説明

ポリイミド前駆体組成物及びポリイミド組成物の製造方法

【課題】ポリイミド樹脂の感光性付与の際に必要である、365nmの光線の透過性を向上させることと、熱膨張係数が大きいことに起因する、基材との密着性の低下や基材の反りなど従来技術包含課題の軽減とを同時に満たすポリイミド材料を提供すること。
【解決手段】本発明の新規ポリイミド前駆体及びポリイミド樹脂は、主鎖骨格内にエタノアントラセン構造を少なくとも1つ有する繰り返し構造を含み、還元粘度が0.5から6.0dL/gであり、膜厚1.0μm以上のフィルム状とした際の365nmの光線透過率が10%以上であり、該フィルム状物を熱処理でイミド化後の線熱膨張係数が10ppm/C未満であること、を特徴とする。本発明の新規ポリイミド前駆体及びポリイミド樹脂は、365nmの光線の透過性が高く、良好なパターンが得られ、加熱硬化後の熱膨張係数が小さく、シリコンウェハなどの低熱膨張係数の基材上に塗布し加熱することで絶縁膜などの樹脂膜を形成することができ、反りなどを軽減でき、これらの結果として、半導体デバイス等の製造における電気、電子絶縁材料として極めて有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス等の製造において電気、電子絶縁材料として用いられるポリイミド樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子の表面保護膜や層間絶縁膜の形成には、耐熱性、電気特性、機械特性に優れたポリイミド樹脂が使用されてきた(例えば、非特許文献1参照)。また、近時、メモリやマイクロプロセッサーなどの主要デバイスの生産性向上に対応するように半導体素子の高集積化と大型化とが進められ、また、情報機器用デバイスの薄型パッケージングに対応するように封止樹脂パッケージの薄型化と小型化とが進められ、さらに、半田リフローによる表面実装への移行が進められるようになってきている。これら事情に伴って、これらに使用される表面保護膜や層間絶縁膜に対しても耐熱サイクル性、耐熱ショック性などの大幅な性能向上が要求されてきており、より高性能化されたポリイミド樹脂の開発が望まれている。
【0003】
しかし、従来のポリイミド樹脂は、金属や無機材料と比べると、熱膨張係数が大きいという問題があった。
【0004】
樹脂の熱膨張係数が大きい場合、金属や無機材料の基材に樹脂を塗布して樹脂膜を形成すると、熱膨張係数の差に起因する熱応力によって、形成された樹脂膜にクラックが発生したり、樹脂膜が基材から剥離したり、基材に反りが発生したり、基材が破壊されたり等が起こる。さらに、基材に大きな反りを生じた状態で、パターニングのためのリソグラフィーを行うと、パターニングの解像度が悪くなり問題となる。大型の基材を使用した場合や、基材上に厚く樹脂を塗布する場合には、この問題は大きくなる。特に年々、使用されるシリコンウェハの径は大きくなっている。そのため、熱膨張係数の小さい感光性樹脂の開発が強く望まれている。特にシリコンウェハは基材として重要であるが、熱膨張係数が3ppm/Cと非常に小さく、樹脂との熱膨張差から生じるウェハの反りは、製造工程での不良品の発生、搬送不良、割れの要因、あるいはデバイス特性への影響を考えると好ましくない。
【0005】
また、回路パターンの製造工程を簡略化するために、感光性ポリイミドを使用することが注目されてきている。例えば、ポリイミド前駆体に感光基を有する化合物を混合する方法(例えば、特許文献1)、ポリイミド前駆体中の官能基と感光基を有する化合物の官能基とを反応させて感光基を付与させる方法(例えば特許文献2、特許文献3)などが提案されている。
【0006】
しかし、これらの感光性ポリイミド前駆体は耐熱性、機械特性に優れる芳香族系モノマーに基本骨格を用いており、そのポリイミド前駆体自体の吸収のため、紫外領域での透光性が低く、露光部における光化学反応を充分効果的に行うことができず、低感度であったり、パターンの形状が悪化するという問題があった。
【0007】
また、最近では、半導体の高集積化に伴い、加工ルールが益々小さくなり、より高い解像度が求められる傾向にある。そのため、ステッパと呼ばれる縮小投影露光機が用いられるようになってきている。
【0008】
