説明

ポリイミド樹脂、樹脂組成物及び電子材料

【課題】耐熱性が高く、平均熱膨張係数が小さい溶剤に可溶なポリイミド樹脂の提供。
【解決手段】3,3’−ジアミノジフェニルスルホンを含むジアミンと、4,4’−ビフタル酸無水物及び/又は3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物を含むテトラカルボン酸二無水物との反応により得られ、25℃においてN−メチル−2−ピロリドンに可溶なポリイミド樹脂であって、当該ポリイミド樹脂のガラス転移点以下の温度における平均線膨張係数が50ppm/K以下であるポリイミド樹脂、当該ポリイミド樹脂を含む樹脂組成物、及び当該樹脂組成物を用いてなる電子材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド樹脂、樹脂組成物及び電子材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子材料用途において、電子機器の小型化や高機能化、高性能化に伴い、使用する材料には接続信頼性や高耐熱性、低熱膨張等の特性が求められている。例えば、フレキシブル配線板等では、柔軟性、耐熱性や機械強度に優れるポリイミド樹脂やポリアミドイミド樹脂が用いられ、単独、あるいは他の成分と混合した樹脂組成物として用いることができる(特許文献1)。
【0003】
ポリイミド樹脂の製造方法としては、テトラカルボン酸二無水物とジアミンの反応を利用したポリアミック酸法が広く知られている(特許文献2等参照)。ポリイミド樹脂は、一般的に溶剤に不溶であるため、ポリアミック酸法によりポリイミドフィルムを製造する場合には、通常ポリアミック酸の溶液を基板等の上に塗布した後に、加熱により、溶剤を除去するとともに、アミック酸部位をイミド基へと変換する。
【0004】
ここで、ポリアミック酸は保存安定性が悪い傾向があり、保存状態により分子量が低下し、低粘度化する傾向があるという問題がある。さらに、ポリアミック酸の溶液を加熱してポリイミドフィルムを形成する場合には、イミド化の際に生成する水によりフィルムに欠陥(ピンホール)が生じやすく、また高温で長時間加熱する必要があり、基板等が熱劣化するおそれがあるという問題がある。
【0005】
これに対して、特許文献3にはテトラカルボン酸二無水物とジイソシアネートとの反応により、一段階で有機溶剤に可溶なポリイミド樹脂を得るイソシアネートベースポリイミド法が開示されている。この方法によれば、ポリイミド樹脂溶液における溶剤を除去することによりポリイミドフィルムを形成することができるため、高温で長時間加熱する必要がなくなり、上述のポリアミック酸法の問題を解消し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−224151号公報
【特許文献2】特開平4−339835号公報
【特許文献3】特開昭61−111317号公報
【特許文献4】特開平8−3314号公報
【特許文献5】特開平6−175134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3等に記載のイソシアネートベースポリイミド法を用いても、溶剤可溶性ポリイミド樹脂を得られないことが多く、また、反応系中の水分を十分に除去しないとイソシアネートが水分と反応しアミンとなる副反応を引き起こすため、良好なポリマが得られないという問題がある。
【0008】
さらに、溶剤可溶性を発揮させるために、モノマ分子の対称性を低下させたポリイミド樹脂や、エーテル結合等の柔軟な骨格を導入したポリイミド樹脂も知られているが、このような溶剤可溶性ポリイミド樹脂はガラス転移点が低く、平均熱膨張係数は大きいものであり、十分な耐熱性と接続信頼性を有しないため、改善の余地があった。
【0009】
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、耐熱性が高く、平均熱膨張係数が小さく、かつ溶剤に可溶であるポリイミド樹脂、当該樹脂を含む樹脂組成物、及び当該樹脂組成物を用いた電子材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物との反応により得られ、25℃においてN−メチル−2−ピロリドンに可溶なポリイミド樹脂であって、ポリイミド樹脂のガラス転移点以下の温度における平均線膨張係数が50ppm/K以下であるポリイミド樹脂を提供する。
かかるポリイミド樹脂によれば、耐熱性が高く、平均熱膨張係数が小さく、かつ溶剤に可溶である。
【0011】
上記ジアミンはスルホニル基を有する芳香族ジアミンを含むことが好ましく、スルホニル基を有する芳香族ジアミンは3,3’−ジアミノジフェニルスルホンであることが好ましい。
上記テトラカルボン酸二無水物は、4,4’−ビフタル酸無水物及び/又は3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物を含むことが好ましい。
【0012】
本発明はまた、上記本発明のポリイミド樹脂を含む樹脂組成物を提供する。かかる樹脂組成物は、本発明のポリイミド樹脂を含むので、耐熱性が高く、平均熱膨張係数が小さく、かつ溶剤に可溶である。
【0013】
