説明

ポリエステル及びその製造方法

【課題】アンチモンおよびゲルマニウム以外の金属成分を触媒の主たる金属成分とする重合触媒を用いて製造されたポリエステルであって、かつ成形時のフィルター詰まり等が改善されたポリエステルおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】アルミニウムおよびその化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種とリン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有するポリエステル重合触媒を用いて製造されたポリエステルであって、ポリエステル中に含まれるリン原子の量(ppm) のアルミニウム原子の量(ppm) に対する比が0.5〜20の範囲にあることを特徴とするポリエステル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエステルおよびその製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、成形時のフィルター詰まり等が改善されたポリエステルおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート(以下、PET と略す)は、機械的特性および化学的特性に優れており、多用途への応用、例えば、衣料用や産業資材用の繊維、包装用や磁気テープ用などの各種フィルムやシート、ボトルやエンジニアリングプラスチックなどの成形物への応用がなされている。
【0003】
PET は、工業的にはテレフタル酸もしくはテレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとのエステル化もしくはエステル交換によってビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを製造し、これを高温、真空下で触媒を用いて重縮合することで得られる。重縮合時に用いられる触媒としては、三酸化アンチモンが広く用いられている。三酸化アンチモンは、安価で、かつ優れた触媒活性をもつ触媒であるが、重縮合時に金属アンチモンが析出するため、PET に黒ずみや異物が発生するといった問題点を有している。このような経緯で、アンチモンを全く含まないか或いはアンチモンを触媒主成分として含まないポリエステルが望まれている。
【0004】
なおポリエステル中の上記の異物は例えば以下のような問題を起こす。
(1)フィルム用のポリエステルにおいては、金属アンチモンの析出は、ポリエステル中の異物となり、溶融押し出し時の口金汚れの原因になるだけでなく、フィルムの表面欠点の原因にもなる。また、中空の成形品等の原料とした場合には、透明性の優れた中空成形品を得ることが困難である。
(2)繊維用のポリエステル中の異物は、繊維中に強度低下をもたらす異物となり、製糸時の口金汚れやフィルターの濾圧上昇の原因となる。ポリエステル繊維の製造においては、主に操業性の観点から、異物の発生のないポリエステル重合触媒が求められる。
【0005】
重縮合触媒として、三酸化アンチモンを用いて、かつ PETの黒ずみや異物の発生を抑制する試みが行われている。例えば、特許文献1においては、重縮合触媒として三酸化アンチモンとビスマスおよびセレンの化合物を用いる ことで、PET 中の黒色異物の生成を抑制している。また、特許文献2においては、重縮合触媒としてナトリウムおよび鉄の酸化物を含有する三酸化アンチモンを用いると、金属アンチモンの析出が抑制されることを述べている。ところが、これらの重縮合触媒では、結局アンチモンの含有量を低減するという目的は達成できない。
【0006】
アンチモン化合物以外の重縮合触媒としては、チタン化合物やスズ化合物がすでに提案されているが、これらを用いて製造されたポリエステルは溶融成形時に熱劣化を受けやすく、またポリエステルが著しく着色するという問題点を有する。
【0007】
このような、チタン化合物を重縮合触媒として用いたときの問題点を克服する試みとして、テトラアルコキシチタネートをコバルト塩およびカルシウム塩と同時に用いる方法が提案されている(例えば特許文献3)。また、重縮合触媒としてテトラアルコキシチタネートをコバルト化合物と同時に用い、かつ蛍光増白剤を用いる方法が提案されている(特許文献4)。ところが、これらの技術では、テトラアルコキシチタネートを重縮合触媒として用いたときのPETの着色は低減されるものの、PETの熱分解を効果的に抑制することは達成されていない。
【0008】
アルミニウム化合物は一般に触媒活性に劣ることが知られている。アルミニウム化合物の中でも、アルミニウムのキレート化合物は他のアルミニウム化合物に比べて重縮合触媒として高い触媒活性を有することが報告されているが、上述のアンチモン化合物やチタン化合物と比べると十分な触媒活性を有しているとは言えず、しかもアルミニウム化合物を触媒として用いて長時間を要して重合したポリエステルは熱安定性に劣るという問題点があった。また、アルミニウム化合物を触媒として用いて重合したポリエステルは、ポリエステルに不溶性の異物が多く生成し、ポリエステルの成形時に該異物に起因したフィルター詰まりが起こり、かつ繊維に使用したときには紡糸時の糸切れ等が頻繁に起こり、またフィルムに使用したときはフィルム物性などが悪化するという問題を有していた。
【0009】
アンチモン化合物以外で優れた触媒活性を有しかつ上記の問題を有しないポリエステルを与える触媒としては、ゲルマニウム化合物がすでに実用化されているが、この触媒は非常に高価であるという問題点や、重合中に反応系から外へ留出しやすいため反応系の触媒濃度が変化し重合の制御が困難になるという課題を有しており、触媒主成分として使用することには問題がある。
【0010】
【特許文献1】特許第2666502号公報
【特許文献2】特開平9−291141号公報
【特許文献3】特開昭55−116722号公報
【特許文献4】特開平8−73581号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、アンチモンおよびゲルマニウム以外の金属成分を触媒の主たる金属成分とする重合触媒を用いて製造されたポリエステルであって、かつ成形時のフィルター詰まり等が改善されたポリエステルおよびその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題の解決を目指して鋭意検討を重ねた結果、アルミニウム化合物を触媒として用いて重合したときに生成するポリエステルに不溶性の異物は主にアルミニウム化合物に起因することを見いだし、さらに検討を進めた結果、ポリエステル中にアルミニウム化合物とリン化合物を共存し、かつアルミニウム化合物とリン化合物の含有量を特定の比にすることでこれらの異物は効果的に低減し、ポリエステルを成形する時のフィルター詰まり等の問題が改善されることを見いだし本発明に到達した。
【0013】
すなわち、本発明は上記課題の解決法として、以下の手段を採用したものである。
1.アルミニウムおよびその化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種とリン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有するポリエステルであって、主たる酸成分がテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体もしくはナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体であり、主たるグリコール成分がアルキレングリコールであり、ポリエステル中に含まれるリン原子の量(ppm) のアルミニウム原子の量(ppm) に対する比が0.5〜20の範囲にあり、リン原子の含有量が5ppm〜200ppmの範囲にあることを特徴とするポリエステル。
【0014】
2.ポリエステル中に含まれるアルミニウム原子の含有量が1ppm〜100ppmの範囲にあることを特徴とする上記1記載のポリエステル。
【0015】
3.リン化合物が、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物およびホスフィン系化合物からなる群より選ばれる一種または二種以上の化合物であることを特徴とする上記1又は2に記載のポリエステル。
【0016】
4.リン化合物が、ホスホン酸系化合物からなる群より選ばれる一種または二種以上の化合物であることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載のポリエステル。
【0017】
5.アルカリ金属およびそれらの化合物ならびにアルカリ土類金属およびそれらの化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種をさらに含むことを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載のポリエステル。
【0018】
6.アンチモンまたはその化合物を含有し、かつポリエステル中に含まれるアンチモン原子として50ppm以下の量含有することを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載のポリエステル。
【0019】
7.ゲルマニウムまたはその化合物を含有し、かつポリエステル中に含まれるゲルマニウム原子として20ppm以下の量含有することを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載のポリエステル。
【0020】
8.チタンまたはその化合物を含有し、かつポリエステル中に含まれるチタン原子として5ppm以下の量含有することを特徴とする上記1〜7のいずれかに記載のポリエステル。
【0021】
9.コバルトまたはその化合物を含有し、かつポリエステル中に含まれるコバルト原子として10ppm未満の量含有することを特徴とする上記1〜8のいずれかに記載のポリエステル。
【0022】
10.アルミニウムおよびその化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種とリン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有し、かつリン原子の量(ppm) のアルミニウム原子の量(ppm) に対する比が0.5〜20の範囲にあるポリエステル重合触媒を用いることを特徴とする上記1〜9のいずれかに記載のポリエステルの製造方法。
【0023】
11.上記1〜9のいずれかに記載の金属および/または金属化合物を触媒として用いて製造された上記1〜9のいずれかに記載のポリエステル。
【0024】
12.上記1〜9のいずれかに記載の金属および/または金属化合物を触媒として用いることを特徴とする、上記1〜9のいずれかに記載のポリエステルの製造方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、アンチモンおよびゲルマニウム以外の金属成分を触媒の主たる金属成分とする重合触媒を用いて製造されたポリエステルであって、かつ成形時のフィルター詰まり等が改善されたポリエステルおよびその製造方法が提供される。本発明のポリエステルは、衣料用繊維、産業資材用繊維、各種フィルム、シート、ボトルやエンジニアリングプラスチックなどの各種成形物、および塗料や接着剤などへの応用が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明のポリエステルは、アルミニウムおよびその化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種とリン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有するポリエステル重合触媒を用いて製造されたものであり、かつポリエステル中に含まれるリン原子の量(ppm) のアルミニウム原子の量(ppm) に対する比が0.5〜20の範囲にあることが必要である。この比が0.5より小さいと、アルミニウム化合物に起因するポリエステルに不溶性の異物が多く生じ、その結果、紡糸時の糸切れや成形時のフィルター詰まり等が頻繁に起こるという問題が発生する。また、レジンの着色が顕著になり、成形品の外観が損なわれるという問題やレジンの熱安定性が低下するという問題が発生する。比が20を越えた場合も、ポリエステルに不溶性の異物が多く生じ、その結果、紡糸時の糸切れや成形時のフィルター詰まり等が頻繁に起こるという問題が発生する。また、触媒として用いる場合に触媒活性が顕著に低下するという問題が発生する。比の好ましい範囲は1〜15であり、より好ましくは3〜10である。
【0027】
ポリエステル中における、アルミニウムおよびその化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種とリン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の含有量を上記範囲とすることで、ポリエステルに不溶性の異物の発生が効果的に抑制され、紡糸時の糸切れや成形時のフィルター詰まり等の問題が改善される。
【0028】
また、本発明のアルミニウムおよびその化合物は、ポリエステル中にアルミニウム原子として1ppm以上100ppm以下の範囲で含有されていることが好ましい。アルミニウム原子の含有量が100ppmを越えると、アルミニウム化合物に起因するポリエステルに不溶性の異物が多く生成したりポリエステルの熱安定性が低下するため好ましくない。アルミニウム原子の含有量が1ppmより少ないようにすると、触媒として用いる場合に触媒活性が顕著に低下するため好ましくない。より好ましくは、5ppm以上70ppm 以下の範囲であり、さらに好ましくは10ppm 以上30ppm 以下の範囲である。
【0029】
また、本発明のリン化合物は、ポリエステル中にリン原子として5ppm以上200ppm以下の範囲で含有されていることが好ましい。リン原子の含有量が5ppmより少ないと、ポリエステルに不溶性の異物の生成を抑制する効果に乏しく、またポリエステルの熱安定性が低くなるため好ましくない。リン原子の含有量が200ppmを越えると、ポリエステルに不溶性の異物が多く生成するため好ましくない。より好ましくは、10ppm 以上100ppm以下の範囲であり、さらに好ましくは20ppm 以上80ppm 以下の範囲である。
【0030】
本発明のリン化合物のポリマー中における存在形態は特に限定はされないが、ポリエステル重合触媒として、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物のいずれかの形態で用いることが好ましい。ポリエステルの重合時に、これらの構造を有するリン化合物をアルミニウム化合物と共存して用いることで触媒活性の向上効果が見られる。これらの中でも、ホスホン酸系化合物の形態であるようにすると、触媒として用いた場合に触媒活性の向上効果が大きく好ましい。ホスホン酸系化合物の中でも、芳香環構造を有する形態であるようにすると、触媒として用いた場合に触媒活性の向上効果がとくに大きく好ましい。
【0031】
本発明のポリエステルは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、もしくはこれらの化合物を含有していないもの一般的には好ましく使用できる。
【0032】
また一方で、本発明のポリエステルには、アルカリ金属およびそれらの化合物ならびにアルカリ土類金属およびそれらの化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有すると、ポリエステルの熱安定性等の物性が向上するため好ましい。これらのうち、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムおよびそれらの化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有することが、ポリエステル中の異物の低減やポリエステルの着色の低減の観点から好ましい。
【0033】
本発明のポリエステルにアルカリ金属、アルカリ土類金属並びにそれらの化合物を含有する場合、その含有量は、ポリエステルを構成する全ポリカルボン酸ユニットのモル数に対して、1×10−6以上0.1モル%未満であることが好ましく、より好ましくは5×10−6〜0.05モル%であり、さらに好ましくは1×10−5〜0.03モル%であり、特に好ましくは、1×10−5〜0.01モル%である。アルカリ金属、アルカリ土類金属の含有量が少量であるため、熱安定性低下、耐加水分解性の低下、異物の発生、着色等の問題が低減される。アルカリ金属、アルカリ土類金属並びにその化合物の含有量が0.1モル%以上になると熱安定性の低下、異物発生や着色の増加、耐加水分解性の低下等が製品加工上問題となる場合が発生する。含有量が1×10−6モル%未満では、含有してもその効果が明確ではない。
【0034】
本発明のポリエステルは、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、スズ化合物などの重合触媒を用いないことが一般的には好ましい。
【0035】
また一方で、本発明のポリエステルは、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、スズ化合物などの重合触媒を、これらの成分の添加が前述のようなポリエステルの特性、加工性、色調等製品に問題を生じない添加量の範囲内において共存させて用いることは、これらを重合触媒として用いる場合に重合時間の短縮による生産性を向上させる際に有効であり、好ましい。
【0036】
本発明のポリエステルはアンチモン原子の含有量がポリエステルに対して50ppm以下の量になるようにすると、ポリエステルの黒ずみや異物の発生が抑制されるため好ましい。より好ましくは30ppm以下であり、さらに好ましくは10ppm以下である。また一方で、本発明のポリエステルはアンチモン原子を含有していないことが好ましい。
【0037】
また、本発明のポリエステルはゲルマニウム原子の含有量がポリエステルに対して20ppm以下の量になるようにすると、コスト的に不利にならないため好ましい。より好ましくは10ppm以下であり、さらに好ましくは5ppm以下である。また一方で、本発明のポリエステルはゲルマニウム原子を含有していないことが好ましい。
【0038】
また、本発明のポリエステルはチタン原子の含有量がポリエステルに対して5ppm以下の量になるようにすると、ポリエステルの熱安定性や色調に優れるため好ましい。より好ましくは3ppm以下であり、さらに好ましくは1ppm以下である。また一方で、本発明のポリエステルはチタン原子を含有していないことが好ましい。
【0039】
本発明のポリエステルには、さらに、コバルトまたはその化合物を含有することが、ポリエステルの着色を低減する観点から好ましい。ただし、ポリエステル中のコバルトまたはその化合物の含有量としては、コバルト原子としてポリエステルに対して10ppm未満の量で含有する事が好ましい。より好ましくは5ppm未満であり、さらに好ましくは3ppm以下である。
【0040】
コバルト化合物はそれ自体ある程度の触媒活性を有していることは知られているが、十分な触媒効果を発揮する程度に添加すると得られるポリエステル重合体の明るさの低下や熱安定性の低下が起こる。本発明においては、コバルト化合物を上記のような少量で添加による触媒効果が明確でないような添加量にて添加することにより、得られるポリエステルの明るさや熱安定性の低下を起こすことなく着色をさらに効果的に消去できる。なお本発明におけるコバルト化合物は、着色の消去が目的であり、添加時期は重合のどの段階であってもよく、重合反応終了後であってもかまわない。
【0041】
また一方で、本発明のポリエステルはコバルト原子を含有していないことが好ましい。
【0042】
本発明は、上記した金属および化合物を触媒として用いて製造されたポリエステルおよびその製造方法にも関する。金属および化合物の添加量としては、最終的に得られるポリエステル中における金属原子やリン原子の含有量が上記のようになることが必要である。該方法により、ポリエステルに不溶性の異物の発生が効果的に抑制され、紡糸時の糸切れや成形時のフィルター詰まり等の問題が改善される。
【0043】
本発明において重合触媒として使用するアルミニウムまたはその化合物としては特に限定はされないが、金属アルミニウムの他に、例えば、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、蓚酸アルミニウム、アクリル酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、トリクロロ酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、サリチル酸アルミニウムなどのカルボン酸塩、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、炭酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、ホスホン酸アルミニウムなどの無機酸塩、アルミニウムメトキサイド、アルミニウムエトキサイド、アルミニウムn-プロポキサイド、アルミニウムiso-プロポキサイド、アルミニウムn-ブトキサイド、アルミニウムt−ブトキサイドなどアルミニウムアルコキサイド、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテートジiso-プロポキサイドなどのアルミニウムキレート化合物、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物およびこれらの部分加水分解物、酸化アルミニウムなどが挙げられる。これらのうちカルボン酸塩、無機酸塩およびキレート化合物が好ましく、これらの中でもさらに酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウムおよびアルミニウムアセチルアセトネートがとくに好ましい。
【0044】
本発明で用いられるリン化合物としては、特に限定はされないが、リン酸ならびにトリメチルリン酸、トリエチルリン酸、フェニルリン酸、トリフェニルリン酸等のリン酸エステル、亜リン酸ならびにトリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)4,4'- ビフェニレンジホスファイト等の亜リン酸エステルなどが挙げられる。
【0045】
また一方で、本発明で用いられるリン化合物としては、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物などが挙げられる。本発明において重合触媒として使用するリン化合物としては、これらのリン化合物の使用が好ましい。ポリエステルの重合時に、これらのリン化合物を本発明のアルミニウム化合物と共存して用いることで触媒活性の向上効果が見られる。これらの中でも、ホスホン酸系化合物を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0046】
本発明で言うホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物とは、それぞれ下記化1〜化6、
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

