説明

ポリカーボネート樹脂組成物、ポリカーボネート樹脂成形品及びその製造方法

【課題】ガラスフィラーを含有し、メタリック調外観(全光線透過率が40%以上、かつ60°鏡面光沢度が80以上)、強度及び耐熱性に優れると共に、難燃剤を用いなくとも高い難燃性が付与されたポリカーボネート樹脂組成物、この樹脂組成物を成形してなるポリカーボネート樹脂成形品、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】(A)ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体を含む芳香族ポリカーボネート樹脂60〜90質量部と、(B)前記芳香族ポリカーボネート樹脂との屈折率の差が0.002以下のガラスフィラー40〜10質量部とからなる組成物100質量部に対して、(C)反応性官能基を有するシリコーン化合物0.05〜2.0質量部、及び光沢粒子0.05〜7.0質量部を含むポリカーボネート樹脂組成物、及び該組成物を成形してなるポリカーボネート樹脂成形品、及び該組成物を金型温度120℃以上で射出成形し、成形品を作成するポリカーボネート樹脂成形品の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート樹脂組成物、それを用いたポリカーボネート樹脂成形品及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明はガラスフィラーを含有し、メタリック調外観、強度及び耐熱性に優れると共に、難燃剤を用いなくとも高い難燃性が付与されたポリカーボネート樹脂組成物、この樹脂組成物を成形してなるポリカーボネート樹脂成形品及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂成形品は、透明性及び機械強度に優れていることから、電気・電子分野、機械分野、自動車分野などにおける工業用透明材料として、また、レンズや光学ディスクなどの光学用材料等として幅広く用いられているが、さらに高い機械強度が必要な場合には、ガラスフィラーなどを添加して強化している。
このガラスフィラーとしては、一般にEガラスと呼ばれているガラスから構成されたガラス繊維が使用されているが、ポリカーボネート樹脂のナトリウムD線における屈折率(nD、以下単に屈折率とする)は、1.580〜1.590であるのに対し、Eガラスの屈折率は1.555程度と若干小さく、機械強度を向上させるために必要な量のガラスフィラーを添加すると、この屈折率の差によって、Eガラス強化ポリカーボネート樹脂組成物は、メタリック調外観が維持できないという問題が生じる。
【0003】
また、メタリック調外観や銀河調外観を持つ樹脂組成物に関する特許も多数出願されているが、これらは透明樹脂を用いたものであり、ガラスフィラー強化樹脂に関しては記述がない。これはメタリック調外観や銀河調外観を得るために光沢粒子を添加しているが、透明樹脂でない場合は、成形品の表面近傍の光沢粒子しか見えず、メタリック調外観や銀河調外観が得られないためである。なお、銀河調外観とは、夜空に星をちりばめたようにキラめく模様などを言う。
【0004】
このような問題を解決するために、ポリカーボネート樹脂の改良による樹脂側の屈折率の低下や、ガラスフィラー組成の改良によるガラスフィラー側の屈折率の向上などが検討されている。
【0005】
例えば、(1)末端停止剤としてヒドロキシアラルキルアルコールとラクトンとの反応生成物を用いたポリカーボネート樹脂と、該ポリカーボネート樹脂との屈折率との差が0.01以下であるガラス系充填剤を含むポリカーボネート樹脂組成物(特許文献1参照)、(2)ポリカーボネート樹脂と、該ポリカーボネート樹脂との屈折率の差が0.015以下であるガラス繊維と、ポリカプロラクトンを含むポリカーボネート樹脂組成物(特許文献2参照)、(3)ガラスフィラー組成物中にZrO2、TiO2、BaO、ZnOなどを特定の割合で含有させ、屈折率をポリカーボネート樹脂に近づけたガラス組成物(特許文献3参照)、(4)メタリック調外観を有するガラスフィラー強化ポリカーボネート樹脂組成物(特許文献4参照)などが提案されている。
【0006】
しかしながら、前記(1)のポリカーボネート樹脂組成物においては、機械強度を向上させるために必要なガラス系充填剤を添加する場合、この程度の屈折率の差では不十分であり、かつポリカーボネート樹脂の製造に用いる原料が高価であるため、実用的ではない。
前記(2)のポリカーボネート樹脂組成物においては、ポリカプロラクトンを含むために、ポリカーボネート樹脂との屈折率差が0.015以下のガラス繊維でも透明性は維持できるものの、耐熱性や機械物性が低下するのを免れないという問題がある。
前記(3)のガラス組成物においては、ZrO2、TiO2、BaO、ZnOなどをそれぞれの含有量を適切に調整しないとガラスが失透してしまい、屈折率がポリカーボネート樹脂と同じでも、それを含むポリカーボネート樹脂組成物は、透明性が得られない場合がある。加えてガラスフィラー自身の比重も大きくなるので、軽量化という意味でガラスフィラー強化ポリカーボネート樹脂組成物を用いる意義が薄れてしまう。
さらに、前記(4)のポリカーボネート樹脂組成物においては、難燃性については言及されておらず、難燃性を付与しないと使用できる分野が限られてしまう。
【0007】
【特許文献1】特開平7−118514号公報
【特許文献2】特開平9−165506号公報
【特許文献3】特開平5−155638号公報
【特許文献4】特開2006−212068号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような状況下で、ガラスフィラーを含有し、メタリック調外観、強度、及び耐熱性に優れると共に、難燃剤を用いなくとも高い難燃性が付与されたポリカーボネート樹脂組成物、この樹脂組成物を成形してなるポリカーボネート樹脂成形品、及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体を含む芳香族ポリカーボネート樹脂と、この樹脂との屈折率の差が0.002以下のガラスフィラーと、反応性官能基を有するシリコーン化合物と、光沢粒子とを、それぞれ所定の割合で含み、かつ所定の難燃グレードを有するポリカーボネート樹脂組成物、及びこの樹脂組成物を所定の厚さに成形してなるポリカーボネート樹脂成形品により、その目的を達成し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)(A)ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体を含む芳香族ポリカーボネート樹脂60〜90質量部と、(B)前記芳香族ポリカーボネート樹脂との屈折率の差が0.002以下のガラスフィラー40〜10質量部とからなる組成物100質量部に対して、(C)反応性官能基を有するシリコーン化合物0.05〜2.0質量部、及び(D)光沢粒子0.05〜7.0質量部を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物、
(2)前記(A)成分と(B)成分とからなる組成物100質量部中、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体10〜40質量部を含む上記(1)に記載のポリカーボネート樹脂組成物前記、
(3)前記ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体が、ポリオルガノシロキサン部を0.3〜5.0質量%含む上記(1)又は(2)に記載のポリカーボネート樹脂組成物、
(4)前記(B)成分のガラスフィラーが、ガラス繊維及び/又はミルドファイバーである上記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物、
