説明

ポリオレフィン系樹脂組成物からなるシート、多孔性フィルムおよび電池用セパレータ

【課題】薄肉部がなく均質な多孔性フィルムの製造に適した、ポリオレフィン系樹脂および無機充填剤を含有するポリオレフィン系樹脂組成物からなるシートを提供する。
【解決手段】ポリオレフィン系樹脂100重量部と、該ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し無機充填剤を100〜400重量部含有するポリオレフィン系樹脂組成物からなるシートであって、前記無機充填剤の平均粒子径が0.02〜1μmであり、かつ該無機充填剤中に含有される酸不溶部が200ppm以下であるポリオレフィン系樹脂組成物からなるシート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリオレフィン系樹脂組成物からなるシート、多孔性フィルムおよび電池用セパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
多孔性フィルムはオムツや医療用シート、電池セパレータ等の各種用途に使用されている。中でも電池セパレータとして用いられる多孔性フィルムには、膜厚が薄く、かつ均一であることが求められる。このような多孔性フィルムとして、重量平均分子量が5×105以上の高分子量ポリオレフィンと、重量平均分子量が2×104以下の熱可塑性樹脂と、微粒子とを混練し、シート状に成形した後、該シートを延伸してなる多孔性フィルムが開示されている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−69221号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1に記載された方法で多孔性フィルムを製造する場合に、従来の無機充填剤を用いた場合には、得られる多孔性フィルムに薄肉部が発生してしまうことがあった。本発明は、薄肉部がなく均質な多孔性フィルムの製造に適した、ポリオレフィン系樹脂および無機充填剤を含有するポリオレフィン系樹脂組成物からなるシートを提供することを目的とする。また本発明は、薄肉部がなく均質な多孔性フィルムおよび積層多孔性フィルムを提供することを目的とする。さらに本発明は、薄肉部がなく均質な電池用セパレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明は、ポリオレフィン系樹脂100重量部と、該ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し無機充填剤を100〜400重量部含有するポリオレフィン系樹脂組成物からなるシートであって、前記無機充填剤の平均粒子径が0.02〜1μmであり、かつ該無機充填剤中に含有される酸不溶部が200ppm以下であるポリオレフィン系樹脂組成物からなるシートである。また本発明は、前記多孔性フィルムに、セラミックス粉末と窒素元素を含む耐熱樹脂とを含む耐熱樹脂層が積層されてなる積層多孔性フィルムである。さらに本発明は、電池用セパレータである前記多孔性フィルムまたは積層多孔性フィルムである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物からなるシートを用いて、多孔性フィルムを製造することにより、薄肉部がなく均質な多孔性フィルムを製造することができる。また本発明の多孔性フィルム、積層多孔性フィルムおよび電池用セパレータは、いずれも薄肉部がなく均質なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のシートは、ポリオレフィン系樹脂100重量部と、該ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し無機充填剤を100〜400重量部含有するポリオレフィン系樹脂組成物からなる。ポリオレフィン系樹脂組成物中の無機充填剤含有量は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し好ましくは150〜350重量部である。ポリオレフィン系樹脂組成物中の無機充填剤の量が100重量部未満の場合には、該ポリオレフィン系樹脂組成物からなるシートから無機充填剤を除去して多孔性フィルムを製造する場合に、無機充填剤を短時間で除去することが困難となる傾向があり、一方300重量部を越える場合には、シート強度が弱くなり、取り扱いが困難になる傾向がある。
【0008】
本発明におけるポリオレフィン系樹脂組成物からなるシートの厚みは、通常5〜200μmであり、好ましくは5〜100μmである。このような厚みのシートは、該シートから無機充填剤を除去して多孔性フィルムを製造する場合に無機充填剤を短時間で効率よく除去することができ、かつ該シートを延伸する場合に延伸しやすい。
【0009】
本発明で用いる無機充填剤の平均粒子径は0.02〜1μmであり、好ましくは0.05〜0.8μmであり、さらに好ましくは0.05〜0.5μmである。無機充填剤の平均粒子径が1μmを超える場合には、該無機充填剤を含むポリオレフィン系樹脂組成物からなるシートを用いて多孔性フィルムを製造する場合に、得られる多孔性フィルムはイオン通過性に劣るものとなる。無機充填剤の平均粒子径が0.02μm未満の場合には、無機充填剤が均一に分散されたシートを得ることが困難となり、このようなシートを用いて得られる多孔性フィルムには、ピンホール(小さな穴)や薄肉部が生じたり、延伸時に破膜してしまう。なお無機充填剤の平均粒子径とは、走査型電子顕微鏡 SEM(日立製 S−4200)を用いて30000倍の大きさの視野内に認められる粒子の直径の平均値である。
