説明

ポリオレフィンナノ複合材料組成物

A.約5乃至約20質量%の、オレフィンポリマー過酸化物、オレフィンポリマー過酸化物のアイオノマー、グラフト化されたオレフィンポリマー過酸化物、及びそれらの混合物から選択される相溶化分散剤、B.約1乃至約15質量%のスメクタイト粘土、及びC.約65乃至約94質量%のオレフィンポリマー物質を含み、成分A+B+Cの合計が100質量%に等しい、向上した機械的性質を有するナノ複合材料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スメクタイト粘土、ポリマー過酸化物相溶化分散剤、及びオレフィンポリマー物質を含むポリオレフィンナノ複合材料組成物、及びそれから製造された製品に関する。
【背景技術】
【0002】
スメクタイト粘土のような層状粘土物質は、共面の、隙間のないシリケートの層からなり、非常に極性である。そのような粘土、例えば、ナトリウム及びカルシウムモンモリロナイトは、有機アンモニウムイオンのような種々の膨潤剤で処理すると、隣接する平面のシリケート層間に膨潤剤分子を挿入し、それにより層間の間隔を実質的に増大させうるとされている。そのような条件では、小さな板状の層を相互に分離するのにかなり低い剪断応力しか必要としない。層を保持する力を超えるのに十分な剪断応力を挿入された粒子に加えると、粘土粒子の層間剥離が起こり、縮小された粘土粒子が得られる。そのような粒子は、剥離した粘土粒子と呼ばれる。剥離した粘土粒子をポリマー物質のマトリクス中に分散させると、得られる組成物はナノ複合材料組成物と呼ばれる。そのような組成物は、弾性率及び/又は高温特性のようなポリマーの1以上の性質を実施的に向上させることが見いだされた。ポリマーナノ複合材料組成物においては、無機の極性粘土は有機の非極性ポリマーと不相溶性である。従って、従来の充填剤入りポリマーにより通常実現される以上に機械的性質を増大させるために、ポリマーマトリクス内における無機粘土の相溶性及び分散を増大させ、一度確立されたそのような分散の熱力学的安定性を保持する動機が存在する。更に、オレフィンポリマー物質の核生成もまたその機械的性質を増大させることが知られている。従って、粘土が分散されているオレフィンポリマーマトリクスの核生成を向上させる動機も存在する。
【0003】
ポリオレフィンナノ複合材料組成物は、一般的には、ポリマーマトリクス内においてスメクタイト粘土を相溶化及び分散させるために無水マレイン酸をグラフトしたポリオレフィンのような物質を使用することが知られている。例えば、米国特許第6,423,768号には、ジカルボン酸、トリカルボン酸及び環状カルボン酸無水物のような相溶化剤を含むポリマー−有機粘土組成物が開示されている。米国特許第6,407,155号には、シラン、チタネート、アルミネート、ジルコネートのようなカップリング剤;及びすべてのイオン離隔/相溶化剤を含むナノ複合材料組成物が開示されている。米国特許第6,451,897号には、プロピレンポリマー物質のグラフトコポリマー及び膨潤剤で処理したスメクタイトタイプの粘土を含むナノ複合材料組成物が開示されている。しかしながら、オレフィンポリマーマトリクス内における粘土の相溶化及び分散の改良、及びオレフィンポリマー物質の核生成の改良によりオレフィンポリマーナノ複合材料組成物の機械的性質を増大させる相溶化分散剤は引き続き必要である。
予期せぬことに、特定のポリマー過酸化物相溶化分散剤を添加すると、ナノ複合材料組成物の機械的性質が向上し、オレフィンポリマー物質の核生成が増大することが見いだされた。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、
A.約5乃至約20質量%の、オレフィンポリマー過酸化物、オレフィンポリマー過酸化物のアイオノマー、グラフト化されたオレフィンポリマー過酸化物、及びそれらの混合物から選択される相溶化分散剤、
B.約1乃至約15質量%のスメクタイト粘土、及び
C.約65乃至約94質量%のオレフィンポリマー物質、
を含むポリオレフィンナノ複合材料組成物に関する。
スメクタイト粘土は、従来ポリマー物質の充填剤として使用されているカオリン粘土とは異なる性質を有する、ナノメートルレベルの厚さのシリケート層からなる層状粘土鉱物である。本発明の組成物に適するスメクタイト粘土には、例えば、モンモリロナイト、ノントロナイト、バイデライト、ボルコンスコアイト、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト、ソボカイト(sobockite)、スチーブンサイト及びスビンフォーダイト(svinfordite)が含まれ、それらは、小角X線散乱により測定されたシリケート層間の距離が典型的には約17乃至約36Åである。モンモリロナイトが好ましい。
スメクタイト粘土鉱物は未処理でもよいし、層間の間隔を増大させるために膨潤剤で変性してもよい。層状シリケートの層間距離を拡張させると、粘土への他の物質の挿入が容易になる。粘土を処理するために使用される有機膨潤剤は、典型的には、例えば、ポリ(プロピレングリコール)ビス(2-アミノプロピルエーテル)、ポリ(ビニルピロリドン)、ドデシルアミン塩化水素塩、オクタデシルアミン塩化水素塩、ドデシルピロリドン、又はそれらの混合物のような、ピリジニウムイオン以外の第四アンモニウム化合物である。粘土は、第四アンモニウムイオンを導入する前に水で膨潤しうる。
スメクタイト粘土は、オレフィンポリマー及びポリマー過酸化物と混合する前に所望の粒度範囲に粉砕しうる。スメクタイト粘土は、組成物の総質量に対して約1乃至約15質量%存在する。好ましくは、スメクタイト粘土は約2乃至約10質量%、更に好ましくは約2乃至約5質量%存在する。
本発明のポリマー過酸化物を製造するための出発物質として適するポリマー物質、及び本発明のスメクタイト及び相溶化分散剤と組み合わされるオレフィンポリマー物質には、プロピレンポリマー物質、エチレンポリマー物質、ブテン-1ポリマー物質、及びそれらの混合物が含まれる。
【0005】
プロピレンポリマー物質がオレフィンポリマー物質として又はポリマー過酸化物の出発物質として使用される場合には、プロピレンポリマーには以下のものが含まれる。
(A)アイソタクチック指数が約80%より大きい、好ましくは約90乃至約99.5%のプロピレンのホモポリマー;
(B)エチレン及びC4-C10α-オレフィンから選択されるオレフィンとプロピレンのランダムコポリマーであって、約1乃至約30質量%、好ましくは約1乃至20質量%の前記オレフィンを含み、アイソタクチック指数が約60%より大きい、好ましくは約70%より大きいコポリマー;
