説明

ポリアセチレンの製造方法

【課題】 500量体より大きな高分子量のポリアセチレンを分子量制御して高収率で得ることができるポリアセチレンの製造方法を提供する。
【解決手段】 モノマー溶液と触媒溶液を混合してポリアセチレンを製造する方法であって、触媒溶液とモノマー溶液を、前記触媒溶液と前記モノマー溶液の界面で接触させて混合溶液を得る工程を有し、かつ前記触媒溶液と前記モノマー溶液が接触した界面におけるモノマー溶液の界面距離(Lm)が、触媒溶液の界面距離(Lc)よりも大きいポリアセチレンの製造方法。(1)モノマー溶液の界面距離(Lm)とは、触媒溶液と接触するモノマー溶液の存在する領域で、モノマー溶液と触媒溶液の界面から最も遠い点までの距離を表す。(2)触媒溶液の界面距離(Lc)とは、モノマー溶液と接触する触媒溶液の存在する領域で、モノマー溶液と触媒溶液の界面から最も遠い点までの距離を指す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なポリアセチレンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電子回路の微細化が進む中で直径がナノメートルオーダーのナノワイヤが注目されている。ナノワイヤは非常に微細な繊維形状をしているため、集積性が高い、導電性の異方性が高く、一次元的な伝導を示すなどの特徴がある。有機分子においても螺旋状高分子などは同様な繊維形状を示し、側鎖の周期性が高いことから側鎖の芳香環によるスタック構造を利用したナノワイヤへの応用が検討されている。
【0003】
高分子材料として螺旋型ポリアセチレンは電子デバイスに応用可能な材料である。特許文献1では、電極間隔より長い分子長を有する螺旋型ポリアセチレンを用いたデバイスが、電界効果型トランジスタ等の電圧印加または電流供給するデバイスに応用できることが記載されている。
【0004】
螺旋型置換ポリアセチレンは剛直性が高く、直線状の分子となる。このような直線状の分子では分子量を制御することで分子長を制御することができる。そのために、ナノギャップ電極に適した分子長の高分子を作製することが可能になる。特許文献1ではこのような直線状の分子、特にπ共役高分子はその両端を電極に接合することで原理的に一分子での電子デバイスに応用できることが記載されている。
【0005】
高分子の分子量はリビング重合の手法を用いることで制御することができる。しかし、ポリスチレンやポリオレフィンなどの一般的高分子では分子が剛直ではなく、糸鞠状になっているため、分子量を制御しても分子の両末端の間隔、すなわち分子長を制御することは難しい。
【0006】
また、非特許文献1では、螺旋型ポリアセチレンのリビング重合方法としてロジウム錯体および助触媒からなるリビング重合性ロジウム触媒溶液にアセチレンモノマーを投入する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−084979号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】“Macromolecules”,6636,33(2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来は螺旋型ポリアセチレンのリビング重合方法では重合度を500量体よりも大きくすることが困難であった。重合度が500量体の螺旋型ポリアセチレンは分子モデルから分子長は約50nmと計算される。この分子長よりも小さい高分子を電極間に橋架けさせるためには、非常に狭い間隔のナノギャップ電極が必要である。ナノギャップ電極の作成は電極間距離が短いほど高度な技術を要し、費用も高価になるため、分子長は長い方が好ましい。
【0010】
ロジウム錯体としては、配位子としてノルボルナジエンやシクロオクタジエン等が配位した化合物が市販されており、その中でもノルボルナジエン配位子の化合物を使用した触媒が最も活性が高いことが報告されている。また、リビング重合性ロジウム錯体触媒としては、ノルボルナジエン配位子のロジウム錯体とリチウム化合物、有機リン化合物からなる三元系の触媒が報告されている。
【0011】
非特許文献1に報告されている重合方法には、触媒溶液にモノマーを投入する方法が開示されているが、この重合方法はモノマーを投入する際に時間が掛かったとしてもポリマーの成長が均一に起こることを考慮した方法である。この方法の場合、モノマー溶液はシリンジ等を用いて投入されるので、投入される溶液は液滴の集合体であるとみなせる。そのため、触媒溶液と接触するモノマー溶液の量は少なく、触媒溶液(X)と、該触媒溶液と接触するモノマー溶液(Y)の体積比(X/Y)は1より大きい。また、モノマー溶液の界面距離よりも触媒溶液の界面距離(Lc)のほうが大きくなりやすい。なお、界面距離は、後で説明するものを表す。
【0012】