【0010】
本発明で用いられる無機充填剤は、酸不溶部の含有量が200ppm以下、好ましくは150ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下の無機充填剤である。本発明において酸不溶部の含有量が200ppmを越える無機充填剤を用いた場合には、該無機充填剤を含むポリオレフィン系樹脂組成物からなるシートを用いて多孔性フィルムを製造すると、得られる多孔性フィルムに薄肉部が生じてしまう。
【0011】
本発明で用いられる無機充填剤としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酸化亜鉛、酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、硫酸カルシウム等の本質的に酸に溶解するものが挙げられる。安価であること、用途に応じて種々の粒子径のものを入手しやすいこと、後の工程で該無機充填剤を除去する場合に酸性水溶液等で容易に除去できることから、本発明では炭酸カルシウムを用いることが好ましく、沈降炭酸カルシウムを用いることがより好ましい。
【0012】
本発明で用いる無機充填剤は、ポリオレフィン系樹脂中への分散性や、該無機充填剤を含むシートを延伸する際の延伸性の観点から、表面処理が実施されていることが好ましい。表面処理剤としては、例えばパルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、オクタデカン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸等の高級脂肪酸およびその混合物またはそれらの金属塩等を挙げることができる。またこれらに加えて、オレイン酸エチル、パルミ酸エチルステアリン酸エチル等の高級脂肪酸エステルを表面処理剤として少量併用してもよい。無機充填剤に表面処理する場合に用いる表面処理剤は、無機充填剤100重量部に対して1〜10重量部程度とすることが好ましい。
【0013】
無機充填剤に含まれる酸不溶部は、原料そのものに含まれる不純物や、無機充填剤製造工程において混入した不純物であると推定される。無機充填剤に含まれる酸不溶部は、量は極めて少ないものの、比較的径の大きいものが多い。酸不溶部が200ppm以下である無機充填剤を得るためには、例えば市販の無機微粒子を粒子径の大きいものと小さいものとに分級して得られる粒子径の小さい無機充填剤を挙げることができる。分級方法は特に限定はなく公知の風力分級機、メッシュ分級機、サイクロン分級機など乾式分級機を用いることができるが、風力分級機を用いることが好ましい。風力分級とは、無機充填剤を分級ローターに投入し、該分級ローターを回転させて、遠心力と気流による向心力を無機微粒子に与え、これらのバランスによって粒子径の大きい粗粉と粒子径の小さい微粉に分ける方法である。分級点の変更は風量および回転数の変更で容易に行える。分級点は0.5〜50μmとすることが好ましく、1〜20μmとすることがさらに好ましい。分級点は下式によって決定することができる。
D=c/ν√(Q/ρ)
ここで、D:分級点(μm)c:定数、ν:回転数(rmp)、Q:風量(m2/h)
上式において定数cは装置によって決定される値である。
【0014】
本発明で用いられるポリオレフィン系樹脂としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセンなどの各オレフィンの単独重合体やこれらモノマー同士、あるいはこれらモノマーと非オレフィン系モノマーとの共重合体が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、低密度ポリエチレン、線状ポリエチレン(エチレン−α−オレフィン共重合体)、高密度ポリエチレン等のエチレン系樹脂、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のプロピレン系樹脂、ポリ(4−メチルペンテン−1)、ポリ(ブテン−1)、エチレン−酢酸ビニル共重合体が挙げられる。本発明の多孔性フィルムを電池用セパレータとして用いる場合には、シャットダウン温度を120〜150℃程度とすることができることから、ポリオレフィン系樹脂はエチレン系樹脂であることが好ましい。
【0015】
本発明で用いるポリオレフィン系樹脂は、分子鎖長が2850nm以上のポリオレフィン(以下、超高分子鎖長ポリオレフィンと称する)を含有することが好ましい。このような超高分子鎖長ポリオレフィンを含むポリオレフィン系樹脂を用いることにより、該ポリオレフィン系樹脂を含むポリオレフィン系樹脂組成物からなるシートから無機充填剤を除去して得られる多孔性フィルムは、強度に優れるものとなり、特に電池用セパレータとして用いた場合には内部抵抗の小さい電池とすることができる。ポリオレフィン系樹脂中に含まれる超高分子鎖長ポリオレフィンは、該ポリオレフィン系樹脂中10重量%以上であることが好ましく、20重量%以上であることがより好ましく、30重量%以上であることがさらに好ましい。