で表される構造を有する化合物のことを言う。
【0047】
本発明のホスホン酸系化合物としては、例えば、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジフェニル、ベンジルホスホン酸ジメチル、ベンジルホスホン酸ジエチルなどが挙げられる。本発明のホスフィン酸系化合物としては、例えば、ジフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸メチル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、フェニルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸メチル、フェニルホスフィン酸フェニルなどが挙げられる。本発明のホスフィンオキサイド系化合物としては、例えば、ジフェニルホスフィンオキサイド、メチルジフェニルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0048】
ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物の中では、本発明のリン化合物としては、下記化7〜化12、
【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

で表される化合物を用いることが好ましい。
【0049】
上記したリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0050】
また、本発明の重縮合触媒を構成するリン化合物としては、下記一般式化13〜化15で表される化合物を用いると特に触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0051】
【化13】

【化14】

【化15】

(化13〜化15中、R 、R 、R 、Rはそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R、Rはそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。ただし、炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)。
【0052】
本発明の重縮合触媒を構成するリン化合物としては、上記化13〜化15中、R
、R、Rが芳香環構造を有する基である化合物がとくに好ましい。
【0053】
本発明の重縮合触媒を構成するリン化合物としては、例えば、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジフェニル、ベンジルホスホン酸ジメチル、ベンジルホスホン酸ジエチル、ジフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸メチル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、フェニルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸メチル、フェニルホスフィン酸フェニル、ジフェニルホスフィンオキサイド、メチルジフェニルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。これらのうちで、フェニルホスホン酸ジメチル、ベンジルホスホン酸ジエチルがとくに好ましい。
【0054】
本発明の重縮合触媒を構成するリン化合物としてはフェノール部を同一分子内に有するリン化合物を用いることが好ましい。フェノール部を同一分子内に有するリン化合物としては、フェノール構造を有するリン化合物であれば特に限定はされないが、フェノール部を同一分子内に有する、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物からなる群より選ばれる一種または二種以上の化合物を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらの中でも、一種または二種以上のフェノール部を同一分子内に有するホスホン酸系化合物を用いると触媒活性の向上効果がとくに大きく好ましい。
【0055】
また、本発明の重縮合触媒を構成するフェノール部を同一分子内に有するリン化合物としては、下記一般式化16〜化18で表される化合物を用いると特に触媒活性が向上するため好ましい。
【0056】
【化16】

【化17】

【化18】

(化16〜化18中、Rはフェノール部を含む炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基などの置換基およびフェノール部を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R,R,Rはそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基などの置換基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R,Rはそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基などの置換基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。ただし、炭化水素基は分岐構造やシクロヘキシル等の脂環構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。RとRの末端どうしは結合していてもよい。)。
【0057】
本発明のフェノール部を同一分子内に有するリン化合物としては、例えば、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジメチル、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジエチル、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィン酸メチル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィン酸フェニル、p−ヒドロキシフェニルフェニルホスフィン酸、p−ヒドロキシフェニルフェニルホスフィン酸メチル、p−ヒドロキシフェニルフェニルホスフィン酸フェニル、p−ヒドロキシフェニルホスフィン酸、p−ヒドロキシフェニルホスフィン酸メチル、p−ヒドロキシフェニルホスフィン酸フェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィンオキサイド、トリス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィンオキサイド、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メチルホスフィンオキサイド、および下記化19〜化22で表される化合物などが挙げられる。これらのうちで、下記化21で表される化合物およびp−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジメチルがとくに好ましい。
【0058】
【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

上記の式化21にて示される化合物としては、SANKO-220 (三光株式会社製)があり、使用可能である。
【0059】
これらのフェノール部を同一分子内に有するリン化合物をポリエステルの重合時に添加することによってアルミニウム化合物の触媒活性が向上するとともに、重合したポリエステルの熱安定性も向上する。
【0060】
本発明では、リン化合物としてリンの金属塩化合物を用いることが好ましい。リンの金属塩化合物とは、リン化合物の金属塩であれば特に限定はされないが、ホスホン酸系化合物の金属塩を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。リン化合物の金属塩としては、モノ金属塩、ジ金属塩、トリ金属塩などが含まれる。
【0061】
また、上記したリン化合物の中でも、金属塩の金属部分が、Li、Na、K、Be、Mg、Sr、Ba、Mn、Ni、Cu、Znから選択されたものを用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらのうち、Li、Na、Mgがとくに好ましい。
【0062】
本発明の重合触媒を構成するリンの金属塩化合物としては、下記一般式化23で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0063】
【化23】

(化23中、Rは水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。Rは、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。Rは、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基またはカルボニルを含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。l は1以上の整数、mは0 または1以上の整数を表し、l+mは4以下である。Mは(l+m)価の金属カチオンを表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)。
【0064】
上記のRとしては、例えば、フェニル、1―ナフチル、2―ナフチル、9−アンスリル、4−ビフェニル、2−ビフェニルなどが挙げられる。上記のRとしては例えば、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基、−CHCHOHで表される基などが挙げられる。Rとしては例えば、水酸化物イオン、アルコラートイオン、アセテートイオンやアセチルアセトンイオンなどが挙げられる。
【0065】
上記一般式化23で表される化合物の中でも、下記一般式化24で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。
【0066】
【化24】