この方法によるリビング重合において、一度の混合で生成する重合度としては250量体程度の比較的短い重合度までしか報告されていない。配位子を設計して活性を高めたリビング重合性ロジウム錯体触媒も報告されているが、合成が困難なため、合成には非常に高度な技術を要する。重合反応によるモノマーの消費が終了した後に再度モノマーを逐次投入する方法も報告されている。しかしながら、この方法では重合溶液とモノマー溶液の粘度差から理想的な攪拌は難しく、分子量分散が広くなったり、多峰性の分子量分布になる可能性があり、目的とする高分子量で低分子量分散の螺旋型ポリアセチレンを得ることが難しい。
【0013】
本発明は、この様な背景技術に鑑みてなされたものであり、500量体より大きな高分子量のポリアセチレンを分子量制御して高収率で得ることができるポリアセチレンの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するポリアセチレンの製造方法は、モノマー溶液と触媒溶液を混合してポリアセチレンを製造する方法であって、触媒溶液とモノマー溶液を、前記触媒溶液と前記モノマー溶液の界面で接触させて混合溶液を得る工程を有し、かつ前記触媒溶液と前記モノマー溶液が接触した界面におけるモノマー溶液の界面距離(Lm)が、触媒溶液の界面距離(Lc)よりも大きいことを特徴とする。
【0015】
(1)モノマー溶液の界面距離(Lm)とは、触媒溶液と接触するモノマー溶液の存在する領域で、モノマー溶液と触媒溶液の界面から最も遠い点までの距離を表す。
(2)触媒溶液の界面距離(Lc)とは、モノマー溶液と接触する触媒溶液の存在する領域で、モノマー溶液と触媒溶液の界面から最も遠い点までの距離を指す。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、500量体より大きな高分子量のポリアセチレンを分子量制御して高収率で得ることができるポリアセチレンの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のポリアセチレンの製造方法の一実施態様を示す模式図である。
【図2】本発明のポリアセチレンの製造方法の重合反応を説明する模式図である。
【図3】ポリアセチレンの製造方法の比較例を示す模式図である。
【図4】螺旋型ポリアセチレンの構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
本発明に係るポリアセチレンの製造方法は、モノマー溶液と触媒溶液を混合してポリアセチレンを製造する方法であって、触媒溶液とモノマー溶液を、前記触媒溶液と前記モノマー溶液の界面で接触させて混合溶液を得る工程を有する。前記混合溶液を得る工程において、前記触媒溶液と前記モノマー溶液が接触した界面におけるモノマー溶液の界面距離(Lm)が、触媒溶液の界面距離(Lc)よりも大きいことを特徴とする。
【0020】
(1)モノマー溶液の界面距離(Lm)とは、触媒溶液と接触するモノマー溶液の存在する領域で、モノマー溶液と触媒溶液の界面から最も遠い点までの距離を表す。
(2)触媒溶液の界面距離(Lc)とは、モノマー溶液と接触する触媒溶液の存在する領域で、モノマー溶液と触媒溶液の界面から最も遠い点までの距離を指す。
【0021】
特に、本発明においては、モノマーとして置換アセチレンを用いたモノマー溶液、触媒としてノルボルナジエンを配位子とするリビング重合性ロジウム錯体を用いた触媒溶液とを接触させて混合溶液を得る工程を有する。混合溶液を得るには、両者の溶液を用意し、接触を一時的に分離し、その後両者を接触させる。両者の溶液が接触した際の触媒溶液とモノマー溶液が接触する界面における、モノマー溶液の界面距離(Lm)が、触媒溶液の界面距離(Lc)よりも大きいことを特徴とする。
【0022】
図1は、本発明のポリアセチレンの製造方法の一実施態様を示す模式図である。図1(A)は触媒溶液とモノマー溶液の接触を一時的に防止する手段が、空間的分離による場合を示す。図1(B)は液滴が落下した場合の触媒溶液とモノマー溶液の接触後の状態を示す。図1(C)は触媒溶液とモノマー溶液の接触を一時的に防止する膜を用いた分離の場合を示す。図1(D)は膜が消失した後の触媒溶液とモノマー溶液の接触後の状態を示す。
【0023】
まず、図1(A)、(B)に示すように、触媒溶液をモノマー溶液に投入して接触させて混合溶液を得る方法について説明する。
【0024】
図1(A)において、反応容器101中にモノマー103が溶解したモノマー溶液102を配置し、触媒105が溶解した触媒溶液104を別の容器に配置し、空間的に分離することで両者の接触を一時的に分離している。その後、両者を例えば触媒溶液を滴下することでモノマー溶液と触媒溶液を接触させる。図1(B)に示す様に、接触後の状態においては両者の溶液の界面106が発生する。界面106からモノマー溶液の存在する領域で最も遠い点までの距離107をモノマー溶液の界面距離(Lm)と定義する。界面106から触媒溶液の存在する領域で最も遠い点までの距離を触媒溶液の界面距離(Lc)と定義する。
【0025】
