性の高い材料が望まれている。生産性を向上させるためには、例えば露光時間を短縮できる高感度な感光性材料が望まれるが、ナフトキノンジアジドを混合した感光性樹脂組成物では、ナフトキノンジアジドの光分解性の限界から、自ずと高感度化に限界があった。また、化学増幅型感光性樹脂化合物の場合、一般に延伸性等の膜特性が低下する傾向があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭64−60630号公報
【特許文献2】米国特許4395482号明細書
【特許文献3】特開昭52−13315号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J.Macromol.Sci.Chem.,A24,12,1407,1987.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、露光時間を短縮できる高感度なポジ型感光性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、以下のポジ型感光性樹脂組成物等が提供される。
1.(a)下記式(I)で表される構造を有する重合体、
【化1】

(式中、Xは2〜8価の有機基である。Yは2〜8価の有機基である。Rはそれぞれ水素原子又は炭素数1〜20の有機基である。Rはそれぞれ水素又は1価の有機基である。p及びqはそれぞれ0〜4の整数である。l及びmはそれぞれ0〜2の整数である。l+m+p+qは1以上である。nは重合体中の構造単位の数を示す2以上の整数である。)
(b)ナフトキノンジアジド化合物、
(c)溶剤、及び
(d)ヨードニウム化合物
を含み、下記条件i)及び条件ii)から選択されるいずれかの条件:
i)前記(d)ヨードニウム化合物が、2つ以上の単環式の芳香環が縮合した形の多環式の芳香環の骨格を有するを有すること、
ii)前記(d)ヨードニウム化合物と共に(e)2つ以上の単環式の芳香環が縮合した形の多環式の芳香環の骨格を有する光励起促進剤を含むこと
を満足することを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物。
2.前記(b)ナフトキノンジアジド化合物が、o−ナフトキノンジアジド化合物である1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
3.前記(d)ヨードニウム化合物が、下記式(II)で表されるヨードニウム塩である1又は2に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化2】

(式中、Xは、対陰イオンである。Rは、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、トリアルキルシリル基、前記各基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子に置換された基、塩素原子、臭素原子又はフッ素原子である。Zは1価の有機基である。aは、0〜5の整数である。)
4.前記式(II)のZが、下記式(III)で表される置換基のいずれかである3に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化3】

(Rは、前記式(II)と同様の定義である。R〜Rは、それぞれ、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、トリフロロメタンスルホニル基又はトリアルキルシリル基である。aは、0〜5の整数である。)
5.前記条件i)を満足するものである1〜4のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
6.前記条件ii)を満足するものである1〜5のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
7.(d)成分又は(e)成分における多環式の芳香環の骨格が、ナフタレン骨格又はアントラセン骨格である1〜6のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
8.前記(e)光励起促進剤が下記式(IV)で表されるアントラセン化合物である1〜7のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化4】

(R〜R10は、それぞれアルキル基、アルコキシ基又はアルケニル基である。)
9.(a)式(I)で表される構造を有する重合体100重量部に対し、(b)ナフトキノンジアジド化合物を0.01〜50重量部、及び(d)ヨードニウム化合物を1〜50重量部それぞれ含有する1〜8のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
10.(a)式(I)で表される構造を有する重合体100重量部に対し、(b)ナフトキノンジアジド化合物を0.01〜50重量部、(d)ヨードニウム化合物を1〜50重量部、及び(e)光励起促進剤を0.01〜50重量部それぞれ含有する1〜8のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
11.1〜10のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物を支持基板上に塗布し乾燥して感光性樹脂膜を形成する感光性樹脂膜形成工程と、
前記感光性樹脂膜を所定のパターンに露光する露光工程と、
前記露光後の感光性樹脂膜をアルカリ水溶液を用いて現像してパターン樹脂膜を得る現像工程と、
前記パターン樹脂膜を加熱処理してパターン硬化膜を得る加熱処理工程を含むパターン硬化膜の製造方法。
12.11に記載のパターン硬化膜の製造方法により得られるパターン硬化膜を、層間絶縁膜層又は表面保護膜層として有する電子部品。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、露光時間を短縮できる高感度なポジ型感光性樹脂組成物が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図であって、第1の工程を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図であって、第2の工程を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図であって、第3の工程を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図であって、第4の工程を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図であって、第5の工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、下記(a)成分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分を含む組成物である。
(a)下記式(I)で表される構造を有する重合体、
【化5】

