説明

ポリオレフィン系樹脂組成物

【課題】充分な安定化効果とコストパフォーマンスに優れたポリオレフィン系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記一般式(I)、


(式中、Rは分岐および/またはシクロアルキル基を有してもよい炭素原子数1〜30のアルキル基等を表す。)で表されるフェノール系酸化防止剤を有機アルミニウム化合物でマスキング処理したもの、および、リン系酸化防止剤を、オレフィン系モノマーの重合前又は重合中に、触媒系又は重合系に添加して重合したポリオレフィン系樹脂を含有するポリオレフィン系樹脂組成物において、オレフィン系モノマー100質量部に対し、一般式(I)で表されるフェノール系酸化防止剤を0.001〜0.5質量部、リン系酸化防止剤を0.001〜3質量部添加してなるポリオレフィン系樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂組成物に関し、詳しくは、特定のフェノール系酸化防止剤を有機アルミニウム化合物でマスキング処理したもの、および、リン系酸化防止剤を、オレフィン系モノマーの重合前又は重合中に、触媒系又は重合系に添加して重合することにより安定化されたポリオレフィン系樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン等のポリオレフィンは、熱や光に対する安定性が乏しく、高温となる成形加工や熱や光に曝される使用段階で容易に酸化/劣化し、プラスチック製品として必要な寿命が得られない問題がある。このため、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ヒドロキシルアミン化合物、ヒンダードアミン化合物、紫外線吸収剤、酸捕捉剤などの安定剤を添加して、酸化/劣化を防止することが一般的に行われている。このように、用途に応じて種々の安定剤を選定し、配合するなどして実用化が進められている。また、樹脂の成形加工時に発生するゲルが最終製品の外観の毀損や、接着性等の機能上問題になることがあり、その発生抑制も求められている。
【0003】
ポリオレフィンに安定剤を添加する方法としては、オレフィン系モノマーを重合したポリオレフィン系樹脂と安定剤を混合して、押出機等の加工成形機により溶融混練して、ポリオレフィン系樹脂中に安定剤を分散させる方法と、オレフィン系モノマーの重合前又は重合中に、安定剤を添加する方法が挙げられる。
【0004】
しかしながら、ポリオレフィン系樹脂と安定剤を溶融混練により配合する方法は、ポリオレフィン系樹脂中における安定剤自身の分散不良に対応するために、必要以上に安定剤を添加しなければならないという問題がある。
【0005】
一方、オレフィン系モノマーの重合前又は重合中に安定剤を添加する方法としては、例えば、特許文献1には、リン系酸化防止剤の存在下にα−オレフィンの重合を行う製法が開示されている。リン系酸化防止剤を用いないで、α−オレフィンを重合して得られた重合物に酸化防止剤を混合したものと比べると、リン系酸化防止剤の存在下にα−オレフィンを重合したものの方が優れた安定化効果を得られることが示されている。
【0006】
また、特許文献2には、特定のリン系酸化防止剤を重合時に用いることでオレフィンの重合を阻害せずに、水との接触における保色性に優れたポリマーが得られることが開示されている。
【0007】
さらに、特許文献3において、ポリオレフィンに対して汎用的に用いられる安定剤であるテトラキス(3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル)メタンなどのエステル結合を有するフェノール系酸化防止剤が、重合触媒の触媒活性を低下させるため、重合前の添加には適していないことが開示されている。
【0008】
さらにまた、特許文献4、特許文献5には、エチレン性不飽和結合を有するモノマーの重合前又は重合中に、有機アルミニウム化合物でマスキング処理したフェノール系酸化防止剤を添加して、安定化ポリマーを製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭63−92613号公報
【特許文献2】特開平8−208731号公報
【特許文献3】特開平5−271355号公報
【特許文献4】特開2006−52241号公報
【特許文献5】特開2006−282985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように、オレフィン系モノマーの重合前又は重合中の安定剤の添加は、重合後の溶融混練による安定剤の配合行程を省略できる利点が得られるが、重合触媒の触媒活性を低下させたり、安定剤と触媒金属との相互作用によってポリオレフィン系樹脂を着色させたりするため、重合条件の選定、管理が煩雑になる等の問題があった。特許文献4、特許文献5においては、フェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤の配合量およびその効果については具体的な検討がなされておらず、また、ポリオレフィン系樹脂を成形加工する際に発生するゲルを抑制することについてはなんら記載もなかった。
【0011】
さらに、近年の世界的な経済不況に付随するコスト削減の圧力から、より高いコストパフォーマンスを示しながら、安定化効果を示すポリオレフィンが求められている。そこで、本発明の目的は、安定化効果とコストパフォーマンスに優れたポリオレフィン系樹脂組成物を提供することにある。また、本発明の他の目的は、ゲルの発生を抑制し、安定化されたポリオレフィン系樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、オレフィン系モノマーの重合時に、特定のフェノール系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤を組合せて配合することによって安定剤の必要量を抑制し、また、成形加工時に発生するゲルを抑制し、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、下記一般式(I)、

(式中、Rは分岐および/またはシクロアルキル基を有してもよい炭素原子数1〜30のアルキル基または炭素原子数2〜30のアルキレン基、置換基を有してもよい炭素原子数3〜12のシクロアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数6〜18のアリール基を表す)で表されるフェノール系酸化防止剤を有機アルミニウム化合物でマスキング処理したもの、および、リン系酸化防止剤を、オレフィン系モノマーの重合前又は重合中に、触媒系又は重合系に添加して重合したポリオレフィン系樹脂を含有するポリオレフィン系樹脂組成物において、