次に、図1(C)、(D)に示すように、触媒溶液とモノマー溶液を接触面に接触を防止するための分離膜を設けて積層した後、前記分離膜を除去して触媒溶液とモノマー溶液を、触媒溶液とモノマー溶液の界面で接触させて混合溶液を得る方法について説明する。
【0026】
図1(C)においては、反応容器101中でモノマー103が溶解したモノマー溶液102と触媒105が溶解した触媒溶液104を膜109等の分離手段を用いて両者の接触を一時的に分離している。その後、両者を例えば膜の一部を破壊することでモノマー溶液と触媒溶液を接触させる。図1(D)に示す様に、接触後の状態においては両者の溶液の界面106が発生する。界面106からモノマー溶液の存在する領域で最も遠い点までの距離がモノマー溶液の界面距離(Lm)であり、界面106から触媒溶液の存在する領域で最も遠い点までの距離が触媒溶液の界面距離(Lc)である。
【0027】
上記の様に、本発明は触媒溶液とモノマー溶液の接触を一時的に防止する手段を備え、モノマー溶液の界面距離(Lm)が触媒溶液の界面距離(Lc)よりも大きいことを特徴とするポリアセチレンの製造方法である。
【0028】
本発明の方法によれば、従来は難しかった500量体以上の高重合度で1.3以下の低分子量分散の螺旋型ポリアセチレンポリマーを簡便に作製することができる。重合度はリビング重合性の触媒を用い、モノマーと触媒のモル比を変化することで制御できる。
【0029】
本発明の方法では特にモル比を制限するものはないが、触媒溶液とモノマー溶液に含有される触媒(C)に対するモノマー(M)のモル比(M/C)が50以上5000以下、特に500以上1500以下であることが好ましい。
【0030】
図2は、本発明のポリアセチレンの製造方法の重合反応を説明する模式図である。図2(A)は触媒溶液とモノマー溶液の接触前の状態を示す。図2(B)は触媒溶液とモノマー溶液の接触後の状態を示す。図2(C),(D),(E)は触媒溶液とモノマーの拡散が進んだ状態を示す。反応容器201中で触媒溶液204とモノマー溶液202を界面206で接触させることで重合開始反応は触媒205とモノマー203の混合領域209で開始する。モノマー溶液と触媒溶液の拡散速度は同程度であると仮定すると、触媒溶液の界面距離(Lc)分の拡散が進行した拡散初期において全ての触媒が混合領域に入り、拡散初期においてほぼ全ての触媒で重合開始反応が進行する。また、重合開始反応が進行した後に混合領域とモノマー溶液の間の拡散が進むため、拡散の進行と共に重合成長反応が進行し、ポリマー210が生成する。また、重合開始反応は触媒濃度およびモノマー濃度が一定の閾値以上で反応が起こると考えられるが、本発明においては溶液の拡散初期で混合領域において局所的な触媒濃度が高く、モノマーは触媒に比べて大過剰に加えられているため、モノマー濃度も高い。そのため、混合領域における局所的な反応条件が閾値以上になりやすいため、重合開始反応が早く進む。
【0031】
図3は、ポリアセチレンの製造方法の比較例を示す模式図である。図3では、比較例としてモノマー溶液を触媒溶液に投入する方法を示す。図3(A)は触媒溶液とモノマー溶液の接触前の状態を示す。図3(B)は触媒溶液とモノマー溶液が接触した状態を示す。図3(C),(D),(E)は触媒溶液とモノマー溶液の拡散が進んだ状態を示す。この方法ではモノマー溶液302と触媒溶液304を反応容器301中で混合する際に、モノマー溶液の界面距離(Lm)が触媒溶液の界面距離(Lc)よりも小さくなる。触媒溶液とモノマー溶液を界面306で接触させることにより、重合開始反応は触媒305とモノマー303の混合領域で開始される。拡散初期においては、モノマー溶液の界面距離分の拡散が進行するごく一部の触媒しかモノマーと接触しないため、重合開始反応が十分には進行しにくい。この方法では混合領域309内にない触媒はモノマーと接触しないため、拡散が十分進行した状態で両者の溶液が完全に混合するまでは混合領域に入らない触媒も存在するため、触媒間で重合開始のタイムラグが生じる。このタイムラグはポリマー310の長さが不均一になる要因となり、分子量分散が広がる原因になる。なお、混合領域とは拡散により両者の分子が混在する溶液の領域を表す。
【0032】
また、このような拡散が進んだ状態での混合領域に入っている触媒により行われる重合開始反応はモノマー濃度は高いが、触媒濃度が低い状態で行なわれるため、局所的な反応条件が閾値以上になりにくく、重合開始反応が起こりにくい。このことから重合の収率が低下したり、重合反応速度が遅くなったり、重合が不均一になる要因となる。
【0033】
このように本発明は、溶液の拡散初期に起こる重合開始反応の効率を上げる効果がある。そのために、本発明は、モノマーの種類や触媒の種類、モノマー濃度、触媒濃度、モノマーと触媒のモル比等に特に制限なく任意の重合条件で、重合の収率が良く、重合速度が速く、分子量分散が狭いポリアセチレンを製造することができる。
【0034】