(式中、Xは2〜8価の有機基である。Yは2〜8価の有機基である。Rはそれぞれ水素原子又は炭素数1〜20の有機基である。Rはそれぞれ水素又は1価の有機基である。p及びqはそれぞれ0〜4の整数である。l及びmはそれぞれ0〜2の整数である。l+m+p+qは1以上である。nは重合体中の構造単位の数を示す2以上の整数である。)
(b)ナフトキノンジアジド化合物、
(c)溶剤、及び
(d)ヨードニウム化合物。
加えて、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、下記条件i)及び条件ii)から選択される、いずれかの条件を満足するものである。
i)前記(d)ヨードニウム化合物が、2つ以上の単環式の芳香環が縮合した形の多環式の芳香環の骨格を有するを有すること、
ii)前記(d)ヨードニウム化合物と共に(e)2つ以上の単環式の芳香環が縮合した形の多環式の芳香環の骨格を有する光励起促進剤を含むこと。
【0013】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、高い感度を有する。従って、例えば半導体製造工程における露光時間を短縮することができ、半導体装置の生産性を向上させることができる。
【0014】
本発明の組成物が含む(a)成分は、式(I)で表される構造を有する重合体であり、一般に耐熱性を有するものである。
【0015】
本発明における(a)成分は、式(I)の構造単位に示されるように2つのアミド結合が1構造単位に含まれる。これは一般に、カルボン酸(ジ-、トリ-、テトラ-等)、その無水物又はその誘導体とジアミンとの反応によって形成される。
従って、式(I)中のXの2〜8価の有機基は、前記カルボン酸の構造において、アミンとの反応によりアミド結合を形成したカルボキシル基と、その他の酸官能基(即ち、カルボキシル基若しくはそれがエステル化した基と、フェノール性水酸基又はその水素原子が置換基で置換された基)を除く部分の構造を示す有機基である。例えばテトラカルボン酸二無水物若しくはジカルボン酸のカルボキシル基及び酸官能基以外の構造に対応する有機基である。Xは一般に芳香環を含むことが好ましく、カルボキシル基及びその他の酸官能基は芳香環に直接結合していることが好ましい。
【0016】
上記テトラカルボン酸二無水物としては、例えばピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物等が挙げられ、これらは単独又は2種以上を組み合わせて使用される。また、必ずしもここに挙げられたものに限定されない。
【0017】
上述のテトラカルボン酸二無水物のうち、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、N−(トリメリット酸二無水物)−2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンが、耐熱性の高い良好な膜物性を得る上で好ましい。
【0018】
上記ジカルボン酸としては、例えば3−フルオロイソフタル酸、2−フルオロイソフタル酸、3−フルオロフタル酸、2−フルオロフタル酸、2,4,5,6−テトラフルオロイソフタル酸、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸、4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフェニル−1,1’−ジカルボン酸、パーフルオロスベリン酸、2,2‘−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ビフェニレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、4,4‘−オキシジフェニル−1,1’−ジカルボン酸等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。また、必ずしもここに挙げられたものに限定されない。
【0019】
上述のジカルボン酸のうち、テレフタル酸、イソフタル酸、4,4‘−オキシジフェニル−1,1’−ジカルボン酸が耐熱性の高い良好な膜物性を得る上で好ましい。
【0020】
また、アルカリ溶解性を調整するために、上記ジカルボン酸はアルカリ溶解性を示す酸官能基を有してもよい。
酸官能基を有するジカルボン酸としては、例えばN−(トリメリット酸二無水物)−2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、N−(トリメリット酸二無水物)−2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、N−(トリメリット酸二無水物)−4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、N−(トリメリット酸二無水物)−2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、N−(トリメリット酸二無水物)−2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、N−(トリメリット酸二無水物)−2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、N−(トリメリット酸二無水物)−2,4−ジアミノフェノール、N−(トリメリット酸二無水物)−2,5−ジアミノフェノール、N−(トリメリット酸二無水物)−1,4−ジアミノ−2,5−ジヒドロキシベンゼン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。また、必ずしもここに挙げられたものに限定されない。
【0021】
上述の酸官能基を有するジカルボン酸のうち、N−(トリメリット酸二無水物)−2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、N−(トリメリット酸二無水物)−2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、N−(トリメリット酸二無水物)−4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、N−(トリメリット酸二無水物)−2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、N−(トリメリット酸二無水物)−2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、N−(トリメリット酸二無水物)−2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンが耐熱性の高い良好な膜物性を得る上で好ましい。
さらにトリメリット酸又はその無水物のようなトリカルボン酸を用いることもできる。
【0022】
式(I)中のYの2〜8価の有機基は、例えばジアミン及び/又は酸官能基を有するジアミンの、2つのアミノ基及び酸官能基を除く部分の構造に対応する有機基である。
【0023】
上記ジアミンとしては、例えば4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、ビス(4−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’,3,3’−テトラメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’,3,3’−テトラエチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジ(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。また、必ずしもここに挙げられたものに限定されない。
【0024】
上述のジアミンのうち、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニルが耐熱性の高い良好な膜物性を得る上で好ましい。
【0025】
また、アルカリ溶解性を調整するために、上記ジアミンはアルカリ溶解性を示す酸官能基を有してもよい。
酸官能基を有するジアミンとしては、例えば2,4−ジアミノ安息香酸、3,5−ジアミノ安息香酸、3,3’−ジアミノビフェニル−5,5’−ジカルボン酸、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル−5,5’−ジカルボン酸、4,4’−ジアミノジフェニルメタン−5,5’−ジカルボン酸、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン−5,5’−ジカルボン酸、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド−5,5’−ジカルボン酸又はそれらの異性体のようにカルボキシル基を1つ以上持つか、あるいは4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、オキシビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4−ジアミノフェノール、1,4−ジアミノ−2,5−ジヒドロキシベンゼン、N,N’−(4−アミノフェニルカルボニル)−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、N,N’−(3−アミノフェニルカルボニル)−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、N,N’−(4−アミノフェニルカルボニル)2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