(5)前記(B)成分のガラスフィラーが、屈折率1.583〜1.587である上記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物、
(6)前記(D)成分の光沢粒子が、マイカ、金属粒子、金属硫化物粒子、表面を金属又は金属酸化物で被覆された粒子、表面を金属又は金属酸化物で被覆されたガラスフレークからなる群より選ばれる1種又は2種以上である上記(1)〜(5)のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物、
(7)さらに(E)着色剤0.0001〜3質量部を含む上記(1)〜(6)のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物、
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のポリカーボネ−ト樹脂組成物を成形してなるポリカーボネート樹脂成形品、
(9)金型温度120℃以上で射出成形してなる上記(8)に記載のポリカーボネート樹脂成形品、
(10)60°鏡面光沢度が80以上、かつ可視光に対する全光線透過率が40%以上である上記(8)又は(9)に記載のポリカーボネート樹脂成形品、
(11)UL94に準拠した難燃性評価法で1.5mmV−0である上記(8)〜(10)のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂成形品、
(12)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物を、金型温度120℃以上で射出成形し、成形品を作製することを特徴とするポリカーボネート樹脂成形品の製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ガラスフィラーを含有し、メタリック調外観、強度及び耐熱性に優れると共に、難燃剤を用いなくとも高い難燃性が付与されたポリカーボネート樹脂組成物、この樹脂組成物を成形してなるポリカーボネート樹脂成形品、及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のポリカーボネート樹脂(以下、PC樹脂と略記することがある。)組成物は、(A)ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体(以下、PC−POS共重合体と略記することがある。)を含む芳香族ポリカーボネート樹脂60〜90質量部と、(B)前記芳香族ポリカーボネート樹脂との屈折率の差が0.002以下のガラスフィラー40〜10質量部とからなる組成物100質量部に対して、(C)反応性官能基を有するシリコーン化合物0.05〜2.0質量部、(D)光沢粒子0.05〜7.0質量部、及び必要により(E)着色剤0.0001〜3質量部を含むことを特徴とする。本発明のPC樹脂組成物は、UL94に準拠した難燃性評価で、1.5mmV−0とすることができる。
【0012】
本発明のPC樹脂組成物においては、(A)成分の芳香族PC樹脂として、PC−POS共重合体を含む芳香族ポリカーボネート樹脂が用いられる。
具体的には、(A)成分として、(a−1)二価フェノールとカーボネート前駆体との反応により製造される芳香族PC樹脂(以下、一般PC樹脂と略記することがある。)、及び(a−2)PC−POS共重合体を含み、前記(a−1)成分、前記(a−2)成分、及び(B)成分とからなる組成物100質量部に対して、前記PC−POS共重合体が10〜40質量部含まれる芳香族PC樹脂が好ましく用いられる。
前記(A)成分と(B)成分とからなる組成物100質量部に対して、(a−2)成分であるPC−POS共重合体が10質量部以上含まれておれば、良好な剛性を有するPC樹脂組成物が得られ、また40質量部以下であれば、比重が大きすぎることがなく、かつ良好な耐衝撃性を有するPC樹脂組成物が得られる。
【0013】
当該(A)成分における(a−1)成分である一般PC樹脂は、その製造方法に特に制限はなく、従来公知の各種方法により、製造されたものを用いることができる。例えば、二価フェノールとカーボネート前駆体とを溶液法(界面重縮合法)又は溶融法(エステル交換法)により製造されたもの、すなわち、末端停止剤の存在下に、二価フェノールとホスゲンを反応させる界面重縮合法、又は末端停止剤の存在下に、二価フェノールとジフェニルカーボネートなどとのエステル交換法などにより反応させて製造されたものを用いることができる。
二価フェノールとしては、様々なものを挙げることができるが、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド及びビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン等を挙げることができる。この他、ハイドロキノン、レゾルシン及びカテコール等を挙げることもできる。これらは、それぞれ単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン系のものが好ましく、特にビスフェノールAが好適である。
【0014】
一方、カーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、カルボニルエステル、又はハロホルメート等であり、具体的にはホスゲン、二価フェノールのジハロホーメート、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート及びジエチルカーボネート等である。
なお、この一般PC樹脂は、分岐構造を有していてもよく、分岐剤としては、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、α,α’,α’’−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、フロログリシン、トリメリット酸及びイサチンビス(o−クレゾール)等がある。
本発明において、(a−1)成分として用いられる一般PC樹脂の粘度平均分子量は(Mv)は、通常10,000〜50,000、好ましくは13,000〜35,000、更に好ましくは15,000〜20,000である。
この粘度平均分子量(Mv)は、ウベローデ型粘度計を用いて、20℃における塩化メチレン溶液の粘度を測定し、これより極限粘度[η]を求め、次式にて算出するものである。
[η]=1.23×10-5Mv0.83
【0015】
当該(A)成分の芳香族ポリカーボネート樹脂において、(a−2)成分として用いられるPC−POS共重合体は、ポリカーボネート部とポリオルガノシロキサン部からなるものであり、例えば、予め製造されたポリカーボネート部を構成するポリカーボネートオリゴマー(以下、PCオリゴマーと略称する。)と、ポリオルガノシロキサン部(セグメント)を構成する末端にo−アリルフェノール残基、p−ヒドロキシスチレン残基、オイゲノール残基等の反応性基を有するポリオルガノシロキサンとを、塩化メチレン、クロロベンゼン、クロロホルム等の溶媒に溶解させ、二価フェノールの苛性アルカリ水溶液を加え、触媒として、第三級アミン(トリエチルアミン等)や第四級アンモニウム塩(トリメチルベンジルアンモニウムクロライドなど)を用い、末端停止剤の存在下、界面重縮合反応することにより製造することができる。
このPC−POS共重合体の製造に使用されるPCオリゴマーは、例えば塩化メチレンなどの溶媒中で、前述の二価フェノールとホスゲン等のカーボネート前駆体とを反応させることにより、又は二価フェノールと炭酸エステル化合物、例えばジフェニルカーボネートのようなカーボネート前駆体とを反応させることによって容易に製造することができる。
【0016】
また、炭酸エステル化合物としては、ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネートやジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネートを挙げることができる。