本発明はさらに、上記本発明の樹脂組成物を用いてなる電子材料を提供する。かかる電子材料は、本発明の樹脂組成物を用いているので、耐熱性が高く、平均熱膨張係数が小さい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、耐熱性が高く、平均熱膨張係数が小さく、かつ溶剤に可溶であるポリイミド樹脂、当該樹脂を含む樹脂組成物、及び当該樹脂組成物を用いた電子材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のポリイミド樹脂は、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物との反応により得られ、25℃においてN−メチル−2−ピロリドンに可溶なポリイミド樹脂である。
【0016】
上記ジアミンは、スルホニル基を有する芳香族ジアミンを含むことが好ましく、スルホニル基を有する芳香族ジアミンは3,3’−ジアミノジフェニルスルホンであることが好ましい。特に、ジアミンとして3,3’−ジアミノジフェニルスルホンを用いることにより、ポリイミド樹脂の溶剤可溶性を大きく改善することができる。
【0017】
上記ジアミンとしては、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン以外の芳香族ジアミンや脂肪族ジアミンを含んでいてもよい。
【0018】
このような芳香族ジアミンとしては、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,3−ジアミノトルエン、3,4−ジアミノトルエン、3,4−ジメチル−1,2−フェニレンジアミン、3,5−ジメチル−1,2−フェニレンジアミン、3,6−ジメチル−1,2−フェニレンジアミン、4,5−ジメチル−1,2−フェニレンジアミン、3,4,5−トリメチル−1,2−フェニレンジアミン、3,4,6−トリメチル−1,2−フェニレンジアミン、3,4,5,6−テトラメチル−1,2−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、3,5−ジアミノトルエン、2,4−ジメチル−1,3−フェニレンジアミン、2,5−ジメチル−1,3−フェニレンジアミン、4,5−ジメチル−1,3−フェニレンジアミン、4,6−ジメチル−1,3−フェニレンジアミン、2,4,5−トリメチル−1,3−フェニレンジアミン、2,4,6−トリメチル−1,3−フェニレンジアミン、4,5,6−トリメチル−1,3−フェニレンジアミン、2,4,5,6−テトラメチル−1,3−フェニレンジアミン、3,5−ジアミノトルエン、2,3−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、2,6−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、2,5−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、2,3,5−トリメチル−1,4−フェニレンジアミン、2,3,5,6−テトラメチル−1,4−フェニレンジアミン、2−アミノベンジルアミン、3−アミノベンジルアミン、4−アミノベンジルアミン、3,4,5,6−テトラフルオロ−1,2−フェニレンジアミン、2,4,5,6−テトラフルオロ−1,3−フェニレンジアミン、2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレンジアミン、3,5−ジヒドロキシ−1,2−フェニレンジアミン、4,6−ジヒドロキシ−1,3−フェニレンジアミン、2,4−ジヒドロキシ−1,3−フェニレンジアミン、2,6−ジヒドロキシ−1,4−フェニレンジアミン、1,2−ジアミノナフタレン、1,3−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、1,6−ジアミノナフタレン、1,7−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、2,3−ジアミノナフタレン、2,5−ジアミノナフタレン、1,2−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレン、1,2−ジアミノアントラキノン、1,3−ジアミノアントラキノン、1,4−ジアミノアントラキノン、1,5−ジアミノアントラキノン、1,6−ジアミノアントラキノン、1,7−ジアミノアントラキノン、1,8−ジアミノアントラキノン、2,3−ジアミノアントラキノン、2,5−ジアミノアントラキノン、2,6−ジアミノアントラキノン、2,7−ジアミノアントラキノン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,5−ジメチルビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,6−ジメチルビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,6−ジメチルビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,3’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’,6,6’−テトラメチルビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’−ジアミノオクタフルオロビフェニル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチル−5,5’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−(トリフルオロメチル)−5,5’