説明

ポリカルボジイミド及びポリエステル系ウレタン樹脂組成物

【課題】 本発明の課題は耐加水分解性に優れたポリエステル系ウレタン樹脂組成物を提供することである。
【解決手段】 ヘキサメチレンジイソシアネートとイソフォロンジイソシネートの共重合ポリカルボジイミドであって好ましくはヘキサメチレンジイソシアネートの共重合モル%が10〜80モル%であり、数平均分子量が300〜10000である共重合ポリカルボジイミド、及びポリエステル系ウレタン樹脂を含有するポリエステル系ウレタン樹脂組成物、又は該組成物を含有するポリエステル系ウレタン樹脂粉末。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共重合ポリカルボジイミド、及び共重合ポリカルボジイミドを含有するポリエステル系ウレタン樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル系ウレタン樹脂は、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとを、必要に応じて低分子のジオール、ジアミンなどの存在下に反応して製造される。ポリエステルポリオールを使用したポリウレタンは、力学的物性、耐油(溶剤)性等に優れるが、加水分解を受けやすいエステル結合を有するため耐加水分解性に劣るという問題点がある。
特に、屋外で使用する物品にポリエステル系ウレタン樹脂塗料を塗装した塗膜は、熱、水、光等によりエッチングされたり、塗膜にシミが発生するという問題がある。
これらの問題点に対して、特定のエーテル構造を有するウレタン樹脂(特許文献1参照)、特定の反応性基を有するウレタン樹脂からなる粉体塗料用樹脂組成物(特許文献2参照)等が提案されているが、未だ耐加水分解性が充分でない場合がある。
【特許文献1】WO96/09334
【特許文献2】特開2001−192609
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は耐加水分解性に優れたポリエステル系ウレタン樹脂組成物からなる塗膜、成形物等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、ヘキサメチレンジイソシアネートとイソフォロンジイソシネートの共重合ポリカルボジイミド(A)、該共重合ポリカルボジイミド(A)を含有するポリエステル系ウレタン樹脂組成物、該ポリエステル系ウレタン樹脂組成物を含有するポリエステル系ウレタン樹脂粉末である。
【発明の効果】
【0005】
本発明のポリエステル系ウレタン樹脂組成物からなる塗膜、成形物等は、耐加水分解性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の共重合ポリカルボジイミド(A)は、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと記載することがある。)とイソフォロンジイソシネート(以下、IPDIと記載することがある。)の共重合ポリカルボジイミドである。そのヘキサメチレンジイソシアネートの共重合モル%は、ウレタン樹脂の機械強度の観点から10モル%以上が好ましく、液体としてのハンドリング性の観点から80モル%以下が好ましく、20〜75モル%がより好ましく、30〜70モル%がさらに好ましく、45〜70モル%が特に好ましい。
【0007】
共重合ポリカルボジイミド(A)の数平均分子量は、カルボジイミド基含量の観点から300以上が好ましく、ポリエステル系ウレタン樹脂への溶解性の観点から10000以下が好ましく、500〜5000がより好ましく、1500〜4000がさらに好ましい。数平均分子量はイソシアネート基含量の測定値(JIS K7301)から計算によりもとめられる。
【0008】
(A)の末端基は、イソシアネート基、アルキル基(メチル基、エチル基、イソプロピル基、2−エチルヘキシル基等)アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基等),PEG(ポリオキシエチレン基)等があげられる。これらの中で、ポリカルボジイミド(A)の安定性、(A)を添加するウレタン樹脂組成物の耐水性の観点から2−エチルヘキシル基が好ましい。
【0009】
図1〜4にポリカルボジイミドの赤外線吸収スペクトル及び核磁気共鳴スペクトルを記載した。
【0010】
本発明のポリカルボジイミド(A)は、所定の比で混合したジイソシアネートに、カルボジイミド化触媒を添加し、加熱することにより製造することができる。また、ポリカルボジイミドの末端をイソシアネート基以外の末端基とする場合は、カルボジイミド化の前、または終了後に、イソシアネートと反応する官能基をもつ、好ましくは一官能の化合物を添加し、反応させることができる。一官能の化合物としては、好ましくはジ−n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルイソシアネート、イソプロピルアルコール、2−エチルヘキサノールなどが挙げられる。
