説明

ポリアミド組成物を含む電気部品

【課題】耐熱性、流動性、靭性、剛性及び低吸水性に優れ、さらに難燃性にも優れたポリアミド組成物を含む電気部品を提供する。
【解決手段】(A)(a)少なくとも50モル%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含むジカルボン酸と、(b)1,9−ノナンジアミンを50モル%を超えて含むジアミンと、を重合させたポリアミド、及び(B)難燃剤を含有するポリアミド組成物を含む電気部品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気部品に関する。さらに詳しくいえば、本発明は、特に複雑な形状や薄肉部を要する、電気部品又は電子部品を形成するのに適したポリアミド組成物を含む電気部品又は電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド6及びポリアミド66(以下、それぞれ、「PA6」及び「PA66」と略称する場合がある。)などに代表されるポリアミドは、成形加工性、機械的物性又は耐薬品性に優れていることから、ポリアミドは、自動車用、電気及び電子用、産業資材用、工業材料用、日用及び家庭品用などの各種部品材料として広く用いられている。
【0003】
電気・電子分野では、UL−94規格に基づく高い難燃性が要求されるので、種々の難燃剤による難燃化の方法が多数提案され、実用化されている。しかしながら、これらの脂肪族ポリアミドは吸水性が大きく、成形品の寸法変化や機械的物性の低下などが問題となっている。さらに近年では、難燃化が必要とされ、さらに、表面実装技術(SMT)の発展に伴うリフロー半田耐熱性(使用時のピーク温度は260℃以上、数分間)を必要とする電気・電子分野、あるいは年々耐熱性への要求が高まる自動車のエンジンルーム部品などにおいては、従来のポリアミド材料に代表されるコネクタでは、実装時の膨れ等の発生といった問題が顕在化してきており、PA6及びPA66などのポリアミドでは、融点が低く、耐熱性の点でこれらの要求を満たすことができない。
【0004】
ポリアミド樹脂は本来自己消化性であるが、UL−94で規定されているV−0といった高い難燃性が要求される表面実装部品には難燃剤を配合する必要がある。
近年、電気・電子部品などの表面実装部品は薄肉化と狭ピッチ化が進んでいるため、この用途に用いられる樹脂は、高い耐熱性と高い流動性のみならず、高い靭性が要求されるようになっている。これは、成形された電気・電子部品に、例えば、コネクタに金属端子を圧入する際、クラックなどの発生を防ぐために高い靭性が必要なためである。このためコネクタのような表面実装部用途には、難燃性に優れ、流動性(特に、薄肉流動性)が良く、かつ靭性が高いポリアミド組成物の出現が望まれている。
【0005】
特許文献1には、ジカルボン酸成分の60〜100モル%がテレフタル酸であるジカルボン酸と、ジアミン成分の60〜100モル%が1,9−ノナンジアミンであるジアミン成分とからなり、濃硫酸中30℃で測定した[η]が0.4〜3.0dL/gであるポリアミドからなる電子部品用ベース樹脂組成物が開示されている。
また、特許文献2には、難燃性に優れると共に、耐熱性、低吸水性、耐衝撃性などのいずれの性能にも優れる、難燃性ポリアミド組成物として、ジカルボン酸成分の60〜100モル%がテレフタル酸であるジカルボン酸成分と、ジアミン成分の60〜100モル%が1,9−ノナンジアミンであるジアミン成分とからなるポリアミド100重量部;有機ハロゲン化合物1〜100重量部;及び無機化合物0.5〜50重量部からなる難燃性ポリアミド組成物が開示されている。
【0006】
さらに、特許文献3には、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含むジカルボン酸単位と2−メチル−1,8−オクタンジアミンを含むジアミン単位からなるポリアミドが耐光性、靭性、成形性、軽量性、及び耐熱性などに優れることが開示されている。また、該ポリアミドの製造方法として、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,9−ノナンジアミンを230℃以下で反応してプレポリマーを作り、そのプレポリマーを230℃で固相重合し融点311℃のポリアミドを製造することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−228772号公報
【特許文献2】特開平7−228775号公報
【特許文献3】特許第3481730号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されているようなポリアミド組成物は、半田耐熱性に優れているとはいえ、電気及び電子部品において、剛性が低く、上記ポリアミド組成物に用いられるポリアミドには、流動性の面では不十分であり改良が求められている。
【0009】
特許文献2に開示されている難燃性ポリアミド組成物は、難燃性に優れているが、電気及び電子部品においては、靭性が低く、また、上記ポリアミド組成物に用いられるポリアミドには、流動性の面で十分でないなどの問題がある。
特許文献3に開示されたポリアミド組成物も、靭性、剛性、及び流動性の面で改善が不十分であり、電気及び電子部品においては、半田耐熱性、難燃性、流動性及び靭性に関し、いっそう高いレベルでの改良が求められている。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、耐熱性、流動性、靭性、剛性及び低吸水性に優れ、さらに難燃性にも優れたポリアミド組成物を含む電気部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のポリアミドと、難燃剤とを含有するポリアミド組成物を含む電気部品が、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、以下の電気部品を提供する。
[1]
(A)(a)少なくとも50モル%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含むジカルボン酸と(b)1,9−ノナンジアミンを50モル%を超えて含むジアミンとを重合させたポリアミドと、(B)難燃剤と、を含有するポリアミド組成物を含む、電気部品。
[2]
前記(A)のポリアミド100質量部に対して、前記(B)難燃剤20〜90質量部及び(C)難燃助剤0〜30質量部を含有するポリアミド組成物を含む、[1]に記載の電気部品。
[3]
前記(b)のジアミンが、50モル%未満の2−メチル−1,8−オクタンジアミンを含む、[1]又は[2]に記載の電気部品。
[4]
前記(B)難燃剤が、ハロゲン系及び/又はリン系難燃剤である、[1]〜[3]のいずれかに記載の電気部品。
[5]
前記(B)難燃剤が、臭素化ポリスチレン、ホスフィン酸塩及びジホスフィン酸塩からなる群より選択される一以上である、[1]〜[4]のいずれかに記載の電気部品。
[6]
前記(C)難燃助剤が、アンチモン系、ホウ酸亜鉛及び水酸化マグネシウムからなる群より選択される一以上である、[2]〜[5]のいずれかに記載の電気部品。
[7]
表面実装用電気部品である、[1]〜[6]のいずれかに記載の電気部品。
[8]
厚さ0.4mm以下の薄肉部を含む、[7]に記載の電気部品。
[9]
前記(A)のポリアミドの分子鎖の末端封止率が、10%未満である、[1]〜[8]のいずれかに記載の電気部品。
[10]
前記(A)のポリアミドにおけるトランス異性体比率が、51〜85モル%である、[1]〜[9]のいずれかに記載の電気部品。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耐熱性、流動性、靭性、剛性及び低吸水性に優れ、さらに難燃性にも優れたポリアミド組成物を含む電気部品が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施の形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0015】
本実施の形態の電気部品は、
(A)ポリアミドと、
(B)難燃剤と、を含有するポリアミド組成物を含む。
【0016】
また、本実施の形態の電気部品は、(A)のポリアミド100質量部に対して、(B)難燃剤20〜90質量部、及び(C)難燃助剤0〜30質量部を含有するポリアミド組成物を含むことが好ましい。
ここで、本発明における「電気部品」とは、電気部品又は電子部品を意味し、以下では、電気部品を「電気部品又は電子部品」と称することもある。また、本発明における上記の電気部品、すなわち電気部品又は電子部品は成形品であるため、以下では「電気部品」や「電気部品又は電子部品」を単に成形品をいうこともある。
【0017】
[(A)ポリアミド]
本実施の形態に用いられる(A)ポリアミドは、(a)少なくとも50モル%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含むジカルボン酸と、(b)1,9−ノナンジアミンを50モル%を超えて含むジアミンと、を重合させたポリアミドである。
本実施の形態において、ポリアミドとは主鎖中にアミド(−NHCO−)結合を有する重合体を意味する。
【0018】
<(a)ジカルボン酸>
本実施の形態において用いられる(a)ジカルボン酸は、少なくとも50モル%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含む。
(a)ジカルボン酸が1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を50モル%以上含むことにより、得られる電気部品又は電子部品の耐熱性、低吸水性、靭性、流動性及び剛性などを同時に満足することのできるポリアミドとすることができる。
【0019】
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸は、シス異性体の方がトランス異性体に比べて、ジアミンとの当量塩の水溶性が高いことから、トランス異性体/シス異性体の比がモル比として、好ましくは50/50〜0/100であり、より好ましくは40/60〜10/90であり、さらに好ましくは35/65〜15/85である。
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸モノマーのトランス異性体/シス異性体のモル比は、液体クロマトグラフィー(HPLC)やNMRにより求めることができる。ここで、本明細書におけるトランス異性体/シス異性体の比(モル比)は、1H−NMRにより求めることとする。
【0020】
本実施の形態において用いられる(a)ジカルボン酸の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。なお、本明細書における「脂環族ジカルボン酸」は、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含まない。
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、靭性及び流動性の観点で、脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
【0021】
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、2,2−ジメチルコハク酸、2,3−ジメチルグルタル酸、2,2−ジエチルコハク酸、2,3−ジエチルグルタル酸、グルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、エイコサン二酸、及びジグリコール酸などの炭素数3〜20の直鎖状又は分岐鎖状飽和脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。
【0022】
脂肪族ジカルボン酸としては、炭素数6以上の脂肪族ジカルボン酸であってもよく、炭素数が10以上の脂肪族カルボン酸では、低吸水性の特徴を付与することができるという観点で好適である。
炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、及びエイコサン二酸などが挙げられ、入手のしやすさという点で、セバシン酸及びドデカン二酸を用いることができる。
【0023】
脂環族ジカルボン酸(脂環式ジカルボン酸とも記される。)としては、例えば、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸及び1,3−シクロペンタンジカルボン酸などの、脂環構造の炭素数が3〜10、又は炭素数が5〜10である脂環族ジカルボン酸が挙げられる。
脂環族ジカルボン酸は、無置換でも置換基を有していてもよい。
