説明

ポリイミド無端ベルトとその製造方法並びにポリイミド無端ベルトを備えた画像形成装置

【課題】カーボンブラックが均一分散し、使用時の表面抵抗値低下の起こりにくいポリイミド無端ベルトを提供する。
【解決手段】有機極性溶媒に分散剤を溶解させて分散剤溶液を調製し、該分散剤溶液に導電剤を溶解もしくは分散させて導電剤溶液を調製し、該導電剤溶液中でテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを反応させてポリアミック酸を合成してポリアミック酸溶液とし、該ポリアミック酸溶液に3級アミンを添加してポリアミック酸組成物とし、該ポリアミック酸組成物を円筒状基材外面上に塗布したのち加熱して得られたポリイミド無端ベルトは、電圧印加10秒後の表面抵抗率の常用対数値と、30ミリ秒後の表面抵抗率の常用対数値との差が、絶対値で0.2(LogΩ/□)以下であり、かつ、JIS−C5016(:1994)による耐折性試験での耐折回数が4000回以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写機、レーザビームプリンター、ファクシミリ、これらの複合装置などの電子写真装置に利用されるポリイミド無端ベルト、ポリイミド無端ベルトの製造方法及び該ポリイミド無端ベルトを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置は、導電性材料からなる感光体上に一様に電荷を形成し、変調した画像信号をレーザ光などで静電潜像を形成した後、帯電したトナーにより静電潜像を現像してトナー像とする。次いでこのトナー像を直接又は中間転写体を介して紙などの記録媒体に転写することにより画像を得る装置である。
【0003】
ここで、感光体上のトナー像を中間転写体に一次転写し、次いで中間転写体上のトナー像を紙などの記録媒体へ二次転写する方法、いわゆる中間転写方式を採用した画像形成装置に用いられる中間転写ベルトは、例えばポリフッ化ビニリデン(例えば、特許文献1)、ポリカーボネート(例えば、特許文献2)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体とポリカーボネートとのブレンド(例えば、特許文献3)などの熱可塑性樹脂にカーボンブラック等の導電剤を分散させた導電性無端ベルトが提案されている。
【0004】
さらに近年、この中間転写体を加熱することで記録媒体上のトナー像を定着せしめる方法、即ち中間転写及び定着方式が開示されている(例えば、特許文献4)。中間転写・定着方式は、トナー像を記録媒体へ中間転写体を介して二次転写せしめた後、この中間転写体を直接又は間接的に加熱することで、この中間転写体に接触している記録媒体上のトナー像を定着する方式であり、中間転写機構と定着機構が離別していた従来装置と比較して、装置の小型化、低コスト化が可能であるという利点を有する。
【0005】
ここで、中間転写及び定着方式に用いられるベルト材料には、駆動時の応力に耐える機械強度を有すると同時に、定着時に与えられる200℃近い熱に耐え得ることが要求される。この要請から、中間転写及び定着ベルトに用いられる材料には、高い機械強度と耐熱性を併有するポリイミド樹脂が適している。
【0006】
ポリイミド材料に導電性を付与させる目的で、導電性を有するカーボンブラック微粒子をポリイミド樹脂中に分散させることが行われている。カーボンブラックの分散性を上げることでポリイミド無端ベルトの抵抗値の電圧変動を抑制できることが、よく知られている。このカーボンブラック分散性を向上させて、成形されるポリイミド無端ベルトの抵抗値の電圧変動を抑制することを目的に、カーボンブラックを有機極性溶媒中に分散させた分散液中でテトラカルボン酸無水物とジアミン化合物とを反応させて、ポリアミック酸を重合させたカーボンブラック分散ポリアミック酸溶液作製方法、並びに当該カーボンブラック分散ポリアミック酸溶液を円筒状金型内面に塗布・乾燥・焼成処理を行って製造された半導電性ポリイミドベルトが開示されている(例えば、特許文献5〜7)。
【0007】
ポリイミド樹脂は、一般に不溶であるためにその前駆体であるポリアミック酸の溶液を塗布し、乾燥後に加熱してアミック酸基の脱水イミド化反応を行い、ポリイミドとして使用している。イミド化反応においては一般に200℃〜350℃の高い温度を必要とするため、エネルギー消費の点より問題があった。この課題に対して、ポリアミック酸のイミド化を促進させるため、3級アミン等を共存させて加熱する方法が、特許文献8,9,10等で開示されている。
【0008】
さらに、特許文献11,12,13には、カーボンブラックを有機極性溶媒中に分散させた分散液中でポリアミック酸を重合させたカーボンブラック分散ポリアミック酸溶液に3級アミンを添加し、円筒状金型内面に塗布・乾燥・焼成処理を行って製造された半導電性ポリイミドベルトが開示されている。
【0009】
【特許文献1】特開平5−200904号公報
【特許文献2】特開平6−228335号公報
【特許文献3】特開平6−149083号公報
【特許文献4】特開平6−258960号公報
【特許文献5】特開2002−148951号公報
【特許文献6】特開2002−148957号公報
【特許文献7】特開2002−292656号公報
【特許文献8】特開平6−207014号公報
【特許文献9】特開2002−127165号公報
【特許文献10】特開2002−283366号公報
【特許文献11】特開2004−287005号公報
【特許文献12】特開2004−284164号公報
【特許文献13】特開2005−215253号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記の技術では3級アミンが焼成後もベルト内重量部に残留してベルトの抵抗値低下につながる。
【0011】
このことに関して推察すると、3級アミンは焼成によるイミド化反応終了後、大重量部分揮発するが、一部は塗布膜内重量部に残留すると考えられる。このため、円筒状金型内面にて形成されるポリイミド無端ベルトでは、3級アミンが残留している側がベルト表面となり、かかるポリイミド無端ベルトでは表面抵抗値の低下や抵抗ムラが著しくなるためと本発明者らは推察する。
【0012】
このような抵抗値低下は、電子写真における転写および定着工程に用いた場合に画像の濃度ムラの原因となる。特に、転写時の抵抗値低下により転写体の電流が増大すると、感光体における印字部への電荷注入が起こりやすくなり、感光体表面の電位差として印字履歴の残る、いわゆるゴーストを引き起こすと考えられる。
【0013】
また、3級アミンはベルト使用時間の増加と共に徐々に表面からブリードまたは揮発していく。従って上記ポリイミド無端ベルトでは、経時的にベルト転写面から3級アミンがブリードもしくは揮発していき、転写面側に微小な空隙が多く存在するようになり、強度が低下してしまう。無端ベルトは駆動ロールや支持ロールに張架して使用されるため、外側面(転写面)の方が内側面よりも負荷が大きい。このため、上記ポリイミド無端ベルトは、駆動ロールや支持ロールから繰り返し受ける屈曲によって、ベルト表面端重量部に割れを生じてしまう。
【0014】
従って、本発明の目的は、カーボンブラックが容易かつ均一に分散され、イミド化反応が効率よく行われ、かつ使用時の表面抵抗値低下の起こりにくいポリイミド無端ベルトとその製造方法、および該ポリイミド無端ベルトを備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意研究したところ、下記のポリイミド無端ベルトおよびその製造方法によって表面抵抗値低下が起こりにくく高い機械的強度を備えるポリイミド無端ベルトを提供することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
(1)カーボンブラックとポリイミド樹脂と3級アミンとが含有されてなるポリイミド無端ベルトであって、電圧印加10秒後の表面抵抗率の常用対数値と、30ミリ秒後の表面抵抗率の常用対数値との差が、絶対値で0.2(LogΩ/□)以下であり、かつ、JIS−C5016(:1994)による耐折性試験での耐折回数が4000回以上であるポリイミド無端ベルト。
【0017】
(2)有機極性溶媒に分散剤を溶解させて分散剤溶液を調製する工程と、該分散剤溶液に導電剤を溶解もしくは分散させて導電剤溶液を調製する工程と、該導電剤溶液中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを反応させてポリアミック酸を合成してポリアミック酸溶液とする工程と、該ポリアミック酸溶液に3級アミンを添加してポリアミック酸組成物とする工程と、該ポリアミック酸組成物を円筒状基材外面上に塗布する塗布工程と、前記円筒状基材外面上に塗布された前記ポリアミック酸組成物を加熱する加熱処理工程と、を有するポリイミド無端ベルトの製造方法。
【0018】
(3)像担持体と、該像担持体表面を帯電する帯電手段と、前記像担持体表面に潜像を形成する潜像形成手段と、前記潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を中間転写ベルト上に一次転写する一次転写手段と、
該中間転写ベルト上に一次転写されたトナー像を記録媒体上に二次転写する二次転写手段と、を備える画像形成装置であって、前記中間転写ベルトが上記(1)に記載のポリイミド無端ベルトである画像形成装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ポリイミド無端ベルトが予め導電性を有するカーボンブラックを有機溶媒と共に分散させた分散液に、ジアミン成分と酸二無水物成分を溶解・重合させて調製したカーボンブラック分散ポリアミック酸溶液に3級アミンを添加した溶液を、金型の外面に塗布し乾燥・焼成させることによって得られるため、かかる製法により目的を達成できる要因は明らかではないが、本願発明の効果について、本発明者らは以下のように考える。