(C)エチレン及びC4-C8α-オレフィンから選択される2種のオレフィンとプロピレンのランダムターポリマーであって、約1乃至約30質量%、好ましくは約1乃至20質量%の前記オレフィンを含み、アイソタクチック指数が約60%より大きい、好ましくは約70%より大きいターポリマー;
(D)(i)約10乃至約60質量部、好ましくは約15乃至約55部の、アイソタクチック指数が約80%以上の、好ましくは約90乃至約99.5%のプロピレンホモポリマー、又は(a)プロピレン及びエチレン、(b)プロピレン、エチレン及びC4-C8α-オレフィン、及び(c)プロピレン及びC4-C8α-オレフィンから選択される結晶質コポリマーであって、プロピレン含量が約85質量%より高く、好ましくは約90乃至約99%で、アイソタクチック指数が約60%より大きいコポリマー;
(ii)約3乃至約25質量部、好ましくは約5乃至約20部の、周囲温度においてキシレンに不溶性であるエチレン及びプロピレン又はC4-C8α-オレフィンのコポリマー;及び
(iii)約10乃至約80質量部、好ましくは約15乃至約65部の、(a)エチレン及びプロピレン、(b)エチレン、プロピレン、及びC4-C8α-オレフィン、及び(c)エチレン及びC4-C8α-オレフィン、から選択されるエラストマー性コポリマーであって、任意に約0.5乃至約10質量%のジエン及び約70質量%未満、好ましくは約10乃至約60%、もっとも好ましくは約12乃至約55%のエチレンを含み、周囲温度においてキシレンに可溶性で、約1.5乃至約4.0dl/gの極限粘度を有するコポリマー;
を含むオレフィンポリマー組成物であって、オレフィンポリマー組成物の総質量に対して、(ii)及び(iii)の総質量が約50乃至約90%であり、(ii)/(iii)の質量比が約0.4未満、好ましくは約0.1乃至約0.3であり、組成物が2以上の工程の重合により調製されるオレフィンポリマー組成物;
(E)(i)約10乃至約60%、好ましくは約20乃至約50%の、アイソタクチック指数が約80%以上、好ましくは約90乃至約99.5%のプロピレンホモポリマー、又は(a)エチレン及びプロピレン、(b)エチレン、プロピレン、及びC4-C8α-オレフィン、及び(c)エチレン及びC4-C8α-オレフィンから選択される結晶質コポリマーであって、プロピレン含量が約85%より高く、アイソタクチック指数が約60%より大きいコポリマー;
(ii)約20乃至約60%、好ましくは約30乃至約50%の、(a)エチレン及びプロピレン、(b)エチレン、プロピレン、及びC4-C8α-オレフィン、及び(c)エチレン及びα-オレフィンから選択される非晶質コポリマーであって、任意に約0.5乃至約10%のジエン及び約70%未満のエチレンを含み、周囲温度においてキシレンに可溶性であるコポリマー;及び
(iii)約3乃至約40%、好ましくは約10乃至約20%の、周囲温度においてキシレンに不溶性であるエチレン及びプロピレン又はα-オレフィンのコポリマー;
を含む熱可塑性オレフィン;及び
(F)それらの混合物。
【0006】
エチレンポリマー物質がオレフィンポリマー物質として又はポリマー過酸化物の出発物質として使用される場合には、エチレンポリマー物質は、(a)エチレンのホモポリマー、(b)エチレン及びC3-10α-オレフィンから選択されるα-オレフィンのランダムコポリマー、(c)エチレン及び前記α-オレフィンのランダムターポリマー、及び(d)それらの混合物から選択される。C3-10α-オレフィンには、例えば、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、3,4-ジメチル-1-ブテン、1-ヘプテン、3-メチル-1-ヘキセン、及び1-オクテン等のような直鎖状及び分岐状α-オレフィンが含まれる。
エチレンポリマーがエチレンホモポリマーである場合には、典型的には密度は約0.89g/cm3以上であり、エチレンポリマーがC3-10α-オレフィンとのエチレンコポリマーである場合には、典型的には密度は約0.91g/cm3以上約0.94g/cm3未満である。適するエチレンコポリマーには、エチレン/ブテン-1、エチレン/ヘキセン-1、エチレン/オクテン-1及びエチレン/4-メチル-1-ペンテンが含まれる。エチレンコポリマーは、高密度エチレンコポリマー又は短鎖分岐直鎖状低密度エチレンコポリマー(LLDPE)であり、エチレンホモポリマーは、高密度ポリエチレン(HDPE)又は低密度ポリエチレン(LDPE)である。典型的には、LLDPE及びLDPEの密度は約0.910g/cm3以上約0.94g/cm3未満であり、HDPE及び高密度エチレンコポリマーの密度は約0.940g/cm3より高く、通常約0.95g/cm3以上である。一般的には、本発明の実施において使用するためには約0.89乃至約0.97g/cm3の密度を有するエチレンポリマー物質が適する。好ましくは、エチレンポリマーは、約0.89乃至約0.97g/cm3の密度を有するLLDPE及びHDPEである。
【0007】
ブテン-1ポリマー物質がオレフィンポリマー物質として又はポリマー過酸化物の出発物質として使用される場合には、ブテン-1ポリマー物質は、
(1)ブテン-1のホモポリマー、
(2)非ブテンα-オレフィンコモノマー含量が約1〜約15モル%、好ましくは約1〜約10モル%のブテン-1のコポリマー又はターポリマー、及び
(3)それらの混合物、
から選択される、通常固体で高分子量の、大部分が結晶質のブテン-1ポリマー物質から選択される。
典型的には、非ブテンα-オレフィンコモノマーは、エチレン、プロピレン、C5-8α-オレフィン、又はそれらの混合物である。
有用なポリブテン-1ホモ又はコポリマーは、アイソタクチックでもシンジオタクチックでもよく、約0.5乃至約150、好ましくは約0.5乃至約100、最も好ましくは約0.5乃至約75g/10分の溶融流量(MFR)を有する。
これらのポリブテン-1ポリマー、その調製法、及びその性質は当業者には公知である。ポリブテン-1に関する追加の情報を含む代表的な文献は、米国特許第4,960,820号である。