置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、及びtert−ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基などが挙げられる。
【0024】
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、及びジグリコール酸などの無置換又は種々の置換基で置換された炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。
種々の置換基としては、例えば、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアリールアルキル基、クロロ基及びブロモ基などのハロゲン基、炭素数1〜6のシリル基、及びスルホン酸基、並びにナトリウム塩などのそれらの塩などが挙げられる。
【0025】
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
(a)ジカルボン酸成分として、さらに、本実施の形態の目的を損なわない範囲で、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸成分を含んでもよい。
多価カルボン酸としては、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
(a)ジカルボン酸中の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の割合(モル%)は50〜100モル%であり、60〜100モル%であることが好ましい。1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の割合が、少なくとも50モル%であることにより、流動性、靭性、低吸水性に優れるポリアミドとすることができる。
(a)ジカルボン酸中の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸以外のジカルボン酸の割合(モル%)は、0〜50モル%であり、0〜40モル%であることが好ましい。
【0028】
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が50〜99.9モル%であり、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸以外のジカルボン酸が0.1〜50モル%であってもよく、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が60〜90モル%であり、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸以外のジカルボン酸が10〜40モル%であってもよい。1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が70〜85モル%であり、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸以外のジカルボン酸が15〜30モル%であってもよい。
【0029】
(a)ジカルボン酸成分として、炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸を含む場合には、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が50〜99.9モル%であり、炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸が0.1〜50モル%であってもよく、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が60〜90モル%であり、炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸が10〜40モル%であってもよく、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が70〜85モル%であり、炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸が15〜30モル%であってもよい。
【0030】
(a)ジカルボン酸中の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の割合は、少なくとも50モル%であることにより、耐熱性、流動性、靭性、剛性、及び低吸水性などに優れるポリアミドとすることができる。
【0031】
<(b)ジアミン>
本実施の形態において用いられる(b)ジアミンは、(b−1)1,9−ノナンジアミンを50モル%を超えて含む。
(b)ジアミンが(b−1)1,9−ノナンジアミンを50モル%を超えて含むことにより、得られる電気部品又は電子部品の耐熱性、低吸水性、及び耐薬品性などを同時に満足することのできるポリアミドとすることができる。
【0032】
また、(b)ジアミンは、耐熱性、流動性、靭性及び耐薬品性の観点から、50モル%未満の(b−2)2−メチル−1,8−オクタンジアミンを含有することが好ましい。
【0033】
(b)ジアミン中における(b−1)1,9−ノナンジアミンと(b−2)2−メチル−1,8−オクタンジアミンのモル比(1,9−ノナンジアミン/2−メチル−1,8−オクタンジアミンとして)は、好ましくは100/0〜20/80であり、より好ましくは100/0〜60/40であり、さらに好ましくは100/0〜70/30である。
これら(b−1)1,9−ノナンジアミンと(b−2)2−メチル−1,8−オクタンジアミンは、特開平5−17413号公報及び特開昭58−118535号公報などの従来公知の方法により製造することができるが、例えば、特開昭58−118535号公報に記載された方法を例示すると、7−オクテナールのヒドロホルミル反応で生じるノナンジアールと2−メチルオクタンジアールとの混合物を、従来公知の方法に従い還元アミノ化し、1,9−ノナンジアミンと2−メチルオクタンジアミンの混合物を生成した後、精製することにより得られる。
【0034】
(b)ジアミンは、(b−1)1,9−ノナンジアミン及び(b−2)2−メチル−1,8−オクタンジアミンの残部として、(b−1)1,9−ノナンジアミン及び(b−2)2−メチル−1,8−オクタンジアミン以外の他のジアミンを含んでもよい。
かかる他のジアミンとして、例えば、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、及び1,12−ドデカンジアミンなどの直鎖状脂肪族ジアミン;1,2−プロパンジアミン、1−ブチル−1,2−エタンジアミン、1,1−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1−エチル−1,4−ブタンジアミン、1,2−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1,3−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1,4−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、2,3−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,5−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、3,3−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,2−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4−ジエチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,2−ジメチル−1,7−ヘプタンジアミン、2,3−ジメチル−1,7−ヘプタンジアミン、2,4−ジメチル−1,7−ヘプタンジアミン、2,5−ジメチル−1,7−ヘプタンジアミン、3−メチル−1,8−オクタンジアミン、4−メチル−1,8−オクタンジアミン、1,3−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、1,4−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、2,4−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、3,4−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、4,5−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、2,2−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、3,3−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、4,4−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、及び5−メチル−1,9−ノナンジアミンなどの分岐鎖状脂肪族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルナンジメチルアミン、及びトリシクロデカンジメチルアミンなどの脂環族ジアミン(脂環式ジアミン);p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどの芳香族ジアミンなどを含んでいてもよい。
中でも、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンが好ましい。
1,9−ノナンジアミン及び2−メチル−1,8−オクタンジアミン以外のジアミンとしては、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
(b)ジアミン中の(b−1)1,9−ノナンジアミンと(b−2)2−メチル−1,8−オクタンジアミンの割合(モル%)は、50モル%を超えて100モル%以下であり、好ましくは75〜100モル%であり、より好ましくは90〜100モル%である。1,9−ノナンジアミン及び2−メチル−1,8−オクタンジアミンの割合が、50モル%を超えることにより、耐熱性、低吸水性、耐薬品性に優れるポリアミドとすることができる。
(b)ジアミン中の(b−1)1,9−ノナンジアミン及び(b−2)2−メチル−1,8−オクタンジアミン以外のジアミンの割合(モル%)は、50モル%未満であり、好ましくは0〜25モル%であり、より好ましくは0〜10モル%である。
【0036】
(b)ジアミン成分として、さらに、本実施の形態の目的を損なわない範囲で、ビスヘキサメチレントリアミンなどの3価以上の多価アミンを含んでもよい。
多価アミンとしては、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
(a)ジカルボン酸の添加量は、(b)ジアミンの添加量と同モル量付近であることが好ましい。重合反応中の(b)ジアミンの反応系外への逃散分もモル比においては考慮して、(a)ジカルボン酸と(b)ジアミンのモル比は、具体的には、(a)ジカルボン酸全体のモル量1に対して、(b)ジアミン全体のモル量は、0.90〜1.20であることが好ましく、より好ましくは0.95〜1.10であり、さらに好ましくは0.98〜1.05である。
【0038】
<末端封止剤>
(a)ジカルボン酸と(b)ジアミンからポリアミドを重合する際に、分子量調節のために公知の末端封止剤をさらに添加することができる。本実施の形態に用いられる(A)ポリアミドは、その分子鎖の末端基の0〜90%が末端封止剤により封止されていてもよい。分子鎖の末端基が末端封止剤により封止されている割合(末端封止率)としては、好ましくは0〜50%であり、より好ましくは10%未満である。末端封止率が0〜90%のポリアミドを用いることがポリアミドの分子量を大きくすることに有利である。また、末端封止率が好ましくは0〜50%、より好ましくは10%未満のポリアミドを用いると、強化材との密着性が高くなり、靭性及び剛性がより優れたものとなる。
本実施の形態において、末端封止率は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0039】