(化24中、Rは水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。Rは、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基またはカルボニルを含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。l は1以上の整数、mは0または1以上の整数を表し、l+mは4以下である。Mは(l+m)価の金属カチオンを表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)。
【0067】
上記のRとしては、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、9−アンスリル、4−ビフェニル、2−ビフェニルなどが挙げられる。Rとしては例えば、水酸化物イオン、アルコラートイオン、アセテートイオンやアセチルアセトンイオンなどが挙げられる。
【0068】
上記したリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0069】
上記化24の中でも、Mが、Li,Na、K、Be、Mg、Sr、Ba、Mn、Ni、Cu、Znから選択されたものを用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらのうち、Li、Na、Mgがとくに好ましい。
【0070】
本発明のリンの金属塩化合物としては、リチウム[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、ナトリウム[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、カリウム[(2−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[(2−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、リチウム[ベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[ベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[ベンジルホスホン酸エチル]、ベリリウムビス[ベンジルホスホン酸エチル]、ストロンチウムビス[ベンジルホスホン酸エチル]、マンガンビス[ベンジルホスホン酸エチル]、ベンジルホスホン酸ナトリウム、マグネシウムビス[ベンジルホスホン酸]、ナトリウム[(9−アンスリル)メチルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[(9−アンスリル)メチルホスホン酸エチル]、ナトリウム[4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[4−クロロベンジルホスホン酸フェニル]、マグネシウムビス[4−クロロベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[4−アミノベンジルホスホン酸メチル]、マグネシウムビス[4−アミノベンジルホスホン酸メチル]、フェニルホスホン酸ナトリウム、マグネシウムビス[フェニルホスホン酸エチル]、亜鉛ビス[フェニルホスホン酸エチル]などが挙げられる。これらの中で、リチウム[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、ナトリウム[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、リチウム[ベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[ベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[ベンジルホスホン酸エチル]、ベンジルホスホン酸ナトリウム、マグネシウムビス[ベンジルホスホン酸]がとくに好ましい。
【0071】
本発明の重合触媒を構成する別の好ましいリン化合物であるリンの金属塩化合物は、下記一般式化25で表される化合物から選択される少なくとも一種からなるものである。
【0072】
【化25】

(式25中、R、Rはそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。Rは、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。Rは、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基またはカルボニルを含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。Rとしては例えば、水酸化物イオン、アルコラートイオン、アセテートイオンやアセチルアセトンイオンなどが挙げられる。l は1以上の整数、mは0または1以上の整数を表し、l+mは4以下である。Mは(l+m)価の金属カチオンを表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)。
【0073】
これらの中でも、下記一般式化26で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。
【0074】
【化26】

(化26中、Mn+はn価の金属カチオンを表す。nは1,2,3または4を表す。)。
【0075】
上記化25または化26の中でも、Mが、Li,Na、K、Be、Mg、Sr、Ba、Mn、Ni、Cu、Znから選択されたものを用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらのうち、Li、Na、Mgがとくに好ましい。
【0076】
本発明の特定のリンの金属塩化合物としては、リチウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸]、カリウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸]、ベリリウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸メチル]、ストロンチウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、バリウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸フェニル]、マンガンビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、ニッケルビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、銅ビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、亜鉛ビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]などが挙げられる。これらの中で、リチウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]がとくに好ましい。
【0077】
本発明のリン化合物としては、リン化合物のアルミニウム塩から選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。リン化合物のアルミニウム塩に他のリン化合物やアルミニウム化合物を組み合わせて使用してもよい。
【0078】
リン化合物のアルミニウム塩とは、アルミニウム部を有するリン化合物であれば特に限定はされないが、ホスホン酸系化合物のアルミニウム塩を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。リン化合物のアルミニウム塩としては、モノアルミニウム塩、ジアルミニウム塩、トリアルミニウム塩などが含まれる。
【0079】
上記したリン化合物のアルミニウム塩の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0080】
本発明の重合触媒を構成するリン化合物のアルミニウム塩としては、下記一般式化27で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0081】
【化27】

(化27中、Rは水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。Rは、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。Rは、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基またはカルボニルを含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。l は1以上の整数、mは0 または1以上の整数を表し、l+mは3である。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)。
【0082】
上記のRとしては、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、9−アンスリル、4−ビフェニル、2−ビフェニルなどが挙げられる。上記のRとしては例えば、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基、−CHCHOHで表される基などが挙げられる。上記のRとしては例えば、水酸化物イオン、アルコラートイオン、エチレングリコラートイオン、アセテートイオンやアセチルアセトンイオンなどが挙げられる。
【0083】
本発明のリン化合物のアルミニウム塩としては、(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、(1−ナフチル)メチルホスホン酸のアルミニウム塩、(2−ナフチル)メチルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、ベンジルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、ベンジルホスホン酸のアルミニウム塩、(9−アンスリル)メチルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、2−メチルベンジルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、4−クロロベンジルホスホン酸フェニルのアルミニウム塩、4−アミノベンジルホスホン酸メチルのアルミニウム塩、4−メトキシベンジルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、フェニルホスホン酸エチルのアルミニウム塩などが挙げられる。これらの中で、(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、ベンジルホスホン酸エチルのアルミニウム塩がとくに好ましい。
【0084】
本発明のリン化合物としては、下記一般式化28で表されるリン化合物のアルミニウム塩から選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。リン化合物のアルミニウム塩に他のリン化合物やアルミニウム化合物を組み合わせて使用してもよい。
【0085】
【化28】

(化28中、R、Rはそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。Rは、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。Rは、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基またはカルボニルを含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。l は1以上の整数、mは0 または1以上の整数を表し、l+mは3である。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)。
【0086】
これらの中でも、下記一般式化29で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。
【0087】
【化29】

(化29中、Rは、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。Rは、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基またはカルボニルを含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。l は1以上の整数、mは0または1以上の整数を表し、l+mは3である。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)。
【0088】
上記のRとしては例えば、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基、−CHCHOHで表される基などが挙げられる。上記のRとしては例えば、水酸化物イオン、アルコラートイオン、エチレングリコラートイオン、アセテートイオンやアセチルアセトンイオンなどが挙げられる。
【0089】
本発明のリン化合物のアルミニウム塩としては、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸メチルのアルミニウム塩、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸イソプロピルのアルミニウム塩、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸フェニルのアルミニウム塩、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸のアルミニウム塩などが挙げられる。これらの中で、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸メチルのアルミニウム塩がとくに好ましい。
【0090】
本発明では、リン化合物としてP-OH結合を少なくとも一つ有するリン化合物を用いることが好ましい。P-OH結合を少なくとも一つ有するリン化合物とは、分子内にP-OHを少なくとも一つ有するリン化合物であれば特に限定はされない。これらのリン化合物の中でも、P-OH結合を少なくとも一つ有するホスホン酸系化合物を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0091】
上記したリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0092】
本発明の重合触媒を構成するP-OH結合を少なくとも一つ有するリン化合物としては、下記一般式化30で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0093】
【化30】

(化30中、Rは水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。Rは、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)。
【0094】
上記のRとしては、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、9−アンスリル、4−ビフェニル、2−ビフェニルなどが挙げられる。上記のR2 としては例えば、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基、−CHCHOHで表される基などが挙げられる。
【0095】
上記したリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0096】
本発明のP−OH結合を少なくとも一つ有するリン化合物としては、(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル、(1−ナフチル)メチルホスホン酸、 (2−ナフチル)メチルホスホン酸エチル、ベンジルホスホン酸エチル、ベンジルホスホン酸、(9−アンスリル)メチルホスホン酸エチル、4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル、2−メチルベンジルホスホン酸エチル、4−クロロベンジルホスホン酸フェニル、4−アミノベンジルホスホン酸メチル、4−メトキシベンジルホスホン酸エチルなどが挙げられる。これらの中で、(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル、ベンジルホスホン酸エチルがとくに好ましい。
【0097】
また本発明で用いられる好ましいリン化合物としては、P-OH結合を少なくとも一つ有する特定のリン化合物が挙げられる。P-OH結合を少なくとも一つ有する特定のリン化合物とは、下記一般式化31で表される化合物から選択される少なくとも一種の化合物のことを言う。
【0098】
【化31】

(化31中、R、Rはそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。Rは、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)。
【0099】
これらの中でも、下記一般式化32で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。
【0100】
【化32】