前記オレフィン系モノマー100質量部に対し、前記一般式(I)で表されるフェノール系酸化防止剤を0.001〜0.5質量部、リン系酸化防止剤を0.001〜3質量部添加してなることを特徴とするものである。
【0014】
本発明においては、前記オレフィン系モノマーはエチレンであることが好ましく、また、前記一般式(I)中のRは、分岐を有してもよい炭素原子数12〜24のアルキル基であることが好ましく、さらに、前記リン系酸化防止剤は、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイトであることが好ましく、さらにまた、前記有機アルミニウム化合物は、トリアルキルアルミニウムであることが好ましい。また、本発明においては、前記オレフィン系モノマーの重合触媒は、遷移金属触媒であることが好ましく、さらに、前記オレフィン系モノマーの重合触媒は、チーグラー・ナッタ型触媒であることが好ましい。
【0015】
また、本発明のポリエレフィン系樹脂組成物は、単軸押出機を用いて、JIS K 6921−2に準じ280℃で押出加工を行った後のポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量が、押出加工をする前のポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量の50%以上であることが好ましく、さらに、プレス機を用いて、230℃、荷重11MPaの条件で5分間プレスしてフィルム成形したとき、該フィルムの1cmあたりのゲルの発生箇所数が2個以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、安定剤の必要量が大幅に削減されて、安定化効果とコストパフォーマンスに優れたポリオレフィン系樹脂組成物を提供することができる。また、ゲルの発生を抑制し、安定化されたポリオレフィン系樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物について詳細に説明する。
本発明に用いられるフェノール系酸化防止剤は、下記一般式(I)で表される化合物であり、オレフィン系モノマー100質量部に対して、0.001〜0.5質量部、好ましくは、0.005〜0.3質量部となるように用いられる。

(式中、Rは分岐および/またはシクロアルキル基を有してもよい炭素原子数1〜30のアルキル基または炭素原子数2〜30のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素原子数3〜12のシクロアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数6〜18のアリール基を表す)
【0018】
上記一般式(I)中のRで表される、分岐を有してもよい炭素原子数1〜30のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、第三ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、第三オクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等が挙げられるが、本発明においては、炭素原子数が12〜24であるものが特に好ましい。アルキル基の炭素原子数が12より少ないフェノール系酸化防止剤は揮散しやすくなる場合があり、アルキル基の炭素原子数が24を超えると、フェノール系酸化防止剤の分子量に対するフェノールの割合が低下して、安定化効果が低下する場合がある。
【0019】
また、これらアルキル基は、酸素原子、硫黄原子、又は、下記のアリール基で中断されていてもよく、アルキル基中の水素原子が、例えば、ヒドロキシ基、シアノ基、アルケニル基、アルケニルオキシ基等の鎖状脂肪族基、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、2H−ピラン、4H−ピラン、フェニル、ビフェニル、トリフェニル、ナフタレン、アントラセン、ピロリジン、ピリンジン、インドリジン、インドール、イソインドール、インダゾール、プリン、キノリジン、キノリン、イソキノリン、又はシクロアルキル基等の環状脂肪族基で置換されていてもよい。また、これらの中断又は置換は組み合わされていてもよい。
【0020】
上記一般式(I)中のRで表わされる炭素数2〜30のアルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、オレイル基等上記アルキル基に対応するアルケニル基が挙げられる。なお、直鎖状および分枝状のどちらでもよく、二重結合の位置も特に制限されるものではない。
【0021】
上記アルケニル基は、酸素原子、硫黄原子、又は、下記のアリール基で中断されていてもよく、アルケニル基中の水素原子が、ヒドロキシ基、シアノ基、アルケニル基、アルケニルオキシ基等の鎖状脂肪族基、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、2H−ピラン、4H−ピラン、フェニル、ビフェニル、トリフェニル、ナフタレン、アントラセン、ピロリジン、ピリンジン、インドリジン、インドール、イソインドール、インダゾール、プリン、キノリジン、キノリン、イソキノリン、又はシクロアルキル基等の環状脂肪族基で置換されていてもよい。
【0022】
上記一般式(I)中のRで表される、置換基を有してもよい炭素原子数3〜12のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等が挙げられ、シクロアルキル基中の水素原子が、アルキル基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、ヒドロキシ基、又はシアノ基で置換されていてもよく、該アルキル基は酸素原子、又は硫黄原子で中断されていてもよい。
【0023】
上記一般式(I)中のRで表される、置換基を有してもよい炭素原子数6〜18のアリール基としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、ブチルフェニル基、オクチルフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、3,4,5−トリメトキシフェニル基、4−第三ブチルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ベンジル−フェニルエチル基、1−フェニル−1−メチルエチル基等が挙げられる。また、アリール基中の水素原子が、アルキル基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、ヒドロキシ基、又はシアノ基で置換されていてもよく、該アルキル基は酸素原子、又は硫黄原子で中断されていてもよい。