末端封止剤として使用できるモノカルボン酸としては、アミノ基との反応性を有するものであれば特に制限されることはないが、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、及びイソブチル酸などの脂肪族モノカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸などの脂環族モノカルボン酸、並びに安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、及びフェニル酢酸などの芳香族モノカルボン酸などが挙げられる。
モノカルボン酸としては、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
末端封止剤として使用できるモノアミンとしては、カルボキシル基との反応性を有するものであれば特に制限されることはないが、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、及びジブチルアミンなどの脂肪族モノアミン、シクロヘキシルアミン及びジシクロヘキシルアミンなどの脂環族モノアミン、並びにアニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、及びナフチルアミンなどの芳香族モノアミンなどが挙げられる。
モノアミンとしては、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
本実施の形態におけるポリアミドの成分である、(a)ジカルボン酸、(b)ジアミンの組み合わせは、(a)ジカルボン酸の50〜100モル%が1,4−シクロヘキサンジカルボン酸であり、(b)ジアミンの50モル%を超えて100モル%以下が1,9−ノナンジアミンのみ、又は1,9−ノナンジアミン及び2−メチル−1,8−オクタンジアミンであり、これらの組み合わせのポリアミドは特に、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性及び剛性に優れる高融点ポリアミドである。
【0042】
本実施の形態に用いられる(A)ポリアミドにおいて、ポリアミド中の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸構造は、トランス異性体及びシス異性体の幾何異性体として存在する。
(A)ポリアミド中、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する部分におけるトランス異性体比率は、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸全体中の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸がトランス異性体である比率を表し、該トランス異性体比率が、51〜85モル%であり、好ましくは51〜80モル%であり、より好ましくは60〜80モル%である。また、(A)ポリアミドが1,4−シクロヘキサンジカルボン酸以外のジカルボン酸として脂環族ジカルボン酸を含む場合、(A)ポリアミド中、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及び脂環族ジカルボン酸に由来する部分におけるトランス異性体比率は、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及び脂環族ジカルボン酸全体に占める、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及び脂環族ジカルボン酸に由来する部分がトランス異性体である比率で表される。該トランス異性体比率は、51〜85モル%であることが好ましく、より好ましくは51〜80モル%であり、さらに好ましくは60〜80モル%である。
トランス異性体比率が上記範囲内にあることにより、ポリアミドは、高融点、剛性、及び靭性に優れるという特徴に加えて、高いTgによる熱時剛性と、通常では耐熱性と相反する性質である流動性と、高い結晶性を同時に満足するという性質を持つ。これらの特徴は、(a)少なくとも50モル%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸と(b)50モル%を超える1,9−ノナンジアミンのみ、又は1,9−ノナンジアミン及び2−メチル−1,8−オクタンジアミンの組み合わせからなる、本実施の形態に用いられるポリアミドで特に顕著である。
本実施の形態において、トランス異性体比率は、以下の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0043】
<(A)ポリアミドの製造方法>
(A)ポリアミドを製造する方法としては、例えば、酸クロライドとジアミンを原料とする溶液重合法又は界面重合法、あるいは熱重縮合などのポリアミドの製造方法として公知の方法を挙げることができる。
例えば、ジアミン・ジカルボン酸塩又はその混合物を形成成分とする熱溶融重合法やポリアミド形成成分の固体塩又はポリアミドの融点以下の温度で行う固相重合法、ジカルボン酸ハライド成分とジアミン成分を用いた溶液法なども用いることができる。これらの方法は必要に応じて組み合わせて用いることもできる。中でも熱溶融重合法がより効率的である。
また、重合形態としては、バッチ式でも連続式でも重合を行うことができる。また、重合装置も特に制限されることはなく、公知の装置、例えば、オートクレーブ型の反応器、タンブラー型反応器、ニーダーなどの押出機型反応器などが挙げられる。
【0044】
本実施の形態において、特に制限されることはないが、以下に記載する熱溶融重合法のバッチ式の方法によりポリアミドを製造することができる。
例えば、水を溶媒として(a)ジカルボン酸及び(b)ジアミンのポリアミド形成成分を含有する約40〜60質量%の溶液を、110〜180℃の温度及び約0.035〜0.6MPa(ゲージ圧)の圧力で操作される濃縮槽で、約65〜90質量%に濃縮して濃縮溶液を得る。次いで、該濃縮溶液をオートクレーブに移し、容器における圧力が約1.5〜5.0MPa(ゲージ圧)になるまで加熱を続ける。その後、水及び/又はガス成分を抜きながら圧力を約1.5〜5.0MPa(ゲージ圧)に保ち、温度が約250〜350℃に達した時点で、大気圧まで降圧する(ゲージ圧は、0MPa)。大気圧に降圧後、必要に応じて減圧することにより、副生する水を効果的に除くことができる。その後、窒素などの不活性ガスで加圧し、ポリアミド溶融物をストランドとして押し出す。該ストランドを、冷却、カッティングしてペレットを得る。
【0045】
本実施の形態において、特に制限されることはないが、以下に記載する熱溶融重合法(連続式の方法の1種)によりポリアミドを製造することができる。
例えば、水を溶媒としてポリアミド形成成分を含有する約40〜60質量%の溶液を、予備装置の容器において約40〜100℃まで予備加熱し、次いで、濃縮槽/反応器に移し、約0.1〜0.5MPa(ゲージ圧)の圧力及び約200〜270℃の温度で約70〜90%に濃縮して濃縮溶液を得る。次いで、該濃縮溶液を約200〜350℃の温度に保ったフラッシャーに排出し、大気圧まで降圧する(ゲージ圧は、0MPa)。大気圧に降圧後、必要に応じて減圧する。その後、ポリアミド溶融物をストランドとして押し出して、冷却、カッティングしてペレットを得る。
【0046】
(A)ポリアミドを製造するに際して、前記の末端封止剤の他に、例えば、触媒として、リン酸、亜リン酸、及び次亜リン酸、並びにそれらの塩及びエステルを添加することができる。上記塩及びエステルとしては、リン酸、亜リン酸又は次亜リン酸とカリウム、ナトリウム、マグネシウム、バナジウム、カルシウム、亜鉛、コバルト、マンガン、錫、タングステン、ゲルマニウム、チタン、及びアンチモンなどの金属との塩;リン酸、亜リン酸又は次亜リン酸のアンモニウム塩;リン酸、亜リン酸又は次亜リン酸のエチルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、ヘキシルエステル、イソデシルエステル、オクタデシルエステル、デシルエステル、ステアリルエステル、及びフェニルエステルなどが挙げられる。
【0047】
本実施の形態におけるポリアミドの分子量としては、25℃の相対粘度ηrを指標とする。
ポリアミドの分子量は、靭性及び剛性などの機械的物性、並びに成形性の観点で、JIS−K6810に従って測定した98%硫酸中濃度1%、25℃の相対粘度ηrにおいて、好ましくは1.5〜7.0であり、より好ましくは1.7〜6.0であり、さらに好ましくは1.9〜5.5である。
25℃の相対粘度ηrが上記範囲内にあるポリアミドを使用することにより、力学的特性、耐熱性、及び成形性などに優れた電気部品又は電子部品を得ることができる。
【0048】
本実施の形態におけるポリアミドの融点Tm2は、耐熱性の観点から、280〜350℃であることが好ましい。より好ましくは285〜335℃であり、さらに好ましくは290〜330℃である。
融点の測定は、JIS−K7121に準じて行うことができる。
融点が280℃以上であることにより、耐熱性に優れるポリアミドとすることができる。また、融点が330℃以下であることにより、押出、成形などの溶融加工でのポリアミドの熱分解などを抑制することができる。
【0049】
[(B)難燃剤]
本実施の形態の電気部品又は電子部品はポリアミド組成物を含み、前記ポリアミド組成物は(B)難燃剤を含有する。
前記ポリアミド組成物が(B)難燃剤を含有することにより、耐熱性、流動性、靭性及び低吸水性に優れるポリアミドの性質を損なうことなく、さらにポリアミド組成物としても、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性及び難燃性に優れたものとなる。また、前記ポリアミド組成物が(B)難燃剤を含有しても、耐光性に優れ、色調にも優れた電気部品又は電子部品を提供することができる。
(B)難燃剤としては、以下に制限されないが、例えば、ハロゲン系、アンチモン系、リン系、金属水和物、ホウ酸亜鉛及びシリコーン系が挙げられる。中でも、以下で説明する観点から、ハロゲン系及び/又はリン系難燃剤が好ましい。
<ハロゲン系難燃剤>
ハロゲン系難燃剤としては、ハロゲン元素を含む難燃剤であれば特に制限されることはないが、例えば、塩素系難燃剤及び臭素系難燃剤が挙げられる。これらの難燃剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
塩素系難燃剤としては、例えば、塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレン、ドデカクロロペンタシクロオクタデカ−7,15−ジエン(オキシデンタルケミカル社製 デクロランプラス25<登録商標>)、及び無水ヘット酸などを挙げることができる。
臭素系難燃剤としては、例えば、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)、デカブロモジフェニルオキサイド(DBDPO)、オクタブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモビスフェノールA(TBBA)、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン(BPBPE)、テトラブロモビスフェノールAエポキシ樹脂(TBBAエポキシ)、テトラブロモビスフェノールAカーボネート(TBBA−PC)、エチレン(ビステトラブロモフタル)イミド(EBTBPI)、エチレンビスペンタブロモジフェニル、トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジン(TTBPTA)、ビス(ジブロモプロピル)テトラブロモビスフェノールA(DBP−TBBA)、ビス(ジブロモプロピル)テトラブロモビスフェノールS(DBP−TBBS)、臭素化ポリフェニレンエーテル(ポリ(ジ)ブロモフェニレンエーテルなどを含む。)(BrPPE)、臭素化ポリスチレン(ポリジブロモスチレン、ポリトリブロモスチレン、架橋臭素化ポリスチレンなどを含む。)(BrPS)、臭素化架橋芳香族重合体、臭素化エポキシ樹脂、臭素化フェノキシ樹脂、臭素化スチレン−無水マレイン酸重合体、テトラブロモビスフェノールS(TBBS)、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート(TTBNPP)、ポリブロモトリメチルフェニルインダン(PBPI)、及びトリス(ジブロモプロピル)−イソシアヌレート(TDBPIC)などを挙げることができる。
(B)難燃剤としては、押出や成形などの溶融加工時の腐食性ガスの発生量を低下させ、電気部品又は電子部品の難燃性や機械的物性を向上させる観点で、臭素化ポリフェニレンエーテル(ポリ(ジ)ブロモフェニレンエーテルなどを含む。)、臭素化ポリスチレン(ポリジブロモスチレン、ポリトリブロモスチレン、架橋臭素化ポリスチレンなどを含む。)が好ましく、臭素化ポリスチレンがより好ましい。