(化32中、Rは、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)。
【0101】
上記のRとしては例えば、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基、−CHCHOHで表される基などが挙げられる。
【0102】
本発明のP−OH結合を少なくとも一つ有する特定のリン化合物としては、3,5 −ジ−tert−ブチル−4 −ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル、3,5 −ジ−tert−ブチル−4 −ヒドロキシベンジルホスホン酸メチル、3,5 −ジ−tert−ブチル−4 −ヒドロキシベンジルホスホン酸イソプロピル、3,5 −ジ−tert−ブチル−4 −ヒドロキシベンジルホスホン酸フェニル、3,5 −ジ−tert−ブチル−4 −ヒドロキシベンジルホスホン酸オクタデシル、3,5 −ジ−tert−ブチル−4 −ヒドロキシベンジルホスホン酸などが挙げられる。これらの中で、3,5 −ジ−tert−ブチル−4 −ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル、3,5 −ジ−tert−ブチル−4 −ヒドロキシベンジルホスホン酸メチルがとくに好ましい。
【0103】
好ましいリン化合物としては、化学式化33であらわされるリン化合物が挙げられる。
【0104】
【化33】

(化33中、Rは炭素数1〜49の炭化水素基、または水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜49の炭化水素基を表し、R,Rはそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。炭化水素基は脂環構造や分岐構造や芳香環構造を含んでいてもよい。)。
【0105】
また、更に好ましくは、化学式化33中のR,R,Rの少なくとも一つが芳香環構造を含む化合物である。
【0106】
本発明に使用するリン化合物の具体例は以下の化学式化34〜化39、
【化34】

【化35】

【化36】

【化37】

【化38】

【化39】

で示される。
【0107】
また、本発明で重縮合触媒として用いられるリン化合物は、分子量が大きいものの方が重合時に留去されにくいため効果が大きく好ましい。
【0108】
本発明で使用する事が望ましい別のリン化合物は、下記一般式化40で表される化合物から選ばれる少なくとも一種のリン化合物である。
【0109】
【化40】

(化40中、R、Rはそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。R、Rはそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)。
【0110】
上記一般式化40の中でも、下記一般式化41で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いると触媒活性の向上効果が高く好ましい。
【0111】
【化41】

(化41中、R、Rはそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)。
【0112】
上記のR、Rとしては例えば、水素、メチル基、ブチル基等の短鎖の脂肪族基、オクタデシル等の長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基等の芳香族基、−CHCHOHで表される基などが挙げられる。
【0113】
本発明の特定のリン化合物としては、3,5 −ジ−tert−ブチル−4 −ヒドロキシベンジルホスホン酸ジイソプロピル、3,5 −ジ−tert−ブチル−4 −ヒドロキシベンジルホスホン酸ジ−n−ブチル、3,5 −ジ−tert−ブチル−4 −ヒドロキシベンジルホスホン酸ジオクタデシル、3,5 −ジ−tert−ブチル−4 −ヒドロキシベンジルホスホン酸ジフェニルなどが挙げられる。これらの中で、3,5 −ジ−tert−ブチル−4 −ヒドロキシベンジルホスホン酸ジオクタデシル、3,5 −ジ−tert−ブチル−4 −ヒドロキシベンジルホスホン酸ジフェニルがとくに好ましい。
【0114】
本発明で使用する事が望ましい別のリン化合物は、化学式化42、化43で表される化合物から選ばれる少なくとも一種のリン化合物である。
【0115】
【化42】