【0016】
本発明で用いるポリオレフィン系樹脂組成物は、重量平均分子量が700〜6000のオレフィン系ワックスを含むことが好ましい。オレフィン系ワックスは、通常25℃で固体状のものである。ワックスを含むポリオレフィン系樹脂組成物は、延伸性が向上し、かつ得られる多孔性フィルムは強度に優れるものとなる。ポリオレフィン系樹脂組成物中のオレフィン系ワックスの含有量は、該樹脂組成物に含まれるポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、5〜100重量部であることが好ましく、10〜70重量部であることがさらに好ましい。
【0017】
オレフィン系ワックスの例としては、低密度ポリエチレン、線状ポリエチレン(エチレン−α−オレフィン共重合体)、高密度ポリエチレン等のエチレン系樹脂ワックス、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のプロピレン系樹脂ワックス、ポリ(4 −メチルペンテン−1)、ポリ(ブテン−1)およびエチレン−酢酸ビニル共重合体のワックスなどが挙げられる。
【0018】
本発明において、ポリオレフィン系樹脂やオレフィン系ワックスの分子鎖長、重量平均分子鎖長、分子量及び重量平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定することができる。また、特定のポリオレフィン系樹脂中の超高分子鎖長ポリオレフィンの含有量(重量%)は、GPC測定により得られる分子量分布曲線の積分により求めることができる。
【0019】
ポリオレフィン系樹脂の分子鎖長は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定によるポリスチレン換算の分子鎖長であり、より具体的には以下の手順で求められるパラメータである。GPC測定の移動相としては、測定する未知試料も分子量既知の標準ポリスチレンも溶解することができる溶媒を使用する。まず、分子量が異なる複数種の標準ポリスチレンのGPC測定を行い、各標準ポリスチレンの保持時間を求める。ポリスチレンのQファクターを用いて各標準ポリスチレンの分子鎖長を求め、これにより、各標準ポリスチレンの分子鎖長とそれに対応する保持時間を知る。なお、標準ポリスチレンの分子量、分子鎖長およびQファクターは下記の関係にある。
分子量=分子鎖長×Qファクター
次に未知試料のGPC測定を行い、保持時間−溶出成分量曲線を得る。標準ポリスチレンのGPC測定において、保持時間Tであった標準ポリスチレンの分子鎖長をLとするとき、未知試料のGPC測定において保持時間Tであった成分の「ポリスチレン換算の分子鎖長」をLとする。この関係を用いて、当該未知試料の前記保持時間−溶出成分量曲線から、当該未知試料のポリスチレン換算の分子鎖長分布(ポリスチレン換算の分子鎖長と溶出成分量との関係)が求められる。
【0020】
本発明において、ポリオレフィン系樹脂中の分子鎖長が2850nm以上のポリオレフィン量は、上記の方法で求めた分子鎖長−溶出成分量曲線を全範囲について積分した値に対する、分子鎖長2850nm以上に該当する範囲について積分した値の割合として求めることができる。
【0021】
本発明におけるポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法は特に限定されないが、ポリオレフィン系樹脂や無機充填剤等のポリオレフィン系樹脂組成物を構成する材料を混合装置、例えばロール、バンバリーミキサー、一軸押出機、二軸押出機などを用いて混合し、ポリオレフィン系樹脂組成物を得る。材料を混合する際に、必要に応じて酸化防止剤や非イオン性界面活性剤、紫外線吸収剤、難燃剤、脂肪酸エステル、安定化剤等の添加剤を添加してもよい。
【0022】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物からなるシートの製造方法は特に限定されるものではなく、インフレーション加工、カレンダー加工、Tダイ押出加工、スカイフ法等のシート成形方法により製造することができる。表面平滑性に優れ、かつ膜厚精度の高いシートが得られることから、下記の方法により製造することが好ましい。特にポリオレフィン系樹脂組成物中のポリオレフィン系樹脂が、超高分子鎖長ポリオレフィンを含む場合には、下記の方法によりシートを製造することが好ましい。
【0023】
ポリオレフィン系樹脂組成物からなるシートの好ましい製造方法とは、ポリオレフィン系樹脂組成物に含有されるポリオレフィン系樹脂の融点より高い表面温度に調整された一対の回転成形工具を用いて、ポリオレフィン系樹脂組成物を圧延成形する方法である。回転成形工具の表面温度は、(融点+5)℃以上であることが好ましい。また表面温度の上限は、(融点+20)℃以下であることが好ましく、(融点+15)℃以下であることがさらに好ましい。一対の回転成形工具としては、ロールやベルトが挙げられる。両回転成形工具の周速度は必ずしも厳密に同一周速度である必要はなく、それらの差異が±5%以内程度であればよい。なお、ポリオレフィン樹脂の融点は、DSC(示差走査熱量測定)におけるピーク温度により求めることができ、複数のピークがある場合は、最も融解熱量ΔH(J/g)が大きいピーク温度を融点とする。このような方法により得られる本発明のシートを用いて多孔性フィルムを製造した場合には、強度やイオン透過、通気性などに優れる多孔性フィルムを得ることができる。