臭素化ポリスチレンとしては、以下に制限されないが、例えば、スチレン単量体を重合してポリスチレンを製造した後、ポリスチレンのベンゼン環を臭素化したり、臭素化スチレン単量体(ブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレンなど)を重合する方法により製造することができる。
臭素化ポリスチレン中の臭素含有量は55〜75質量%が好ましい。臭素含有量を55質量%以上とすることにより、少ない臭素化ポリスチレンの含有量で難燃化に必要な臭素量を満足させることができ、ポリアミドの機械的物性の低下度が小さいため、機械的物性及び耐熱性に優れたポリアミド組成物を得ることができる。また、臭素含有量を75質量%以下とすることにより、押出や成形などの溶融加工時において熱分解を起こし難く、ガス発生などを抑制することができたり、耐熱変色性に優れるポリアミド組成物を得ることができる。
なお、ハロゲン系難燃剤は、後述する難燃助剤を併せて用いることにより、ハロゲン系難燃剤を含有するポリアミド組成物から得られる電気部品又は電子部品は、一層優れた難燃性を発揮することができる。
【0050】
<リン系難燃剤>
リン系難燃剤としては、以下に制限されないが、例えば、赤リン系、リン酸エステル系、ハロゲン化リン酸エステル系、リン酸アミド系、(ポリ)リン酸塩系、フォスファゼン系及びホスフィン系の難燃剤が挙げられる。中でもホスフィン系が好ましい。
かかるホスフィン系難燃剤としては、ホスフィン酸塩及び/又はジホスフィン酸塩(以下、両者を総称して「ホスフィン酸塩」と略称する場合がある。)が挙げられる。
ホスフィン酸塩としては、例えば、下記一般式(I):
【化1】

で表される化合物が挙げられる。
ジホスフィン酸塩としては、例えば、下記一般式(II):
【化2】

で表される化合物が挙げられる。
一般式(I)及び(II)中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、及び炭素数7〜20のアリールアルキル基からなる群から選択される。R5は、炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数6〜10のアリーレン基、炭素数7〜20のアルキルアリーレン基、及び炭素数7〜20のアリールアルキレン基からなる群から選択される。Mはカルシウム(イオン)、マグネシウム(イオン)、アルミニウム(イオン)及び亜鉛(イオン)からなる群から選択され、mは2又は3であり、nは1又は3であり、xは1又は2である。
【0051】
上記のアルキル基としては、直鎖又は分岐状飽和脂肪族基が挙げられる。
上記のアリール基としては、無置換又は種々の置換基で置換された炭素数6〜20の芳香族基を挙げることができる。かかる具体例として、フェニル基、ベンジル基、o−トルイル基、2,3−キシリル基などが挙げられる。
【0052】
上記のホスフィン酸塩としては、欧州特許出願公開第699708号公報や特開平8−73720号公報などに記載されているように、ホスフィン酸と金属炭酸塩、金属水酸化物又は金属酸化物などの金属成分とを用いて、水溶液中で製造することができる。
これらは、本質的にモノマー性化合物であるが、反応条件に依存して、環境によっては縮合度が1〜3のポリマー性ホスフィン酸塩も含まれる。
【0053】
ホスフィン酸塩におけるホスフィン酸及びジホスフィン酸としては、以下に制限されないが、例えば、ジメチルホスフィン酸、エチルメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、メチル−n−プロピルホスフィン酸、メタンジ(メチルホスフィン酸)、ベンゼン−1,4−ジ(メチルホスフィン酸)、メチルフェニルホスフィン酸及びジフェニルホスフィン酸が挙げられる。
【0054】
ホスフィン酸塩における金属成分としては、以下に制限されないが、例えば、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン及び亜鉛イオンが挙げられる。
【0055】
ホスフィン酸塩としては、以下に制限されないが、例えば、ジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸マグネシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸マグネシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸マグネシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛、メチル−n−プロピルホスフィン酸カルシウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸マグネシウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸アルミニウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸亜鉛、メチレンビス(メチルホスフィン酸)カルシウム、メチレンビス(メチルホスフィン酸)マグネシウム、メチレンビス(メチルホスフィン酸)アルミニウム、メチレンビス(メチルホスフィン酸)亜鉛、フェニレン−1,4−ビス(メチルホスフィン酸)カルシウム、フェニレン−1,4−ビス(メチルホスフィン酸)マグネシウム、フェニレン−1,4−ビス(メチルホスフィン酸)アルミニウム、フェニレン−1,4−ビス(メチルホスフィン酸)亜鉛、メチルフェニルホスフィン酸カルシウム、メチルフェニルホスフィン酸マグネシウム、メチルフェニルホスフィン酸アルミニウム、メチルフェニルホスフィン酸亜鉛、ジフェニルホスフィン酸カルシウム、ジフェニルホスフィン酸マグネシウム、ジフェニルホスフィン酸アルミニウム、及びジフェニルホスフィン酸亜鉛が挙げられる。
【0056】
ホスフィン酸塩としては、ポリアミド組成物の難燃性及び電気特性、並びにホスフィン酸塩合成の観点から、ジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム及びジエチルホスフィン酸亜鉛が好ましい。
これらのホスフィン酸塩は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
ホスフィン酸塩としては、ポリアミド組成物の成形品の機械的物性(靭性及び剛性など)及び成形品外観の点で、ホスフィン酸塩の平均粒径が100μm以下に粉砕した粉末として用いることが好ましく、50μm以下に粉砕した粉末を用いることがより好ましい。
平均粒径が0.5〜20μmの粉末状のホスフィン酸塩を用いると、高い難燃性を発現するポリアミド組成物を得ることができるばかりでなく、成形品の剛性が著しく高くなるのでさらに好ましい。
平均粒径は、レーザー回折散乱法粒度分布測定装置や精密粒度分布測定装置を用いて測定することができる。なお、本明細書における平均粒径は、レーザー回折散乱法粒度分布測定装置を用いて測定した値を採用する。
【0058】
ホスフィン酸塩としては、必ずしも完全に純粋である必要はなく、未反応物あるいは副生成物が多少残存していてもよい。
【0059】
[(C)難燃助剤]
本実施の形態の電気部品又は電子部品はポリアミド組成物を含み、前記ポリアミド組成物は(C)難燃助剤を含有し得る。これにより、さらに難燃性に一層優れたポリアミド組成物を含む電気部品又は電子部品を得ることができる。
本実施の形態において用いられる(C)難燃助剤としては、以下に制限されないが、例えば、三酸化二アンチモン、四酸化二アンチモン、五酸化二アンチモン、アンチモン酸ナトリウムなどの酸化アンチモン類などのアンチモン系、一酸化スズ、二酸化スズなどの酸化スズ、酸化第二鉄、γ酸化鉄などの酸化鉄類、その他酸化亜鉛、ホウ酸亜鉛、酸化カルシウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化アルミニウム(ベーマイト)、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化スズ、酸化ニッケル、酸化銅、及び酸化タングステンなどの金属酸化物;水酸化マグネシウム、及び水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物;アルミニウム、鉄、チタン、マンガン、亜鉛、モリブデン、コバルト、ビスマス、クロム、スズ、アンチモン、ニッケル、銅、及びタングステンなどの金属粉末;炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、及び炭酸バリウムなどの金属炭酸塩;ホウ酸マグネシウム、ホウ酸カルシウム、及びホウ酸アルミニウムなどの金属ホウ酸塩;並びにシリコーンが挙げられる。
これら難燃助剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
本実施の形態において用いられる(C)難燃助剤としては、(B)難燃剤がハロゲン系難燃剤を用いる場合には難燃性効果を向上させる観点から、三酸化二アンチモン、四酸化二アンチモンや五酸化二アンチモンなどの酸化アンチモン類などのアンチモン系、水酸化マグネシウム及びホウ酸亜鉛が好ましい。より好ましくは三酸化二アンチモン、四酸化二アンチモンや五酸化二アンチモンなどの酸化アンチモン類などのアンチモン系、水酸化マグネシウム及びホウ酸亜鉛であり、さらに好ましくは三酸化二アンチモン、四酸化二アンチモンや五酸化二アンチモンなどの酸化アンチモン類などのアンチモン系、及びホウ酸亜鉛であり、さらにより好ましくは三酸化二アンチモン、アンチモン酸ナトリウム及びホウ酸亜鉛である。難燃効果を上げる観点から、平均粒径が0.01〜10μmである(C)難燃助剤を用いることが好ましい。
【0061】
本実施の形態において用いられる(C)難燃助剤としては、(B)難燃剤がリン系難燃剤に用いる場合には難燃性を向上させる観点から、酸化カルシウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、水酸化アルミニウム(ベーマイト)、水酸化マグネシウム、及びホウ酸亜鉛などの金属ホウ酸塩などが好ましい。
上記のホウ酸亜鉛としては、より好ましくは、xZnO・yB23・zH2O(x>0、y>0、z≧0)で表されるホウ酸亜鉛であり、さらに好ましくは、2ZnO・3B23・3.5H2O、4ZnO・B23・H2O、及び2ZnO・3B23で表されるホウ酸亜鉛であり、さらにより好ましくは2ZnO・3B23・3.5H2Oで表されるホウ酸亜鉛である。
これらの金属ホウ酸塩はシラン系カップリング剤及びチタネート系カップリング剤などの表面処理剤で処理されてもよい。
【0062】
(C)難燃助剤の平均粒径の上限は、好ましくは30μm以下であり、より好ましくは15μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下であり、さらにより好ましくは7μm以下である。一方、(C)難燃助剤の平均粒径の下限は、好ましくは0.01μmである。上記の範囲内の場合、難燃効果を上げることができる。
これら(C)難燃助剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
[(D)無機充填材]
本実施の形態の電気部品又は電子部品はポリアミド組成物を含み、前記ポリアミド組成物は(D)無機充填材を含有してもよい。前記ポリアミド組成物が(D)無機充填材を含有することにより、さらに機械的特性に優れたポリアミド組成物を含む電気部品又は電子部品を得ることができる。
(D)無機充填材としては、以下に制限されないが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ケイ酸カルシウム繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、ガラスフレーク、タルク、カオリン、マイカ、クレー、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、リン酸一水素カルシウム、ウォラストナイト、シリカ、ゼオライト、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、ケイ酸マグネシウム、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、黄銅、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、鉄、フッ化カルシウム、雲母、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母及びアパタイトが挙げられる。
(D)無機充填材としては、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
