説明

ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法およびそれからなる成形品

【課題】製造時の生産性が安定し、また、シルバーストリーク等の表面欠陥の発生がなく、外観性に優れ、かつ、安定した難燃性を有するポリカーボネート樹脂組成物の製造方法及びそれを射出成形して得られた成形品を提供する。
【解決手段】ポリカーボネート樹脂、アルミナおよびオルガノシロキサンで表面処理された酸化チタン系添加剤、難燃剤、および難燃助剤としてのポリテトラフルオロエチレンを含有するポリカーボネート樹脂組成物を製造する方法であって、ポリカーボネート樹脂にポリテトラフルオロエチレンを配合するに際し、結晶構造が13/6らせん構造のポリテトラフルオロエチレンを用いることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物の製造方法、およびその製造方法で得られた樹脂組成物を射出成形してなる成形品による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法およびそれからなる成形品に関し、さらに詳しくは、シルバーストリーク等の表面欠陥の発生がなく、外観性に優れ、優れた耐衝撃性を有し、さらに高反射性で難燃性のポリカーボネート樹脂組成物を製造する方法及び得られたポリカーボネート樹脂組成物を成形した成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、汎用エンジニアリングプラスチックとして透明性、機械的強度、電気的性質、耐熱性、寸法安定性などに優れているので、電気・電子機器部品、OA機器、機械部品、車輌部品、建築部材、各種容器、レジャー用品・雑貨類などの幅広い分野で使用されている。
【0003】
これらの使用分野の中で、薄膜トランジスタ(TFT)を初めとする、コンピュータやテレビ等の情報表示装置では、液晶表示装置のバックライト用反射板、そして照光式プッシュスイッチや光電スイッチの反射板など、高度の光線反射率が要求される反射板を組み込んだ表示装置が一般的になりつつある。
【0004】
これらの高度の光線反射率が要求される光反射部材は、光反射性、成形性、衝撃強度の点から酸化チタン等の微粒子含有量の高いポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる樹脂成形体等が使用されている。
【0005】
また、ポリカーボネート樹脂組成物からなる光反射部材は、難燃化の要望が強く、芳香族ポリカーボネート樹脂に、ハロゲン系化合物、リン系化合物、シロキサン系化合物、ポリテトラフルオロエチレン等を配合して難燃化する技術が多数提案されている。最近では、環境に対する配慮から、臭素系難燃剤あるいはリン系難燃剤を使用せず、他の難燃剤を用いた難燃性樹脂組成物も望まれている。
【0006】
これまで非リン系難燃剤および酸化チタンを併用した難燃性ポリカーボネートの例として、特許文献1〜2が挙げられるが、いずれも燃焼性を高めるために難燃剤を配合しなければならず、その組合せがシルバーストリークによる外観不良の原因となっていた。
【0007】
例えば、特許文献1には、ポリカーボネート樹脂に、シリカにポリオルガノシロキサン重合体を担持したシリコーン系難燃剤、ポリテトラフルオロエチレンからなる樹脂組成物が、UL難燃性1.5mmでV−0と記載されている。しかしながら、難燃剤中の無機シリカによる成形時のフローマーク、および低粘度のポリジメチルシロキサンの脱離によるシルバーストリーク等の外観不良を生じるため、特に意匠性が要求される部材としては充分な性能とはいいにくい。
【0008】
また、特許文献2には、ポリカーボネート樹脂に、ポリテトラフルオロエチレン、有機金属塩、シリコーン化合物に酸化チタンを加えた難燃性樹脂組成物が記載されている。しかしながらこの組成物は、高温および滞留安定性に乏しく、衝撃性および外観が著しく劣る。
【0009】
また、酸化チタンを含有する難燃性ポリカーボネートの例として、特許文献3〜4が挙げられるが、いずれも充分な性能を有するものとは言い難い。
【0010】
特許文献3には、(A)ポリカーボネート樹脂に(B)酸化チタン、(C)アルキルベンゼンスルホン酸系帯電防止剤1〜8質量部を添加した樹脂組成物について記載されている。しかしながらアルカリ金属塩の添加量が多いため成形時にポリカーボネートの分子量低下が大きく、成形性および難燃性能が低下する。
【0011】
特許文献4には、ポリカーボネート樹脂にポリテトラフルオロエチレン、有機金属塩、シリコーン化合物、更に特定の酸化チタンを加えた樹脂組成物について記載されている。しかしながらシルバーストリークのような外観不良は、酸化チタンの二次凝集の状態に大きく依存するため、満足な結果は得られない。またシリコーン化合物の添加により、外観不良が発生する。
【0012】
酸化チタンを表面処理することについては、例えば、特許文献5に、ポリカーボネート樹脂にポリオルガノシロキサンで処理した針状酸化チタンを使用することが記載されている。しかしながら、単に酸化チタンをポリオルガノシランで表面処理するだけでは、シルバーストリークス等の外観不良が発生しやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第3124488号公報
【特許文献2】特開2003−183491号公報
【特許文献3】特開平11−181267号公報
【特許文献4】特開2006−241262号公報
【特許文献5】特開平8−59976号公報
【0014】
こうした状況下、シルバーストリーク等の表面欠陥の発生がなく、外観性に優れ、優れた耐衝撃性を有し、さらに高反射性で難燃性のポリカーボネート樹脂組成物の開発が強く望まれていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、シルバーストリーク等の表面欠陥の発生がなく、外観性に優れ、優れた耐衝撃性を有し、さらに高反射性で難燃性のポリカーボネート樹脂組成物、及びこれを成形してなる樹脂成形品、具体的には光反射部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、特定の表面処理が施された酸化チタンと難燃助剤としてのポリテトラフルオロエチレンの組み合わせにおいて、ポリテトラフルオロエチレンに着目し、樹脂組成物の製造の際に、結晶構造が13/6らせん構造を有するポリフルオロエチレンを用いることで、製造時の生産性が安定し、また、成形品中のポリテトラフルオロエチレン凝集物に起因するシルバーストリーク等の表面欠陥の発生がなく、外観性に優れ、優れた耐衝撃性を有し、さらに高反射率で、安定した高い難燃性を有するポリカーボネート樹脂組成物が得られることを見出し本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明の第1の発明は、ポリカーボネート樹脂、アルミナおよびオルガノシロキサンで表面処理された酸化チタン系添加剤、難燃剤、および難燃助剤としてのポリテトラフルオロエチレン)を含有するポリカーボネート樹脂組成物を製造する方法であって、ポリカーボネート樹脂にポリテトラフルオロエチレンを配合するに際し、結晶構造が13/6らせん構造のポリテトラフルオロエチレンを用いることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物の製造方法である。
【0018】
また、本発明の第2の発明は、第1の発明において、結晶構造が13/6らせん構造のポリテトラフルオロエチレンを、比表面積が0.01〜5mm/gで、60〜95質量%が180〜1700μmの粒径を有するポリカーボネート樹脂粉粒体に配合したマスターバッチを混合してポリカーボネート樹脂組成物を得る工程を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物の製造方法である。
【0019】
また、本発明の第3の発明は、第1または第2の発明において、ポリテトラフルオロエチレンが、温度調整することにより結晶構造を13/6らせん構造とされることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物の製造方法である。
【0020】
また、本発明の第4の発明は、第3の発明において、ポリテトラフルオロエチレンを、19℃以下の温度下に保持することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物の製造方法である。
【0021】
また、本発明の第5の発明は、第1〜第4のいずれかの発明において、結晶構造が13/6らせん構造のポリテトラフルオロエチレン)を、比表面積が0.01〜5mm/gで、60〜95質量%が180〜1700μmの粒径を有するポリカーボネート樹脂粉粒体に配合したマスターバッチを混合して得られたポリカーボネート樹脂組成物を成形する際に、ポリテトラフルオロエチレンの結晶構造を15/7らせん構造にして成形することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物の製造方法である。
【0022】
また、本発明の第6の発明は、第5の発明において、結晶構造が13/6らせん構造のポリテトラフルオロエチレンを、19℃以下の温度で保持した前記ポリカーボネート樹脂粉粒体に配合することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物の製造方法である。
【0023】
また、本発明の第7の発明は、第5または第6の発明において、得られたマスターバッチを19℃以下の温度下で保持した後、ポリカーボネート樹脂と混合することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物の製造方法である。
【0024】