反応温度は40〜150℃が好ましく、50〜140℃がより好ましい。反応温度は40℃以上であると反応時間が短時間で済むため実用的である。また、反応温度が150℃以下の場合は、溶媒の選択が容易となる。
【0011】
カルボジイミド化反応は、溶剤中で行うことも可能であり、反応溶液中におけるジイソシアネートモノマー濃度は20〜100重量%(以下、単に%という)が好ましい。モノマー濃度が20%以上の場合、カルボジイミド化反応がより短時間で終了するため、実用的である。
ポリカルボジイミドの反応に用いられる溶媒、及びポリカルボジイミド溶液に用いられる有機溶媒は、好ましいものとしては、テトラクロロエチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。これら溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0012】
また、カルボジイミド化に用いる触媒としては、公知のリン系触媒がいずれも好適に用いられ、例えば1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、あるいはこれらの3−ホスホレン異性体などのホスホレンオキシドが挙げられる。
【0013】
本発明のポリエステル系ウレタン樹脂組成物(B)は、ポリエステル系ウレタン樹脂(C)、共重合ポリカルボジイミド(A)、必要により添加剤(D)を含有する。
【0014】
ポリエステル系ウレタン樹脂組成物(B)は、耐加水分解性の観点から、ポリエステル系ウレタン樹脂(C)の重量に対して、共重合ポリカルボジイミド(A)の含有量が0.1重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましい。また、ウレタン樹脂の機械的強度が優れるという観点から、(A)の含有量が10重量%以下であることが好ましく、5重量%以下であることがより好ましい。
【0015】
ポリエステル系ウレタン樹脂(C)は、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとを反応させることにより製造することができる。
ポリエステルポリオールは、例えば(1)低分子ジオールとジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体[酸無水物、低級アルキル(炭素数1〜4)エステル、酸ハライド等]との縮合重合によるもの;(2)低分子ジオールを開始剤としてラクトンモノマーを開環重合したもの;およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0016】
上記低分子ジオールの具体例としては脂肪族ジオール類[直鎖ジオール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど)、分岐鎖を有するジオール(プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,2−、1,3−もしくは2,3−ブタンジオールなど)など];環状基を有するジオール類[たとえば特公昭45−1474号公報記載のもの;脂肪族環状基含有ジオール(1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、水添ビスフェノールAなど)、芳香族環状基含有ジオール(m−、およびp−キシリレングリコール、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノールSのアルキレンオキシド付加物、ビスフェノールFのアルキレンオキシド付加物、ジヒドロキシナフタレンのアルキレンオキシド付加物、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートなど)]およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらのうち好ましいものは脂肪族ジオールおよび環状基を有するジオールである。
【0017】
上記のジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体の具体例としては、炭素数4〜15の脂肪族ジカルボン酸[コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、アゼライン酸、マレイン酸、フマル酸など]、炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸[テレフタル酸、イソフタル酸など]、これらのエステル形成性誘導体[酸無水物、低級アルキルエステル(ジメチルエステル、ジエチルエステルなど)、酸ハライド(酸クロライド等)など]およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0018】