(D)無機充填材を含有することにより、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、剛性及び難燃性に優れるポリアミドの性質を損なうことなく、さらに、ポリアミド組成物としても、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、剛性及び難燃性など(特に剛性)に優れたものとなる。
本実施の形態は、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、剛性及び難燃性に優れた電気部品又は電子部品を提供することができる。
【0065】
上記した(D)無機充填材の中でも、剛性を向上させる観点から、ガラス繊維、炭素繊維、ガラスフレーク、タルク、カオリン、マイカ、クレー、炭酸カルシウム、リン酸一水素カルシウム、ウォラストナイト、シリカ、カーボンナノチューブ、グラファイト、フッ化カルシウム、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母及びアパタイトが好ましい。中でも、より好ましくはガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、カオリン、マイカ及びタルクであり、さらに好ましくは、ガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト及びマイカであり、さらにより好ましくはガラス繊維、炭素繊維及びウォラストナイトである。
【0066】
ガラス繊維や炭素繊維の中でも、電気部品又は電子部品に一層高い特性を発現させる観点から、さらに好ましくは、数平均繊維径が3〜30μmであり、重量平均繊維長が100〜750μmであり、且つ重量平均繊維長(L)と数平均繊維径(D)とのアスペクト比(L/D)が10〜100であるものである。
【0067】
まず、ガラス繊維や炭素繊維としては、その断面が真円状でも扁平状でもよい。かかる扁平状の断面としては、以下に制限されないが、例えば、長方形、長方形に近い長円形、楕円形、及び長手方向の中央部がくびれた繭型が挙げられる。ここで、本明細書における「扁平率」は、当該繊維断面の長径をD2及び該繊維断面の短径をD1とするとき、D2/D1で表される値をいう(真円状は、扁平率が約1となる。)。扁平状のガラス繊維を使用するときは、扁平率は1.5〜10が好ましい。
【0068】
上記のガラス繊維や炭素繊維を、シランカップリング剤などにより表面処理してもよい。前記シランカップリング剤としては、以下に制限されないが、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランやN−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランやγ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン類;エポキシシラン類;ビニルシラン類が挙げられる。中でも、上記の列挙した成分からなる群より選択される一以上であることが好ましく、アミノシラン類がより好ましい。
【0069】
また、上記のガラス繊維や炭素繊維については、さらに集束剤として、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体、エポキシ化合物、ポリウレタン樹脂、アクリル酸のホモポリマー、アクリル酸とその他の共重合性モノマーとのコポリマー、並びにこれらの第1級、第2級及び第3級アミンとの塩、並びにカルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを含む共重合体などを含んでもよい。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、得られるポリアミド組成物の機械的強度の観点から、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体、エポキシ化合物及びポリウレタン樹脂、並びにこれらの組み合わせが好ましい。より好ましくは、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体及びポリウレタン樹脂、並びにこれらの組み合わせである。
【0070】
上記したカルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体のうち、前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体としては、以下に制限されないが、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸及び無水シトラコン酸が挙げられ、中でも無水マレイン酸が好ましい。一方、前記のカルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とは、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体とは異なる不飽和ビニル単量体をいう。前記のカルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体としては、以下に制限されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3−ジクロロブタジエン、1,3−ペンタジエン、シクロオクタジエン、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート及びエチルメタクリレートが挙げられる。中でもスチレン及びブタジエンが好ましい。
【0071】
上記したこれらの組み合わせの中でも、無水マレイン酸とブタジエンとの共重合体、無水マレイン酸とエチレンとの共重合体、及び無水マレイン酸とスチレンとの共重合体、並びにこれらの混合物からなる群より選択される一以上であることがより好ましい。
【0072】
また、上記したカルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体は、重量平均分子量が2,000以上であることが好ましい。また、得られるポリアミド組成物の流動性を向上させる観点から、より好ましくは2,000〜1,000,000であり、さらに好ましくは2,000〜500,000である。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した値である。
【0073】
エポキシ化合物としては、以下に制限されないが、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブテンオキサイド、ペンテンオキサイド、ヘキセンオキサイド、ヘプテンオキサイド、オクテンオキサイド、ノネンオキサイド、デセンオキサイド、ウンデセンオキサイド、ドデセンオキサイド、ペンタデセンオキサイド及びエイコセンオキサイド等の脂肪族エポキシ化合物;グリシド−ル、エポキシペンタノ−ル、1−クロロ−3,4−エポキシブタン、1−クロロ−2−メチル−3,4−エポキシブタン、1,4−ジクロロ−2,3−エポキシブタン、シクロペンテンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、シクロヘプテンオキサイド、シクロオクテンオキサイド、メチルシクロヘキセンオキサイド、ビニルシクロヘキセンオキサイド及びエポキシ化シクロヘキセンメチルアルコール等の脂環族エポキシ化合物;ピネンオキサイド等のテルペン系エポキシ化合物;スチレンオキサイド、p−クロロスチレンオキサイド及びm−クロロスチレンオキサイド等の芳香族エポキシ化合物;エポキシ化大豆油;並びに、エポキシ化亜麻仁油が挙げられる。
【0074】
上記のポリウレタン樹脂は、集束剤として一般的に用いられるものであれば特に制限されない。この具体例として、m−キシリレンジイソシアナート(XDI)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)(HMDI)及びイソホロンジイソシアナート(IPDI)等のイソシアネートと、ポリエステル系やポリエーテル系のジオールとから合成されるものが好適に使用できる。
【0075】
上記のアクリル酸のホモポリマー(ポリアクリル酸)の重量平均分子量は1,000〜90,000であることが好ましく、より好ましくは1,000〜25,000である。
【0076】
ポリアクリル酸は塩形態であってもよい。前記塩形態として、以下に制限されないが、例えば第一級、第二級又は第三級のアミンが挙げられる。かかるポリアクリル酸の塩として、以下に制限されないが、例えば、トリエチルアミン、トリエタノールアミン及びグリシンが挙げられる。中和度は、他の併用薬剤(シランカップリング剤など)との混合溶液の安定性を向上させる観点や、アミン臭を低減させる観点から、20〜90%とすることが好ましく、40〜60%とすることがより好ましい。
【0077】
塩を形成するポリアクリル酸の重量平均分子量は、特に制限されることはない。好ましくは3,000〜50,000の範囲である。すなわち、ガラス繊維や炭素繊維の集束性を向上させる観点から3,000以上であり、ポリアミド組成物とした際の機械的物性を向上させる観点から50,000以下である。
【0078】
上記のアクリル酸と共重合体を形成するモノマーとしては、以下に制限されないが、例えば、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イソクロトン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸及びメサコン酸といった水酸基、並びにカルボキシル基を有するモノマーからなる群より選択される一以上が挙げられる(但し、アクリル酸のみの場合を除く。)。好ましくは、上記したモノマーのうちエステル系モノマーを1種以上有する。
【0079】
上記のアクリル酸のポリマーは、アクリル酸とその他の共重合性モノマーとのコポリマーであってもよい。前記アクリル酸と共重合体を形成するモノマーとしては、以下に制限されないが、例えば、水酸基及び/又はカルボキシル基を有するモノマーのうち、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イソクロトン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸及びメサコン酸からなる群より選択される一以上が挙げられる(但し、アクリル酸のみの場合を除く。)。好ましくは、上記したモノマーのうちエステル系モノマーを1種以上有する。
【0080】
上記のアクリル酸のポリマー(ホモポリマー及びコポリマーを共に含む。)は塩形態であってもよい。前記塩形態として、以下に制限されないが、例えば第一級、第二級又は第三級のアミンが挙げられる。前記のアクリル酸のポリマーの塩として、トリエチルアミン、トリエタノールアミン及びグリシンが挙げられる。中和度は、他の併用薬剤(シランカップリング剤など)との混合溶液の安定性を向上させ、且つアミン臭を低減させる観点から、20〜90%とすることが好ましく、40〜60%とすることがより好ましい。
【0081】
上記の塩を形成するアクリル酸のポリマーの重量平均分子量は、以下に制限されないが、3,000〜50,000の範囲であることが好ましい。すなわち、ガラス繊維や炭素繊維の集束性を向上させる観点から3,000以上が好ましく、ポリアミド組成物とした際の機械的物性を向上させる観点から50,000以下が好ましい。
【0082】
ガラス繊維や炭素繊維は、公知の当該繊維の製造工程において、ローラー型アプリケーターなどの公知の方法を用いて、上記の集束剤を、当該繊維に付与して製造した繊維ストランドを乾燥することにより、連続的に反応させて得られる。前記繊維ストランドをロービングとしてそのまま使用してもよく、さらに切断工程を得て、チョップドガラスストランドとして使用してもよい。かかる集束剤は、ガラス繊維又は炭素繊維100質量%に対し、固形分率として、好ましくは0.2〜3質量%相当を付与(添加)し、より好ましくは0.3〜2質量%相当を付与(添加)する。すなわち、当該繊維の集束を維持する観点から、集束剤の添加量が、ガラス繊維又は炭素繊維100質量%に対し、固形分率として0.2質量%以上であることが好ましい。一方、得られるポリアミド組成物の熱安定性を向上させる観点から、3質量%以下であることが好ましい。ストランドの乾燥は切断工程後に行ってもよいし、ストランドを乾燥した後に切断してもよい。
【0083】
ここで、本明細書における数平均繊維径及び重量平均繊維長は、以下の方法により求められた値である。ポリアミド組成物を電気炉に入れて、含まれる有機物を焼却処理する。当該処理後の残渣分から、100本以上のガラス繊維(又は炭素繊維)を任意に選択し、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して、これらのガラス繊維(又は炭素繊維)の繊維径を測定することにより数平均繊維径を測定する。加えて、倍率1,000倍で撮影した、上記100本以上のガラス繊維(又は炭素繊維)についてのSEM写真を用いて繊維長を計測することにより、重量平均繊維長を求める。