【0020】
すなわち、予めカーボンブラックを有機溶媒と共に分散させた分散液中でジアミン成分と酸二無水物成分を重合させることによりカーボンブラックが凝集することなく抵抗率のばらつきが抑制される。また、カーボン分散ポリアミック溶液に添加される3級アミンはイミド化触媒として作用するため、焼成温度の低減や焼成時間の短縮につながる。さらに、ポリアミック酸溶液を金型の外面に塗布し乾燥・焼成させることにより、イミド化反応後の3級アミンが金型の外側において優先的に揮発し、かかる方法で作製したポリイミド無端ベルトを使用する場合、3級アミン残留量の少ない側の面が印刷面に接するため、表面抵抗ばらつきや抵抗低下が抑制されると考える。一方、3級アミンの残留量が比較的多い側がポリイミド無端ベルトの使用時の内側になるため、比較的柔軟性に富み、駆動耐久性が向上する。
【0021】
さらに、本発明の無端ベルトは、その製造方法に由来して、残留する3級アミンが転写面とは反対の側(内側)に多く残留しているため、経時的に3級アミンがブリード、揮発しても機械的負荷の大きい転写面側の強度が低下することが無いため、長期にわたり転写性能を維持することができる。また、ベルト内側の3級アミンがブリード、揮発しても、微小な空隙が生じることで内側への屈曲性はより向上するため、駆動ロールや支持ロールへの追従性を損なうことが無い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の実施の形態について以下説明する。
【0023】
(ポリイミド無端ベルト)
本発明に係るポリイミド無端ベルトは、予め導電性を有するカーボンブラックを有機溶媒と共に分散させた分散液に、ジアミン成分と酸二無水物成分を溶解・重合させて調製したカーボンブラック分散ポリアミック酸溶液に3級アミンを添加した溶液を、金型の外面に塗布し乾燥・焼成させることによって得られることを特徴とする。
【0024】
また、さらに本発明に係るポリイミド無端ベルトは電圧印加10秒後の表面抵抗率の常用対数値と、30ミリ秒後の表面抵抗率の常用対数値との差が、絶対値で0.2(LogΩ/□)以下であり、かつ、JIS−C5016による耐折性試験での耐折れ回数が4000回以上であることを特徴とする。
【0025】
また、さらに本発明に係るポリイミド無端ベルトは、前記3級アミンがピリジン、ピコリン、キノリン、イソキノリン、及びトリエチルアミンから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする。これら3級アミンは、無端ベルト作製後もその一重量部がベルト中に残留している。
【0026】
(ポリイミド無端ベルトの製造方法)
次に、本発明のポリイミド無端ベルトを成形する具体的方法について示す。
カーボンブラック分散ポリアミック酸組成物を金型の外面に塗布する塗布の方法は、塗布浸漬または遠心成形のいずれを用いてもよい。金型としては、円筒状金型が好ましく、金型の代わりに、樹脂製、ガラス製、セラミック製など、従来既知の様々な素材の成形型が、本発明に係る成形型として良好に動作し得る。また、成形型の表面にガラスコートやセラミックコートなどを設けること、また、シリコーン系やフッ素系の剥離剤を使用することも適宜選択され得る。更に、円筒状金型に対するクリアランス調整がなされた膜厚制御用金型を、円筒状金型に通し平行移動させることで、余分な溶液を排除し円筒状金型上の溶液の厚みを均一にする。円筒状金型上への溶液塗布の段階で、溶液の均一な厚み制御がなされていれば、特に膜厚制御用金型を用いなくてもよい。
【0027】
(乾燥工程)
次に、導電性微粒子分散ポリアミック酸組成物を塗布したこの円筒状金型を、加熱環境に置き、含有溶媒の20重量%から60重量%以上を揮発させるための乾燥を行う。この際、溶媒は膜中に残留していても構わず、塗膜表面が乾燥し、傾けても流動しない状態であれば問題ない。
【0028】
乾燥は、50℃〜200℃の温度範囲で行う。また、常圧下において、後述する3級アミン沸点以下の温度、好ましくは3級アミンの沸点以下であり、かつ3級アミンの沸点より50℃低い温度値より高い温度で乾燥を行うことがよい。例えば、3級アミンとしてβ−ピコリンを使用した場合、その沸点は常圧下では144℃であるため、乾燥は、144℃以下の温度範囲で行う。また、β−ピコリンの沸点より50℃低い温度値(94℃)以上、144℃以下で乾燥処理を行うことが好ましい。
【0029】
(焼成工程)
乾燥終了後、この金型を60℃〜200℃の温度範囲で加熱し、イミド転化反応を十分に進行させる。加熱温度が60℃未満では脱水閉環が十分に進行せず、加熱温度が200℃を超えると得られる重合体の分子量が小さいものになる。イミド化の温度は、原料のテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの種類、又は添加される3級アミンによって、それぞれ異なるが、イミド化が完結する温度に設定しなければならない。イミド化が不充分であると、機械的特性及び電気的特性に劣るものとなることがある。
【0030】
ポリアミック酸の脱水閉環反応のため、ポリアミック酸からポリイミドへの転化が起こる。その結果、反応により脱離した水分量相当の重量減少が発生し、ポリイミド無端ベルト中の、ポリイミド樹脂成分に対するカーボンブラック含有率が、ポリアミック酸樹脂成分に対するカーボンブラック含有率に比べ大きくなる。
【0031】
その後、金型から樹脂を取り外し、目的のポリイミド無端ベルトを得ることができる。
得られたポリイミド無端ベルトには、更に必要に応じて端重量部のスリット加工、パンチング穴あけ加工、テープ巻き付け加工等が施されることもある。
【0032】
以上、本発明のポリイミド無端ベルトの製造方法について説明したが、本発明はこれらの実施の態様のみに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づき、種々なる改良、変更、修正を加えた態様で実施し得るものである。
【0033】
(カーボンブラック分散ポリアミック酸組成物の製造方法)
本発明に係る導電性微粒子分散ポリアミック酸組成物は、以下の工程によって製造し得る。
(1)予め導電性を有するカーボンブラックを有機溶媒と共に分散させてカーボンブラック分散液を調製する工程と、
(2)当該カーボンブラック分散液に、ポリアミック酸テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを溶解し、重合してカーボンブラック分散ポリアミック酸溶液を製造する工程と、
(3)当該カーボンブラック分散ポリアミック酸溶液に、3級アミンを溶解させる工程。
【0034】
<カーボンブラック分散液の調製方法>
(カーボンブラック)
本発明に係るカーボンブラックとしては、導電性もしくは半導電性の微粉末が使用でき、所望の電気抵抗を安定して得ることができれば、特に制限はないが、ケッチエンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、が例示できる。そしてこれらを単独、あるいは併用して使用してもよい。本発明では、樹脂中への分散性、分散安定性、半導電性ポリイミド無端ベルトの抵抗バラツキ、電界依存性、電気抵抗の経時での安定性を考慮して、pH5以下の酸化処理カーボンブラックを好ましくは添加することがよい。
【0035】
カーボンブラック分散ポリアミック酸溶液中、カーボンブラックの配合量は、ポリアミック酸100重量部に対して、20〜40重量部が好ましい。配合量が20重量部以下、もしくは40重量部を超えると、所定の抵抗値発現が得られにくい。
【0036】
(酸化処理カーボンブラック)
酸化処理カーボンブラックは、カーボンブラックを酸化処理することで、表面にカルボキシル基、キノン基、ラクトン基、水酸基等を付与して製造することができる。この酸化処理は、高温雰囲気下で、空気と接触され、反応させる空気酸化法、常温下で窒素酸化物やオゾンと反応させる方法、及び高温下での空気酸化後、低い温度下でオゾン酸化する方法などにより行うことができる。具体的には、酸化処理カーボンブラックは、コンタクト法により製造することができる。このコンタクト法としては、チャネル法、ガスブラック法等が挙げられる。また、酸化処理カーボンブラックは、ガス又はオイルを原料とするファーネスブラック法により製造することもできる。必要に応じて、これらの処理を施した後、硝酸などで液相酸化処理を行ってもよい。なお、酸性カーボンブラックは、コンタクト法で製造することができるが、密閉式のファーネス法によって製造するのが通常である。ファーネス法では通常高pH・低揮発分のカーボンブラックしか製造されないが、これに上述の液相酸処理を施してpHを調整することができる。このためファーネス法製造により得られるカーボンブラックで、後工程処理によりpHが5以下となるように調節されたカーボンブラックも、本発明に含まれるとみなす。
【0037】
酸化処理カーボンブラックのpH値は、pH5.0以下であるが、好ましくはpH4.5以下であり、より好ましくはpH4.0以下である。pH5.0以下の酸化処理カーボンは、表面にカルボキシル基、水酸基、キノン基、ラクトン基などの酸素含有官能基が、あるので、樹脂中への分散性がよいので、良好な分散安定性が得られ、半導電性ポリイミド無端ベルトの抵抗バラツキを小さくすることができるとともに、電界依存性も小さくなり、転写電圧による電界集中が起きづらくなる。
【0038】