適するポリブテン-1ポリマーは、例えば、第DE-A-1,570,353号に記載されている方法に従って、例えば、約10〜約100℃、好ましくは約20〜約40℃の温度においてTiCl3又はTiCl3-AlCl3及びAl(C2H5)2Clの触媒でブテン-1を重合させることによる、ブテン-1のチーグラー・ナッタ低圧重合により得ることができる。それはまた、例えば、TiCl4-MgCl2触媒を用いることにより得ることもできる。連鎖を切断してより高いMFRの物質とするための、過酸化物分解又はビスブレーキング、熱処理又は照射によるポリマーの更なる処理により高いメルトインデックスが得られる。
【0008】
好ましくは、ポリブテン-1は約15モル%以下の共重合エチレン又はプロピレンを含むが、更に好ましくは、例えば、Basell USA Inc.により市販されているPolybutene PB0300ホモポリマーのようなホモポリマーである。このポリマーは、メルトフローが230℃及び2.16kgにおいて11g/10分であり、重量平均分子量が270,000原子質量単位であるホモポリマーである。
好ましくは、ポリブテン-1ホモポリマーの結晶度は、7日後の広角X線回折を用いた測定で約55質量%以上である。典型的には、結晶度は約70%未満、好ましくは約60%未満である。
好ましくは、オレフィンポリマー物質はプロピレンポリマー物質である。更に好ましくは、オレフィンポリマー物質は、アイソタクチック指数が約80%より大きい、好ましくは約90乃至約99.5%のプロピレンの結晶質ホモポリマーである。
オレフィンポリマー物質は、組成物の総質量に対して約65乃至約94質量%存在する。好ましくは、オレフィンポリマー物質は約75乃至約91質量%、更に好ましくは約83乃至約90質量%存在する。
相溶化分散剤は、ポリマー過酸化物、ポリマー過酸化物のアイオノマー、グラフト化されたポリマー過酸化物、及びそれらの混合物から選択される。ポリマー過酸化物は、ポリマー過酸化物1kgあたり1ミリモルより多い総過酸化物を含む。好ましくは、ポリマー過酸化物は、ポリマー過酸化物1kgあたり約1乃至約200ミリモルの総過酸化物、更に好ましくはポリマー過酸化物1kgあたり約5乃至約100ミリモルの総過酸化物を含む。
【0009】
ポリマー過酸化物の調製方法の一においては、オレフィンポリマー出発物質を、不活性ガス、好ましくは窒素雰囲気下で高エネルギー電離線に暴露させる。電離線は、所望の程度に照射されるポリマー物質の素材を貫通するのに十分なエネルギーを有するべきである。電離線はいずれの種類でもよいが、好ましくは電子及びγ線を含む。約500〜約4,000kVの加速電位を有する電子発生器から発する電子が更に好ましい。約0.1乃至約15Mrad、好ましくは約0.5乃至約9.0Mradの線量の電離線の場合に満足な結果が得られる。
“rad”という用語は、通常、米国特許第5,047,446号に記載されている方法を用いて、放射線源に関係なく照射された物質1gあたり100ergのエネルギーが吸収される電離線の量と定義される。電離線からのエネルギーの吸収は、公知の従来の線量計、すなわち放射線過敏染料を含むポリマーフィルムの帯片がエネルギー吸収検出手段である測定デバイスにより測定される。従って、本明細書において使用されている“rad”という用語は、粒子の層の形でも、フィルムの形でも、シートの形でも、照射されているオレフィン物質の表面に置かれた線量計のポリマーフィルム1gあたり100ergのエネルギーに相当する量の吸収となる電離線の量を意味する。
次いで、照射されたオレフィンポリマー物を一連の工程で酸化する。第一の処理工程は、照射されたポリマーを、約0.004体積%より高いが約15体積%未満、好ましくは約8体積%未満、更に好ましくは約5体積%未満、最も好ましくは約1.3乃至約3.0体積%の第一の制御された量の活性酸素の存在下で、約25℃以上であるがポリマーの軟化点以下の温度、好ましくは約25乃至約140℃、更に好ましくは約25乃至約100℃、最も好ましくは約40乃至約80℃の第一の温度に加熱することを含む。所望の温度への加熱は、できるだけ迅速に、好ましくは約10分未満で達成する。次いで、ポリマー内のラジカルと酸素の反応度を増大させるために、典型的には約5乃至約90分間、ポリマーを選択された温度に保持する。当業者により決定されうる保持時間は、出発物質の性質、使用する活性酸素濃度、照射線量、及び温度に依存する。最大時間は、流動層の物理的制約により決定される。
【0010】
第二の処理工程においては、照射されたポリマーを、約0.004体積%より高いが約15体積%未満、好ましくは約8体積%未満、更に好ましくは約5体積%未満、最も好ましくは約1.3乃至約3.0体積%の第二の制御された量の酸素の存在下で、約25℃以上であるがポリマーの軟化点以下の第二の温度に加熱する。好ましくは、第二の温度は、約100℃乃至ポリマーの軟化点未満の温度であり、第一工程の第一の温度より高い。次いで、連鎖の切断率を増大させかつ長鎖分岐を形成するための連鎖のフラグメントの再結合を最小化するために、すなわち、長鎖分岐の形成を最小化するために、典型的には約90分間、ポリマーを選択された温度及び酸素濃度条件に保持する。保持時間は、第一の工程に関して論述した因子と同一の因子により決定される。
任意の第三の工程においては、酸化されたオレフィンポリマー物質を不活性ガス、好ましくは窒素雰囲気下で、約80℃以上であるがポリマーの軟化点以下の第三の温度に加熱し、その温度に約10乃至約120分間、好ましくは約60分間保持する。この工程を実施すると更に安定な製品が製造される。照射され、酸化されたオレフィンポリマー物質をただちに使用するよりむしろ貯蔵するつもりの場合、又は使用する照射線量が前述の範囲の上限の場合には、この工程を使用することが好ましい。次いで、ポリマーを層から放出するまえに、不活性ガス、好ましくは窒素雰囲気下で約10分間、約70℃の第四の温度に冷却する。このようにして、更に分解することなく長期間室温で貯蔵しうる安定な中間体が形成される。
【0011】
処理を実施する好ましい方法は、照射されたプロピレンポリマーを第一の制御された量の酸素の存在下第一の温度で操業する流動層集成装置に通し、前記ポリマーを第二の制御された量の酸素の存在下第二の温度で操業する第二の流動層集成装置に通し、次いで前記ポリマーを第三の流動層集成装置において窒素雰囲気下第三の温度に保持する方法である。商用操業においては、最初の二工程用の別々の流動層、及び第三工程用のパージされた混合層を用いる連続方法が好ましい。しかしながら、方法は、各処理工程に望ましい温度に加熱された流動気流を用い、単一の流動層中でバッチ式に実施することもできる。溶融押出法のようなある種の技術とは違って、流動層法は照射されたポリマーの溶融状態への変換及びその後の再固化及び所望の形状への粉砕を必要としない。流動化媒体は、例えば、窒素又は存在するラジカルに対して不活性なその他のガス、例えば、アルゴン、クリプトン、及びヘリウムでもよい。