【0084】
ガラス繊維や炭素繊維以外の無機充填材の平均粒径は、靭性及び表面外観を向上させる観点から、0.01〜38μmが好ましい。0.03〜30μmがより好ましく、0.05〜25μmがさらに好ましく、0.10〜20μmがさらにより好ましく、0.15〜15μmが最も好ましい。
上記の平均粒径を38μm以下とすることにより、靭性、表面外観に優れたポリアミド組成物とすることができる。一方、0.01μm以上にすることにより、コスト面及び粉体のハンドリング面と機械的物性(流動性など)とのバランスに優れたポリアミド組成物が得られる。
ここで、無機充填材の中でも、ウォラストナイトのような針状の形状を持つものに関しては、数平均繊維径(以下、単に「平均繊維径」ともいう。)を平均粒径とする。また、断面が円でない場合はその長さの最大値を(数平均)繊維径とする。
【0085】
上記した針状の形状を持つものの重量平均繊維長(以下、単に「平均繊維長」ともいう。)については、上述の数平均繊維径の好ましい範囲、及び下記の重量平均繊維長(L)と数平均繊維径(D)とのアスペクト比(L/D)の好ましい範囲から算出される数値範囲が好ましい。
針状の形状を持つものの重量平均繊維長(L)と数平均繊維径(D)とのアスペクト比(L/D)に関しては、成形品の表面外観を向上させ、且つ射出成形機などの金属性パーツの磨耗を防止する観点から、1.5〜10が好ましく、2.0〜5がより好ましく、2.5〜4がさらに好ましい。
【0086】
また、本実施の形態におけるガラス繊維や炭素繊維以外の無機充填材を、通常の表面処理剤(例えば、シラン系カップリング剤やチタネート系カップリング剤など)を用いて表面処理してもよい。前記シラン系カップリング剤としては、以下に制限されないが、エポキシシランカップリング剤が好ましい。また、ポリアルコキシシロキサンとエポキシシランカップリング剤との混合物及び/又はポリアルコキシシロキサンとエポキシシランカップリング剤との反応物も好ましい。このような表面処理剤は、予め(D)無機充填材の表面に処理してもよいし、(A)ポリアミドと(D)無機充填材とを混合する際に添加してもよい。また、表面処理剤の添加量は、(D)無機充填材100質量%に対して、好ましくは0.05〜1.5質量%である。
【0087】
[ポリアミド組成物の製造方法]
本実施の形態におけるポリアミド組成物の製造方法としては、本実施の形態において用いられる(A)ポリアミド、(B)難燃剤、及び(所望により)(C)難燃助剤を混合する方法であれば、特に制限されることはない。また、所望により(D)無機充填材をさらに混合する方法も挙げることができる。
より具体的には、混合方法は、例えば、(A)ポリアミド、(B)難燃剤及び(任意に)(C)難燃助剤(さらに、任意に(D)無機充填材)をヘンシェルミキサーなどを用いて混合し、溶融混練機に供給して混練する方法が挙げられる。また、(D)無機充填材を配合する場合、単軸又は2軸押出機で(A)ポリアミド、(B)難燃剤及び(C)難燃助剤を予めヘンシェルミキサーなどを用いて混合したものを溶融混練機に供給し混練した後に、サイドフィーダーから(D)無機充填材を配合する方法も挙げることができる。
ポリアミド組成物を構成する成分を溶融混練機に供給する方法は、すべての構成成分を同一の供給口に一度に供給してもよいし、構成成分をそれぞれ異なる供給口から供給することもできる。
例えば、溶融混練温度は、樹脂温度にして250〜375℃程度であることが好ましい。溶融混練時間は、0.5〜5分程度であることが好ましい。
溶融混練を行う装置としては、公知の装置を用いることができる、例えば単軸又は2軸押出機、バンバリーミキサー及びミキシングロールなどの溶融混練機が好ましく用いられる。
【0088】
本実施の形態において、(B)難燃剤の含有量は、(A)ポリアミド100質量部に対して、20〜90質量部であることが好ましく、30〜70質量部であることがより好ましく、40〜50質量部であることがさらに好ましい。
(B)難燃剤の含有量を20質量部以上とすることにより、難燃性に優れるポリアミド組成物を含む電気部品又は電子部品を得ることができる。また、(B)難燃剤の含有量を90質量部以下とすることにより、溶融混練時に分解ガスの発生、成形加工時の流動性の低下や、成形金型に汚染性物質の付着を抑制することができる。さらに、機械的物性や成形品外観の低下も抑制することができる。
【0089】
本実施の形態において、(C)難燃助剤の含有量は、(A)ポリアミド100質量部に対して、0〜30質量部であることが好ましく、1〜30質量部であることがより好ましく、2〜20質量部であることがさらに好ましく、4〜15質量部であることがさらにより好ましい。
(C)難燃助剤を配合することにより、さらに難燃性に優れるポリアミド組成物を含む電気部品又は電子部品を得ることができる。また、(C)難燃助剤の含有量を30質量部以下とすることにより、溶融加工時の粘度を適切な範囲に制御することができ、押出時のトルクの上昇、成形時の成形性の低下及び成形品外観の低下を抑制することができる。また、靭性などの特性に優れるポリアミドの性質を損なうことなく、靭性などに優れるポリアミド組成物を含む電気部品又は電子部品を得ることができる。
【0090】
(D)無機充填材の含有量は、(A)ポリアミド100質量部に対して、好ましくは0.1〜200質量部であり、より好ましくは1〜180質量部であり、さらに好ましくは5〜150質量部であり、さらにより好ましくは10〜100質量部である。
(D)無機充填材の含有量を0.1質量部以上とすることにより、(D)無機充填材を含有するポリアミド組成物の靭性及び剛性などの機械的物性が向上する。一方、(D)無機充填材の含有量を200質量部以下とすることにより、押出性、成形性に優れる(D)無機充填材を含有するポリアミド組成物を得ることができる。
【0091】
本実施の形態におけるポリアミド組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物を含む重合体をさらに含有してもよい。前記α,β−不飽和ジカルボン酸無水物を含む重合体としては、以下に制限されないが、例えば、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物を共重合の成分として含む重合体やα,β−不飽和ジカルボン酸無水物で変性された重合体が挙げられる。
α,β−不飽和ジカルボン酸無水物を含む重合体を含有することで、さらに難燃性や機械的特性に優れるポリアミド組成物を得ることができる。
α,β−不飽和ジカルボン酸無水物としては、具体的には、無水マレイン酸、メチル無水マレイン酸などを挙げることができ、中でも無水マレイン酸が好ましい。
【0092】
α,β−不飽和ジカルボン酸無水物を共重合の成分として含む重合体としては、例えば、芳香族ビニル化合物とα,β−不飽和ジカルボン酸無水物との共重合体などを挙げることができる。
本実施の形態において用いられるα,β−不飽和ジカルボン酸無水物で変性された重合体としては、例えば、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物で変性されたポリフェニレンエーテル樹脂やポリプロピレン樹脂などを挙げることができる。
【0093】
α,β−不飽和ジカルボン酸無水物としては、難燃性の効率を向上させる(添加量が少なくても発現する)観点から、芳香族ビニル化合物とα,β−不飽和ジカルボン酸無水物との共重合体が好ましい。
本実施の形態において用いられる芳香族ビニル化合物としては、具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどを挙げることができ、中でもスチレンが好ましい。
本実施の形態において、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物を含む重合体が芳香族ビニル化合物成分を含む場合には、芳香族ビニル化合物成分がハロゲン系難燃剤(臭素化ポリスチレンなど)と親和しており、また、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物部分がポリアミドと親和ないし反応することにより、ポリアミドマトリックス中にハロゲン系難燃剤が分散するのを助け、結果として微分散していると考えられる。
【0094】
芳香族ビニル化合物とα,β−不飽和ジカルボン酸無水物との共重合体中の芳香族ビニル化合物成分及びα,β−不飽和ジカルボン酸無水物成分の割合は、難燃性、流動性及び耐熱分解性などの観点から、芳香族ビニル化合物成分が50〜99質量%、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物成分が1〜50質量%であることが好ましい。α,β−不飽和ジカルボン酸無水物成分の割合が5〜20質量%であることがより好ましく、さらに好ましくは8〜15質量%である。
α,β−不飽和ジカルボン酸無水物成分の割合を1質量%以上とすることにより、機械的物性,難燃性に優れるポリアミド組成物を得ることができる。また、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物成分の割合を50質量%以下とすることにより、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物によるポリアミド組成物の劣化を防止することができる。
【0095】
[電気部品又は電子部品]
本実施の形態の電気部品又は電子部品は、成形加工性を向上させる目的で、金属石鹸、高級脂肪族エステル類、及びその部分けん化物、低分子量ポリオレフィン化合物、シリコーンオイル、並びにフッ素系オイルなどの離型剤を含有することができる。特に、金型離型効果が高く、金属腐食性の小さい低分子量ポリエチレンを好ましく使用できる。
【0096】
ポリアミド組成物を含む電気部品又は電子部品は、色相安定化、コスト削減に対応した増量剤、放熱特性の向上などを目的として、アルカリ土類金属類、金属酸化物などを含有することができる。この具体例として、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどが挙げられる。
さらに、ポリアミド組成物を含む電気部品又は電子部品は、必要に応じて、着色剤;帯電防止剤;可塑剤;結晶核剤;ハロゲンキャッチャ等の添加剤;PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PPE(ポリフェニレンエーテル)、LCP(液晶ポリマー)などの他種ポリマーなどを含有することもできる。
【0097】
本実施の形態の電気部品又は電子部品に含まれるポリアミド組成物は、上記した各構成成分を、公知の方法に従って配合することにより、調製することができる。例えば、(A)ポリアミドの重縮合反応時に各成分を添加する方法、(A)ポリアミドとその他の成分とをドライブレンドする方法、押出機を用いて各構成成分を溶融混練する方法などが挙げられる。これらの中でも、操作が容易であり、均一な組成物が得られる等の観点から、押出機を用いて各構成成分を溶融混練する方法が有利である。この際に用いられる押出機は2軸スクリュー型のものが好ましく、溶融混練温度としては[(A)ポリアミドの融点+5℃]以上であって350℃以下であることが好ましい。
【0098】
本実施の形態の電気部品又は電子部品には、本実施の形態の目的を損なわない範囲で、例えば、他の難燃剤、フィブリル化剤、顔料、染料などの着色剤(着色マスターバッチを含む。)、可塑剤、帯電防止剤、流動性改良剤、他の充填剤、補強剤、展着剤、他のポリマーなどを任意の段階で添加することができる。
本実施の形態における25℃の相対粘度、及び融点Tm2は、前記ポリアミドにおける測定方法と同様の方法により測定することができる。また、ポリアミド組成物における測定値が、前記ポリアミドの測定値として好ましい範囲と同様の範囲にあることにより、力学的特性、耐熱性、成形性及び流動性に優れる電気部品又は電子部品を得ることができる。
【0099】
[電気部品又は電子部品の製造方法]
本実施の形態の電気部品又は電子部品は、上記のようにして得られたポリアミド組成物を加熱溶融した後、所望の形状に成形し、冷却することにより製造することができる。本実施の形態のポリアミド組成物を含む電気部品又は電子部品を用いることにより、薄肉流動試験で示される溶融物の流動性が良好であり、複雑な形状や薄肉部を多数有する電気部品又は電子部品などに効率よく製造することができる。しかも、本実施の形態のポリアミド組成物を含む電気部品又は電子部品は、靭性が高く、例えば、コネクタの接合の際(雄型コネクタの端子を雌型コネクタに挿入する際)等に、割れ等が発生しにくい。また、本実施の形態の電気部品又は電子部品は優れた耐熱性を有しており、リフロー半田工程においても熱変形することが少ない。