ここで、pHは、カーボンブラックの水性懸濁液を調製し、ガラス電極で測定することで求められる。また、酸性カーボンブラックのpHは、酸化処理工程での処理温度、処理時間等の条件によって、調整することができる。
【0039】
酸化処理カーボンブラックは、その揮発成分が1〜25%、好ましくは2〜20%、より好ましくは、3.5〜15%含まれていることが好適である。揮発分が1%未満である場合には、表面に付着する酸素含有官能基の効果がなくなり、結着樹脂への分散性が低下することがある。一方、25%より高い場合には、結着樹脂に分散させる際に、分解してしまう、或いは、表面の酸素含有官能基に吸着された水などが多くなるなどによって、得られる成形品の外観が悪くなるなどの問題が生じることがある。従って、揮発分を上記範囲とすることで、結着樹脂中への分散をより良好とすることができる。この揮発分は、カーボンブラックを950℃で7分間加熱したときに、出てくる有機揮発成分(カルボキシル基、水酸基、キノン基、ラクトン基等)の割合により求めることが出来る。
【0040】
酸化処理カーボンブラックとして、具体的には、デグサ社製の「プリンテックス150T」(pH4.5、揮発分10.0%)、同「スペシャルブラック350」(pH3.5、揮発分2.2%)、同「スペシャルブラック100」(pH3.3、揮発分2.2%)、同「スペシャルブラック250」(pH3.1、揮発分2.0%)、同「スペシャルブラック5」(pH3.0、揮発分15.0%)、同「スペシャルブラック4」(pH3.0、揮発分14.0%)、同「スペシャルブラック4A」(pH3.0、揮発分14.0%)、同「スペシャルブラック550」(pH2.8、揮発分2.5%)、同「スペシャルブラック6」(pH2.5、揮発分18.0%)、同「カラーブラックFW200」(pH2.5、揮発分20.0%)、同「カラーブラックFW2」(pH2.5、揮発分16.5%)、同「カラーブラックFW2V」(pH2.5、揮発分16.5%)、キャボット社製「MONARCH1000」(pH2.5、揮発分9.5%)、キャボット社製「MONARCH1300」(pH2.5、揮発分9.5%)、キャボット社製「MONARCH1400」(pH2.5;揮発分9.0%)、同「MOGUL−L」(pH2.5、揮発分5.0%)、同「REGAL400R」(pH4.0、揮発分3.5%)等が挙げられる。
【0041】
(カーボンブラックの分散方法)
カーボンブラックの分散方法としては公知の方法が適用でき、ボールミル、サンドミル、バスケットミル、超音波分散等が挙げられる。
【0042】
この導電性微粒子分散液に、上述したテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物を当量になるように添加して、ポリアミック酸オリゴマー製造時と同様に重合し、導電性微粒子分散ポリアミック酸組成物を得る。
【0043】
また、カーボンブラックの分散時には、カーボンブラック粒子の分散安定性をさらに高めるために、非イオン系高分子を添加することが好ましい。
【0044】
非イオン系高分子としては、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)、ポリ(N,N’−ジエチルアクリルアジド)、ポリ(N−ビニルホルムアミド)、ポリ(N−ビニルアセトアミド)、ポリ(N−ビニルフタルアミド)、ポリ(N−ビニルコハク酸アミド)、ポリ(n−ビニル尿素)、ポリ(N−ビニルピペリドン)、ポリ(n−ビニルカプロラクタム)、ポリ(n−ビニルオキサゾリン)等が挙げられ、単独又は複数の非イオン系高分子を添加することができる。本発明においては、カーボンブラックの分散性がより高まることから、ポリ(n−ビニル−2−ピロリドン)を含むことがより好ましい。
【0045】
(有機極性溶媒)
本発明に係るポリアミック酸の生成反応に使用される有機極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,n−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,n−ジメチルアセトアミド、N,n−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、n−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、又はp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒:テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いるのが望ましいが、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素も使用可能である。溶媒は、ポリアミック酸を溶解するものであれば特に限定されない。
【0046】
<カーボンブラック分散ポリアミック酸溶液の製造方法>
本発明に係るカーボンブラック分散ポリアミック酸溶液は、上述の製造方法で得られたカーボンブラック分散液中でテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを実質的に等モル量を有機極性溶媒中で重合反応させて得られる。
【0047】
(テトラカルボン酸二無水物)
ポリアミック酸の製造に用いられ得るテトラカルボン酸二無水物としては、特に制限はなく、芳香族系、脂肪族系いずれの化合物も使用できる。
【0048】
芳香族系テトラカルボン酸としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物等を挙げることができる。
【0049】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物;1,3,3a,4,5,9B−ヘキサヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。
【0050】
テトラカルボン酸二無水物としては、芳香族系テトラカルボン酸二無水物が好ましく、さらに、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物が最適に使用される。
【0051】
これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0052】
(ジアミン化合物)
本発明に係るポリアミック酸の製造に用いられ得るジアミン化合物は、分子構造中に2つのアミノ基を有するジアミン化合物であれば特に限定されない。
【0053】
例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,5−ジアミノ−3’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,5−ジアミノ−4’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,7−ジアミノフルオレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)−ビフェニル、1,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニル等の芳香族ジアミン;ジアミノテトラフェニルチオフェン等の芳香環に結合された2個のアミノ基と当該アミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子を有する芳香族ジアミン;1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6,2,1,02.7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族ジアミン及び脂環式ジアミン等を挙げることができる。
【0054】
ジアミン化合物としては、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォンが好ましい。
これらのジアミン化合物は単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0055】
(テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との組み合わせ)
ポリアミック酸としては、成型体の強度の観点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族系ジアミンとからなるものが好ましい。
【0056】
(ポリアミック酸の固形分濃度)
ポリアミック酸溶液の固形分濃度は特に規定されるものではないが、ポリイミド無端ベルト製造時の塗工プロセスのしやすさより、適当な粘度を発現する範囲が選択される。塗工上最適な粘度範囲としては、一般に1〜100Pasが好ましく、その粘度となるような固形分濃度としては、有機極性溶媒100重量部に対して10〜40重量%が好ましい。固形分濃度が10重量部未満であるとポリアミック酸の重合度が低く、最終的に得られる成型体の強度が低下する。また、重合時の固形分濃度が、40重量部より高いと反応時に原料モノマーの不溶重量部が生じてしまい反応がほとんど進行し得ない。その結果、最終的に得られる成型体の強度が低下する。
【0057】
(ポリアミック酸重合温度)
ポリアミック酸重合時の反応温度としては、0℃〜80℃の範囲で行われる。反応温度が0℃以下であると、溶液の粘度が高くなり、反応系の攪拌が十分に行うことができなくなるためである。また、反応温度が80℃より高くなると、ポリアミック酸の重合と平行して、一重量部イミド化反応が起こるため、反応制御の点で問題が生じる。
【0058】
<3級アミンを添加したカーボンブラック分散ポリアミック酸溶液の製造方法>