本発明に用いられるモノマーとしては、特に制限はないが、置換アセチレンが好ましい。置換アセチレンとしては特に限定するものはないが、フェニルアセチレンおよびその誘導体、ナフチルアセチレンおよびその誘導体、カルバゾリルアセチレンおよびその誘導体、フルオレニルアセチレンおよびその誘導体等が挙げられる。より具体的にはフェニルアセチレン、アルキルフェニルアセチレン、アルキルオキシフェニルアセチレン、アルキルエチニル安息香酸、アルキルアミドフェニルアセチレン、ナフチルアセチレン、アルキルナフチルアセチレン、カルバゾリルアセチレン、アルキルカルバゾリルアセチレン、フルオレニルアセチレン、ジアルキルフルオレニルアセチレン等が挙げられる。
【0035】
本発明に用いられる触媒としては、特に制限はないが、ロジウム錯体触媒が好ましい。ロジウム錯体としては特に限定するものはないが、一価のロジウムに環状のジオレフィン化合物が配位した錯体が挙げられ、特にリビング重合性のロジウム錯体触媒が好ましい。より具体的にはロジウム(ノルボルナジエン)化合物、ロジウム(シクロオクタジエン)化合物等が挙げられる。また、リビング重合性のロジウム錯体としてはこれらの単核錯体が挙げられる。ロジウム単核錯体は例えばロジウム錯体の二量体を有機リン化合物の存在下で解離させることにより得られる。ロジウム錯体の二量体としては例えばロジウム(ノルボルナジエン)塩化物二量体、ロジウム(シクロオクタジエン)塩化物二量体等が挙げられる。
【0036】
ロジウム錯体の単核錯体を得る方法としては特に限定されるものはないが、例えば有機リン化合物の存在下でロジウム錯体の二量体を助触媒として塩基を用いて解離させる方法を使用することができる。塩基としては特に限定されるものはないが、トリフェニルビニルリチウムやその誘導体、リチウム、アルキルリチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0037】
有機リン化合物としては特に限定されるものはないが、トリフェニルホスフィン、およびその誘導体が挙げられる。より具体的にはトリフェニルホスフィン、トリスメチルフェニルホスフィン、トリスフルオロフェニルホスフィン等が挙げられる。
【0038】
次に、本発明のポリアセチレンの製造工程について説明する。
【0039】
本発明のポリアセチレンの製造方法の工程は、1)触媒溶液を準備する工程、2)モノマー溶液を準備する工程、3)モノマー溶液と触媒溶液を混合する工程、4)混合溶液を攪拌する工程からなる。
【0040】
1)触媒溶液を準備する工程
触媒溶液は既知の方法で調整することができる。例えば、有機リン化合物の存在下でロジウムの単核錯体溶液を調製することで得られる。例えば、ロジウム錯体としてロジウム(ノルボルナジエン)塩化物二量体と有機リン化合物としてトリフェニルホスフィンを所定の割合で秤量し、溶媒としてトルエンを加え、室温で30分程度攪拌する。この溶液に助触媒としてトリフェニルビニルリチウム溶液を加えることで、ロジウム(ノルボルナジエン)トリフェニルビニル・トリフェニルホスフィン錯体溶液が得られる。
【0041】
2)モノマー溶液を準備する工程
モノマー溶液は既知の方法で調整することができる。例えば、モノマーとしてフェニルアセチレンを所定量容器に入れ、溶媒としてトルエンを加え、攪拌する。溶媒としては特に限定されるものはなく、モノマーが溶解すればよい。例えばトルエン、クロロホルム、テトラヒドロフランなどが挙げられる。また、本発明においては溶媒は特に必須ではなく、モノマー単独で用意しても良い。
【0042】
3)モノマー溶液と触媒溶液を混合する工程
本発明において、触媒溶液とモノマー溶液を接触させることにより、重合開始反応は触媒溶液とモノマー溶液の混合領域で開始、進行する。本発明ではモノマーと触媒を混合する工程において、触媒溶液とモノマー溶液の接触を一時的に防止する手段を備え、モノマー溶液の界面距離(Lm)を触媒溶液の界面距離(Lc)よりも大きくすることで、拡散初期においてほぼ全ての触媒が混合領域に入る状態を実現する。
【0043】
本発明において、モノマー溶液と触媒溶液の量は、特に限定するものはないが、触媒溶液とモノマー溶液を接触させて混合溶液を得る工程において、触媒溶液(V)とモノマー溶液(V)の体積比(V/V)が1未満であることが好ましい。この条件を満たすことで、モノマー溶液の界面距離(Lm)が触媒溶液の界面距離(Lc)よりも大きく、本発明の混合条件の発現が容易になる。この条件はモノマー溶液と接触する触媒溶液に対して満たしていれば良く、必ずしもモノマー溶液と系全体に投入する触媒溶液に対してこの条件を満たす必要はない。
【0044】
触媒溶液とモノマー溶液を接触させる方法としては特に限定されるものはなく、モノマー溶液の界面距離(Lm)が触媒溶液の界面距離(Lc)よりも大きく、拡散初期においてほぼ全ての触媒が混合領域に入る状態を実現できればよい。好ましくはモノマー溶液に触媒溶液を投入する方法、および触媒溶液とモノマー溶液を膜を用いて一時的に分離した後、膜を消失させることにより接触させる方法が挙げられる。
【0045】