、N,N’−(3−アミノフェニルカルボニル)2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、N,N’−(4−アミノフェニルカルボニル)2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、N,N’−(3−アミノフェニルカルボニル)2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、N,N’−(4−アミノフェニルカルボニル)−オキシビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)、N,N’−(3−アミノフェニルカルボニル)−オキシビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)、N,N’−(4−アミノフェニルカルボニル)−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、N,N’−(3−アミノフェニルカルボニル)−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、N,N’−(4−アミノフェニルカルボニル)−2,4−ジアミノフェノール、N,N’−(3−アミノフェニルカルボニル)−2,4−ジアミノフェノール、N,N’−(4−アミノフェニルカルボニル)−1,4−ジアミノ−2,5−ジヒドロキシベンゼン、N,N’−(3−アミノフェニルカルボニル)−1,4−ジアミノ−2,5−ジヒドロキシベンゼンのようなフェノール基を有するもの等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。また、必ずしもここに挙げられたものに限定されない。
【0026】
上述の酸官能基を有するジアミンのうち、3,5−ジアミノ安息香酸、並びに、フェノール基を有する、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、オキシビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4−ジアミノフェノール、1,4−ジアミノ−2,5−ジヒドロキシベンゼン、N,N’−(4−アミノフェニルカルボニル)−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、N,N’−(3−アミノフェニルカルボニル)−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、N,N’−(4−アミノフェニルカルボニル)2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、N,N’−(3−アミノフェニルカルボニル)2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、N,N’−(4−アミノフェニルカルボニル)2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、N,N’−(3−アミノフェニルカルボニル)2,2´−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、N,N’−(4−アミノフェニルカルボニル)−オキシビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)、N,N’−(3−アミノフェニルカルボニル)−オキシビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)、N,N’−(4−アミノフェニルカルボニル)−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン及びN,N’−(3−アミノフェニルカルボニル)−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホンが良好なアルカリ現像特性を得る上で好ましい。
【0027】
また、成分(a)は、Rに水素原子以外の一価の有機基として、官能基を導入することで、現像時の溶解性の制御、及び/又は光反応を利用したパターン加工も可能となる。また、これら官能基を部分的に有して、Rとして水素原子を残すことで、アルカリ可溶性を制御することもできる。
式(I)中のRに1価の有機基として官能基を導入する方法としては、エーテル結合もしくはエステル結合を介して導入する方法が挙げられる。具体的な導入の方法としては、Rを置換基とするハロゲン化合物もしくは酸ハライド化合物を、Rが水素原子の基と反応させる、脱酸ハロゲン反応を利用した付加反応、もしくはビニルエーテルとの付加反応等が挙げられる。
【0028】
の炭素数1〜20の有機基としては、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、シクロプロぺニル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキセニル、ノルボルニル、ノルボルネニル、アダマンチル、ベンジル、p−ニトロベンジル、トリフルオロメチル、メトキシエチル、エトキシエチル、メトキシメチル、エトキシメチル、メトキシエトキシメチル、ベンゾキシメチル、テトラヒドロピラニル,エトキシテトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、2−トリメチルシリルエトキシメチル、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、3−オキソシクロヘキシル、9−フルオレニルメチル、メチルチオメチル等の有機基が挙げられる。
【0029】
また、Rの炭素数1〜20の有機基として、アリルアルコール、2−メチル−2−プロペン−1−オル、クロチルアルコール、3−ブテン−1−オル、3−ブテン−2−オル、3−メチル−2−ブテン−1−オル、2−メチル−3−ブテン−1−オル、3−メチル−3−ブテン−1−オル、2−メチル−3−ブテン−2−オル、2−ペンテン−1−オル、4−ペンテン−1−オル、3−ペンテン−2−オル、4−ペンテン−2−オル、1−ペンテン−3−オル、4−メチル−3−ペンテン−1−オル、3−メチル−1−ペンテン−3−オル、2−へキセン−1−オル、3−ヘキセン−1−オル、4−ヘキセン−1−オル、5−ヘキセン−1−オル、1−ヘキセン−3−オル、1−ヘプタン−3−オル、6−メチル−5−ヘプタン−2−オル、1−オクタン−3−オル、シトロネロール、3−ノネン−1−オル、5−デカン−1−オル、9−デカン−1−オル、7−デカン−1−オル、1,4−ペンタジエン−3−オル、2,4−ヘキサジエン−1−オル、1,5−ヘキサジエン−3−オル、1,6−ヘプタジエン−4−オル、2,4−ジメチル−2,6−ヘプタジエン−1−オル、ネロール、ゲラニオール、リナロール、2−シクロヘキセン−1−オル、3−シクロヘキセン−1−メタノール、イソプレゴール、5−ノルボルネン−2−オル、5−ノルボルネン−2−メタノール、エチレングリコールビニルエーテル、1,4−ブタンジオールビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、カプロラクトン2−(メタクリロイロキシ)エチルエステル、ジカプロラクトン2−(メタクリロイロキシ)エチルエステル、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルメタクリレート等の化合物をX又はYに結合するカルボキシル基と反応させて得られる官能基等が挙げられる。また、必ずしもここに挙げられたものに限定されない。また、重合体の末端が酸性官能基を有する場合には、これら官能基を導入することも可能である。
【0030】
上述の炭素数1〜20の有機基のうち、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、メトキシエチル、エトキシエチル、メトキシメチル、エトキシメチル、メトキシエトキシメチル、テトラヒドロピラニル、エトキシテトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニルが溶解性を良好に制御する上で好ましい。
【0031】
式(I)中にRが、Rと同様の官能基であることで、本発明の組成物は、現像時溶解性の制御及び/又は光反応を利用したパターン加工が可能となる。また、これら官能基を部分的に有することで、アルカリ可溶性を制御することもできる。また、(a)成分の重合体の末端が酸性官能基を有する場合には、これら官能基を導入することも可能である。
【0032】
(a)成分は、その両末端部がアミン官能基及び/又はその誘導置換基、酸性官能基及び/又はその誘導置換基、又は片末端に双方の官能基を1つずつ有するもの、これらの組合せのいずれかである。
【0033】
末端部のアミン官能基が一級アミンである場合には、副反応により感光性樹脂組成物の安定性が劣化するため、アミン官能基上の2つ水素原子のうち少なくとも1つは他原子もしくは他官能基で置換されている方が、感光性樹脂組成物としての安定性を得る上で好ましい。また、上記他原子もしくは他官能基の置換割合は、30%〜100%の範囲である方が十分な安定性を得る上でより好ましい。
【0034】
(a)成分の末端部のアミン官能基の誘導置換基について、アミン官能基から誘導される窒素上置換基としては、アミド、イミド、カーバメイト、スルホニル、スルフェニル、ホスフィニル、アルキルシリル等がある。このうちアミド、イミド、カーバメイト、スルホニルがより優れた硬化樹脂性質を得る点で好ましい。
【0035】
好ましくは、水素原子か、又は、上記アミン官能基から誘導される窒素上置換基としての下記式(V)で表される置換基のいずれかである。
【化6】