本発明に係る3級アミン添加カーボンブラック分散ポリアミック酸溶液は、上述の製造方法で得られたカーボンブラック分散ポリアミック酸溶液に3級アミンを添加して得られる。
【0059】
3級アミンは、上述のようにイミド化反応の触媒として働くものであり、例えば、ピリジン、ピコリン、コリジン、ルチジン、キノリン、イソキノリン、トリエチルアミンなどの3級アミンを用いることができるが、中でもピリジン、ピコリン、キノリン、イソキノリン、トリエチルアミンから選ばれる1種又は2種以上を好適に使用することができる。
【0060】
3級アミンの添加量は、ポリアミック酸構造を含むポリマー100重量部に対して、5〜100重量%であることが好ましく、より好ましくは10〜40重量%であり、さらに好ましくは10〜30重量%である。3級アミンの初期添加量が多すぎると、膜中から除去されずに残留する量が多くなってしまい、ポリイミド無端ベルトの強度が脆弱となり、少なすぎるとポリイミド樹脂がワニス(カーボンブラック分散ポリアミック酸溶液)中に析出してしまうこととなることがある。
【0061】
また、本発明に係る3級アミン添加カーボンブラック分散ポリアミック酸溶液に脱水剤を添加して、さらにイミド化反応を促進することもできる。脱水剤は1価カルボン酸無水物であれば特に限定はされない。例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることが出来る。
【0062】
以上、本発明のポリイミド無端ベルトの製造方法について説明したが、本発明はこれらの実施の態様のみに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づき、種々なる改良、変更、修正を加えた態様で実施し得るものである。
【0063】
≪感光体≫
次に、本発明に用いられる感光体について説明する。
【0064】
本発明に係る電子写真感光体としては従来公知のものを用いることができるが、中でも、CuKα特性X線を用いたX線回折パターンにおいてブラッグ角度(2θ±0.2°)7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°及び28.3°に回折ピークを有することを特徴とするヒドロキシガリウムフタロシアニンを感光層に有する有機電子写真感光体を用いた場合に本発明の効果が顕著に表れる。
【0065】
すなわち、上述したポリイミド無端ベルトは、抵抗ムラがきわめて少ないため、例えば転写ゴーストが発生しにくいが、特に、上記ヒドロキシガリウムフタロシアニンを感光層に有する有機電子写真感光体を用いた場合は、上記転写ゴーストの発生がより抑制され、経時において高画質を安定的に提供することができる。
【0066】
本発明に係る電子写真感光体としては感光層が単層構造のもの、あるいは電荷発生層と電荷輸送層とに機能分離された積層構造のもの等の如何なるものにも適用することができるが、以下においてはより好適な実施形態である積層型電子写真感光体を中心に説明する。
【0067】
(導電性基体)
本発明の電子写真感光体における導電性基体としては従来から使用されている如何なるものを用いてもよい。例えば、アルミニウム・銅・鉄・ステンレス・亜鉛・ニッケルなどの金属ドラムとしてもよいし、シート・紙・プラスチック又はガラス上にアルミニウム・銅・金・銀・白金・パラジウム・チタン・ニッケル−クロム・ステンレス鋼・銅・インジウム等の金属を蒸着したり酸化インジウム・酸化錫などの導電性金属化合物を蒸着したものとしてもよいし、金属箔をラミネートしたり、或いは、カーボンブラック・酸化インジウム・酸化錫・酸化アンチモン粉・金属粉・沃化銅等を結着樹脂に分散し、塗布することによって導電処理したもの等が用いることができる。
【0068】
また、導電性基材の形状はドラム状に限られず、シート状、プレート状としてもよい。また、導電性基体の表面は、必要に応じて、画質に影響のない範囲で各種の処理を行うことができる。例えば、表面の陽極酸化処理、液体ホーニング等による粗面化処理、薬品処理、着色処理等を行うことができる。
【0069】
積層型感光体の場合には、導電性基体上に少なくとも電荷発生層と電荷輸送層とが積層された感光層が設けられるが、その積層の順序はいずれが基体側にあってもよい。
【0070】
(電荷発生層)
電荷発生層には電荷発生物質を含有する。その他の物質としては必要により結着樹脂、その他添加剤を含有してもよい。
【0071】
電荷発生材料は、ビスアゾ、トリスアゾなどのアゾ顔料、ジブロモアントアントロンなどの縮環芳香族顔料、ペリレン顔料、ピロロピロール顔料、フタロシアニン顔料等の有機顔料や、三方晶セレン、酸化亜鉛などの無機顔料など既知のもの全て使用することができるが、特に380nm〜500nmの露光波長を用いる場合には無機顔料が好ましく、700nm〜800nmの露光波長を用いる場合には、金属及び無金属フタロシアニン顔料が好ましい。その中でも、特開平5−263007及び、特開平5−279591号公報に開示されたヒドロキシガリウムフタロシアニン、特開平5−98181号公報に開示されたクロロガリウムフタロシアニン、特開平5−140472号公報及び、特開平5−140473号公報に開示されたジクロロスズフタロシアニン、特開平4−189873号公報及び、特開平5−43813号公報に開示されたチタニルフタロシアニンが好ましく、特にCuKα特性X線を用いたX線回折パターンにおいてブラッグ角度(2θ±0.2°)7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°及び28.3°に回折ピークを有することを特徴とするヒドロキシガリウムフタロシアニンは良好な光感度を示し環境安定性も優れている点でより好ましい。
【0072】
結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択することができる。また、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシランなどの有機光導電性ポリマーから選択することもできる。好ましい結着樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノールAとフタル酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等の絶縁性樹脂をあげることができるが、これらに限定されるものではない。これらの結着樹脂は単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
【0073】
電荷発生材料と結着樹脂の配合比は(重量比)は10:1〜1:10の範囲が好ましい。またこれらを分散させる方法としてはボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の通常の方法を用いることができるが、この際、分散によってその結晶型が変化しない条件が必要とされる。ちなみに本発明で実施した前記の分散法のいずれについても分散前と結晶型が変化していないことが確認されている。さらにこの分散の際、粒子を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、さらに好ましくは0.15μm以下の粒子サイズにすることが有効である。またこれらの分散に用いる溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いることができる。また、本発明で用いる電荷発生層の厚みは一般的には、0.1〜5μm、好ましくは0.2〜2.0μmが適当である。また、電荷発生層を設けるときに用いる塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0074】
(電荷輸送層)
電荷輸送層としては、公知の技術によって形成されたものを使用できる。それらの電荷輸送層は、電荷輸送材料と結着樹脂を含有して形成されるか、あるいは高分子電荷輸送材を含有して形成される。
【0075】
電荷輸送材料としては、p−ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノビニル系化合物、エチレン系化合物等の電子輸送性化合物、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物などの正孔輸送性化合物があげられる。これらの電荷輸送材料は単独または2種以上混合して用いることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらの電荷輸送材料は単独あるいは2種以上混合して用いることができるが、モビリティーの観点から、以下の構造のものが好ましい。
【0076】
【化1】

(式中、Rは、水素原子またはメチル基を示す。また、nは1又は2を意味する。Ar及びArは置換又は未置換のアリール基を示し、置換基としてはハロゲン原子、炭素数が1〜5の範囲のアルキル基、炭素数が1〜5の範囲のアルコキシ基、又は炭素数が1〜3の範囲のアルキル基で置換された置換アミノ基を示す。)
【0077】
【化2】

(式中R、R'は同一でも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基を表わす。R、R'、R、R'は同一でも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜2のアルキル基で置換されたアミノ基、置換又は未置換のアリール基、あるいは、−C(R)=C(R)(R)、−CH=CH−CH=C(Ar)を表わし、R、R、Rは水素原子、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアリール基を表す。mおよびnは0〜2の整数である。)
