説明

ポリエステルポリオール及び硬質ポリウレタンフォームの製造方法

【課題】冬場のような低温期でも凍結することのない低粘度且つ低水酸基価のポリエステルポリオールと、難燃性に優れた硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供する。
【解決手段】イソフタル酸及び/又はテレフタル酸を含有するカルボン酸成分と、数平均分子量が200〜1000のポリエチレングリコール及び数平均分子量が200〜1000のポリプロピレングリコールを含有するアルコール成分とをエステル化反応して得られるポリエステルポリオールであって、水酸基価が50〜150mgKOH/gであり、25℃における粘度が2000mPa・s以下であるポリエステルポリオール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエステルポリオール及び硬質ポリウレタンフォームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、硬質ポリウレタンフォームは、ポリエーテルポリオール及び/又はポリエステルポリオール等のポリオール、発泡剤、触媒、界面活性剤、さらに必要に応じて難燃剤等を混合した混合液(プレミックス液)とポリイソシアネート液とを用意し、それらを混合して短時間で発泡、硬化させる方法で製造される。硬質ポリウレタンフォームは、優れた断熱特性を有することから、冷蔵室、冷蔵庫、冷凍室、冷凍庫、一般建造物の断熱材等に、吹き付け、注入、ボード、パネルといった形式で広く用いられている。
【0003】
硬質ポリウレタンフォーム製造用の発泡剤としては、一般的に低沸点無極性有機溶媒が用いられ、具体的には、CFC系発泡剤、HCFC系発泡剤、HFC系発泡剤のようないわゆるフロン、代替フロンの他、ペンタン、シクロペンタン等のHC系発泡剤が用いられている。しかしながら、オゾン層破壊が問題となって以来、それまで汎用的に用いられてきたCFC系発泡剤からオゾン破壊係数の小さいHCFC系発泡剤、さらにはオゾン破壊係数が0であるHFC系発泡剤、特にHFC−245fa、HFC−365mfcが用いられている。一方、近年では地球温暖化に関する問題もあり、水、炭酸ガス、HFO系発泡剤のような、地球温暖化係数の小さい発泡剤への切り替えが求められる。
【0004】
また、水発泡の技術を普及させるにあたっては次のような大きな問題点がある。即ち、従来のHFC系発泡剤を用いた発泡処方と比較し、発泡剤の減粘効果が得られないため、プレミックス液の粘度が高くなること、また、水とポリイソシアネート成分との反応によって生成するウレア基の増加等の影響により、得られるウレタンフォームの表面や底部の脆性が悪化して被着部材との接着強度の低下を生じやすいこと、及び難燃性が悪化すること等の問題点が挙げられる。
【0005】
硬質ポリウレタンフォームの難燃性を向上させるために、イソシアネートインデックス〔(全イソシアネート基のモル数)/(全活性水素基のモル数)×100〕を高めることが有効であるが、水を発泡剤とする場合、プレミックス液/ポリイソシアネート液のいわゆる液比の問題からポリイソシアネートを増量することは難しく、この問題を解決するには水酸基価の低いポリエステルポリオールを用い、活性水素基を少なくする方法が挙げられる。
【0006】
プレミックス液の粘度を低く抑えつつ、硬質ポリウレタンフォームの難燃性を向上させるために、カルボン酸成分としてテレフタル酸とイソフタル酸、アルコール成分としてポリエチレングリコールを用いたポリエステルポリオールを用いることが提案されている。(特許文献1)
【0007】
しかしながら、アルコール成分にポリエチレングリコールを用いて低水酸基価のポリエステルポリオールを合成した場合、得られるポリエステルポリオールの融点が高くなり、冬場に凍結するといった問題が生じる。ここで、「凍結」とは流動性をなくす状態変化をいう。そして、タンク等で保管しているポリエステルポリオールが凍結した場合は、タンクや配管等の加温、保温が必要となり、効率的ではないし、再融解によってポリエステルポリオールの成分の偏りが生じてしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−16854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、冬場のような低温期でも凍結することのない低粘度、且つ、低水酸基価のポリエステルポリオールを提供することにある。また、本発明の他の目的は、難燃性に優れた硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意検討した結果、原料のポリオールとして、特定の構造的特徴を備えたポリエステルポリオールを用いることにより、上記の目的を容易に達成し得るとの知見を得て、本発明の完成に至った。
