説明

ポリウレタンの除去方法

【課題】 ポリウレタンで構成されていない下地上に形成されたポリウレタン層から、ポリウレタンのみを分解または溶解させ、ポリウレタンの分解物が下地と混じることなく分離することが出来、下地を高純度の状態で回収、再利用可能としたポリウレタンの除去方法を提供する。
【解決手段】 ポリウレタンで構成されていない下地上に形成されたポリウレタン層に、沸点が150℃以上の溶媒とアルカリ金属の炭酸塩又はリン酸塩とを含む液を作用させて、前記ポリウレタン層を前記下地から除去することを特徴とするポリウレタンの除去方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン用処理液を用いた下地にポリウレタンが形成された複合体の分離回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンは、耐熱性、機械的性質、耐候性、耐薬品性、耐水性などに優れているため、種々の分野で利用されている。しかしながら、耐熱性や耐薬品性を向上させるため架橋させると溶融せず、しかも汎用溶媒には不溶化するため、再利用が困難であった。また、各種材料との接着性が良好なため、容易に剥離することができず、被着体を純度の高い状態で回収し、再利用することができなかった。
【0003】
特許文献1には、ウレタン塗膜付樹脂をアルカリ触媒の存在下、ベンジルアルコールで分解・微細化して溶融樹脂中にウレタン塗膜の分解物を均一分散するウレタン塗膜付樹脂の再生処理法が開示されている。
【0004】
しかし、この方法では、ウレタン塗膜の分解物が樹脂中に有害にならない程度までに微細化されて分散含有された前記樹脂を再利用することを目的とし、前記樹脂からウレタン塗膜を分離して前記樹脂そのものを回収するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−290456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明はポリウレタンで構成されていない下地上に形成されたポリウレタン層から、ポリウレタンのみを分解または溶解させ、ポリウレタンの分解物が下地と混じることなく分離することが出来、下地を高純度の状態で回収、再利用可能としたポリウレタンの除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するため、本発明のポリウレタンの除去方法は、ポリウレタンで構成されていない下地上に形成されたポリウレタン層に、沸点が150℃以上の溶媒とアルカリ金属の炭酸塩又はリン酸塩とを含む液を作用させて、前記ポリウレタン層を前記下地から除去することを特徴とする。
【0008】
アルカリ金属の炭酸塩又はリン酸塩は、そのすべてが溶媒中に必ずしも溶けている必要はない。
【0009】
ポリウレタンで構成されていない下地上に形成されたポリウレタン層に、沸点が150℃以上の溶媒とアルカリ金属の炭酸塩又はリン酸塩とを含む液を作用させることによって、ポリウレタン層が膨潤し、分解して下地から剥離する。その結果、下地にポリウレタンが混入することなく下地のみを回収することができる。下地が溶媒を含んだ場合は、その後の下地を乾燥(必要により減圧下で)することにより、下地を高純度の状態で回収することができる。なお、本発明において、「作用」とは、液によるポリウレタン層の膨潤、ポリウレタン層の分解又はポリウレタン層が下地から剥離することの何れかあるいはそれらの組み合わせを意味する。
【0010】
上述の回収方法において、前記溶媒はベンジルアルコールであり、アルカリ金属の炭酸塩又はリン酸塩がリン酸三カリウムであることが好ましい。
【0011】
また、上述の回収方法において、溶媒の凝固点以上、且つ溶媒の沸点(複数の溶媒を使用する場合はそれらのうち最低の沸点)以下の温度範囲内で液を作用させることが好ましい。
【0012】
また、上述の回収方法において、溶媒中に含まれる水分量が、カール・フィッシャー法で測定したときに2.0質量%以下であることが好ましい。
【0013】
また、上述の回収方法において、アルカリ金属の炭酸塩又はリン酸塩を溶媒に対して過飽和の状態になるような量を添加したものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ポリウレタンで構成されていない下地上に形成されたポリウレタン層から、ポリウレタンのみを分解または溶解させ、ポリウレタンの分解物が下地と混じることなく分離することが出来、下地を高純度の状態で回収、再利用可能としたポリウレタンの除去方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
本実施形態におけるポリウレタンで構成されていない下地上に形成されたポリウレタン層とは、無機物および/または樹脂材料からなる構成材を下地として、その上にポリウレタン層を設けたものである。
【0017】
下地となる材料は、金属やガラス、セラミックスなどの無機物や本発明で使用する溶剤に溶解しにくい樹脂材料であって、ポリウレタンで構成されないものであれば特に限定されることなく適用可能であるが、例えば、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウムなどの金属およびそれらを含む合金、アルミナ、ガラス、金属酸化物などの無機物、ポリプロピレン、エラストマー変性ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルサルフォンなどの芳香族ポリマーが好ましい。また、電装部品に用いられている電子部品や電子部品を搭載したプリント配線板、配線用被覆電線なども好ましい。