触媒溶液をモノマー溶液に投入する方法としては特に限定されるものはないが、シリンジ等を用いて滴下する方法が挙げられる。その場合、投入される触媒溶液は液滴の集合体であるとみなされる。そのため、モノマー溶液と一度に接触する触媒溶液の量、すなわち一つの液滴の量はモノマー溶液に比べて少なく、モノマー溶液の界面距離(Lm)が触媒溶液の界面距離(Lc)よりも大きい状態が容易に実現できる。
【0046】
膜を用いて一時的に分離した触媒溶液とモノマー溶液を、膜を消失させることにより接触させる際、触媒溶液(V)とモノマー溶液(V)の体積比(V/V)を1未満にすることでモノマー溶液の界面距離(Lm)が触媒溶液の界面距離(Lc)よりも大きい状態が容易に実現できる。
【0047】
モノマー溶液および触媒溶液の界面距離は例えば以下の方法で算出できる。
【0048】
例えば図1(A)のように、空間的にモノマー溶液と触媒溶液を一時的に分離した場合、両者が接触した後に図1(B)のように界面106ができる。界面が触媒液滴とモノマー溶液の接触する点であるとすると、モノマー溶液の界面距離は界面から容器の端までの距離(Lm)となるため、容器の形状、大きさ、モノマー溶液の量から算出できる。触媒溶液の界面距離は、界面から液滴の上限までの距離(Lc)となるため、液滴の直径を求めることで算出できる。液滴の直径は例えば1mLの溶液を滴下させたときの液滴の数を計測し、平均の液滴量を見積った後に計算することができる。
【0049】
また、例えば図1(C)のように、膜109を用いてモノマー溶液と触媒溶液を一時的に分離した場合、膜が消失した後に図1(D)のように界面106が生成する。界面が容器の断面積一杯に広がっているとすると、界面距離は界面から容器の下限までの距離となる。すなわち接触前の状態図1(C)において、膜から容器の下限までの距離(Lm)がモノマー溶液の拡散距離となる。触媒溶液の界面距離も同じように膜から溶液の上限までの距離(Lc)と算出できる。
【0050】
本発明の製造方法では、触媒溶液が拡散し、全ての触媒が混合領域に入るまでの時間が、全てのモノマーが混合領域に入るより早いため、拡散の進行によって混合領域中に全ての触媒が入るが、一部のモノマーは混合領域に入らない状態になる。
【0051】
本発明では全ての触媒あるいはモノマーが混合領域に拡散した状態を拡散初期とする。このように拡散初期において全ての触媒が混合領域に入るため、拡散初期においてほぼ全ての触媒で重合開始反応が進行する。また、重合開始反応が進行した後に混合溶液のモノマー溶液への拡散が進むため、拡散の進行と共に重合成長反応が進行する。また、重合開始反応は触媒濃度およびモノマー濃度が一定の閾値以上で反応が起こると考えられるが、本発明においては溶液の拡散初期で混合領域において局所的な触媒濃度が高く、モノマーは触媒に比べて大過剰に加えられているため、モノマー濃度も高い。そのため、混合領域における局所的な反応条件が閾値以上になりやすいため、重合開始反応が早く進む。
【0052】
触媒溶液とモノマー溶液の接触を一時的に防止する手段は特に限定されるものはないが、空間的に両者を分離する方法と膜を用いて両者を分離する方法が考えられる。
【0053】
空間的に両者を分離する方法としてはモノマー溶液に触媒溶液を投入する方法が挙げられ、膜を用いて両者を分離する方法としては時間または刺激により破壊されるような膜を用いる方法が挙げられる。
【0054】
モノマー溶液と触媒溶液の量は特に限定されるものはないが、溶液に対するモノマー溶液の体積比が1より大きいであることが好ましい。この条件の場合、図1(C)のようにモノマー溶液の界面距離(Lm)が触媒溶液の界面距離(Lc)より大きくなりやすく、本発明の混合条件を実現しやすい。
【0055】
触媒溶液をモノマー溶液に投入する方法は特に限定されるものはないが、例えばフラスコ等の容器から触媒溶液を投入する方法、シリンジやピペットを用いて触媒溶液を投入する方法、噴霧器を用いる方法、含浸体を用いる方法等が挙げられる。
【0056】
フラスコ等の容器から触媒溶液を投入する方法としては上面から注ぎ入れても良いし、ガラス棒などを伝って投入しても良い。また、壁面を伝って投入してもよい。
【0057】
シリンジやピペットを用いて触媒溶液を投入する場合、上から液面へ滴下してもよいし、針先をモノマー溶液内に挿入して注入してもよい。また、ガラス棒や壁面を伝って投入してもよい。針先を溶液内に挿入する場合、モノマー溶液が逆流しないようにする。シリンジやピペットを用いて触媒溶液を投入する場合、触媒溶液は液滴の集合体であるとみなすことができ、少量の触媒溶液が順次投入されているとみなせる。このような場合、一滴の触媒溶液の量がモノマー溶液の量に対して少なくなるため、図2(B)のようにモノマー溶液の界面距離(Lm)が触媒溶液の界面距離(Lc)より大きくなりやすく、本発明の混合条件を実現しやすい。
【0058】
噴霧器を用いて触媒溶液を投入する場合、例えば上面から液面に向かって吹き付ける方法が考えられる。この方法では触媒溶液を多量の細かい液滴にして加えるため、その一つ一つの触媒溶液の液滴がモノマー溶液に投入されるため、より効率的に重合が進行する。
