説明

ポリエチレングリコールの誘導体およびそれを有効成分として含む抗腫瘍剤

【課題】抗腫瘍剤の有効成分として有用な化合物を提供する。
【解決手段】ノナエチレングリコールよりノナエチレングリコールモノ(p−トルエンスルホニル)エステルを作製し、これをノナエチレングリコールモノ(’4−ヨード−4−ビフェニル)エステルに誘導した化合物9bw、及ドデカエチレングリコールよりドデカエチレングリコールモノ(p−トルエンスルホニル)エステルを作製し、これをドデカエチレングリコールモノ(’4−ヨード−4−ビフェニル)エステルに誘導した化合物8bwを有効成分として抗腫瘍剤とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレングリコールの誘導体およびそれを有効成分として含む抗腫瘍剤に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞死を誘導する化合物あるいは細胞死を誘導する化合物の作用を増強する化合物としては種々の化合物が知られており、種々の疾患の予防あるいは治療用の医薬における有効成分としての利用についての検討は盛んに行なわれている。
【0003】
細胞死誘導剤及び抗癌剤の活性成分として利用可能なポリエチレングリコール誘導体(例えば、ポリオキシエチレン(2,4−ジイソオクチルフェニル)エーテル)およびその製造方法については、WO2006/043338号(A1)パンフレット、WO2006/043353号(A1)パンフレット及びWO2006/134648号(A1)パンフレットに記載されている。更に、かかるポリエチレングリコール誘導体の合成についてはOrg. Lett., 2002, 4, 2329-2332に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2006/043338号パンフレット、
【特許文献2】WO2006/043353号パンフレット
【特許文献3】WO2006/134648号パンフレット
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Org. Lett., 2002, 4, 2329-2332
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、抗腫瘍剤の有効成分として有用であり、かつより簡便な方法により製造可能な化合物及びそれを有効成分とする抗腫瘍剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる抗腫瘍剤は、下記式(1)で示されるポリエチレングリコールモノエーテル化合物及びその塩、並びに下記式(2)で示されるポリエチレングリコールモノエーテル化合物及びその塩からなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含む。
【0008】
【化1】

【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、抗腫瘍剤などの有効成分として有用な化合物を提供することができる。また、上記の効率良い中間体化合物の製造方法により、かかる有用な化合物の効率良い製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】化合物9bwの安全性試験の結果を示す図である。
【図2】化合物9bwの安全性試験の結果を示す図である。
【図3】化合物8bwの安全性試験の結果を示す図である。
【図4】化合物8bwの安全性試験の結果を示す図である。
【図5】化合物9bwのMeth-A腫瘍細胞に対するDNA合成阻害効果を示す図である。
【図6】化合物9bwの腹腔内投与マウスの体重変化を示す図である。
【図7】化合物9bwの腹腔内投与によるMeth-A腫瘍体積の変化を示す図である。
【図8】化合物9bw投与後の腫瘍縮小比を示す図である。
【図9】化合物9bw投与後のMeth-A腫瘍重量を示す図である。
【図10】化合物9bwの連続10日間投与による体重変化を示す図である。
【図11】化合物9bwの連続10間投与による腫瘍体積の変化を示す図である。
【図12】化合物9bwの連続10間投与による腫瘍体積比の変化を示す図である。
【図13】化合物9bwの腫瘍内投与マウスの体重の変化を示す図である。
【図14】化合物9bwの腫瘍内投与における腫瘍体積の変化を示す図である。
【図15】化合物9bwの腫瘍内投与における腫瘍体積の変化を示す図である。
【図16】化合物9bwの抗腫瘍効果を示す図である。
【図17】化合物9bwのMeth-A腫瘍細胞に対するDNA合成阻害効果を示す図である。
【図18】マウス脾リンパ球のマイトジェン反応に対する化合物9bwの効果を示す図である。
【図19】実施例5におけるマウス体重(解剖時)の変化を示す図である。
【図20】実施例5における腫瘍重量の変化を示す図である。
【図21】実施例5における赤血球数の変化を示す図である。
【図22】実施例5における白血球数の変化を示す図である。
【図23】実施例5における血小板数の変化を示す図である。
【図24】実施例5におけるヘモグロビン量の変化を示す図である。
【図25】実施例5におけるヘマトクリット値の変化を示す図である。
【図26】実施例5の参考試験(1)における体重の変化を示す図である。
【図27】実施例5の参考試験(1)における腫瘍重量の変化を示す図である。
【図28】実施例5の参考試験(1)における赤血球数の変化を示す図である。
【図29】実施例5の参考試験(1)における白血球数の変化を示す図である。
【図30】実施例5の参考試験(1)における血小板数の変化を示す図である。
【図31】実施例5の参考試験(1)におけるヘモグロビン量の変化を示す図である。
【図32】実施例5の参考試験(1)におけるヘマトクリット値の変化を示す図である。
【図33】実施例5の参考試験(2)におけるMIA-PaCa-2に対する9bwの効果を示す図である。
【図34】化合物9bw及び8bwの正常細胞と腫瘍細胞に対する選択性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明にかかるポリエチレングリコールモノエーテル化合物8bw及び9bw(以下単に化合物8bw及び9bw、8bw及び9bw、あるいはPEG(8bw)及びPEG(9bw)という)。上記の化合物8bw及び9bwは、これらのそれぞれに対応する中間体化合物のパラトルエンスルホニル基をRに置換する以下の反応により合成可能である。
【0012】
【化2】

【0013】
反応は、水、水と任意の割合で混和しない溶媒及び水溶性である塩基性の金属塩の存在下、空気雰囲気下で行うことができる。溶媒としては上記のものの他に、ジクロロメタンを挙げることができる。塩基性の金属塩としては、実施例において使用しているものに加えて、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水素化リチウム、水酸化カリウムなどを挙げることができる。触媒としては、、実施例において使用しているものに加えて、臭化テトラブチルアンモニウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウムなどの4級アンモニウム塩を挙げることができる。反応温度は、室温を含む範囲から適宜設定できる。反応終了後、反応液から目的とする化合物8bw及び9bwを回収する。この回収には、ろ過、各種のクロマトグラフィーを利用した分離方法などの常法を用いることができる。
【0014】
また、これらの中間体化合物は、対応するポリエチレングリコールと塩化パラトルエンスルホニルをトルエン等の不活性溶媒中で水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液および塩化ベンジルトリエチルアンモニウム等の相間移動触媒の存在下で反応させることにより得ることができる。反応温度は、室温を含む範囲から適宜設定できる。反応終了後、反応液から目的とする中間化合物を回収する。この回収には、ろ過、各種のクロマトグラフィーを利用した分離方法などの常法を用いることができる。
【0015】
上記の合成における経路を以下の反応スキームとして示す。
【0016】
【化3】

【0017】
本発明にかかる化合物8bw及び9bw、並びにこれらの塩、特に、薬理学的に許容される塩から選択された少なくとも1種を有効成分として抗腫瘍剤とすることができる。抗腫瘍剤の形態としては、例えば、点滴(静脈注)、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、坐剤などの固形製剤、注射剤、懸濁剤、シロップ剤、乳剤などの液体製剤、貼付剤等の半固形剤などを挙げることができる。これらの剤形に応じた担体、希釈剤、賦形剤、各種添加剤を適宜選択して製剤化を行うことができる。
【0018】
化合物8bw及び9bwの薬理学的に許容される塩は、常法によって得ることができる。例えば、例えば塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸などの無機酸、あるいはギ酸、酢酸、フマル酸、クエン酸、マレイン酸、シユウ酸、リンゴ酸、酒石酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などの有機酸との塩として用いることができる。
【0019】
本発明の抗癌剤は、膵臓がんなどに特に有効である。
【実施例】
【0020】
以下実施例により本発明を詳細に説明する。
【0021】
(実施例1)化合物9bwの合成
(1)化合物5の合成
Nonaethylene glycol mono(p-toluenesulfonyl) ester (5)
【0022】
【化4】