【0018】
これらの中でも注型された電装部品を構成している銅やアルミ合金またはポリフェニレンスルフィド、電化製品の筐体や自動車のバンパー材料の主流となっているポリオレフィン、特にポリプロピレンを主体とした樹脂を好適に挙げることができる。
【0019】
ポリウレタン樹脂の形成方法は、射出成形、反応射出成形、キャスティング、ポッティング、ディッピング、含浸、塗装、印刷、ラミネートなど既知の方法を用いることができる。また、複合体の形状は、構成材同士をポリウレタンで固定したもの、構成材同士をポリウレタンで接着したもの、構成材表面をポリウレタンで被覆、塗装、印刷したものなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
ポリウレタンは、分子中に2つ以上の水酸基を有する化合物と分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物とが反応したウレタン結合を含む高分子量体であり、他のポリマー、モノマー、充填材及び顔料などの添加剤をさらに含んでいても構わない。
【0021】
分子中に2つ以上の水酸基を含有する化合物としては、一般的なウレタン樹脂の製造に用いられるものであり、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール化合物、水酸基を有するアクリル樹脂またはポリエステル樹脂、反応途中で水酸基を生成する例えばアセトアセトキシ基などを有するアクリル樹脂などが挙げられる。
【0022】
分子中に2つ以上のイソシアネート基を含有する化合物としては、一般的なウレタン樹脂の製造に用いられるものであり、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタントリイソシアネート、3,3’−ジメチルフェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ビス(2−イソシアネートエチル)フマレート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、4−ジフェニルプロパンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,5(又は6)−ビス(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、トリエチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリエチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートのオリゴマー、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのウレトジオン、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体などが挙げられる。
【0023】
ポリウレタン中には、アクリル樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などのポリマーがさらに含まれていてもよく、また、ポリウレタン生成に用いた前記分子中に2つ以上の水酸基を有する化合物や前記分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物の未反応のモノマーをさらに含んでいてもよい。また、シリカやアエロジルなどの充填材や有機顔料、無機顔料、炭素系顔料、メタリック顔料、パール顔料、防錆顔料等の顔料、界面活性剤などの添加剤を本発明の効果が損なわれない範囲でさらに含んでいても構わない。
【0024】
有機顔料としては、例えば、キナクリドン等のキナクリドン系顔料、ピグメントレッド等のアゾ系顔料、フタロシアニンブルー等のフタロシアニン系顔料などが挙げられる。
【0025】
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、炭酸カルシウム、バリタ、クレー、タルク等が挙げられる。
【0026】
炭素系顔料としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト等が挙げられる。
【0027】
メタリック顔料としては、例えば、アルミニウム等が挙げられる。
【0028】
パール顔料としては、例えば、雲母状酸化鉄、着色雲母状酸化鉄等が挙げられる。
【0029】
防錆顔料としては、例えば、ベンガラ、ストロンチウムクロメート、リン酸亜鉛等が挙げられる。
【0030】
界面活性剤としては、高級アルコール(C〜C22)硫酸エステル塩類、脂肪族アルコールリン酸エステル塩類、アルキルアリールスルホン酸塩類、アルキルアミドのスルホン酸塩類、二塩基性脂肪族エステルのスルホン酸塩類などのアニオン系界面活性剤、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、エチレンオキシド付加アンモニウム塩などのカチオン系界面活性剤などが挙げられる。
【0031】
本実施形態における沸点が150℃以上の溶媒としては、アミド系、アルコール系、ケトン系、エーテル系、エステル系などの溶媒がよく、これらは単独で使用しても、数種類を混合して使用してもよい。また、これらの溶媒に併せて、無機系溶媒などを併用してもよい。
【0032】
アミド系溶媒としては、例えば、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、カルバミド酸エステル等が使用できる。
【0033】
