説明

ポリアミド樹脂の製造装置

【課題】分縮器を備えた回分式反応槽を用い溶融状態にあるジカルボン酸にジアミンを添加し、直接重縮合させてなるポリアミド樹脂の回分式製造方法において、閉塞トラブルの無い安定した回分式製造装置を提供する。
【解決手段】溶融状態にあるジカルボン酸にジアミンを連続的もしくは間欠的に添加し、ジアミンとジカルボン酸を直接重縮合してポリアミド樹脂を製造する装置であって、回分式反応槽、分縮器、および重縮合反応によって発生する縮合水を主体とする蒸気を反応槽から分縮器に導く機能と分縮器内で凝縮した還流液を反応槽に戻す機能を併せ持つ、反応槽と分縮器を接続する配管を有することを特徴とするポリアミド樹脂の製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド樹脂の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なポリアミドの製造方法は、ナイロン塩又はその水溶液を供給原料とし、回分式では一つの反応槽でナイロン塩水溶液を加圧下に加熱し、ジアミンの留出を抑えながら均一相で重合を進め、ジアミンを固定化したのち系内の水蒸気を徐々に放圧し、最終的に常圧もしくは減圧とし重合を完結させる。このとき、供給原料として約50質量%のナイロン塩の水溶液を用いるのが一般的であるが、重合初期において溶媒である水の留出を防ぐため高度の耐圧仕様が求められ、最終的に溶媒である多量の水と縮合水を除去しなければならず、このとき発泡、水の蒸発潜熱によるポリマーの固化、および反応中の大きな液面変動に伴い反応槽壁面にポリアミドが付着し、熱劣化を起こす等様々な不都合を回避するための対策が必要である。また、多量の水を除去するため多くの熱エネルギーを必要とし、更に1回の反応で得られるポリアミド収量が少ない等、技術的にも経済的にも課題が多い。一方、ナイロン塩を供給原料とする場合(特許文献1、特許文献2)、これらの欠点はかなり解決されるが、ナイロン塩の単離、精製工程が必要であり、効率の良い方法とは言い難い。
【0003】
ナイロン塩およびナイロン塩の水溶液を供給原料としない重合方法として、溶融状態にあるジカルボン酸に少量の水を含んだジアミンを常圧下220℃以下の温度で滴下して反応を行う方法(特許文献3)、溶融状態にあるジカルボン酸にジアミンを常圧下滴下し直接反応させる方法(特許文献4、特許文献5等)もある。
【0004】
これらの方法は技術的にも経済的にも有利であるが、溶融状態にあるジカルボン酸にジアミンを直接添加することに伴う問題点として、溶融状態にあるジカルボン酸には昇華性があり、重合装置の天井部にジカルボン酸の昇華物が付着する。また重合装置上部に接続された各種配管の内壁、例えば添加剤の投入口、ジアミンの添加口、および蒸気管の内壁、および分縮器の内部にも、ジカルボン酸の昇華物が付着する。付着したジカルボン酸の昇華物は、重合反応過程においてはその反応で発生する縮合水の蒸気によってその殆どが溶解洗浄される。ジカルボン酸の昇華物は、溶融ジカルボン酸が重合装置に単独で存在するときに発生するだけでなく、ジカルボン酸の固定化が不十分なジアミンの添加工程で発生する。このため、蒸気管および分縮器には、重合反応によって発生する縮合水の蒸気によって同伴されたジカルボン酸の昇華物のため、重合装置の部位の中で最も多くジカルボン酸の昇華物が付着する。また同伴されるジアミンと反応しナイロン塩もしくはオリゴマーを生成し、縮合水で溶解しないものが、バッチ数を重ねる毎に付着堆積し熱履歴を受ける。
【0005】
この蒸気管および分縮器への堆積に対しては、重縮合反応により発生する縮合水を主体とする、反応槽で発生する蒸気を反応槽から分縮器に導く蒸気管の内部温度、および分縮器の内部温度を制御して、水蒸気の一部を凝縮させ、昇華付着したジカルボン酸および/あるいは付着したナイロン塩、オリゴマーを洗い流し、反応槽に凝縮水と共に循環させる法(特許文献6)がある。この方法は、蒸気管および分縮器の堆積を洗い流すには、有効であったが、還流管は縮合水で満液とするため、蒸気管に比べ細く、分縮器内の堆積物を洗い流す際に、未溶解の堆積物が、還流管に付着、堆積する。これらの所望のジアミンとジカルボン酸のモルバランスと異なるナイロン塩、オリゴマー或いはそれらの溶液が還流管に滞留する事により、反応槽内のモル比率と所望のモル比の間に差異が生まれることとなる。また、堆積を続けることにより、還流管が閉塞し、連続した回分式生産が出来なくなる。また、還流管内に堆積したこれら固形物が、反応中に欠落しポリアミドに混入すると、フィルム、ボトル、モノフィラメント等の最終製品に成形したとき、フィッシュアイ、ゲル等の外観不良を招く危険性がある。