【0024】
上記一般式(I)で表されるフェノール系酸化防止剤の具体的な構造としては、例えば、下記化合物No.1〜No.16が挙げられる。ただし、本発明は以下の化合物により制限を受けるものではない。

【0025】
本発明において、有機アルミニウムでマスキング処理したフェノール系酸化防止剤とは、フェノール系酸化防止剤のフェノール性ヒドロキシル基の水素を、有機アルミニウム化合物で置換したものであり、水、アルコール、酸等の水素供与性化合物で処理することによりフェノールに再生可能となるようにマスキング処理が施されたフェノール系酸化防止剤を表す。これらの中でも、重合反応において触媒の失活処理に用いられる失活剤と反応してフェノールが再生できるものが好ましく、オレフィン系樹脂の重合触媒による重合系に通常存在し、重合を阻害しない有機アルミニウム化合物とフェノール系酸化防止剤との反応により得られるフェノラート(塩)が特に好ましい。
【0026】
上記有機アルミニウム化合物としては、例えば、アルキルアルミニウム、アルキルアルミニウムハイドライド等が使用できるが、アルキルアルミニウムが好ましく、特に好ましくは、トリアルキルアルミニウムであり、具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−へキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム等が挙げられる。前記有機アルミニウム化合物はいずれも混合物として使用することができる。また、アルキルアルミニウム又はアルキルアルミニウムハイドライドと水との反応によって得られるアルミノキサンも同様に使用することができる。
【0027】
上記フェノール系酸化防止剤のマスキングは、不活性な溶媒中でトリアルキルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物とフェノール系酸化防止剤とを混合、撹拌するだけでよい。この方法による反応において、副生した化合物が重合物へ影響しない場合は、そのまま用いることができるが、副生した化合物が重合を阻害する場合は、該化合物を減圧留去等により取り除いてから用いることが好ましい。
【0028】
上記不活性な溶媒としては脂肪族及び芳香族炭化水素化合物が挙げられる。脂肪族炭化水素化合物としては、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタンおよび精製ケロシン等の飽和炭化水素化合物、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の環状飽和炭化水素化合物等が挙げられ、芳香族炭化水素化合物としては、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼンおよびキシレンなどの化合物が挙げられる。これらの化合物のうち、n−ヘキサン、又は、n−ヘプタンが好ましく用いられる。不活性な溶媒中のトリアルキルアルミニウム塩の濃度は、0.001〜0.5mol/Lの範囲が好ましく、特に好ましくは、0.01〜0.1mol/Lである。
【0029】
本発明に用いられるリン系酸化防止剤は、通常、一般にオレフィン系樹脂の酸化防止剤として使用されるものであればよく、例えば、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ第三ブチル−5−メチルフェニル)ホスファイト、トリス〔2−第三ブチル−4−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニルチオ)−5−メチルフェニル〕ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6−トリ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−n−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,2’−メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−オクタデシルホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)フルオロホスファイト、トリス(2−〔(2,4,8,10−テトラキス第三ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ〕エチル)アミン、2−エチル−2−ブチルプロピレングリコールと2,4,6−トリ第三ブチルフェノールのホスファイトなどがあげられ、特に、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイトが好ましい。このようなリン系酸化防止剤は、オレフィン系モノマーを重合して得られるポリオレフィン系樹脂組成物において、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、0.001〜3質量部、好ましくは0.001〜0.5質量部、より好ましくは0.005〜0.5質量部が用いられる。
【0030】
本発明におけるリン系酸化防止剤の添加方法は、特に限定されないが、粉末状または液状の単品で添加すると重合装置への供給が困難であることや得られるポリオレフィン系樹脂中での分散が不均一に成りやすいことからスラリーで添加することが好ましい。スラリー化するには、重合に影響しない不活性な溶媒に上記のリン系酸化防止剤を加え、撹拌することで容易にスラリーが得られる。
【0031】
本発明に用いられるオレフィン系モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロアルカン、スチレンあるいはこれらの誘導体等が挙げられる。
【0032】
本発明に用いられる重合触媒としては、周期表第3〜11族の遷移金属(例えば、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、鉄、ニッケル、鉛、白金、イットリウム、サマリウム等)の化合物があり、代表的なものとしては、チタン含有固体状遷移金属成分と有機金属成分からなるチーグラー・ナッタ型触媒、少なくとも一個のシクロペンタジエニル骨格を有する周期表第4族〜第6族の遷移金属化合物と助触媒成分からなるメタロセン触媒が挙げられる。
【0033】
オレフィン系モノマーの重合は、窒素等の不活性ガス雰囲気中にて行う必要があるが、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の不活性な溶媒中で行ってもよい。また、重合を阻害しない範囲で、活性水素化合物、微粒子状担体、有機アルミニウム化合物、イオン交換性層状化合物、無機珪酸塩を添加してもよい。