アルコール系溶媒としては、例えば、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、シクロヘキサノール、1−メチルシクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ベンジルアルコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコール、さらには、ポリエチレングリコール#200、ポリエチレングリコール#300、ポリエチレングリコール#400(いずれも関東化学株式会社製商品名)等に例示されるポリエチレングリコールなどがある。ポリエチレングリコールを用いる場合は、ポリエチレングリコールの平均分子量が500以下であることがポリウレタンの除去性の観点から好ましい。
【0034】
ケトン系溶媒としては、例えば、4−ヘプタノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ホロン、イソホロン等が挙げられる。
【0035】
エーテル系溶媒としては、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等がある。
【0036】
これらの溶媒の中では、アルコール系溶媒がアルカリ金属のリン酸類の塩を溶解しやすいため好ましく、ベンジルアルコールが特に好ましい。
【0037】
また、沸点が150℃以上の溶媒を用いることによって、適度な分解速度で作用させることができる。沸点が170℃以上であるとより好ましい。
【0038】
溶媒に含まれる水分の濃度は所定量以下であることが好ましく、その濃度はカール・フィッシャー法によって測定することができ、2.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましい。2.0質量%以下であれば、水分の影響はほとんど現れない。なお、下地にアルミニウムや亜鉛などの両性金属が含まれる場合には、水分によって下地が一部溶け出してしまい、下地を高純度のまま回収できなくなるので、所定量以下の水分量に抑えることは一層都合がよい。
【0039】
本実施形態におけるアルカリ金属の炭酸塩またはリン酸塩の例としては、陽イオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムのイオンが挙げられ、陰イオンとしては、炭酸イオン、リン酸のイオンが挙げられる。
これらの塩は、最低1種類のアルカリ金属を有していればよく、酸性塩、アルカリ性塩、中性塩のいずれでもよい。これらの塩は単独で使用しても、数種類を混合して使用してもよい。また、これらの塩以外に、どのようなものを併用してもよく、液として用いたときの液の分解性や溶解性等の特性に影響しない程度に不純物が含まれていても構わない。
【0040】
これらの塩の中で、溶媒への溶解性の観点から、アルカリ金属のリン酸塩が好ましい。
【0041】
本実施形態において用いる液は、溶媒に対し、アルカリ金属の炭酸塩またはリン酸塩は0.001〜80質量%の任意の濃度で調整することが好ましい。0.001質量%以下では樹脂硬化物の分解速度が遅くなる傾向があり、80質量%を超えると液を調製することが困難である。特に好ましい濃度としては、0.1〜20質量%である。
【0042】
またアルカリ金属の炭酸塩またはリン酸塩は、必ずしもすべてが溶媒に溶解する必要はなく、すべてが溶解していないいわゆる過飽和の状態になるような量を添加した溶液においても、溶質は平衡状態にあり、アルカリ金属の炭酸塩またはリン酸塩が失活した場合にはそれを補うので、特に有効である。
【0043】
この液には無機系溶媒を含有することができ、例えば、液体アンモニア、液体二酸化炭素などを本発明の効果が損なわれない程度に含んでいてもよい。
【0044】
液を調製する際の温度はどのような温度でもよいが、常圧で調製する場合には、作業効率や液の取り扱い性などの観点から、使用する溶媒の凝固点以上、沸点以下で行うことが好ましい。液を調製する際の雰囲気は、大気中でもよく、窒素、アルゴン、二酸化炭素等の不活性気体中でもよい。常圧下、減圧下または加圧下の何れの条件下であっても可能である。
【0045】
液を用いてポリウレタンに作用する条件としては、特に制限はない。好ましくは、処理速度を調整するために、液は溶媒の凝固点以上、且つ溶媒の沸点(複数の溶媒を使用する場合はそれらのうち最低の沸点)以下の温度範囲内で使用される。
【0046】
また、金属の酸化や樹脂材料の熱分解等の回収する下地の品質低下を防ぐためには、250℃以下の温度で作用させることが好ましく、同様の理由から200℃以下の温度で作用させることが特に好ましい。
【0047】
処理方法としては、液中に浸漬することによって行うことができ、分解速度を高めるために、攪拌や超音波などの物理的なエネルギーを加えて分解や剥離を促進してもよい。攪拌方法としては、撹拌羽根による方法、噴流を起こす方法、容器を揺動する方法、不活性気体の気泡を用いる方法などがある。また、液中に浸さずに、スプレー等によって噴霧してもよく、高圧で吹き付けることもできる。
【0048】
液の使用時及び保存時の雰囲気は、大気中でも、窒素、アルゴン等の不活性気体中でもよく、常圧下、減圧下または加圧下のいずれでもよい。安全性や作業の簡便性に優れる点で、常圧下で処理液を使用又は保存することが好ましい。本実施形態では、ポリウレタンの分解、溶解処理を大気中、大気圧下で行うことができる。すなわち、特定の気体雰囲気や特定の気圧を設定するための装置などを必ずしも必要としないという利点を有する。
【0049】