【特許文献1】特公昭33−15700号公報
【特許文献2】特公昭43−22874号公報
【特許文献3】特開昭48−12390号公報
【特許文献4】特開昭57−200420号公報
【特許文献5】特開昭58−111829号公報
【特許文献6】特開2002−60486号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、分縮器を備えた回分式反応槽を用い溶融状態にあるジカルボン酸にジアミンを添加し、直接重縮合させてなるポリアミド樹脂の回分式製造方法において、閉塞トラブルの無い安定した回分式製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、かかる課題を解決するために鋭意検討した結果、蒸気管と還流管を共用する配管を設置し、蒸気と凝縮液を同一配管に流通させることにより、該配管壁にナイロン塩/オリゴマーの堆積を防止しつつ、分縮器に堆積したナイロン塩/オリゴマーによる配管の閉塞も防止することができ、分縮器と反応槽間の閉塞トラブルが解消され、更に固形物の混入を防止し、ポリアミド樹脂の安定した連続の回分式生産が可能となることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち本発明は、溶融状態にあるジカルボン酸にジアミンを連続的もしくは間欠的に添加し、ジアミンとジカルボン酸を直接重縮合してポリアミド樹脂を製造する装置であって、回分式反応槽、分縮器、および重縮合反応によって発生する縮合水を主体とする蒸気を反応槽から分縮器に導く機能と分縮器内で凝縮した還流液を反応槽に戻す機能を併せ持つ、反応槽と分縮器を接続する配管を有することを特徴とするポリアミド樹脂の製造装置に関する発明である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るポリアミド樹脂の製造方法によって以下の効果が得られる。
(イ)反応槽と分縮機をつなぐ配管の閉塞トラブルが解消され、安定した連続の回分式生産が可能となる。
(ロ)単独の還流管を有せず、固形物が堆積しないため、固形物の反応系内への混入が無くなり、フィッシュアイ、ゲル等の外観不良の少ない成型品を与える高品位なポリアミド樹脂が得られる。
(ハ)単独の還流管を有せず、固形物が堆積しないため、仕込みモル比が精度良く再現され、高度なモル比制御が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明で用いるジアミンとしては、キシリレンジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、パラフェニレンジアミン等が挙げられる。キシリレンジアミンとしてはメタ、パラおよびオルソキシリレンジアミンが例示でき、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンとしては1,2−、1,3−、1,4―ビス(アミノメチル)シクロヘキサンが例示できる。これらのジアミンは単独でも2種以上混合しても使用可能である。ここで、ジアミンがキシリレンジアミンおよび/またはビス(アミノメチル)シクロヘキサンを含むジアミンであることが好ましく、ジアミンの80モル%以上がキシリレンジアミンおよび/またはビス(アミノメチル)シクロヘキサンであることが好ましい。また、キシリレンジアミンおよび/またはビス(アミノメチル)シクロヘキサンの50モル%以上がメタキシリレンジアミンおよび/または1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンであることが好ましく、より好ましくは70モル%以上である。