また、本発明の第8の発明は、第1の発明において、酸化チタン系添加剤を、比表面積が0.01〜5mm/gで、60〜95質量%が180〜1700μmの粒径を有するポリカーボネート樹脂粉粒体に配合したマスターバッチを混合する工程を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物の製造方法である。
【0025】
また、本発明の第9の発明は、第1の発明において、難燃剤が、縮合リン酸エステル系難燃剤または金属塩系難燃剤から選ばれた少なくとも1種以上であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物の製造方法である。
【0026】
また、本発明の第10の発明は、第9の発明において、金属塩系難燃剤が、芳香族スルホン酸アルカリ(土類)金属塩であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物の製造方法である。
【0027】
また、本発明の第11の発明は、第10の発明において、芳香族スルホン酸アルカリ(土類)金属塩が、パラトルエンスルホン酸ナトリウムおよび/またはパラトルエンスルホン酸カリウムであることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物の製造方法である。
【0028】
また、本発明の第12の発明は、第9ないし第11のいずれかの発明において、金属塩系難燃剤を、比表面積が0.01〜5mm/gで、60〜95質量%が180〜1700μmの粒径を有するポリカーボネート樹脂粉粒体に配合したマスターバッチを混合する工程を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物の製造方法である。
【0029】
また、本発明の第13の発明は、第1の発明において、酸化チタン系添加剤の含有量が、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、3〜30質量部であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物の製造方法である。
【0030】
また、本発明の第14の発明は、第1の発明において、ポリテトラフルオロエチレンの含有量が、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.05〜0.9質量部であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物の製造方法である。
【0031】
また、本発明の第15の発明は、第9の発明において、縮合リン酸エステル系難燃剤の含有量が、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、2〜25質量部であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物の製造方法である。
【0032】
また、本発明の第16の発明は、第9ないし第12のいずれかの発明において、金属塩系難燃剤の含有量が、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.01〜0.5質量部であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物の製造方法である。
【0033】
さらに、本発明の第17の発明は、第1ないし第16のいずれかの発明の製造方法で得られたポリカーボネート樹脂組成物を射出成形して得られた成形品である。
【発明の効果】
【0034】
本発明の製造方法によれば、アルミナおよびオルガノシロキサンで表面処理が施された酸化チタン系添加剤と、難燃剤と、難燃助剤であるポリテトラフルオロエチレンとして、結晶構造が13/6らせん構造を有するポリフルオロエチレンを、配合時に用いることで、製造時の生産性が安定し、また、成形品にはポリテトラフルオロエチレン凝集物に起因するシルバーストリーク等の表面欠陥の発生がなく、外観性に優れ、優れた耐衝撃性を有し、さらに、高反射性で難燃性のポリカーボネート樹脂組成物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
[1.概要]
本発明は、ポリカーボネート樹脂、アルミナおよびオルガノシロキサンで表面処理された酸化チタン系添加剤、難燃剤、および難燃助剤としてのポリテトラフルオロエチレンを含有するポリカーボネート樹脂組成物を製造する方法であって、ポリカーボネート樹脂にポリテトラフルオロエチレンを配合するに際、結晶構造が13/6らせん構造のポリテトラフルオロエチレンを用いることを特徴とする。
【0036】
[2.ポリカーボネート樹脂]
本発明に使用されるポリカーボネート樹脂は、芳香族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂、芳香族−脂肪族ポリカーボネート樹脂が挙げられるが、好ましくは、芳香族ポリカーボネート樹脂であり、具体的には、芳香族ジヒドロキシ化合物をホスゲン又は炭酸のジエステルと反応させることによって得られる、分岐していてもよい熱可塑性芳香族ポリカーボネート重合体又は共重合体が用いられる。
【0037】
芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知のホスゲン法(界面重合法)や溶融法(エステル交換法)により製造したものを使用することができる。また、溶融法を用いた場合には、末端基のOH基量を調整したポリカーボネート樹脂を使用することができる。
【0038】
原料の芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4−ジヒドロキシジフェニル等が挙げられ、好ましくは、ビスフェノールAが挙げられる。また、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物を使用することもできる。
【0039】
分岐した芳香族ポリカーボネート樹脂を得るには、上述した芳香族ジヒドロキシ化合物の一部を、以下の分岐剤、即ち、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニルヘプテン−3、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン等のポリヒドロキシ化合物や、3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチン、5,7−ジクロルイサチン、5−ブロムイサチン等の化合物で置換すればよい。これら置換する化合物の使用量は、芳香族ジヒドロキシ化合物に対して、0.01〜10モル%であり、好ましくは0.1〜2モル%である。
【0040】
芳香族ポリカーボネート樹脂としては、上述した中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導されるポリカーボネート樹脂、又は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導されるポリカーボネート共重合体が好ましい。また、シロキサン構造を有するポリマー又はオリゴマーとの共重合体等の、ポリカーボネート樹脂を主体とする共重合体であってもよい。更には、上述した芳香族ポリカーボネート樹脂の2種以上を混合して用いてもよい。
【0041】
芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量を調節するには、一価の芳香族ヒドロキシ化合物を用いればよく、例えば、m−及びp−メチルフェノール、m−及びp−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−長鎖アルキル置換フェノール等が挙げられる。
【0042】
本発明に用いる芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量は、用途により適宜選択して決定すればよいが、成形性、強度等の点から、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量[Mv]で、10,000〜40,000、更には10,000〜30,000のものが好ましい。このように、粘度平均分子量を10,000以上とすることで機械的強度がより向上する傾向にあり、機械的強度の要求の高い用途に用いる場合により好ましいものとなる。一方、40,000以下とすることで流動性低下を、より抑制し改善する傾向にあり、成形加工性容易の観点からより好ましい。
【0043】
粘度平均分子量は中でも、10,000〜22,000、更には12,000〜22,000、特に14,000〜20,000であることが好ましい。また粘度平均分子量の異なる2種類以上の芳香族ポリカーボネート樹脂を混合してもよく、この際には、粘度平均分子量が上記好適範囲外である芳香族ポリカーボネート樹脂を混合してもよい。この場合、混合物の粘度平均分子量は上記範囲となるのが望ましい。
【0044】
本発明において、ポリカーボネート樹脂はペレット状のものや、フレーク状、グラニュール状などの粉粒体形状のものを用いることができるが、後述するマスターバッチを予め調整する場合は、粉粒体形状のものを使用するほうが、添加剤の分散性向上の点から特に好ましい。
【0045】
具体的には、粉粒体形状のポリカーボネート樹脂は、その60〜95質量%が、JIS
K0069(ふるい分け試験方法)に準拠した方法で測定した粒径分布で180〜1700μmである。この範囲に入る粒径分布は好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上であり、好ましくは92質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下である。
【0046】