【0023】
ノナエチレングリコール 2 (1.00 g, 2.41 mmol) をトルエン (10 mL) に溶解させた。これに塩化ベンジルトリエチルアンモニウム (0.05 g, 0.24 mmol) および20% 水酸化ナトリウム水溶液 (10 mL) を加え撹拌した。このものに塩化p-トルエンスルホニル (0.53 g, 2.75 mmol) のトルエン (5.0 mL) 溶液を添加し、室温で18時間撹拌を続けた。その後10% 塩酸 (25 mL) を加えトルエン層と水層を分離した。水層は酢酸エチル (25 mL×3) で抽出した。トルエン層と 酢酸エチル層を合し、水 (20 mL)、飽和重曹水 (20 mL)、飽和食塩水 (20 mL) で順次洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後これを濾過し、エバポレーターで濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (シリカゲル : 20 g, 展開溶媒 : 酢酸エチル-メタノール混合溶媒 1 対 0 → 200 対 1 → 16 対 1) で分離精製し、無色液体5 (0.88 g, 1.55 mmol, 純度100%、収率48%)を得た。IR(ATR)v max cm-1: 3433。1H-NMR(CDCl3)δ: 2.27 (3H, s), 2.93 (1H, br), 3.56-3.64 (34H, br), 4,14 (2H, t, J=5.0 Hz), 7.34 (2H, d, J=8.4 Hz), 7.79 (2H, d, J=8.4 Hz)。
【0024】
(2)化合物9bwの合成
Nonaethylene glycol mono(4'-iodo-4-biphenyl) ether (9bw)
【0025】
【化5】

【0026】
7bw (296 mg, 1.00 mmol) を THF (5.0 mL) に溶解させた。これに水素化ナトリウム (ミネラルオイル懸濁, 純度 60%, 46 mg, 1.15 mmol) を加え室温にて1時間撹拌した。このものに5 (176 mg, 0.31 mmol) の THF (3.0 mL) 溶液を添加し、室温で24時間撹拌を続けた。反応溶液を酢酸エチル (10 mL) で希釈し、水 (10 mL)、飽和食塩水 (10 mL) で順次洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後これを濾過し、エバポレーターで濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (シリカゲル : 4 g, 展開溶媒 : 酢酸エチル-メタノール混合溶媒 1 対 0 → 8 対 1 → 7 対 2) で分離精製し、9bw (119 mg, 0.17 mmol, 純度100%、収率92%、分子量:675)を得た。1H-NMR(CDCl3)δ: 2.64 (1H, br), 3.56-3.64 (32H, br), 3.88 (2H, t, J=4.9 Hz), 4.17 (2H, t, J=4.9 Hz), 6.98 (2H, d, J=8.6 Hz), 7.29 (2H, d, J=8.6 Hz), 7.47 (2H, d, J=8.6 Hz), 7.73 (2H, d, J=8.6 Hz)。
【0027】
(実施例2)化合物8bwの合成
(1)化合物(3)の合成
Dodecaethylene glycol mono(p-toluenesulfonyl) ester (3)
【0028】
【化6】

【0029】
ドデカエチレングリコール 1 (1.00 g, 1.83 mmol) をトルエン (10 mL) に溶解させた。これに塩化ベンジルトリエチルアンモニウム (0.04 g, 0.19 mmol) および20% 水酸化ナトリウム水溶液 (10 mL) を加え撹拌した。このものに塩化p-トルエンスルホニル (0.36 g, 1.90 mmol) のトルエン (5.0 mL) 溶液を添加し、室温で18時間撹拌を続けた。その後10% 塩酸 (25 mL) を加えトルエン層と水層を分離した。水層は酢酸エチル (25 mL×3) で抽出した。トルエン層と酢酸エチル層を合し、水 (20 mL)、飽和重曹水 (20 mL)、飽和食塩水 (20 mL) で順次洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後これを濾過し、エバポレーターで濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (シリカゲル : 16 g, 展開溶媒 : 酢酸エチル-メタノール混合溶媒 1 対 0 → 60 対 1 → 8 対 1) で分離精製し、無色液体3 (0.76 g, 1.08 mmol, 純度99%、収率 49%) を得た。IR(ATR) v max cm-1: 3462。1H-NMR(CDCl3)δ: 2.03 (1H, br), 2.27 (3H, s), 3.56-3.64 (46H, br), 4.14 (2H, t, J=5.0 Hz), 7.34 (2H, d, J=8.4 Hz), 7.79 (2H, d, J=8.4 Hz)。
(2)化合物8bwの合成
Dodecaethylene glycol mono(4'-iodo-4-biphenyl) ether (8bw)
【0030】
【化7】

【0031】
7bw (310 mg, 1.05 mmol) を THF (5.0 mL) に溶解させた。これに水素化ナトリウム (ミネラルオイル懸濁, 純度 60%, 51 mg, 1.28 mmol) を加え室温にて1時間撹拌した。このものに3(200 mg, 0.29 mmol) の THF (2.0 mL) 溶液を添加し、室温で24時間撹拌を続けた。反応溶液を酢酸エチル (10 mL) で希釈し、水 (10 mL)、飽和食塩水 (10 mL) で順次洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後これを濾過し、エバポレーターで濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (シリカゲル : 5 g, 展開溶媒 : 酢酸エチル-メタノール混合溶媒 1 対 0 → 45 対 1 → 45 対 2 → 8 対 1 → 7 対 2) で分離し、8bw (52 mg, 0.06 mmol, 純度100%、収率 75%、分子量:807)を得た。1H-NMR(CDCl3)δ: 2.75 (1H, br), 3.56-3.64 (44H, br), 3.88 (2H, t, J=4.9 Hz), 4.17 (2H, t, J=4.9 Hz), 6.98 (2H, d, J=8.6 Hz), 7.29 (2H, d, J=8.6 Hz), 7.47 (2H, d, J=8.6 Hz), 7.73 (2H, d, J=8.6 Hz)。
【0032】
(参考合成例)
Nonaethylene glycol mono(4-iodophenyl) ether (9ah)
【0033】
【化8】

【0034】
7ah (230 mg, 1.05 mmol) を THF (2.0 mL) に溶解させた。これに水素化ナトリウム (ミネラルオイル懸濁, 純度 60%, 49 mg, 1.23 mmol) を加え室温にて1時間撹拌した。このものに 5 (210 mg, 0.37 mmol) の THF (2.0 mL) 溶液を添加し、室温で24時間撹拌を続けた。反応溶液を酢酸エチル (10 mL)で希釈し、水 (10 mL)、飽和食塩水 (10 mL) で順次洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後これを濾過し、エバポレーターで濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (シリカゲル:4g, 展開溶媒:酢酸エチル-メタノール混合溶媒 1 対 0 → 90 対 1 → 12 対 1 → 4 対 1) で分離精製し、9ah (154 mg, 0.25 mmol, 収率 68%) を得た。1H-NMR(CDCl3)δ: 2.61 (1H, br), 3.57-3.73 (32H, br), 3.84 (2H, t, J=4.8 Hz), 4.09 (2H, t, J=4.8 Hz), 6.69 (2H, d, J=9.2 Hz), 7.54 (2H, d, J=9.2 Hz)。
【0035】
Nonaethylene glycol mono(4-bromophenyl) ether (9j)
【0036】
【化9】