【化43】

上記の化学式化42にて示される化合物としては、Irganox1222(チバ・スペシャルティーケミカルズ社製)が市販されており、また化学式化43にて示される化合物としてはIrganox1425(チバ・スペシャルティーケミカルズ社製)が市販されており、使用可能である。
【0116】
上記したリン化合物の中で、アルミニウムの塩を用いる場合、それらの添加量としては、最終的に得られるポリエステル中におけるアルミニウム原子とリン原子の含有量が上述のようになるようにすることが必要である。該方法により、ポリエステルに不溶性の異物の発生が効果的に抑制され、紡糸時の糸切れや成形時のフィルター詰まり等の問題が改善される。
【0117】
本発明において重合触媒として使用するアルカリ金属およびそれらの化合物ならびにアルカリ土類金属およびそれらの化合物としては、Li,Na,K,Rb,Cs,Be,Mg,Ca,Sr,Baから選択される少なくとも1種の金属ないしその化合物であることが好ましく、このうちアルカリ金属ないしその化合物を使用するとポリエステルに不溶性の異物が低減し、ポリエステルの熱安定性にも優れるためより好ましい。アルカリ金属ないしその化合物を使用する場合、Li,Na,Kないしそれらの化合物の使用が好ましく、このうちLiないしその化合物を使用するとポリエステルに不溶性の異物がより低減するためとくに好ましい。アルカリ金属やアルカリ土類金属の化合物としては、例えば、これら金属のギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、蓚酸などの飽和脂肪族カルボン酸塩、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和脂肪族カルボン酸塩、安息香酸などの芳香族カルボン酸塩、トリクロロ酢酸などのハロゲン含有カルボン酸塩、乳酸、クエン酸、サリチル酸などのヒドロキシカルボン酸塩、炭酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホスホン酸、炭酸水素、リン酸水素、硫化水素、亜硫酸、チオ硫酸、塩酸、臭化水素酸、塩素酸、臭素酸などの無機酸塩、1−プロパンスルホン酸、1−ペンタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などの有機スルホン酸塩、ラウリル硫酸などの有機硫酸塩、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、iso−プロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシなどのアルコキサイド、アセチルアセトネートなどとのキレート化合物、水素化物、酸化物、水酸化物などが挙げられる。
【0118】
これらのアルカリ金属、アルカリ土類金属またはそれらの化合物のうち、水酸化物等のアルカリ性の強いものを用いる場合、これらはエチレングリコール等のジオールもしくはアルコール等の有機溶媒に溶解しにくい傾向があるため、水溶液で重合系に添加しなければならず重合工程上問題となる場合が有る。さらに、水酸化物等のアルカリ性の強いものを用いた場合、重合時にポリエステルが加水分解等の副反応を受け易くなるとともに、重合したポリエステルは着色し易くなる傾向があり、耐加水分解性も低下する傾向がある。従って、本発明のアルカリ金属またはそれらの化合物あるいはアルカリ土類金属またはそれらの化合物として好適なものは、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の飽和脂肪族カルボン酸塩、不飽和脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン塩、ハロゲン含有カルボン酸塩、ヒドロキシカルボン酸塩、硫酸、硝酸、リン酸、ホスホン酸、リン酸水素、硫化水素、亜硫酸、チオ硫酸、塩酸、臭化水素酸、塩素酸、臭素酸から選ばれる無機酸塩、有機スルホン酸塩、有機硫酸塩、キレート化合物、および酸化物である。これらの中でもさらに、取り扱い易さや入手のし易さ等の観点から、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の飽和脂肪族カルボン酸塩、特に酢酸塩の使用が好ましい。
【0119】
本発明において重合触媒として添加可能なアンチモン化合物としては、好適な化合物として三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酢酸アンチモン、アンチモングリコキサイドなどが挙げられ、特に三酸化アンチモンの使用が好ましい。また、ゲルマニウム化合物としては、二酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウムなどが挙げられ、特に二酸化ゲルマニウムが好ましい。
【0120】
また、チタン化合物、スズ化合物などの他の重合触媒としては、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトライソブチルチタネート、テトラ−tert−ブチルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラベンジルチタネートなどが挙げられ、特にテトラブチルチタネートの使用が好ましい。またスズ化合物としては、ジブチルスズオキサイド、メチルフェニルスズオキサイド、テトラエチルスズ、ヘキサエチルジスズオキサイド、トリエチルスズハイドロオキサイド、モノブチルヒドロキシスズオキサイド、トリイソブチルスズアセテート、ジフェニルスズジラウレート、モノブチルスズトリクロライド、ジブチルスズサルファイド、ジブチルヒドロキシスズオキサイド、メチルスタンノン酸、エチルスタンノン酸などが挙げられ、特にモノブチルヒドロキシスズオキサイドの使用が好ましい。
【0121】
本発明において添加可能なコバルト化合物としては特に限定はないが、具体的には例えば、酢酸コバルト、硝酸コバルト、塩化コバルト、コバルトアセチルアセトネート、ナフテン酸コバルトおよびそれらの水和物等が挙げられる。その中でも特に酢酸コバルト四水塩が好ましい。
【0122】
本発明の方法に従ってポリエステルを製造する際にフェノール系化合物を添加すると、ポリエステルの熱安定性が効果的に向上するため好ましい。また、フェノール系化合物を添加することで、触媒活性の向上効果も見られる。
【0123】
本発明のフェノール系化合物としては、フェノール構造を有する化合物であれば特に限定はされないが、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4- エチルフェノール、2,6-ジシクロヘキシル-4-メチルフェノール、2,6-ジイソプロピル-4-エチルフェノール、2,6-ジ-tert-アミル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-tert-オクチル-4-n-プロピルフェノール、2,6-ジシクロヘキシル-4-n-オクチルフェノール、2-イソプロピル-4-メチル-6-tert-ブチルフェノール、2-tert-ブチル-2-エチル-6-tert-オクチルフェノール、2-イソブチル-4-エチル-6-tert-ヘキシルフェノール、2-シクロヘキシル-4-n-ブチル-6-イソプロピルフェノール、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル) エタン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、トリエチレングリコール−ビス[3-(3-tert-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2-チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4,4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N'-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナミド)、1,3,5-トリス(2,6-ジメチル-3-ヒドロキシ-4-tert-ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス[(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、トリス(4-tert-ブチル-2,6-ジメチル-3-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ)ヒドロシンナメート]メタン、ビス[(3,3-ビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)ブチリックアシッド)グリコールエステル、N,N'-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、2,2'-オギザミドビス[エチル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2-tert-ブチル-4-メチル-6-(3-tert-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9-ビス[1,1-ジメチル2-{β-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、2,2-ビス[4-(2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4- ヒドロキシシンナモイルオキシ))エトキシフェニル]プロパン、β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルエステル、テトラキス-[メチル-3-(3',5'-ジ-tert-ブチル-4- ヒドロキシフェニル) プロピオネート] メタン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル) プロピオネート、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル) ブタン、チオジエチレン-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル) プロピオネート] 、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル) プロピオネート] 、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4- ヒドロキシフェニル) プロピオネート、トリエチレングリコール- ビス-[-3-(3'-tert-ブチル-4- ヒドロキシ-5-メチルフェニル)]プロピオネート、1,1,3-トリス[2-メチル-4-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル) プロピオニルオキシ]-5-tert-ブチルフェニル]ブタンなどを挙げることができる。これらは、同時に二種以上を併用することもできる。これらのうち、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス-[メチル-3-(3',5'-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル) プロピオネート] メタン、チオジエチレン-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル) プロピオネート] が好ましい。
【0124】
本発明のフェノール系化合物の使用量としては、重合して得られるポリエステルのジカルボン酸や多価カルボン酸などのカルボン酸成分の全構成ユニットのモル数に対して5X10-5モル%から1モル%の範囲であることが好ましく、更に好ましくは1X10-4モル%から0.5 モル%の範囲であることである。
【0125】
本発明によるポリエステルの製造は、従来公知の方法で行うことができる。例えば、PET を製造する場合は、テレフタル酸とエチレングリコールとのエステル化後、重縮合する方法、もしくは、テレフタル酸ジメチルなどのテレフタル酸のアルキルエステルとエチレングリコールとのエステル交換反応を行った後、重縮合する方法のいずれの方法でも行うことができる。また、重合の装置は、回分式であっても、連続式であってもよい。
【0126】
本発明の触媒は、重縮合反応のみならずエステル化反応およびエステル交換反応にも触媒活性を有する。テレフタル酸ジメチルなどのジカルボン酸のアルキルエステルとエチレングリコールなどのグリコールとのエステル交換反応は、通常亜鉛などのエステル交換触媒の存在下で行われるが、これらの触媒の代わりかもしくはこれらの触媒と共存して本発明の触媒を用いることもできる。また、本発明の触媒は、溶融重合のみならず固相重合や溶液重合においても触媒活性を有しており、いずれの方法によってもポリエステルを製造することが可能である。
【0127】
本発明の重合触媒は、重合反応の任意の段階で反応系に添加することができる。例えば、エステル化反応もしくはエステル交換反応の開始前および反応途中の任意の段階、もしくは重縮合反応の開始直前あるいは反応途中に反応系へ添加することができる。特に、アルミニウムないしその化合物は重縮合反応の開始直前に添加することが好ましい。
【0128】
本発明の重合触媒の添加方法は、粉末状もしくはニート状であってもよいし、エチレングリコールなどの溶媒のスラリー状もしくは溶液であってもよく、特に限定されない。また、本発明の重合触媒の構成成分を予め混合したものを添加してもよいし、これらを別々に添加してもよい。また、本発明の重合触媒の構成成分を同じ添加時期に重合系に添加してもよく、それぞれの成分を別々の添加時期に添加してもよい。
【0129】
本発明に言うポリエステルとは、ジカルボン酸を含む多価カルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体から選ばれる一種または二種以上とグリコールを含む多価アルコールから選ばれる一種または二種以上とから成るもの、またはヒドロキシカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体から成るもの、または環状エステルから成るものをいう。
【0130】
ジカルボン酸としては、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、1, 3−シクロブタンジカルボン酸、1, 3−シクロペンタンジカルボン酸、1, 2−シクロヘキサンジカルボン酸、1, 3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2, 5−ノルボルナンジカルボン酸、ダイマー酸などに例示される飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などに例示される不飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、5−(アルカリ金属)スルホイソフタル酸、ジフェニン酸、1, 3−ナフタレンジカルボン酸、1, 4−ナフタレンジカルボン酸、1, 5−ナフタレンジカルボン酸、2, 6−ナフタレンジカルボン酸、2, 7−ナフタレンジカルボン酸、4、4' −ビフェニルジカルボン酸、4、4' −ビフェニルスルホンジカルボン酸、4、4' −ビフェニルエーテルジカルボン酸、1, 2−ビス(フェノキシ)エタン−p, p' −ジカルボン酸、パモイン酸、アントラセンジカルボン酸などに例示される芳香族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体が挙げられ、これらのジカルボン酸のうちテレフタル酸およびナフタレンジカルボン酸とくに2, 6−ナフタレンジカルボン酸が好ましい。