また、粉粒体形状のポリカーボネート樹脂は、さらに、BET多点法により求めた比表面積が0.01m/g以上であることが好ましく、より好ましくは0.1m/g以上、更に好ましくは0.5m/g以上である。また、比表面積の上限は、好ましくは5mm/g以下、より好ましくは3mm/g以下、さらに好ましくは2mm/g以下である。
このような粒径分布と比表面積の粉粒体形状のポリカーボネート樹脂を用いて、ポリテトラフルオロエチレン、または酸化チタン系添加剤、金属塩系難燃剤等とをマスターバッチ化すると、特に分散性の優れた本発明のポリカーボネート樹脂組成物を製造することができる。
【0047】
[3.酸化チタン系添加剤]
本発明における酸化チタン系添加剤は、ポリカーボネート樹脂組成物から得られる成形品の遮光性、白度、光線反射特性などを向上させる様に機能する。酸化チタン系添加剤に用いられる酸化チタンは、製造方法、結晶形態および平均粒子径などは、特に限定されるものではない。酸化チタンの製造方法には(1)硫酸法および(2)塩素法があるが、硫酸法で製造された酸化チタンは、これを添加した組成物の白度が劣る傾向があるため、本発明の目的を効果的に達成するには、塩素法で製造されたものが好適である。
【0048】
酸化チタンの結晶形態には、ルチル型とアナターゼ型があるが、耐光性の観点からルチル型の結晶形態のものが好適である。酸化チタン系添加剤の平均粒子径は、通常0.1〜0.7μm、好ましくは0.1〜0.4μmである。平均粒子径が0.1μm未満では成形品の光線遮蔽性に劣り、0.7μmを超える場合は、成形品表面に肌荒れを起こしたり、成形品の機械的強度が低下したりする。なお本発明においては平均粒径の異なる酸化チタンを2種類以上混合して使用してもよい。
【0049】
なお、酸化チタン系添加剤は、後記するオルガノシロキサン系の表面処理剤で表面処理する前に、アルミナ系表面処理剤で前処理するのが好ましい。アルミナ系表面処理剤としてはアルミナ水和物が好適に用いられる。さらにアルミナ水和物とともに珪酸水和物で前処理しても良い。前処理の方法は特に限定されるものではなく、任意の方法によることが出来る。アルミナ水和物、さらに必要に応じて珪酸水和物による前処理は、酸化チタンに対して1〜15重量%の範囲で行なうのが好ましい。
【0050】
アルミナ水和物、さらに必要に応じて珪酸水和物前処理された酸化チタンは、更にその表面をオルガノシロキサン系の表面処理剤で表面処理することによって、熱安定性を大幅に改善することが出来る他、ポリカーボネート樹脂組成物中での均一分散性および分散状態の安定性を向上させる。オルガノシロキサン系の表面処理剤としては、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン化合物が好ましい。
【0051】
酸化チタンのオルガノシロキサン系の表面処理剤による表面処理法には(1)湿式法と(2)乾式法とがある。湿式法は、オルガノシロキサン系の表面処理剤と溶剤との混合物に、アルミナ水和物、さらに必要に応じて珪酸水和物で前処理された酸化チタンを加え、撹拌した後に脱溶媒を行い、更にその後100〜300℃で熱処理する方法である。乾式法は、上記と同様に前処理された酸化チタンとポリオルガノハイドロジェンシロキサン類とをヘンシェルミキサーなどで混合する方法、前処理された酸化チタンにポリオルガノハイドロジェンシロキサン類の有機溶液を噴霧して付着させ、100〜300℃で熱処理する方法などが挙げられる。シロキサン系の表面処理剤の量は、特に制限されるものではないが、酸化チタンの反射性、樹脂組成物の成形性などを勘案すると、酸化チタンに対し、通常1〜5重量%の範囲である。
【0052】
酸化チタン系添加剤の含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、3〜30質量部の範囲である。酸化チタン系添加剤の配合量が3質量部未満の場合は、樹脂組成物から得られる成形品の遮光性および反射特性が不十分となり、30質量部を超える場合は樹脂組成物の耐衝撃性が不十分となる。酸化チタン系添加剤の好ましい配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、好ましくは5質量部以上、特に好ましくは8質量部以上であり、好ましくは25質量部以下、特に好ましくは20質量部以下である。なお、酸化チタン系添加剤の質量は、アルミナ水和物、珪酸水和物、オルガノシロキサン系の表面処理剤によって表面処理されている場合は、これらの処理剤も含めた全質量を意味する。
【0053】
[4.ポリテトラフルオロエチレン]
難燃助剤として使用されるポリテトラフルオロエチレン樹脂は、テトラフルオロエチレン構造を含む重合体あるいは共重合体であり、具体例としては、テトラフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合樹脂等が挙げられるが、なかでもテトラフルオロエチレン樹脂が好ましい。
また、ポリテトラフルオロエチレン樹脂としては、フィブリル形成能を有するものが好ましく、フィブリル形成能を有することで、燃焼時の滴下防止性が著しく向上させることができる。
【0054】
フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンは、ASTM規格で「タイプ3」に分類される。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンとしては、例えば三井・デュポンフロロケミカル(株)製のテフロン(登録商標)6Jや、ダイキン化学工業(株)製のポリフロンF201L、FA500B、FA500Cが好ましく挙げられる。また、ポリテトラフルオロエチレンの水性分散液として、三井・デュポンフロロケミカル(株)製のテフロン(登録商標)31−JRや、ダイキン化学工業(株)製のフルオンD−1や、ビニル系単量体を重合してなる多層構造を有するポリフルオロエチレン化合物が挙げられる。いずれのタイプも本発明の樹脂組成物に用いることができる。また、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0055】
ポリテトラフルオロエチレンの平均粒径としては、JIS K6892準拠の方法で測定する平均粒径が、200μm以上であることが好ましく、より好ましくは300μm以上、さらに好ましくは400μm以上であり、好ましくは600μm以下、より好ましくは550μm以下、さらに好ましくは、500μm以下である。
また、ポリテトラフルオロエチレンのかさ密度は、JIS K6892準拠の方法で測定されるかさ密度で、0.3g/ml以上が好ましく、より好ましくは0.35g/ml以上、さらに好ましくは0.4g/mlであり、好ましくは0.6g/ml以下、より好ましくは0.55g/ml以下、さらに好ましくは0.5g/ml以下である。
【0056】
ポリテトラフルオロエチレンは、テトラフルオロエチレン連鎖が規則正しくつながるが、その炭素主鎖が少しずつねじれてらせん構造をとり、そのらせん構造は温度によって変化し、19℃以下では13/6らせん構造(炭素数13個毎に6回転してもとに戻る構造)であるが、19℃を超えると、そのらせん構造は少しほどけて15/7らせん構造(炭素数15個毎に7回転してもとに戻る構造)に転移する。
ポリテトラフルオロエチレンは、15/7らせん構造となると、粘調性になり分散性が低下し、ダマができたり分級を起こしやすく、難燃性向上効果が低下してしまうことが起きやすい。したがって、ポリテトラフルオロエチレンは、19℃以下の温度下に保持して13/6らせん構造である状態で他の成分と混合することが好ましい。
具体的には、ポリテトラフルオロエチレンを19℃以下に、必要ならば冷蔵保管し、好ましくは同様に19℃以下に保管したポリカーボネート樹脂の一部と予め混合して、マスターバッチとし、このマスターバッチを前記と同様に、残部のポリカーボネート樹脂および他の成分と混合・溶融混練することが好ましい。
【0057】
ポリテトラフルオロエチレンを含有した樹脂組成物を射出成形した成形品の外観をより向上させるためには、有機系重合体で被覆されたポリテトラフルオロエチレンを使用することができる。
有機重合体被覆ポリテトラフルオロエチレンを用いることで、分散性が向上し、成形品の表面外観が向上し、表面異物を抑制できる。有機重合体被覆ポリテトラフルオロエチレンは、公知の種々の方法により製造でき、例えば(1)ポリテトラフルオロエチレン粒子水性分散液と有機系重合体粒子水性分散液とを混合して、凝固またはスプレードライにより粉体化して製造する方法、(2)ポリテトラフルオロエチレン粒子水性分散液存在下で、有機系重合体を構成する単量体を重合した後、凝固またはスプレードライにより粉体化して製造する方法、(3)ポリテトラフルオロエチレン粒子水性分散液と有機系重合体粒子水性分散液とを混合した分散液中で、エチレン性不飽和結合を有する単量体を乳化重合した後、凝固またはスプレードライにより粉体化して製造する方法、等が挙げられる。
【0058】
有機重合体被覆ポリテトラフルオロエチレンとしては、被覆ポリテトラフルオロエチレン中のポリテトラフルオロエチレンの含有比率が40〜95質量%の範囲内となるものが好ましく、中でも、43〜80質量%、更には45〜70質量%、特には47〜60質量%となるものが好ましい。本発明の特定の被覆ポリテトラフルオロエチレンとしては、例えば三菱レイヨン(株)製のメタブレンA−3800、A−3700、KA−5503や、PIC社製のPoly TS AD001等を好ましく使用することができる。
【0059】
本発明において、ポリテトラフルオロエチレンの含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.05質量部以上、好ましくは0.08質量部、特に好ましくは0.1質量部以上であり、また、0.9質量部以下、好ましくは0.7質量部以下、特に好ましくは0.5質量部以下である。なお、被覆ポリテトラフルオロエチレンの場合、添加量はポリテトラフルオロエチレン純分の量に相当する。ポリテトラフルオロエチレンの含有量が0.05質量部未満の場合には、難燃性が十分ではなく、一方0.9質量部を超えると成形品外観の低下が起きやすい。