【0011】
ジカルボン酸としては、アジピン酸、琥珀酸、セバシン酸、ドデカン二酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。これらのジカルボン酸は単独でも2種以上混合しても使用可能である。得られるポリアミドの実用的な物性から考えて、特にジカルボン酸の50モル%以上がアジピン酸であることが好ましい。また、ジアミンおよびジカルボン酸以外のポリアミド構成成分は、カプロラクタム、バレロラクタム、ラウロラクタム、ウンデカラクタム等のラクタム、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸を例示することができ、ジカルボン酸と共に、もしくは添加されるジアミンとともに反応槽に供給される。
【0012】
本発明では所望のモルバランスを有するポリアミド樹脂(ジアミン過剰、ジカルボン酸過剰および等モル)を得るため、仕込みのモルバランスは任意に選択される。仕込みのモルバランスの調整方法は、例えば溶融状態にあるジカルボン酸を溶融槽ごと質量計量器で計量し、反応槽に供給した後、ジアミン貯槽を質量計量器で計量しつつ、ジアミンを反応系に供給する方法が例示できる。本発明においてジアミンおよびジカルボン酸の質量を計量する場合、ロードセル、天秤等の質量計量器が好適に利用可能である。
【0013】
ジカルボン酸の溶融工程は、酸化着色を避ける目的から窒素等の不活性ガス雰囲気で行われることが望ましい。ジカルボン酸の溶融は反応槽もしくは専用の溶融槽で実施可能であるが、反応槽の利用効率を高める目的から、専用の溶融槽の利用が望ましい。
【0014】
溶融状態にあるジカルボン酸にジアミンを添加する際、実質的にアミド化反応が進行する温度である160℃以上の温度に溶融ジカルボン酸が昇温されることが望ましく、かつ中間体として生成するオリゴマーおよび/または低分子量ポリアミドが溶融状態となって反応系全体が均一な流動状態を保持しうる温度に設定されていることが望ましい。具体的なジアミンの添加操作は、反応槽中で溶融状態にあるジカルボン酸を攪拌し、ジアミンを連続的にもしくは間欠的に添加し、添加の間に反応混合物の温度を逐次昇温させ、所定の温度に保持することによって行われる。昇温速度はアミド化反応熱、縮合水の蒸発潜熱、供給熱等に依存するため、ジアミンの添加速度が適時調整され、添加終了時点で反応混合物の温度はポリアミドの融点以上、(融点+35℃)未満、望ましくは(融点+5℃)以上、(融点+25℃)未満、更に望ましくは(融点+10℃)以上、(融点+15℃)未満に調整される。
【0015】
ジアミンの添加中の圧力は、発生する縮合水を効率よく系外に留去し、重縮合反応を進めるために、常圧が望ましいが、不活性ガスや水蒸気などを用いて加圧した条件下で行うことも可能である。その場合は、縮合水の除去効率を考えると、圧力は0.9MPaG以下より選択されるが、好ましくは、0.7MPaG以下、更に好ましくは、0.5MPaG以下である。
【0016】
本発明の直接重合方法においても、公知のナイロン塩水溶液を原料とする加圧法の場合と同様に、ジアミンの反応系外への留出は避けがたく、反応槽は分縮器を備えていることが必要である。また、ジアミンの添加前から添加初期において反応槽からジカルボン酸の昇華物が発生する。分縮器を備えることにより、ジアミンおよびジカルボン酸の系外への留出を効果的に防止することができる。反応の進行と共に生成する縮合水は、縮合水と共に反応槽から留出するジアミンおよび昇華により留出するジカルボン酸と、分縮器で分離され全縮器で凝縮し反応系外に除かれる。ジアミンは分縮器で凝縮し、ジカルボン酸は凝縮したジアミンに洗い流され、反応槽に再度戻される。
分縮器の内部温度(蒸気側内表面の温度)は160℃以下であって、分縮器内部圧力の飽和水蒸気温度−10℃〜該飽和水蒸気温度+10℃に制御されることが好ましく、より好ましくは150℃以下であって、該飽和水蒸気温度−5℃〜該飽和水蒸気温度である。
【0017】
本発明は、蒸気管の機能、即ち重縮合反応によって発生する縮合水を主体とする蒸気を反応槽から分縮器に導く機能と、還流管の機能、即ち分縮器内で凝縮した還流液を反応槽に戻す機能を併せ持つ、反応槽と分縮器を接続する配管(以後「共用管」と称す)を有することに特徴がある。