【0131】
これらジカルボン酸以外の多価カルボン酸として、エタントリカルボン酸、プロパントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、3、4、3' 、4' −ビフェニルテトラカルボン酸、およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0132】
グリコールとしてはエチレングリコール、1、2−プロピレングリコール、1、3−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1、2−ブチレングリコール、1、3−ブチレングリコール、2、3−ブチレングリコール、1, 4−ブチレングリコール、1、5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1, 6−ヘキサンジオール、1, 2−シクロヘキサンジオール、1, 3−シクロヘキサンジオール、1, 4−シクロヘキサンジオール、1, 2−シクロヘキサンジメタノール、1, 3−シクロヘキサンジメタノール、1, 4−シクロヘキサンジメタノール、1, 4−シクロヘキサンジエタノール、1, 10−デカメチレングリコール、1,12−ドデカンジオール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどに例示される脂肪族グリコール、ヒドロキノン、4, 4' −ジヒドロキシビスフェノール、1, 4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1, 4−ビス(β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1、2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA 、ビスフェノールC、2, 5−ナフタレンジオール、これらのグリコールにエチレンオキシドが付加したグリコール、などに例示される芳香族グリコールが挙げられ、これらのグリコールのうちエチレングリコールおよび1, 4ーブチレングリコールが好ましい。
【0133】
これらグリコール以外の多価アルコールとして、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセロール、ヘキサントリオールなどが挙げられる。
【0134】
ヒドロキシカルボン酸としては、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、ヒドロキシ酢酸、3−ヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸、4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、またはこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0135】
環状エステルとしては、ε- カプロラクトン、β- プロピオラクトン、β- メチル- β- プロピオラクトン、δ- バレロラクトン、グリコリド、ラクチドなどが挙げられる。
【0136】
また、本発明のポリエステルには公知のリン系化合物を共重合成分として含むことができる。リン系化合物としては二官能性リン系化合物が好ましく、例えば、フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジフェニル、(2-カルボキシルエチル)メチルホスフィン酸、(2-カルボキシルエチル)フェニルホスフィン酸、(2-メトキシカルボキシルエチル)フェニルホスフィン酸メチル、(4-メトキシカルボニルフェニル)フェニルホスフィン酸メチル、[2-(β-ヒドロキシエトキシカルボニル)エチル] メチルホスフィン酸のエチレングリコールエステル、(1,2-ジカルボキシエチル)ジメチルホスフィンオキサイド、9,10- ジヒドロ-10-オキサ-(2,3-カルボキシプロピル)-10-ホスファフェナンスレン-10-オキサイドなどが挙げられる。これらのリン系化合物を共重合成分として含むことで、得られるポリエステルの難燃性等を向上させることが可能である。
【0137】
多価カルボン酸もしくはヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、これらのアルキルエステル、酸クロライド、酸無水物などが挙げられる。
【0138】
本発明で用いられるポリエステルは主たる酸成分がテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体もしくはナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体であり、主たるグリコール成分がアルキレングリコールであるポリエステルが好ましい。主たる酸成分がテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体もしくはナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体であるポリエステルとは、全酸成分に対してテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体とナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を合計して70モル%以上含有するポリエステルであることが好ましく、より好ましくは80モル%以上含有するポリエステルであり、さらに好ましくは90モル%以上含有するポリエステルである。主たるグリコール成分がアルキレングリコールであるポリエステルとは、全グリコール成分に対してアルキレングリコールを合計して70モル%以上含有するポリエステルであることが好ましく、より好ましくは80モル%以上含有するポリエステルであり、さらに好ましくは90モル%以上含有するポリエステルである。ここで言うアルキレングリコールは、分子鎖中に置換基や脂環構造を含んでいても良い。
【0139】
本発明で用いられるナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体としては、1, 3−ナフタレンジカルボン酸、1, 4−ナフタレンジカルボン酸、1, 5−ナフタレンジカルボン酸、2, 6−ナフタレンジカルボン酸、2, 7−ナフタレンジカルボン酸、またはこれらのエステル形成性誘導体が好ましい。
【0140】
本発明で用いられるアルキレングリコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1, 4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1, 6−ヘキサンジオール、1, 2−シクロヘキサンジオール、1, 3−シクロヘキサンジオール、1, 4−シクロヘキサンジオール、1, 2−シクロヘキサンジメタノール、1, 3−シクロヘキサンジメタノール、1, 4−シクロヘキサンジメタノール、1, 4−シクロヘキサンジエタノール、1, 10−デカメチレングリコール、1,12−ドデカンジオール等があげられる。これらは同時に2種以上を使用しても良い。
【0141】
本発明のポリエステルには、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体、ナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体以外の酸成分として蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、1, 3−シクロブタンジカルボン酸、1, 3−シクロペンタンジカルボン酸、1, 2−シクロヘキサンジカルボン酸、1, 3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2, 5−ノルボルナンジカルボン酸、ダイマー酸などに例示される飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などに例示される不飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、オルソフタル酸、イソフタル酸、5−(アルカリ金属)スルホイソフタル酸、ジフェニン酸、4、4' −ビフェニルジカルボン酸、4、4' −ビフェニルスルホンジカルボン酸、4、4' −ビフェニルエーテルジカルボン酸、1, 2−ビス(フェノキシ)エタン−p, p' −ジカルボン酸、パモイン酸、アントラセンジカルボン酸などに例示される芳香族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、エタントリカルボン酸、プロパントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、3,4,3',4'−ビフェニルテトラカルボン酸などに例示される多価カルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体などを共重合成分として含むことができる。また、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、ヒドロキシ酢酸、3ーヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸、4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸などに例示されるヒドロキシカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を含むこともできる。また、ε-カプロラクトン、β-プロピオラクトン、β-メチル-β-プロピオラクトン、δ-バレロラクトン、グリコリド、ラクチドなどに例示される環状エステルを含むこともできる。
【0142】
本発明のポリエステルには、アルキレングリコール以外のグリコール成分として、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどに例示される脂肪族グリコール、ヒドロキノン、4, 4' −ジヒドロキシビスフェノール、1, 4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1, 4−ビス(β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA 、ビスフェノールC、2,5−ナフタレンジオール、これらのグリコールにエチレンオキシドが付加したグリコール、などに例示される芳香族グリコール、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセロール、ヘキサントリオールなどに例示される多価アルコールなどを共重合成分として含むことができる。
【0143】
また、本発明のポリエステルには公知のリン系化合物を共重合成分として含むことができる。リン系化合物としては二官能性リン系化合物が好ましく、例えば、フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジフェニル、(2-カルボキシルエチル)メチルホスフィン酸、(2-カルボキシルエチル)フェニルホスフィン酸、(2-メトキシカルボキシルエチル)フェニルホスフィン酸メチル、(4-メトキシカルボニルフェニル)フェニルホスフィン酸メチル、[2- (β- ヒドロキシエトキシカルボニル)エチル] メチルホスフィン酸のエチレングリコールエステル、(1,2-ジカルボキシエチル)ジメチルホスフィンオキサイド、9,10- ジヒドロ-10-オキサ-(2,3-カルボキシプロピル)-10-ホスファフェナンスレン-10-オキサイドなどが挙げられる。これらのリン系化合物を共重合成分として含むことで、得られるポリエステルの難燃性等を向上させることが可能である。
【0144】
本発明のポリエステルとしてはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレートおよびこれらの共重合体が好ましく、これらのうちポリエチレンテレフタレートおよびこの共重合体が特に好ましい。
【0145】
本発明のポリエステル中にはフェノール系、芳香族アミン系等の酸化防止剤を含むことができ、これらを一種もしくは二種以上含有することによって、例えばポリエステルの熱安定性を高めることなどができる。
【0146】
本発明のポリエステル中には、青み付け剤、有機系、無機系、あるいは有機金属系の染料、顔料、ならびに蛍光増白剤などを含むことができ、これらを一種もしくは二種以上含有することによって、ポリエステルの黄み等の着色を抑えることができる。
【0147】
本発明のポリエステル中には他の任意の重合体や安定剤、酸化防止剤、制電剤、消泡剤、染色性改良剤、染料、顔料、艶消剤、その他の添加剤が含有されていてもよい。
【実施例】
【0148】
以下、本発明を実施例により説明するが本発明はもとよりこれらの実施例に限定されるものではない。
【0149】
本発明の実施例で用いた評価方法について以下に示す。
(1)ポリマー中の金属およびリンの含有量
リンは蛍光X線法により求めた。アルミニウムは、ポリマーを灰化/酸溶解後、高周波プラズマ発光分析および原子吸光分析により求めた。
(2)ポリエステルの固有粘度(IV)
ポリエステルをフェノール / 1,1,2,2-テトラクロロエタンの 6 / 4混合溶媒(重量比)を用いて溶解し、温度30℃で測定した。
(3)紡糸時の濾圧上昇および延伸時の糸切れの評価
溶融重合で得られたPETレジンチップを乾燥後、溶融押出機に供給し、フィルターとして20μmのものを使用し、孔径0.14mmΦのオリフィスを108個有する紡糸口金から290℃で吐出させ、常法に従って冷却、オイリング後、1720m/分で引き取った。引き続き、予熱ローラー80℃、セット温度150℃で2.127倍に延伸して47デシテックス、108フィラメントのポリエステル延伸糸を得た。
【0150】
紡糸時の濾圧上昇の程度により、以下のように評価した。
○:濾圧上昇がほとんど認められない。
△:濾圧上昇が少し認められる。
×:顕著に濾圧が上昇する。
【0151】
延伸時の糸切れの頻度により、以下のように評価した。
○:糸切れがほとんど起こらない。
△:糸切れが少し起こる。
×:糸切れが多発する。
(4)合成したリン化合物のH-NMR測定
化合物をCDClまたはd6-DMSO に溶解させ、室温下でVarian GEMINI-200 を使って測定した。
(5)合成したリン化合物の融点測定
化合物をカバーガラス上にのせ、Yanaco MICRO MELTING POINT APPARATUSを使って1 ℃/minの昇温速度で測定した。
(6)合成したリン化合物の元素分析
リンの分析は、PETレジンチップを湿式分解後、モリブデンブルー比色法により行った。その他の金属は、灰化/酸溶解後、高周波プラズマ発光分析および原子吸光分析により行った。
(実施例1)
(リン化合物の合成例)
下記式化44で表されるリン化合物(リン化合物A)の合成
【化44】