【0078】
【化3】

(式中Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、置換又は未置換のアリール基、または、−CH=CH−CH=C(Arを表す。Arは、置換又は未置換のアリール基を表す。R、R10は同一でも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜2のアルキル基で置換されたアミノ基、置換又は未置換のアリール基を表す。)
【0079】
さらに電荷輸送層に用いる結着樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂や、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン、特開平8−176293号公報や特開平8−208820号公報に示されているポリエステル系高分子電荷輸送材など高分子電荷輸送材を用いることもできる。これらの結着樹脂は単独あるいは2種以上混合して用いることができる。電荷輸送材料と結着樹脂との配合比(重量比)は10:1〜1:5が好ましい。
【0080】
また、高分子電荷輸送材を単独で用いることもできる。高分子電荷輸送材としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシランなどの電荷輸送性を有する公知のものを用いることができる。特に、特開平8−176293号公報や特開平8−208820号公報に示されているポリエステル系高分子電荷輸送材は、高い電荷輸送性を有しており、特に好ましいものである。高分子電荷輸送材はそれだけでも電荷輸送層として使用可能であるが、上記結着樹脂と混合して成膜してもよい。
【0081】
本発明で用いる電荷輸送層の厚みは一般的には、5〜50μm、好ましくは10〜30μmが適当である。塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。さらに電荷輸送層を設けるときに用いる溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロンゲン化脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状もしくは直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いることができる。また、複写機中で発生するオゾンや酸化性ガス、あるいは光、熱による感光体の劣化を防止する目的で、感光層中に酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等の添加剤を添加することができる。例えば、酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノンおよびそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物等があげられる。光安定剤の例としては、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ジチオカルバメート、テトラメチルピペリジン等の誘導体があげられる。また、感度の向上、残留電位の低減、繰り返し使用時の疲労低減等を目的として、少なくとも1種の電子受容性物質を含有させることができる。本発明の感光体に使用可能な電子受容物質としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロム無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、クロラニル、ジニトロアントラキノン、トリニトロフルオレノン、ピクリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、フタル酸等をあげることができる。これらのうち、フルオレノン系、キノン系やCl,CN,NO等の電子吸引性置換基を有するベンゼン誘導体が特に好ましい。導電性粒子の平均粒径は保護層の透明性の点で0.2μm以下、特に0.1μm以下が好ましい。
【0082】
また、感光体の保護層として、感光層の上に各種樹脂層を設けることも出来る。特に架橋系の樹脂層を設けることにより、機械的強度の強い有機感光体を得ることができる。
【0083】
(画像形成装置)
本発明の画像形成装置は、像担持体と、該像担持体表面を帯電する帯電手段と、前記像担持体表面に潜像を形成する潜像形成手段と、前記潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、を有する画像形成装置であって、前記転写手段として上述の無端ベルトを備える。
【0084】
更に詳細には、本発明の画像形成装置は、像担持体に形成されたトナー像を中間転写ベルトに一次転写する第一転写手段と、該中間転写ベルトに転写されたトナー像を被転写体に二次転写する第二転写手段と、を少なくとも備える画像形成装置であって、前記中間転写ベルトが、既述の本発明の無端ベルト(中間転写ベルト)であることを特徴とする。
【0085】
本発明の画像形成装置は、上述の構成を有する中間転写体(中間転写ベルト)方式の画像形成装置であれば、特に限定されるものではなく、例えば、現像装置内に単色のトナーのみを収容する通常のモノカラー画像形成装置や、像担持体上に担持されたトナー像を中間転写ベルトに順次一次転写を繰り返すカラー画像形成装置、各色毎の現像器を備えた複数の像担持体を中間転写ベルト上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置が挙げられる。
【0086】
このようなタンデム型のカラー画像形成装置の具体例について図面を用いて以下に説明する。
【0087】
図1は、本実施の形態が適用されるカラー画像形成装置100を示した概略構成図である。図1に示すカラー画像形成装置100は、4つのトナーカートリッジ1、1対の定着ロール2、バックアップロール3、テンションロール4、2次転写ロール(2次転写手段)5、用紙経路6、用紙トレイ7、レーザ発生装置8、4つの感光体(像担持体)9、4つの1次転写ロール(1次転写手段)10、駆動ロール11、転写クリーナー12、4つの帯電ロール13、感光体クリーナー14、現像器15、中間転写ベルト16等を主要な構成重量部材として含んでなる。なお、図1に示すカラー画像形成装置100において、本実施の形態における半導電性ポリアミドイミドベルトは、トナー像の重ね合わせ手段およびトナー像の転写手段として機能する中間転写ベルト16として用いられる。
【0088】
次に、図1に示すカラー画像形成装置100の構成について順次説明する。まず、感光体9の周囲には、反時計回りに帯電ロール13、現像器15、中間転写ベルト16を介して配置された1次転写ロール10、感光体クリーナー14が配置され、これら1組の重量部材が、1つの色に対応した現像ユニットを形成している。また、この現像ユニット毎に、現像器15に現像剤を補充するトナーカートリッジ1がそれぞれ設けられており、各現像ユニットの感光体9に対して、帯電ロール13と現像器15との間の感光体9表面に画像情報に応じたレーザ光を照射することができるレーザ発生装置8が設けられている。
【0089】
4つの色(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)に対応した4つの現像ユニットは、画像形成装置内においてほぼ水平方向に直列に配置されており、4つの現像ユニットの感光体9と1次転写ロール10とのニップ重量部を挿通するように中間転写ベルト16が設けられている。中間転写ベルト16は、その内周側に以下の順序で反時計回りに設けられた、バックアップロール3、テンションロール4、および駆動ロール11により張架されている。なお、4つの1次転写ロール10はテンションロール4と駆動ロール11との間に位置する。また、中間転写ベルト16を介して駆動ロール11の反対側には中間転写ベルト16の外周面をクリーニングする転写クリーナー12が駆動ロール11に対して圧接するように設けられている。
【0090】
また、中間転写ベルト16を介してバックアップロール3の反対側には用紙トレイ7から用紙経路6を経由して搬送される記録用紙の表面に、中間転写ベルト16の外周面に形成されたトナー像を転写するための2次転写ロール5が、バックアップロール3に対して圧接するように設けられている。バックアップロール3と駆動ロール11との間の中間転写ベルト16の外周面には、この外周面を除電するための除電ロール(図示せず)が設けられている。
【0091】
更に、カラー画像形成装置100の底重量部には記録用紙をストックする用紙トレイ7が設けられ、用紙トレイ7から用紙経路6を経由して2次転写重量部を構成するバックアップロール3と2次転写ロール5との圧接重量部を通過するように供給することができる。この圧接重量部を通過した記録用紙はさらに1対の定着ロール2の圧接重量部を挿通するように不図示の搬送手段により搬送可能であり、最終的にカラー画像形成装置100外へと排出することができる。
【0092】
次に、図1のカラー画像形成装置100を用いた画像形成方法について説明する。トナー像の形成は各現像ユニット毎に行われ、帯電ロール13により反時計方向に回転する感光体9表面を一様に帯電した後に、レーザ発生装置8(露光装置)により帯電された感光体9表面に潜像を形成し、次に、この潜像を現像器15から供給される現像剤により現像してトナー像を形成し、1次転写ロール10と感光体9との圧接重量部に運ばれたトナー像を矢印X方向に回転する中間転写ベルト16の外周面に転写する。なお、トナー像を転写した後の感光体9は、その表面に付着したトナーやゴミ等が感光体クリーナー14によりクリーニングされ、次のトナー像の形成に備える。