ポリマー上に形成される過酸化物基の濃度は、照射されたポリマーの調製中の照射線量及び照射後にそのようなポリマーが暴露されている酸素の量を変化させることにより容易に制御しうる。流動層気流中の酸素量は、乾燥させ、流動層への入口においてフィルターを通した空気を添加することにより制御される。空気は、ポリマーにおける過酸化物の形成により消費される酸素を補償するために絶えず添加しなければならない。
本明細書において使用されている“室温”又は“周囲温度”という表現は約25℃を意味する。“活性酸素”という表現は、照射されたオレフィンポリマー物質と反応する形の酸素を意味する。それは、通常空気中に見いだされる酸素の形である分子酸素を含む。本発明の活性酸素含量の要件は、例えば窒素のような不活性ガスにより環境中の空気の一部又はすべてを置換することにより成しうる。
【0012】
ポリマー過酸化物を調製する別の方法においては、オレフィンポリマー物質が、約25℃以上であるがポリマーの軟化点以下の温度、好ましくは約25乃至約140℃において、約0.004体積%より高いが約15体積%未満、好ましくは約8%未満、更に好ましくは約5体積%未満、最も好ましくは約1.3乃至約3体積%の活性酸素に暴露されるように制御された量の活性酸素を添加しつつ、約0.1乃至約4質量%の有機過酸化物開始剤でオレフィンポリマー出発物質を処理する。第二の工程においては、次いでポリマーを、第一の処理工程と同一範囲内の酸素濃度において、約25℃以上であるがポリマーの軟化点以下の温度(プロピレンホモポリマーの場合には140℃)、好ましくは約100℃乃至ポリマーの軟化点未満の温度に加熱する。総反応時間は、典型的には3時間以下である。酸素処理後、すべての活性ラジカルを消滅させるために窒素のような不活性雰囲気中で、典型的には1時間、約80℃以上であるがポリマーの軟化点以下の温度でポリマーを処理する。
適する有機過酸化物には、過酸化ベンゾイル及びジベンゾイルのような過酸化アシル、過酸化ジ-tert-ブチル、過酸化ジクミル、過酸化クミルブチル、1,1-ジ-tert-ブチルペルオキシ-3,4,4-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-1,2,5-トリ-tert-ブチルペルオキシヘキサン、及びビス(α-tert-ブチルペルオキシイソプロピルベンゼン)のような過酸化ジアルキル及びアラルキル、及びビス(α-tert-ブチルペルオキシピバレート)、tert-ブチルペルベンゾエート、2,5-ジメチルヘキシル-2,5-ジ(ペルベンゾエート)、tert-ブチル-ジ(ペルフタレート)、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、及び1,1-ジメチル-3-ヒドロキシブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエートのようなペルオキシエステル、及びジ(2-エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ(n-プロピル)ペルオキシジカーボネート、及びジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネートのようなペルオキシカーボネートが含まれる。過酸化物は、そのまま又は希釈媒体中で、約0.1〜約6.0pph、好ましくは約0.2〜約3.0pphの活性濃度で使用しうる。Lupersol PMSという商標名で市販されている、50質量%鉱油分散液としてのtert-ブチルペルオクトエートが特に好ましい。
【0013】
ポリマー過酸化物は、配合中に分解して種々の含酸素極性官能基、例えば、カルボン酸、ケトン、エステル及びラクトンを形成する過酸化物結合を含む。更に、ポリマー過酸化物の数平均分子量及び重量平均分子量は、通常、照射及び酸化中の連鎖の切断反応のために、それを調製するのに使用される対応するオレフィンポリマーのそれよりずっと低い。
好ましくは、ポリマー過酸化物の数平均分子量及び重量平均分子量は、10,000より大きい。10,000より小さい数平均及び重量平均分子量においては、相溶化分散剤は最終製品の表面において「ブルームする又は曇る(bloom)」であろう。
好ましくは、ポリマー過酸化物相溶化分散剤を調製するための出発物質はプロピレンポリマー物質である。更に好ましくは、出発物質はアイソタクチック指数が約80%より大きいプロピレンホモポリマーである。ポリマー過酸化物は、好ましくは前述のような照射及びその後の酸素への暴露により調製する。
ポリマー過酸化物のアイオノマーは、ポリマー過酸化物中のカルボン酸基の少なくとも一部を、スラリ法、融液法、反応押出、又はモノマー塩のグラフトにより中和する当業者に公知の方法により調製しうる。融液中和が好ましい。中和に使用される塩基性化合物は、周期律表の第IA、IIA、及びIIB族の金属の酸化物、水酸化物、及び塩である。これらの化合物には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酸化亜鉛、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、及び炭酸リチウムが含まれる。ポリマー過酸化物のNa+アイオノマーが好ましい。
【0014】