【0024】
ポリオレフィン系樹脂組成物を一対の回転成形工具により圧延成形する際には、押出機よりストランド状に吐出したポリオレフィン系樹脂組成物を直接一対の回転成形工具間に導入してもよく、一旦ペレット化したポリオレフィン系樹脂組成物を用いてもよい。
【0025】
本発明の多孔性フィルムは、ポリオレフィン系樹脂組成物からなるシートから該シートに含まれる無機充填剤を除去した後、延伸する方法や、シートを延伸した後無機充填剤を除去する方法により得ることができる。より膜厚の均一性に優れる多孔性フィルムが得られることから、前者の方法により製造することが好ましい。以下、前者の方法について詳細に説明するが、後者の場合も無機充填剤の除去に用いられる液体や除去方法、延伸方法は同様である。多孔性フィルムを製造する際に用いるシートは、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物からなるシートが2枚以上積層されてなる多層シートであってもよい。
【0026】
ポリオレフィン系樹脂組成物からなるシートから無機充填剤を除去する際には、液体が用いられる。使用する液体は、シート中の無機充填剤の種類に応じて適宜選択されるが、無機充填剤が炭酸カルシウムである場合には、酸性水溶液を用いることができる。無機充填剤を除去する方法としては、液体をシートにシャワー状に浴びせる方法、液体を入れた槽にシートを浸漬する方法等が挙げられる。液体により無機充填剤を除去する方法は回分式でも連続式でもよいが、生産性の観点から連続式が好ましく、例えば、複数のロールを中に配置した槽に液体を入れ、回転する前記ロールによりシートを搬送し液体中を通過させる方法が挙げられる。液体が酸性またはアルカリ性水溶液である場合には、無機充填剤が除去されたシートをさらに水で洗浄することが好ましい。洗浄の程度としては、この多孔性フィルムの用途にもよるが、通常は溶解した塩等が析出してこない程度まで洗浄を行えばよい。無機充填剤を除去したシートは、通常該シートの物性が変化しない時間と温度の範囲内で乾燥される。本発明の方法により無機充填剤が除去されたシートには、無機充填剤が100〜20000ppm程度残存していることが好ましい。無機充填剤が少量残存したフィルムは、後述する方法で延伸して多孔性フィルムとし、電池用セパレータとして用いた場合に、該多孔性シートの構成するポリオレフィン系樹脂が溶融しても電極間の短絡を防ぐ効果が期待される。また無機充填剤が少量残存したシートを延伸して得られる多孔性フィルムは、無機充填剤を完全に除去した場合よりも透過性に優れる。この理由は明らかではないが、微量の充填剤がフィルム中に残存することによりフィルムが膜厚方向に押し潰され難くなっているためではないかと考えている。
【0027】
無機充填剤が炭酸カルシウムであり、シートから炭酸カルシウムを除去する際に酸性水溶液を用いる場合には、炭酸カルシウムの除去速度を早くするため、酸性水溶液に界面活性剤や、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、N−メチルピロリドン等の水溶性の有機溶剤を少量添加することが好ましいが、環境の点から有機溶剤を添加せず界面活性剤を添加することが好ましい。界面活性剤としては公知の非イオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤などがあげられるが、好ましくは非イオン系界面活性剤がよい。非イオン系界面活性剤は、水系液体が強アルカリ性(pH11以上)や強酸性(pH3以下)の場合でも加水分解されにくいという利点がある。非イオン系界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン・脂肪酸アミド等が挙げられる。水系液体に添加する非イオン系界面活性剤量は、無機充填剤除去速度の上昇効果と、無機充填剤除去後にフィルムから界面活性剤を除去する際の効率とのバランスから、0.05〜10重量%とすることが好ましい。
【0028】
本発明で用いられる非イオン系界面活性剤の親水性親油性バランス(HLB)は、3〜18の範囲が好ましく、5〜15の範囲がより好ましい。HLBとは、親水性と疎水性の強さのバランスを示す値である。HLBが小さすぎると、水に対する溶解性が悪くなる傾向があり、逆にHLBが大き過ぎると水への溶解性は十分であるものの疎水性が低いためにシートへの浸透に時間がかかる傾向がある。
【0029】
HLBは、以下に示すグリフィンの式により算出することができる。
HLB=((界面活性剤中の親水基部分の分子量)/(界面活性剤全体の分子量))×(100/5)
前記のグリフィン式でHLBを算出できない界面活性剤のHLBについては、HLBが未知の該界面活性剤で油を乳化させ、別にHLBが既知の複数の界面活性剤(HLBの値が異なるものを使用)で同じ油を乳化させて比較する試験を行うことにより決定する。油の乳化状態をHLB未知の界面活性剤と同一としたHLB既知の界面活性剤のHLBを、HLB未知の界面活性剤のHLBとする。