【0037】
7j (126 mg, 0.73 mmol) を THF (1.0 mL) に溶解させた。これに水素化ナトリウム (ミネラルオイル懸濁, 純度 60%, 36 mg, 0.90 mmol) を加え室温にて1時間撹拌した。このものに 5 (192 mg, 0.34 mmol) の THF (2.0 mL) 溶液を添加し、室温で24時間撹拌を続けた。反応溶液を酢酸エチル (10 mL) で希釈し、水 (10 mL)、飽和食塩水 (10 mL) で順次洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後これを濾過し、エバポレーターで濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (シリカゲル : 4 g, 展開溶媒 : 酢酸エチル-メタノール混合溶媒 1 対 0 → 10 対 1) で分離精製し、9j (130 mg, 0.23 mmol, 収率 68%) を得た。1H-NMR(CDCl3)δ: 2.78 (1H, br), 3.59-3.74 (32H, br), 3.83 (2H, t, J=4.8 Hz), 4.09 (2H, t, J=4.6 Hz), 6.79 (2H, d, J=9.2 Hz), 7.35 (2H, d, J=9.2 Hz)。
【0038】
Nonaethylene glycol mono(4-trifluoromethylphenyl) ether (9o)
【0039】
【化10】

【0040】
7o (170 mg, 1.05 mmol) を THF (1.5 mL) に溶解させた。これに水素化ナトリウム (ミネラルオイル懸濁, 純度 60%, 50 mg, 1.25 mmol) を加え室温にて1時間撹拌した。このものに 5 (200 mg, 0.35 mmol) の THF (2.0 mL) 溶液を添加し、室温で24時間撹拌を続けた。反応溶液を酢酸エチル(10 mL)で希釈し、水(10 mL)、飽和食塩水(10 mL)で順次洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後これを濾過し、エバポレーターで濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (シリカゲル : 4 g, 展開溶媒 : 酢酸エチル-メタノール混合溶媒 1 対 0 → 8 対 1) で分離精製し、9o (99 mg, 0.18 mmol, 収率 49%) を得た。1H-NMR(CDCl3)δ: 2.73 (1H, br), 3.57-3.73 (32H, br), 3.86 (2H, t, J=4.8 Hz), 4.16 (2H, t, J=4.8 Hz), 6.97 (2H, d, J=8.7 Hz), 7.52 (2H, d, J=8.7 Hz)。
【0041】
Nonaethylene glycol mono(4-cyanophenyl) ether (9r)
【0042】
【化11】

【0043】
7r (200 mg, 1.68 mmol) を THF (3.0 mL) に溶解させた。これに水素化ナトリウム (ミネラルオイル懸濁, 純度 60%, 82 mg, 2.05 mmol) を加え室温にて1時間撹拌した。このものに 5 (240 mg, 0.42 mmol) の THF (2.0 mL) 溶液を添加し、室温で24時間撹拌を続けた。反応溶液を酢酸エチル (10 mL) で希釈し、水 (10 mL)、飽和食塩水 (10 mL) で順次洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後これを濾過し、エバポレーターで濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (シリカゲル : 5 g, 展開溶媒 : 酢酸エチル-メタノール混合溶媒 1 対 0 → 100 対 1 → 8 対 1) で分離精製し、9r (82 mg, 0.16 mmol, 収率 38%) を得た。1H-NMR(CDCl3)δ: 2.64 (1H, br), 3.59-3.74 (32H, br), 3.86 (2H, t, J=4.8 Hz), 4.16 (2H, t, J=4.8 Hz), 6.96 (2H, t, J=8.9 Hz), 7.57 (2H, d, J=8.9 Hz)。
【0044】
Nonaethylene glycol mono(6-quinolyl) ether (9s)
【0045】
【化12】

【0046】
7s (200 mg, 1.38 mmol) 及び塩化ベンジルトリエチルアンモニウム (30 mg, 0.13 mmol) を THF (2.0 mL) に溶解させた。これに水素化ナトリウム (ミネラルオイル懸濁, 純度 60%, 60 mg, 1.50 mmol) を加え室温にて1時間撹拌した。このものに 5 (180 mg, 0.32 mmol) の THF (2.0 mL) 溶液を添加し、室温で24時間撹拌を続けた。反応溶液を水 (10 mL) で希釈し、クロロホルム (10 mL×4) で抽出した。クロロホルム層は、水 (10 mL)、飽和食塩水 (10 mL) で順次洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後これを濾過し、エバポレーターで濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (シリカゲル : 4 g, 展開溶媒 : 酢酸エチル-メタノール混合溶媒 1 対 0 → 16 対 1 → 8 対 1 → 7 対 2) で分離精製し、9s (103 mg, 0.19 mmol, 収率 60%) を得た。1H-NMR(CDCl3)δ: 2.89 (1H, br), 3.58-3.79 (32H, br), 3.94 (2H, t, J=4.9 Hz), 4.26 (2H, t, J=4.9 Hz), 7.09 (1H, d, J=2.7 Hz), 7.36 (1H, dd, J=8.2 Hz, 4.1 Hz), 7.41 (1H, dd, J=9.4 Hz, 2.7 Hz), 8.00 (1H, d, J=9.4 Hz), 8.04 (1H, dd, J=8.2 Hz, 1.7 Hz), 8.77 (1H, dd, J=4.1 Hz, 1.7 Hz)。
【0047】
Nonaethylene glycol mono(2,4-bis(1,1-dimethylpropyl)phenyl) ether (9z)
【0048】
【化13】

【0049】
7z (222 mg, 0.95 mmol) を THF (2.0 mL) に溶解させた。これに水素化ナトリウム (ミネラルオイル懸濁, 純度 60%, 50 mg, 1.25 mmol) を加え室温にて1時間撹拌した。このものに 5 (220 mg, 0.39 mmol) の THF (2.0 mL) 溶液を添加し、室温で24時間撹拌を続けた。反応溶液を酢酸エチル (10 mL) で希釈し、水 (10 mL)、飽和食塩水 (10 mL) で順次洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後これを濾過し、エバポレーターで濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (シリカゲル : 4 g, 展開溶媒 : 酢酸エチル-メタノール混合溶媒 1 対 0 → 50 対 1 → 8 対 1 → 4 対 1) で分離精製し、9z (134 mg, 0.21 mmol, 収率 55%) を得た。1H-NMR(CDCl3)δ: 0.60 (3H, t, J=7.3 Hz), 0.66 (3H, t, J=7.3 Hz), 1.25 (6H, s), 1.34 (6H, s), 1.59 (2H, q, J=7.3 Hz), 1.83 (2H, q, J=7.3 Hz), 2.843 (1H, br), 3.58-3.74 (32H, br), 3.87 (2H, t, J=5.2 Hz), 4.10 (2H, t, J=4.8 Hz), 6.75 (1H, d, J=8.2 Hz), 7.07 (1H, dd, J=8.2 Hz, 2.3 Hz), 7.16 (1H, d, J=2.3 Hz)。
【0050】
Dodecaethylene glycol mono(4-iodophenyl) ether (8ah)
【0051】
【化14】

【0052】
7ah (216 mg, 0.98 mmol) を THF (2.0 mL) に溶解させた。これに水素化ナトリウム (ミネラルオイル懸濁, 純度 60%, 51 mg, 1.28 mmol) を加え室温にて1時間撹拌した。このものに 3 (172 mg, 0.25 mmol) の THF (2.0 mL) 溶液を添加し、室温で24時間撹拌を続けた。反応溶液を酢酸エチル (10 mL) で希釈し、水 (10 mL)、飽和食塩水 (10 mL) で順次洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後これを濾過し、エバポレーターで濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (シリカゲル : 4 g, 展開溶媒 : 酢酸エチル-メタノール混合溶媒 1 対 0 → 45 対 1 → 45 対 2 → 8 対 1) で分離精製し、8ah (74 mg, 0.10 mmol, 収率 40%) を得た。1H-NMR(CDCl3)δ: 2.70 (1H, br), 3.59-3.73 (44H, br), 3.84 (2H, t, J=4.8 Hz), 4.09 (2H, t, J=4.8 Hz), 6.70 (2H, d, J=8.9 Hz), 7.54 (2H, d, J=8.9 Hz)。
【0053】
Dodecaethylene glycol mono(p-biphenyl) ether (8aj)
【0054】
【化15】