ポリマー過酸化物のグラフトは、当業者に公知の方法によりポリマー過酸化物をモノマーと反応させることにより調製しうる。例えば、米国特許第5,817,707号には、レドックス開始剤系を用いたプロピレングラフトコポリマーの製造方法が記載されている。適するモノマーには、ビニル基CH2=CHR-(式中、RはH又はメチルである)が2乃至12個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状脂肪族連鎖、又は単環状又は多環状化合物において6乃至20個の炭素原子を有する置換又は未置換芳香族化合物、4乃至20個の炭素原子を有する複素環状化合物、又は3乃至20個の炭素原子を有する脂肪族環状化合物に結合しているいずれかのモノマービニル化合物が含まれる。典型的な置換基は、C1-10直鎖状又は分岐状アルキル、C1-10直鎖状又は分岐状ヒドロキシアルキル、C6-14アリール、及び、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素のようなハロである。好ましくは、ビニルモノマーはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、6乃至20個の炭素原子を有するビニル置換芳香族化合物、4乃至20個の炭素原子を有するビニル置換複素環状化合物、又は3乃至20個の炭素原子を有するビニル置換脂環式化合物でもよい。好ましいビニルモノマーには、スチレン、ビニルナフタレン、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール、メチルスチレン、メチルクロロスチレン、p-tert-ブチルスチレン、メチルビニルピリジン、及びエチルビニルピリジン、及びアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリレートエステル(例えば、メチル、エチル、ヒドロキシエチル、2-エチルヘキシル、及びブチルアクリレートエステル)、及びメタクリレートエステル(例えば、メチル、エチル、ブチル、ベンジル、フェニルエチル、フェノキシエチル、エポキシプロピル、及びヒドロキシプロピルメタクリレートエステル)のようなアクリル酸(メタクリル酸)ニトリル及びアクリル酸(メタクリル酸)エステル、及びそれらの混合物が含まれる。アクリル酸をグラフトしたポリマー過酸化物化合物が好ましい。
【0015】
相溶化分散剤は、組成物の総質量に対して約5乃至約20質量%存在する。好ましくは、相溶化分散剤は約7乃至約15質量%、更に好ましくは約8乃至約12質量%存在する。
スメクタイト粘土、オレフィンポリマー物質及び相溶化分散剤は、周囲温度において、例えばドラムタンブリング、ブレンドを含む、又は低速又は高速ミキサーを用いる、当業者に公知の従来の作業で混合しうる。次いで、例えばバンバリーミキサー、ニーダー、又は一軸又は二軸スクリュー押出機を用いることにより、バッチ式又は連続式の当業者に公知のいずれかの従来の方法で、得られた組成物を溶融状態で配合する。次いで物質をペレット化する。
本発明のナノ複合材料組成物は、溶融紡糸、注入成形、真空成形、シート成形、射出成形及び押出のような従来の造形方法により製品を製造するのに使用しうる。そのような製品の例は、技術装置の構成部品、家庭用の備品、スポーツ用品、瓶、容器、電気及び電子産業の構成部品、自動車の構成部品及び繊維である。それらは特に、例えば食品包装用のフィルムのような押し出されたフィルム及びフィルム積層品の製造に有用である。
特に明記されなければ、以下の実施例において示されるオレフィンポリマー物質及び組成物の性質は、以下の表Iに示される試験方法に従って測定された。









【0016】
【表1】

【0017】
特に明記されなければ、本明細書における部、%および割合に関するすべての言及は質量%を言及する。
【0018】
〔実施例1〕
この実施例はポリマー過酸化物の調製を説明する。
Basell USA Inc.から市販されているMFRが0.32dg/分及びI.I.が95.6%のプロピレンホモポリマーに、窒素雰囲気下で0.5Mradを照射した。次いで照射されたポリマーを80℃において5分間1.35体積%の酸素、次いで140℃で更に60分間1.35体積%の酸素で処理した。次いで酸素を除去した。その後ポリマーを窒素雰囲気下で60分間140℃に加熱し、冷却および回収した。得られたポリマー過酸化物のMFRは350dg/分であった。過酸化物濃度はポリマー1kgあたり9.1ミリモルであった。
【0019】
〔実施例2〕
この実施例はポリマー過酸化物の調製を説明する。
実施例1のプロピレンホモポリマーに、実施例1の手順に従って照射し、次いで80℃において5分間1.75体積%の酸素、次いで130℃で更に60分間1.75体積%の酸素で処理した。次いで酸素を除去した。その後ポリマーを窒素雰囲気下で60分間140℃に加熱し、冷却および回収した。得られたポリマー過酸化物のMFRは1200dg/分であった。過酸化物濃度はポリマー1kgあたり17.1ミリモルであった。
【0020】
〔実施例3〕
この実施例は、アクリル酸をグラフトしたポリマー過酸化物の調製を説明する。
実施例2のポリマー過酸化物を、反応器中不活性雰囲気下で140℃に加熱した。1pph/分の速度でアクリル酸(15pph)を反応器に添加した。モノマーの添加後、ポリマーを更に90分間140℃に加熱した。次いで反応器の通風孔を開放した。窒素流を反応器に導入して未反応モノマーを除去した。140℃において30分後、ポリマーを冷却して回収した。得られたグラフトポリマーのMFRは1200dg/分であった。
【0021】
〔実施例4〕
この実施例は、ポリマー過酸化物のアイオノマーの調製を説明する。
American Leistritz Extruder Corp., USAから市販されている、3VMスクリューを具備する同時回転かみ合いLeistritz LSM 34GL 二軸スクリュー押出機(8ゾーン及びダイ、L/D〜30)中における反応押出で中和することにより、実施例1のポリマー過酸化物のNa+アイオノマーを調製した。炭酸ナトリウム塩を塩基として使用した(ポリマー組成物100部当たり1部)。押出条件は、副生成物を除去するために真空を用い、11.34kg/時間の押出量で、250回/分のスクリュー速度であった。得られたアイオノマーのMFRは347dg/分であった。
【0022】
〔実施例6〜7、9〜12、14〜16及び比較例5、8及び13〕
以下の表及び実施例においては以下の成分を使用した。
Epolene E43:Eastman Kodakから市販されている、総無水マレイン酸が約4.5質量%で、酸価が40の無水マレイン酸をグラフトしたポリプロピレン(“PP-g-MA”)。
粘土A:38質量%のジメチル、脱水素化獣脂第四アンモニウム挿入物を含む、Southern Clay Productsから市販されているCloisite 20-モンモリロナイト粘土。第四アンモニウム濃度は95ミリ当量/100gであり、基礎粘土間隔は24Å(2.4nm)である。