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−アミノ−2−メチル−5ヒドロキシフェニル)エーテル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−2−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、5,5’−ジメチル−2,2’−スルホニル−ビフェニル−4,4’−ジアミン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)−シロキサン、(11S,12S)−9,10−ジヒドロ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジアミン、(11R,12R)−9,10−ジヒドロ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジアミン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、2,2’−エチレンジアニリン等が例示できる。
【0019】
また、脂肪族ジアミンとしては、上述した芳香族ジアミンの水添物、イソホロンジアミン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ナノンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、ポリプロピレンオキサイドジアミン(商品名ジェファ−ミン 三井化学ファイン株式会社製)等が例示でき、シロキサンジアミンとしては、ポリジメチルシロキサンジアミン(シリコ−ンオイルX−22−161AS(アミン当量450)、 X−22−161A(アミン当量840)、X−22−161B(アミン当量1500)、X−22−9409(アミン当量700)、X−22−1660B−3(アミン当量2200)、KF−8010(アミン当量415)、LP−7100(ビスアミノプロピルテトラメチルジシロキサン)(以上、信越化学工業株式会社製))等を例示できる。
【0020】
上記テトラカルボン酸二無水物としては、4,4’−ヘキサフルオロプロピリデンビスフタル酸二無水物、4,4’−ビフタル酸無水物、ジフェニル−2,3,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ジフェニル−2,2’,3,3’−テトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、1−トリフルオロメチル−2,3,5,6−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ジフェニルプロパン−2,3,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,3,3’,4’−ジフェニルメタンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、2,3,3’4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、フエナントレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、チオフエン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メチルフェニルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニルジメチルシリル)ベンゼン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリテート無水物)、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ−(2,2,2)−オクト(7)−エン2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ビス(エキソビシクロ(2,2,1)ヘプタン−2,3−ジカルボン酸二無水物)スルホン、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)−ビス−(フタル酸無水物)、1,2,3,4−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクタン−2,3:5,6−テトラカルボン酸二無水物等が例示できる。
これらは、単独で又は複数種類組み合わせて用いることができるが、特に4,4’−ビフタル酸無水物及び3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物が特に好適であり、さらに4,4’−ビフタル酸無水物とピロメリット酸二無水物とを併用したり、4,4’−ビフタル酸無水物と3,3’−ジアミノジフェニルスルホン以外のジアミンとを用いると保存安定性が向上するため、さらに好ましい。
【0021】
本実施形態のポリイミド樹脂は、上述のジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを溶剤中で反応させ、ポリアミック酸とした後に、さらに溶剤中でアミック酸部位を脱水閉環することにより得られる。
【0022】