【0011】
即ち、本発明の第1の要旨は、イソフタル酸及び/又はテレフタル酸を含有するカルボン酸成分と、数平均分子量が200〜1000のポリエチレングリコール及び数平均分子量が200〜1000のポリプロピレングリコールを含有するアルコール成分とをエステル化反応して得られるポリエステルポリオールであって、水酸基価が50〜150mgKOH/gであり、25℃における粘度が2000mPa・s以下であることを特徴とするポリエステルポリオールに存する。
【0012】
そして、本発明の第2の要旨は、少なくとも、ポリイソシアネート、ポリオール、発泡剤、触媒、界面活性剤を原料とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法において、ポリオールとして上記のポリエステルポリオールを全ポリオールに対して10〜90重量%用いることを特徴とする硬質ポリウレタンフォームに存する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、冬場のような低温期でも凍結することのない低粘度、かつ、低水酸基価のポリエステルポリオール、及び当該ポリエステルポリオールを用いた難燃性に優れた硬質ポリウレタンフォームを提供することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0015】
(ポリエステルポリオール)
本発明のポリエステルポリオールは、カルボン酸成分とアルコール成分とをエステル化反応することにより得られる。カルボン酸成分としては、イソフタル酸及び/又はテレフタル酸を用いる。イソフタル酸はテレフタル酸に比べエステル化が速いという特徴があるが、難燃性の観点からはテレフタル酸の方がイソフタル酸よりも優れる。
【0016】
また、ポリエステルポリオールの低粘度化や、得られる硬質ポリウレタンフォームの脆性及び接着性を改善させるために、さらにアジピン酸及び/又はコハク酸を併用することが好ましい。その使用量は、全カルボン酸成分の通常5〜50重量%、好ましくは、10〜40重量%、更に好ましくは15〜30重量%である。
【0017】
上記以外に併用できるカルボン酸としては、1価又は多価のカルボン酸等が挙げられる。1価カルボン酸としては、酢酸、オクチル酸のような脂肪族1価カルボン酸;安息香酸、メチル安息香酸のような芳香族1価カルボン酸が挙げられるほか、植物油脂や植物油脂肪酸を用いることも出来る。
【0018】
多価カルボン酸としては、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸のような脂肪族多価カルボン酸;オルトフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸のような芳香族多価カルボン酸が挙げられる。これらの芳香族又は脂肪族カルボン酸は単独でも2種類以上を併用することも出来る。
【0019】
アルコール成分としては、数平均分子量が200〜1000のポリエチレングリコール及び数平均分子量が200〜1000のポリプロピレングリコールを用いる。
【0020】
数平均分子量が200〜1000のポリエチレングリコールとしては、市販のポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600、ポリエチレングリコール1000等が挙げられる。これらのうち、数平均分子量が300〜800のポリエチレングリコールを用いることが好ましく、数平均分子量400〜600のポリエチレングリコールを用いることが更に好ましい。
【0021】
なお、ポリエチレングリコール200とは、数平均分子量が200であるポリエチレングリコールのことをいい、ポリエチレングリコール400とは、数平均分子量が400のポリエチレングリコールのことをいう。通常、市販されているポリエチレングリコールは分子量の異なるポリエチレングリコールの混合物であるが、数平均分子量の違いによって分類されている。
【0022】
数平均分子量が200〜1000のポリエチレングリコールの使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総仕込重量に対し、通常30〜80重量%、好ましくは35〜75重量%、更に好ましくは40〜70重量%である。30重量%未満では本発明のポリエステルポリオールの粘度を低下させる効果が小さく、一方、80重量%を超えるとポリエステルポリオールが冬場のような低温期には凍結してしまうおそれがある。
【0023】