(式中、R11〜R13は、それぞれ1価の有機基であり、好ましくは炭素数1〜20の有機基である。R14は2価の有機基である。Xは酸素原子、硫黄原子又は窒素原子であり、Xが酸素原子又は硫黄原子である場合、n=1であり、Xが窒素原子の場合、n=2である。)
【0036】
11〜R13の1価の有機基としては、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、シクロプロぺニル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキセニル、ノルボルニル、ノルボルネニル、アダマンチル、ベンジル、p−ニトロベンジル、トリフルオロメチル、メトキシエチル、エトキシエチル、メトキシメチル、エトキシメチル、メトキシエトキシメチル、ベンゾキシメチル、エトキシテトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、2−トリメチルシリルエトキシメチル,トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、3−オキソシクロヘキシル、9−フルオレニルメチル、フェニル、トルイル、キシリル、9,10−ジヒドロアンスラニル、トリメチルフェニル、ペンタメチルフェニル、ビフェニル、ターフェニル、クォーターフェニル、ジメチルビフェニル、ナフタレニル、メチルナフタレニル、フルオレニル、フルオロフェニル、フルオロビフェニル、イソプロピリデンビフェニル、テトラフルオロイソプロピリデンビフェニル、ベンジルフェニルエーテル、フェニルエーテル、フェノキシトルエイル、メトキシビフェニル、ジメトキシビフェニル、メトキシナフタレニル、ジメトキシナフタレニル及びニトロフェニルが挙げられる。
【0037】
14の2価の有機基としては、例えばメタン、エタン、プロパン、イソプロパン、ジメチルメタン、ブタン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ノルボルナン、アダマンタン、イソプロピリデンジシクロヘキサン、メトキシメタン、メトキシエタン、エトキシエタン、メトキシエトキシメタン、ベンゾキシメタン、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、クメン、ジフェニルメタン、キシレン、9,10−ジヒドロアンスラセン、メシチレン、ヘキサメチルベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、トリフェニルベンゼン、クォーターフェニル、ジメチルビフェニル、アズレン、ナフタレン、メチルナフタレン、アンスラセン、フルオレン、フルオロベンゼン、フルオロビフェニル、イソプロピリデンビフェニル、テトラフルオロイソプロピリデンビフェニル、アニソール、ベンジルフェニルエーテル、フェニルエーテル、フェノキシトルエン、トリルエーテル、メトキシビフェニル、ジメトキシビフェニル、メトキシナフタレン、ジメトキシナフタレン、ニトロベンゼン等に対応する2価の有機基が挙げられる。また、必ずしもここに挙げられたものに限定されない。
【0038】
(a)成分の末端部における酸性官能基及び/又はその誘導置換基としては、式(I)の−COOR又は−ORで表される置換基が挙げられる。
【0039】
(a)成分は、好ましくはアルカリ水溶液に可溶な重合体である。
上記アルカリ水溶液は、例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液、金属水酸化物水溶液、有機アミン水溶液等のアルカリ性の水溶液である。一般に濃度が2.38重量部のテトラブチルアンモニウム水溶液が用いられるので、(a)成分はこの水溶液に対して可溶性であることがより好ましい。
【0040】
(a)成分の分子量は、特に制限されないが、ポリスチレン標準の重量平均分子量で、好ましくは5,000〜80,000である。
尚、当該分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー法により測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて算出することができる。
【0041】
(a)成分は、例えば、テトラカルボン酸二無水物、ジカルボン酸、これらがさらに酸官能基を有する化合物又はこれらの誘導体と、ジアミン又はこれがさらに酸官能基を有する化合物を、重合体の主たる原料として得られる、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体、これらの共重合体及びこれらの混合物が好ましいものとして挙げられる。
【0042】
テトラカルボン酸二無水物、ジカルボン酸及び/又は酸官能基を有するジカルボン酸と、ジアミン及び/又は酸官能基を有するジアミンとを重合させることにより(a)成分を調製することができる。
例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミン及び/又は酸官能基を有するジアミンを重合させることで(a)成分であるポリイミド前駆体を調製できる。同様に、活性化エステル化されたジカルボン酸及び/又は酸官能基を有するジカルボン酸とフェノール酸官能基を有するジアミンを重合させることで(a)成分であるポリベンゾオキサゾール前駆体を調製できる。また、テトラカルボン酸二無水物、ジカルボン酸及び/又は活性エステル化された酸官能基を有するジカルボン酸と、ジアミン及び/又は酸官能基を有するジアミンを共重合させることで(a)成分であるポリイミド/ポリベンゾオキサゾール前駆体の共重合体を調製することができる。
【0043】
本発明の組成物が含む(b)成分であるナフトキノンジアジド化合物は感光剤であり、活性光照射により酸を発生させる機能を有する。(b)成分を含むことにより、本発明の組成物から得られる樹脂膜の光の照射部のアルカリ水溶液への可溶性を増大させることができる。ナフトキノンジアジド化合物は、好ましくはo−ナフトキノンジアジド化合物である。
【0044】
上記ナフトキノンジアジド化合物は、ナフトキノンジアジドスルフェニルクロリドとポリヒドロキシ化合物を常法に従って縮合反応させることにより得られ、例えばポリヒドロキシ化合物と1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホニルクロリド、又は1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニルクロリドをトリエチルアミン等の塩基性触媒存在下で反応させることで得られる。
【0045】
感光剤のバラストとなる上記ポリヒドロキシ化合物としては、ヒドロキノン、レゾルシノール、ピロガロール、ビスフェノールA、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2−ヒドロキシフェニル−4’−ヒドロキシフェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2’,3’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−[4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]フェニル]プロパン、4b,5,9b,10−テトラヒドロ−1,3,6,8−テトラヒドロキシ−5,10−ジメチルインデノ[2,1−a]インデン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等が挙げられる。また、必ずしもここに挙げられたものに限定されない。
【0046】
本発明の組成物が含む(c)成分である溶剤は、上述した(a)成分及び(b)成分、並びに後述する(d)成分、(e)成分等を溶解して、組成物をワニス状にする。
用いる溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、2−メトキシエタノール、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチル−1,3−ブチレングリコールアセテート、1,3−ブチレングリコールアセテート、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、テトラヒドロフラン等が挙げられ、単独でも混合して用いても良い。
【0047】
本発明の組成物が含む(d)成分であるヨードニウム化合物は、本発明の組成物から得られる樹脂膜の未露光部にあっては溶解阻害剤としての機能を有するとともに、活性光の照射により酸を発生させ、露光部のアルカリ水溶液への可溶性を増大させる機能を有する共感光剤である。
【0048】
上記ヨードニウム化合物は、好ましくは下記式(II)で表されるヨードニウム塩である。
【化7】