【0030】
前記のような方法によりポリオレフィン系樹脂組成物からなるシートから無機充填剤を除去したシートを、テンター、ロール、オートグラフ等により延伸することにより、多孔性フィルムを製造することができる。得られる多孔性フィルムの通気性の観点から延伸倍率は2〜12倍であることが好ましく、4〜10倍であることがより好ましい。延伸温度は通常、ポリオレフィン系樹脂の軟化点以上融点以下の温度、好ましくは(融点−50)℃〜融点の範囲で行う。このような範囲の温度で延伸を行うことにより、通気性やイオン透過性に優れる多孔性フィルムを得ることができる。例えば使用するポリオレフィン樹脂組成物がポリエチレンを主体とするポリオレフィン系樹脂から構成されている場合、延伸温度は80〜130℃であることが好ましく、90〜115℃であることがさらに好ましい。また延伸後はヒートセットを行うことが好ましい。ヒートセット温度はポリオレフィン系樹脂の融点未満の温度で行うことが好ましい。
【0031】
前記したような方法で得られる本発明の多孔性フィルムは、薄肉部がなく均質であり、電池用セパレータに好適である。
【0032】
本発明では、前記したような方法で得られる多孔性フィルムの少なくとも片面に、セラミックス粉末と窒素元素を含む耐熱樹脂とを含有する塗工液を塗布して耐熱樹脂層を積層し、積層多孔性フィルムとすることができる。耐熱樹脂層は多孔性フィルムの片面に設けられていてもよく、両面に設けられていてもよい。このような積層多孔性フィルムは、膜厚の均一性や、耐熱性、強度、通気性(イオン透過性)に優れるため、非水電解液電池用セパレータ、特にリチウムイオン2次電池用セパレータとして好適に使用することができる。
【0033】
前記耐熱樹脂とは主鎖に窒素原子を含む重合体であり、特に芳香族環を含むものが耐熱性の観点から好ましい。例えば、芳香族ポリアミド(以下、「アラミド」ということがある)、芳香族ポリイミド(以下、「ポリイミド」ということがある)、芳香族ポリアミドイミドなどがあげられる。アラミドとしては、例えばメタ配向芳香族ポリアミド(以下、「メタアラミド」ということがある。)とパラ配向芳香族ポリアミド(以下、「パラアラミド」ということがある)があげられ、膜厚が均一で通気性に優れる多孔性の耐熱樹脂層を形成しやすいことからパラアラミドが好ましい。
【0034】
パラアラミドとは、パラ配向芳香族ジアミンとパラ配向芳香族ジカルボン酸ハライドの縮合重合により得られるものであり、アミド結合が芳香族環のパラ位またはそれに準じた配向位(例えば、4、4’−ビフェニレン、1、5−ナフタレン、2、6−ナフタレン等のような反対方向に同軸または平行に延びる配向位)で結合される繰り返し単位から実質的になるものである。具体的には、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)、ポリ(パラベンズアミド、ポリ(4、4’−ベンズアニリドテレフタルアミド)、ポリ(パラフェニレン−4、4’−ビフェニレンジカルボン酸アミド)、ポリ(パラフェニレン−2、6−ナフタレンジカルボン酸アミド)、ポリ(2−クロロ−パラフェニレンテレフタルアミド)、パラフェニレンテレフタルアミド/2、6−ジクロロパラフェニレンテレフタルアミド共重合体等のパラ配向型またはパラ配向型に準じた構造を有するパラアラミドが例示される。
【0035】
本発明では、パラアラミドを極性有機溶媒に溶かして塗工液として用いる。極性有機溶媒としては、例えば極性アミド系溶媒または極性尿素系溶媒であり、具体的には、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、テトラメチルウレア等があげられるが、これらに限定されるものではない。
塗工性の観点からパラアラミドは、固有粘度1.0dl/g〜2.8dl/gのパラアラミドであることが好ましく、さらには固有粘度1.7dl/g〜2.5dl/gであることが好ましい。固有粘度が1.0dl/g未満では、形成される耐熱樹脂層の強度が不十分となることがある。固有粘度が2.8dl/gを越えると安定なパラアラミド含有塗工液を得ることが困難であることがある。ここでいう固有粘度は、一度析出させたパラアラミドを溶解し、パラアラミド硫酸溶液にして測定された値であり、いわゆる分子量の指標となる値である。塗工性の観点から、塗工液中のパラアラミド濃度は0.5〜10重量%であることが好ましい。
【0036】
得られるパラアラミドの溶媒への溶解性を改善する目的で、パラアラミド重合時にアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩化物を添加することが好ましい。具体例としては、塩化リチウムまたは塩化カルシウムがあげられるが、これらに限定されるものではない。上記塩化物の重合系への添加量は、縮合重合で生成するアミド基1.0モル当たり0.5〜6.0モルの範囲が好ましく、1.0〜4.0モルの範囲がさらに好ましい。塩化物が0.5モル未満では、生成するパラアラミドの溶解性が不十分となる場合があり、6.0モルを越えると実質的に塩化物の溶媒への溶解量を越えるので好ましくない場合がある。一般には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩化物が2重量%未満では、パラアラミドの溶解性が不十分となる場合があり、10重量%を越えてはアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩化物が極性アミド系溶媒または極性尿素系溶媒等の極性有機溶媒に溶解しない場合がある。