本反応に用いることができる溶剤としては、本実施形態のポリイミド樹脂を5mass%以上溶解する有機溶剤であれば特に限定はなく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、メタノール、エタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ガンマブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン等を用いることができる。これらは1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。さらに、溶剤は、反応溶媒と同一であることが本実施形態のポリイミド樹脂を製造する上で好ましく、特にN−メチル−2−ピロリドンを用いることが好ましい。
【0023】
本反応において、テトラカルボン酸二無水物はジアミン1モル当たり、0.9〜1.2モル添加することが好ましく、1.0〜1.05モル添加することがより好ましい。テトラカルボン酸の添加量を上記範囲とすることにより、分子量が大きく、良好な強度を有するポリイミド樹脂を得ることができる。
【0024】
ポリアミック酸を生成させる際の反応温度は、0〜80℃であると好ましく、40〜60℃であるとより好ましい。
【0025】
アミック酸部位を脱水閉環させる際の反応温度は、手法によっても異なるが、80〜210℃であると好ましく、130〜200℃であるとより好ましい。反応温度を上記案意図することで、良好な反応速度が得られ、効率よくポリイミド樹脂を得ることが可能となる。また、上記反応に際して特に触媒を添加する必要はないが、イミダゾールやトリアルキルアミン等の3級アミンを触媒として用いてもよい。これらの触媒を用いることで、より効率よくポリイミド樹脂を製造することが可能となる。この場合、高温で加熱する必要がなくなるため、高温条件に起因して生じる副反応を大幅に抑制することが可能となる。
【0026】
さらに、アミック酸部位を脱水閉環させる際には、閉環時に生成する水を除去する必要がある。閉環時に生成する水の除去法としては、無水酢酸を添加する方法、N−メチルピロリドンやトルエン、キシレン等を用いて共沸させる方法(共沸法)、窒素気流による蒸気除去法等が例示できる。また、必要であれば脱水剤や、閉環反応を促進するような促進剤を用いてもよい。
【0027】
ここで、無水酢酸を添加する方法を用いた場合には、酢酸が生成するため、特にポリイミド樹脂を絶縁材料として電子材料用途に用いる場合には、イオン性不純物となる。これにより、接続信頼性が低下するおそれがあるため、分離操作が必要となる。
【0028】
これに対して、共沸法や蒸気除去法を用いた場合には、このような不純物の混入を抑えることが可能であり、不純物混入による外観不良や性能低下を防止することができる。
【0029】
上記本実施形態のポリイミド樹脂においては、ガラス転移点以下の温度における平均線膨張係数が50ppm/K以下である。平均線膨張係数が50ppm/K以下であると、温度サイクルによる接続信頼性に優れ、50ppm/Kより大きいと、特に数種の材料を組み合わせて部品を構成した場合、材料間の平均線膨張係数に差が生じる部分で欠陥が生じやすく、接続信頼性が低下する(特開2001−288244号公報等参照)。
【0030】
上述のポリイミド樹脂は、他の添加剤を添加することなく、電子材料用途に用いることも可能であるが、硬化剤、硬化促進剤、希釈剤等の添加剤を添加した樹脂組成物として好適に電子材料用途に用いることができる。
【0031】
硬化剤は、ポリイミド樹脂と反応したり、硬化剤同士が反応して結合することができる成分であり、ポリイミド樹脂中に架橋構造を形成することができる。硬化剤としては、従来硬化剤として用いられている化合物を特に制限なく適用できるが、エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂としては例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、りん含有エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のジグリシジルエーテル化物、アルコール類のジグリシジルエーテル化物、これらのアルキル置換体、ハロゲン化物、水素添加物等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
このような硬化剤を配合する場合のその配合量は、ポリイミド樹脂100質量部に対し、1〜100質量部であると好ましく、3〜70質量部であるとより好ましい。この硬化剤の配合量がポリイミド樹脂に対し、1質量部未満である場合、硬化剤としての上述したような効果が得られ難くなる傾向にある。一方、100質量部を超えると、硬化剤が未反応として残ったり、ポリイミド樹脂が有する特性が十分に得られなくなってしまうおそれがある。
【0033】
さらに硬化剤として添加したエポキシ樹脂に、従来用いられているエポキシ樹脂用硬化剤をさらに加えてもよく、エポキシ1当量に対し、0.5〜2.0当量の硬化剤を添加することができ、エポキシ樹脂用硬化剤としては、フェノール系、アミン系、酸無水物系を例示することができる。
【0034】
また、硬化促進剤は、ポリイミド樹脂と硬化剤、あるいは硬化剤同士の硬化を促進することができる成分である。この硬化促進剤を含むことで、樹脂組成物に架橋が一層生じ易くなる。硬化促進剤としては、特に制限はないが、使用する硬化温度に応じて以下のような化合物を適宜選択することができる。
【0035】
硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−イミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、2−フェニルイミダゾリン、ナフトイミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、インダゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、ベンゾトリアゾール、プリン、イミダゾリン、ピラゾリン、キノリン、イソキノリン、ジピリジル、ジキノリル、フタラジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、ナフチリジン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾキノリン、ベンゾイソキノリン、ベンゾシンノリン、ベンゾフタラジン、ベンゾキノキサリン、ベンゾキナゾリン、フェナントロリン、フェナジン、カルボリン、ペリミジン、トリアジン、テトラジン、プテリジン、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、イソオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンゾイソチアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、ピロールジオン、イソインドールジオン、ピロリジンジオン、ベンゾイソキノリンジオン、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン、アミノシラン、フェニルアミノシラン等の含窒素化合物が挙げられる。これらは、硬化温度に応じて適宜選択して配合されることが好ましく、上記のものを単独で又は組み合わせて用いてもよい。
【0036】
硬化促進剤を配合する場合のその配合量は特に制限されないが、例えば、エポキシ樹脂100質量部に対して、0.01〜20質量部であると好ましく、0.05〜10質量部であるとより好ましい。
【0037】
また、希釈剤は、樹脂組成物中の他の成分が溶解又は分散された状態とすることができる成分であり、この希釈剤を用いることにより、作業上、有利となる傾向にある。希釈剤は、ポリイミド樹脂や他の成分を溶解又は分散できるものであれば特に制限されないが、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、メタノール、エタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ガンマブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン等を例示でき、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0038】
さらに、樹脂組成物は、粒子、特に無機粒子をさらに含んでもよい。このような粒子を含むことで、樹脂組成物やその硬化物の熱膨張率や電気特性を改善することもできる。粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等からなる無機粒子が好ましい。この粒子としては、最大粒径が500nm以下であるものを含有させることが好適である。最大粒径が500nmを超える粒子を用いると、樹脂組成物の硬化物からなる膜を形成した場合に、その膜厚によっては膜中の粒子が占める割合が大きくなりすぎ、これが膜に欠陥を生じさせる要因となる場合がある。
【0039】
樹脂組成物における粒子の配合量は、ポリイミド樹脂と硬化剤の総量100質量部に対して1〜90質量部とすることが好ましく、10〜50質量部とすることがより好ましい。粒子の配合量が1質量部未満であると、粒子の添加による上述した効果が十分に得られない場合がある。一方、90質量部を超えると、樹脂組成物の硬化膜を形成した場合に、粒子に起因する欠陥が生じる可能性が高まり、信頼性の低下を招くおそれがある。
【0040】
さらに、樹脂組成物は、難燃剤をさらに含有してもよい。難燃剤を含むと、樹脂組成物やその硬化物の難燃性が向上する。難燃剤としては、一般の難燃剤を含有することができる。難燃剤の配合量は、ポリイミド樹脂と硬化剤の総量100質量部に対して0.1〜50質量部とすることが好ましい。難燃剤の添加量が0.1質量部未満であると、十分な難燃性が得られない場合があり、50質量部を超えると樹脂組成物の物性が十分に得難くなる。
【0041】
このような本実施形態の樹脂組成物は、通常、熱による硬化が可能なものであるが、例えば、光により硬化が促進される構造や成分が含まれること等によって樹脂組成物が光硬化性を有する場合がある。この場合、樹脂組成物は、増感剤をさらに含んでいてもよい。増感剤を含むことで、光の吸収が促進され、より良好な硬化が可能となる傾向にある。増感剤としては公知の化合物を適用でき、照射される光の波長に応じて適宜選択することが好ましい。
【0042】
また、増感剤の配合量は、樹脂組成物の固形分に対して0.01〜20質量%であることが好ましく、0.1〜10質量%とすることがより好ましい。このような範囲で増感剤を含有させることで、樹脂組成物の特性を維持しながら良好な硬化を行うことが可能となる。
【0043】
なお、本実施形態の樹脂組成物は、上述した成分以外に、所望の特性に応じてゴム系エラストマ、顔料、レベリング剤、消泡剤、イオントラップ剤等をさらに含有していてもよい。
【0044】
(樹脂組成物層(接着層)及びその製造方法)