数平均分子量が200〜1000のポリプロピレングリコールとしては、市販のポリプロピレングリコール200、ポリプロピレングリコール300、ポリプロピレングリコール400、ポリプロピレングリコール600、ポリプロピレングリコール1000等が挙げられる。これらのうち、数平均分子量が300〜800のポリプロピレングリコールを用いることが好ましく、数平均分子量400〜600のポリプロピレングリコールを用いることが更に好ましい。
【0024】
数平均分子量が200〜1000のポリプロピレングリコールの使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総仕込重量に対し、通常10〜60重量%、好ましくは15〜55重量%、更に好ましくは20〜50重量%である。10重量%未満ではポリエステルポリオールが冬場のような低温期に凍結する懸念があり、60重量%を超えるとエステル化反応速度が低下する。
【0025】
上記以外に併用できるアルコール成分としては、1価又は多価のアルコールが挙げられる。1価アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、オクタノール、ラウリルアルコールのような脂肪族1価アルコール;ベンジルアルコール、フェノールのような芳香族1価アルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、フェノキシエタノールのようにエーテル結合を含んだ1価アルコールが挙げられる。
【0026】
多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオールのような脂肪族多価アルコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールのようなオキシアルキレングリコール;ポリエチレングリコール(数平均分子量が200〜1000のポリエチレングリコールを除く)、ポリプロピレングリコール(数平均分子量が200〜1000のポリプロピレングリコールを除く)、ポリテトラメチレンエーテルグリコールのようなポリオキシアルキレングリコール等が挙げられる。その他、グリセリン、トリメチロールプロパンのような3価以上のアルコールを用いてもよい。これらの1価アルコール及び多価アルコールはそれぞれ2種類以上を併用しても構わない。
【0027】
本発明のポリエステルポリオールの水酸基価は、40〜150mgKOH/g、好ましくは45〜145mgKOH/g、更に好ましくは50〜140mgKOH/gである。水酸基価が40mgKOH/g未満の場合、ポリエステルポリオールの粘度が上昇して取り扱いが困難になり、一方水酸基価が150mgKOH/gを超えると、ポリエステルポリオールを用いて硬質ポリウレタンフォームの製造する際、プレミックス液とポリイソシアネートの比である、いわゆる液比の問題からポリイソシアネートを増量することが難しくなる。
【0028】
本発明のポリエステルオールの25℃での粘度は、2000mPa・s以下、好ましくは1800mPa・s以下、更に好ましくは1600mPa・s以下である。粘度が2000mPa・sを超える場合は、ポリエステルポリオールを用いて硬質ポリウレタンフォームの製造する際、プレミックス液の粘度が上昇して取り扱いが困難になる。一方、下限は、特に制限されないが、水酸基価の好ましい範囲を考慮すれば、100mPa・s程度である。
【0029】
本発明のポリエステルポリオールの製造においては、通常、触媒としてルイス酸又ブレンステッド酸のようなエステル化触媒を用いる。ルイス酸としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート等のオルトチタン酸エステル;ジエチル錫オキシド、ジブチル錫オキシド等の錫系化合物;酸化亜鉛等の金属化合物等が挙げられる。ブレンステッド酸としては、硫酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等が挙げられる。これらの中では、残存触媒によるウレタン化反応への悪影響がない観点から、オルトチタン酸エステルが好ましい。
【0030】
エステル化触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総仕込重量に対し、通常0.1重量%以下、好ましくは0.07重量%以下、更に好ましくは0.05重量%以下である。硬質ポリウレタンフォームの用途によっては、エステル化触媒を用いずに反応しても構わないし、また、反応後に失活処理を施したり、精製等で除去したりしてもよい。
【0031】