【0059】
含浸体を用いて触媒溶液を加える場合、例えば脱脂綿などの含浸体の中に触媒溶液をあらかじめ浸漬させておき、その含浸体をモノマー溶液に加え、モノマー溶液中で含浸体から触媒溶液を拡散させる方法で加える。含浸体は一つだけ加えても良いし、複数の含浸体を加えても良い。
【0060】
膜を用いて一時的に分離した触媒溶液とモノマー溶液を、膜を消失させることにより接触させる方法は、特に限定されるものはないが、次の方法が挙げられる。例えば、モノマー溶液を容器に加えたのち、しばらく静置し、その上に重合溶媒に溶解しない薄膜を隙間がないようにのせる。その上に触媒溶液を加え、静置したのちに薄膜を取り除くことにより二つの溶液を接触させることができる。また、pHや溶媒などの刺激により破壊する微小な被覆膜の中に触媒溶液をあらかじめ入れておき、その被覆膜微小球をモノマー溶液に加え、モノマー溶液中で被覆膜を破壊させる方法で二つの溶液を接触させても良い。被覆膜微小球は一つだけ加えても良いし、複数の被覆膜微小球を加えても良い。
【0061】
モノマー溶液と触媒溶液の濃度は得られるポリマーの重合度や溶解性によって適宜調整する。例えばポリアセチレンポリマーが重合中に析出するようであれば適宜溶媒を追加し、ポリマーを溶解させ、溶液の均一性を保持する。モノマーと触媒のモル比は目的の重合度により適宜調整する。例えば100量体のポリマーを重合したいときは、触媒(C)に対するモノマー(M)のモル比(M/C)のモル比を100に調整し、500量体のポリマーを重合したいときは触媒に対するモノマーのモル比(M/C)を500に調整する。
【0062】
4)混合溶液を攪拌する工程
モノマー溶液と触媒溶液を接触させた後、攪拌を開始する。攪拌の方法は特に限定されるものはないが、磁気攪拌子を用いてもよいし、振とう機を用いてもよい。重合反応時間は得られるポリアセチレンポリマーの重合度やモノマーの反応性によって適宜調整する。モノマーの残存をガスクロマトグラフィーやNMRで確認し、モノマーの消費が止まった時点で終了してもよいし、あらかじめ設定した反応時間を経過した時点で終了してもよい。
【0063】
得られたポリマー溶液は再沈殿などの精製をせずにそのまま製膜等に用いてもよいが、ポリマーの貧溶媒で再沈殿することで精製することができる。貧溶媒としてはポリマーやモノマーの溶解性によって適宜選択する。例えばメタノールやエタノール、へキサンなどが挙げられる。再沈殿したポリマーは例えばフィルターでろ過した後に減圧乾燥機で乾燥させることで溶媒を除去することができる。
【0064】
表1に本発明の方法として、触媒溶液をモノマー溶液にシリンジを用いて滴下する方法を用いて、モノマー/触媒比を100から1500、すなわち100量体から1500量体を作成する条件で重合を行った結果を示す。モノマーはパラ−ブチルフェニルアセチレンを用いた。触媒は以下のように調整したロジウム錯体触媒を用いた。
【0065】
窒素置換後密閉した試験管にロジウム(ノルボルナジエン)塩化物二量体とトリフェニルホスフィン、溶媒としてトルエンを加え、30℃で10分攪拌する。この溶液にトリフェニルビニルリチウム溶液を加え、30℃で15分攪拌することによりトリフェニルビニル(ノルボルナジエン)ロジウム錯体触媒溶液を調整する。
【0066】
表1において、[モノマー]、[触媒]は加えたモノマーと触媒の量をミリモル単位で示し、そのモル比を[モノマー]/[触媒]に示した。収率は得られたポリマーの量と加えたモノマーの量から計算した。分子量と分散はポリスチレン標準を用いたGPC測定から評価した重量平均分子量と分子量分散を示す。また、重合度は重量平均分子量をモノマー単位の分子量で割って算出した。表1に示すようにほぼ定量的に目的とする重合度で分子量分散が1.3以下の低分子量分散の螺旋型ポリアセチレンが生成することを見出した。
【0067】
表2に比較例として、モノマー溶液を触媒溶液にシリンジを用いて滴下する方法を用いてモノマー/触媒比を100から1500、すなわち100量体から1500量体を作成する条件で重合を行った結果を示す。400量体まではほぼ定量的に目的とする重合度の低分子量分散の螺旋型ポリアセチレンが得られたが、500量体以上では収率が低下し、目的とする重合度のポリマーが生成しなかったり、1000量体の条件では分子量分散の増加や分子量の二峰化が見られた。1500量体の条件ではポリマーはほとんど得られず、分子量の評価も出来なかった。
【0068】
このように本発明の方法を用いることで従来困難であった500量体以上の低分子量分散の螺旋型ポリアセチレンを製造することができる。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【0071】