ステッパは、超高圧水銀灯の高出力発振線、エキシマレーザのような単色光を利用するものである。これまでステッパとしては、超高圧水銀灯のg線と呼ばれる可視光(波長:435nm)を使ったg線ステッパが主流であったが、さらに加工ルール微細化の要求に対応するため、使用するステッパの波長を短くすることが必要である。そのため、現在使用する露光機は、g線ステッパ(波長:435nm)からi線ステッパ(波長:365nm)に移行しつつある。
【0009】
しかし、g線ステッパ用に設計された従来の感光性ポリイミドのベースポリマは、先に述べた理由により透明性が低く、特にi線(波長:365nm)での透過率はほとんどないため、i線ステッパでは、実用的なパターンが得られない。
【0010】
また、半導体素子の高密度実装方式であるLOC(リードオンチップ)に対応して表面保護用ポリイミド膜はさらに厚膜のものが求められているが、厚膜の場合には、透過性が低い問題はさらに深刻になる。このため、i線透過率の高く、i線ステッパにより良好なパターン形状を有するポリイミドパターンの得られる感光性ポリイミドが強く求められている。
【0011】
一般に分子構造を剛直にすることにより低熱膨張性は達成できるが、剛直な構造の場合、i線をほとんど透過しないため、感光特性が低下する。
【0012】
また、i線の透過性を向上させる方法として、フッ素を導入したポリイミド(例えば、特許文献4)や分子鎖を屈曲させたポリイミド(例えば、特許文献5)が提案されている。しかし、いずれも場合においても、熱膨張係数が増大するため、半導体素子とした場合の信頼性が低いという問題がある。
【0013】
これらの問題を解決させるために、以前にテトラカルボン酸無水物側に逆Diels−Alder反応を利用し、ポリイミド前駆体では高いi線透過性を示し、加熱イミド化後に低線膨張を示すポリイミドが報告されている(特許文献6)。
【0014】
しかし、対応するテトラカルボン酸無水物の合成が多段階に渡ること(非特許文献2)、実際に合成できる化合物の種類が少ないことなどから、工業的に用いることが困難であった。またこれらの酸無水物は、マレイン酸などを用いたDiels−Alder反応で合成される (非特許文献2及び非特許文献3)。このため、目的とする部位での逆Diels−Alder反応以外に、主鎖部分でも逆Diels−Alder反応が生じ、主鎖が分解するおそれがあり、耐熱性に不安があった(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開昭54−109828号公報
【特許文献2】特開昭56−24343号公報、
【特許文献3】特開昭60−100143号公報
【特許文献4】特開2001−89658号公報
【特許文献5】特開平8−36264号公報
【特許文献6】特開2000−313743号公報
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】「最新ポリイミド〜基礎と応用」(エヌ・ティー・エス)p.327〜338
【非特許文献2】Journal of American Chemical Society 119, 77 (1997)
【非特許文献3】Macromolecules, 26, 3490(1993)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、ポリイミド樹脂の感光性付与の際に必要である、365nmの光線の透過性を向上させることと、熱膨張係数が大きいことに起因する、基材との密着性の低下や基材の反りなど従来技術包含課題の軽減とを同時に満たすポリイミド材料を、ジアミン部分の逆Diels−Alder反応による芳香族化とイミド化により満たすものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下に示す手段により、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0019】
すなわち、本発明は、以下の構成からなる。テトラカルボン酸無水物とジアミン化合物からなるポリイミド前駆体であって、主鎖骨格内にエタノアントラセン構造を少なくとも1つ有する繰り返し構造を含むポリイミド前駆体であって、還元粘度が0.5から6.0dL/gであり、膜厚1.0μm以上のフィルム状とした際の365nmの光線透過率が10%以上であり、該フィルム状物を熱処理でイミド化後の線熱膨張係数が10ppm/C未満であること、を特徴とし、そのことにより上記目的が達成される。
【0020】
前記ポリイミド前駆体は、一般式(1)で示される構造を繰り返し単位中に有することが望ましい。
【化1】