上述した樹脂組成物は、層状に形成された樹脂組成物層として適用することができる。この樹脂組成物層は、例えば、電子部品等に搭載される基板等の上に形成され、この基板とこの上に積層される他の基板との接着を行う接着層として機能する。また、樹脂組成物層は、さらに硬化されることによって、基板等を保護する保護層や層間の絶縁層を形成することもできる。樹脂組成物層は、例えば、樹脂組成物を、接着層を形成させるべき基体上に直接塗布する方法や、樹脂組成物からなるフィルム(接着フィルム)を形成した後、これを基体と貼り合わせる方法等によって形成することができる。
【0045】
樹脂組成物を直接塗布する方法の場合、例えば、樹脂組成物をそのまま、又は有機溶媒等に溶解した溶液とし、これを、スピンコーター、マルチコーター等を用いて基体の所望の面上に塗布する。その後、塗布によって形成された層を加熱したり、この層に熱風を吹きつけたりすることによって、この層から希釈剤や有機溶媒を揮発させ、これらを除去する。これによって、樹脂組成物(主に固形分)から構成される樹脂組成物層が形成される。
【0046】
一方、後者のフィルムを用いる方法においては、予め所定の支持体上に樹脂組成物からなるフィルムが形成されたものを準備しておき、このフィルムを基体に貼り付ける等して積層して、樹脂組成物層を形成する。この場合、フィルムは、支持体に対し、樹脂組成物をそのまま、又は上記のような溶媒に溶解等した溶液としてこれを塗布した後、塗布後の層から加熱や熱風吹き付けにより希釈剤や有機溶媒を揮発し、除去することによって形成することができる。なお、支持体は、基体への積層前にフィルムから除去してもよく、積層後に除去してもよい。
【0047】
フィルム形成に用いる支持体としては、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、4フッ化エチレンからなるフィルム、離型紙、あるいは銅箔やアルミ箔等の金属箔等が例示できる。支持体の厚さは、特に制限されないが、10〜150μmであると好ましい。なお、支持体の表面(特に樹脂組成物のフィルムが形成される面)には、マッド処理、コロナ処理、離型処理等が施されていてもよい。
【0048】
このようなフィルムは、支持体を剥離したフィルム単体の状態、又は、支持体上にフィルムが積層された積層体の状態で保管することができる。この保管方法としては、フィルム又は積層体を一定の長さに裁断してシート状で保存する方法や、これをさらに巻き取ってロール状で保存する方法が挙げられる。保存性、生産性及び作業性の観点からは、積層体において、フィルムをさらに保護フィルムで被覆して保護した状態とし、これをロール状に巻き取って保管することが好ましい。この場合、保護フィルムとしては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、離型紙等が挙げられる。保護フィルムには、マット処理、エンボス加工、離型処理が施されていてもよい。
【0049】
上述した樹脂組成物層を形成させるべき基体としては、特に限定されないが、銅やアルミ等の金属、ポリイミド等の樹脂、セラミック、ガラス等の無機材料からなる基体を適用できる。また、例えば、樹脂からなる絶縁基板上に金属からなる配線が形成されたような基板であってもよい。
【0050】
そして、基体上に形成された樹脂組成物層は、硬化することによって、保護層、接着層、絶縁層等としての機能を発揮させることができる。樹脂組成物層は、例えば、樹脂組成物層の加熱によって硬化させることができる。また、樹脂組成物に含まれるポリイミド樹脂の種類によっては、光の照射によって硬化させることもできる。加熱により硬化させる場合、好適な温度は、樹脂組成物中の効果促進剤の有無やその種類によって異なるが、130〜300℃とすることが、樹脂組成物の硬化物層の特性劣化を少なくできる上、作業性が良好であることから好ましい。
また、このような樹脂組成物層(接着層)及びその製造方法によって、ポリイミド樹脂単独のフィルムを得ることができる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
窒素雰囲気下、ディーンスターク還流冷却器、温度計、撹拌器を備えた300mLのセパラブルフラスコに、ジアミン化合物として3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(和光純薬)67.5mmol、非プロトン性極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)217.6gを加えた。さらにテトラカルボン酸二無水物として3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物65.7mmolを加え、温度を60℃に昇温させて2時間撹拌した。
【0052】
撹拌終了後、温度を180℃に昇温して1時間反応させた。水分定量受器に理論量の水がたまり、水の留出が見られなくなっていることを確認した後に、水分定量受器中の水を除去し、実施例1のポリイミド樹脂のNMP溶液を得た。
【0053】
実施例2
窒素雰囲気下、ディーンスターク還流冷却器、温度計、撹拌器を備えた300mLのセパラブルフラスコに、ジアミン化合物として3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(和光純薬)37.5mmol、非プロトン性極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)77.8gを加えた。さらにテトラカルボン酸二無水物として3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物7.5mmol、及び4,4’−ビフタル酸無水物30.0mmolを加え、温度を60℃に昇温させて1時間撹拌した。