上記のラクトンモノマーとしてはγ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン、γ−バレルラクトンおよびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0019】
ポリイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)などの脂環式ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などの脂肪族ジイソシアネートなどが単独もしくは2種以上混合して用いられる。
【0020】
ポリエステル系ウレタン樹脂(C)は、公知のウレタン化重付加技術を用いて製造することができ、特に限定されない。例えば、上記で得られたポリエステルポリオールと2個以上の活性水素原子を有する低分子化合物(鎖伸長剤)とを均一に混合して予熱した後、これら混合物中の活性水素原子数とイソシアネート基のモル比が0.95〜1:1.05になる量のポリイソシアネートを加え、かきまぜながらランダムに重付加することにより得ることができる。
【0021】
また、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとをあらかじめ反応させ、末端イソシアネート基のプレポリマーを経由して得ることもできる。これらの反応は、通常無溶媒で行われるが、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、トルエンなどの溶媒中で行うこともできる。
鎖伸長剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオールなどのジオール、プロピレンジアミンなどのジアミンなどが単独もしくは2種以上混合して用いられる。さらに、必要により、メタノール、エタノールなどの一価の低分子アルコール、メチルアミン、エチルアミンなどの一価の低分子アミンなどを変性剤として添加することもできる。
ポリウレタンの数平均分子量は、好ましくは10,000〜200,000であり、さらに好ましくは15,000〜100,000である。
【0022】
本発明のポリエステル系ウレタン樹脂粉末(E)は、ポリエステル系ウレタン樹脂組成物(B)を以下の製造方法で粉末化して得ることができる。
該製造方法としては特に限定されないが、たとえば以下の方法が例示できる。
(1)ブロック状またはペレット状の(B)を冷凍粉砕法、氷結粉砕法等の方法で粉砕し、(B)の粉末を得る方法。
(2)(B)を溶解しない有機溶剤(n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタンなど)中で(B)の非水分散体を形成させ、該非水分散体から(B)を分離乾燥し、(B)の粉末を得る方法(例えば特開平04−255755号公報明細書に記載の方法)。
(3)分散剤を含有した水中で(B)の水分散体を形成させ、該水分散体から(B)を分離乾燥し、(B)の粉末を得る方法(例えば特開平07−133423号および特開平08−120041号各公報明細書に記載の方法)。
これらのうちで、多量の有機溶剤を使用せずしかも所望の粒度の粉末が容易に得られる点で(3)の方法が好ましい。
【0023】
共重合ポリカルボジイミド(A)をポリエステル系ウレタン樹脂(C)に添加する方法は、予め原料のポリイソシアネート、又はポリエステルポリオールに添加する方法、プレポリマーに添加する方法、重合後のウレタン樹脂(C)に添加する方法等が挙げられる。プレポリマー法でウレタン樹脂を重合する場合は、プレポリマーに添加する方法が好ましい。
【0024】
(A)をポリエステル系ウレタン樹脂粉末(E)に添加する方法は、(1)ポリエステル系ウレタン樹脂(C)に上記の方法で添加した後、上記の方法で粉末化する方法、(2)(B)に添加せず上記の方法で粉末化した後に、ドライブレンド、含浸等の方法でポリエステル系ウレタン樹脂粉末(E)に添加する方法をとるこができる。
【0025】
本発明のポリエステル系ウレタン樹脂組成物(B)は、ホース、チューブ、フィルム、シート、ベルト、ロール類などの押出成形用材料、パッキング材、機械部品、自動車部品などの射出成形用材料、スラッシュ成形用材料、塗料、コーティング用ビヒクルなどのコーティング材料などとして有用である。
また、本発明のポリエステル系ウレタン樹脂粉末(E)は、粉体塗料、粉体接着剤、スラッシュ成形用材料などとして有用である。
【0026】
添加剤(D)は、ポリエステル系ウレタン樹脂組成物(B)の重量に対して、0〜50重量%含有されることが好ましく、5〜30重量%含有されることがより好ましい。