【0055】
7aj (173 mg, 1.02 mmol) を THF (1.5 mL) に溶解させた。これに水素化ナトリウム (ミネラルオイル懸濁, 純度 60%, 45 mg, 1.13 mmol) を加え室温にて1時間撹拌した。このものに 3 (216 mg, 0.31 mmol) の THF (2.0 mL) 溶液を添加し、室温で24時間撹拌を続けた。反応溶液を酢酸エチル (10 mL) で希釈し、水 (10 mL)、飽和食塩水 (10 mL) で順次洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後これを濾過し、エバポレーターで濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (シリカゲル : 4 g, 展開溶媒 : 酢酸エチル-メタノール混合溶媒 1 対 0 → 45 対 1 → 30 対 1 → 45 対 2 → 8 対 1 → 7 対 2) で分離精製し、8aj (105 mg, 0.15 mmol, 収率 49%) を得た。1H-NMR(CDCl3)δ: 3.57 (1H, t, J=6.0 Hz), 3.59-3.75 (44H, br), 3.88 (2H, t, J=4.9 Hz), 4.18 (2H, t, J=4.9 Hz), 6.99 (2H, d, J=8.7 Hz), 7.30-7.57 (7H, m)。
【0056】
Dodecaethylene glycol mono(4-bromophenyl) ether (8j)
【0057】
【化16】

【0058】
7j (169 mg, 0.98 mmol) を THF (1.5 mL) に溶解させた。これに水素化ナトリウム (ミネラルオイル懸濁, 純度 60%, 47 mg, 1.18 mmol) を加え室温にて1時間撹拌した。このものに 3 (215 mg, 0.31 mmol) の THF (2.0 mL) 溶液を添加し、室温で24時間撹拌を続けた。反応溶液を酢酸エチル (10 mL) で希釈し、水 (10 mL)、飽和食塩水 (10 mL) で順次洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後これを濾過し、エバポレーターで濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (シリカゲル : 4 g, 展開溶媒 : 酢酸エチル-メタノール混合溶媒 1 対 0 → 30 対 1 → 8 対 1 → 7 対 2) で分離精製し、8j (44 mg, 0.06 mmol, 収率 20%) を得た。1H-NMR(CDCl3)δ: 2.78 (1H, br), 3.58-3.65 (44H, br), 3.83 (2H, t, J=4.6 Hz), 4.08 (2H, t, J=4.6 Hz), 6.79 (2H, d, J=9.2 Hz), 7.35 (2H, d, J=9.2 Hz)。
【0059】
Dodecaethylene glycol mono(4-trifluoromethylphenyl) ether (8o)
【0060】
【化17】

【0061】
7o (162 mg, 1.00 mmol) を THF (2.0 mL) に溶解させた。これに水素化ナトリウム (ミネラルオイル懸濁, 純度 60%, 65 mg, 1.63 mmol) を加え室温にて1時間撹拌した。このものに 3 (250 mg, 0.36 mmol) の THF (1.5 mL) 溶液を添加し、室温で24時間撹拌を続けた。反応溶液を酢酸エチル (10 mL) で希釈し、水 (10 mL)、飽和食塩水 (10 mL) で順次洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後これを濾過し、エバポレーターで濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (シリカゲル : 5 g, 展開溶媒 : 酢酸エチル-メタノール混合溶媒 1 対 0 → 45 対 1 → 8 対 1) で分離精製し、8o (54 mg, 0.08 mmol, 収率 22%) を得た。1H-NMR(CDCl3)δ: 2.75 (1H, br), 3.57-3.73 (44H, br), 3.87 (2H, t, J=4.8 Hz), 4.17 (2H, t, J=4.8 Hz), 6.98 (2H, d, J=8.5 Hz), 7.53 (2H, d, J=8.5 Hz)。
【0062】
Dodecaethylene glycol mono(2,4-bis(1,1-dimethylpropyl)phenyl) ether (8z)
【0063】
【化18】

【0064】
7z (240 mg, 1.02 mmol) を THF (2.0 mL) に溶解させた。これに水素化ナトリウム (ミネラルオイル懸濁, 純度 60%, 53 mg, 1.33 mmol) を加え室温にて1時間撹拌した。このものに 3 (225 mg, 0.32 mmol) の THF (2.0 mL) 溶液を添加し、室温で24時間撹拌を続けた。反応溶液を酢酸エチル (10 mL) で希釈し、水 (10 mL)、飽和食塩水 (10 mL) で順次洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後これを濾過し、エバポレーターで濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (シリカゲル : 4 g, 展開溶媒 : 酢酸エチル-メタノール混合溶媒 1 対 0 → 60 対 1 → 30 対 1 → 4 対 1) で分離精製し、8z (192 mg, 0.25 mmol, 収率 79%) を得た。1H-NMR(CDCl3)δ: 0.61 (3H, t, J=7.5 Hz), 0.66 (3H, t, J=7.5 Hz), 1.25 (6H, s), 1.34 (6H, s), 1.59 (2H, q, J=7.5 Hz), 1.83 (2H, q, J=7.5 Hz), 2.73 (1H, br), 3.59-3.74 (44H, br), 3.86 (2H, t, J=5.2 Hz), 4.10 (2H, t, J=4.8 Hz), 6.75 (1H, d, J=8.4 Hz), 7.07 (1H, dd, J=8.4 Hz, 2.4 Hz), 7.16 (1H, d, J=2.4 Hz)。
【0065】
Nonaethylene glycol mono(p-biphenyl) ether (9aj)
【0066】
【化19】

【0067】
7aj (170 mg, 1.00 mmol) を THF (1.5 mL) に溶解させた。これに水素化ナトリウム (ミネラルオイル懸濁, 純度 60%, 44 mg, 1.10 mmol) を加え室温にて1時間撹拌した。このものに 5 (205 mg, 0.36 mmol) の THF (2.0 mL) 溶液を添加し、室温で24時間撹拌を続けた。反応溶液を酢酸エチル (10 mL) で希釈し、水 (10 mL)、飽和食塩水 (10 mL) で順次洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後これを濾過し、エバポレーターで濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (シリカゲル : 4 g, 展開溶媒 : 酢酸エチル-メタノール混合溶媒 1 対 0 → 90 対 1 → 12 対 1 → 4 対 1) で分離精製し、9aj (172 mg, 0.30 mmol, 収率 84%) を得た。1H-NMR(CDCl3)δ: 2.77 (1H, t, J=6.0 Hz), 3.59-3.75 (32H, br), 3.88 (2H, t, J=5.4 Hz), 4.18 (2H, t, J=5.4 Hz), 6.98 (2H, d, J=8.7 Hz), 7.30-7.56 (7H, m)。
【0068】
(実施例3)マウス(BALB/c、雄)の腹腔内および静脈内投与に対する安全性に関する試験
(A)化合物9bwの安全性に関する試験
[材料及び方法]
(1)マウス腹腔/静脈内投与に対する50%致死量の検討
1.実験動物:
ヌードマウス(BALB/c Slc-nu/nu 雄、エスエルシー(株))80匹を7週令で購入して1週間の予備飼育を実施した後に8週令で使用した。
2.試料の調整:
化合物9bwのサンプルを滅菌水およびPBSで希釈調製した。滅菌は0.45μmのろ過フィルターを用いて行った。
3.投与方法及び投与量:
投与は腹腔内および静脈内の単一投与とし、投与容量は共に0.2ml/マウスとした。投与容量は400mg/kg(9.3mg/0.2ml/マウス/23g体重)を基本濃度として作成し、200mg/kg、150mg/kg、100mg/kg、75mg/kg、50mg/kg、40mg/kg、30mg/kgおよび20mg/kgの8濃度を滅菌PBS(-)にて調整した。
4.観察期間:
投与後:3週間の観察を行った。また、投与開始前から投与後3週間まで投与各群の体重を経時的に測定した。
5.投与群を下記の表1に示した。
【0069】
【表1】