【0021】
(式中R1、R2、R3、R4は水素原子もしく1価の有機基、R5、は4価の有機基を示す。)
【0022】
一般式(1)で示されるポリイミド前駆体を、150C以上400C未満の温度で、10分以上72時間未満加熱するという製造方法により、逆Diels−Alder反応及びイミド化が起こり、式(2)で表されるポリイミドが得られる。

【化3】

【0023】
(式中R6は4価の有機基を示す)
【発明の効果】
【0024】
本発明により、i線透過率が高く、良好なパターンが得られ、加熱硬化後の熱膨張係数が小さく、シリコンウェハなどの低熱膨張係数の基材上に塗布し加熱することで絶縁膜などの樹脂膜を形成することができ、反りなどを軽減でき、これらの結果として、半導体デバイス等の製造における電気、電子絶縁材料として極めて有効である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例1に記載したPAA1、PI1及び比較例2に記載したPI2の赤外線吸収スペクトルである。
【図2】実施例1に記載したPAA1、実施例2に記載したPAA2、及び実施例3に記載した紫外可視吸収スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発表を詳細に説明する。
【0027】
本発明は、テトラカルボン酸無水物とジアミン化合物からなるポリイミド前駆体及び/またはポリイミドであって、主鎖骨格内にエタノアントラセン構造を少なくとも1つ有する繰り返し構造を含むポリイミド前駆体及び/またはポリイミドであって、膜厚1.0μm以上のフィルムの365nmの光線透過率が10%以上であり、150C以上で熱処理後の線熱膨張係数が10ppm/C未満であること、を特徴とする。
【0028】
本発明に関するポリイミド前駆体は、好ましくは一般式(1)で表される構造単位を主成分としており、加熱するか、もしくは適度な触媒を添加することにより、イミド環を有する樹脂となり得るものであり、イミド環により耐熱性に優れたポリイミドが形成され、加熱により、逆Diels−Alder反応が起こり、剛直なアントラセン骨格有する樹脂となり得るものであり、アントラセン骨格により耐熱性かつ低い線膨張係数を示すポリイミドが形成される。
【化4】

【0029】
ここで、上記(1)式中、R1、R2、R3、R4は水素原子、酸素原子、水酸基、フッ素原子、塩素原子もしく1価の有機基である。
【0030】
上記(1)中、R1、R2、R3、R4の1価の有機基は、特には限定されないが、メチル基、エチル基、エチレン基などのアルキル基、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基などの芳香族基、メチルエステル、エチルエステル、フェニルエステルなどのエステル基などが具体的に挙げられ、特にR1、R4は水素原子であり、R2,R3はメチルエステル基が好ましい。
【0031】
上記(1)中、R5は4価の有機基であれば特に限定されないが、ポリイミドに耐熱性を持たせるために、芳香族基を含むことが好ましい。具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環などの芳香族を1つ以上含むものが挙げられる。さらには、ポリイミドに剛直性を持たせるために、R5の4個の結合部位は芳香環上に直接存在することが好ましく、R1が複数の芳香環を有する基である場合には、4個の結合部位は、同一の芳香上に存在していても異なった芳香環上に存在しても良い。
【0032】
また、R5が複数の芳香環を有する基である場合、これら複数の芳香環は、単結合、エーテル結合、メチレン結合、エチレン結合、2,2−プロピレン結合、2,2-ヘキサフルオロプロピレン結合、スルホン結合、スルホキシド結合、チオエーテル結合及びカルボニル結合から選択される1または2の結合を介して互いに結合することが、i線透過性及び加熱処理後に形成されるポリイミド樹脂の耐熱性及び機械的特性の向上の点から好ましい。
【0033】
R5の好ましい具体例としては、無水ピロメリット酸、ビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ペンタン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサ−1−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−エチルシクロヘキサン−1−(1,2),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、特に、低線膨張係数を維持するためには無水ピロメリット酸の使用が好ましい。これらのテトラカルボン酸二無水物は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
本発明のポリイミド前駆体は、前記のエタノアントラセンジアミンを必須の材料として使用するが、これとともに、その他のジアミンを併用することもできる。その具体例としては、例えば、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノシ)フェニル]ブタン、2,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−フルオロフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−メチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−シアノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−ビフェノキシベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリル及び上記芳香族ジアミンにおける芳香環上の水素原子の一部もしくは全てがハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基またはアルコキシル基、シアノ基、またはアルキル基またはアルコキシル基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基またはアルコキシル基で置換された芳香族ジアミン等が挙げられる。これらのジアミンは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらは、前記のエタノアントラセンジアミンと併用する際には、全ジアミンの15モル%未満が好ましく、5モル%未満がより好ましい。
【0035】
一般式(1)で示されるポリイミド前駆体および/またはポリイミドを、150C以上400C未満の温度で、10分以上72時間未満加熱するという製造方法により、逆Diels−Alder反応及び/またはイミド化が起こり、式(2)で表されるポリイミドが得られる。
【化2】