(式中、Xは、対陰イオンである。Rは、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、トリアルキルシリル基、前記各基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子に置換された基(例えばパーフルオロアルキル基等)、塩素原子、臭素原子又はフッ素原子である。Zは、1価の有機基である。aは、0〜5の整数である。)
【0049】
Xの対陰イオンとしては、例えば、p−トルエンスルホン酸イオン、トルフロロメタンスルホン酸イオン、ヘキサフロロホウ化物イオン、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホン酸イオン、8−アニリノナフタレン−1−スルホン酸イオン、メチルスルホン酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、トリクロロ酢酸イオン、塩化物イオン等が挙げられる。
【0050】
式(II)で表されるヨードニウム塩において、Zは、好ましくは下記式(III)で表される置換基のいずれかである。
【化8】

(Rは、前記式(II)と同様の定義である。R〜Rは、それぞれ、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、トリフロロメタンスルホニル基又はトリアルキルシリル基である。aは、0〜5の整数である。)
【0051】
〜Rのアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等が挙げられる。
〜Rのアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。
〜Rのトリアルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基等が挙げられる。
のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等が挙げられる。
【0052】
(d)成分の具体例としては、ジフェニルヨードニウム、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホナート、ジフェニルヨードニウム−8−アニリノナフタレン−1−スルホナート、ジフェニルヨードニウムスルホナート、ジフェニルトリフロロメチルスルホナート、ジフェニルヨードニウムナノフロロブタンスルホナート、ジフェニルヨードニウムトルエンスルホナート、ジフェニルヨードニウムクロリド、ジフェニルヨードニウムブロミド、ジフェニルヨードニウムヨージド、ジフェニルヨードニウムヘキサフロロホスフェート、4−メトキシフェニルヨードニウムニトラート、4−メトキシフェニルヨードニウムトリフロロメチルスルホナート、4,4’−ジ−t−ブチルジフェニルヨードニウムトリフロロメチルスルホナート、フェニル(5−トリフロロメチルスルホニル−4−オクテン―4―イル)ヨードニウムヘキサフロロボラート、フェニル(5−トリフロロメチルスルホニル−4−オクテン―4―イル)トリフロロメチルスルホナート、フェニル(4−トリフロロメチルスルホニル3―ヘキセン―3―イル)ヘキサフロロボラート、フェニル(4−トリフロロメチルスルホニル―ヘキセン―3―イル)トリフロロメチルスルホナート等が挙げられる。
【0053】
本発明においては、前述の通り、下記条件i)及び条件ii)から選択されるいずれかの条件を満足する必要がある。
i)前記(d)ヨードニウム化合物が、2つ以上の単環式の芳香環が縮合した形の多環式の芳香環の骨格を有するを有すること、
ii)前記(d)ヨードニウム化合物と共に(e)2つ以上の単環式の芳香環が縮合した形の多環式の芳香環の骨格を有する光励起促進剤を含むこと
【0054】
ここで、2つ以上の単環式の芳香環が縮合した形の多環式の芳香環としては、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ナフタセン環、ピレン環等の縮合多環式炭化水素環、キノリン環、イソキノリン環、キナゾリン環等の縮合複素環等が挙げられるが、溶解性等の諸特性から、ナフタレン環又はアントラセン環が好ましい。
従って、条件i)を充足する(d)成分の具体例としては、ジフェニルヨードニウム−9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホナート、ジフェニルヨードニウム−8−アニリノナフタレン−1−スルホナート、フェニル[(3−トリメチルシリル)−2−ナフチル]ヨードニウムトリフラート、ナフチル(フェニル)ヨードニウムテトラフロロボラート等が挙げられる。
また、本発明の組成物は、条件ii)を充足する場合として、さらに(e)2つ以上の単環式の芳香環が縮合した形の多環式の芳香環の骨格を有する光励起促進剤を含む。
(e)光励起促進剤は、活性光照射により励起され、(d)成分への一電子移動により(d)成分を分解して酸を発生させ、これにより光照射部の溶解速度を増大させる機能を有する。(e)成分は、特に(d)成分が活性光に吸収を持たない化合物であるときに用いると好ましい。
【0055】
(e)成分としては、各種の縮合多環式の芳香環の骨格を有するものが挙げられ、アントラセン化合物、テトラセン化合物、フェナンスレン化合物が挙げられるが、好ましくは下記式(IV)で表されるアントラセン化合物である。
【化9】