PC−POS共重合体の製造に供されるPCオリゴマーは、前述の二価フェノール一種を用いたホモオリゴマーであってもよく、又二種以上を用いたコオリゴマーであってもよい。
更に、多官能性芳香族化合物を上記二価フェノールと併用して得られる熱可塑性ランダム分岐オリゴマーであってもよい。
その場合、分岐剤(多官能性芳香族化合物)として、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、α,α’,α’’−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1−[α−メチル−α−(4’−ヒドロキシフェニル)エチル]−4−[α’,α’−ビス(4’’−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、フロログルシン、トリメリット酸、イサチンビス(o−クレゾール)等を使用することができる。
このPC−POS共重合体は、例えば、特開平3−292359号公報、特開平4−202465号公報、特開平8−81620号公報、特開平8−302178号公報及び特開平10−7897号公報等に開示されている。
【0017】
当該PC−POS共重合体としては、ポリカーボネート部の重合度が、3〜100程度、ポリオルガノシロキサン部の重合度が2〜500程度のものが好ましく用いられる。
また、当該PC−POS共重合体におけるポリオルガノシロキサン部の含有量は、得られるPC樹脂組成物に対する難燃性付与効果及び経済性のバランスなどの観点から、0.3〜5.0質量%、好ましくは0.5〜4.0質量%とする。
さらに、当該PC−POS共重合体の粘度平均分子量(Mv)は、通常5,000〜100,000、好ましくは10,000〜30,000、特に好ましくは12,000〜30,000である。
ここで、これらの粘度平均分子量(Mv)は、前記の一般PC樹脂と同様に求めることができる。
当該PC−POS共重合体におけるポリオルガノシロキサン部としては、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン等からなるセグメントが好ましく、ポリジメチルシロキサンセグメントが特に好ましい。
【0018】
当該(A)成分の芳香族ポリカーボネート樹脂における分子末端基については特に制限はなく、従来公知の末端停止剤である一価のフェノール由来の基であってもよいが、炭素数が10〜35のアルキル基を有する一価のフェノール由来の基であることが好ましい。
分子末端が、炭素数10以上のアルキル基を有するフェノール由来の基であれば、得られるPC樹脂組成物は良好な流動性を有し、また、炭素数35以下のアルキル基を有するフェノール由来の基であれば、得られるPC樹脂組成物は耐熱性及び耐衝撃性が良好なものとなる。
炭素数10〜35のアルキル基を有する一価のフェノールとしては、例えばデシルフェノール、ウンデシルフェノール、ドデシルフェノール、トリデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ペンタデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、ヘプタデシルフェノール、オクタデシルフェノール、ノナデシルフェノール、イコシルフェノール、ドコシルフェノール、テトラコシルフェノール、ヘキサコシルフェノール、オクタコシルフェノール、トリアコンチルフェノール、ドトリアコンチルフェノール及びペンタトリアコンチルフェノール等が挙げられる。
【0019】
これらのアルキルフェノールのアルキル基は、水酸基に対して、o−、m−、p−のいずれの位置であってもよいが、p−の位置が好ましい。また、アルキル基は、直鎖状、分岐状又はこれらの混合物であってもよい。
この置換基としては、少なくとも1個が前記の炭素数10〜35のアルキル基であればよく、他の4個は特に制限はなく、炭素数1〜9のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、ハロゲン原子又は無置換であってもよい。
炭素数が10〜35のアルキル基を有する一価のフェノールによる末端封止は、片末端及び両末端のいずれでもよく、また、末端変性率は、得られるPC樹脂組成物の高流動化の観点から、全末端に対して20%以上であることが好ましく,50%以上であることがより好ましい。
すなわち、他の末端は、水酸基末端、又は下記の他の末端停止剤を用いて封止された末端であってもよい。
【0020】
ここにおいて、他の末端停止剤としては、ポリカーボネート樹脂の製造で常用されているフェノール、p−クレゾ−ル、p−tert−ブチルフェノール、p−tert−オクチルフェノール、p−クミルフェノール、p−ノニルフェノール、p−tert−アミルフェノール、ブロモフェノール及びトリブロモフェノール、ペンタブロモフェノール等を挙げることができる。
中でも、環境問題からハロゲンを含まない化合物が好ましい。
本発明の難燃性PC樹脂組成物においては、(A)成分の芳香族ポリカーボネート樹脂は、前記の(a−1)成分である一般PC樹脂及び(a−2)成分であるPC−POS共重合体以外に、本発明の目的が損なわれない範囲で、テレフタル酸等の2官能性カルボン酸、又はそのエステル形成誘導体等のエステル前駆体の存在下でポリカーボネートの重合を行うことによって得られるポリエステル−ポリカーボネート樹脂等の共重合体、あるいはその他のポリカーボネート樹脂を適宣含有することができる。
【0021】
本発明のPC樹脂組成物において、(B)成分として用いられるガラスフィラーは、その屈折率と、前記(A)成分である芳香族PC樹脂の屈折率との差が0.002以下であることを要す。この屈折率差が0.002を超えると、PC樹脂組成物を用いて得られた成形品のメタリック調外観が不充分となる。該屈折率差は、好ましくは0.001以下であり、特にガラスフィラーの屈折率と、(A)成分として用いる芳香族ポリカーボネート樹脂の屈折率とが同じであることが好ましい。
このようなガラスフィラーを構成するガラスとしては、以下に示す組成を有するガラスI及びガラスIIが挙げられる。
【0022】
ガラスIは、二酸化ケイ素(SiO2)50〜60質量%、酸化アルミニウム(Al23)10〜15質量%、酸化カルシウム(CaO)15〜25質量%、酸化チタン(TiO2)2〜10質量%、酸化ホウ素(B23)2〜8質量%、酸化マグネシウム(MgO)0〜5質量%、酸化亜鉛(ZnO)0〜5質量%、酸化バリウム(BaO)0〜5質量%、酸化ジルコニウム(ZrO2)0〜5質量%、酸化リチウム(Li2O)0〜2質量%、酸化ナトリウム(Na2O)0〜2質量%、酸化カリウム(K2O)0〜2質量%を含有し、かつ、前記酸化リチウム(Li2O)と前記酸化ナトリウム(Na2O)と前記酸化カリウム(K2O)との合計が0〜2質量%である組成からなるものが好ましい。
【0023】
一方、ガラスIIは、二酸化ケイ素(SiO2)50〜60質量%、酸化アルミニウム(Al23)10〜15質量%、酸化カルシウム(CaO)15〜25質量%、酸化チタン(TiO2)2〜5質量%、酸化マグネシウム(MgO)0〜5質量%、酸化亜鉛(ZnO)0〜5質量%、酸化バリウム(BaO)0〜5質量%、酸化ジルコニウム(ZrO2)2〜5質量%、酸化リチウム(Li2O)0〜2質量%、酸化ナトリウム(Na2O)0〜2質量%、酸化カリウム(K2O)0〜2質量%を含有し、酸化ホウ素(B23)を実質的に含有せず、かつ、前記酸化リチウム(Li2O)と前記酸化ナトリウム(Na2O)と前記酸化カリウム(K2O)との合計が0〜2質量%である組成からなるものが好ましい。
【0024】