【0034】
オレフィン系モノマーの重合は、スラリー重合法、気相重合法、バルク重合法、溶液重合法、若しくはこれらを組み合わせた重合法、一段重合法又は多段重合法によって、オレフィン系モノマーを重合して、ポリオレフィン単独重合体を製造する方法や、プロピレンと、炭素原子数2〜12のオレフィン単位からなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィン(プロピレンを除く)単位を共重合して共重合体を製造する方法や、エチレンと、炭素原子数2〜12のオレフィン単位からなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィン(エチレンを除く)単位を共重合して共重合体を製造する方法で製造できる。また、バッチ式、連続式の区別なく製造することができる。重合の最後に、例えば水(蒸気)又はアルコールを加えることにより、触媒を分解することができる。
【0035】
本発明の安定化されたポリオレフィン系樹脂組成物は、必要に応じてさらに他の通常の添加剤を配合することができる。他の添加剤の配合方法としては、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物に他の添加剤を、目的に応じた配合量で混合して、押出機などの成形加工機で溶融混練して造粒、成形する方法が挙げられる。他の添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン化合物、重金属不活性化剤、造核剤、難燃剤、金属石鹸、ハイドロタルサイト、充填剤、滑剤、帯電防止剤、顔料、染料、可塑剤などが挙げられ、本発明に用いるフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤やその他のフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤をポリオレフィン系樹脂組成物に追加して成形加工してもよい。
【0036】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−第三オクチル−6−ベンゾトリアゾリルフェノール)、2−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾールのポリエチレングリコールエステル、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−アクリロイルオキシエチル)−5−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−第三ブチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−第三オクチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−第三ブチルフェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−第三アミル−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−(3−メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシメチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕ベンゾトリアゾール等の2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシロキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−C12〜13混合アルコキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル〕−4,6−ビス(4−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,4−ジヒドロキシ−3−アリルフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ヘキシロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン等の2−(2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ジアリール−1,3,5−トリアジン類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第三ブチルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、オクチル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ドデシル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、テトラデシル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ヘキサデシル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、オクタデシル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ベヘニル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート等のベンゾエート類;2−エチル−2’−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4’−ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類;各種の金属塩、又は金属キレート、特にニッケル、クロムの塩、又はキレート類等が挙げられる。上記紫外線吸収剤の使用量は、前記ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、0.001〜5質量部、より好ましくは0.005〜0.5質量部である。
【0037】