【0070】
6.実験開始前平均体重(n = 13):
投与開始前の平均体重は23. 36±0.89 ( SE)であった。
7.致死量の算出
LD50はプロビット法により算出した。
8.結果
ヌードマウスに対する化合物9bwの腹腔内(ip)および静脈内(iv)投与後の生存率の結果を表2に示す。また、化合物9bwの投与にかかるヌードマウスの体重変化を図1及び図2に示す。
【0071】
【表2】

【0072】
(B)化合物8bwの安全性に関する試験
[材料及び方法]
(1)マウス腹腔/静脈内投与に対する50%致死量の検討
1.実験動物:
ヌードマウス(BALB/c Slc-nu/nu 雄、エスエルシー(株))100匹を7週令で購入して1週間の予備飼育を実施した後に8週令で使用した。
2.試料の調整:
化合物8bw(表及び図ではPEG(9bw)と表記する)のサンプルを滅菌水およびPBSで希釈調製した。滅菌は0.45μmのろ過フィルターを用いて行った。
3.投与方法及び投与量:
投与は腹腔内および静脈内の単一投与とし、投与容量は共に0.2ml/マウスとした。投与容量は 400mg/kg(9.3mg/0.2ml/マウス/23g体重)を基本濃度として作成し、150mg/kg、100mg/kg、75mg/kg、60mg/kg、50mg/kg、40mg/kg、30mg/kgおよび20mg/kgの8濃度を滅菌PBS(-)にて調整した。
4.観察期間:
投与後:3週間の観察を行った。また、投与開始前から投与後3週間まで投与各群の体重を経時的に測定した。
5.投与群を下記の表に示した。
【0073】
【表3】

【0074】
6.実験開始前平均体重(n = 13):
投与開始前の平均体重は23.21±0.25 ( SE)であった。
7.致死量の算出
LD50はプロビット法により算出した。
8.結果
ヌードマウスに対する化合物8bwの腹腔内(ip)および静脈内(iv)投与後の生存率の結果を表4に示す。また、化合物8bwの投与にかかるヌードマウスの体重変化を図3及び図4に示す。
【0075】
【表4】

【0076】
(C)Meth -A腫瘍細胞に対するDNA合成阻害効果の検討(インビトロ)
1.腫瘍細胞:
Meth - A 腫瘍細胞(マウス肉腫)
2.培養液:
RPMI-l640 medium ( Sigma Chemicals, MO , USA)にfetal bovine serum 10 %, L-glutamine, gentamycinおよびstreptomycinを添加した。
3.試料の調整:
化合物9bwを滅菌蒸留水にて 2mg/mlの濃度に調整し、ゆるやかに撹拝した後に1夜冷蔵保存すると透明な状態で溶解した。しかし、溶解した化合物は室温(21〜25℃で)に置くとわずかに白濁が確認された。この状態で培養液にて96-well plates (F96 microwell plate NUNC)中で2n希釈を行い、各wellにMeth-A細胞を加えて24時間の培養(37℃, 5% CO2)を行った。
4.トリチュウムーチミジンの取り込み:
培養17時間後に3H-thymidine (methyl-3H, MP Biomedicals, CA, USA )を37 kBq/well 添加し、さらに7時間の培養を行った後にシンシレーションカウンター(1450 MicroBeta TriLux . Ma11ac , Finland)を用いて放射活性を測定した。
【0077】
[試験結果]
化合物9bwのMeth-A腫瘍細胞に対するDNA合成阻害効果について
1.活発な増殖を示すMeth-A細胞に培養液で希釈調整した化合物9bwを128μg/mlから 4μg/mlの濃度に添加し、24時間の培養を行い細胞内に取り込まれた 3H-チミジンの放射活性を測定した。化合物9bw非添加細胞(対照)が取り込んだ放射活性(CPM)を100%とした時,128μg/mlの濃度では約11%と細胞の増殖、分裂が抑制されており、 8μg/m1では約71%の抑制効果が認められた。
【0078】
(実施例4)マウス(BALB/c、雄)に移植したMeth-A腫蕩に対する化合物の抗腫瘍効果に関する試験
[材料及び方法]
(1)動物試験:腫瘍移植マウスに対する化合物9bwの抗腫瘍効果判定
1.実験動物:
通常マウス(BALB/c,雄,SLC )80匹を6週令で購入して1週間の予備飼育を実施した後に7週令で使用した。
2.移植腫瘍:
腫瘍はマウスの肉腫(Meth-A)を用い、マウス腹腔内で増殖(15匹使用)させた本腫瘍をマイクロシリンジにてマウス右大腿部皮下に約1×107/ 60μlの細胞を移植した。移植後1週間で腫瘍径が7mm前後に達したマウスを選別して投与群および担癌対照群を作成した。また、腹腔内60mg/kg連続10回投与群および腫瘍内直接投与群には腫瘍が比較的大きく成長した個体を選択した。(腫瘍の発育不良な個体および極端な増殖過多な個体は除外した。)
3.試料の調整:化合物9bwのサンプルは滅菌水および PBS で希釈調製した。
4.投与方法および投与量:
投与経路は腹腔内および腫瘍内直接投与とし、投与容量は腹腔内0.2ml/マウスおよび腫瘍内 50μl/マウスとした。投与量は腹腔内投与で 30mg/kg および 60mg/kgさらに腫瘍内投与では7.5mg/kgおよび15mg/kgに設定した。
5.投与回数および期間:
a)腹腔内投与:連続 30mg/kg ×10回(10日間)、隔日 60mg/kg投与 ×5回(10日間)および連続 60mg/kg×10回(10日間)
b )腫瘍内投与:連続 7.5mg /kg投与(10日間)および連続 15mg/kg投与(10日間)の5群を設定した。
6.腫瘍体積:
マウスの右大腿部皮下に移植した腫瘍体積は、ノギスを用いて腫瘍径を計測し、以下の計算式により算出した。
【0079】
腫瘍体積(mm3)=長径(mm)×短径(mm)×短径(mm)/ 2
投与対象の腫瘍体積=100mm3〜200mm3
7. 投与群を下記の表5に示した。
【0080】
【表5】