前記ガラスI及びIIにおいて、SiO2の含有量は、ガラスフィラーの強度及びガラス製造時の溶解性の観点から、50〜60質量%であることが好ましい。Al23の含有量は、耐水性などの化学的耐久性及びガラス製造時の溶解性の観点から、10〜15質量%であることが好ましい。CaOの含有量は、ガラス製造時の溶解性及び結晶化抑制の観点から、15〜25質量%であることが好ましい。
ガラスIにおいては、Eガラスのように、B23を2〜8質量%含有することができる。この場合、TiO2の含有量は、屈折率の向上効果及び失透抑制などの観点から、2〜10質量%であることが好ましい。
また、ガラスIIにおいては、耐酸性や耐アルカリ性に優れるECRガラス組成のように、B23を実質的に含有しないことが好ましい。この場合、TiO2の含有量は、屈折率の調整の観点から、2〜5質量%であることが好ましい。また、ZrO2の含有量は、屈折率の増大、化学的耐久性の向上及びガラス製造時の溶解性の観点から、2〜5質量%であることが好ましい。
ガラスI及びIIにおいて、MgOは任意成分であり、引張り強度などの耐久性の向上及びガラス製造時の溶解性の観点から、0〜5質量%程度含有させることができる。また、ZnO及びBaOは任意成分であり、屈折率の増大、失透の抑制の観点から、それぞれ0〜5質量%程度含有させることができる。
【0025】
ガラスIにおいては、ZrO2は任意成分であり、屈折率の増大及びガラス製造時の溶解性の観点から、0〜5質量%程度含有させることができる。
ガラスI及びIIにおいて、アルカリ成分であるLi2O、Na2O、K2Oは任意成分であり、それぞれ0〜2質量%程度含有させることができ、かつそれらの合計含有量は0〜2質量%であることが好ましい。この合計含有量が2質量%以下であれば、耐水性の低下を抑制することができる。
このように、ガラスI及びIIは、アルカリ成分が少ないので、(A)成分の芳香族PC樹脂の分解による分子量低下を抑制し、成形品の物性低下を防止することができる。
当該ガラスI及びIIにおいては、前記のガラス成分以外に、紡糸性、耐水性等に悪影響を及ばさない範囲で、例えば、ガラスの屈折率を上げる成分として、ランタン(La)、Y(イットリウム)、ガドリニウム(Gd)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)又はタングステン(W)等の元素を含む酸化物を含んでもよい。また、ガラスの黄色を消色する成分として、コバルト(Co)、銅(Cu)又はネオジウム(Nd)等の元素を含む酸化物を含んでもよい。
また、ガラスI及びIIの製造に使用されるガラス原料には、着色を抑えるために、不純物として、酸化物基準でFe23含有量が、ガラス全体に対して0.01質量%未満であることが好ましい。
【0026】
本発明のPC樹脂組成物における(B)成分のガラスフィラーは、前記のガラス組成を有するガラスI及びIIの中から、使用する(A)成分の芳香族PC樹脂の屈折率との差が0.002以下であるものを適宜選択し、所望の形態のものを作製することにより、得ることができる。
当該ガラスフィラーの形態に特に制限はなく、様々な形態のガラスフィラー、例えばガラス繊維、ミルドファイバー、ガラスパウダー、ガラスフレーク、ガラスビーズなどを用いることができる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよいが、最終的に得られる成形品の機械強度、耐衝撃性、メタリック調外観及び成形性などのバランスの観点から、ガラス繊維及び/又はミルドファイバーが好適である。
ガラス繊維は、従来公知のガラス長繊維の紡糸方法を用いて得ることができる。例えば、溶融炉でガラス原料を連続的にガラス化してフォアハースに導き、フォアハースの底部にブッシングを取り付けて紡糸するダイレクトメルト(DM)法、又は、溶融したガラスをマーブル、カレット、棒状に加工してから再溶融して紡糸する再溶融法等の各種の方法を用いてガラスを繊維化することができる。
ガラス繊維の径に特に制限はないが、通常3〜25μm程度のものが好ましく用いられる。径が3μm以上であれば、乱反射を抑制して成形品のメタリック調外観の低下を防止することができ、また、25μm以下であれば、良好な強度を有する成形品を得ることができる。
【0027】
ミルドファイバーは、従来公知のミルドファイバーの製造方法を用いて得ることができる。例えば、ガラス繊維のストランドをハンマーミルやボールミルで粉砕することにより、ミルドファイバーにすることができる。ミルドファイバーの繊維径及びアスペクト比は特に限定されないが、繊維径は3〜25μm程度、アスペクト比は2〜150程度のものが好ましく用いられる。
ガラスパウダーは、従来公知の製造方法で得られる。例えば、溶融炉でガラス原料を溶融し、この融液を水中に投入し水碎したり、冷却ロールでシート状に成形して、そのシートを粉砕したりして、所望する粒径のパウダーにすることができる。ガラスパウダーの粒径は特に限定されないが、1〜100μm程度のものが好ましく用いられる。
ガラスフレークは、従来公知の方法で得られる。例えば、溶融炉でガラス原料を溶融し、この融液をチューブ状に引き出し、ガラスの膜厚を一定にした後、ロールで粉砕することにより、特定の膜厚のフリットを得て、そのフリットを粉砕して所望するアスペクト比を有するフレークにすることができる。ガラスフレークの厚み及びアスペスト比は特に限定されないが、厚み0.1〜10μm程度でアスペクト比が5〜150程度のものが好ましく用いられる。
【0028】
ガラスビーズは、従来公知の製造方法で得られる。例えば、溶融炉でガラス原料を溶融し、この融液をバーナーで噴霧して、所望する粒径のガラスビーズにすることができる。ガラスビーズの粒径は特に限定されないが、5〜300μm程度のものが好ましく用いられる。
前記ガラスフィラーは、(A)成分の芳香族PC樹脂との親和性を高め、密着性を向上させて、空隙形成による成形品のメタリック調外観や強度の低下を抑制するために、カップリング剤により表面処理することが好ましい。
カップリング剤としては、シラン系カップリング剤、ボラン系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤又はチタネート系カップリング剤等を使用することができる。特に、芳香族ポリカーボネート樹脂とガラスとの接着性が良好である点からシラン系カップリング剤を用いるのが好ましい。
【0029】
このシラン系カップリング剤の具体例としては、トリエトキシシラン,ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン,γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシシラン,γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン,β−(1,1−エポキシシクロヘキシル)ニチルトリメトキシシラン,N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン,N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン,γ−アミノプロピルトリエトキシシラン,N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン,γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン,γ−クロロプロピルトリメトキシシラン,γ−アミノプロピルトリメトキシシラン,γ−アミノプロピルトリス(2−メトキシ−エトキシ)シラン,N−メチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン,N−ビニルベンジル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン,トリアミノプロピルトリメトキシシラン,3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン,3−(4,5−ジヒドロイミダゾリル)プロピルトリエトキシシラン,ヘキサメチルジシラザン,N,O−(ビストリメチルシリル)アミド,N,N−ビス(トリメチルシリル)ウレア等が挙げられる。これらの中で好ましいのは、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン,N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン,γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン,β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のアミノシラン、エポキシシランである。