【0037】
本発明に用いられるポリイミドとしては、芳香族の二酸無水物とジアミンの縮重合で製造される全芳香族ポリイミドが好ましい。該二酸無水物の具体例としては、ピロメリット酸二無水物、3、3’、4、4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3、3’、4、4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2、2’−ビス(3、4―ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3、3’、4、4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物などがあげられる。該ジアミンの具体例としては、オキシジアニリン、パラフェニレンジアミン、ベンゾフェノンジアミン、3、3’−メチレンヂアニリン、3、3’−ジアミノベンソフェノン、3、3’−ジアミノジフェニルスルフォン、1、5’―ナフタレンジアミンなどがあげられるが、本発明は、これらに限定されるものではない。本発明においては、溶媒に可溶なポリイミドが好適に使用できる。このようなポリイミドとしては、例えば、3、3’、4、4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物と、芳香族ジアミンとの重縮合物のポリイミドがあげられる。ポリイミドを溶解させる極性有機溶媒としては、アラミドを溶解させる溶媒として例示したもののほか、ジメチルスルホキサイド、クレゾール、およびo−クロロフェノール等が好適に使用できる。
【0038】
本発明において耐熱樹脂層を形成するために用いる塗工液は、セラミックス粉末を含有することが必要である。任意の耐熱樹脂濃度の溶液にセラミックス粉末が添加された塗工液を用いて耐熱樹脂層を形成することにより、膜厚が均一で、かつ微細な多孔質である耐熱樹脂層を形成することができる。またセラミックス粉末の添加量によって、透気度を制御することができる。本発明におけるセラミックス粉末は、積層多孔性フィルムの強度や耐熱樹脂層表面の平滑性の点より、一次粒子の平均粒子径が1.0μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましく、0.1μm以下であることがさらに好ましい。該一次粒子の平均粒子径は、電子顕微鏡により得た写真を、粒子径計測器で解析する方法により測定される。セラミックス粉末の含有量は、積層多孔性フィルム中1重量%以上95重量%以下であることが好ましく、5重量%以上50重量%以下であることがより好ましい。積層多孔性フィルム中のセラミックス粉末含有量が少なすぎると、得られる多孔性フィルムを電池用セパレータとして用いる場合、イオン透過性が十分でない場合があり、多すぎるとフィルムが脆くなり、取り扱いが難しくなる場合がある。使用するセラミックス粉末の形状は、特に限定はなく、球状でもランダムな形状でも使用できる。
【0039】
本発明におけるセラミックス粉末としては、電気絶縁性の金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物等からなるセラミックス粉末があげられ、例えばアルミナ、シリカ、二酸化チタンまたは酸化ジルコニウム等の粉末が好ましく用いられる。上記セラミックス粉末は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合したり、粒径の異なる同種あるいは異種のセラミックス粉末を任意に混合して用いることもできる。
【0040】
耐熱樹脂層の水銀圧入法で測定した平均孔径は、3μm以下が好ましく、1μm以下がさらに好ましい。平均孔径が3μmを超える場合には、積層多孔性フィルムを電池用セパレータとして用いた場合、正極や負極の主成分である炭素粉やその小片が脱落したときに、短絡しやすいなどの問題が生じる可能性がある。該耐熱樹脂層の空隙率は、30〜80体積%が好ましく、さらに好ましくは40〜70体積%である。空隙率が30体積%未満では、積層多孔性フィルムを電池用セパレータとして用いた場合、電解液の保持量が少なくなる場合があり、80体積%を超えると該耐熱樹脂層の強度が不十分となる場合がある。該耐熱樹脂層の厚みは、1〜15μmが好ましく、さらに好ましくは1〜10μmである。該厚みが1μm未満では、耐熱性についての効果が不十分である場合があり、15μmを超えると、積層多孔性フィルムを電池用セパレータとして用いた場合には、厚みが厚すぎ、高電気容量化が達成しにくい場合がある。
【0041】
多孔性フィルムに耐熱樹脂層を積層する方法としては、耐熱樹脂層を別に製造して後に多孔性フィルムと積層する方法、多孔性フィルムの少なくとも片面に、セラミックス粉末と耐熱樹脂とを含有する塗工液を塗布して耐熱樹脂層を形成する方法等が挙げられるが、生産性の面から後者の手法が好ましい。多孔性フィルムの少なくとも片面に、セラミックス粉末と耐熱樹脂とを含有する塗工液を塗布して耐熱樹脂層を形成する方法としては、具体的に以下のような工程を含む方法が挙げられる。