【0093】
各色の現像ユニット毎に現像されたトナー像は、画像情報に対応するように中間転写体16の外周面上に順次重ね合わされた状態で、2次転写重量部に運ばれ2次転写ロール5により、用紙トレイ7から用紙経路6を経由して搬送されてきた記録用紙表面に転写される。トナー像が転写された記録用紙は、更に定着重量部を構成する1対の定着ロール2の圧接重量部を通過する際に加圧加熱されることにより定着され、記録媒体表面に画像が形成された後、カラー画像形成装置100外へと排出される。
【0094】
2次転写重量部を通過した中間転写ベルトは、矢印X方向に更に進み、図示しない除電ロールにより外周面が除電された後、さらに、転写クリーナー12により外周面がクリーニングされた後に次のトナー像の転写に備える。
【0095】
感光体9(像担持体)としては、従来公知のものを用いることができ、その感光層としては、有機系、アモルファスシリコン等公知のものを用いることができるが、画像の安定性から前述の感光体を使用することが好ましい。前記像担持体が円筒状の場合は、アルミニウム又はアルミニウム合金を押出し成型後、表面加工する等の公知の製法により得られる。またベルト状の前記像担持体を用いることも可能である。
【0096】
帯電ロール13(帯電手段)としては、特に制限はなく、例えば、導電性又は半導電性のローラ、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器などのそれ自体公知の帯電器が挙げられる。これらの中でも、帯電補償能力に優れる点で接触型帯電器が好ましい。前記帯電手段は、前記電子写真感光体に対し、通常、直流電流を印加するが、交流電流をさらに重畳させて印加してもよい。
【0097】
レーザ発生装置8(露光手段)としては、特に制限はなく、感光体9の表面に、例えば、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光源、或いはこれらの光源からポリゴンミラーを介して所望の像様に露光できる光学系機器等が挙げられる。
【0098】
現像器15(現像手段)としては、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、一成分系現像剤又は二成分系現像剤をブラシ、ローラ等を用い接触或いは非接触させて現像する公知の現像器等が挙げられる。
【0099】
1次転写ロール10(第一転写手段)としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。これらの中でも、転写帯電補償能力に優れる点で接触型転写帯電器が好ましい。なお、本発明においては、前記転写帯電器の他、剥離帯電器等を併用することもできる。
【0100】
2次転写ロール5(第二転写手段)としては、接触型転写帯電器、スコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等が挙げられる。これらの中でも、前記第一転写手段と同様に接触型転写帯電器が好ましい。転写ロール等の接触型転写帯電器により強く押圧するようにすると、画像の転写状態を良好な状態に維持させることができる。また、中間転写ベルト16を案内するローラの位置で転写ローラ等の接触型転写帯電器を押圧すると、中間転写ベルト16から被転写体(用紙)に対してトナー像を移転させる作用を良好な状態で行うことが可能になる。
【0101】
定着ロール2(定着手段)としては、特に制限はなく、それ自体公知の定着器、例えば熱ローラ定着器、オーブン定着器等が挙げられる。
【0102】
また、クリーニング手段としては、特に制限はなく、それ自体公知のクリーニング装置等を用いればよい。
【0103】
更に、光除電手段を設置することも好適である。光除電手段としては、例えば、タングステンランプ、LED等が挙げられ、光除電プロセスに用いる光質としては、例えば、タングステンランプ等の白色光、LED光等の赤色光等が挙げられる。該光除電プロセスにおける照射光強度としては、通常、電子写真感光体の半減露光感度を示す光量の数倍乃至30倍程度になるよう出力設定される。
【0104】
本発明の中間転写ベルトは、高速印刷可能な装置に関するものであり、装置内でトナー像を像担持体、中間転写ベルト、記録媒体へと転写し、印刷を行うため、各々の搬送速度が印刷の速度を決めている。本発明の中間転写ベルトは、これらの各重量部材の搬送速度が200mm/sec以上であっても、濃度ムラ、斑点状ディフェクトを低減でき、更に搬送速度が200mm/sec未満であっても良好に画像形成できる。
【0105】
また、感光体9から中間転写ベルト16への一次転写が最終画像の品質を決定する上で重要な要素となっている。一次転写の転写効率や転写時点の像乱れがないことが要求され、転写電流値が高いことが望ましい。上記、中間転写ベルトの搬送速度が200mm/sec以上の場合、一次転写電流値は25μA以上であることが好ましく、30μA以上であることがより好ましい。
【0106】
本発明の画像形成装置の構成としては、特に限定されるわけではなく、公知の構成とすることができる。
【0107】
[好ましい実施の形態]
<1>予め導電性を有するカーボンブラックを有機溶媒と共に分散させた分散液に、ジアミン成分と酸二無水物成分を溶解・重合させて調製したカーボンブラック分散ポリアミック酸溶液に3級アミンを添加した溶液を、金型の外面に塗布し乾燥・焼成させることによって得られるポリイミド無端ベルト。
<2>電圧印加10秒後の表面抵抗率の常用対数値と、30ミリ秒後の表面抵抗率の常用対数値との差が、絶対値で0.2(LogΩ/□)以下であり、かつ、JIS−C5016(:1994)による耐折性試験での耐折れ回数が4000回以上である上記<1>に記載のポリイミド無端ベルト。
<3>前記3級アミンがピリジン、ピコリン、キノリン、イソキノリン、及びトリエチルアミンから選ばれる1種又は2種以上である上記<1>または<2>のいずれか1つに記載のポリイミド無端ベルト。
<4>予め導電性を有するカーボンブラックを有機溶媒と共に分散させた分散液に、ジアミン成分と酸二無水物成分を溶解・重合させて調製したカーボンブラック分散ポリアミック酸溶液に3級アミンを添加した溶液を、金型の外面に塗布し乾燥・焼成させる、ポリイミド無端ベルトの製造方法。
<5>像担持体に形成されたトナー像を中間転写ベルトに一次転写する第一転写手段と、該中間転写ベルトに転写されたトナー像を被転写体に二次転写する第二転写手段と、を少なくとも備える画像形成装置であって、前記中間転写ベルトが、上記<1>〜<3>のいずれか1つに記載のポリイミド無端ベルトである画像形成装置。
<6>前記画像形成装置の該電子写真感光体の感光層にCuKα特性X線を用いたX線回折パターンにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°及び28.3°に回折ピークを有することを特徴とするヒドロキシガリウムフタロシアニンを有する上記<5>に記載の画像形成装置。
【実施例】
【0108】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。実施例等における評価項目は下記のようにして測定を行った。なお、本発明がかかる実施例、評価方法に限定されるものでないことはいうまでもない。
【0109】
<調製例1>カーボンブラック分散ポリアミック酸溶液(A−1)の調製
n−メチル−2−ピロリドン(NMP)200g中にポリビニル−2−ピロリドン(PVP)1gを添加して溶解させた。次いで、導電剤としての乾燥した酸化処理カーボンブラック(SPECIAL BLACK4(Degussa社製、pH4.0、揮発分:14.0%)20gを徐々に添加した。ボールミルにて室温下12時間分散処理することにより分散した後、#400ステンレスメッシュでろ過しカーボン濃度10%のカーボンブラック分散液を得た。
【0110】
得られたカーボンブラック分散液118gをセパラブルフラスコに移し、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物29.42gを加えた。十分撹拌・溶解した後、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル20.02gをn−メチル−2−ピロリドン80.08gに溶解させた溶液を10℃に保持したフラスコ内に徐々に滴下した。ジアミン溶液滴下後10〜15℃にて攪拌・重合を行った後、#800のステンレスメッシュを用いてろ過して室温まで冷却を行い、カーボンブラック分散ポリアミック酸溶液(A−1)を得た。
【0111】
<調製例2>3級アミン添加カーボンブラック分散ポリアミック酸溶液(A−2)の調製
調製例1で得られたカーボンブラック分散ポリアミック酸溶液(A−1)200g中に、β−ピコリン4.0g(ポリアミック酸に対して10重量%)を加えて溶解させてカーボンブラック分散ポリアミック酸溶液(A−2)を得た。
【0112】
<調製例3>3級アミン添加カーボンブラック分散ポリアミック酸溶液(A−3)の調製
調製例2においてカーボンブラック分散ポリアミック酸溶液(A−1)にβ−ピコリン4.0gおよび無水酢酸4.0gを加えたこと以外は調製例2と同様にしてカーボンブラック分散ポリアミック酸溶液(A−3)を得た。
【0113】
<調製例4〜7>3級アミン添加カーボンブラック分散ポリアミック酸溶液(A−4)〜(A−7)の調製
調製例2においてβ−ピコリン4.0gのかわりに表1に示す添加化合物4.0g(ポリアミック酸に対して10重量%)をカーボンブラック分散ポリアミック酸溶液(A−1)に加えたこと以外は調製例2と同様にしてカーボンブラック分散ポリアミック酸溶液(A−4)〜(A−7)を得た。