共用管は、蒸気管として蒸気線速が0.2〜10m/秒となるような蒸気量に即した充分な配管径とすることが好ましい。この共用管に還流液を流すことにより、共用管内表面にナイロン塩/オリゴマーが堆積することを防止しつつ、分縮器に堆積したナイロン塩/オリゴマーによる閉塞をも防止することができる。共用管内表面はJIS B 0601に規定された十点平均粗さが12.5μm以下であることが好ましく、6.3μm以下であることがより好ましい。また、反応槽の分縮器側開口部付近の内表面も、該十点平均粗さが12.5μm以下であることが好ましく、6.3μm以下であることがより好ましい。
【0018】
共用管の上部、即ち分縮器側開口部付近には、分縮器で凝縮した還流液を効率よく、共用管の内表面に誘導するために、分散装置、たとえば、中心部から外周縁に向かって斜め下方に傾斜している陣笠形状の分散板等を設置してもよく、その分散装置は、分縮器内に取り付けられてもよい。また、その表面はJIS B 0601に規定された十点平均粗さが12.5μm以下であることが好ましく、6.3μm以下であることがより好ましい。
【0019】
共用管の外周部に温度調節手段を備えることもできる。例えば、ジアミンとしてメタキシリレンジアミン、ジカルボン酸としてアジピン酸を使用する場合、共用管の内表面温度は、160℃以下の温度であって、好ましくは(共用管内部の圧力における飽和水蒸気温度−60℃)以上、(該飽和水蒸気温度+30℃)以下に調節、更に好ましくは、(該飽和水蒸気温度−10℃)以上、(該飽和水蒸気温度+10℃)以下に調節される。共用管の内表面温度は、高すぎると還流液中の水分の蒸発によりナイロン塩が析出したり、熱履歴を受けアミド化反応が進行しオリゴマーとなり溶解度が急激に低下することにより生じる固形物が堆積する原因となる。また、共用管の内表面温度が低すぎるとき、重合反応によって発生する縮合水の凝縮が顕著となり、共用管内部で還流状態となり、縮合水を効率的に反応系外に排出することが困難となる。
【0020】
ジカルボン酸の昇華物は、ジカルボン酸が溶融状態で反応槽に単独で存在するときに発生するばかりか、ジアミンの添加工程でも発生し、特にジカルボン酸の固定化が不十分な添加初期に多くの発生が認められる。分縮器の内部温度を制御することによって、昇華付着したジカルボン酸および/あるいは付着したナイロン塩、オリゴマーを洗い流し、反応槽に凝縮水と共に循環することができる。本発明では、上記の分縮器内の堆積物を速やかに反応槽に戻すため、共用管は分縮器から反応槽に向かって下方に傾斜しており、水平部分の無い構造であることが望ましい。水平部分があると、縮合水の凝縮が充分であったとしても、分縮器内の堆積物を完全には反応槽に戻すことができない。このため、縮合水に同伴されるジアミンと反応し、ナイロン塩を生成する。ナイロン塩の水に対する溶解度が低いとき、ナイロン塩は溶解せず、バッチ数を重ねる毎にアミド化反応が進行しオリゴマーとなり、さらに水に対する溶解度は低下する。その結果、共用管に固形物が堆積していき、最終的に共用管は閉塞する。
【実施例】
【0021】
以下に実施例および比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例および比較例によって何ら限定されるものではない。なお、各分析方法は以下の通りである。
【0022】
(1)アミノ末端基濃度
ポリアミド樹脂0.3〜0.5gを精秤し、フェノール/エタノール混合溶液(混合容積比4:1)30mlに室温で撹拌溶解した。完全に溶解したあと撹拌しつつ0.01モル/l塩酸水溶液で中和滴定して求めた。
(2)カルボキシル末端基濃度
ポリアミド樹脂0.3〜0.5gを精秤し、ベンジルアルコール30mlに窒素気流下、160〜180℃で撹拌溶解した。完全に溶解したあと、窒素気流下で80℃まで冷却し、撹拌しつつメタノールを10ml加え、0.01モル/l水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定して求めた。
(3)数平均分子量