上記ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,4,4−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノ−ル/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−第三オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8−12−テトラアザドデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕アミノウンデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕アミノウンデカン、ビス{4−(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル)ピペリジル}デカンジオナート、ビス{4−(2,2,6,6−テトラメチル−1−オクチルオキシ)ピペリジル}デカンジオナート、ビス{4−(2,2,6,6−テトラメチル−1−ウンデシルオキシ)ピペリジル}カーボナート、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製TINUVIN NOR 371等のヒンダードアミン化合物が挙げられる。上記ヒンダードアミン系光安定剤の使用量は、前記ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、0.001〜5質量部、より好ましくは0.005〜0.5質量部である。
【0038】
上記造核剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、4−第三ブチル安息香酸アルミニウム塩、アジピン酸ナトリウム及び2ナトリウムビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシレート等のカルボン酸金属塩、ナトリウムビス(4−第三ブチルフェニル)ホスフェート、ナトリウム−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスフェート及びリチウム−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスフェート等のリン酸エステル金属塩、ジベンジリデンソルビトール、ビス(メチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(p−エチルベンジリデン)ソルビトール、及びビス(ジメチルベンジリデン)ソルビトール等の多価アルコール誘導体、N,N’,N”−トリス[2−メチルシクロヘキシル]―1,2,3−プロパントリカルボキサミド、N,N’,N”−トリシクロヘキシルー1,3,5−ベンゼントリカルボキサミド、N,N’−ジシクロヘキシル−ナフタレンジカルボキサミド、1,3,5−トリ(ジメチルイソプロポイルアミノ)ベンゼン等のアミド化合物等が挙げられる。上記造核剤の使用量は、前記ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、0.001〜10質量部、より好ましくは0.005〜5質量部である。
【0039】
上記難燃剤としては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジル−2,6−キシレニルホスフェート及びレゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)等の芳香族リン酸エステル、フェニルホスホン酸ジビニル、フェニルホスホン酸ジアリル及びフェニルホスホン酸(1−ブテニル)等のホスホン酸エステル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、ジフェニルホスフィン酸メチル、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド誘導体等のホスフィン酸エステル、ビス(2−アリルフェノキシ)ホスファゼン、ジクレジルホスファゼン等のホスファゼン化合物、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸アンモニウム、リン含有ビニルベンジル化合物及び赤リン等のリン系難燃剤、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビステトラブロモフタルイミド、1,2−ジブロモ−4−(1,2−ジブロモエチル)シクロヘキサン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリスチレン及び2,4,6−トリス(トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン、トリブロモフェニルマレイミド、トリブロモフェニルアクリレート、トリブロモフェニルメタクリレート、テトラブロモビスフェノールA型ジメタクリレート、ペンタブロモベンジルアクリレート、及び、臭素化スチレン等の臭素系難燃剤等が挙げられる。上記難燃剤の使用量は、前記ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、1〜70質量部、より好ましくは、10〜30質量部である。
【0040】
上記その他のフェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、トリデシル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジルチオアセテート、チオジエチレンビス[(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,4’−チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2−オクチルチオ−4,6−ジ(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)−s−トリアジン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、ビス[3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、4,4’−ブチリデンビス(2,6−ジ第三ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−第三ブチル−3−メチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、ビス[2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェニル]テレフタレート、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリス[(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ第三ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−アクリロイルオキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、3,9−ビス[2−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルヒドロシンナモイルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリエチレングリコールビス[β−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]等が挙げられる。上記その他のフェノール系酸化防止剤の使用量は、前記ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、0.001〜10質量部、より好ましくは0.01〜5質量部である。