【0114】
<比較調製例1>3級アミン添加カーボンブラック後分散ポリアミック酸溶液(A−8)の調製
攪拌棒、温度計、滴下ロートを取り付けたフラスコ中で、五酸化リンによって乾燥した窒素ガスを通じながら、N−メチル−2−ピロリドン1977.6gを注入した。液温度を60℃まで加熱した後に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル200.2gを添加して溶解させた。溶解の確認後、溶液温度を60℃に保ちながら、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物294.2gを添加して、攪拌・溶解した。テトラカルボン酸二無水物の溶解を確認後、さらに、60℃に保持しながら、攪拌を続けて、ポリアミック酸の重合反応を行った。24時間反応を行い、固形分濃度20重量部%のポリアミック酸溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液500g中に、非イオン系高分子としてポリビニル−2−ピロリドン(BASFジャパン株式会社製Luvitec(R)K17)0.5gを添加・溶解させた。乾燥した導電剤としての酸化処理カーボンブラック(SPECIAL BLACK4(Degussa社製、pH4.0、揮発分:14.0%)25.0gを添加して、ボールミルにて6時間処理して、カーボンブラックの分散を行った。次いで、芳香族カルボン酸化合物として、4−ヒドロキシ安息香酸2.0gを加えて溶解させ、ポリアミック酸組成物(A−8)を得た。
【0115】
<製造例1>ポリイミド無端ベルト(B−1)の製造
得られたカーボンブラック分散ポリアミック酸溶液(A−2)に外径90mm、長さ450mmの円筒状SUS製金型を浸漬させたのち垂直方向に引き上げることにより金型外面に塗布した。なお、引き上げる際に、円筒状金型に対するクリアランス調整がなされた膜厚制御用金型を、円筒状金型に通し平行移動させることで、余分な溶液を排除し円筒状金型上の溶液の厚みを均一にした。
【0116】
なお、この円筒状金型には、表面にフッ素系の離型剤を予め塗布することで、ベルト成形後の剥離性を向上させておいた。
【0117】
次に、金型を回転させながら、温度120℃の条件で、30分間乾燥処理を行った。乾燥処理後、クリーンオーブン中で、200℃、約30分間焼成処理を行い、イミド化反応を進行させた。その後、金型を室温で放冷し、金型から樹脂を取り外し、目的のポリイミド無端ベルト(B−1)を得た。
【0118】
<製造例2〜4>ポリイミド無端ベルト(B−2)〜(B−4)の製造
製造例1において、カーボンブラック分散ポリアミック酸溶液(A−2)の代わりに(A−3)〜(A−5)を用いた以外は同様の条件でポリイミド無端ベルト(B−2)〜(B−4)を製造した。
【0119】
<製造例5>ポリイミド無端ベルト(B−5)の製造
製造例1において、カーボンブラック分散ポリアミック酸溶液(A−2)の塗布を金型の高速回転による遠心成形により金型外面に塗布した以外は同様の条件でポリイミド無端ベルト(B−5)を製造した。
【0120】
<製造例6〜7>ポリイミド無端ベルト(B−6)〜(B−7)の製造
製造例5において、カーボンブラック分散ポリアミック酸溶液(A−2)の代わりに(A−6)〜(A−7)を用いた以外は同様の条件でポリイミド無端ベルト(B−6)〜(B−7)を製造した。
【0121】
<比較製造例1,2>:ポリイミド無端ベルト(B−8),(B−9)の製造
製造例1において、カーボンブラック分散ポリアミック酸溶液(A−2)の代わりに(A−1),(A−8)を用いた以外は同様の条件でポリイミド無端ベルト(B−8),(B−9)を製造した。
【0122】
<比較製造例3>ポリイミド無端ベルト(B−10)の製造
製造例1において、カーボンブラック分散ポリアミック酸溶液(A−2)の塗布を金型の高速回転による遠心成形により金型内面に塗布した以外は同様の条件でポリイミド無端ベルト(B−10)を製造した。
【0123】
製造例1〜7および比較製造例1〜3で得られたポリイミド無端ベルト(B−1)〜(B−10)について、以下の方法によりベルトの物性評価を行った。ポリイミド無端ベルト(B−1)〜(B−10)の成形条件および物性評価結果を表2に示す。
【0124】
[ベルト物性評価]
(ベルト膜厚の測定)
ベルト膜厚測定には、サンコー電子社製渦電流式膜厚計CTR−1500Eを用い、同一試料について5回測定を行い、その平均値をベルト膜厚とした。また、ベルト膜厚のばらつきは、同一試料について5回測定した際のばらつきの値を記載した。
【0125】
(表面抵抗率)
得られたそれぞれのポリイミドベルトを図2に示す円形電極(三菱油化(株)製ハイレスターIPのURプローブ:円柱状電極Cの外径Φ16mm、リング状電極重量部Dの内径Φ30mm、外径Φ40mm)を用い、22℃/55%RH環境下、電圧100V印加して、印加後30ミリ秒及び10秒の抵抗値を測定した。測定値から印加後30ミリ秒の表面抵抗率の常用対数値(ρs(30msec))及び10秒の表面抵抗率の常用対数値(ρs(10sec))を算出した。
【0126】
また、Δ=|ρs(30msec)−ρs(10sec)|を算出した。結果を表2に示す。
【0127】
なお、前記表面抵抗率の測定方法を、図2を用いて説明する。図2は、円形電極の一例を示す概略平面の図2(a)及び概略断面の図2(b)からなる。図2に示す円形電極は、第一電圧印加電極Aと第二電圧印加電極Bとを備える。第一電圧印加電極Aは、円柱状電極重量部Cと、該円柱状電極重量部Cの外径よりも大きい内径を有し、且つ円柱状電極重量部Cを一定の間隔で囲む円筒状のリング状電極重量部Dとを備える。第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極重量部C及びリング状電極重量部Dと第二電圧印加電極Bとの間に半導電性ベルトTを挟持し、第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極重量部Cと第二電圧印加電極Bとの間に電圧V(V)を印加したときに流れる電流I(A)を測定し、下記式により、シート状重量部材およびフィルム状接着剤重量部分の表面抵抗率(logΩ/□)を算出することができる。
式1:[表面抵抗率]=19.6×(V/I)
【0128】
(耐折性の測定)
得られたそれぞれのポリイミドベルトから150mm×15mmの試験片を作製した。ベルト膜厚については、塗工時に条件を様々制御して、80μmになるように調整した。
JIS−C5016に準じて、試験片が破断するまでの往復折り曲げ回数を測定した。同一試料について10回の測定を行い、その平均値をもって耐折性の評価結果とした。測定データとした。測定機は、東洋精機MIT耐揉疲労試験機MIT−DAを使用した。結果を表2に示す。
【0129】
【表1】

【0130】
【表2】

【0131】
(感光体の作製)
下記の方法で、実施例および比較例に用いる感光体を作製した。
【0132】
(感光体1の作製)
酸化亜鉛(SMZ−017N:テイカ製)100重量部をトルエン500重量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(A1100:日本ユニカー社製)2重量部を添加し、5時間攪拌した。その後トルエンを減圧蒸留にて留去し、120℃で2時間焼き付けを行った。得られた表面処理酸化亜鉛を蛍光X線により分析した結果、Si元素強度は亜鉛元素強度の1.8×10−4であった。
【0133】
前記表面処理を施した酸化亜鉛35重量部と硬化剤 ブロック化イソシアネート スミジュール3175)(住友バイエルンウレタン社製):15重量部とブチラール樹脂 BM−1(積水化学社製):6重量部とメチルエチルケトン:44重量部とを混合し、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い、分散液を得た。得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレート:0.005重量部、トスパール130(GE東芝シリコン社製):17重量部を添加し、下引層塗布用液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にてアルミニウム基材上に塗布し、160℃、100分の乾燥硬化を行い厚さ20μmの下引層を得た。表面粗さは、東京精密社製表面粗さ形状測定器サーフコム570Aを使用し、測定距離2.5mm、走査速度0.3mm/secで測定し、Rz値0.24であった。
【0134】
ついで、その上にこのアルミニウム基材上にX線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°、28.3°に強い回折ピークを持つヒドロキシガリウムフタロシアニンの1重量部をポリビニルブチラール(エスレックBM−S、積水化学社製)1重量部、および酢酸n−ブチル100重量部と混合し、ガラスビーズとともにペイントシェーカーで1時間処理して分散した後、得られた塗布液を前記下引層上に浸漬コートし、100℃で10分間加熱乾燥して膜厚約0.15μmの電荷発生層を形成した。なお、本実施例に用いたヒドロキシガリウムフタロシアニンのX線回折スペクトルを図3に示す。
【0135】
下記構造のベンジジン化合物2重量部、高分子化合物(粘度平均分子量39,000)2.5重量部をクロロベンゼン35重量部に溶解させた塗布液を前記電荷発生層上に浸漬コーティング法で塗布し、110℃、40分の加熱を行って膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。
【0136】
【化4】

【0137】
(感光体2の作製)