本発明のポリエステルポリオールの製造において、エステル化反応の終点は、通常、用いたカルボン酸の未反応カルボキシル基の量で決定する。一方、プレミックス液中における酸分の存在は、アミン系触媒等との作用でウレタン化の反応性を低下させたり、プレミックス液の保存安定性にも影響を与える場合がある。従って、未反応のカルボン酸の量、すなわち、酸価は出来るだけ低い方が好ましい。本発明のポリエステルポリオールの酸価は、通常3mgKOH/g以下、好ましくは2mgKOH/g以下、更に好ましくは1mgKOH/g以下である。一方、下限は特に制限されないが、反応条件や反応時間を考慮すれば、0.1mgKOH/g程度である。
【0032】
本発明のポリエステルポリオールの製造方法において、エステル化反応の反応温度、反応圧力等の反応条件は、特に制限されることはなく、公知の方法を用いることが出来る。
【0033】
(硬質ポリウレタンフォームの製造方法)
本発明に係る硬質ポリウレタンフォームの製造方法は、少なくとも、ポリイソシアネート、ポリオール、発泡剤、触媒及び界面活性剤を原料とし、ポリオールとして本発明のポリエステルポリオールを全ポリオールに対して10〜90重量%用いることを特徴とする。本発明のポリエステルポリオールの使用量が10重量%未満の場合は、得られる硬質ポリウレタンフォームの難燃性が低下し、一方、90重量%を超える場合は、得られる硬質ポリウレタンフォームの機械強度が低下する場合がある。本発明のポリエステルポリオールの使用量は、好ましくは15〜80重量%、更に好ましくは20〜75重量%である。
【0034】
本発明においては、他のポリオールとして、水酸基価が30〜800mgKOH/g、官能基数が1.1〜8の公知のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリマーポリオール等が挙げられる。これらは単独で用いても2種類以上を併用しても構わない。
【0035】
上記の他のポリエステルポリオールとしては、安息香酸、オルトフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族又は脂肪族カルボン酸の1種類以上と、オクタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の1〜4価のアルコールの1種類以上とのエステル化反応により得られるポリエステルポリオールや、ブチロラクトン、カプロラクトン等の開環重合で得られるポリエステルポリオール等が挙げられる。これらのポリエステルポリオールの水酸基価は、通常50〜500mgKOH/g、好ましくは55〜450mgKOH/g、更に好ましくは60〜400mgKOH/g、官能基数は、通常1.1〜3.0、好ましくは1.2〜2.8、更に好ましくは1.5〜2.5である。
【0036】
上記の他のポリエーテルポリオールとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のアルキレンオキシドの1種又は2種以上を重合して得られる重合物;エチレングリコール、プロパンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、エリスリトール、ソルビトール、ショ糖等のアルコール類と、上記アルキレンオキシドとの付加物;エチレンジアミン、トルエンジアミン等のアミン類と上記アルキレンオキシドとの付加物;マンニッヒ変性ポリオール、ポリマーポリオール等が挙げられる。これらのポリエーテルポリオールの水酸基価は、通常30〜800mgKOH/g、好ましくは35〜750mgKOH/g、更に好ましくは40〜700mgKOH/g、官能基数は、通常2.0〜8.0、好ましくは2.0〜7.5、更に好ましくは2.0〜7.0である。これらのポリエーテルポリオールは単独で用いても2種類以上を併用しても構わない。
【0037】
本発明においては、上記の他のポリオール以外に、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、グリセリン等のアルコール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン等もポリオールとして併用することが出来る。
【0038】
発泡剤としては、オゾン破壊係数が0であり、地球温暖化係数が50以下の発泡剤が好ましい。具体例としては、例えば、水、HFO−1234ze、HFO−1234yf、等のHFO系発泡剤、ペンタン、シクロペンタン等のHC系発泡剤等が挙げられる。特に水はポリイソシアネートとの反応で炭酸ガスを発生させることで発泡剤として作用する。従って、環境への配慮から発泡剤としては水のみを用いることが好ましい。
【0039】
発泡剤の配合量は、目的とする硬質ポリウレタンフォームの密度により適宜選択されるが、水のみを用いる場合、ポリオールに対し、通常1〜25重量%、好ましくは2〜23重量%、更に好ましくは3〜20重量%である。1重量%未満の場合は、得られる硬質ポリウレタンフォームの密度が高くなりすぎて実用的でなく、一方、25重量%を超える場合は、寸法安定性等の物性が悪化する。