【0036】
一般式(1)に示されるポリイミド前駆体を使用した場合、加熱することにより、逆Diels−Alder反応とイミド化が起こり、低線膨張係数かつ高耐熱性ポリイミドを得ることが出来る。
【0037】
上記(3)中、R6は4価の有機基であれば特に限定されないが、ポリイミドに耐熱性を持たせるために、芳香族基を含むことが好ましい。具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環などの芳香族を1つ以上含むものが挙げられる。さらには、ポリイミドに剛直性を持たせるために、R6の4個の結合部位は芳香環上に直接存在することが好ましく、R6が複数の芳香環を有する基である場合には、4個の結合部位は、同一の芳香上に存在していても異なった芳香環上に存在しても良い。
【0038】
また、R6が複数の芳香環を有する基である場合、これら複数の芳香環は、単結合、エーテル結合、メチレン結合、エチレン結合、2,2−プロピレン結合、2,2-ヘキサフルオロプロピレン結合、スルホン結合、スルホキシド結合、チオエーテル結合及びカルボニル結合から選択される1または2の結合を介して互いに結合することが、i線透過性及び加熱処理後に形成されるポリイミド樹脂の耐熱性及び機械的特性の向上の点から好ましい。
【0039】
R6の好ましい具体例としては、無水ピロメリット酸、ビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ペンタン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサ−1−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−エチルシクロヘキサン−1−(1,2),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられるが、低線膨張係数を維持するためには無水ピロメリット酸の使用がより好ましい。これらのテトラカルボン酸二無水物は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
本発明のポリイミドは、前記のエタノアントラセンジアミンを必須の材料として使用するが、これとともに、その他のジアミンを併用することもできる。その具体例としては、例えば、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノシ)フェニル]ブタン、2,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−フルオロフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−メチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−シアノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−ビフェノキシベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリル及び上記芳香族ジアミンにおける芳香環上の水素原子の一部もしくは全てがハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基またはアルコキシル基、シアノ基、またはアルキル基またはアルコキシル基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基またはアルコキシル基で置換された芳香族ジアミン等が挙げられる。これらのジアミンは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらは、前記のエタノアントラセンジアミンと併用する際には、全ジアミンの15モル%未満が好ましく、5モル%未満がより好ましい。
【0041】
反応に使用する有機溶媒としては、一般式(1)に示したポリイミド前駆体及び/またはポリイミドを完全に溶解する極性溶媒が好ましく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ヘキサメチルリン酸トリアミド、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
【0042】
また、この極性溶媒以外に、ケトン類、エステル類、ラクトン類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類、炭化水素類等も使用することができ、例えば、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,4−ジクロロブタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0043】