【0060】
[5.難燃剤]
本発明に使用される難燃剤としては、リン系難燃剤、金属塩系難燃剤、シリコーン系難燃剤が挙げられるが、その中で、リン系難燃剤、金属塩系難燃剤が好適に用いられる。リン系難燃剤としては縮合リン酸エステル系難燃剤が好ましい。
[5−1.縮合リン酸エステル系難燃剤]
【0061】
本発明における縮合リン酸エステル系難燃剤としては、例えば、下記一般式(1)で表されるリン系化合物が好ましく挙げられる。
【0062】
【化1】

(式中、R、R、RおよびRは、各々独立して、炭素数1〜6のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基、Xはアリーレン基を示し、p、q、rおよびsは、0または1であり、kは1から5の整数である。)
【0063】
上記一般式(1)で表される縮合リン酸エステル系難燃剤は、kが1〜5であり、kが異なる縮合燐酸エステルの混合物については、kはそれらの混合物の平均値となる。Xは、アリーレン基を示し、例えばレゾルシノール、ハイドロキノン、ビスフェノールA等のジヒドロキシ化合物から誘導される二価の基である。
【0064】
一般式(1)で表される縮合リン酸エステル系難燃剤の具体例としては、ジヒドロキシ化合物にレゾルシノールを使用した場合は、フェニルレゾルシン・ポリホスフェート、クレジル・レゾルシン・ポリホスフェート、フェニル・クレジル・レゾルシン・ポリホスフェート、キシリル・レゾルシン・ポリホスフェート、フェニル−p−t−ブチルフェニル・レゾルシン・ポリホスフェート、フェニル・イソプロピルフェニル・レゾルシンポリホスフェート、クレジル・キシリル・レゾルシン・ポリホスフェート、フェニル・イソプロピルフェニル・ジイソプロピルフェニル・レゾルシンポリホスフェート等が、好ましく挙げられる。
【0065】
縮合リン酸エステル系難燃剤としては、上記一般式(1)の中でも、熱安定性の面から、下記一般式(2)で表されるリン系難燃剤が特に好ましい。
【化2】

(式中、R、R及びRは、各々独立して、炭素数1〜6のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示し、h、i及びjは、0又は1である。)
【0066】
上記一般式(2)で表される縮合リン酸エステル系難燃剤は、公知の方法で、オキシ塩化リン等から製造することができる。一般式(2)で表される縮合リン酸エステル系難燃剤の具体例としては、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸ジフェニル2−エチルクレジル、リン酸トリ(イソプロピルフェニル)、メチルホスホン酸ジフェニルエステル、フェニルホスホン酸ジエチルエステル、リン酸ジフェニルクレジル、リン酸トリブチル等が好ましく挙げられる。
【0067】
縮合リン酸エステル系難燃剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、2質量部以上、好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは8質量部以上であり、25質量部以下、好ましくは22.5量部以下、さらに好ましくは20質量部以下である。リン系難燃剤の配合量が2質量部を下回る場合は、難燃性が不十分であり、25質量部を超えると著しい耐熱性の低下や、機械物性の低下を引き起こす為、好ましくない。
【0068】
[5−2.金属塩系難燃剤]
本発明に使用される金属塩系難燃剤としては、例えば、有機金属塩化合物、無機金属塩化合物などが挙げられるが、芳香族ポリカーボネート樹脂への分散性が良いという点から有機金属塩化合物が好ましい。
有機金属塩化合物としては、例えば、有機スルホン酸金属塩、有機スルホンアミドの金属塩、有機カルボン酸金属塩、有機ホウ酸金属塩、有機リン酸金属塩等が挙げられる。なかでも、ポリカーボネート樹脂と混合した場合の熱安定性の点から、有機スルホン酸金属塩、有機スルホンアミドの金属塩、有機リン酸金属塩が好ましく、特に有機スルホン酸金属塩、中でも芳香族スルホン酸金属塩が特に好ましい。
芳香族スルホン酸金属塩としては、ポリカーボネートに添加し、難燃性を改良することが出来る金属塩である。なかでも芳香族アルキルスルホン酸金属塩およびその誘導体が好ましく用いられる。
【0069】
芳香族スルホン酸金属塩の金属としては、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属が好ましい。アルカリ金属、およびアルカリ土類金属としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、及びバリウム等が挙げられる。中でもアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウムが、またアルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、セシウムが、ポリカーボネート樹脂との相溶性及び難燃性付与の点から好ましく、芳香族スルホン酸金属塩は、2種以上の混合物であってもよい。
【0070】
芳香族スルホン酸金属塩の例として、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸ナトリウム、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、4・4’−ジブロモジフェニル−スルホン−3−スルホンナトリウム、4・4’−ジブロモジフェニル−スルホン−3−スルホンカリウム、4−クロロ−4’−ニトロジフェニルスルホン−3ースルホン酸カルシウム、ジフェニルスルホン−3・3’−ジスルホン酸ジナトリウム、ジフェニルスルホン−3・3’−ジスルホン酸ジカリウムが挙げられる。なかでも非ハロゲン芳香族スルホン酸金属塩の例としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられ、なかでも難燃性・熱安定性・取り扱いの面からパラトルエンスルホン酸ナトリウム、またはパラトルエンスルホン酸カリウムが好ましく用いられる。
なお、金属塩系難燃剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0071】
金属塩系難燃剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂組成物100質量部に対して、0.01〜0.5質量部である。このように金属塩系難燃剤を含有することで、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の難燃性を向上させることができる。
【0072】
金属塩系難燃剤の含有量が0.01質量部より少ないと、得られる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の難燃性が不十分となり、逆に0.5質量部を超えると芳香族ポリカーボネート樹脂の熱安定性の低下、並びに、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の成形品の外観不良及び機械的強度の低下が生ずる。含有量の下限は、好ましくは0.03質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、特に好ましくは0.07質量部以上であり、上限は、好ましくは0.4質量部以下、より好ましくは0.3質量部以下、特に好ましくは0.2質量部以下である。
【0073】
[5−3.その他難燃剤]
難燃剤としては、シリコーン化合物を用いてもよい。シリコーン化合物としては特開2006−169451公報に記載の、直鎖状もしくは分岐状の構造を有するポリオルガノシロキサンが好ましい。該ポリオルガノシロキサンが有する有機基は、炭素数が1〜20のアルキル基及び置換アルキル基のような炭化水素又はビニル及びアルケニル基、シクロアルキル基、ならびにフェニル、ベンジルのような芳香族炭化水素基などの中から選ばれる。
該ポリジオルガノシロキサンは、官能基を含有していなくても、官能基を含有していても良い。官能基を含有しているポリジオルガノシロキサンの場合、官能基はメタクリル基、アルコキシ基又はエポキシ基であることが好ましい。
【0074】
本発明の樹脂組成物における、シリコーン化合物の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.5〜10質量部であることが好ましい。難燃剤用シリコーン化合物の含有量が上記範囲であると、透明性、成形品外観及び弾性率等を損なうことなく、難燃性が良好となるので好ましい。
なお、シリコーン化合物は、前記金属塩系難燃剤と併用しても良い。
【0075】
[6.その他の成分]
<エラストマ−>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、その他の成分としてエラストマーを含有してもよい。エラストマーを含有することで、ポリカーボネート樹脂組成物の耐衝撃性を改良することができる。
【0076】
本発明に用いるエラストマーは、なかでもゴム成分にこれと共重合可能な単量体成分とをグラフト共重合したグラフト共重合体が好ましい。グラフト共重合体の製造方法としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などのいずれの製造方法であってもよく、共重合の方式は一段グラフトでも多段グラフトであってもよい。
【0077】