酸化亜鉛(SMZ−017N:テイカ製)100重量部をトルエン500重量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(A1100:日本ユニカー社製)2重量部を添加し、5時間攪拌した。その後トルエンを減圧蒸留にて留去し、120℃で2時間焼き付けを行った。得られた表面処理酸化亜鉛を蛍光X線により分析した結果、Si元素強度は亜鉛元素強度の1.8×10−4であった。
【0138】
前記表面処理を施した酸化亜鉛35重量部と硬化剤 ブロック化イソシアネート スミジュール3175)(住友バイエルンウレタン社製):15重量部とブチラール樹脂 BM−1(積水化学社製):6重量部とメチルエチルケトン:44重量部とを混合し、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い、分散液を得た。得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレート:0.005重量部、トスパール130(GE東芝シリコン社製):17重量部を添加し、下引層塗布用液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にてアルミニウム(Al)基材上に塗布し、160℃、100分の乾燥硬化を行い厚さ20μmの下引層を得た。表面粗さは、東京精密社製表面粗さ形状測定器サーフコム570Aを使用し、測定距離2.5mm、走査速度0.3mm/secで測定し、Rz値0.24であった。
【0139】
ついで、その上にこのアルミニウム基材上にX線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ±0.2°)が27.1°に強い回折ピークを持つチタニルフタロシアニンの1重量部をポリビニルブチラール(エスレックBM−S、積水化学社製)1重量部、および酢酸n−ブチル100重量部と混合し、ガラスビーズとともにペイントシェーカーで1時間処理して分散した後、得られた塗布液を前記下引層上に浸漬コートし、100℃で10分間加熱乾燥して膜厚約0.15μmの電荷発生層を形成した。なお、本実施例に用いたヒドロキシガリウムフタロシアニンのX線回折スペクトルを図4に示す。
【0140】
下記構造のベンジジン化合物2重量部、高分子化合物(粘度平均分子量39,000)2.5重量部をクロロベンゼン35重量部に溶解させた塗布液を前記電荷発生層上に浸漬コーティング法で塗布し、110℃、40分の加熱を行って膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。
【0141】
(化5)
TiOPc・(HO)
(式中、Pcはフタロシアニン核を意味し、nは0.15〜1である。)
【0142】
<実機評価(コピー画質)>
(実施例1)
製造例1で得られたポリイミド無端ベルト(B−1)を、図1に示す構成の富士ゼロックス社製DocuCentreColor2220改造機(プロセス速度:250mm/sec、一次転写電流:35μAに改造)の中間転写ベルトとして組み込み、感光体作成例1で得られた感光体を搭載して、高温高湿(28℃85%RH)及び低温低湿(10℃15%RH)でCyan、Magentaの50%ハーフトーンを富士ゼロックス社製C2紙に出力し、以下の規準で濃度ムラ、斑点ディフェクト、および転写ゴーストを目視で評価した。
【0143】
[濃度ムラ]
◎:濃度ムラが確認されない。
○:濃度ムラが僅かに確認できたが、問題のないレベルである。
×:濃度ムラがはっきりと確認できた。
【0144】
[斑点ディフェクト]
◎:斑点ディフェクトが確認されない。
○:斑点ディフェクトが僅かに確認できたが、問題のないレベルである。
×:斑点ディフェクトがはっきりと確認できた。
【0145】
[転写ゴースト]
◎:転写ゴーストが確認されない。
○:転写ゴーストが僅かに確認できたが、問題のないレベルである。
×:転写ゴーストがはっきりと確認できた。
【0146】
また、同様にして、製造例1で得られたポリイミド無端ベルト(B−1)を、図1に示す構成の富士ゼロックス社製DocuCentreColor2220改造機(プロセス速度:250mm/sec、一次転写電流:35μAに改造)の中間転写ベルトとして組み込み、感光体1を搭載して、高温高湿(28℃85%RH)でCyan、Magentaの50%ハーフトーンを富士ゼロックス社製C2紙に出力し、10000時間の駆動テストを行った。駆動テスト後ベルトを取り出し、ベルト表面の状態を目視観察して、以下の規準でベルトの駆動テスト結果を評価した。
【0147】
[駆動テスト]
○:割れ等の欠陥無し
×:割れ等の欠陥発生
【0148】
(実施例2〜7)
製造例2〜7で得られたポリイミド無端ベルト(B−2)〜(B−7)を用い、感光体1を用いた以外は実施例1と同様にして濃度ムラ、斑点ディフェクト、転写ゴーストおよび駆動テストを評価した。
【0149】
(実施例8〜9)
製造例1,2で得られたポリイミド無端ベルト(B−1),(B−2)を用い、感光体1を感光体2に代えた以外は実施例1と同様にして濃度ムラ、斑点ディフェクト、転写ゴーストおよび駆動テストを評価した。
【0150】
(比較例1〜3)
比較製造例1〜3で得られたポリイミド無端ベルト(B−8)〜(B−10)を用いた他は実施例1と同様にして濃度ムラ、斑点ディフェクト、転写ゴーストおよび駆動テストを評価した。
【0151】
以上得られた実機評価結果を表3に示す。
【0152】
【表3】

【0153】
表2より、本発明のポリイミド無端ベルトは高い機械強度と電気特性を有することが分かる。また、表3より、本発明の感光体1を用い、本発明のポリイミド無端ベルトを中間転写ベルトとして用いた実施例1〜7は濃度ムラ、斑点ディフェクト、転写ゴースト、ベルト端重量部の割れが観察されない良好な画質を有することが分かる。また、転写ゴーストの発現しやすい感光体2を用いた場合でも、本発明のポリイミド無端ベルトを中間転写ベルトとして用いた実施例8,9では、転写ゴーストは問題ないレベルもしくは確認されず、良好な画質を提供することができることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0154】
本発明の活用例として、電子写真方式を用いた複写機、プリンタ等の画像形成装置への適用がある。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】本発明を適用するタンデム式の画像形成装置の要部部分を説明する模試図である。
【図2】表面抵抗率の計測方法を説明する図である。
【図3】本発明の実施の形態に用いた感光体1に用いたヒドロキシガリウムフタロシアニンのX線回折スペクトルのチャートを示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に用いた感光体2に用いたチタニルフタロシアニンのX線回折スペクトルのチャートを示す図である。
【符号の説明】
【0156】
1 トナーカートリッジ、2 定着ロール、3 バックアップロール、4 テンションロール、5 2次転写ロール、6 用紙経路、7 用紙トレイ、8 レーザ発生装置、9 感光体、10 1次転写ロール、11 駆動ロール、12 転写クリーナー、13 帯電ロール、14 感光体クリ−ナー、15 現像器、16 中間転写ベルト、100 カラー画像形成装置、A 第一電圧印加電極、B 第二電圧印加電極、C 円柱状電極重量部、T 半導電性ベルト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンブラックとポリイミド樹脂と3級アミンとが含有されてなるポリイミド無端ベルトであって、
電圧印加10秒後の表面抵抗率の常用対数値と、30ミリ秒後の表面抵抗率の常用対数値との差が、絶対値で0.2(LogΩ/□)以下であり、
かつ、JIS−C5016(:1994)による耐折性試験での耐折回数が4000回以上であるポリイミド無端ベルト。
【請求項2】
有機極性溶媒に分散剤を溶解させて分散剤溶液を調製する工程と、
該分散剤溶液に導電剤を溶解もしくは分散させて導電剤溶液を調製する工程と、
該導電剤溶液中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを反応させてポリアミック酸を合成してポリアミック酸溶液とする工程と、
該ポリアミック酸溶液に3級アミンを添加してポリアミック酸組成物とする工程と、
該ポリアミック酸組成物を円筒状基材外面上に塗布する塗布工程と、
前記円筒状基材外面上に塗布された前記ポリアミック酸組成物を加熱する加熱処理工程と、
を有するポリイミド無端ベルトの製造方法。
【請求項3】
像担持体と、
該像担持体表面を帯電する帯電手段と、
前記像担持体表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
前記潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を中間転写ベルト上に一次転写する一次転写手段と、
該中間転写ベルト上に一次転写されたトナー像を記録媒体上に二次転写する二次転写手段と、を備える画像形成装置であって、
前記中間転写ベルトが請求項1に記載のポリイミド無端ベルトである画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−286220(P2007−286220A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−111581(P2006−111581)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】