(R〜R10は、それぞれアルキル基、アルコキシ基又はアルケニル基であり、これらはそれぞれ0〜10有することができ、R〜R10の総計は0〜10である。)
【0056】
ここで、R〜R10のアルキル基、アルコキシ基及びアルケニル基は、Rの説明で例示したものと同様の例示の基が挙げられる。
【0057】
式(IV)で表されるアントラセン化合物は、好ましくは、9,10位にアルコキシ基を有するアントラセン化合物であり、析出防止の理由から、より好ましくは2位にアルキル基をさらに有するアントラセン化合物である。
【0058】
(e)成分の具体例としては、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジメトキシアントラセン、9−メチルアントラセン、9,10−ジメチルアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン等が好ましいものとして挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
本発明の組成物は、成分(a)100重量部に対し、好ましくは、成分(b)を0.01〜50重量部、及び成分(d)を1〜50重量部それぞれ含有する。
また、本発明の組成物がさらに成分(e)を含む場合、本発明の組成物は、成分(a)100重量部に対し、好ましくは、(b)成分を0.01〜50重量部、(d)成分を1〜50重量部、及び(e)成分を0.01〜50重量部それぞれ含有する。
【0060】
また、成分(c)の溶剤の量に特に制限はないが、通常成分(a)100重量部に対して、
150〜230重量部使用される。
本発明の組成物は、上述の(a)〜(e)成分の他に、接着性付与剤、界面活性剤又はレベリング剤、架橋剤等を含有してもよい。
【0061】
接着性付与剤は、本発明の組成物から得られる硬化膜の基盤との接着性を高めることができる。
上記接着付与剤としては、有機シラン化合物、アルミキレート化合物等が挙げられる。
【0062】
上記有機シラン化合物としては、例えばビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、尿素プロピルトリエトキシシラン、メチルフェニルシランジオール、エチルフェニルシランジオール、n−プロピルフェニルシランジオール、イソプロピルフェニルシランジオール、n−ブチルフェニルシランジオール、イソブチルフェニルシランジオール、tert−ブチルフェニルシランジオール、ジフェニルシランジオール、エチルメチルフェニルシラノール、n−プロピルメチルフェニルシラノール、イソプロピルメチルフェニルシラノール、n−ブチルメチルフェニルシラノール、イソブチルメチルフェニルシラノール、tert−ブチルメチルフェニルシラノール、エチルn−プロピルフェニルシラノール、エチルイソプロピルフェニルシラノール、n−ブチルエチルフェニルシラノール、イソブチルエチルフェニルシラノール、tert−ブチルエチルフェニルシラノール、メチルジフェニルシラノール、エチルジフェニルシラノール、n−プロピルジフェニルシラノール、イソプロピルジフェニルシラノール、n−ブチルジフェニルシラノール、イソブチルジフェニルシラノール、tert−ブチルジフェニルシラノール、フェニルシラントリオール、1,4−ビス(トリヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(メチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(エチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(プロピルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ブチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジメチルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジエチルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジプロピルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジブチルヒドロキシシリル)ベンゼン等が挙げられる。
【0063】
上記アルミキレート化合物としては、例えばトリス(アセチルアセトネート)アルミニウム、アセチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
【0064】
密着性付与剤の含有量は、(a)成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部であり、より好ましくは0.5〜10重量部である。
【0065】
界面活性剤又はレベリング剤は、例えばストリエーション(膜厚のムラ)を防いだり、本発明の組成物の現像性を向上させることができる。
上記界面活性剤又はレベリング剤としては、例えばポリオキシエチレンウラリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル等が挙げられる。また、界面活性剤又はレベリング剤の市販品としては、メガファックF171、F173、R−08(大日本インキ化学工業株式会社製)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム株式会社製)、オルガノシロキサンポリマーKP341、KBM303、KBM403、KBM803(信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0066】
架橋剤は、本発明の組成物から得られる熱硬化膜の延伸性、弾性率、熱特性を向上させることができる。
上記架橋剤は、例えばメチロール化合物であり、当該メチロール化合物としては、例えば3,3’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンゼンメタノール)、4,4’−(1−メチルエチリデン)ビス[2−メチル−6−ヒドロキシメチルフェノール]、4,4’−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフロロイソプロピリデン)ビス[2,6−ビス(ヒドロキシメチル)フェノール]、3,3’,5,5’−テトラキス(ヒドロキシメチル)[(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジオール]、4,4’−(1−メチルエチリデン)ビス[2,6−ビス(ヒドロキシメチル)フェノール]、2,2’−メチレンビス(4,6−ビスヒドロキシメチルフェノール)、2,6−ビス[(2−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−5−メチルフェニル)メチル]−4−メチルフェノール等が挙げられる。また、必ずしもここに挙げられたものに限定されない。
【0067】
本発明の組成物を塗布することにより、パターン硬化膜を成膜することができる。特に、本発明の組成物より得られる硬化膜は、耐熱性及び機械特性に優れる。
【0068】
本発明のパターン硬化膜の製造方法は、本発明の組成物を支持基板上に塗布し乾燥して感光性樹脂膜を形成する感光性樹脂膜形成工程と、成膜した感光性樹脂膜を所定のパターンに露光する露光工程と、露光後の感光性樹脂膜をアルカリ水溶液を用いて現像してパターン樹脂膜を得る現像工程と、パターン樹脂膜を加熱処理してパターン硬化膜を得る加熱処理工程を含む。
【0069】
本発明の組成物を塗布する支持基板としては、シリコンウエハ、金属基板、セラミック基板等が挙げられる。また、塗布方法としては、浸漬法、スプレー法、スクリーン印刷法、回転塗布法等が挙げられる。
支持基板上に塗布した本発明の組成物を適度に加熱乾燥することにより、感光性樹脂塗膜が得られる。
【0070】
得られた感光性樹脂塗膜上に、所望のパターンが描かれたマスクを通して活性光線又は化学線を照射する露光処理を行う。
照射する活性光線又は化学線としては、超高圧水銀灯を用いるコンタクト/プロキシミティ露光機、ミラープロジェクション露光機、i線ステッパ、g線ステッパ、その他の紫外線、可視光源や、X線、電子線を用いることができる。
露光後、必要に応じて露光後加熱(PEB;post exposure bake)処理を行なってもよい。
【0071】
露光後の樹脂膜をアルカリ性水溶液を用いて、露光部を溶解除去することで所望のポジパターン(パターン樹脂膜)を得ることができる。
現像液であるアルカリ性水溶液としては、例えば苛性カリ、苛性ソーダ等のアルカリ金属水酸化物の水溶液;テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等の水酸化四級アンモニウム;エタノールアミン、プロピルアミン、エチレンジアミン等のアミン水溶液等を用いることができる。
【0072】
現像後は必要に応じて水又は貧溶媒でリンスをしてもよい。
用いるリンス液としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルセロソルブ、水等が挙げられる。
【0073】
得られたパターン樹脂膜を加熱することにより、溶媒、又は溶媒及び感光剤を除去して安定な高耐熱性パターン硬化膜を得ることができる。
上記加熱温度は、好ましくは150〜500℃であり、より好ましくは200〜400℃である。加熱温度が150℃未満の場合、膜の機械特性及び熱特性が低下するおそれがある。一方、加熱温度が500℃超の場合、膜の機械特性及び熱特性が低下するおそれがある。