ゴム成分は、ガラス転移温度が通常0℃以下、中でも−20℃以下が好ましく、更には−30℃以下が好ましい。ゴム成分の具体例としては、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブチルアクリレートやポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)、ブチルアクリレート・2−エチルヘキシルアクリレート共重合体などのポリアルキルアクリレートゴム、ポリオルガノシロキサンゴムなどのシリコーン系ゴム、ブタジエン−アクリル複合ゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキルアクリレートゴムとからなるIPN型複合ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴムやエチレン−ブテンゴム、エチレン−オクテンゴムなどのエチレン−αオレフィン系ゴム、エチレン−アクリルゴム、フッ素ゴムなど挙げることができる。これらは、単独でも2種以上を混合して使用してもよい。これらの中でも、機械的特性や表面外観の面から、ポリブタジエンゴム、ポリアルキルアクリレートゴム、ポリオルガノシロキサンゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキルアクリレートゴムとからなるIPN(Interpenetrating Polymer Network)型複合ゴム、スチレン−ブタジエンゴムが好ましい。
【0078】
ゴム成分とグラフト共重合可能な単量体成分の具体例としては、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物;マレイン酸、フタル酸、イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸化合物やそれらの無水物(例えば無水マレイン酸等)などが挙げられる。これらの単量体成分は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、機械的特性や表面外観の面から、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物が好ましく、より好ましくは(メタ)アクリル酸エステル化合物である。(メタ)アクリル酸エステル化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル等を挙げることができる。
【0079】
ゴム成分を共重合したグラフト共重合体は、耐衝撃性や表面外観の点からコア/シェル型グラフト共重合体タイプのものが好ましい。なかでもポリブタジエン含有ゴム、ポリブチルアクリレート含有ゴム、ポリオルガノシロキサンゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキルアクリレートゴムとからなるIPN型複合ゴムから選ばれる少なくとも1種のゴム成分をコア層とし、その周囲に(メタ)アクリル酸エステルを共重合して形成されたシェル層からなる、コア/シェル型グラフト共重合体が特に好ましい。上記コア/シェル型グラフト共重合体において、ゴム成分を40質量%以上含有するものが好ましく、60質量%以上含有するものがさらに好ましい。また、(メタ)アクリル酸は、10質量%以上含有するものが好ましい。
【0080】
これらコア/シェル型グラフト共重合体の好ましい具体例としては、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(MABS)、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体(MB)、メチルメタクリレート−アクリルゴム共重合体(MA)、メチルメタクリレート−アクリルゴム−スチレン共重合体(MAS)、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム共重合体、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−(アクリル・シリコーンIPNゴム)共重合体等が挙げられる。このようなゴム性重合体は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0081】
このようなコア/シェル型グラフト共重合体としては、例えば、ローム・アンド・ハース・ジャパン社製の「パラロイド(登録商標、以下同じ)EXL2602」、「パラロイドEXL2603」、「パラロイドEXL2655」、「パラロイドEXL2311」、「パラロイドEXL2313」、「パラロイドEXL2315」、「パラロイドKM330」、「パラロイドKM336P」、「パラロイドKCZ201」、三菱レイヨン社製の「メタブレン(登録商標、以下同じ)C−223A」、「メタブレンE−901」、「メタブレンS−2001」、「メタブレンSRK−200」、カネカ社製の「カネエース(登録商標、以下同じ)M−511」、「カネエースM−600」、「カネエースM−400」、「カネエースM−580」、「カネエースMR−01」等が挙げられる。
【0082】
エラストマーの好ましい含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部である。0.1質量部より少ないと、エラストマーによる耐衝撃性向上効果が不十分となり、10質量部を超えると、ポリカーボネート樹脂組成物を成形した成形品の外観不良や耐熱性の低下が生じる。含有量の下限は、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、含有量の上限は、好ましくは7.5質量部以下、より好ましくは5質量部以下、特に好ましくは4質量部以下である。
【0083】
<芳香族ビニル−ジエン−シアン化ビニル系共重合体>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、芳香族ビニル−ジエン−シアン化ビニル系共重合体を含有することができる。
本共重合体は、芳香族ビニル単量体とジエン、及びシアン化ビニル単量体、および必要に応じて他の共重合可能な単量体からなる。
【0084】
ジエンとしては、ブタジエン、イソプレン等であり、好ましくは予め重合されたジエン系ゴムであり、例えばポリブタジエン系ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体系ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体系ゴム、ポリイソプレン系ゴムなどを挙げることができ、これらは一種または二種以上併用することができる。特に好ましくは、ポリブタジエン系ゴムおよび/またはスチレン−ブタジエン共重合体系ゴムが用いられる。
【0085】
シアン化ビニル単量体としてはアクリロニトリルおよびメタクリロニトリルなどが挙げられ、特にアクリロニトリルが好ましい。
芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレンおよびビニルトルエンなどが挙げられ、特にスチレンおよび/またはα−メチルスチレンが好ましい。
【0086】
共重合組成比については特に制限はないが、得られる樹脂組成物の成形加工性、耐衝撃性の点から共重合体100重量部に対してジエン系ゴム10〜70重量部が好ましい。また同様にシアン化ビニル単量体の量は8〜40重量部が好ましい。芳香族ビニル単量体は、20〜80重量部の範囲が好ましい。
上記共重合体の製造方法に関しては、特に制限なく、乳化重合、溶液重合、塊状重合、懸濁重合あるいは塊状・懸濁重合等の公知の方法が用いられる。
【0087】
芳香族ビニル−ジエン−シアン化ビニル系共重合体の含有量は、ポリカーボネート樹脂と芳香族ビニル−ジエン−シアン化ビニル系共重合体の合計100質量%に対し、5〜30質量%である。このように芳香族ビニル−ジエン−シアン化ビニル系共重合体を含有することで、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の耐衝撃性と流動性を向上させることができる。より好ましい含有量は7〜25質量%である。
【0088】
[7.その他の添加剤]
本発明の透明ポリカーボネート樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、種々の添加剤から選ばれる1種又は2種以上を含有していてもよい。このような添加剤としては、リン系安定剤、フェノール系酸化防止剤、紫外線吸収剤および離型剤、蛍光増白剤,無機充填材、および染顔料からなる群から選ばれる添加剤などが挙げられる。
【0089】
<リン系安定剤>
本発明の樹脂組成物には、熱安定性を向上させるために亜リン酸エステル、リン酸エステル等のリン系熱安定剤を添加するのが好ましい。
【0090】
亜リン酸エステルとしては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等の亜リン酸のトリエステル、ジエステル、モノエステル等が挙げられる。
【0091】
リン酸エステルとしては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリス(ノニルフェニル)ホスフェート、2−エチルフェニルジフェニルホスフェート、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4−ジフェニルホスフォナイト等が挙げられる。
【0092】
上記のリン系熱安定剤の中では、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトが好ましく、中でもビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイトやトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトが特に好ましい。
なお、熱安定剤は、単独で使用しても良く、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0093】