粘土Bは、Aldrich Chemical Companyから市販されているMontmorillonite K10粘土30gを200mlの脱イオン水に懸濁させて60℃に加熱することにより調製した。別のビーカーにおいて、15gのポリ(プロピレングリコール)ビス(2-アミノプロピルエーテル)を100mlの水に溶解させ、70〜75℃に加熱した。37%のHCl(12g)を攪拌しながらゆっくり添加した。2時間後に、溶液を60℃に保持されている粘土懸濁液に注ぎ、その温度で2時間攪拌した。得られた粘土を濾過し、洗浄して中和し、空気乾燥して、最後に減圧下60℃で乾燥させた。最終質量は38gであった。粘土のシリケート層への有機膨潤剤の挿入は吸収により起こった。
粘土を含むすべての物質を同時に乾燥ブレンドし、押出の前に安定剤パック、FS210とともにバッグ混合した。FS210は、ともにCiba Chemical Specialties Companyから市販されているFS042アルキルアルコキシアミン及びChimassorb 119ヒンダードアミン軽質安定剤の1/1混合物である。配合は、American Leistritz Extruder Corp., USAから市販されている同時回転かみ合いLeistritz LSM 34 GL 二軸スクリュー押出機中で実施した。押出温度はすべてのゾーンで190℃であった。実際の溶融温度は約180〜190℃で、9.1kg/時間の押出量及び200回/分のスクリュー速度であった。粘土から揮発性の有機物質を除去するために十分な真空を使用した。すべての物質を、Battenfeld, Austriaから市販されている141.75g(5オンス)Battenfeld射出成形機(200℃の溶融温度及び60℃の成形温度を使用)で射出成形した。射出速度は2.0cm/分であった。
比較例5及び実施例6〜7は、モンモリロナイト粘土及びBasell USA Inc.から市販されているプロピレンホモポリマーを含むナノ複合材料組成物におけるプロピレンポリマー過酸化物相溶化分散剤の使用を示す。比較例5及び実施例6〜7の組成及び物性を表IIに示す。
【0023】
【表2】

【0024】
表IIのデータから明らかなように、ポリマー過酸化物相溶化分散剤を含むナノ複合材料組成物は、ポリマー過酸化物を含まない対照組成物と比較して、実施例6においては高い曲げ弾性率及び同等以上の加熱ひずみ温度、実施例7においては高い引張強さ、破断点伸び、曲げ強さ及び弾性率、及び向上した加熱ひずみ温度により示されるように向上した物性を示す。
比較例8及び実施例9〜12は、モンモリロナイト粘土及びBasell USA Inc.から市販されているプロピレンホモポリマーを含むナノ複合材料組成物におけるプロピレンポリマー過酸化物相溶化分散剤の使用を示す。比較例8及び実施例9〜12の組成及び物性を表IIIに示す。















【0025】
【表3】

【0026】
表IIIのデータから明らかなように、10質量%のポリマー過酸化物相溶化分散剤、アクリル酸をグラフトしたポリマー過酸化物、及びポリマー過酸化物相溶化分散剤及び無水マレイン酸をグラフトしたポリプロピレンの5質量%/5質量%ブレンドを含むナノ複合材料組成物は、ポリマー過酸化物相溶化分散剤を含まない比較例8と比較して、改良されたバランスの性質を示す。Na+アイオノマーポリマー過酸化物は、比較例8と比較して向上した曲げ強さ、曲げ弾性率、及び同等以上の加熱ひずみ温度を示す。
比較例13及び実施例14〜16は、モンモリロナイト粘土及びBasell USA Inc.から市販されているプロピレンホモポリマーを含むナノ複合材料組成物におけるプロピレンポリマー過酸化物、プロピレンポリマー過酸化物のアイオノマー及びアクリル酸をグラフトしたプロピレンポリマー過酸化物相溶化分散剤の使用を示す。比較例13及び実施例14〜16の組成及び物性を表IVに示す。










【0027】
【表4】

【0028】
表IVのデータから明らかなように、10質量%のポリマー過酸化物相溶化分散剤を含む組成物は、相溶化分散剤を含まない比較例13と比較して、向上した降伏点伸び、曲げ強さ、及び曲げ弾性率を示す。ポリマー過酸化物のNa+アイオノマーを10質量%含む組成物は、相溶化分散剤を含まない比較例13と比較して、向上した引張強さ、曲げ強さ、曲げ弾性率、及び同等以上の加熱ひずみ特性を示す。10質量%のアクリル酸をグラフトしたポリマー過酸化物を含む組成物は、相溶化分散剤を含まない比較例13と比較して、向上した引張強さ、曲げ強さ及び弾性率、及び同等の加熱ひずみ特性を示す。
透過光顕微鏡研究は、ナノ複合材料組成物における粘土の分散を評価するために、射出成形引張試験片をミクロトームで切断した切片について実施した。Leitz Aristometから市販されている光学顕微鏡を用いてとった、プロピレンポリマーナノ複合材料組成物の透過光顕微鏡写真は図1〜2に示されている。これらの図は、ポリマー過酸化物相溶化分散剤を含むプロピレンポリマーナノ複合材料組成物(図2、実施例7)が、いずれの相溶化剤も分散剤も含まないプロピレンポリマーナノ複合材料組成物(図1、比較例5)と比較して粘土の分散が向上したことを示す。
干渉偏光画像は、図3〜4に示されているように、結晶のモルホロジーを評価するために引張試験片をミクロトームで切断した切片についてとった。干渉偏光写真は、Leitz Aristometから市販されている光学顕微鏡を用いてとった。図は、比較例5(図3)と比較して球晶の寸法が低下していること(図4、実施例7)により示されるように、スメクタイト粘土及び相溶化分散剤の組み合わせがプロピレンポリマー物質の穏やかな核形成剤として作用することを示す。
結晶化温度を測定するために、TA Instrumentsから市販されているDSC 2920示差走査熱量計を用い、射出成形引張試験片から切断された試験片について従来の示差走査熱量計(“DSC”)スキャンを実施した。温度スキャン範囲は25乃至235℃に設定し、スキャン速度は20℃/分であった。DSCスキャンは、実施例7のポリマー過酸化物相溶化分散剤を含むナノ複合材料組成物(曲線1)、及び実施例12のポリマー過酸化物/マレイン酸化プロピレンポリマー混合物を含むナノ複合材料組成物(曲線3)を、比較例5のマレイン酸化プロピレンポリマー物質もポリマー過酸化物も含まない組成物(曲線2)と比較して図5に示されている。図5は、組成物の曲線について冷却スキャンにおける差を示す。冷却スキャンにおける結晶化ピーク温度は、実施例7(曲線1)の120℃から、比較例5(曲線2)の117℃及び実施例12(曲線3)の110℃に変化した。これらの結果は、マレイン酸化プロピレンポリマー物質はプロピレンポリマー物質の核形成を抑制するのに対し、相溶化分散剤及びスメクタイト粘土の組み合わせはプロピレンポリマー物質の核形成を向上させるという干渉偏光画像からの観察を確認する。