【0040】
触媒としては、通常の硬質ポリウレタンフォームに用いられる公知の触媒が用いられる。例えば、トリエチレンジアミン、N,N−テトラメチルヘキサンジアミン等のアミン系触媒の他に、四級アンモニウム塩系、オクチル酸カリウム等のカリウム系;ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸錫などの錫系;オクチル酸鉛などの鉛系等の金属系触媒等が挙げられる。触媒の配合量は、目的とする硬質ポリウレタンフォームの反応性や物性により適宜選択されるが、泡化触媒、樹脂化触媒、バランス型触媒、三量化触媒等を組み合わせるのが一般的である。
【0041】
界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の何れであってもよいが、ノニオン系界面活性剤が好ましく、特にシリコーン系界面活性剤が好ましい。これらの界面活性剤の使用量は、ポリオールに対して0.5〜10重量%である。0.5重量%未満だと、界面活性剤を用いる効果が得られず、一方、10重量%を超えるとコストに見合った物性が得られないことがあり、好ましくない。界面活性剤は単独で用いても2種以上を併用しても構わない。
【0042】
本発明においては、必要に応じてその他の助剤を用いることが出来る。その他の助剤としては、用途に応じて様々な化合物を、添加剤、助剤として用いることが出来る。例えば、代表的な添加剤として難燃剤や減粘剤等が挙げられる。例えば、難燃剤としては、通常、クロロアルキルホスフェート類、例えば、トリス(ベータクロロエチル)ホスフェート、トリス(ベータクロロプロピル)ホスフェート等が挙げられる。減粘剤としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、テトラグライム等が挙げられる。上記以外の添加剤や助剤については、特に限定されるものではない。
【0043】
ポリイソシアネートとしては、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物であれば特に限定されるものではない。例えば、脂肪族系、脂環族系、芳香族系ポリイソシアネート又はこれらの変性物等が挙げられる。具体的には、脂肪族系及び脂環族系ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。芳香族系ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート等が挙げられ、更に、これらのカルボジイミド変性物やプレポリマー等の変性物も用いることが出来る。
【0044】
これらのポリイソシアネートのうち、好ましいポリイソシアネートは、芳香族ポリイソシアネート又はその変性物であり、特に好ましくは、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート、トリレンジイソシアネート及びこれらの変性物である。ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネートとしては、イソシアネート基含有率が通常25〜35重量%、粘度が通常500mPa・s(25℃)以下のものが好適に用いられる。また、これらの変性物のうち、カルボジイミド変性物は、公知のリン系触媒などを用いてカルボジイミド結合を導入したものである。プレポリマーは、上記のポリイソシアネートとポリオールとを反応させ、末端にイソシアネート基を残したものである。その際、用いるポリオール成分としては、硬質ポリウレタンを製造する際に用いるポリオール成分を用いることが出来る。これらのポリイソシアネートは、単独で用いても2種以上を併用しても構わない。
【0045】
本発明においては、用途に応じて、添加剤や助剤をポリイソシアネートに混合してもよい。例えば、前述のポリオール、発泡剤、触媒及び界面活性剤との混合性を向上させる目的で、硬質ポリウレタンフォーム用組成物でも用いられる界面活性剤を相溶化剤として併用する場合がある。この場合は、ノニオン系界面活性剤が好ましく、特にシリコーン系界面活性剤が好ましい。また、難燃性の向上や粘度の調整を目的として、難燃剤を併用する場合がある。通常、クロロアルキルホスフェート類、例えば、トリス(ベータクロロエチル)ホスフェートやトリス(ベータクロロプロピル)ホスフェート等が用いられる。上記以外の添加剤や助剤については、特に限定されるものではなく、通常の樹脂において物性向上や操作性向上などの目的で用いられ、著しい悪影響を及ぼすものでなければ何を用いても構わない。
【0046】