添加剤(D)としては、上記各用途に応じて任意に含有させることができる。
例えば、顔料、充填剤、硬化剤、硬化触媒、塗面調製剤、界面活性剤、分散剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、離型剤、難燃剤等が挙げられる。
また、ポリエステル系ウレタン樹脂粉末(E)には、粉体の流動性改質剤、ブロッキング防止剤等を添加することもできる。
【0027】
本発明のポリエステル系ウレタン樹脂粉末(E)の平均粒径は1〜400μm、好ましくは5〜300μmである。
【実施例】
【0028】
以下、実施例および比較例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下、特に記載のないかぎり、「部」は「重量部」、%は重量%を意味する。
【0029】
実施例1
3リットルのセパラブルフラスコに冷却管、温度計、攪拌装置をセットし、ヘキサメチレンジイソシアネート138部、イソフォロンジイソシアネート1644部、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレンオキシド20部を仕込み、1時間かけて120℃に昇温し、その後温度は変えず、48時間反応を行うことで共重合ポリカルボジイミド(A−1)を合成した。イソシアネート基含量は2.7%であった。(A−1)のHDI共重合モル比は、仕込み量から計算し表1に記載した。(以下の実施例においても同様。)(A−1)の数平均分子量は、仕込み量、イソシアネート基含量
から計算し表1に記載した。(以下の実施例においても同様。)
【0030】
実施例2
ヘキサメチレンジイソシアネート668部、イソフォロンジイソシアネート883部に変更した以外は、合成例1と同様にしてポリカルボジイミド(A−2)を合成した。イソシアネート基含量は3.1%であった。
【0031】
実施例3
ヘキサメチレンジイソシアネート1173部、イソフォロンジイソシアネート388部に変更した以外は、合成例1と同様にしてポリカルボジイミド(A−3)を合成した。イソシアネート基含量は2.4%であった。
【0032】
実施例4
ヘキサメチレンジイソシアネート937部、イソフォロンジイソシアネート619部に変更した以外は、合成例1と同様にしてポリカルボジイミド(A−4)を合成した。イソシアネート基含量は2.7%であった。
【0033】
実施例5
ヘキサメチレンジイソシアネート937部、イソフォロンジイソシアネート619部に変更し、反応時間を2時間に変更した以外は、合成例1と同様にしてポリカルボジイミド(A−5)を合成した。イソシアネート基含量は28%であった。
【0034】
実施例6
反応時間を72時間に変更した以外は、合成例4と同様にしてポリカルボジイミド(A−6)を合成した。イソシアネート基含量は0.8%であった。
【0035】
実施例7
ヘキサメチレンジイソシアネート1078部、イソフォロンジイソシアネート712部に変更し、2−エチルヘキサノール210部を反応開始時に加えた以外は、実施例1と同様にしてポリカルボジイミド(A−7)を合成した。イソシアネート基含量は0%であった。
【0036】
実施例8
ヘキサメチレンジイソシアネート1078部、イソフォロンジイソシアネート712部に変更し、ジ−n−ブチルイソシアネート210部を反応開始時に加えた以外は、実施例1と同様にしてポリカルボジイミド(A−8)を合成した。イソシアネート基含量は0%であった。
【0037】
上記共重合ポリカルボジイミドを以下の製造例に従い、ポリエステル系ウレタン樹脂(C)に添加し粒子化することでポリエステル系ウレタン樹脂粉末(E)を作製した。
【0038】
製造例1
プレポリマー溶液の製造
温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に、数平均分子量(以下Mnと記す。)が1000のポリブチレンアジペート(497.9部)、Mnが900のポリヘキサメチレンイソフタレート(124.5部)、ペンタエリスリトール テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート][チバスペシャリティーケミカルズ(株)社製; イルガノックス1010]( 1.12部)、体積平均粒径9.2μmのカオリン(90.7部)を仕込み、窒素置換した後、撹拌しながら110℃に加熱して溶融させ、60℃まで冷却した。続いて、1−オクタノール(9.7部)、ヘキサメチレンジイソシアネート(153.4部)テトラヒドロフラン(250部)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(直鎖及び側鎖ドデシル)-4-メチルフェノール[チバスペシャリティーケミカルズ(株)社製; チヌビン571]( 2.22部)、85℃で6時間反応させプレポリマー溶液を得た。このプレポリマーのNCO含量は、2.05%であった。