(a)耐熱樹脂100重量部を含む極性有機溶媒溶液に、該耐熱樹脂100重量部に対しセラミックス粉末を1〜1500重量部分散したスラリー状塗工液を調製する。
(b)該塗工液を多孔性フィルムの少なくとも片面に塗工し、塗工膜を形成する。
(c)加湿、溶媒除去あるいは耐熱樹脂を溶解しない溶媒への浸漬等の手段で、前記塗工膜から耐熱樹脂を析出させた後、必要に応じて乾燥する。
塗工液は、特開2001−316006号公報に記載の塗工装置および特開2001−23602号公報に記載の方法により連続的に塗工することが好ましい。
【0042】
本発明の方法により得られる積層多孔性フィルムは、薄肉部がなく均質である。また、耐熱性、強度、通気性(イオン透過性)にも優れるため、電池用セパレータ、特にリチウムイオン2次電池用セパレータとして好適に使用することができる。
【実施例】
【0043】
(1)ガーレー値
フィルムのガーレー値(秒/100cc)は、JIS P8117に準じて、B型デンソメーター(東洋精機製)にて測定した。測定はフィルム1m2あたり10箇所について行った。
(2)膜厚
JISK7130に準拠してミツトヨ製VL-50Aにて測定を行った。測定はフィルム1m2あたり10箇所について行った。
【0044】
(3)GPCによる分子鎖長および分子量の測定
測定装置としてウォーターズ社製ゲルクロマトグラフAlliance GPC2000型を使用した。その他の条件を以下に示す。
カラム :東ソー社製TSKgel GMHHR−H(S)HT 30cm×2、TSKgel GMH6 −HTL 30cm×2
移動相 :o−ジクロロベンゼン
検出器 :示差屈折計
流 速 :1.0mL/分
カラム温度:140℃
注入量 :500μL
試料30mgをo−ジクロロベンゼン20mLに145℃で完全に溶解した後、その溶液を孔径が0.45μmの焼結フィルターでろ過し、そのろ液を供給液とした。なお、較正曲線は、分子量既知の16種の標準ポリスチレンを用いて作製した。
【0045】
(4)無機充填剤中の酸不溶部の含有量測定
無機充填剤100gを精秤後、メタノール300mlを加えて撹拌し、無機充填剤を分散させた。さらに攪拌しながら塩酸(和光純薬工業(株) 特級試薬)300mlをゆっくり投入し、無機充填剤を溶解させた。泡が発生しなくなったことを確認し、該溶液を親水性PTFEフィルター(孔径10μm;日本ミリポア社製JCW4700)を用いて真空ろ過した。真空ろ過しながらフィルター上に残った不溶部にメタノール50ml、塩酸50mlを加え未溶解の無機充填剤を溶解させた。この操作を3回繰り返した。続いて、フィルター上に残った無機充填剤の表面処理剤を溶解するためジエチルエーテルを50mlずつ、3回加えた。最後にアセトン50mlを加え、アセトンが無くなるまでろ過した。この一連の操作は、ろ過器壁面に付着した未溶解の無機充填剤を洗いながら実施した。その後、PTFEフィルターごと80℃オーブンにて3〜4時間真空乾燥した後、デシケーター中で常温まで冷却した。その後フィルターを含めた乾燥後の重量を測定した。酸不溶部の含有量は下式により求めた。
酸不溶部含有量(ppm)=(乾燥後の重量―フィルターの重量)/採取した無機充填剤の精秤重量×106
(5)無機充填剤の平均粒子径
走査電子顕微鏡SEM(日立製 S−4200)により30000倍で観測し、粒子100個について直径を測定し、その平均を平均粒子径(μm)とした。
(6)突刺強度
多孔性フィルムを12mmΦのワッシャで固定し、ピンを200mm/minで突き刺したときの最大応力(gf)を該フィルムの突刺強度とした。ピンは、ピン径1mmΦ、先端0.5Rのものを使用した。
(7)多孔性フィルムに存在するピンホールおよび薄肉部の評価
得られた多孔性フィルムについて、目視によりフィルム1m2あたりのピンホールおよび薄肉部の数を測定した。具体的には、多孔性フィルムの一面から蛍光灯の光をあて、他方の面からフィルムを観察し、貫通孔をピンホールとし、貫通はしていないものの、フィルムの他の部分に比べて透過光が多い部分を薄肉部と判断した。
【0046】
[実施例1]
市販の沈降炭酸カルシウム(白石カルシウム(株)製 Vigot−10)を、ホソカワミクロン(株)製ターボフレックス100ATPを用いて分級した。分級条件は、ローター回転数11000ppm、風量4m2/分(理論分級点2μm)、原料供給量15kg/hとした。分級した結果、得られた微粉の回収率は85重量%であり、回収された無機充填剤に含まれる酸不溶部の量は100ppm(うち、カーボン8%)、平均粒子径は0.14μmであった。
ポリエチレン系樹脂100重量部(ハイゼックスミリオン340M、三井化学(株)製、重量平均分子鎖長17000nm、重量平均分子量300万、融点136℃)と、該ポリエチレン系樹脂100重量部に対し、分級して得られた微粉の炭酸カルシウム256重量部およびオレフィン系ワックス粉末 44重量部(ハイワックス110P、三井化学(株)製、重量平均分子量1000、融点110℃)をヘンシェルミキサーで混合し、その後2軸混練機にて230℃で混練してポリオレフィン系樹脂組成物を得た。該ポリオレフィン系樹脂組成物を、表面温度が150℃であり、同周速度で回転する一対のロールで圧延し、膜厚約40μmの単層シートを作製した。次に得られた前記単層シート同士を、表面温度が150℃の一対のロールで圧着して多層のポリオレフィン系樹脂組成物からなるシートを作製した。該多層シートの厚みは71μmであった。