Sodium(O-ethyl 3,5-di-tert-butyl-4-hydroxybenzylphosphonate)の合成
50% 水酸化ナトリウム水溶液6.5g(84mmol)とメタノール6.1ml の混合溶液中にdiethyl(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxybenzyl)phosphonate (Irganox1222(チバ・スペシャルティーケミカルズ社製) ) 5g (14mmol)のメタノール溶液6.1ml を加え、窒素雰囲気下24時間加熱還流を行った。反応後、反応混合物を冷却しながら濃塩酸7.33g (70mmol)を加え、析出物をろ取、イソプロパノールで洗浄後、ろ液を減圧留去した。得られた残渣を熱イソプロパノールに溶解させ、不溶分をろ取し、イソプロパノールを減圧留去後、残渣を熱ヘプタンで洗浄、乾燥してSodium(O-ethyl 3,5-di-tert-butyl-4-hydroxybenzylphosphonate) を3.4g(69%)得た。
形状:白色粉体
融点:294-302 ℃(分解)
H-NMR(d6-DMSO, δ): 1.078(3H, t, J=7Hz), 1.354 (18H, s), 2.711(2H, d), 3.724(2H, m, J=7Hz), 6.626(1H, s), 6.9665(2H, s)
元素分析(カッコ内は理論値):Na 6.36%(6.56%), P 9.18%(8.84%) 。
O-ethyl 3,5-di-tert-butyl-4-hydroxybenzylphosphonic acid(リン化合物A)の合成
室温で撹拌下のSodium(O-ethyl 3,5-di-tert-butyl-4-hydroxybenzyl-phosphonate) 1g (2.8mmol )の水溶液20mlに濃塩酸1.5gを加えて1 時間撹拌した。反応混合物に水150ml を加え、析出した結晶をろ取、水洗、乾燥してO-ethyl 3,5-di-tert-butyl-4-hydroxybenzylphosphonic acidを826mg (88% )得た。
形状:板状結晶
融点:126-127 ℃
1H-NMR(CDCl3, δ):1.207(3H, t, J=7Hz), 1.436(18H, s), 3.013(2H, d), 3.888(2H, m, J=7Hz.), 7.088(2H, s), 7.679-8.275(1H, br) 。
(ポリエステルの重合例)
高純度テレフタル酸とエチレングリコールから常法に従って製造したビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートおよびオリゴマーの混合物に対し、重縮合触媒としてアルミニウムトリスアセチルアセトネートの2.5g/lのエチレングリコール溶液と上述のリン化合物Aの10g/lエチレングリコール溶液を加えた。これらの化合物は最終的に得られるポリマー中のアルミニウム原子およびリン原子の含有量が表1に示す量となるように添加した。上記溶液の添加後、窒素雰囲気下常圧にて245℃で10分間撹拌した。次いで50分間を要して275℃まで昇温しつつ反応系の圧力を徐々に下げて0.1Torrとしてさらに275℃、0.1Torrで重縮合反応を行った。ポリエチレンテレフタレートのIVが0.65dl/gに到達するまでに要した重合時間を表1に示す。また、上記の重縮合にて得られたIVが0.65dl/gのポリエチレンテレフタレートを常法に従ってチップ化した。このPETレジンチップを用いて紡糸時の濾圧上昇および延伸時の糸切れの評価を行った。評価結果を表1に示す。
(実施例2)
高純度テレフタル酸とエチレングリコールから常法に従って製造したビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートおよびオリゴマーの混合物に対し、重縮合触媒としてアルミニウムトリスアセチルアセトネートの2.5g/lのエチレングリコール溶液とIrganox1425(チバ・スペシャルティーケミカルズ社製)の10g/lエチレングリコール溶液を加えた。これらの化合物は最終的に得られるポリマー中のアルミニウムおよびリンの含有量が表1に示す量となるように添加した。上記溶液の添加後、窒素雰囲気下常圧にて245℃で10分間撹拌した。次いで50分間を要して275℃まで昇温しつつ反応系の圧力を徐々に下げて0.1Torrとしてさらに275℃、0.1Torrで重縮合反応を行った。ポリエチレンテレフタレートのIVが0.65dl/gに到達するまでに要した重合時間を表1に示す。また、上記の重縮合にて得られたIVが0.65dl/gのポリエチレンテレフタレートを常法に従ってチップ化した。このPETレジンチップを用いて紡糸時の濾圧上昇および延伸時の糸切れの評価を行った。評価結果を表1に示す。
(比較例1〜2)
触媒を変更したこと以外は実施例1と同様にしてポリエステルを重合した。各実施例および比較例で、触媒として用いた化合物を表1にそれぞれ示す。これらの化合物は最終的に得られるポリマー中のアルミニウムおよびリンの含有量が表1に示す量となるように添加した。重合結果と紡糸時の濾圧上昇および延伸時の糸切れの評価結果を表1に示す。リン化合物Aは上述のものを使用した。
【0152】
【表1】