このようなカップリング剤を用いて前記ガラスフィラーの表面処理を行うには、通常の公知である方法で行うことができ、特に制限はない。例えば、上記カップリング剤の有機溶媒溶液あるいは懸濁液をいわゆるサイジング剤としてガラスフィラーに塗布するサイジング処理法、あるいはヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、レーディゲミキサー、V型ブレンダーなどを用いての乾式混合法、スプレー法、インテグラルブレンド法、ドライコンセントレート法など、ガスフィラーの形状により適宣な方法にて行うことができるが、サイジング処理法、乾式混合法、スプレー法により行うことが望ましい。
【0030】
本発明のPC樹脂組成物においては、前記の(A)成分である芳香族ポリカーボネート樹脂と(B)成分であるガラスフィラーとの含有割合は、それらの合計量100重量部につき、(A)成分が60〜90質量部で、(B)成分が40〜10質量部である。
(B)成分の含有量が10質量部未満では剛性の向上効果が充分に発揮されず、また40質量部を超えると比重が大きくなると共に、耐衝撃性が低下する傾向が出る。従って、剛性、耐衝撃性及び比重などの観点から、前記(A)成分と(B)成分との含有割合は、(A)成分が70〜90質量部で、(B)成分が30〜10質量部であることが好ましい。
【0031】
本発明のPC樹脂組成物においては、難燃性のさらなる向上などの目的で、(C)成分として反応性官能基を有するシリコーン化合物が添加される。
前記(C)成分である反応性官能基を有するシリコーン化合物(以下、反応性官能基含有シリコーン化合物と称することがある。)としては、例えば一般式(1)
1a2bSiO(4-a-b)/2 ・・・・・(1)
で表される基本構造を有する、ポリオルガノシロキサン重合体及び/又は共重合体を挙げることができる。
前記一般式(1)において、R1は反応性官能基を示す。この反応性官能基としては、例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、ポリオキシアルキレン基、水素基、水酸基、カルボキシ基、シラノール基、アミノ基、メルカプト基、エポキシ基及びビニル基等が挙げられる。これらの中で、アルコキシ基、水酸基、水素基、エポキシ基及びビニル基が好ましい。
2は炭素数1〜12の炭化水素基を示す。この炭化水素基としては、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基などが挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ベンジル基、フェネチル基などを挙げることができる。
a及びbは、0<a≦3、0<b≦3、0<a+b≦3の関係を満たす数を示す。R1が複数ある場合、複数のR1は同一でも異なっていてもよく、R2が複数ある場合、複数のR2は同一でも異なっていてもよい。
【0032】
本発明においては、同一の反応性官能基を複数有するポリオルガノシロキサン重合体及び/又は共重合体並びに異なる反応性官能基を複数有するポリオルガノシロキサン重合体及び/又は共重合体を併用することもできる。
一般式(1)で表される基本構造を有するポリオルガノシロキサン重合体及び/又は共重合体は、その反応性官能基(R1)数/炭化水素基(R2)数が、通常0.1〜3、好ましくは0.3〜2程度のものが好ましい。また、これらの反応性官能基含有シリコーン化合物は、添加時の透光性を保持するために屈折率が1.45〜1.65、好ましくは1.48〜1.60のものが好ましい。
これらの反応性官能基含有シリコーン化合物は液状物、パウダー等であるが溶融混練において分散性の良好なものが好ましい。例えば、室温での粘度が10〜500,000mm2/s程度の液状のものを例示することができる。
本発明のPC樹脂組成物にあっては、反応性官能基含有シリコーン化合物が液状であっても、組成物に均一に分散するとともに、成形時又は成形品の表面にブリードすることが少ない特徴がある。
【0033】
本発明のPC樹脂組成物においては、この(C)成分の反応性官能基含有シリコーン化合物は、前記(A)成分と(B)成分とからなる組成物100質量部に対して、0.05〜2.0質量部を含有させる。
当該(C)成分の含有量が0.05質量部未満では、燃焼時における溶融滴下(ドリッピング)防止効果が不充分であり、また、2.0質量部を超えると混練時にスクリューの滑りが発生し、フィードがうまくできず、生産能力が低下する。溶融滴下防止及び生産性の観点から、当該(C)成分の好ましい含有量は0.1〜1.0質量部であり、より好ましい含有量は0.2〜0.8質量部である。
【0034】
本発明のPC樹脂組成物における(D)成分の光沢粒子として、マイカ、金属粒子、金属硫化物粒子、表面を金属又は金属酸化物で被覆された粒子、表面を金属又は金属酸化物で被覆されたガラスフレークを挙げることができる。
金属粒子の具体例としては、アルミニウム、金、銀、銅、ニッケル、チタン、ステンレス等の金属粉末、表面を金属又は金属酸化物で被覆された粒子の具体例としては、酸化チタンで被覆された雲母チタン、三塩化ビスマスで被覆された雲母のような金属酸化被膜雲母系のもの、金属硫化物粒子の具体例としては、硫化ニッケル、硫化コバルト、硫化マンガン、等の金属硫化物粉末、及び表面を金属又は金属酸化物で被覆したガラスフレークに用いられる金属としては、金、銀、白金、パラジウム、ニッケル、銅、クロム、錫、チタン、ケイ素などを、それぞれ挙げることができる。
(D)成分の光沢粒子の体積平均粒径は10〜300μm程度が好ましい。
上記(D)成分の光沢材料の配合量は、前記(A)成分と(B)成分とからなる組成物100質量部に対して、0.05〜7.0質量部、好ましくは0.5〜5質量部である。0.05質量部未満であると、表面外観としてメタリック調外観の模様が形成されにくくなり、7.0質量部を超えると、光沢粒子自身の表面に浮き出る量が多くなって、外観が損なわれたり、難燃性が低下する傾向が出るため好ましくない。
【0035】
上記(E)成分の着色剤としては、隠蔽性を持たないものがよく、例えばメチン系染料、ピラゾロン系染料、ペリノン系染料、アゾ系染料、キノフタロン系染料、アンスラキノン系染料などが挙げられる。
上記(E)成分の着色剤の配合量は、前記(A)成分と(B)成分とからなる組成物100質量部に対して、好ましくは0.0001〜3.0質量部、より好ましくは0.1〜3.0質量部である。
この(E)成分の配合量が0.0001質量部未満であると、所望の色調が得られにくく、一方、3.0質量部を超えると、隠蔽性が高まり、メタリック調外観が得られにくくなる。
【0036】
本発明のPC樹脂組成物には、前記の(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、及び添加されるのが好ましい(E)成分以外に、本発明の目的が損なわれない範囲で、必要に応じ、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、及びシランカップリング剤(ガラスフィラーの表面処理を乾式混合法で行う場合)などを適宜含有させることができる。