【0081】
(2)Meth-A腫瘍細胞に対する DNA合成阻害効果の検討(インビトロ)
1.腫瘍細胞:
Meth -A 腫瘍細胞(マウス肉腫)
2.培養液:
RPMI-1640 medium(Sigma Chemical, MO, USA)にfetal bovine serum 10 %, L-gluta mne、gentamycinおよびstreptomycinを添加した。
3.試料の調整:
化合物9bwを滅菌蒸留水にて 2mg/mlの濃度に調整し、ゆるやかに撹拝した。この状態で培養液にて96-well plates(F96 microwell plate NUNC)中で2n希釈を行い、各wellにMeth-A 細胞を加えて24時間の培養( 37℃、5 % CO2)を行った。
4.トリチュウム−チミジンの取り込み:
培養終了前に 3H−thymidine(3H-TdR、 methyl-3H, MP Biomedicals, CA, USA)を37 kBq/well添加し、さらに7時間の培養を行った後にシンシレーションカウンター(1450 MicroBeta TriLuX, Wallas, Finland)を用いて放射活性を測定した。
5.脾細胞の調整:
正常マウスの脾臓を無菌的に採取し、脾細胞に含まれる赤血球を塩化アンモニウム・トリス緩衝液にて溶解した。脾細胞はPBSにて2回洗浄し、500万個/ml となるように培養液で調製した。調製した脾リンパ球細胞は、96wellの平底プレートに50万個/wellずつ分注してマイトジェンを添加して培養を行った。
6.マイトジェン反応:
マウス脾リンパ球のマイトジェンとしてConcanavalin A (Con A. Pharmacia Fine chemicals)を用いた。Con A は、5μ/ mlの濃度となるように培養液に添加した。
7.Meth-A 細胞および脾リンパ球細胞の照射:
X線発生装置(日立製作所・MBR-1520R-3)を用いて、3.0 Gy(管電圧 150kv/管電流 20mA、フィルター A1 1.0mm、線量率 2.48 Gy)の照射を行った。
8.培養時間:
Meth -A 細胞は化合物9bw添加後24時間の培養を行い、終了6〜7時間前に3H -TdRを添加した。マウス正常脾リンパ球細胞は、マイトジェン(Con A)および化合物9bwを添加後48時間の培養を行い、Meth -A 細胞と同様に終了6〜7時間前に3H -TdRを添加した。
[試験結果]
1.担癌(Meth-A 腫瘍)マウスに対する化合物9bw投与の抗腫瘍効果
A . 化合物9bw腹腔内投与の効果判定(30mg/kg連日投与および60mg/kg隔日投与)
得られた結果を図5〜9に示す。図6の体重について、化合物9bwの30mg/kgおよび 60mg / kg 投与ともに投与開始から 10 回投与後まで体重の減少は認められなかった。図7の結果においては、腫瘍体積に関して、化合物9bwの30mg/kgおよび60mg/kg投与とも投与開始時の腫瘍体積より減少する傾向が認められた。図8の結果においては、腫瘍体積比に関して、投与前の腫瘍体積を100とした指数で表示すると投与開始後一過性の腫瘍増加がみられるが、投与後6日目以降で明らかな縮小効果が認められた(腫瘍縮小比:30mg/kg、60mg/kg投与群とも50%前後に縮小)。図9の結果においては、解剖時の腫瘍重量について、最終投与24時間後の腫瘍重量は担癌対照群で1459±620mg、30mg/kg投与群で42±22mgおよび60mg/kgで66±18mgであった。
B . 化合物9bw腹腔内投与の効果判定(60mg/kg 連日10回投与)
得られた結果を図10〜図12に示す。図10の結果において、体重に関して化合物9bwの連続10回投与では投与開始から終了まで体重の減少および死亡例は認められなかった。図11の結果において、腫瘍体積に関して60mg/kgの連続投与により投与後6日後から腫瘍体積の縮小効果が認められた。図12の結果において、腫瘍体積比に関して、比較的大きく成長した腫瘍を選択し、60mg/kgの連日10回投与を実施した。個々の投与前体積を1.00とした時の指数では、10回の投与後で約0.5もしくは0.5以下に縮小した個体は7匹中4匹(57%)、0.5〜1.0以下に縮小した個体が2匹(28%)、効果がみられない個体が1匹(14%)であった。
【0082】
更に得られた結果を下記表6−1及び6−2に示す。
【0083】
【表6】

【0084】
C.化合物9bw腫瘍内投与の効果判定( 7.5mg/kgおよび15mg/kg、隔日5回投与)
得られた結果を図13〜図16に示す。図13に示す結果において、体重について、化合物9bwの7.5mg/kgおよび15mg/kg腫瘍内投与ともに投与開始から投与後まで体重の減少は認められなかった。図14に示す結果において、腫瘍体積(C -1)について、4匹中1匹(No.3)の個体では腫瘍の増加がみられたが、残り3個体では明らかな腫瘍の縮小効果が認められた。また、腫瘍内投与ではNo.3のように投与前の腫瘍体積(腫瘍の大きさ)に関連すると思われる。図15の結果において、腫瘍体積(C - 2)について、5匹中2匹(No. 4、No. 5)の個体では腫瘍の増加がみられたが、3個体では顕著な腫瘍の縮小効果が認められた。図16に、腫瘍重量に関して、化合物9bwの投与による担癌マウスの解剖時腫瘍重量を図にまとめた。投与開始時に腫瘍長径が7mm前後の腫瘍(A)では抗腫瘍効果が大きい結果が得られた。
【0085】
(2)Meth -A 腫瘍細胞に対するDNA合成阻害効果(インビトロ)
得られた結果を図17及び図18に示す。図17の結果において、Meth-A 細胞における 化合物9bwの非添加時で非照射の3H-TdR取り込みは24,407±988cpmであり、3.0 Gy の照射では15,104 ±517cpmであった。したがって、3.0 Gy照射は Meth-A 細胞のDNA合成を約38%抑制する効果を持っと計算される(3.0 Gy 照射時 cpm/非照射−1.0×100==38.1 % )。この3 Gyの照射効果は、化合物9bwを64μl添加した時の3H-TdR取り込み(15,676cpm)とほぼ等しい。また、照射と化合物9bwの併用により、化合物9bwに対する感受性が向上する可能性も示唆された。
【0086】
(実施例5)ヌードマウス(BALB/c-nu/nu、雄)に移植したヒト膵臓がん腫瘍に対する化合物9bw及び8bwの抗腫瘍効果に関する試験
[材料及び方法]
1.実験動物:
ヌードマウス(BALB/c-nu/nu、雄、SLC)を4週令で購入して1週間の予備飼育を実施した後に5週令で使用した。
2.移植腫瘍:
腫瘍はヒト膵臓がん細胞(MIA -PaCa -2)を購入し、直径10cmの培養シャーレに専用の培養液を用いて培養した。成長したMIA-PaCa-2細胞はマイクロシリンジにてマウス右大腿部皮下に約2.5×107/60plの細胞を移植した。移植後3〜4週間で腫瘍径が7mm前後に達したマウスを選別して投与群および担癌対照群を作成した(腫瘍の発育不良な個体および極端な増殖過多な個体は除外した)。
3.試料の調整:化合物8bw及び化合物9bwを使用した。これらのサンプルはPBS(−)で希釈調製した。
4.投与方法および投与量:
投与経路は腹腔内投与とし投与容量は0.2mlで45mg/kgおよび参考試験として60mg/kgを実施した。投与回数は1日1回で20回の連日投与を設定した。また同じく参考試験(本試験前の予備試験)として30mg/kg腹腔内隔日投与および同量の腫瘍内直接投与を行い、腫瘍内には100μl/腫瘍/マウスとして隔日5回の投与を実施した。
5.試験/投与群を下記の表7に示した。
【0087】
【表7】

【0088】
[試験結果]
1.本試験:担癌ヌードマウスに対する化合物9bwおよび8bwの45mg/kg連続20回投与の効果
得られた結果を図19〜図25に示す。
【0089】
図19の結果において、体重に関して、化合物9bwおよび8bwの45mg/kg(20回)投与では投与開始から投与終了まで体重の減少は認められなかった。図20の結果において、腫瘍重量に関して、化合物9bwおよび8bwの45mg/kgの(20回)投与により、腫瘍の増殖が抑制される結果が得られた。しかし投与開始時の腫瘍体積より減少する傾向は認められなかった。
【0090】
化合物9bwまたは8bw投与によるMIA-PaCa-2移植腫瘍の有効抑制率を算出した。その結果を以下の表8に示す。
【0091】
【表8】