【0054】
撹拌終了後、温度を180℃に昇温させて2時間反応させた。水分定量受器に理論量の水がたまり、水の留出が見られなくなっていることを確認した後に、水分定量受器中の水を除去し、実施例2のポリイミド樹脂のNMP溶液を得た。
【0055】
実施例3
窒素雰囲気下、ディーンスターク還流冷却器、温度計、撹拌器を備えた300mLのセパラブルフラスコに、ジアミン化合物として3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(和光純薬)45.0mmol、非プロトン性極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)84.3gを加えた。さらにテトラカルボン酸二無水物として無水ピロメリット酸22.5mmol、及び4,4’−ビフタル酸無水物22.5mmolを加え、温度を60℃に昇温させて1時間撹拌した。
【0056】
撹拌終了後、温度を180℃に昇温させて2時間反応させた。水分定量受器に理論量の水がたまり、水の留出が見られなくなっていることを確認した後に、水分定量受器中の水を除去し、実施例3のポリイミド樹脂のNMP溶液を得た。
【0057】
実施例4
窒素雰囲気下、ディーンスターク還流冷却器、温度計、撹拌器を備えた300mLのセパラブルフラスコに、ジアミン化合物として3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(和光純薬)30.0mmol、及びm−TB−HG(2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル;和歌山精化工業製、製品名)7.5mmol、非プロトン性極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)81.6gを加えた。さらにテトラカルボン酸二無水物として4,4’−ビフタル酸無水物37.5mmolを加え、温度を60℃に昇温させて1時間撹拌した。
【0058】
撹拌終了後、温度を180℃に昇温させて2時間反応させた。水分定量受器に理論量の水がたまり、水の留出が見られなくなっていることを確認した後に、水分定量受器中の水を除去し、実施例4のポリイミド樹脂のNMP溶液を得た。
【0059】
実施例5
窒素雰囲気下、ディーンスターク還流冷却器、温度計、撹拌器を備えた300mLのセパラブルフラスコに、ジアミン化合物として3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(和光純薬)63.0mmol、及びm−TB−HG(和歌山精化工業製、製品名)27.0mmol、非プロトン性極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)178.4gを加えた。さらにテトラカルボン酸二無水物として4,4’−ビフタル酸無水物90.0mmolを加え、温度を60℃に昇温させて1時間撹拌した。
【0060】
撹拌終了後、温度を180℃に昇温させて2時間反応させた。水分定量受器に理論量の水がたまり、水の留出が見られなくなっていることを確認した後に、水分定量受器中の水を除去し、実施例5のポリイミド樹脂のNMP溶液を得た。
【0061】
比較例1
窒素雰囲気下、ディーンスターク還流冷却器、温度計、撹拌器を備えた300mLのセパラブルフラスコに、ジアミン化合物として4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(和光純薬)40.5mmol、非プロトン性極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)92.4gを加えた。さらにテトラカルボン酸二無水物として4,4’−ビフタル酸無水物40.5mmolを加え、温度を60℃に昇温させて1時間撹拌した。
撹拌終了後、温度を180℃に昇温したところ、析出した。
【0062】
比較例2
窒素雰囲気下、ディーンスターク還流冷却器、温度計、撹拌器を備えた500mLのセパラブルフラスコに、ジアミン化合物として3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(和光純薬)105.5mmol、非プロトン性極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)180.7gを加えた。さらにテトラカルボン酸二無水物として無水ピロメリット酸105.0mmolを加え、温度を60℃に昇温させて1時間撹拌した。
撹拌終了後、温度を180℃に昇温したところ、析出した。
【0063】
比較例3
窒素雰囲気下、ディーンスターク還流冷却器、温度計、撹拌器を備えた300mLのセパラブルフラスコに、ジアミン化合物として3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(和光純薬)22.5mmol、及びm−TB−HG(和歌山精化工業製、製品名)22.5mmol、非プロトン性極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)87.9gを加えた。さらにテトラカルボン酸二無水物として4,4’−ビフタル酸無水物45.0mmolを加え、温度を60℃に昇温させて1時間撹拌した。