一般式(1)の合成反応は、有機溶媒中で撹拌及び/または混合しながら、0〜80℃の温度範囲で、10分〜168時間連続して進められるが、必要により重合反応を分割したり、温度を上下させてもかまわない。この場合に、両反応体の添加順序には特に制限はないが、芳香族ジアミン類の溶液中に芳香族テトラカルボン酸無水物類を添加するのが好ましい。
【0044】
本発明では、特に一般式(2)に示されるポリイミド合成の際に、閉環触媒を用いても良い。本発明で使用される閉環触媒の具体例としては、安息香酸などの芳香族カルボン酸、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどの脂肪族第3級アミン、イソキノリン、ピリジン、ベータピコリンなどの複素環式第3級アミンなどが挙げられるが、複素環式第3級アミンから選ばれる少なくとも一種のアミンを使用することが好ましい。閉環触媒の含有量は、閉環触媒の含有量(モル)/前駆体であるポリアミド酸中の含有量(モル)が0.01〜10.00となる範囲が好ましい。
【0045】
本発明では、特に一般式(2)に示されるポリイミド合成の際に、脱水剤を用いても良い。例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸などの脂肪族カルボン酸無水物、及び無水安息香酸などの芳香族カルボン酸無水物などが挙げられるが、効率よく脱水できるものであれば、特にこれらに限定されない。脱水剤の含有量は、脱水剤の含有量(モル)/ポリアミド酸の含有量(モル)が0.01〜10.00となる範囲が好ましい。
【0046】
一般式(1)に示されるポリイミド前駆体を加熱する際の温度は150〜400℃であり、この加熱温度が、150℃未満であると、逆Diels−Alder反応が完結しない、もしくはポリイミド膜の機械特性及び熱特性が低下する傾向にあり、400℃を超える場合はポリイミド膜の機械特性及び熱特性に劣る傾向がある。
【0047】
本発明のポリイミド前駆体及びポリイミドは、含漬法、スプレー法、スクリーン印刷法、スピンコート法などによって、シリコンウェハ、金属基板、セラミック基板などの基材表面に塗布し、加熱して溶剤の大部分を除くことにより、基材表面に接着性のない塗膜を与えることができる。塗膜の厚みに特に制限は無いが、1〜50μmであることが望ましい。
【0048】
本発明のポリイミド前駆体及びポリイミドは、半導体装置等の電子部品用の表面保護膜、多層配線板の層間絶縁膜等に使用することができる。本発明のポリイミド前駆体及びポリイミドを用いた表面保護膜(バッファーコート膜)は、低線膨張係数を示すために、基材の反りや基材からの剥離がなく、本発明のポリイミド前駆体及びポリイミドから得られた層間絶縁膜や表面保護膜を用いた半導体素子は、極めて信頼性に優れるものとなる。このような信頼性の高い半導体素子を得るための膜の具体的な線膨張係数(50〜200℃の温度範囲での平均線膨張係数)としては、好ましくは−10〜10ppm/℃であり、より好ましくは0〜10ppm/℃である。
【0049】
本発明のポリイミド前駆体及びポリイミドは、層間絶縁層や表面保護膜層ばかりではなく、その優れた特性のため、カバーコート層、コア、カラー、アンダーフィルなどの材料として使用されてもよいものである。
【実施例】
【0050】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の例における物性値は、次の方法により測定した。
【0051】
<赤外線吸収スペクトル>
日本分光社製フーリエ変換分光光度計(FT/IR−6100)を用い、全反射測定法にて測定波長範囲 600−4000cm−1 で測定した。
【0052】
<還元粘度>
濃度を0.2g/dLとしてポリイミド前駆体のN−N‘−ジメチルアセトアミド溶液を、オストワルド型粘度計を用いて、25℃で測定した。
【0053】
<紫外線吸収スペクトル>
島津製作所製紫外可視吸光測定装置(UV-2450)を用いて、測定波長範囲 200-700nmにおける透過率測定を行った。その中で365nmの透過率を検討した。透過率が高いほど。膜の透明性が良好であることを意味する。
【0054】
<線熱膨張係数:CTE>
測定対象のフィルムについて、下記条件にて伸縮率を昇温および降温でそれぞれ2回ずつ測定し、最後の降温過程の200℃から50℃までの伸縮率をCTEとして算出した。
装置名 :ティー・エイ・インスツルメント社製 TMA Q400
サンプル長さ : 8mm
サンプル幅 : 2mm
膜厚 : 15μm
初荷重 : 0.01N
昇温開始温度 : 25℃
昇温終了温度 : 250℃
昇温速度 : 10℃/min
雰囲気 : 窒素