【0153】
上記した実施例および比較例から明らかなように、ポリエステル中のアルミニウムおよびリンの含有量が本発明の特許請求の範囲にあるものは、紡糸および延伸の操業性に優れるのに対して、本発明の特許請求の範囲外のものは、紡糸時に濾圧上昇が顕著に起こったり、延伸時に糸切れが多発したりし、操業性に劣る結果となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムおよびその化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種とリン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有するポリエステルであって、主たる酸成分がテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体もしくはナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体であり、主たるグリコール成分がアルキレングリコールであり、ポリエステル中に含まれるリン原子の量(ppm) のアルミニウム原子の量(ppm) に対する比が0.5〜20の範囲にあり、リン原子の含有量が5ppm〜200ppmの範囲にあることを特徴とするポリエステル。
【請求項2】
ポリエステル中に含まれるアルミニウム原子の含有量が1ppm〜100ppmの範囲にあることを特徴とする請求項1記載のポリエステル。
【請求項3】
リン化合物が、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物およびホスフィン系化合物からなる群より選ばれる一種または二種以上の化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエステル。
【請求項4】
リン化合物が、ホスホン酸系化合物からなる群より選ばれる一種または二種以上の化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル。
【請求項5】
アルカリ金属およびそれらの化合物ならびにアルカリ土類金属およびそれらの化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種をさらに含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル。
【請求項6】
アンチモンまたはその化合物を含有し、かつポリエステル中に含まれるアンチモン原子として50ppm以下の量含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステル。
【請求項7】
ゲルマニウムまたはその化合物を含有し、かつポリエステル中に含まれるゲルマニウム原子として20ppm以下の量含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリエステル。
【請求項8】
チタンまたはその化合物を含有し、かつポリエステル中に含まれるチタン原子として5ppm以下の量含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のポリエステル。
【請求項9】
コバルトまたはその化合物を含有し、かつポリエステル中に含まれるコバルト原子として10ppm未満の量含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のポリエステル。
【請求項10】
アルミニウムおよびその化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種とリン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有し、かつリン原子の量(ppm) のアルミニウム原子の量(ppm) に対する比が0.5〜20の範囲にあるポリエステル重合触媒を用いることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のポリエステルの製造方法。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載の金属および/または金属化合物を触媒として用いて製造された請求項1〜9のいずれかに記載のポリエステル。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれかに記載の金属および/または金属化合物を触媒として用いることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載のポリエステルの製造方法。

【公開番号】特開2007−186720(P2007−186720A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−112021(P2007−112021)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【分割の表示】特願2002−35389(P2002−35389)の分割
【原出願日】平成14年2月13日(2002.2.13)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】