本発明において、硬質ポリウレタンフォームのイソシアネートインデックスは、通常50〜400、好ましくは60〜390、更に好ましくは70〜380である。イソシアネートインデックスが50未満の場合は、得られる硬質ポリウレタンフォームが十分な強度を有しないことがあり、一方、200を超える場合は、得られる硬質ポリウレタンフォームの脆性が高くなり、接着強度が低下する傾向にある。
【0047】
本発明において、発泡硬化は次のように行うことが出来る。すなわち、実用的には、ポリイソシアネートをA液、ポリオールをB液(プレミックス液)として、発泡剤、触媒、界面活性剤及び必要に応じてその他助剤等を予め、B液に適宜混合させ、後述する装置を用いて2液を混合し、発泡、硬化させる。なお、発泡剤、触媒、界面活性剤は、B液に混合するのが好ましいが、場合によってはA液に混合させたり、それぞれの成分をウレタン化反応の直前まで混合せずに3種類以上の原料液として取り扱う場合もある。
【0048】
上記の装置としては、A液とB液を均一に混合可能であれば如何なる装置でも用いることが出来る。例えば、小型ミキサーの他、一般のウレタンフォームを製造する際に用いる注入発泡用の低圧または高圧発泡機、スラブ発泡用の低圧または高圧発泡機、連続ライン用の低圧または高圧発泡機、吹き付け工事用のスプレー発泡機等を用いることが出来る。なお、硬質ポリウレタンフォームを製造するに際し、A液およびB液のそれぞれの液温は、通常20〜60℃に調節される。
【0049】
本発明において、得られる硬質ポリウレタンフォームの密度は、フリーフォームのコア密度で表し、通常10〜50kg/m、好ましくは15〜45kg/m、更に好ましくは20〜40kg/mである。密度が10kg/m未満の場合は、難燃性や機械強度が不十分であり、50kg/mを超える場合はコスト高となる。
【0050】
本発明の製造方法で得られる硬質ポリウレタンフォームには、必要に応じ、その片面もしくは両面に適当な面材を設けることが出来る。面材としては、例えば、紙、木材、石膏ボード、樹脂、アルミニウム箔、鋼板等が用いられる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例により本発明の具体的態様をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0052】
(実施例1〜4及び比較例1〜3)
<ポリエステルポリオールの合成>
表1に示すカルボン酸成分とアルコール成分とを同表に示す割合でエステル化反応させてポリエステルポリオールを合成し、以下の方法により、酸価、水酸基価、粘度(25℃)及び水分を測定すると共に低温保存安定性の評価を行った。結果を表1に示した。なお、比較例2については、エステル化反応が完結しなかったため、途中で断念した。
【0053】
<分析方法>
(1)酸価:
JIS K15571970に準拠して測定した。
(2)水酸基価:
JIS K15571970に準拠して測定した。
(3)粘度:
JIS K15571970に準拠して回転粘度計(B型粘度計)を用い、25℃で測定した。
(4)水分:
JIS K15571970に準拠して測定した。
【0054】
<低温保存安定性の評価>
ポリエステルポリオールA−1〜A−6を密閉容器に入れて−10℃の恒温槽に1週間保管した。1週間保管後の該容器中のポリエステルポリオールA−1〜A−6の状態を目視で確認し、凍結していない場合は「○」、凍結している場合は「×」の2つの基準で評価した。
【0055】
【表1】

【0056】
<表1中の原料の略称>
IPA:イソフタル酸
TPA:テレフタル酸
ADA:アジピン酸
SCA:コハク酸
PEG400:ポリエチレングリコール400
PEG600:ポリエチレングリコール600
PPG400:ポリプロピレングリコール400
【0057】
(実施例5〜8及び比較例4、5)
<硬質ポリウレタンフォームの作成>
表2に示す原料を用い、表3に示す配合で混合してプレミックス液を調製した。次いで、得られたプレミックス液と、ポリイソシアネート液を所定量ポリカップに採り、電動ミキサーで高速混合した後に上面と下面に鋼板面材を準備した金型に流し込んで型締めし、硬質ポリウレタンフォームの鋼板面材サンドイッチパネルを作成した。その際の条件を表4に示す。尚、ポリイソシアネート液は、ポリメリックMDI(日本ポリウレタン工業株式会社製「ミリオネートMR−200」)を用い、イソシアネートインデックスは300とした。そして、上記のサンドイッチパネルについて、以下の方法により、コーンカロリー試験と接着強度測定を行った。結果を表3に示した。
【0058】
<コーンカロリー試験>
硬質ポリウレタンフォームの鋼板面材サンドイッチパネルの中央部を99×99mmに切断して試験片を作成し、コーンカロリー試験にて難燃性を評価した。コーンカロリー試験はISO5660−1(2002)に準拠し、試験時間は10分(準不燃)で行った。判定の基準は以下のとおりである。