【0037】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤を好ましく用いることができる。
フェノール系酸化防止剤としては、例えばトリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等が挙げられる。
【0038】
リン系酸化防止剤としては、例えばトリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
これらの酸化防止剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。その添加量は、前記(A)成分と(B)成分とからなる組成物100質量部に対して、通常0.05〜1.0質量部程度である。
【0039】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾオキサジン系紫外線吸収剤又はベンゾフェノン系紫外線吸収剤などを用いることができる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ジ−tert−アミル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、5−トリフルオロメチル−2−(2−ヒドロキシ−3−(4−メトキシ−α−クミル)−5−tert−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
中でも2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールが好ましい。
【0040】
トリアジン系の紫外線吸収剤としては、ヒドロキシフェニルトリアジン系の例えば商品名チヌビン400(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)が好ましい。
ベンゾオキサジン系の紫外線吸収剤としては、2−メチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−ブチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−フェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(1−又は2−ナフチル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(4−ビフェニル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2,2’−ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−m−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2,6又は1,5−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、1,3,5−トリス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ベンゼンなどが挙げられるが、中でも2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)が好ましい。
【0041】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等が挙げられ、なかでも2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノンが好ましい。
これらの紫外線吸収剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。その添加量は、前記(A)成分と(B)成分とからなる組成物100質量部に対して、通常0.05〜2.0質量部程度である。
【0042】
離型剤としては、一価又は多価アルコールの高級脂肪酸エステルを用いることができる。かかる高級脂肪酸エステルとしては、炭素数1〜20の一価又は多価アルコールと炭素数10〜30の飽和脂肪酸との部分エステル又は完全エステルであるものが好ましい。一価又は多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステル又は完全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、プロピレングリコールモノステアレート、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート、2−エチルヘキシルステアレートなどが挙げられ、なかでもステアリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレートが好ましく用いられる。
これらの離型剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その添加量は、前記の(A)成分と(B)成分とからなる組成物100質量部に対して、通常0.1〜5.0質量部程度である。
【0043】
帯電防止剤としては、例えば炭素数14〜30の脂肪酸のモノグリセリド、具体的にはステアリン酸モノグリセリド、パルミチン酸モノグリセリドなどを、あるいはポリアミドポリエーテルブロック共重合体などを用いることができる。
蛍光増白剤としては、例えばスチルベン系、ベンズイミタゾール系、ナフタルイミド系、ローダミン系、クマリン系、オキサジン系化合物等が挙げられる。具体的には、ユビテック(商品名 チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、OB−1(商品名 イーストマン社製)、TBO(商品名 住友精化(株)製)、ケイコール(商品名 日本曹達(株)製)、カヤライト(商品名 日本化薬(株)製)、リューコプアEGM(商品名 クラリアントジャパン(株)製)などの市販品を用いることができる。
なお、シランカップリング剤としては、前述で例示した化合物を用いることができる。
【0044】
本発明のPC樹脂組成物の調製方法に特に制限はなく、従来公知の方法を採用することができる。具体的には、前記の(A)成分の芳香族ポリカーボネート樹脂である(a−1)一般PC樹脂と(a−2)PC−POS共重合体、(B)成分のガラスフィラー、(C)成分の反応性官能基含有シリコーン化合物、(D)光沢粒子、好ましくはさらに(E)着色剤、及び必要により用いられる各種任意成分を、それぞれ所定の割合で配合し、混練することにより、調製することができる。
配合及び混練は、通常用いられている機器、例えば、リボンブレンダー、ドラムタンブラーなどで予備混合して、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機及びコニーダ等を用いる方法で行うことができる。混練の際の加熱温度は、通常240〜300℃の範囲で適宜選定される。
なお、芳香族ポリカーボネート樹脂以外の含有成分は、あらかじめ、該芳香族ポリカーボネート樹脂の一部と溶融混練したもの、すなわち、マスターバッチとして添加することもできる。
このようにして調製された本発明のPC樹脂組成物は、UL94に準拠した難燃性評価で、1.5mmV−0であり、いわゆる難燃剤を用いなくとも優れた難燃性を有している。なお、難燃性評価試験については、後で説明する。
【0045】
次に、本発明のPC樹脂成形品について説明する。
本発明のPC樹脂成形品は、前述の本発明の難燃性PC樹脂組成物を成形してなるものである。この成形品の厚さは、該成形品の用途によって、好ましくは0.3〜10mmの範囲から適宜選定される。
本発明のPC樹脂成形品の製造方法に特に制限はなく、従来公知の各種成形方法、例えば射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、ブロー成形法、プレス成形法、真空成形法及び発泡成形法などを用いることができるが、特に、金型温度120℃以上で射出成形することが好ましい。