アミノ末端基およびカルボキシル末端基の滴定定量値から次式により求めた。
数平均分子量=2/([NH]+[COOH])
但し、[NH]はアミノ末端基濃度、[COOH]はカルボキシル末端基濃度を表し、単位はモル/gである。
【0023】
<実施例1>
外筒が呼び径125A、内筒が呼び径40Aの二重管構造を有し、外側に温度調整されたオイルが流通する水平部分の無い共用管、温度調整されたオイルが流通する分縮器、全縮器、攪拌機、窒素ガス導入管およびジアミンの滴下口を備えたジャケット付き50リットルのステンレス製の反応槽にアジピン酸(純度:99.85質量%、水分:0.15質量%)15kgを仕込み、窒素置換し更に少量の窒素を流通させながら250℃の熱媒をジャケットに流し、攪拌しつつ190℃に昇温した。次いで300℃の熱媒をジャケットに流し、溶融したアジピン酸を攪拌しながら、メタキシリレンジアミン(純度:99.93質量%)13.902kgを常圧下に連続的に2時間かけて滴下した。仕込みモル比(ジアミン/ジカルボン酸)は0.9953である。この間内温を250℃まで連続的に昇温した。メタキシリレンジアミンの滴下とともに留出する水は分縮器および全縮器を通して反応系外に除いた。
【0024】
共用管および分縮器に温度調整されたオイルを流し、共用管の内部温度を100℃〜140℃に、分縮器の内部温度を100〜104℃に制御した。メタキシリレンジアミンの滴下終了後、常圧下に攪拌しながら260℃まで昇温し、30分保持した。その後5分かけて80kPa−absまで圧力を低下させ、80kPa−absで20分間保持した。その後常圧とし反応槽下部のノズルからポリアミド樹脂を取り出し、水冷固化した。反応槽が100℃以下まで冷えたところで、同様の操作による次の反応を開始した。この様に連続して合計10バッチ反応を繰り返し行い、得られたポリアミド樹脂の末端基濃度の定量を行った。結果、各バッチのポリアミド樹脂のモル比は、0.994〜0.995であり、数平均分子量は15,000〜15,500と安定していた。また同様に30バッチ連続して反応を行った後、共用管内部の状況を観察したところ、配管内の固形物の付着は一切認められなかった。
【0025】
<実施例2>
外筒が呼び径125A、内筒が呼び径40Aの二重管構造を有し、外側に温度調整されたオイルが流通する水平部分の無い共用管、温度調整されたオイルが流通する分縮器、全縮器、攪拌機、窒素ガス導入管およびジアミンの滴下口を備えたジャケット付き50リットルのステンレス製の反応槽(耐圧1.0MPaG)にアジピン酸(純度:99.85質量%、水分:0.15質量%)15kgを仕込み、窒素置換し、窒素にて0.4MPaGに加圧後、250℃の熱媒をジャケットに流し、攪拌しつつ190℃に昇温した。次いで300℃の熱媒をジャケットに流し、溶融したアジピン酸を攪拌しながら、メタキシリレンジアミン(純度:99.93質量%)15.902kgを0.4MPaG加圧下に連続的に2時間かけて滴下した。仕込みモル比(ジアミン/ジカルボン酸)は0.9953である。この間内温を250℃まで連続的に昇温した。メタキシリレンジアミンの滴下とともに留出する水は分縮器および全縮器を通して反応系外に除いた。
【0026】
共有管および分縮器に温度調整されたオイルを流し、共用管の内部温度を130℃〜170℃に、分縮器の内部温度を140〜150℃に制御した。メタキシリレンジアミンの滴下終了後、0.4MPaG加圧で攪拌しながら260℃まで昇温し、5分間保持した。その後、50分かけて80kPa−absまで圧力を低下させ、80kPa−absで20分間保持した。その後常圧とし反応槽下部のノズルからポリアミド樹脂を取り出し、水冷固化した。反応槽が100℃以下まで冷えたところで、同様の操作による次の反応を開始した。この様に連続して合計10バッチ連続して反応を繰り返し行い、得られたポリアミド樹脂の末端基濃度の定量を行った。結果、各バッチのポリアミド樹脂のモル比は0.994〜0.995であり、数平均分子量は15,500〜16,000と安定していた。また同様に30バッチ連続して反応を行った後、共用管内部の状況を観察したところ、固形物は一切認められなかった。
【0027】
<比較例1>