本実施の形態の電気部品又は電子部品は、厚さ0.4mm以下の薄肉部を含むことが好ましい。上記範囲内の場合、電気部品又は電子部品の一層の薄肉化を実現することができる。なお、6T系や9T系ポリアミドにおいては、薄肉化の成形品を得るために、流動性の改良が強く求められている。これに対し、本実施の形態における1,4−シクロヘキサンジカルボン酸とジアミンからなるポリアミドは、流動性(特に、薄肉流動性)に優れているため、上記範囲の薄肉化が可能となる。前記厚さとして、より好ましくは0.1〜0.4mm、さらに好ましくは0.15〜0.35mm、さらにより好ましくは0.2〜0.35mmである。
【0100】
本実施の形態におけるポリアミド組成物から得られる成形品は、公知の成形方法(例えば、プレス成形、射出成形、ガスアシスト射出成形、溶着成形、押出成形、吹込成形、フィルム成形、中空成形、多層成形、溶融紡糸など)、すなわち一般に知られているプラスチック成形方法を用いて得ることができる。
本実施の形態におけるポリアミド組成物から得られる成形品は、耐熱性、靭性、流動性、低吸水性に優れ、且つ難燃性に優れる。したがって、本実施の形態におけるポリアミド組成物は、電気部品又は電子部品をはじめとして、各種の部品用材料として、用いることができる。中でも、本実施の形態の電気部品又は電子部品は、表面実装用電気部品又は電子部品であることが好ましい。すなわち、ワイヤーハーネスコネクターなどの自動車電装部品や表面実装に要求されるリフロー半田工程での耐熱性に優れる観点から、前記ポリアミド組成物は、SMT(表面実装技術)対応のコネクタ、スイッチ類、コイルボビン、ブレーカー、電磁開閉器、ホルダー、プラグ、スイッチなどの電気部品又は電子部品に好適に用いることができる。
【実施例】
【0101】
以下、本実施の形態を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本実施の形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
実施例及び比較例に用いた原材料及び測定方法を以下に示す。なお、本実施例において、1kg/cm2は、0.098MPaを意味する。
【0102】
[原材料]
〔(A)ポリアミド〕
<(a)ジカルボン酸>
(1−1)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(CHDA−1) イーストマンケミカル製 商品名 1,4−CHDA HPグレード(トランス異性体/シス異性体=25/75)
(1−2)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(CHDA−2) 岩谷瓦斯社製、商品名:1,4−CHDA、(トランス異性体/シス異性体=100/0)
(2)テレフタル酸(TPA) 和光純薬工業製 商品名 テレフタル酸
【0103】
<(b)ジアミン>
(3)1,9−ノナンジアミン(NMD) アルドリッチ製 商品名 1,9−ノナンジアミン
(4)2−メチル−1,8−オクタンジアミン(2MODA) 特開平05−17413号公報を参照して作成したものを用いた。
(5)ヘキサメチレンジアミン(HMD) 和光純薬工業製 商品名 ヘキサメチレンジアミン
【0104】
〔(B)難燃剤〕
(6)臭素化ポリスチレン ALBEMARLE CORPORATION製 商品名 SAYTEX HP−7010G (元素分析より 臭素含有量:63質量%、登録商標)
(7)ホスフィン酸塩 特開平08−73720号公報に記載されている製法を参考にして製造した、ジエチルホスフィン酸アルミニウム(DEPAl)。
【0105】
〔(C)難燃助剤〕
(8)三酸化二アンチモン 第一エフ・アール(株)製 商品名 三酸化アンチモン
(9)水酸化マグネシウム 協和化学製 商品名 キスマ5、平均粒径:0.8μm
(10)ホウ酸亜鉛 2ZnO・3B23・3.5H2O U.S.Borax製 商品名 Firebrake(登録商標)ZB
【0106】
〔(D)無機充填材〕
(11)ガラス繊維(GF) 日本電気硝子製 商品名 ECS03T275H 平均繊維径(平均粒径)10μmφ(真円状)、カット長3mm
【0107】
[測定方法]
(1)末端封止率(%)
(A)ポリアミドの数平均分子量(Mn)をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、下記関係式
分子鎖末端基総数(eq/g)=2/Mn
を用いて分子鎖末端基総数を算出した。
滴定により、ポリアミドのカルボキシル基末端の数(eq/g)[ポリアミドのベンジルアルコール溶液を0.1N水酸化ナトリウムで滴定]及びアミノ基末端の数(eq/g)[ポリアミドのフェノール溶液を0.1N塩酸で滴定]を測定し、下記の式(1)を用いて末端封止率を求めた。
末端封止率(%)={(A−B)/A}×100 (1)
式中、Aは分子鎖末端基総数(これは通常、ポリアミド分子の数の2倍に等しい。)を表し、Bはカルボキシル基末端及びアミノ基末端の合計数を表す。
ここで、ポリアミドの数平均分子量(Mn)は、GPCにより求めた。ポリアミドをサンプルとした。装置は東ソー(株)製HLC−8020を用いた。検出器は示差屈折計(RI)を用い、溶媒はトリフルオロ酢酸ナトリウムを0.1モル%溶解させたヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を用い、カラムは、東ソー(株)製TSKgel−GM HHR−Hを2本及びG1000 HHRを1本用いた。前記溶媒の流量は0.6mL/minとし、前記サンプルの濃度は、1〜3(mgサンプル)/1(mL溶媒)とした。溶媒を添加したサンプルをフィルターでろ過し、不溶分を除去して、ろ液を測定試料とした。得られた溶出曲線をもとに、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)換算により、数平均分子量(Mn)と、さらに重量平均分子量(Mw)とを算出した。
【0108】
(2)トランス異性体比率
ポリアミド30〜40mgをヘキサフルオロイソプロパノール重水素化物1.2gに溶解し、1H−NMRで測定した。1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の場合、トランス異性体に由来する1.98ppmのピーク面積とシス異性体に由来する1.77ppm及び1.86ppmのピーク面積との比率からトランス異性体比率を求めた。
【0109】
(3)融点Tm2(℃)、融解熱量ΔH(J/g)
JIS−K7121に準じて、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSCを用いて測定した。測定条件は、窒素雰囲気下、試料(ポリアミド)約10mgを昇温速度20℃/minでサンプルの融点に応じて300〜350℃まで昇温したときに現れる吸熱ピーク(融解ピーク)の温度をTm1(℃)とした。昇温の最高温度の溶融状態で温度を2分間保った後、降温速度20℃/minで30℃まで降温し、30℃で2分間保持した後、昇温速度20℃/minで同様に昇温したときに現れる吸熱ピーク(融解ピーク)の最大ピーク温度を融点Tm2(℃)とした。その全ピーク面積を融解熱量ΔH(J/g)とした。なお、ピークが複数ある場合には、融解熱量が1J/g以上のものをピークとみなした上で、Tm2及びΔHを求めた。例えば、融点295℃、前記融点での融解熱量=20J/gと、融点325℃、前記融点での融解熱量=5J/gという2つのピークが存在する場合、融点Tm2を325℃(複数のピークの中での最高温度)とし、融解熱量ΔHを20+5=25J/gとした。
【0110】
(4)25℃の相対粘度ηr
JIS−K6810に準じて測定した。具体的には、98%硫酸を用いて、1%の濃度の溶解液[(ポリアミド1g)/(98%硫酸100mL)の割合]を作成し、25℃の温度条件下で測定した。
【0111】
(5)流動性
下記条件に設定した成形機で2mm厚×15mm幅に成形して、その流動長(充填された長さ[cm])から流動性を評価した。
射出成形機(日精樹脂(株)製FN3000)に、流動性評価(2mm厚×15mm幅のスパイラル流路)の金型(金型温度=140℃)を取り付けて、シリンダー温度=Tm2+20℃、射出速度は20%設定、射出圧力は34%設定で成形を行った。
【0112】
(6)引張強度(MPa)及び引張伸度(%) JIS−7113引張試験用の射出成形1号形試験片(4mm厚)を用いて、JIS−7113に準じて測定した。射出成形1号形試験片は、射出成形機(日精樹脂製PS40E)に引張試験(1号形試験片)用の試験片(4mm厚)の金型(金型温度140℃)を取り付けて、シリンダー温度=(Tm2+10)℃〜(Tm2+30)℃で成形を行った。
【0113】
(7)吸水率(%)
前記測定方法(6)と同様にして成形した射出成形1号形試験片(4mm厚)を成形後の絶乾状態(dry as mold)で、試験前質量(吸水前質量)を測定した。80℃の純水中に24時間浸漬させた。その後、水中から試験片を取り出し、表面の付着水分をふき取り、恒温恒湿(23℃、50RH%)雰囲気下に30分放置後、試験後質量(吸水後質量)を測定した。吸水前質量に対しての吸水後質量の増分を吸水量とし、吸水前質量に対する吸水量の割合を、試行数n=3で求め、その平均値を吸水率(%)とした。
【0114】
(8)難燃性
UL94(米国Under Writers Laboratories Incで定められた規格)の方法を用いて測定を行った。なお、試験片(長さ127mm、幅12.7mm、厚みは1/32インチ)は、射出成形機(日精樹脂(株)製PS40E)にUL試験片の金型(金型温度=140℃)を取り付けて、シリンダー温度=(Tm2+20)℃で成形を行うことで得た。射出圧力はUL試験片成形する際の完全充填圧力+2%の圧力で行った。
難燃等級は、UL94VB規格(垂直燃焼試験)に準じた。
【0115】
(9)吸水リフロー特性(半田耐熱性)
射出成形機(日精樹脂製PS40E)に金型(金型温度=140℃)を取り付けて、シリンダー温度=(Tm2+10)℃〜(Tm2+30)℃で、厚さ0.5mm、幅10mm、長さ30mmの成形試験片を成形した。得られた成形試験片を40℃、95%RH(相対湿度)の雰囲気中に500時間放置した。次いで、成形試験片を赤外線加熱炉中で、150℃で1分間加熱した後に、100℃/分の速度で270℃に昇温し、10秒間熱を加え、成形試験片における変形や膨れの発生を、吸水リフローの指標として測定した。
○ :成形試験片の変形や、膨れの発生無し。
× :成形試験片の変形や、膨れの発生有り。
【0116】
(10)薄肉流動性
射出成形機(日精樹脂製PS40E)に金型(金型温度=140℃)を取り付けて、シリンダー温度=(Tm2+10)℃〜(Tm2+30)℃で、厚さ0.3mm、幅60mm、長さ60mmの成形試験片を成形した(射出速度は99%設定、射出圧力は70%設定)。最初の20ショットは捨て、その後の10ショットで成形試験片がフル充填されるか否かを、薄肉流動性の指標として測定した。
○ :フル充填された。
× :フル充填されなかった。
【0117】
[製造例1]
「熱溶融重合法」によりポリアミドの重合反応を実施した。
(a)CHDA−1(シス異性体/トランス異性体の比が75/25) 777.04g(4.51モル)、(b−1)NMD 614.87g(3.88モル)、(b−2)2MODA 108.51g(0.69モル)、及び次亜リン酸ナトリウム一水和物 1.50g(原料モノマーの総和を100質量部として0.1質量部)を、蒸留水1,500gに溶解させ、原料モノマーの均一水溶液を作った(表1参照)。
得られた水溶液を内容積5.4Lのオートクレーブ(日東高圧(株)製)に仕込み、液温(内温)50℃に保温して、オートクレーブ内を窒素置換した。オートクレーブの槽内の圧力が、ゲージ圧として(以下、槽内の圧力は全てゲージ圧として表記する。)、約2.5kg/cm2になるまで、液温約50℃から加熱を続けた(この系での液温は約145℃であった。)。槽内の圧力を約2.5kg/cm2に保つため水を系外に除去しながら、加熱を続けて、水溶液の濃度が約75質量%になるまで濃縮した(この系での液温は約160℃であった。)。水の除去を止め、槽内の圧力が約30Kg/cm2になるまで加熱を続けた(この系での液温は約245℃であった。)。槽内の圧力を約30kg/cm2に保つため水を系外に除去しながら、最終温度(後述の350℃)−50℃(ここでは300℃)になるまで加熱を続けた。液温が最終温度(後述の350℃)−50℃(ここでは300℃)まで上昇した後に、加熱は続けながら、槽内の圧力が大気圧(ゲージ圧は0kg/cm2)になるまで120分ほどかけて降圧した。