金型温度120℃以上で射出成形することにより、ガラスフィラーが沈み、良好な外観が得られるなどのメリットが得られる。より好ましい金型温度は、125℃以上であり、さらに好ましくは130〜140℃である。
この際、射出成形における樹脂温度は、通常240〜300℃程度、好ましくは260〜280℃である。
成形原料である本発明のPC樹脂組成物は、前記溶融混練方法により、ペレット状にして使用することが好ましい。
なお、射出成形方法としては、外観のヒケ防止のため、又は軽量化のためのガス注入成形を採用することができる。
このようにして得られた本発明のPC樹脂成形品の光学特性は、60°鏡面光沢度が通常80以上、好ましくは85以上、かつ可視光に対する全光線透過率が通常40%以上、好ましくは42%以上であることが望ましい。
なお、光学特性の測定方法については、後で説明する。
【0046】
本発明はまた、前述の本発明のPC樹脂組成物を、金型温度120℃以上で射出成形し、好ましくは厚さ0.3〜10mmの成形品を作製することを特徴とするPC樹脂成形品の製造方法も提供する。
本発明のPC樹脂組成物は、芳香族PC樹脂の屈折率と屈折率が同じか、又は近似したガラスフィラーを含有し、メタリック調外観、機械強度、耐衝撃性及び耐熱性などに優れると共に、難燃剤を用いなくとも高い難燃性が付与されており、この組成物を用いて得られた本発明のPC樹脂成形品は、メタリック調外観、難燃性、機械強度、耐衝撃性及び耐熱性などに優れている。
本発明のPC樹脂成形品は、例えば、
(1)テレビ、ラジオカセット、ビデオカメラ、ビデオテープレコーダ、オーディオプレーヤー、DVDプレーヤー、エアコンディショナ、携帯電話、ディスプレイ、コンピュータ、レジスター、電卓、複写機、プリンター、ファクシミリ等の各種部品、外板及びハウジング材等の電気・電子機器用部品、
(2)PDA、カメラ、スライドプロジェクター、時計、計測器、表示器械等の精密機械などのケース及びカバー類等の精密機器用部品、
(3)インスツルメントパネル、アッパーガーニッシュ、ラジエータグリル、スピーカーグリル、ホイールカバー、サンルーフ、ヘッドランプリフレクター、ドアバイザー、スポイラー、リアウィンド、サイドウィンド等の自動車内装材、外装品及び車体部品等の自動車用部品、
(4)イス、テーブル、机、ブラインド、照明カバー、インテリア器具類等の家具用部品
などとして好適に用いることができる。
【実施例】
【0047】
次に、本発明を実施例、比較例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各例で得られたPC樹脂組成物ペレットを用い、下記のようにして試験片を成形して、諸特性を評価した。
(1)機械特性
ペレットを100t射出成形機[東芝機械(株)製、機種名「IS100E」]を用いて、金型温度130℃、樹脂温度280℃で射出成形し、所定形状の各試験片を作製した。
各試験片について、引張特性(破断強度、伸び)を、ASTM D638に準拠して測定し、曲げ特性(強度、弾性率)を、ASTM 790に準拠して測定した。またIzod衝撃強度をASTM D256に準拠し、荷重撓み温度をASTM D648に準拠し、比重をASTM D792に準拠して、それぞれ測定した。
(2)難燃性
ペレットを45t射出成形機[東芝機械(株)製、機種名「IS45PV」]を用いて、金型温度130℃、樹脂温度280℃で射出成形し、127×12.7×1.5mmの試験片を作製した。この試験片について、難燃性をUL94(アンダーライターズラボラトリー・サブジェクト94)に準拠して測定した。
(3)光学特性
ペレットを80t射出成形機[(株)小松製作所製、機種名「FK80HG」]を用いて、金型温度130℃、樹脂温度280℃で射出成形し、12.7×127×0.4mmの試験片を作製した。この試験片について、380〜780nmの可視光領域の全光線透過率を、分光光度計[(株)日立製作所製、機種名「U−4100」]を用いて、JIS K 7105に準拠して測定した。
60°鏡面光沢度は、光沢計を使用し、JIS K 7105に従って測定した。
すなわち、鏡面光沢度は、光沢計[日本電色(株)製、機種名「VGS−Σ901」]を使用し、JIS K 7105に従って、試料面に規定された入射角で規定の開き角の光束を入射し、鏡面反射方向に反射する規定の開き角の光束を受光器で測り、標準面の光沢度と標準面からの鏡面反射光束を基に算出したものであり、60°鏡面光沢度は、このときの入射角を60±0.2°としたものである。
【0048】
また、PC樹脂組成物ペレットの作製に用いた各成分の種類を以下に示す。
(1)PC1(一般PC樹脂);粘度平均分子量22500であるビスフェノールAポリカーボネート[出光興産(株)製、商品名「タフロンFN2200A」、屈折率1.585]
(2)PC2(PC−PDMS共重合体);ポリジメチルシロキサン(PDMS)共重合体ビスフェノールAポリカーボネート樹脂[粘度平均分子量15000、PDMS部含有量4質量%、PDMS部鎖長(n)30、屈折率1.584]
(3)屈折率改良GF1;屈折率1.584、比重2.70であるφ13μm×3mmのチョップドストランドからなるガラス繊維[旭ファイバーグラス(株)製、ガラス組成:SiO252.6質量%、Al2313.3質量%、CaO21.8質量%、TiO25.9質量%、B235.9質量%、MgO0.5質量%]
(4)屈折率改良GF2;屈折率1.584、比重2.70であるφ13μm×3mmのチョップドストランドからなるガラス繊維をミリングしたミルドファイバー[旭ファイバーグラス(株)製、ガラス組成は上記(3)と同様]
(5)GF1;屈折率1.555、比重2.54のEガラス製のφ13μm×3mmのチョップドストランドからなるガラス繊維[旭ファイバーグラス(株)製、商品名「03MA409C」、ガラス組成:SiO255.4質量%、Al2314.1質量%、CaO23.2質量%、B236.0質量%、MgO0.4質量%、Na2O+K2O+Li2O=0.7質量%、Fe230.2質量%、F20.6質量%]
(6)GF2;屈折率1.579のECRガラス製のφ13μm×3mmのチョップドストランドからなるガラス繊維[旭ファイバーグラス(株)製、ガラス組成:SiO258.0質量%、Al2311.4質量%、CaO22.0質量%、TiO22.2質量%、MgO2.7質量%、ZnO2.7質量%、Na2O+K2O+Li2O=0.8質量%、Fe230.2質量%]
(7)安定化剤1;オクタデシル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)、商品名「Irganox1076」]
(8)安定化剤2;トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名「Irgafos168」]
(9)離型剤;ペンタエリスリトールテトラステアレート[理研ビタミン(株)製、商品名「EW440A」]
(10)難燃助剤1;屈折率が1.51であり、官能基としてビニル基及びメトキシ基を有する反応性シリコーン化合物[信越化学工業(株)製、商品名「KR−219」]
(11)難燃助剤2;屈折率が1.49であり、官能基としてビニル基及びメトキシ基を有する反応性シリコーン化合物[東レ・ダウコーニング(株)製、商品名「DC3037」]
(12)難燃助剤3;ポリテトラフルオロエチレン樹脂[旭硝子(株)製、商品名「CD076」]
(13)光沢粒子1;酸化チタンで被覆したガラスフレーク[日本板硝子(株)製、商品名「MC1030RS」]
(14)光沢粒子2;酸化チタン及び酸化ケイ素で被覆したガラスフレーク[MERCK社製、商品名「Miraval5411」]
(15)光沢粒子3;着色材をコーティングしたアルミニウム箔[日本防湿工業(株)製、商品名「アストロフレーク」]