図4に得られる螺旋型ポリアセチレンの模式図を示す。主鎖の螺旋軸はz方向に伸びている。得られる螺旋型ポリアセチレンは、図4のように立体規則的な周期構造をしており、主鎖のポリアセチレン主鎖401は螺旋状の構造をしている。螺旋型ポリアセチレンは主鎖の共役構造により導電性を有するが、側鎖にベンゼン環402のような芳香環を置換した場合には芳香環間のπスタッキング構造による共役系も形成する。また、螺旋型ポリアセチレンは主鎖が剛直な不飽和結合により構成されているため、分子形状が直線状を呈する。そのため、分子の両端をナノギャップ電極に接合することで一分子電子デバイスとして機能する。
【0072】
本発明の製造方法によれば、簡便な方法で電子デバイスに応用可能な材料である螺旋型ポリアセチレンを500量体より大きな高分子量領域で容易に分子量制御することができ、収率が向上するという利点もある。
【0073】
本発明の製造方法を用いて作成したポリアセチレンは導電性を有し、電子デバイスへ応用可能である。分子量が高分子量領域で制御できることから、50nm程度のナノギャップ電極に分子の両端が橋架けしたデバイスの作成が容易で、分子量が低く、電極間距離よりも分子長が短い高分子に比べて移動度などの電気特性が向上する。また、分子量が揃っていることから、デバイスの均一性が向上し、デバイス全体の導電性が向上する利点もある。
【実施例】
【0074】
以下に本発明のポリアセチレンの製造方法について詳しく説明する。
【0075】
[実施例1]
(リビング重合性ロジウム錯体触媒溶液の作成)
窒素置換後密閉した試験管にトリフェニルビニルブロマイド134mgとトルエン3.5mlを入れ、0℃に冷却した後、1.6M(モル/リットル)のn−ブチルリチウムのヘキサン溶液を0.5ml加える。0℃で10分攪拌した後、30℃で5分攪拌して、トリフェニルビニルリチウム溶液を作成する。
【0076】
窒素置換後密閉した試験管にロジウム(ノルボルナジエン)塩化物二量体23mgとトリフェニルホスフィン26mg、トルエン8mlを入れ、30℃で10分攪拌する。この溶液に上記のトリフェニルビニルリチウム溶液2mlを加え、30℃で15分攪拌することによりトリフェニルビニル(ノルボルナジエン)ロジウム錯体触媒溶液を作成する。
【0077】
(重合反応)
窒素置換後密閉した試験管にアセチレンモノマーとしてp−n−ブチルフェニルアセチレン395mgとトルエン5mlを加え、30℃で10分攪拌してモノマー溶液を得る。このモノマー溶液に上記のロジウム錯体触媒溶液0.5mlをシリンジで滴下し、30℃で30分攪拌する。この条件ではモノマーと触媒のモル比は500:1となる。
【0078】
滴下する触媒溶液の液滴量は平均6.7μLであり、その直径すなわち触媒溶液の界面距離(Lc)は平均2.3mmと算出できる。容器中のモノマー溶液の液面高さすなわちモノマー溶液の界面距離(Lm)は約40mmであり、モノマー溶液の界面距離(Lm)は触媒溶液の界面距離(Lc)よりも大きい。
【0079】
反応終了後、得られた溶液を大量のメタノール中に滴下することによりポリマーを沈殿させる。得られたポリマーをメタノールで洗浄、濾過した後、12時間減圧乾燥することで目的のポリアセチレンであるポリ(p−n−ブチルフェニルアセチレン)を得た。得られたポリマーの収率は90%以上、分子量はポリスチレン標準試料を用いたGPC測定により評価し、数平均分子量は83600、重合度は530、分子量分散は1.10であった。
【0080】
[実施例2]
p−n−ブチルフェニルアセチレンの量を474mgとし、トルエンの量を6ml、ロジウム錯体触媒溶液の量を0.2mlとした以外は、実施例1と同様の操作を行った。この条件ではモノマーと触媒のモル比は1500:1となる。
【0081】
得られたポリマーの収率は90%以上、分子量はポリスチレン標準試料を用いたGPC測定により評価し、数平均分子量は240000、重合度は1520、分子量分散は1.10であった。
【0082】
[実施例3]
窒素置換後密閉した試験管にアセチレンモノマーとしてp−n−ブチルフェニルアセチレン395mgとトルエン5mlを加え、30℃で10分攪拌してモノマー溶液を得る。しばらく静置したのち、溶液の上に、端をフッ素樹脂のひもで結んだフッ素樹脂薄膜を隙間がないようにのせる。その上に実施例1で調整したロジウム錯体触媒溶液2.5mlをゆっくりと滴下し、しばらく静置したのち、ひもを引っ張ることによりフッ素樹脂薄膜を取り除き、二つの溶液を接触させ、その後、30℃で30分攪拌する。この条件ではモノマーと触媒のモル比は100:1となる。
【0083】
上面の触媒溶液の量は0.5mLであり、触媒溶液の界面距離(Lc)は約20mmと算出できる。下面のモノマー溶液の液面高さすなわちモノマー溶液の界面距離(Lm)は約40mmであり、モノマー溶液の界面距離(Lm)は触媒溶液の界面距離(Lc)よりも大きい。
【0084】
反応終了後、得られた溶液を大量のメタノール中に滴下することによりポリマーを沈殿させる。得られたポリマーをメタノールで洗浄、濾過した後、12時間減圧乾燥することで目的のポリアセチレンであるポリ(p−n−ブチルフェニルアセチレン)が得られる。
【0085】
[比較例1]
(重合反応)