本明細書に開示されている発明のその他の特徴、利点及び実施態様は、前述の開示を読めば当業者には容易に明らかであろう。これに関連して、本発明の特定の実施態様がかなり詳細に記載されているけれども、記載され特許請求されている本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、これらの実施態様の変更及び改良はなしうる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】290倍の倍率で示される、プロピレンホモポリマー及びモンモリロナイト粘土の97/3ブレンドの透過光画像である。
【図2】290倍の倍率で示される、本発明による、プロピレンホモポリマー、ポリマー過酸化物及びモンモリロナイト粘土の87/10/3ブレンドの透過光画像である。
【図3】290倍の倍率で示される、プロピレンホモポリマー及びモンモリロナイト粘土の97/3ブレンドの干渉偏光画像である。
【図4】290倍の倍率で示される、本発明による、プロピレンホモポリマー、ポリマー過酸化物及びモンモリロナイト粘土の87/10/3ブレンドの干渉偏光画像である。
【図5】290倍の倍率で示される、プロピレンホモポリマー及びモンモリロナイト粘土の97/3ブレンド、本発明による、プロピレンホモポリマー、ポリマー過酸化物及びモンモリロナイト粘土の87/10/3ブレンド、プロピレンホモポリマー、ポリマー過酸化物、マレイン酸化プロピレンポリマー、及びモンモリロナイト粘土の87/5/5/3ブレンドのDSC冷却スキャンである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A.5乃至20質量%の、オレフィンポリマー過酸化物、オレフィンポリマー過酸化物のアイオノマー、グラフト化されたオレフィンポリマー過酸化物、及びそれらの混合物から選択される相溶化分散剤、
B.1乃至15質量%のスメクタイト粘土、及び
C.65乃至94質量%のオレフィンポリマー物質、
を含み、成分A+B+Cの合計が100質量%に等しいポリオレフィンナノ複合材料組成物。
【請求項2】
A.7乃至15質量%の相溶化分散剤、
B.2乃至10質量%のスメクタイト粘土、及び
C.75乃至91質量%のオレフィンポリマー物質、
を含む請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記相溶化分散剤Aを調製するための出発物質が、プロピレンポリマー、エチレンポリマー、ブテン-1ポリマー及びそれらの混合物から選択される請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記オレフィンポリマー物質Cが、プロピレンポリマー、エチレンポリマー、ブテン-1ポリマー及びそれらの混合物から選択される請求項1記載の組成物。
【請求項5】
前記プロピレンポリマーが、
(a)アイソタクチック指数が80%より大きいプロピレンのホモポリマー;
(b)エチレン及びC4-C10α-オレフィンから選択されるオレフィンとプロピレンとのランダムコポリマーであって、1乃至30質量%の前記オレフィンを含み、アイソタクチック指数が60%より大きいコポリマー;
(c)エチレン及びC4-C8α-オレフィンから選択される2種のオレフィンとプロピレンとのランダムターポリマーであって、1乃至30質量%の前記オレフィンを含み、アイソタクチック指数が60%より大きいターポリマー;
(d)(i)10乃至60質量部の、アイソタクチック指数が80%以上のプロピレンホモポリマー、又は(a)プロピレン及びエチレン、(b)プロピレン、エチレン及びC4-C8α-オレフィン、及び(c)プロピレン及びC4-C8α-オレフィンから選択される結晶質コポリマーであって、プロピレン含量が85質量%より高く、アイソタクチック指数が60%より大きいコポリマー;
(ii)3乃至25質量部の、周囲温度においてキシレンに不溶性であるエチレンと、プロピレン又はC4-C8α-オレフィンとのコポリマー;及び
(iii)10乃至80質量部の、(a)エチレン及びプロピレン、(b)エチレン、プロピレン、及びC4-C8α-オレフィン、及び(c)エチレン及びC4-C8α-オレフィン、から選択されるエラストマー性コポリマーであって、任意に0.5乃至10質量%のジエン及び70質量%未満のエチレンを含み、周囲温度においてキシレンに可溶性で、約1.5乃至約4.0dl/gの極限粘度を有するコポリマー;
を含むオレフィンポリマー組成物であって、オレフィンポリマー組成物の総質量に対して、(ii)及び(iii)の総質量が50乃至90%であり、(ii)/(iii)の質量比が0.4未満であり、組成物が2以上の工程の重合により調製されるオレフィンポリマー組成物;
(e)(i)10乃至60%の、アイソタクチック指数が80%以上のプロピレンホモポリマー、又は(a)エチレン及びプロピレン、(b)エチレン、プロピレン、及びC4-C8α-オレフィン、及び(c)エチレン及びC4-C8α-オレフィンから選択される結晶質コポリマーであって、プロピレン含量が85%より高く、アイソタクチック指数が60%より大きいコポリマー;
(ii)20乃至60%の、(a)エチレン及びプロピレン、(b)エチレン、プロピレン、及びC4-C8α-オレフィン、及び(c)エチレン及びα-オレフィンから選択される非晶質コポリマーであって、任意に0.5乃至10%のジエン及び70%未満のエチレンを含み、周囲温度においてキシレンに可溶性であるコポリマー;及び
(iii)3乃至40%の、周囲温度においてキシレンに不溶性であるエチレンと、プロピレン又はα-オレフィンとのコポリマー;
を含む熱可塑性オレフィン;及び
(f)それらの混合物;
から選択される請求項3記載の組成物。
【請求項6】
前記プロピレンポリマーが、
(a)アイソタクチック指数が80%より大きいプロピレンのホモポリマー;
(b)エチレン及びC4-C10α-オレフィンから選択されるオレフィンとプロピレンとのランダムコポリマーであって、1乃至30質量%の前記オレフィンを含み、アイソタクチック指数が60%より大きいコポリマー;
(c)エチレン及びC4-C8α-オレフィンから選択される2種のオレフィンとプロピレンとのランダムターポリマーであって、1乃至30質量%の前記オレフィンを含み、アイソタクチック指数が60%より大きいターポリマー;