したがって、大気圧下で、溶媒の凝固点以上、且つ溶媒の沸点(複数の溶媒を使用する場合はそれらのうち最低の沸点)以下の温度範囲内で液を作用させることで、低コストで効率よく下地を回収することができる。
【0050】
上述の方法を用いることによって、ポリウレタンで構成されていない下地上に形成されたポリウレタン層を、下地とポリウレタン層の分解生成物とに分離することができる。その分離方法は、濾過や沈殿法など既知の方法を用いることができる。
【0051】
分離した下地は回収して洗浄し、乾燥後そのまま再利用することができる。乾燥は必要に応じて減圧下で行ってもよい。
【0052】
一方、分離した分解生成物のうち、溶媒へ溶解しない不溶物は濾過や沈殿法などで分離し、充填材などとして再利用できる。溶液中へ溶解した分解生成物は、溶媒を蒸留等により除去すれば、樹脂原料として再利用することができる。ここで蒸留等により除去した溶媒は、本実施形態に用いる液の溶媒として再利用できる。
【実施例】
【0053】
以下に、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下の実施例において、%は質量%を表す。
【0054】
(ポリウレタンで構成されない下地にポリウレタン層を形成した複合体の作製)
電子部品注型用ウレタン樹脂(日立化成工業株式会社商品名「KU−7008」)100gを調製し、下地としてのアルミニウム製のカップ(アルミニウムの厚み30μm)の中に流し込み、90℃、3時間で硬化させた後、縦1cm、横3cm、厚さ5mmのサイズに切り出してアルミ箔とポリウレタンとからなる複合体Aを得た。
【0055】
下地となる厚さ1.0mm、縦1100mm、横800mmのポリプロピレン製シートの一方側表面における各端縁に沿って、厚さ47μm、幅25mmのポリイミドテープを貼り付けることによって、ポリプロピレン製シートの周縁部に厚み47μmの土手を形成した。次いで、ポリプロピレン製シートの一方側表面の上記土手で囲まれた領域内に、二液型ウレタン樹脂塗料主剤(ロックペイント株式会社商品名「150−7150 マルチトップハイクリヤー」)30gに硬化剤(ロックペイント株式会社商品名「150−7120 7000硬化剤(標準型)」)15gを混ぜ合わせたものを流し込み、直径12mmのステンレス製丸棒で均した後、室温で30分間乾燥し、ポリプロピレン製シートからポリイミドテープを除去し、その後60℃、60分間で硬化させて、ポリプロピレン板とポリウレタンとからなる複合体Bを得た。
【0056】
(液の調製)
実施例1〜9として表1に示すアミド系、ケトン系、アルコール系およびエーテル系の各溶媒と、アルカリ金属の炭酸塩又はリン酸塩を3%加えた液を調製した。調製前の溶媒中の水分量は、カール・フィッシャー法で測定したところ、何れも0.4%であった。
【0057】
これらの液の中には、アルカリ金属の炭酸塩又はリン酸塩が完全には溶解しきれず、液を静置したときに下方に沈殿しているものもあった。
【0058】
表中の溶媒の略号は、以下のとおりである。
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
CHON:シクロヘキサノン
BZA:ベンジルアルコール
DGMM:ジエチレングリコールモノメチルエーテル
DGDM:ジエチレングリコールジメチルエーテル
【0059】
【表1】

【0060】
比較例1〜10として表2に示すアミド系、ケトン系、アルコール系およびエーテル系の各溶媒と、アルカリ金属の炭酸塩又はリン酸塩を3%加えた液を調製した。
【0061】
【表2】

【0062】
(ポリウレタン複合体の処理)
上記2種類の各複合体を、常圧、窒素雰囲気下で140℃の上記各液中に浸漬した。8時間経過後、複合体を取り出して乾燥し、浸漬後の状態を目視で観察した。その結果を表1、表2に示す。ポリウレタン樹脂が残っていないものを○とし、特に短時間で除去できたものを◎とした。一方、下地の全体または一部に樹脂が残っているものを×とした。
【0063】
アルカリ金属の炭酸塩又はリン酸塩を用いた例では、アルミ箔およびポリプロピレン板の下地には一切の腐食や溶解等の変化が見られず、複合体を作製する前と同様の状態即ち、再利用可能な状態で残存していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンで構成されていない下地上に形成されたポリウレタン層に、沸点が150℃以上の溶媒とアルカリ金属の炭酸塩又はリン酸塩とを含む液を作用させて、前記ポリウレタン層を前記下地から除去することを特徴とするポリウレタンの除去方法。
【請求項2】
前記溶媒がベンジルアルコールである請求項1に記載のポリウレタンの除去方法。
【請求項3】
前記アルカリ金属の炭酸塩又はリン酸塩がリン酸三カリウムである請求項1又は2に記載のポリウレタンの除去方法。
【請求項4】
大気圧下で、溶媒の凝固点以上、且つ溶媒の沸点(複数の溶媒を使用する場合はそれらのうち最低の沸点)以下の温度で液を作用させる請求項1乃至3何れか一項に記載のポリウレタンの除去方法。
【請求項5】
溶媒が、カール・フィッシャー法で測定した水分含有率が2.0質量%以下である請求項1乃至4何れか一項に記載のポリウレタンの除去方法。
【請求項6】
アルカリ金属の炭酸塩又はリン酸塩を溶媒に対して過飽和の状態になるような量を添加した請求項1乃至5何れか一項に記載のポリウレタンの除去方法。

【公開番号】特開2011−231279(P2011−231279A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105105(P2010−105105)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】