【0039】
製造例2
ジアミンのMEKケチミン化物の製造
ヘキサメチレンジアミンと過剰のメチルエチルケトン(以下、MEKと記載する。ジアミンに対して4倍モル量)を80℃で24時間還流させながら生成水を系外に除去した。その後減圧にて未反応のMEKを除去してMEKケチミン化物を得た。
【0040】
実施例9
ポリウレタン樹脂粉末の製造
反応容器に、製造例1で得たプレポリマー溶液(100部)と製造例2で得たMEKケチミン化合物(5.6部)と実施例1で製造したポリカルボジイミド(A−1)(3部)を投入し、そこにジイソブチレンとマレイン酸との共重合体のNa塩を含む分散剤(三洋化成工業(株)製サンスパールPS−8)(1.3重量部)を溶解した水溶液340重量部を加え、ヤマト科学(株)製ウルトラディスパーサーを用いて9000rpmの回転数で1分間混合した。この混合物を温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に移し、窒素置換した後、撹拌しながら50℃で10時間反応させた。反応終了後、濾別及び乾燥を行い、ポリウレタン樹脂粉末(E−1)を製造した。(E−1)の体積平均粒径(レーザー回折散乱法)を日機装(株)製マイクロトラック粒度分布測定装置HRAで測定すると55μmであった。(E−1)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を測定し、ポリウレタン樹脂部分のMnは2.5万であった。(E−1)の体積平均粒径、ポリウレタン樹脂のMn、ウレタン樹脂の重量に対する共重合ポリカルボジイミド(A−1)の重量を表1に記載した。(以下の実施例においても同様。)
【0041】
【表1】

【0042】
実施例10〜16
実施例9において、実施例1で製造したポリカルボジイミド(A−1)(3部)の代わりに、実施例2〜8で製造したポリカルボジイミド(A−2)〜(A−8)各3部を投入し、他は同様の方法で、ポリエステル系ウレタン樹脂粉末(E―2)〜(E−8)を製造した。
【0043】
比較例1
製造例1、2に従い、プレポリマー溶液とジアミンのMEKケチミン化物を製造し、実施例9でポリカルボジイミドを添加しない以外は、実施例9と同様の方法で、ポリエステル系ウレタン樹脂粉末(E−9’)を製造した。
比較例2
製造例1、2に従い、プレポリマー溶液とジアミンのMEKケチミン化物を作製し、実施例9で 使用するポリカルボジイミドを、日清紡績(株)社製;Carbodilite V−03(化学名:4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートのポリカルボジイミド)を使用する以外は実施例9と同様の方法で、ポリエステル系ウレタン樹脂粉末(E−10’)を製造した。
【0044】
比較例3
製造例1、2に従い、プレポリマーと溶液とジアミンのMEKケチミン化物を作製し、実施例9で 使用するポリカルボジイミドを、バイエル社製;スタバクゾールPを使用する以外は実施例9と同様の方法で、ポリエステル系ウレタン樹脂粉末(E−11’)を作製した。
【0045】
実施例9〜16のウレタン樹脂粉末(E−1)〜(E−8)、及び比較例1〜3のウレタン樹脂粉末(E−9’)〜(E−11’)を、音波式分級機により分級し、体積平均粒径20μm以下の微粉と、60μm以上の粗粉を除去した。
これを離型剤としてスミモールドFF(住鉱潤滑剤製)を塗布したリン酸亜鉛処理鋼板標準板(日本テストパネル社製)に市販のコロナ帯電方式スプレーガンを用いて膜圧が40〜60μmになるように静電塗装し、180℃で20分間焼き付け、それぞれの塗膜を得た。これらの塗膜を標準板から剥離し得られた塗膜について、下記項目の試験を行い、その評価結果を表2に示した。
【0046】
実施例17
ポリウレタン樹脂溶液の製造
反応容器に、製造例1で得たプレポリマー溶液(100部)をN,N−ジメチルホルムアミド(100部)に溶解し、ヘキサメチレンジアミン(2.8部)と実施例1で製造したポリカルボジイミド(A−1)(3部)を投入することで、ポリウレタン樹脂溶液を作製した。
【0047】
実施例18〜24
実施例17において、実施例1で製造したポリカルボジイミド(A−1)(3部)の代わりに、実施例2〜8で製造したポリカルボジイミド(A−2)〜(A−8)各3部を投入し、他は同様の方法で、ポリウレタン樹脂溶液を作製した。
【0048】
比較例4
実施例17でポリカルボジイミドを添加しない以外は、実施例17と同様の方法で、ポリウレタン樹脂溶液を作製した。
【0049】
比較例5
実施例17で添加するポリカルボジイミドを日清紡績(株)社製;Carbodilite V−03に変更した以外は、実施例17と同様の方法で、ポリウレタン樹脂溶液を作製した。