(16)着色剤1;アンスラキノン系オレンジ染料[三菱化学(株)製、商品名「ダイヤレジンオレンジHS」]
(17)着色剤2;アンスラキノン系グリーン染料[住友化学(株)製、商品名「スミプラストグリーンG」]
【0049】
実施例1〜7及び比較例1〜8
第1表に示す配合割合で、各成分を混合し、2軸押出し機[東芝機械(株)製、機種名「TEM−35B」]を用い、280℃にて溶融混練することにより、各PC樹脂組成物ペレットを作製した。
この各ペレットを用い、前述したように試験片を成形して、機械特性、難燃性及び光学特性を求めた。その結果を第1表に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【0053】
第1表から、以下に示すことが分かる。
実施例1〜7から、一般PC樹脂とPC−PDMS共重合体との組成物(以下、特定PC樹脂という。)と、該特定PC樹脂との屈折率差が0.002以下のガラスフィラーとからなる組成物に、反応性官能基含有シリコーン化合物と光沢粒子と着色剤を添加することにより、メタリック調外観、強度及び耐熱性を維持したまま、優れた難燃性を付与することができることが分かる。
比較例1から、一般PC樹脂と、該一般PC樹脂との屈折率差が0.002以下のガラスフィラーからなる組成物において、該PC樹脂中にオルガノシロキサンとの共重合体を含まず、かつ反応性官能基含有シリコーン化合物を添加しない例であり、この場合、良好なメタリック調外観(全光線透過率が40%以上、かつ60°鏡面光沢度が80以上)、強度及び耐熱性は維持できるが、十分な難燃性を付与することができないことが分かる。
比較例2から、比較例1の組成物に、さらに難燃助剤1(反応性官能基含有シリコーン化合物)を添加した例であり、この場合、良好なメタリック調外観(全光線透過率が40%以上、かつ60°鏡面光沢度が80以上)、強度及び耐熱性を維持できるが、比較例1同様に充分な難燃性を付与することができないことが分かる。
比較例3から、特定PC樹脂と、該特定PC樹脂との屈折率差が0.002以下のガラスフィラーからなる組成物に、反応性官能基含有シリコーン化合物を添加しない例であり、この場合も良好なメタリック調外観(全光線透過率が40%以上、かつ60°鏡面光沢度が80以上)、強度及び耐熱性は維持できるが、充分な難燃性を付与することができないことが分かる。
比較例4から、特定PC樹脂と、ガラスフィラー(屈折率1.584)とからなる組成物に、反応性官能基含有シリコーン化合物、光沢粒子及び着色剤を添加した例であるが、反応性官能基含有シリコーン化合物の配合量が、本発明の範囲より少なくなると、良好なメタリック調外観(全光線透過率が40%以上、かつ60°鏡面光沢度が80以上)、強度及び耐熱性は維持できるが、充分な難燃性を付与することができないことが分かる。
比較例5から、特定PC樹脂と、該特定PC樹脂との屈折率差が0.002以下のガラスフィラーと、光沢粒子と、着色剤からなる組成物に、反応性官能基含有シリコーン化合物に替えてポリテトラフルオロエチレン樹脂を添加した例であり、この場合、強度、難燃性及び耐熱性は維持できるが、良好なメタリック調外観(全光線透過率が40%以上、かつ60°鏡面光沢度が80以上)を付与することができないことが分かる。
比較例6から、特定PC樹脂と、該特定PC樹脂との屈折率差が0.002以下のガラスフィラーと、反応性官能基含有シリコーン化合物と、光沢粒子、及び着色剤とからなる組成物であるが、光沢粒子の添加量が多すぎると、強度及び耐熱性は維持できるが、十分な難燃性と良好なメタリック調外観(全光線透過率が40%以上、かつ60°鏡面光沢度が80以上)を付与することができないことが分かる。
比較例7、8から、特定PC樹脂と、Eガラス(屈折率1.555)又はECRガラス(屈折率1.579)からなるガラスフィラー、反応性官能基含有シリコーン化合物、光沢粒子、及び着色剤からなる樹脂組成物では、強度、耐熱性及び難燃性は維持できるが、良好なメタリック調外観(全光線透過率が40%以上、かつ60°鏡面光沢度が80以上)を付与することはできないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の難燃性PC樹脂組成物は、芳香族PC樹脂の屈折率と屈折率が同一、または近似したガラスフィラーを含有し、メタリック調外観(全光線透過率が40%以上、かつ60°鏡面光沢度が80以上)、機械強度、耐衝撃性及び耐熱性などに優れると共に、難燃剤を用いなくとも高い難燃性が付与されており、この組成物を用いて得られた本発明のPC樹脂成形品は、様々な分野における用途に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体を含む芳香族ポリカーボネート樹脂60〜90質量部と、(B)前記芳香族ポリカーボネート樹脂との屈折率の差が0.002以下のガラスフィラー40〜10質量部とからなる組成物100質量部に対して、(C)反応性官能基を有するシリコーン化合物0.05〜2.0質量部、及び(D)光沢粒子0.05〜7.0質量部を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)成分と(B)成分とからなる組成物100質量部中、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体10〜40質量部を含む請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体が、ポリオルガノシロキサン部を0.3〜5.0質量%含む請求項1又は2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)成分のガラスフィラーが、ガラス繊維及び/又はミルドファイバーである請求項1〜3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項5】
前記(B)成分のガラスフィラーが、屈折率1.583〜1.587である請求項1〜4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項6】
前記(D)成分の光沢粒子が、マイカ、金属粒子、金属硫化物粒子、表面を金属又は金属酸化物で被覆された粒子、表面を金属又は金属酸化物で被覆されたガラスフレークからなる群より選ばれる1種又は2種以上である請求項1〜5のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項7】
さらに(E)着色剤0.0001〜3質量部を含む請求項1〜6のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のポリカーボネ−ト樹脂組成物を成形してなるポリカーボネート樹脂成形品。
【請求項9】
金型温度120℃以上で射出成形してなる請求項8に記載のポリカーボネート樹脂成形品。
【請求項10】
60°鏡面光沢度が80以上、かつ可視光に対する全光線透過率が40%以上である請求項8又は9に記載のポリカーボネート樹脂成形品。
【請求項11】
UL94に準拠した難燃性評価法で1.5mmV−0である請求項8〜10のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂成形品。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物を、金型温度120℃以上で射出成形し、成形品を作製することを特徴とするポリカーボネート樹脂成形品の製造方法。

【公開番号】特開2009−102588(P2009−102588A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−278057(P2007−278057)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】