【0092】
有効個体:担癌対照群の平均腫瘍重量2404mgの1/3以下(801mg以下)の重量を有する個体を有効と設定した場合。1 ):20回の投与後45mg/kgを2日間追加投与し、さらに60mg/kgに増加して投与したところ翌日死亡した。この継続投与した各3匹の腫瘍重量を加えて有効抑制率を算出した。
【0093】
図21の結果において、解剖時の赤血球数は、正常対照群に対して担癌対照群で減少傾向がみられたが化合物9bw投与群および化合物8bw投与群ではやや増加する傾向がみられた。図22の結果において、白血球数は担癌対照群で正常対照群に対して有意な上昇が認められた。化合物9bw投与群および化合物8bw投与群ではやや増加する傾向がみられたが、有意差を伴う数値ではなかった。図23における結果において、血小板数は、正常対照群に対して化合物9bw投与群および化合物8bw投与群で有意な増加が認められた。正常ヌードマウスに対する安全性試験(実施例1)においてもこの傾向がみられ、本剤の特徴と思われる。
【0094】
図24の結果において、へモグロビン量は正常対照群、担癌対照群および化合物9bw投与群および化合物8bw投与群で近似の測定値であった。化合物8bw投与群ではやや増加する傾向がみられるが、有意差を伴う増加ではなかった。図25の結果において、ヘマトクリット値は、化合物9bw及び化合物8bw投与群で増加する傾向がみられたが、有意差を伴う変化ではなかった。また、8bw投与群では赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリットなどの測定値でやや高い傾向がみられた。
【0095】
2.参考試験(1):担癌ヌードマウスに対する化合物9bwの60mg/kg連続投与の抗腫瘍効果
比較的小さい腫瘍に化合物9wbの60mg/kg連日20回投与を実施した。得られた結果を図26~図32に示す。
【0096】
図26の結果において、化合物9bwの60mg/kg連日20回投においても投与群で体重の減少は認められなかった。図27の結果において、化合物9bwの60mg/kg連日20回腹腔内投与では、腫瘍の増殖抑制が認められ対照群の24.2%の重量であった。図28の結果において、化合物9bw投与群の赤血球数は正常対照群に対し、平均で10%の減少傾向がみられた。図29の結果において、白血球数は化合物9bw投与群で16.2%の増加傾向がみられたが、個体差(バラツキ)がみられ、有意差を伴う変化ではなかった。図30の結果において、血小板数は化合物9bw投与群で増加する傾向がみられた。図31の結果において、ヘモグロビンは化合物9bw投与群および化合物8bw投与群で正常対照群に対し、約10.8%の減少がみられたが有意差を伴うことはなかった。図32の結果において、ヘマトクリット値は正常対照群に対し有意な減少が認められた。化合物9bwの60mg/kgの20回投与では、赤血球数、ヘモグロビン及びヘマトクリット値は減少し、赤血球系に対する抑制が認められた。
【0097】
3.参考試験(2):担癌ヌードマウスに対する化合物9bwの腹腔内および腫瘍内投与の腫瘍縮小効果
本試験に先立ち、MIA-PaCa-2腫傷細胞の移植数および増殖能力を検討した。また、その際腫瘍細胞が生着したマウスに化合物9bwを投与して抗腫瘍効果について検討した。
1)投与量:
化合物9bw 30mg/kg−腹腔内投与−腫瘍1〜腫瘍3(n=3)
化合物9bw 30mg/kg−腫瘍内投与−腫傷A〜B(n=2)
2)投与回数:
腹腔内投与および腫瘍内投与ともに隔日5回投与
得られた結果を図33に示す。図33の結果において、腫瘍体積は腹腔内投与3匹中1匹が投与前体積の約4.5倍、他の2匹が約2.4倍に増殖した。腫瘍内投与では2匹中1匹が約50%に縮小、他の1匹が約1. 5の増加であった。
【0098】
[まとめ]
1.ヒト膵臓がん細胞であるMIA-PaCa-2は、移植後10〜14日後に一旦移植局所から消失したかの様に縮小し、その後徐々に発育する腫傷である。また、増殖し始めると移植局所で確実な発育を示す腫傷である。
2.化合物9bwまたは8bwの連続20回投与(45mg/kgおよび60mg/kg)による体重の減少はみられず、投与終了後の解剖所見では、臓器の癒着、腫瘍の転移などは認められなかった。また、血液検査では血小板数の増加が認められた。
3.化合物9bwまたは8bwの投与時(45mg/kgおよび60mg/kg)にマウスの自発運動が減少し、ゲージ内にうずくまる状態が約40〜60分継続した。またこの時点で体温が低下する傾向がみられた。この状態は60mg/kg投与時に顕著であった。
4.MIA-PaCa-2腫瘍移植マウスに対する化合物9bwまたは8bwの45mg/kg連日20回腹腔内投与は腫瘍増殖抑制効果が認められた。しかし、投与開始時の腫瘍に対する縮小効果はみられなかった。
5.同腫瘍移植マウスに対する化合物9bwの60mg/kg連日20回腹腔内投与(参考試験)ではさらなる腫傷増殖抑制効果が認められた。
6.同腫瘍移植マウスに対するか化合物9bwの30mg/kg隔日5回(10日間)の腫瘍局所内投与(参考/予備試験)では投与開始前の腫瘍体積が約50%に縮小する効果が認められた。
7.これらの結果から、化合物9bwおよび化合物8bwは低分子であり腹腔内投与後速やかに吸収されて排池されると推測される。この吸収され排池される時間が投与後40〜60分の自発運動低下時期であると思われる。したがって、投与した化合物9bwまたは化合物8が腫傷に到達する量、もしくは到達/循環時間が非常に少なく十分な効果が発揮できないと推側される。仮に、化合物9bwおよび化合物8bwが腫瘍に十分に到達したなら、予備実験で示された腫瘍内投与の結果のように腫瘍縮小効果が示される可能性があると思われる。
【0099】
(実施例6) 細胞レべルでのバイオアッセイ
MTT法を用いて腫瘍細胞に対する細胞毒性の計測を行った。MTT法は比触法の一種である。MTT試薬[3-(4,5-Dimethylthioazol-2-thiazolyl)-2,5-diphenyl-2H-tetrazolium bromide]は生細胞中のミトコンドリア内脱水素酵素により、不溶性のMTT formazan (暗青色)に変換される。このMTT formaznの生成量を測定し、相対的な細胞の生存率として表す。
【0100】
手順
1.細胞の前培養:初発細胞密度が2×104 cells/cm2となるように調整したHela細胞(子宮ガン由来)懸濁液を、50μ1ずつ96 well培養ブレートの各wellに分注した。CO2インキュベーター(37℃で、CO2濃度5 %)を用いて24時問培養した。
2.検定化合物の溶解:超純水に333μg/mlとなるよう溶解した。難溶で白濁するものに関しては、マグネチックスターラーによる撹拌を2時間以上継続することをもって溶解作業が終了したものとみなした。等量の2倍濃度細胞培養液と混合した後、クリーンべンチ内で濾過滅菌と同時に48 well培養ブレートに分注した。
3.検定化合物の希釈系列の作製:クリーンべンチ内で、48well培養プレートを用いて無菌的に、5倍希釈による濃度系列を作製した。細胞毒性活性の強さに応じて以下の2種類の濃度範囲のものを準備した。
1) 100、20、4、0.8およびO(ppm)(本培養時の最終濃度)
2) 4、0.8、0.16、0.032およびO(ppm)(本培養時の最終濃度)
4.本培養:所定濃度の検定化合物を含む培養液75μlを各wellに添加して本培養を開始した(培養液の全俄は125μlとなるため、検定化合物の濃度は60%に希釈される。すなわち、333μg/ml(検定化合物溶解時)→166.5 μg/ml(2倍濃度培養液との混合時)→ 99.9μg/ml(本培養開始時))。培養期間は3日間とした。
5.MTT反応:本培養終了後の培養プレートの各wellに0.5%MTT試薬を12.5μl添加し、C02インキュべーター内に4時間放置した。イソプロパノールに溶解した0.04N HClを各wellに137.5μ1加えて反応を停止させた後、青い粒子が溶けるまで十分にピペッティングを行った。
6.吸光度の測定:プレートリーダーにより570nm(peak)と630nm(bottom)における吸収光度差を測定した。
7.細胞生存率の算出:0ppm 作用区(生存率100%)における値に対する相対値を算出し、当該濃度作用区における細胞生存率(%)とした。なお、この値がマイナスになる場合は一律細胞生存率0%とみなした。
【0101】
アッセイは3連で行い、数値計算は得られた3つの値の単純平均を用いて行う。
【0102】
(試験結果)
細胞レベルでのバイオアッセイにより得られた結果を以下の表9に示す。表上に試験された化合物番号を記載している。
【0103】
【表9】