【0050】
比較例6
実施例17で添加するポリカルボジイミドをバイエル社製;スタバクゾールPに変更した以外は、実施例17と同様の方法で、ポリウレタン樹脂溶液を作製した。
【0051】
実施例17〜24、及び比較例4〜6のポリウレタン樹脂溶液を、離型剤としてスミモールドFF(住鉱潤滑剤製)を塗布したリン酸亜鉛処理鋼板標準板(日本テストパネル社製)に市販のスプレーガンを用いて膜圧が80〜120μmになるように塗装し、100℃で20分間乾燥することで、それぞれの塗膜を得た。これらの塗膜を標準板から剥離し得られた塗膜について、下記項目の試験を行い、その評価結果を表2に示した。
【0052】
<湿熱老化試験>
成形表皮を、恒温恒湿機中に、温度80℃湿度95%RHで400時間処理した。試験後、表皮の引裂強度を測定して、初期強度と比較した。
湿熱老化試験後の引裂強度保持率を以下の式(1)で算出した。
【0053】
【数1】

【0054】
・引裂強度
表皮サンプルからJIS K 6301(1995年)の引裂試験片ダンベルB号形を3枚打ち抜く。板厚は曲がっている場所の近傍5カ所の最小値をとる。これをオートグラフに取り付け、200mm/minの速さで引っ張り、試験片が破断にいたる最大強度を算出する。
【0055】
【表2】

【0056】
表2より、実施例1〜8の共重合ポリカルボジイミドを添加した実施例9〜24は、比較例1(カルボジイミド無添加)〜6と比べて、引裂強度保持率が高くなっていることがわかる。引裂強度保持率が高くなっていることから、耐加水分解安定性が向上している。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の共重合ポリカルボジイミドを含有するポリエステル系ウレタン樹脂組成物は、ホース、チューブ、フィルム、シート、ベルト、ロール類などの押出成形用材料、パッキング材、機械部品、自動車部品などの射出成形用材料、スラッシュ成形用材料、塗料、コーティング用ビヒクルなどのコーティング材料などとして有用である。また、本発明のポリエステル系ウレタン樹脂粉末は、粉体塗料、粉体接着剤、スラッシュ成形用材料などとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】HDI、IPDI共重合ポリカルボジイミド(HDI共重合モル比67モル%、末端イソシアネート基)赤外線吸収スペクトル
【図2】HDI、IPDI共重合ポリカルボジイミド(HDI共重合モル比67モル%、末端イソシアネート基)核磁気共鳴スペクトル 核種:1H 溶媒:CDCl
【図3】HDI、IPDI共重合ポリカルボジイミド(HDI共重合モル比67モル%、末端2−エチルヘキサノール封止)赤外線吸収スペクトル
【図4】HDI、IPDI共重合ポリカルボジイミド(HDI共重合モル比67モル%、末端2−エチルヘキサノール封止)核磁気共鳴スペクトル 核種:1H 溶媒:CDCl

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘキサメチレンジイソシアネートとイソフォロンジイソシネートの共重合ポリカルボジイミド(A)。
【請求項2】
ヘキサメチレンジイソシアネートの共重合モル%が10〜80モル%である請求項1に記載の共重合ポリカルボジイミド(A)。
【請求項3】
数平均分子量が300〜10000である請求項1又は2に記載の共重合ポリカルボジイミド(A)。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の共重合ポリカルボジイミド(A)、及びポリエステル系ウレタン樹脂(C)を含有するポリエステル系ウレタン樹脂組成物(B)。
【請求項5】
ポリエステル系ウレタン樹脂(C)の重量に対して、共重合ポリカルボジイミド(A)の含有量が0.1〜10重量%である請求項4に記載のポリエステル系ウレタン樹脂組成物(B)。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のポリエステル系ウレタン樹脂組成物(B)を含有する塗料用ポリエステル系ウレタン樹脂組成物。
【請求項7】
請求項4又は5に記載のポリエステル系ウレタン樹脂組成物(B)からなるポリエステル系ウレタン樹脂粉末(E)。
【請求項8】
請求項7に記載のポリエステル系ウレタン樹脂粉末(E)を含有する粉体塗料用ポリエステル系ウレタン樹脂組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−156506(P2008−156506A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−347838(P2006−347838)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】