本発明の樹脂組成物におけるリン系安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.005〜0.2質量部であることが好ましく、0.01〜0.1質量部であることがより好ましい。熱安定剤の含有量が上記範囲であると、加水分解等を発生させることなく、熱安定性を改善できるので好ましい。
【0094】
<フェノール系酸化防止剤>
本発明の樹脂組成物には、フェノール系酸化防止剤を添加するのが好ましい。
より具体的には、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(3′,5′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4′−ブチリデンビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェニル)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、及び3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,6]ウンデカン等が挙げられる。中でも、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンが好ましい。これらの酸化防止剤は一種を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0095】
本発明の樹脂組成物におけるフェノール系酸化防止剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.02〜0.5質量部であることが好ましい。この範囲であると、本発明の効果を阻害せずに、酸化防止性を改善できるので好ましい。
【0096】
<紫外線吸収剤>
本発明の樹脂組成物には、紫外線吸収剤を添加することができる。本発明の樹脂組成物から成る成形品は、太陽光や蛍光灯のような光線下に長期間曝されると、紫外線によって黄色味を帯びる傾向があるが、紫外線吸収剤を添加することで、成形品が黄色味を帯びるのを、防止又は遅延させることができる。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸フェニル系、ヒンダードアミン系などが挙げられる。
【0097】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の具体例としては、2,4−ジヒドロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシ−ベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシ−ベンゾフェノン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシ−ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0098】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例としては、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルメチル)フェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラブチル)フェノール、2,2′−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラブチル)フェノール]等が挙げられる。
【0099】
サリチル酸フェニル系紫外線吸収剤の具体例としては、フェニルサルチレート、2,4−ジターシャリ−ブチルフェニル−3,5−ジターシャリ−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。
ヒンダードアミン系紫外線吸収剤の具体例としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケート等が挙げられる。
紫外線吸収剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0100】
本発明の樹脂組成物における紫外線吸収剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、0.001〜1質量部であることが好ましく、0.005〜0.8質量部であることがより好ましく、0.01〜0.5質量部であることがさらに好ましい。紫外線吸収剤の含有量が上記範囲であると、有機紫外線発光蛍光体の励起光吸収による発光色の低下が生じず、且つ成形品表面にブリードアウト等を発生させずに、耐候性を改善できるので好ましい。
【0101】
<離型剤>
本発明の樹脂組成物は、離型剤を含有するのが好ましい。
好ましい離型剤は、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸エステル、及び数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素化合物から選ばれる化合物である。中でも、脂肪族カルボン酸、及び脂肪族カルボン酸エステルから選ばれる化合物が好ましく用いられる。
【0102】
脂肪族カルボン酸としては、飽和又は不飽和の脂肪族モノカルボン酸、ジカルボン酸又はトリカルボン酸を挙げることができる。本明細書では、脂肪族カルボン酸の用語は、脂環式カルボン酸も包含する意味で用いる。脂肪族カルボン酸の中でも、炭素数6〜36のモノ又はジカルボン酸が好ましく、炭素数6〜36の脂肪族飽和モノカルボン酸がより好ましい。このような脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等を挙げることができる。
【0103】
脂肪族カルボン酸エステルを構成する脂肪族カルボン酸成分としては、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、脂肪族カルボン酸エステルを構成するアルコール成分としては、飽和又は不飽和の1価アルコール、飽和又は不飽和の多価アルコール等を挙げることができる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基等の置換基を有していても良い。これらのアルコールのうち、炭素数30以下の1価又は多価の飽和アルコールが好ましく、さらに炭素数30以下の脂肪族飽和1価アルコール又は多価アルコールが好ましい。ここで脂肪族アルコールは、脂環式アルコールも包含する。これらのアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等を挙げることができる。これらの脂肪族カルボン酸エステルは、不純物として脂肪族カルボン酸及び/又はアルコールを含有していても良く、複数の化合物の混合物であっても良い。脂肪族カルボン酸エステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸オクチルドデシル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレートを挙げることができる。
離型剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0104】
本発明における離型剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.01〜1質量部であることが好ましい。離型剤の含有量が上記範囲であると、耐加水分解性の低下がなく、離型効果が得られるので好ましい。
【0105】
<蛍光増白剤>
本発明においては、本発明の効果を損ねない範囲で、従来公知の任意の蛍光増白剤を用いてもよい。この様な蛍光増白剤には、種々のものがあるが、具体的にはクマリン誘導体、ナフトトリアゾリルスチルベン誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体及びジアミノスチルベン−ジスルホネート誘導体等が挙げられる。また、市販品としては、ハコール産業から商品名ハッコールPSR(3−フェニル−7−(2H−ナフト(1.2−d)−トリアゾール−2−イル)クマリン)、ヘキストAGから商品名HOSTALUX KCB(ベンズオキサゾール誘導体)、住友化学から商品名WHITEFLOUR PSN CONC(オキサゾール系化合物)として、入手することができる。
【0106】
蛍光増白剤の好ましい含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、0.005〜0.1質量部である。含有量が0.005質量部未満であると増白効果が少なく、0.1質量部を超えると黄味が強くなりやすい。蛍光増白剤の含有量は、より好ましくはポリカーボネート樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01〜0.05質量部である。
【0107】
<無機充填材>
本発明におけるポリカーボネート樹脂は、強度と剛性を向上させる目的で、無機充填材を含有することができる。無機充填材の形状は針状、板状、粒状または無定型状など任意である。無機充填材の具体例としては、ガラス繊維(チョップドストランド)、ガラス短繊維(ミルドファイバー)、ガラスフレーク、ガラスビーズ等のガラス系フィラー;炭素繊維、炭素短繊維、カーボンナノチューブ、黒鉛などの炭素系フィラー;チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム等のウィスカー;タルク、マイカ、ウォラストナイト、カオリナイト、ゾノトライト、セピオライト、アタバルジャイト、モンモリロナイト、ベントナイト、スメクタイトなどの珪酸塩化合物;シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム等が挙げられる。これらの中では良好な表面意匠性を得る目的で、タルク、マイカ、ウォラストナイト、カオリナイトが好ましい。これらは2種以上を併用してもよい。