【0104】
(実施例7)化合物9bw及び8bwの正常細胞と腫瘍細胞に対する選択性
MTT法により化合物9bw及び8bwの腫瘍選択性を調べた。
【0105】
ヒト表皮角化細胞(正常細胞、コージンバイオ株式会社)を使用細胞とし、Cell Counting Kit-8(Dojindo)を用いてMTT法を行って、化合物9bw及び8bwの腫瘍選択性を試験した。培地としては、市販の正常ヒト表皮角化細胞用無血清培地(基礎培地+ウシ脳下垂体エキス)を用い、凍結乾燥による濃縮によって基準の2倍濃度の培地を調製して使用した。
【0106】
MTT法は、キットに添付のマニュアルに従って実施した(作用期間:3日間;作用濃度:0.032、0.16、0.8、4(ppm))。
【0107】
得られた結果を図34に示す。
【0108】
(実施例8)化合物9bw及び8bwの各種腫瘍細胞に対する作用
・試験化合物及び対照化合物
試験化合物として化合物9bw及び8bw、対照化合物としてCDDP(シスプラチン、シグマ、フランス)を用いた。
【0109】
試験化合物(粉末、純度100%)をPBSで溶解し、無血清培地で目的とする濃度に希釈して試料とした。対照化合物は、PBSで所定の濃度に希釈して用いた。
・使用腫瘍細胞
使用した腫瘍細胞を以下の表10に示す。
【0110】
【表10】

【0111】
【表11】

【0112】
【表12】

【0113】
【表13】

【0114】
・培養条件
湿度を保った雰囲気(5%CO2、95%空気)内、37℃で腫瘍細胞は付着一層または懸濁状態で培養した。培養液としては2mMのL−グルタミンを含み、10%fetal bovine serum(Lonza)を補充したRPMI1640を用いた。試験を行う際に、付着細胞は、カルシウムまたはマグネシウムを含まないHank's培地で希釈され、完全組成の培地で中和されたtrypsin-versene(Lonza)を用いた5分間の処理で培養フラスコから剥離させた。細胞数はヘモサイトメータで計測し、細胞の生存率は0.25%トリパンブルーの排出に基づいて算出した。各試験に用いる際の各細胞(セルライン)の生存率は少なくとも84%であった。
・試験方法
(A) マイコプラズマ検定(Mycoplasma detection)は、MycoAlert(商標登録)マウコプラズマ検出キット(Lonza)を用い、その使用書の記載に基づいて行った。MycoAlert(商標登録)アッセイは、マイコプラズマ酵素の活性を利用した選択的な生化学試験である。生きているマイコプラズマを溶解し、ADPをATPに変換する触媒であるMycoAlert(商標登録)基質と酵素を反応させる。MycoAlert(商標登録)基質の添加の前後における試料中のATPの量(レベル)を計測することによって、マイコプラズマの有無を示す割合が得られる。マイコプラズマ検定は、細胞培養液の上清から2連で行い、陽性及び陰性の対照(MycoAlert(商標登録) Assay Control Set、Lonza)と比較された。
・結果
使用した細胞全てにおいて陰性の結果が得られた。
(B)IC50測定
・細胞増幅及び培養
腫瘍細胞は96−ウエル平底マイクロタイタープレートに植え付け、190μlの試験化合物を含まない培養液(10%FBS補充)で37℃24時間培養した。HeLa細胞を対照として用いた。各細胞の植え付け密度を下記表11に示す。
【0115】
【表14】

【0116】
・IC50測定
細胞は、各試験化合物について1/4の段階希釈で得られた10種の濃度のそれぞれの濃度条件において72時間インキュベータされた。試験化合物(9bw及び8bw)を100μM〜0.28nMの範囲で用い、CDDPは33μM〜0.126nMの範囲で用いた。細胞(190μl)を最終容量200μlの試験化合物または対照化合物を含む培養液(10%FBS補充)中で37℃、5%CO2の雰囲気でインキュベートされた。それぞれの化合物毎に独立した試験を3回行い、各濃度は4連の実験から得た。A−673、KB、MIA−PaCa−2、NIH:OVCAR−3の各細胞については、4回目の試験を行い、3回の試験での結果の確認を行った。コントロール細胞(コントロール)は試験化合物を含まない以外は同じ条件で試験した。処理の最後に、MTSアッセイにより細胞毒性について試験した。
【0117】
・MTSアッセイ
テトラゾリウム化合物(MTS、3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-5-(3-carboxymethy phenyl)-2-(4-sulfophenyl)-2H-tetrazolium;プロメガ、フランス)及びPMS(エレクトロンカップリング剤:pheazine methosulfate)を用いたMTSアッセイにより試験化合物及び対照化合物のin vitroでの細胞毒性試験を行った。このテトラゾリウム化合物は、細胞により還元されて、別の処理操作をする必要なく培養液に直接溶解するホルマザン化合物を生成する。細胞処理の最後に、Dulbecco's Phosphate Buffered Saline(Lonza)中のMTS(20ml(2mg/ml))とPMS(シグマ、1ml(0.92mg/ml))の混合物(ろ過処理済:0.22μM)の40μlを各ウエルに加えた。培養プレートを37℃で24時間インキュベーとした。各ウエルでにの490nm吸光度(OD)をVICTOR3(商標登録)1420マルチラベルカウンター(パーキンエルマー、フランス)で測定した。
【0118】
・結果
対照化合物に対する各腫瘍細胞における化合物9bw及び8bwの相対強度(CDDPのIC50を100とした場合の相対値)を表12及び表13に示す。
【0119】
【表15】

【0120】
【表16】

【0121】
(実施例9)MIA-Pa-Ca-2(すい臓がん)腫瘍移植マウスにおける8bwの抗腫瘍効果
健康なSWISSヌードマウス(雌)にMIA-Pa-Ca-2腫瘍断片を移植した。移植から19日経過後、各マウス10匹からなる4群にランダムに組分けした。マウスの腫瘍体積は100mm3〜200mm3であった。一回当りの投与量及び投与回数を表14に示すように設定して、化合物8bw並びにCDDPの各々について抗腫瘍効果をみた。
【0122】
【表17】

【0123】
上記の条件での各投与の結果、10mg/kg投与の群1では、最初の2回の処理において耐性を示し、体重減少及び死亡例は見られなかった。この群では、最終的に、一匹の死亡例が認められ、更なる体重減少は見られない。これらの結果から、ヒト膵臓Mia Paca-2腫瘍を有するマウスでの8bw の10mg/kg投与での顕著な抗腫瘍効果が認められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示されるポリエチレングリコールモノエーテル化合物またはその塩。
【化1】

【請求項2】
下記式(2)で示されるポリエチレングリコールモノエーテル化合物またはその塩。
【化2】

【請求項3】
下記式(1)で示されるポリエチレングリコールモノエーテル化合物及びその塩、
【化3】

ならびに下記式(2)で示されるポリエチレングリコールモノエーテル化合物及びその塩
【化4】

からなる群から選択される1種の化合物を有効成分として含む抗腫瘍剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公開番号】特開2011−84632(P2011−84632A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−237627(P2009−237627)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【出願人】(599140585)株式会社センカファーマシー (2)
【Fターム(参考)】