撹拌終了後、温度を180℃に昇温させて2時間反応させたところ、析出した。
【0064】
比較例4
窒素雰囲気下、ディーンスターク還流冷却器、温度計、撹拌器を備えた300mLのセパラブルフラスコに、ジアミン化合物として、m−TB−HG(和歌山精化工業製、製品名)42.0mmol、非プロトン性極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)89.8gを加えた。さらにテトラカルボン酸二無水物として3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物42.0mmolを加え、温度を60℃に昇温させて1時間撹拌した。
【0065】
撹拌終了後、温度を180℃に昇温させて2時間反応させた。水分定量受器に理論量の水がたまり、水の留出が見られなくなっていることを確認した後に、水分定量受器中の水を除去し、比較例4のポリイミド樹脂のNMP溶液を得た。
【0066】
比較例5
窒素雰囲気下、ディーンスターク還流冷却器、温度計、撹拌器を備えた300mLのセパラブルフラスコに、ジアミン化合物として、m−フェニレンジアミン72.0mmol、非プロトン性極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)155.0gを加えた。さらにテトラカルボン酸二無水物として2,2−ビス[4−(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物72.0mmolを加え、温度を60℃に昇温させて1時間撹拌した。
【0067】
撹拌終了後、温度を180℃に昇温させて2時間反応させた。水分定量受器に理論量の水がたまり、水の留出が見られなくなっていることを確認した後に、水分定量受器中の水を除去し、比較例5のポリイミド樹脂のNMP溶液を得た。
【0068】
[TMA測定]
実施例1〜5、比較例4、5のポリイミド樹脂のN−メチル−2−ピロリドン溶液をPET上に均一に塗布し、130℃、15分乾燥させた。PETからフィルムを剥離して、金属枠に固定した。200℃、30分加熱後さらに250℃、30分加熱しフィルムを得た。
【0069】
得られたフィルムを、長さ20mm、幅3mmに切り出し試料とし、マックサイエンス株式会社製熱機械分析装置TMA−4000を用いて、昇温速度5℃/分、測定長15mm、荷重5g/25μm、引張り法で測定した。温度−熱膨張曲線の変曲点をガラス転移点(Tg)とし、TgとTgより低い温度での平均線膨張係数を求めた。その結果を表1に示す。
【0070】
[酸価の測定]
実施例1〜5、比較例4、5のポリイミド樹脂のN−メチル−2−ピロリドン溶液約1gを、20mlのN−メチル−2−ピロリドンで希釈し、指示薬として1.0w/v%フェノールフタレインエタノール溶液を添加し、0.1N−アルコール性水酸化カリウム溶液で滴定し、酸価を求めた。その結果を表1に示す。
【0071】
[重量平均分子量の測定]
重量平均分子量(ポリスチレン換算)の測定は、測定カラムとしてGL−S300MDT−5(日立化成工業株式会社製)を2本直列させたものを用い、また溶離液として液体クロマトグラフィー用ジメチルホルムアミド1Lにリチウムブロマイド一水和物0.03mol、リン酸0.06molを加え溶解させたのち、さらに液体クロマトグラフィー用テトラヒドロフラン1Lを加えたものを用いて行った。その結果を表1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
表1に示した通り、実施例1〜5のポリイミド樹脂は、溶剤可溶性を示し、使用に耐えうる十分に高いTgと50ppm/K以下の平均線膨張係数を示した。
以上示した通り、本発明のポリイミド樹脂は、N−メチル−2−ピロリドンに対する可溶性を有し、かつ、平均線膨張係数が50ppm/K以下であり、接続信頼性に優れる。また、イミド基が既に閉環しているため低温での製膜が可能であり生産性に優れる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアミンとテトラカルボン酸二無水物との反応により得られ、25℃においてN−メチル−2−ピロリドンに可溶なポリイミド樹脂であって、
当該ポリイミド樹脂のガラス転移温度以下の温度における平均線膨張係数が50ppm/K以下であるポリイミド樹脂。
【請求項2】
前記ジアミンはスルホニル基を有する芳香族ジアミンを含む、請求項1に記載のポリイミド樹脂。
【請求項3】
前記スルホニル基を有する芳香族ジアミンは3,3’−ジアミノジフェニルスルホンである、請求項1又は2に記載のポリイミド樹脂。
【請求項4】
前記テトラカルボン酸二無水物は、4,4’−ビフタル酸無水物及び/又は3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリイミド樹脂。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか一項に記載のポリイミド樹脂を含む樹脂組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の樹脂組成物を用いてなる電子材料。


【公開番号】特開2009−256666(P2009−256666A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78739(P2009−78739)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】