窒素置換後密閉した試験管に上記のロジウム錯体触媒溶液0.5mlを加える。この溶液にアセチレンモノマーとしてp−n−ブチルフェニルアセチレン395mgとトルエン5mlの混合溶液をシリンジで滴下し、30℃で30分攪拌する。この条件ではモノマーと触媒のモル比は500:1となる。
【0086】
滴下するモノマー溶液の液滴量は平均6.7μLであり、その直径すなわちモノマー溶液の界面距離(Lm)は平均2.3mmと算出できる。容器中の触媒溶液の液面高さすなわち触媒溶液の界面距離(Lc)は約5.5mmであり、触媒溶液の界面距離(Lc)はモノマー溶液の界面距離(Lm)よりも大きい。
【0087】
反応終了後、得られた溶液を大量のメタノール中に滴下することによりポリマーを沈殿させた。得られたポリマーをメタノールで洗浄、濾過した後、12時間減圧乾燥することで目的のポリアセチレンであるポリ(p−n−ブチルフェニルアセチレン)を得た。得られたポリマーの収率は70%、分子量はポリスチレン標準試料を用いたGPC測定により評価し、重量平均分子量は71000となり、重合度はそれぞれ450、分子量分散はそれぞれ1.45であった。
【0088】
[比較例2]
ロジウム錯体触媒溶液の量を0.25mlとした以外は比較例1と同様の操作を行う。この条件ではモノマーと触媒のモル比は1000:1となる。得られたポリマーの収率は50%、分子量はポリスチレン標準試料を用いたGPC測定により評価したところ、二峰性となり、重量平均分子量はそれぞれ47600と1030000、重合度はそれぞれ300および6500、分子量分散はそれぞれ1.03および1.67であった。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の製造方法を用いて作成したポリアセチレンは導電性を有し、電子デバイス等に利用することができる。
【符号の説明】
【0090】
101 容器
102 モノマー溶液
103 モノマー
104 触媒溶液
105 触媒
106 界面
109 膜
201 容器
202 モノマー溶液
203 モノマー
204 触媒溶液
205 触媒
206 界面
209 混合領域
210 ポリマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマー溶液と触媒溶液を混合してポリアセチレンを製造する方法であって、触媒溶液とモノマー溶液を、前記触媒溶液と前記モノマー溶液の界面で接触させて混合溶液を得る工程を有し、かつ前記触媒溶液と前記モノマー溶液が接触した界面におけるモノマー溶液の界面距離(Lm)が、触媒溶液の界面距離(Lc)よりも大きいことを特徴とするポリアセチレンの製造方法。
(1)モノマー溶液の界面距離(Lm)とは、触媒溶液と接触するモノマー溶液の存在する領域で、モノマー溶液と触媒溶液の界面から最も遠い点までの距離を表す。
(2)触媒溶液の界面距離(Lc)とは、モノマー溶液と接触する触媒溶液の存在する領域で、モノマー溶液と触媒溶液の界面から最も遠い点までの距離を指す。
【請求項2】
前記触媒溶液とモノマー溶液を接触させて混合溶液を得る工程が、触媒溶液をモノマー溶液に投入して接触させて混合溶液を得ることを特徴とする請求項1に記載のポリアセチレンの製造方法。
【請求項3】
前記触媒溶液とモノマー溶液を接触させて混合溶液を得る工程が、触媒溶液とモノマー溶液を接触面に接触を防止するための分離膜を設けて積層した後、前記分離膜を除去して触媒溶液とモノマー溶液を、触媒溶液とモノマー溶液の界面で接触させて混合溶液を得ることを特徴とする請求項1に記載のポリアセチレンの製造方法。
【請求項4】
前記触媒溶液とモノマー溶液を接触させて混合溶液を得る工程において、触媒溶液(V)とモノマー溶液(V)の体積比(V/V)が1未満であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの項に記載のポリアセチレンの製造方法。
【請求項5】
前記触媒溶液に含有される触媒がリビング重合性のロジウム錯体触媒であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかの項に記載のポリアセチレンの製造方法。
【請求項6】
前記触媒溶液とモノマー溶液に含有される触媒(C)に対するモノマー(M)のモル比(M/C)が500以上1500以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかの項に記載のポリアセチレンの製造方法。
【請求項7】
前記モノマーが置換アセチレンであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかの項に記載のポリアセチレンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−167212(P2012−167212A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30009(P2011−30009)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】