【0041】
本発明により得られるポリオレフィン系樹脂組成物の用途は特に限定されず、公知の押出成形、射出成形、中空成形、ブロー、フィルム、シート等に成形することができ、自動車部品、建築資材、農業用資材、包装用資材、日用雑貨、玩具などに用いることができる。この際に用いられるポリオレフィン系樹脂組成物は、単軸押出機を用いて、JIS K 6921−2に準じ280℃で押出加工を行った後のポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量が、押出加工をする前のポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量の50%以上であるものを好適に用いることができる。また、プレス機を用いて、230℃、荷重11MPaの条件で5分間プレスしてフィルム成形したとき、フィルムの1cmあたりのゲルの発生箇所数が2個以下であるものも好適に用いることができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例、比較例および参考例をもって本発明を更に詳しく説明する。しかしながら、本発明はこれらの実施例等によって制限を受けるものではない。
【0043】
(実施例1)
下記の手順([1]触媒スラリーの調製、[2]フェノキシド溶液の調製、[3]ホスファイト溶液の調製、[4]オレフィン系モノマーの重合)に従い、ポリオレフィン系樹脂組成物を得た。
【0044】
[1]触媒スラリーの調製
無水塩化マグネシウム4.76g(50mmol)、デカン25mL及び2−エチルへキシルアルコール23.4mL(150mmol)を加えて、130℃で2時間加熱反応を行い均一溶液とした後、さらに無水フタル酸1.11g(7.5mmol)を添加し、130℃を維持しながら1時間撹拌して、無水フタル酸を該均一溶液に溶解させた。次に、均一溶液を室温に冷却し、−20℃に保持された四塩化チタン200mL(1.8mol)中に1時間にわたって全量滴下装入した。装入終了後、4時間かけて110℃まで昇温した。110℃に到達後、ジイソブチルフタレート2.68mL(12.5mmol)を加え、110℃を維持しながら2時間撹拌して反応させた。反応終了後、熱時ろ過にて残渣を採取し、該残渣を200mLの四塩化チタンにて再懸濁させた後、再び110℃まで加熱して2時間反応させた。反応終了後、再び熱時ろ過で残渣を採取し、110℃のデカン及びヘキサンにて、洗液中に遊離しているチタン化合物が検出されなくなるまで充分に洗浄して固体チタン触媒成分を得た。この固体チタン触媒成分の一部を乾燥して触媒組成を分析したところ、チタン3.1質量%、塩素56.0質量%、マグネシウム17.0質量%及びイソブチルフタレート20.9質量%であった。以上の製造方法にて合成された固体チタン触媒成分に、ヘプタンスラリーとして5mg/mLとなるようにヘプタンを加えて触媒スラリーを調製した。
【0045】
[2]フェノキシド溶液の調製
窒素置換したフラスコに、3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−N−オクタデシルプロピオンアミド(1.03g,1.94mmol)及び、乾燥ヘプタン65.5mLを加えた。撹拌しながら、トリエチルアルミニウム/ヘプタン溶液3.0mL(1mol/L)を滴下し、フェノキシド溶液を調製した。
【0046】
[3]ホスファイト溶液の調製
窒素置換したフラスコに、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト0.9g(1.4mmol)及び乾燥ヘプタン30mLを加えて、ホスファイト溶液を調製した。
【0047】
[4]オレフィン系モノマーの重合
窒素置換したオートクレーブに、乾燥ヘプタン600mL及びトリエチルアルミニウム/ヘプタン溶液2.2mL(1mol/L)を加えた。さらに、上記[2]で調製したフェノキシド溶液1.4mL、上記[3]で調製したホスファイト溶液0.7mL、乾燥ヘプタン100mLにジシクロペンチルジメトキシシラン1.2g(5.3mmol)を撹拌して溶解させたヘプタン溶液4.1mL、及び上記[1]で調製した触媒スラリー4.0mLを順次加えた。オートクレーブ内をプロピレン雰囲気に置換し、水素(0.34L;標準状態換算)を入れ、プロピレン圧0.098MPa(G)、50℃で5分間プレ重合(600rpm)を行った。その後、プロピレン圧0.59MPa(G)、70℃で1時間重合反応を行った。気体をパージ後、反応液にエタノール5mLを加え5分間撹拌して重合反応を停止させた後、減圧脱溶媒を行い、次いで、真空中、40℃で10時間乾燥して、ポリオレフィン系樹脂組成物を得た。
【0048】
(比較例1)
上記実施例1の[4]オレフィン系モノマーの重合において、ホスファイト溶液0.7mLを用いなかった以外は、実施例1の[4]と同様に実施して、ポリオレフィン系樹脂を重合した。次に、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイトが100ppmになるように、ポリオレフィン系樹脂と混合し、単軸押出機(装置:株式会社東洋精機製作所製プラストミルμ、押出温度:230℃、スクリュー回転速度:50rpm)で造粒してペレットを得た。
【0049】
(参考例1)
上記実施例1の[4]オレフィン系モノマーの重合において、フェノキシド溶液1.4mL及びホスファイト溶液0.7mLを用いなかった以外は、実施例1の[4]と同様に実施して、ポリオレフィン系樹脂組成物を重合した。次に、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト及びテトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ第三ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタンを各々500ppmずつ、得られたポリオレフィン系樹脂と混合し、単軸押出機(装置:株式会社東洋精機製作所製プラストミルμ、押出温度:230℃、スクリュー回転速度:50rpm)で造粒してペレットを得た。