【0055】
(実施例1)
攪拌機を備え、N ライン、シリカゲルを充填した塩カル管を取り付けた30mLの三口ナスフラスコに、ジメチル 2,6−ジアミノ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジエタノアントラセン−11,12−トランスージカルボキシレート (Df) を0.3338g、ジメチルホルムアミド(DMAc)をDMAc を 6.56g 加え、室温で攪拌溶解し、この溶液にピロメリット酸無水物を 0.5392g 添加し、48時間攪拌し、粘稠なポリイミド前駆体のPAA1溶液を得た。ここで、Dfは、論文 (M. A. Rabjohns, P. Hodge, P. A. Lovell, Polymer, 38, 3395 (1997)) を参照にして合成した。2,6−ジアミノアントラキノンを還元して得られた2,6−ジアミノアントラセンと、フマル酸ジメチルをDiels−Alder反応を行うことでDfが得られた。固有粘度は は1.2dL/gとなった。
【0056】
PAA1溶液をポリマー濃度が12wt%となるようにDMAcで薄め、アプリケータを用いてスライドガラス上に塗布した。この塗布物をスライドガラスごと、30C で 15 min 真空乾燥させた後にスライドガラスより剥離し、グリーンフィルムを得た。このフィルムをPAA1フィルムとした。フィルムの厚さは20μmであった。PAA1フィルムの赤外線吸収スペクトルを図1に示す。365nmの光線透過率は29%となった。PAA1の紫外可視吸収スペクトルを図2に示す。
【0057】
PAA1溶液をポリマー濃度が12wt%となるようにDMAcで薄め、アプリケータを用いてシリコンウェハ上に塗布した。100Cで15分間、N雰囲気下でプリベイクを行った後、一部はシリコンウェハ上から剥がし、枠に固定した。
それぞれのフィルムを350C まで 3℃/分 で加熱し、350C で 60分 保持してポリイミドフィルムを得た。このフィルムをPI1とした。フィルムの厚さは15μmであった。PI1の赤外線吸収スペクトルを図1に示す。1779cm−1にイミドカルボニルの対称伸縮振動が、723cm−1にイミドカルボニルの変角振動が確認されたことから、イミド化が進んでいるものと考えられる。また、PAA1では1221cm−1にエステルの伸縮振動が確認されたが、PI1では消失したこと、後述する逆Diels−Alder反応を経由せずに直接作成したポリイミドフィルムと比較してほぼ同様のピークが得られたことから、逆Diels−Alder反応は完了していると考えられる。CTEを測定したところ2.4ppm/℃となった。このことから、このポリイミド前駆体フィルム(PAA1)、及びそれを加熱して得られたポリイミドフィルム(PI1)は、高いi線透過率を有しながら、かつイミド化後の熱線膨張係数が小さいことが明らかである。表1に物性をまとめた。
【0058】
(比較例1)
ジアミンとしてジアミノアントラセンを用い、実施例1と同様な方法により、ポリイミド前駆体フィルム、PAA2、及び、ポリイミドフィルム、PI2、を得た。PAA2の膜厚は20μm、PI2の膜厚は15μmであった。赤外線吸収スペクトルを図1に示す。PAA2の固有粘度は1.9dL/g、365nmの光線透過率は0%(図2)、PI2のCTEは1.4ppm/℃となった。逆Diels−Alder反応を用いない場合には、365nmの光線を透過しないことがわかった。
【0059】
(比較例2)
ジアミンとして5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾールを用い、上記実施例と同様な方法により、ポリイミド前駆体フィルム、PAA3、及びポリイミドフィルム、PI3、を得た。PAA3の膜厚は20μm、PI3の膜厚は15μmであった。PAA3の固有粘度は4.7dL/g、365nmの光線透過率は0%(図2)、PI3のCTEは2.0ppm/℃となった。非常に低い線膨張係数を示すが、365nmの光線を透過しないことが分かった。
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のポリイミド前駆体及びポリイミドは、半導体デバイスなどの製造での電気、電子絶縁材料として、詳しくは、ICやLSIなどの半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜などに用いられ、線膨張係数が低く基材である半導体ウェハなどとの線膨張係数が近接しており、その乖離による基材の反りや基材とのこれら被膜のはがれのないものとなり、またi線透過率が高いため、感光性の付与を行った際に感度よくパターンが描けるため、これらの用途に極めて有意義である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖骨格内にエタノアントラセン構造を少なくとも1つ有する繰り返し構造を含むポリイミド前駆体であって、還元粘度が0.5から6.0dL/gであり、膜厚1.0μm以上のフィルム状とした際の365nmの光線透過率が10%以上であり、該フィルム状物を熱処理でイミド化後の線熱膨張係数が10ppm/C未満であることを特徴とするポリイミド前駆体組成物。
【請求項2】
前記ポリイミド前駆体は、一般式(1)で示される構造を含む、請求項1記載のポリイミド前駆体組成物。
【化1】

(式中R1、R2、R3、R4は水素原子もしくは1価の有機基、R5は4価の有機基を示す。)
【請求項3】
一般式(1)で示されるポリイミド前駆体を、150C以上400C未満の温度で、10分以上72時間未満加熱することで、式(2)であらわされるポリイミドを得ることを特徴とするポリイミド組成物の製造方法。
【化3】

(R6は4価の有機基を示す)

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−213798(P2011−213798A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81445(P2010−81445)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】