(d)(i)10乃至60質量部の、アイソタクチック指数が80%以上のプロピレンホモポリマー、又は(a)プロピレン及びエチレン、(b)プロピレン、エチレン及びC4-C8α-オレフィン、及び(c)プロピレン及びC4-C8α-オレフィンから選択される結晶質コポリマーであって、プロピレン含量が85質量%より高く、アイソタクチック指数が60%より大きいコポリマー;
(ii)3乃至25質量部の、周囲温度においてキシレンに不溶性であるエチレンとプロピレン又はC4-C8α-オレフィンとのコポリマー;及び
(iii)10乃至80質量部の、(a)エチレン及びプロピレン、(b)エチレン、プロピレン、及びC4-C8α-オレフィン、及び(c)エチレン及びC4-C8α-オレフィン、から選択されるエラストマー性コポリマーであって、任意に0.5乃至10質量%のジエン及び70質量%未満のエチレンを含み、周囲温度においてキシレンに可溶性で、約1.5乃至約4.0dl/gの極限粘度を有するコポリマー;
を含むオレフィンポリマー組成物であって、オレフィンポリマー組成物の総質量に対して、(ii)及び(iii)の総質量が50乃至90%であり、(ii)/(iii)の質量比が0.4未満であり、組成物が2以上の工程の重合により調製されるオレフィンポリマー組成物;
(e)(i)10乃至60%の、アイソタクチック指数が80%以上のプロピレンホモポリマー、又は(a)エチレン及びプロピレン、(b)エチレン、プロピレン、及びC4-C8α-オレフィン、及び(c)エチレン及びC4-C8α-オレフィンから選択される結晶質コポリマーであって、プロピレン含量が85%より高く、アイソタクチック指数が60%より大きいコポリマー;
(ii)20乃至60%の、(a)エチレン及びプロピレン、(b)エチレン、プロピレン、及びC4-C8α-オレフィン、及び(c)エチレン及びα-オレフィンから選択される非晶質コポリマーであって、任意に0.5乃至10%のジエン及び70%未満のエチレンを含み、周囲温度においてキシレンに可溶性であるコポリマー;及び
(iii)3乃至40%の、周囲温度においてキシレンに不溶性であるエチレンとプロピレン又はα-オレフィンとのコポリマー;
を含む熱可塑性オレフィン;及び
(f)それらの混合物;
から選択される請求項4記載の組成物。
【請求項7】
前記エチレンポリマーが、
(a)エチレンのホモポリマー、
(b)エチレンとC3-10α-オレフィンから選択されるα-オレフィンとのランダムコポリマー、
(c)エチレンとα-オレフィンとのランダムターポリマー、及び
(d)それらの混合物、
から選択される請求項3記載の組成物。
【請求項8】
前記エチレンポリマーが、
(a)エチレンのホモポリマー、
(b)エチレンとC3-10α-オレフィンから選択されるα-オレフィンとのランダムコポリマー、
(c)エチレンとα-オレフィンとのランダムターポリマー、及び
(d)それらの混合物、
から選択される請求項4記載の組成物。
【請求項9】
前記ブテン-1ポリマーが、
(a)ブテン-1のホモポリマー、
(b)非ブテンα-オレフィンコモノマー含量が1乃至15モル%のブテン-1のコポリマー又はターポリマー、及び
(c)それらの混合物、
から選択される請求項3記載の組成物。
【請求項10】
前記ブテン-1ポリマーが、
(a)ブテン-1のホモポリマー、
(b)非ブテンα-オレフィンコモノマー含量が1乃至15モル%のブテン-1のコポリマー又はターポリマー、及び
(c)それらの混合物、
から選択される請求項4記載の組成物。
【請求項11】
前記スメクタイト粘土Bが、モンモリロナイト、ノントロナイト、バイデライト、ボルコンスコアイト、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト、ソボカイト、スチーブンサイト、スビンフォーダイト及びそれらの混合物から選択される請求項1記載の組成物。
【請求項12】
前記スメクタイト粘土Bが、モンモリロナイトである請求項11記載の組成物。
【請求項13】
前記相溶化分散剤Aが、オレフィンポリマー過酸化物1kgあたり1ミリモルより多い総過酸化物を含むオレフィンポリマー過酸化物である請求項1記載の組成物。
【請求項14】
前記相溶化分散剤Aが、オレフィンポリマー過酸化物のナトリウムアイオノマーである請求項1記載の組成物。
【請求項15】
前記相溶化分散剤Aが、グラフト化されたオレフィンポリマー過酸化物である請求項1記載の組成物。
【請求項16】
前記グラフト化されたオレフィンポリマー過酸化物が、ビニル基CH2=CHR-(式中、Rは、H又はメチルである)が2乃至12個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状脂肪族連鎖に、又は単環状又は多環状化合物において6乃至20個の炭素原子を有する置換又は未置換芳香族化合物、4乃至20個の炭素原子を有する複素環状化合物、又は3乃至20個の炭素原子を有する脂肪族環状化合物に、結合しているモノマービニル化合物でグラフトされている請求項15記載の組成物。
【請求項17】
前記モノマービニル化合物が、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、6乃至20個の炭素原子を有するビニル置換芳香族化合物、4乃至20個の炭素原子を有するビニル置換複素環状化合物、3乃至20個の炭素原子を有するビニル置換脂環式化合物及びそれらの混合物から選択される請求項16記載の組成物。
【請求項18】
前記モノマービニル化合物が、アクリル酸である請求項17記載の組成物。
【請求項19】
前記スメクタイト粘土Bが、第四アンモニウム塩で処理されている請求項1記載の組成物。
【請求項20】
請求項1記載の組成物を含む造形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−521443(P2006−521443A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506383(P2006−506383)
【出願日】平成16年3月15日(2004.3.15)
【国際出願番号】PCT/IB2004/000893
【国際公開番号】WO2004/085534
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(505333539)バーセル ポリオレフィン イタリア ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ (4)
【Fターム(参考)】