【0050】
(安定化効果の評価)
上記の方法で得られたポリオレフィン系樹脂組成物またはペレットを単軸押出機(装置:株式会社東洋精機製作所製プラストミルμ、押出温度:280℃、スクリュー回転速度:50rpm)による造粒を5回繰返して実施し、造粒の回数毎にポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量を測定して、ポリオレフィン系樹脂の安定化効果を評価した。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(装置:ウォーターズ社製GPC2000型、カラム:ウォーターズ社製Styragel HT6E 2本とStyragel HT2 1本、測定温度:135℃、溶媒:オルトジクロロベンゼン、濃度:6mg/10g)により測定した。尚、比較例1及び参考例1のポリオレフィン系樹脂組成物は、すでに1回押出加工をしているので、実施例1のポリオレフィン樹脂組成物と単軸押出機による押出回数が同数となるように評価した。
【0051】
【表1】

1)化合物1:3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−N−オクタデシルプロピオンアミド
2)化合物2:トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト
3)比較化合物:テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ第三ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン
【0052】
比較例1より、フェノール系酸化防止剤<3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−N−オクタデシルプロピオンアミド>を有機アルミニウム化合物でマスキング処理したものを、オレフィン系モノマーの重合時に添加し、リン系酸化防止剤を<トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト>をオレフィン系モノマーの重合後に添加した場合、満足できるポリオレフィン系樹脂組成物の安定化効果は得られなかった。それに対して、有機アルミニウム化合物でマスキング処理したフェノール系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤をオレフィン系モノマーの重合時に添加した場合は、優れた安定化効果が得られた。
【0053】
以上より、特定のフェノール系酸化防止剤を有機アルミニウム化合物でマスキング処理したものとリン系酸化防止剤を組み合わせて、オレフィン系モノマーの重合前又は重合中に添加することにより、安定剤の必要量が大幅に削減されて、安定化効果とコストパフォーマンスに優れたポリオレフィン系樹脂組成物が得られることを確認できた。
【0054】
(実施例2)
下記の手順([1]触媒スラリーの調製、[2]フェノキシド溶液の調製、[3]ホスファイト溶液の調製、[4]エチレン重合)に従い、ポリエチレン樹脂組成物を得た。
【0055】
[1]触媒スラリーの調製
窒素置換したフラスコに、ジエトキシマグネシウム31.2g(273mmol)、トリブトキシチタニウムクロライド41.2g(136mmol)及びn−ブタノール10.1gを加えて、150℃で6時間加熱反応を行い均一溶液とした後、室温に冷却して、n−ヘプタン200mLを加えた。次いで、40℃に昇温して、エチルアルミニウムセスキクロライド20.6g(82.6mmol)を滴下し、1時間撹拌して反応させた。
反応終了後、n−ヘプタンにて、洗浄液中に遊離しているチタン化合物が検出されなくなるまで十分に洗浄して、固体チタン触媒成分(チーグラー触媒)を得た。以上の製造方法にて合成した固体チタン触媒成分に、ヘプタンスラリーとして、チタン含有量が0.16mg/mLとなるようにn−ヘプタンを加えて触媒スラリーを調製した。
【0056】
[2]フェノキシド溶液の調製
窒素置換したフラスコに、3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−N−オクタデシルプロピオンアミド1.03g(1.94mmol)及び、乾燥ヘプタン65.5mLを加え、撹拌しながら、トリエチルアルミニウム/n−ヘプタン溶液3.0mL(1mol/L)を滴下し、フェノキシド溶液を調製した。
【0057】
[3]ホスファイト溶液の調製
窒素置換したフラスコに、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト0.50g(0.77mmol)及び乾燥ヘプタン20mLを加えて、撹拌し、ホスファイト溶液を調製した。
【0058】
[4]エチレンの重合
窒素置換したオートクレーブに、乾燥ヘプタン600mL及びトリエチルアルミニウム/n−ヘプタン溶液2.94mL(1mol/L)を加えた。さらに、上記[2]で調製したフェノキシド溶液0.50mL、上記[3]で調製したホスファイト溶液0.22mL、及び上記[1]で調製した触媒スラリー4.0mLを順次加えた。オートクレーブ内をエチレンで窒素をパージした後、エチレン圧0.098MPa(G)、50℃で5分間プレ重合(600rpm)を行った。その後、水素圧0.23MPa(G)、エチレン圧0.36MPa(G)の条件で、30分かけて80℃に昇温し、圧力を維持したまま75分間重合反応を行った(600rpm)。気体をパージ後、反応液にエタノール5mLを加え5分間撹拌して重合反応を停止させた後、減圧脱溶媒を行い、次いで、真空中、40℃で10時間乾燥して、パウダー状のポリエチレン樹脂組成物を得た。
【0059】
(比較例2−1)
上記実施例2の[4]エチレンの重合において、フェノキシド溶液0.50mL及びホスファイト溶液0.22mLを用いなかった以外は、実施例2の[4]と同様に重合し、ポリエチレンパウダーを得た。
【0060】
(比較例2−2)
上記比較例2−1で得たポリエチレンパウダー100質量部に対して、3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−N−オクタデシルプロピオンアミド及びトリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイトを、それぞれ0.01質量部ずつ加えて混合した。
【0061】
(比較例2−3)
上記比較例2−1で得たポリエチレンパウダー100質量部に対して、オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート及び、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイトを、それぞれ0.03質量部ずつ加えて混合した。