【0108】
無機充填材の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、1〜60質量部である。無機充填材の含有量が1質量部未満の場合は補強効果が十分でない場合がある。また60質量部を超える場合は、外観や耐衝撃性が劣り、流動性が十分でない場合がある。無機充填材の好ましい含有量は3〜50質量部、特に好ましくは5〜30質量部である。
【0109】
無機充填材は、樹脂組成物に含有させたときの熱安定性の観点から、平均粒子径0.01〜100μmのものをバインダーを用いて造粒した顆粒状のものが好ましい。平均粒子径が0.05〜50μm、更には0.1〜25μmであればより好ましい。平均粒子径が小さすぎると補強効果が不充分となり易く、逆に大きすぎても製品外観に悪影響を与えやすく、更に耐衝撃性も不十分となる場合がある。無機フィラーの最も好ましい平均粒子径は、0.2〜15μm、特に0.3〜10μmである。なお本発明において無機フィラーの平均粒子径とは、X線透過による液相沈降方式で測定されたD50をいう。このような測定ができる装置としては、Sedigraph粒子径分析器(Micromeritics Instruments社製「モデル5100」)が挙げられる。
【0110】
顆粒状無機フィラーの原料である無機フィラーとしては、ウォラストナイト、タルク、マイカ、ゾノトライト、セピオライト、アタバルジャイト、カオリナイトなどの珪酸塩化合物;チタン酸カリウム、酸化アルミナ、酸化亜鉛などの複合酸化物;炭酸カルシウムなどの炭酸塩化合物;硫酸バリウム、硫酸カルシウムなどの硫酸塩化合物;黒鉛などの炭素系フィラー;シリカ;ガラスフレーク、ガラスビーズなどのガラス系フィラー;硼酸アルミニウム等が挙げられ、これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0111】
<染顔料>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、染顔料を含有することができる。染顔料としては、例えば、無機顔料、有機顔料、有機染料があげられ、本発明における染顔料の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し3質量部未満である。
【0112】
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック;カドミウムレッド、カドミウムイエロー等の硫化物系顔料;群青などの珪酸塩系顔料;亜鉛華、弁柄、酸化クロム、鉄黒、チタンイエロー、亜鉛−鉄系ブラウン、チタンコバルト系グリーン、コバルトグリーン、コバルトブルー、銅−クロム系ブラック、銅−鉄系ブラック等の酸化物系顔料;黄鉛、モリブデートオレンジ等のクロム酸系顔料;紺青などのフェロシアン系顔料などが挙げられる。
【0113】
有機顔料及び有機染料としては、例えば、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系染顔料;ニッケルアゾイエロー等のアゾ系染顔料;チオインジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系などの縮合多環染顔料;アンスラキノン系、複素環系、メチル系の染顔料などが挙げられる。
【0114】
これらのなかでは、熱安定性の点から、カーボンブラック、シアニン系、キノリン系、アンスラキノン系、フタロシアニン系化合物などが好ましい。
【0115】
なお、染顔料は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。また、染顔料は、押出時のハンドリング性改良、樹脂組成物中への分散性改良の目的のために、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂とマスターバッチ化されたものも用いてもよい。
【0116】
<その他添加剤>
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で、帯電防止剤、防曇剤、滑剤・アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、防菌剤などを含有できる。これらは、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0117】
[8.製造方法]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂組成物を構成する各成分を混合して溶融混練することにより製造される。その方法としては、従来公知の熱可塑性樹脂組成物に適用される方法を適用できる。例えば、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ドラムタンブラー、単軸又は二軸スクリュー押出機、コニーダーなどを使用する方法等が挙げられる。なお、溶融混練の温度は特に制限されないが、通常240〜320℃の範囲である。
【0118】
[8.1 マスターバッチ]
<ポリカーボネート−ポリテトラフルオロエチレンマスターバッチ>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート、前記酸化チタン系添加剤、難燃剤、および難燃助剤としてのポリテトラフルオロエチレンおよびその他必要な成分を一括してブレンドする製造方法を用いてもよいが、以下に記載の、マスターバッチを得た後、該マスターバッチをポリカーボネート樹脂組成物と溶融混練する製造方法が好ましい。
具体的には、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、樹脂組成物中および成形品中のポリテトラフルオロエチレンの分散性を向上させるために、結晶構造が13/6らせん構造のポリテトラフルオロエチレンを、比表面積が0.01〜5mm/gで、60〜95質量%が180〜1700μmの粒径を有する粉粒体形状のポリカーボネート樹脂に配合することにより、最終配合量より多量のポリテトラフルオロエチレンを含有するポリカーボネート−ポリテトラフルオロエチレンマスターバッチを得た後、該マスターバッチを、ペレット形状あるいは粉粒体形状の必要量のポリカーボネート樹脂と溶融混練してポリカーボネート樹脂組成物を得ることが好ましい。
【0119】
ポリテトラフルオロエチレンは19℃以下で結晶構造が13/6らせん構造を有することから、具体的には19℃以下の状態で保持したポリテトラフルオロエチレンをポリカーボネート樹脂に配合することにより、ポリカーボネート−ポリテトラフルオロエチレンマスターバッチを得ることができる。
この際に、ポリカーボネート樹脂についても19℃以下の状態で保持したポリカーボネート樹脂を使用するのが好ましく、混合時の雰囲気温度が19℃以下であることがさらに好ましく、さらには配合後のポリカーボネート−ポリテトラフルオロエチレンマスターバッチを19℃以下で保持しておくのが特に好ましい。
【0120】
ポリカーボネート−ポリテトラフルオロエチレンマスターバッチの製造方法はリボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ドラムタンブラーなどを使用して混合する方法が挙げられるが、ドラムタンブラーの使用が好ましい。ポリカーボネート−ポリテトラフルオロエチレンマスターバッチ中のポリテトラフルオロエチレンの配合量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、20〜120質量部であることが好ましく、さらに好ましくは25〜100質量部である。このようなポリカーボネート−ポリテトラフルオロエチレンマスターバッチを製造時に溶融混練することで、成形品の外観がより良好になる。
【0121】
<ポリカーボネート−酸化チタン系添加剤マスターバッチ>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、樹脂組成物中および成形品中の酸化チタン系添加剤の分散性を向上させるために、酸化チタン系添加剤を、比表面積が0.01〜5mm/gで、60〜95質量%が180〜1700μmの粒径を有する粉粒体形状のポリカーボネート樹脂に配合することにより、最終配合量より多量の酸化チタン系添加剤を含有するポリカーボネート−酸化チタン系添加剤マスターバッチを得た後、該マスターバッチを、ペレット形状あるいは粉粒体形状の必要量のポリカーボネート樹脂、所望する他の成分と溶融混練して、ポリカーボネート樹脂組成物を得ることが好ましい。
【0122】
ポリカーボネート−酸化チタン系添加剤マスターバッチの製造方法は、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ドラムタンブラーなどを使用して混合する方法が挙げられるが、ヘンシェルミキサーの使用が好ましい。ポリカーボネート−酸化チタン系添加剤マスターバッチ中の酸化チタン系添加剤の配合量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、20〜100質量部であることが好ましく、さらに好ましくは25〜50質量部である。このようなポリカーボネート−酸化チタン系添加剤マスターバッチを製造時に溶融混練することで、成形品の外観がより良好になる。
【0123】
<ポリカーボネート−金属塩系難燃剤マスターバッチ>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、樹脂組成物および成形品中の金属塩系難燃剤の分散性を向上させ、その結果、安定した燃焼性を得るために、金属塩系難燃剤を、比表面積が0.01〜5mm/gで、60〜95質量%が180〜1700μmの粒径を有する粉粒体形状のポリカーボネート樹脂に配合することにより、最終配合量より多量の金属塩系難燃剤を含有するポリカーボネート−金属塩系難燃剤マスターバッチを得た後、該マスターバッチをポリカーボネート樹脂と溶融混練してポリカーボネート樹脂組成物を得る製造方法が好適に用いられる。