その後、樹脂温度(液温)の最終温度が約350℃になるようにヒーター温度を調整した。樹脂温度は約350℃のまま、槽内を真空装置で約53.3kPa(400torr)の減圧下に30分維持した。その後、窒素で加圧し下部紡口(ノズル)からストランド状にし、水冷、カッティングを行いペレット状で排出して、ポリアミド(以下、「PA9C−1」という。)を得た。
得られたポリアミドについての上記測定方法(1)〜(4)の評価結果を表1に示す。
【0118】
[製造例2]
製造例1と同様の原料モノマーの均一水溶液に、末端封止剤として酢酸6.86g(0.11モル)をさらに加えた点以外は、製造例1と同様にして、ポリアミド(以下、「PA9C−2」という。)を得た。
得られたポリアミドについての上記測定方法(1)〜(4)の評価結果を表1に示す。
【0119】
[製造例3]
製造例1と同様の原料モノマーの均一水溶液に、末端封止剤として安息香酸13.94g(0.11モル)をさらに加えた点以外は、製造例1と同様にして、ポリアミド(以下、「PA9C−3」という。)を得た。
得られたポリアミドについての上記測定方法(1)〜(4)の評価結果を表1に示す。
【0120】
[製造例4]
製造例1と同様の原料モノマーの均一水溶液に、末端封止剤として安息香酸1.24g(0.010モル)をさらに加えた点以外は、製造例1と同様にして、ポリアミド(以下、「PA9C−4」という。)を得た。
得られたポリアミドについての上記測定方法(1)〜(4)の評価結果を表1に示す。
【0121】
[製造例5]
製造例1と同様の原料モノマーの均一水溶液に、末端封止剤として酢酸0.61g(0.010モル)をさらに加えた点以外は、製造例1と同様にして、ポリアミド(以下、「PA9C−5」という。)を得た。
得られたポリアミドについての上記測定方法(1)〜(4)の評価結果を表1に示す。
【0122】
[製造例6]
特許第3481730号明細書の参考例3に記載された方法に従って調製した。
CHDA−1(シス異性体/トランス異性体の比が75/25) 777.04g(4.51モル)、(b−1)NMD 614.87g(3.88モル)、(b−2)2MODA 108.50g(0.69モル)、安息香酸13.94g(0.11モル)、次亜リン酸ナトリウム一水和物1.63g(原料モノマーの総和を100質量部として0.1質量部)、及び蒸留水1,500gを内容積5.4Lのオートクレーブ(日東高圧(株)製)に入れ、窒素置換した。
得られた反応液を、液温(内温)100℃で30分間撹拌した後、2時間かけて液温210℃まで昇温した。この時、槽内の圧力を22kg/cm2まで昇圧した。液温210℃、槽内の圧力を22kg/cm2で1時間反応を続けた後、230℃に昇温し、その後2時間、230℃に温度を保ち、水蒸気を徐々に抜いて槽内の圧力を22kg/cm2に保ちながら反応させた。30分かけて槽内の圧力を10kg/cm2まで下げ、さらに1時間反応させて、相対粘度[ηr]が1.25のプレポリマーを得た。
得られたプレポリマーを、100℃、減圧下で12時間乾燥し、2mm以下の大きさまで粉砕し、次いで、230℃、0.1mmHg下にて、10時間固相重合を行ってポリアミド(以下、「PA9C−10」という。)を得た。
得られたポリアミドについての上記測定方法(1)〜(4)の評価結果を表1に示す。
【0123】
[製造例7]
「界面重合法」によりポリアミドの重合反応を実施した。 (a)CHDA−1(シス異性体/トランス異性体の比が75/25)からなる1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライド0.25モル/Lを含むクロロホルム溶液と、0.70モル/Lの(b−1)NMD及び(b−2)2MODAを含む水溶液とを用意し、おのおのを36.5L/h、13.8L/hで大平洋機工(株)製ファインフローミルFM−15型に供給し、流通させ、周速20m/secで攪拌、せん断を行った。
微小粒子及びパルプ形状をした白色生成物が得られた。白色生成物をクロロホルム、水、アセトン、水の順でデカンテーションを繰り返し洗浄した後に、120℃で12時間乾燥してポリアミド(以下、「PA9C−7」という。)を得た。
得られたポリアミドについての上記測定方法(1)〜(4)の評価結果を表1に示す。
【0124】
[製造例8]
CHDA−1(シス異性体/トランス異性体の比が75/25)とCHDA−2(シス異性体/トランス異性体の比が0/100)とを混合して、(a)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(CHDA、シス異性体/トランス異性体の比が60/40)を調製した。
このように、(a)CHDA(シス異性体/トランス異性体の比が60/40)からなる1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライドを用いた点以外は、製造例1と同様にして、ポリアミド(以下、「PA9C−8」という。)を得た。
得られたポリアミドについての上記測定方法(1)〜(4)の評価結果を表1に示す。
【0125】
[比較製造例1]
特開平7−228689号公報の実施例1に記載された方法に従って調製した。
TPA 818.23g(4.75モル)、(b−1)NMD 712.30g(4.50モル)、(b−2)2MODA 79.15g(0.50モル)、安息香酸18.32g(0.15モル)、次亜リン酸ナトリウム一水和物1.63g(原料モノマーの総和を100質量部として0.1質量部)、及び蒸留水1,500gを内容積5.4Lのオートクレーブ(日東高圧(株)製)に入れ、窒素置換した。
得られた反応液を、液温(内温)100℃で30分間撹拌した後、2時間かけて液温210℃まで昇温した。この時、槽内の圧力を22kg/cm2まで昇圧した。液温210℃、槽内の圧力を22kg/cm2で1時間反応を続けた後、230℃に昇温し、その後2時間、230℃に温度を保ち、水蒸気を徐々に抜いて槽内の圧力を22kg/cm2に保ちながら反応させた。30分かけて槽内の圧力を10kg/cm2まで下げ、さらに1時間反応させて、相対粘度[ηr]が1.25のプレポリマーを得た。
得られたプレポリマーを、100℃、減圧下で12時間乾燥し、2mm以下の大きさまで粉砕し、次いで、230℃、0.1mmHg下にて、10時間固相重合を行ってポリアミド(以下、「PA9T」という。)を得た。
得られたポリアミドについての上記測定方法(1)〜(4)の評価結果を表1に示す。
【0126】
[実施例1]
製造例1のポリアミドを減圧下、120℃で24時間乾燥した後、ポリアミドに表1に示す量の(B)難燃剤、(C)難燃助剤及び(D)α,β−不飽和ジカルボン酸無水物を含む重合体をドライブレンドした。得られた混合物を2軸押出機[東芝機械(株)製TEM35、L/D=47.6(D=37mm)、設定温度=(Tm2+10)℃〜(Tm2+30)℃、スクリュー回転数300rpm]のホッパーからフィードして、同時に、サイドフィーダーより表1に示す量の(D)無機充填材を供給してダイヘッドより押し出された溶融混練物をストランド状で冷却し、ペレタイズしてペレット状のポリアミド組成物を得た。
得られたポリアミド組成物についての上記測定方法(5)〜(10)の評価結果を表1に示す。
【0127】
[実施例2〜4]
製造例1のポリアミドに替えて製造例2〜4の各ポリアミドを用いた点以外は実施例1と同様にして、ペレット状のポリアミド組成物を得た。
得られたポリアミド組成物についての上記測定方法(5)〜(10)の評価結果を表1に示す。
実施例3のポリアミド組成物を成形機で溶融させた状態で、10分間滞留させた後、成形した。得られた成形品は変色していなかった。
【0128】
[実施例5]
製造例1のポリアミドに替えて製造例5のポリアミドを用い、(C)難燃助剤としてアンチモン酸ナトリウムに変更した点以外は、実施例1と同様にして、ペレット状のポリアミド組成物を得た。
得られたポリアミド組成物についての上記測定方法(5)〜(10)の評価結果を表1に示す。
【0129】
[実施例6]
製造例1のポリアミドに替えて製造例5のポリアミドを用い、(C)難燃助剤として水酸化マグネシウムに変更した点以外は、実施例1と同様にして、ペレット状のポリアミド組成物を得た。
得られたポリアミド組成物についての上記測定方法(5)〜(10)の評価結果を表1に示す。
【0130】
[実施例7]
(C)難燃助剤として水酸化マグネシウムに変更した点以外は、実施例1と同様にして、ペレット状のポリアミド組成物を得た。
得られたポリアミド組成物についての上記測定方法(5)〜(10)の評価結果を表1に示す。
【0131】
[実施例8〜10]
製造例1のポリアミドに替えて製造例5のポリアミドを用い、表1に示す量の(B)難燃剤、(C)難燃助剤及び(D)無機充填材に替えた点以外は、実施例1と同様にして、ペレット状のポリアミド組成物を得た。
得られたポリアミド組成物についての上記測定方法(5)〜(10)の評価結果を表1に示す。
【0132】
[実施例11〜13]
製造例1のポリアミドに替えて製造例6〜8の各ポリアミドを用いた点以外は、実施例1と同様にして、ペレット状のポリアミド組成物を得た。
得られたポリアミド組成物についての上記測定方法(5)〜(10)の評価結果を表1に示す。
また、実施例11のポリアミド組成物を成形機で溶融させた状態で、10分間滞留させた後、成形したところ、成形品は灰色に変色した。
【0133】
[比較例1〜3]
製造例1のポリアミドに替えて比較製造例1のポリアミドを用い、表1に示す量の(B)難燃剤、(C)難燃助剤及び(D)無機充填材に替えた点以外は、実施例1と同様にして、ペレット状のポリアミド組成物を得た。
得られたポリアミド組成物についての上記測定方法(5)〜(10)の評価結果を表1に示す。
【0134】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明は、耐熱性、流動性(特に薄肉流動性)、靭性及び低吸水性に優れ、さらに難燃性にも優れた高融点ポリアミド組成物を含む電気部品又は電子部品を提供することができる。なかでも、ワイヤーハーネスコネクターなどの自動車電装部品や表面実装に要求されるリフロー半田工程での耐熱性に優れるために表面実装技術(SMT)対応のコネクター、スイッチ類、コイルボビン、ブレーカー、電磁開閉器、ホルダー、プラグ、スイッチなどの電気部品又は電子部品に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(a)少なくとも50モル%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含むジカルボン酸と(b)1,9−ノナンジアミンを50モル%を超えて含むジアミンとを重合させたポリアミドと、
(B)難燃剤と、
を含有するポリアミド組成物を含む、電気部品。
【請求項2】
前記(A)のポリアミド100質量部に対して、前記(B)難燃剤20〜90質量部及び(C)難燃助剤0〜30質量部を含有するポリアミド組成物を含む、請求項1に記載の電気部品。
【請求項3】
前記(b)のジアミンが、50モル%未満の2−メチル−1,8−オクタンジアミンを含む、請求項1又は2に記載の電気部品。
【請求項4】
前記(B)難燃剤が、ハロゲン系及び/又はリン系難燃剤である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気部品。
【請求項5】
前記(B)難燃剤が、臭素化ポリスチレン、ホスフィン酸塩及びジホスフィン酸塩からなる群より選択される一以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気部品。
【請求項6】
前記(C)難燃助剤が、アンチモン系、ホウ酸亜鉛及び水酸化マグネシウムからなる群より選択される一以上である、請求項2〜5のいずれか1項に記載の電気部品。
【請求項7】
表面実装用電気部品である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電気部品。
【請求項8】
厚さ0.4mm以下の薄肉部を含む、請求項7に記載の電気部品。
【請求項9】
前記(A)のポリアミドの分子鎖の末端封止率が、10%未満である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の電気部品。
【請求項10】
前記(A)のポリアミドにおけるトランス異性体比率が、51〜85モル%である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の電気部品。

【公開番号】特開2011−74361(P2011−74361A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186967(P2010−186967)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】