前記共用管の代わりに、外筒が呼び径125A、内筒が呼び径40Aの二重管構造を有し、外側に温度調整されたオイルが流通する蒸気管と呼び径20Aの還流管を用いた以外は、実施例1と同様にして反応を行った。30バッチ目にモル比が、0.984、数平均分子量は10,000であった。還流管内部の状況を観察したところ、配管内の固形物の付着がおこり、配管が固形物により、閉塞しており、上流部に未反応のメタキシレンジアミンを含有する凝縮液の溜りが見られた。還流管内部より採取された固形物を90℃の温水で溶解させたところ、15〜35質量%が不溶であった。この固形物はアジピン酸,ナイロン塩およびオリゴマーの混合物と考えられ、一部重合が進み温水に不溶となったと考えられる。
【0028】
<比較例2>
前記共用管の代わりに、外筒が呼び径125A、内筒が呼び径40Aの二重管構造を有し、外側に温度調整されたオイルが流通する蒸気管と呼び径20Aの還流管を用いた以外は、実施例2と同様にして反応を行った。30バッチ連続して反応を行ったところ、還流管上流部に未反応のメタキシレンジアミンを含有する凝縮液の溜りは見られなかったものの、還流管内の固形物の付着がおこり、配管が固形物により、還流管断面積の2/3が閉塞していた。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明のポリアミド樹脂の製造装置は、閉塞のない安定した回分製造装置として好適に利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融状態にあるジカルボン酸にジアミンを連続的もしくは間欠的に添加し、ジアミンとジカルボン酸を直接重縮合してポリアミド樹脂を製造する装置であって、回分式反応槽、分縮器、および重縮合反応によって発生する縮合水を主体とする蒸気を反応槽から分縮器に導く機能と分縮器内で凝縮した還流液を反応槽に戻す機能を併せ持つ、反応槽と分縮器を接続する配管を有することを特徴とするポリアミド樹脂の製造装置。
【請求項2】
前記配管の分縮器側開口部付近に、分縮器内で凝縮した還流液を誘導するための分散装置が設けられている請求項1に記載のポリアミド樹脂の製造装置。
【請求項3】
前記分散装置表面の、JIS B 0601に規定された十点平均粗さが12.5μm以下である請求項2に記載のポリアミド樹脂の製造装置。
【請求項4】
前記配管内表面の、JIS B 0601に規定された十点平均粗さが12.5μm以下である請求項1に記載のポリアミド樹脂の製造装置。
【請求項5】
前記反応槽の分縮器側開口部付近の内表面の、JIS B 0601に規定された十点平均粗さが12.5μm以下である請求項1に記載のポリアミド樹脂の製造装置。
【請求項6】
前記配管の外周部に温度調節手段が備えられている請求項1に記載のポリアミド樹脂の製造装置。
【請求項7】
前記温度調節手段によって、前記配管内表面温度を、該配管内部の圧力における飽和水蒸気温度−60℃以上、該飽和水蒸気温度+30℃以下の温度に調節できる請求項6に記載のポリアミド樹脂の製造装置。
【請求項8】
ジアミンがキシリレンジアミンおよび/またはビス(アミノメチル)シクロヘキサンを含む請求項1に記載のポリアミド樹脂の製造装置。
【請求項9】
ジアミンの80モル%以上がキシリレンジアミンおよび/またはビス(アミノメチル)シクロヘキサンである請求項1に記載のポリアミド樹脂の製造装置。
【請求項10】
キシリレンジアミンおよび/またはビス(アミノメチル)シクロヘキサンの50モル%以上がメタキシリレンジアミンおよび/または1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンである請求項9に記載のポリアミド樹脂の製造装置。
【請求項11】
ジカルボン酸の50モル%以上がアジピン酸である請求項1に記載のポリアミド樹脂の製造装置。

【公開番号】特開2009−286896(P2009−286896A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−140771(P2008−140771)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】