また、加熱時間は、好ましくは0.05〜10時間である。加熱時間が0.05時間未満の場合、膜の機械特性及び熱特性が低下するおそれがある。一方、加熱時間が10時間超の場合、膜の機械特性及び熱特性が低下するおそれがある。
【0074】
本発明の組成物からなるパターン硬化膜は、半導体装置や多層配線板等の電子部品に使用することができる。具体的には、半導体装置の表面保護膜層や層間絶縁膜層、多層配線板の層間絶縁膜層等として使用することができる。
【0075】
本発明の電子部品は、本発明の組成物を用いて形成される表面保護膜層及び/又は層間絶縁膜層を有すること以外は特に制限されず、様々な構造をとることができる。また、電子部品としては、半導体装置や多層配線板、各種電子デバイス等を含む。
【0076】
本発明のパターン硬化膜の製造方法及び本発明のパターン硬化膜を備える電子部品を、パターン硬化膜を有する半導体装置の製造工程を一例に図面に基づいて説明する。
図1〜図5は、多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図であり、第1の工程から第5の工程へと一連の工程を表している。
【0077】
図1〜図5において、回路素子(図示しない)を有するSi基板等の半導体基板1は、回路素子の所定部分を除いてシリコン酸化膜等の保護膜2で被覆され、露出した回路素子上に第1導体層3が形成されている。上記半導体基板1上にスピンコート法等で層間絶縁膜層4が形成される(第1の工程、図1)。
層間絶縁膜層4は、本発明の樹脂組成物を用いて形成することができる。
【0078】
次に、塩化ゴム系、フェノールノボラック系等の感光性樹脂層5が、マスクとして層間絶縁膜層4上にスピンコート法で形成され、公知の写真食刻技術によって所定部分の層間絶縁膜層4が露出するように窓6Aが設けられる(第2の工程、図2)。
【0079】
この窓6Aに露出する層間絶縁膜層4は、酸素、四フッ化炭素等のガスを用いるドライエッチング手段によって選択的にエッチングされ、窓6Bが空けられる。次いで、窓6Bから露出した第1導体層3を腐食することなく、感光樹脂層5のみを腐食するようなエッチング溶液を用いて感光樹脂層5が完全に除去される(第3の工程、図3)。
【0080】
さらに、公知の写真食刻技術を用いて、第2導体層7を形成させ、第1導体層3との電気的接続が完全に行われる(第4の工程、図4)。3層以上の多層配線構造を形成する場合は、上記の工程を繰り返して行い各層を形成することができる。
【0081】
次に、表面保護膜8を形成する。図5では、本発明の樹脂組成物をスピンコート法にて塗布、乾燥し、所定部分に窓6Cを形成するパターンを描いたマスク上から光を照射した後、アルカリ水溶液にて現像してパターン樹脂膜を形成する。その後、このパターン樹脂膜を加熱して表面保護膜層8としての感光性樹脂のパターン硬化膜とする(第5の工程、図5)。
この表面保護膜層(パターン硬化膜)8は、導体層を外部からの応力、α線等から保護し、得られる半導体装置は信頼性に優れる。
【実施例】
【0082】
合成例1
攪拌機、温度計及び窒素導入管を備えた密閉反応容器であるフラスコ中に、乾燥N−メチルピロリドン6495gと2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン1831.3g(5mol)、m−アミノフェノール218.3g(2mol)とを入れ、15〜25℃で溶解するまで撹拌した。次いで、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸ジクロリド1771g(6mol)を30分間かけて添加した後、20〜35℃で3時間撹拌した。この反応混合物を2.0lのイオン交換水にて激しく撹拌しながら処理した。析出した固形物をさらに70℃の温イオン交換水で洗浄し、ろ過フィルター上で吸引乾燥し、さらに減圧乾燥してポリマーAを得た。
得られたポリマーAの水分含有率は0.8重量%、重量平均分子量は19,200、分散度は1.5であった。
【0083】
尚、ポリマーAの重量平均分子量は、ポリマー0.5mgに対して、溶媒1mLの溶液を用いて希釈したサンプルをGPC法により測定した。測定条件を以下に示す。
測定装置:検出器 株式会社日立製作所製L4000 UV
ポンプ :株式会社日立製作所製L6000
株式会社島津製作所製C−R4A Chromatopac
測定条件:カラム Gelpack GL−S300MDT−5 ×2本
溶離液 :THF/DMF=1/1(容積比)
LiBr・HO(0.03mol/L)、HPO(0.06mol/L)
流速 :1.0mL/分、検出器:UV270nm
【0084】
実施例1
撹拌器、窒素導入管、及び温度計を備えた三口フラスコに、γ―ブチロラクトン170g、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセタート17g、合成例1で得られたポリマーAを100g、4,4’−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフロロイソプロピリデン)ビス[2,6−ビス(ヒドロキシメチル)フェノール]10.0g、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−[4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]フェニル]プロパンとナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホニルクロリドとを1/2.5のモル比で反応させた化合物13.0g、ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン(62%エタノール溶液)3.5g、トリメトキシ(フェニル)シラン0.5g、ジフェニルヨードニウムニトラート3.0g、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン3.0gを加えて室温下にて一昼夜撹拌溶解後、濾過してポジ型感光性樹脂組成物溶液を得た。
この溶液を6インチシリコンウエハ上にスピンコートした後に乾燥して、膜厚が9.0±1.0μmの塗膜を形成した後、i線ステッパを用いパターンマスクし、露光量を100〜800mJ/cmとして露光した。露光後の塗膜を2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いてパドル現像したところ、270mJ/cmで、良好なレリーフパターンが得られた。
【0085】
実施例2
2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセンの代わりに9,10−ジメトキシアントラセンを用いた以外は実施例1と同様にしてポジ型感光性樹脂組成物溶液を調製し、パターン樹脂膜を製造した。その結果、270mJ/cm以上で、良好なレリーフパターンが得られた。
【0086】
実施例3
ジフェニルヨードニウムニトラート及び2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセンの代わりにジフェニルヨードニウム及び9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホナートを用いた以外は実施例1と同様にしてポジ型感光性樹脂組成物溶液を調製し、パターン樹脂膜を製造した。その結果、270mJ/cm以上で、良好なレリーフパターンが得られた。
【0087】
実施例4
ジフェニルヨードニウム及び9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホナートの代わりにジフェニルヨードニウム−8−アニリノナフタレン−1−スルホナートを用いた以外は実施例3と同様にしてポジ型感光性樹脂組成物溶液を調製し、パターン樹脂膜を製造した。その結果、270mJ/cm以上で、良好なレリーフパターンが得られた。
【0088】
比較例1
撹拌器、窒素導入管、及び温度計を備えた三口フラスコに、γ―ブチロラクトン170g、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセタート17g、合成例1で得られたポリマーAを100g、4,4’−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフロロイソプロピリデン)ビス[2,6−ビス(ヒドロキシメチル)フェノール]10.0g、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−[4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]フェニル]プロパンとナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホニルクロリドとを1/2.5のモル比で反応させた化合物13.0g、ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン(62%エタノール溶液)3.5g、トリメトキシ(フェニル)シラン0.5g、ジフェニルヨードニウムニトラート3.0gを加えて室温下にて一昼夜撹拌溶解後、濾過してポジ型感光性樹脂組成物溶液を得た。
得られた溶液を用いて実施例1と同様にして、パターン樹脂膜を製造した。その結果、310mJ/cm以上で、良好なレリーフパターンが得られた。
【0089】
実施例1〜4及び比較例1で調製した組成物が含む各成分の組合せと、実施例1〜4及び比較例1の組成物から得られるパターンが開口した最小露光量の結果を以下に示す。
【表1】