【0062】
(ゲルの測定)
上記の方法で得られたポリエチレン樹脂組成物を、50トン加熱冷却式プレス(東邦マシナリー株式会社製;TBD−50−2)を用いてフィルムを作成した。プレス条件は、余熱として、プレスする温度よりも10℃高い温度で、ポリエチレン樹脂組成物をプレス板に置いて加熱し、ガス抜きを二回行った後、温度を190℃又は230℃に下げて、荷重11MPaの条件で、5分間プレスし、厚みが150μmのフィルムを作製した。得られたフィルムに対し、縞見ルーペ(カートン光学株式会社製R412;倍率7倍、19mmΦ)を用いて、1平方センチメートルあたりのゲルの個数を測定した。測定は任意の地点で9回行い、その平均値を算出した。これらの結果について下記表2に示す。
【0063】
【表2】

1)化合物1:3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−N−オクタデシルプロピオンアミド
2)化合物A:トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト
4)比較化合物:オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート
【0064】
比較例2−1より、酸化防止剤で安定化されていないポリエチレンパウダーを、プレス機で作製したフィルムは、ゲルが多量に発生した。また、比較例2−2より、酸化防止剤で安定化されていないポリエチレンパウダー100質量部に対して、有機アルミニウム化合物でマスキング処理したフェノール系酸化防止剤およびリン系酸化防止剤を、それぞれ0.01質量部ずつ混合し、プレス機で作製したフィルムは、ゲルが多数発生し、満足できるものではなかった。また、比較例2−3より、酸化防止剤で安定化されていないポリエチレンパウダーに対して、フェノール系酸化防止剤を、市販されているオクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネートに代え、さらにフェノール系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤を実施例2の添加量の3倍に増量して添加して、プレス機で作製したフィルムも、ゲルが多数発生し、満足できるものではなかった。それに対して、有機アルミニウム化合物でマスキング処理したフェノール系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤をエチレンの重合の際に添加して得られる本発明のポリエチレン樹脂組成物は、ゲルの発生を大幅に抑制した。
【0065】
以上より、特定のフェノール系酸化防止剤を有機アルミニウム化合物でマスキング処理したものとリン系酸化防止剤を組み合わせて、ポリオレフィンの重合前又は重合中に添加することにより、ゲルの発生を抑制し、安定化されたポリオレフィン系樹脂組成物が得られることを確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)、

(式中、Rは分岐および/またはシクロアルキル基を有してもよい炭素原子数1〜30のアルキル基または炭素原子数2〜30のアルキレン基、置換基を有してもよい炭素原子数3〜12のシクロアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数6〜18のアリール基を表す)で表されるフェノール系酸化防止剤を有機アルミニウム化合物でマスキング処理したもの、および、リン系酸化防止剤を、オレフィン系モノマーの重合前又は重合中に、触媒系又は重合系に添加して重合したポリオレフィン系樹脂を含有するポリオレフィン系樹脂組成物において、
前記オレフィン系モノマー100質量部に対し、前記一般式(I)で表されるフェノール系酸化防止剤を0.001〜0.5質量部、リン系酸化防止剤を0.001〜3質量部添加してなることを特徴とするポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項2】
前記オレフィン系モノマーがエチレンである請求項1記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項3】
前記一般式(I)中のRが、分岐を有してもよい炭素原子数12〜24のアルキル基である請求項1または2記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項4】
前記リン系酸化防止剤が、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイトである請求項1〜3のうちいずれか一項記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項5】
前記有機アルミニウム化合物が、トリアルキルアルミニウムである請求項1〜4のうちいずれか一項記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項6】
前記オレフィン系モノマーの重合触媒が、遷移金属触媒である請求項1〜5のうちいずれか一項記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項7】
前記オレフィン系モノマーの重合触媒が、チーグラー・ナッタ型触媒である請求項1〜6のうちいずれか一項記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項8】
単軸押出機を用いて、JIS K 6921−2に準じ280℃で押出加工を行った後のポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量が、押出加工をする前のポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量の50%以上である請求項1〜7のうちいずれか一項記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項9】
プレス機を用いて、230℃、荷重11MPaの条件で5分間プレスしてフィルム成形したとき、該フィルムの1cmあたりのゲルの発生箇所数が2個以下である請求項1〜8のうちいずれか一項記載のポリオレフィン系樹脂組成物。

【公開番号】特開2010−215892(P2010−215892A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254466(P2009−254466)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】