【0059】
<コーンカロリー試験(準不燃)判定基準>
(1)加熱開始後10分間の総発熱量が8MJ/m以下であること。
(2)加熱開始後10分間、防火上有害な裏面まで貫通する亀裂及び穴がないこと。
(3)加熱開始後10分間、最大発熱速度が10秒以上継続して200kW/mを超えないこと。
【0060】
<接着強度測定>
上面に5×5cmの鋼板面材を用いたパネルを別途作成し、引張試験機を用いて鋼板面材と硬質ポリウレタンフォームとの接着強度を測定した。判定の基準は以下のとおりである。
【0061】
<接着強度判定基準>
◎:200kPa以上
○:100kPa以上、200kPa未満
×:100kPa未満
【0062】
【表2】

【0063】
【表3】

【0064】
【表4】

【0065】
以上の結果より、主に次のことが明らかである。
【0066】
(1)実施例1〜4と比較例1及び3との比較結果:
実施例1〜4のポリエステルポリオール(A−1〜A−4)は低温保存安定性が良好であるのに対し、アルコール成分にポリエチレングリコールだけを用いた比較例1のポリエステルポリオール(A−5)は凍結して低温保存安定性が不良となった。なお、カルボン酸成分にアジピン酸だけを用いた比較例3のポリエステルポリオール(A−6)は低温保存安定性が良好であるが、これを原料として得られた硬質ポリウレタンフォームは後述の比較例5で評価されている通りコーンカロリー試験が不合格となる。
【0067】
(2)実施例5〜8と比較例4及び5との比較結果:
実施例1〜3のポリエステルポリオール(A−1〜A−3)を原料として得られた実施例5〜8の硬質ポリウレタンフォームは、コーンカロリー試験に合格し、接着性も良好であるのに対し、アルコール成分にテレフタル酸系のポリエステルポリオール(川崎工業株式会社製「マキシモールRFK−505」)のみを用いた比較例4の硬質ポリウレタンフォームは、接着性が不良となる。比較例3のポリエステルポリオール(A−6)原料として得られた比較例5の硬質ポリウレタンフォームはコーンカロリー試験が不合格となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソフタル酸及び/又はテレフタル酸を含有するカルボン酸成分と、数平均分子量が200〜1000のポリエチレングリコール及び数平均分子量が200〜1000のポリプロピレングリコールを含有するアルコール成分とをエステル化反応して得られるポリエステルポリオールであって、水酸基価が50〜150mgKOH/gであり、25℃における粘度が2000mPa・s以下であることを特徴とするポリエステルポリオール。
【請求項2】
アルコール成分とカルボン酸成分の総仕込重量に対し、数平均分子量が200〜1000のポリエチレングリコールの使用量が30〜80重量%、数平均分子量が200〜1000のポリプロピレングリコールの使用量が10〜60重量%である請求項1に記載のポリエステルポリオール。
【請求項3】
前記カルボン酸成分として、さらにアジピン酸及び/又はコハク酸を全カルボン酸成分の5〜50重量%用いる請求項1又は2に記載にポリエステルポリオール。
【請求項4】
少なくとも、ポリイソシアネート、ポリオール、発泡剤、触媒及び界面活性剤を原料とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法において、ポリオールとして請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステルポリオールを全ポリオールに対し10〜90重量%用いることを特徴とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項5】
前記発泡剤として、オゾン破壊係数が0、地球温暖化係数が50以下の発泡剤を用いる請求項4に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項6】
前記発泡剤として水のみを用い、その使用量がポリオール100重量部に対して1〜25重量部である請求項4に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。

【公開番号】特開2013−23558(P2013−23558A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158812(P2011−158812)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000199795)川崎化成工業株式会社 (133)
【Fターム(参考)】