次に、図1に示す装置を用いて多層シート中の無機充填剤を除去した。多層シートをロールにより搬送し塩酸水溶液(塩酸2〜4mol/L、非イオン系界面活性剤0.1〜0.5重量%)の入ったaの浴槽に浸漬して無機充填剤を除去し、続いて該シートを水酸化ナトリウム水溶液(0.1〜2mol/L)の入ったbの浴槽に浸漬し、中和した。さらに該シートをcの浴槽で水洗浄し、最後に50℃に加熱したロールに接触させて乾燥して巻き取った。その後、該シートをテンターにて8倍に延伸した(延伸温度100℃)。得られた多孔性フィルムの物性を表1に示す。
【0047】
[実施例2]
市販の沈降炭酸カルシウム(白石カルシウム(株)製 StarVigot−15A)を用いた以外は実施例1と同様にして分級した。分級した結果得られた微粉の回収率は90重量%であり、回収された無機充填剤に含まれる酸不溶部の量は70ppm、平均粒子径は0.24μmであった。
このようにして分級して得られた無機充填剤を用いた以外は実施例1と同様にして、ポリオレフィン系樹脂組成物、該ポリオレフィン系樹脂組成物からなる多層シート(65μm)を得、さらに該シートから無機充填剤を除去した後延伸して多孔性フィルムを得た。得られた多孔性フィルムの物性を表1に示す。
【0048】
[比較例1]
市販の沈降炭酸カルシウム(白石カルシウム(株)製 Vigot−10、酸不溶部の含有量:700ppm(うち、カーボン2.4%)、平均粒子径:0.14μm)を分級せずに用いた以外は実施例1と同様にして、ポリオレフィン系樹脂組成物、該ポリオレフィン系樹脂組成物からなる多層シート(81μm)を得、さらに該シートから無機充填剤を除去した後延伸して多孔性フィルムを得た。得られた多孔性フィルムの物性を表1に示す。
【0049】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施例において、ポリオレフィン系樹脂組成物からなるシートから無機充填剤を除去する際に用いた装置の模式図である。
【符号の説明】
【0051】
a:酸水溶液槽
b:アルカリ水溶液槽
c:水槽
d:ガイドロール
e:乾燥ドラム(加熱ドラム)
f:巻取機
g:ポリオレフィン系樹脂組成物からなるシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂100重量部と、該ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し無機充填剤を100〜400重量部含有するポリオレフィン系樹脂組成物からなるシートであって、前記無機充填剤の平均粒子径が0.02〜1μmであり、かつ該無機充填剤中に含有される酸不溶部が200ppm以下であるポリオレフィン系樹脂組成物からなるシート。
【請求項2】
前記ポリオレフィン系樹脂組成物中のポリオレフィン系樹脂が、分子鎖長が2850nm以上のポリオレフィンを10重量%以上含むポリオレフィン系樹脂である請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂組成物からなるシート。
【請求項3】
前記ポリオレフィン系樹脂組成物が、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、重量平均分子量が700〜6000のオレフィン系ワックスを5〜100重量部含むポリオレフィン系樹脂組成物である請求項1または2に記載のポリオレフィン系樹脂組成物からなるシート。
【請求項4】
前記ポリオレフィン系樹脂組成物中の無機充填剤が、分級点を0.5〜50μmとして風力分級することにより得られる炭酸カルシウムである請求項1〜3のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂組成物からなるシート。
【請求項5】
前記ポリオレフィン系樹脂組成物中の無機充填剤が沈降炭酸カルシウムである請求項4に記載のポリオレフィン系樹脂組成物からなるシート。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂組成物からなるシートから無機充填剤を除去した後、延伸して得られる多孔性フィルム。
【請求項7】
請求項6に記載の多孔性フィルムに、セラミックス粉末と窒素元素を含む耐熱樹脂とを含む耐熱樹脂層が積層されてなる積層多孔性フィルム。
【請求項8】
電池用セパレータである請求項6に記載の多孔性フィルム。
【請求項9】
電池用セパレータである請求項7に記載の積層多孔性フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2006−307163(P2006−307163A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−46355(P2006−46355)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】