【0090】
表1中の(A)〜(F)は、それぞれ以下の化合物である。
【化10】

【化11】

【0091】
実施例及び比較例の結果から、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、低露光量でパターン形成が可能であり、高感度なポジ型感光性樹脂組成物であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は感度に優れるた、低露光量で良好な形状のレリーフパターンを得らことができる。従って、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、信頼性に優れ、特に電子部品の製造に適している。
【符号の説明】
【0093】
1 半導体基板
2 保護膜
3 第1導体層
4 層間絶縁膜層
5 感光樹脂層
6A、6B、6C 窓
7 第2導体層
8 表面保護膜層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記式(I)で表される構造を有する重合体、
【化12】

(式中、Xは2〜8価の有機基である。Yは2〜8価の有機基である。Rはそれぞれ水素原子又は炭素数1〜20の有機基である。Rはそれぞれ水素又は1価の有機基である。p及びqはそれぞれ0〜4の整数である。l及びmはそれぞれ0〜2の整数である。l+m+p+qは1以上である。nは重合体中の構造単位の数を示す2以上の整数である。)
(b)ナフトキノンジアジド化合物、
(c)溶剤、及び
(d)ヨードニウム化合物
を含み、下記条件i)及び条件ii)から選択されるいずれかの条件:
i)前記(d)ヨードニウム化合物が、2つ以上の単環式の芳香環が縮合した形の多環式の芳香環の骨格を有するを有すること、
ii)前記(d)ヨードニウム化合物と共に(e)2つ以上の単環式の芳香環が縮合した形の多環式の芳香環の骨格を有する光励起促進剤を含むこと
を満足することを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(b)ナフトキノンジアジド化合物が、o−ナフトキノンジアジド化合物である請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(d)ヨードニウム化合物が、下記式(II)で表されるヨードニウム塩である請求項1又は2に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化13】

(式中、Xは、対陰イオンである。Rは、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、トリアルキルシリル基、前記各基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子に置換された基、塩素原子、臭素原子又はフッ素原子である。Zは1価の有機基である。aは、0〜5の整数である。)
【請求項4】
前記式(II)のZが、下記式(III)で表される置換基のいずれかである請求項3に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化14】

(Rは、前記式(II)と同様の定義である。R〜Rは、それぞれ、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、トリフロロメタンスルホニル基又はトリアルキルシリル基である。aは、0〜5の整数である。)
【請求項5】
前記条件i)を満足するものである請求項1〜4のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記条件ii)を満足するものである請求項1〜5のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項7】
(d)成分又は(e)成分における多環式の芳香環の骨格が、ナフタレン骨格又はアントラセン骨格である請求項1〜6のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項8】
前記(e)光励起促進剤が下記式(IV)で表されるアントラセン化合物である請求項1〜7のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化15】

(R〜R10は、それぞれアルキル基、アルコキシ基又はアルケニル基である。)
【請求項9】
(a)式(I)で表される構造を有する重合体100重量部に対し、(b)ナフトキノンジアジド化合物を0.01〜50重量部、及び(d)ヨードニウム化合物を1〜50重量部それぞれ含有する請求項1〜8のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項10】
(a)式(I)で表される構造を有する重合体100重量部に対し、(b)ナフトキノンジアジド化合物を0.01〜50重量部、(d)ヨードニウム化合物を1〜50重量部、及び(e)光励起促進剤を0.01〜50重量部それぞれ含有する請求項1〜8のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物を支持基板上に塗布し乾燥して感光性樹脂膜を形成する感光性樹脂膜形成工程と、
前記感光性樹脂膜を所定のパターンに露光する露光工程と、
前記露光後の感光性樹脂膜をアルカリ水溶液を用いて現像してパターン樹脂膜を得る現像工程と、
前記パターン樹脂膜を加熱処理してパターン硬化膜を得る加熱処理工程を含むパターン硬化膜の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載のパターン硬化膜の製造方法により得られるパターン硬化膜を、層間絶縁膜層又は表面保護膜層として有する電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−33772(P2011−33772A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179059(P2009−179059)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(398008295)日立化成デュポンマイクロシステムズ株式会社 (81)
【Fターム(参考)】