【0124】
ポリカーボネート−金属塩系難燃剤マスターバッチの製造方法はリボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ドラムタンブラーなどを使用して混合する方法が挙げられるが、ヘンシェルミキサーを使用するのが好ましい。ポリカーボネート−金属塩系難燃剤マスターバッチ中の金属塩系難燃剤の配合量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.5質量部以上、好ましくは0.8質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であり、5質量部以下、好ましくは4質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下である。
【0125】
ポリカーボネート−金属塩系難燃剤マスターバッチは、ポリカーボネート−ポリテトラフルオロエチレンマスターバッチおよび/またはポリカーボネート−酸化チタン系添加剤マスターバッチとともに、製造時に溶融混練することで、成形品の外観がより良好になるだけでなく、燃焼性のばらつきも抑制することができる。
【0126】
[9.成形方法]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、各種成形体の成形材料として使用できる。その際、適用できる成形方法は、射出成形法が好適に適用される。なお、ここでの射出成形法は、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)法、インサート成形法、IMC(インモールドコーティング成形)成形法等を含んだ広範囲の射出方法のことである。
【0127】
[10.ポリカーボネート樹脂成形体]
本発明の成形体は、上述の本発明のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなるものであり、耐光性、遮光性、光線反射性、色相、難燃性、成形安定性に優れる上に、ポリカーボネート樹脂が本来有する耐衝撃性、耐熱性、寸法安定性、外観特性等をも同時に維持しているため、これらの特長を生かして、液晶表示装置のバックライト用光線反射板、光反射枠又は光反射シート、電気・電子機器、広告灯などの照明用装置、自動車用メーターパネルなどの自動車用機器などの、光反射部材として幅広く使用することができ、特にその優れた難燃性、光反射性、耐衝撃性から、液晶バックライト用光線反射板および反射枠部品用途に有用である。
【実施例】
【0128】
以下に実施例および比較例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の例に限定されるものではない。なお、以下の実施例、比較例において「部」および「%」は、特に断りがない限り、「質量部」および「質量%」を意味する。
なお、実施例及び比較例で用いた測定・評価法および使用材料は以下のとおりである。
【0129】
1.測定・評価法
[難燃性評価]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の難燃性の評価は、後述の方法で得られたUL試験用試験片を温度23℃、湿度50%の恒温室の中で48時間調湿し、米国アンダーライターズ・ラボラトリーズ(UL)が定めているUL94試験(機器の部品用プラスチック材料の燃焼試験)に準拠して行なった。UL94Vとは、鉛直に保持した所定の大きさの試験片にバーナーの炎を10秒間接炎した後の残炎時間やドリップ性から難燃性を評価する方法であり、V−0、V−1及びV−2の難燃性を有するためには、以下の表1に示す基準を満たすことが必要となる。
【0130】
【表1】

【0131】
ここで残炎時間とは、着火源を遠ざけた後の、試験片の有炎燃焼を続ける時間の長さである。また、ドリップによる綿着火とは、試験片の下端から約300mm下にある標識用の綿が、試験片からの滴下(ドリップ)物によって着火されるかどうかによって決定される。さらに、5試料のうち、1つでも上記基準を満たさないものがある場合、V−2を満足しないとしてNR(not rated)と評価した。なお、評価結果を示す後記表3中、「難燃性」と表記する。
【0132】
[成形品外観]
本発明の成形品外観評価は、後述の方法で得られた5枚の平板成形板の表面のシルバーストリークの個数をカウントし、1枚あたりの平均値を求め、以下のA〜Eの5段階で分類評価した。
A:シルバーストリーク数が0〜2個
B:シルバーストリーク数が3〜5個
C:シルバーストリーク数が6〜8個
D:シルバーストリーク数が9〜11個
E:シルバーストリーク数が12個以上
【0133】
2.使用材料
[芳香族ポリカーボネート樹脂(A)]
(A1)ポリ−4,4−イソプロピリデンジフェニルカーボネート:
三菱エンジニアリングプラスチックス社製、商品名「ユーピロン(登録商標)S−3000F」、粘度平均分子量21,000、粉粒体形状のポリカーボネート樹脂、比表面積1.24mm/g、180〜1700μmの粒径が83質量%
(A2)ポリ−4,4−イソプロピリデンジフェニルカーボネート:
三菱エンジニアリングプラスチックス社製、商品名「ユーピロン(登録商標)S−3000」、粘度平均分子量21,000、ペレット形状のポリカーボネート樹脂、比表面積0.003mm/g、180〜1700μmの粒径が1質量%以下(実質0質量%)
【0134】
[酸化チタン系添加剤(B)]
Kronos社製、商品名「Kronos2233」
(平均粒径:0.20μm)
【0135】
[難燃剤(C)]
(C1)縮合リン酸エステル系難燃剤:
レゾルシノールビス−2,6−キシレニルホスフェート
大八化学工業社製、商品名「PX−200」
(C2)金属塩系難燃剤−1:パラトルエンスルホン酸ナトリウム
ケンブリッジインターナショナル社製、商品名「Chemguard−NATS」
(C3)金属塩系難燃剤−2:パラトルエンスルホン酸カリウム
ケンブリッジインターナショナル社製、商品名「Chemguard−PABS」
【0136】
[ポリテトラフルオロエチレン(D)]
フィブリル形成能を有する以下のポリテトラフルオロエチレンを下記条件(1)または(2)のいずれかで保持したPTFE−1、PTFE−2を使用した。
三井デュポンフロロケミカル社製、商品名「テフロン(登録商標)6J」
平均粒径470μm、カサ密度0.47g/ml
条件(1):19℃以下の温度で保持したもの(PTFE−1)
(結晶構造は13/6らせん構造である)
条件(2):19℃を超えた温度で保持したもの(PTFE−2)
(結晶構造は15/7らせん構造である)
【0137】
[ポリカーボネート−ポリテトラフルオロエチレンマスターバッチ(E)(以下、PC−PTFEマスターバッチという。)]
(E1)PC−PTFEマスターバッチ−1:以下(a)〜(d)のいずれかの条件で配合したマスターバッチを使用した。
条件(a):19℃を超えた温度で保持した上記粉粒体形状のポリカーボネート樹脂(A1)60質量%と、19℃以下の温度で保持したポリテトラフルオロエチレン(PTFE−1)40質量%を、タンブラーミキサーで5分ブレンドしたもの
条件(b):19℃以下の温度で保持した上記粉粒体形状のポリカーボネート樹脂(A1)60質量%と、19℃以下の温度で保持したポリテトラフルオロエチレン(PTFE−1)40質量%を、19℃以下の雰囲気下、タンブラーミキサーで5分ブレンドしたもの
条件(c):上記条件(b)でブレンドして得たマスターバッチを19℃以下の雰囲気で保管したもの
条件(d):19℃を超えた温度で保持した上記粉粒体形状のポリカーボネート樹脂(A1)60質量%と、19℃を超えた温度で保持したポリテトラフルオロエチレン(PTFE−2)40質量%を、タンブラーミキサーで5分ブレンドしたもの
(E2)PC−PTFEマスターバッチ−2:以下の条件(e)で配合したマスターバッチを使用した。
条件(e):19℃を超えた温度で保持した上記粉粒体形状のポリカーボネート樹脂(A1)80質量%と、19℃以下の温度で保持したポリテトラフルオロエチレン(PTFE−1)20質量%を、タンブラーミキサーで5分ブレンドしたもの
【0138】
[ポリカーボネート−TiOマスターバッチ(F)]
(F1)PC−TiOマスターバッチ−1:粉粒体形状のポリカーボネート樹脂(A1)70質量%と、酸化チタン系添加剤(B)30質量%をヘンシェルミキサーで1分ブレンドしたもの
(F2)PC−TiOマスターバッチ−2:粉粒体形状のポリカーボネート樹脂(A1)80質量%と、酸化チタン系添加剤(B)20質量%をヘンシェルミキサーで1分ブレンドしたもの
【0139】
[ポリカーボネート−金属塩マスターバッチ(G)]
(G1)PC−金属塩マスターバッチ−1:粉粒体形状のポリカーボネート樹脂(A1)99質量%と、金属塩系難燃剤(C2)1質量%をヘンシェルミキサーで1分ブレンドしたもの
(G2)PC−金属塩マスターバッチ−2:粉粒体形状のポリカーボネート樹脂(A1)99質量%と、金属塩系難燃剤(C3)1質量%をヘンシェルミキサーで1分ブレンドしたもの
【0140】
[リン系安定剤(H)]
トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト:
ADEKA社製、商品名「アデカスタブ2112」
【0141】
(実施例1〜27、比較例1〜4)
(A)〜(H)成分として表2〜表4に示した材料を用い、各成分を、表2〜4に記した割合(全て質量%)で配合し、タンブラーにて20分混合した後、1ベントを備えた日本製鋼所社製二軸押出機(TEX30HSST)に供給し、スクリュー回転数200rpm、吐出量15kg/時間、バレル温度290℃の条件で混練し、ストランド状に押出された溶融樹脂組成物を水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
【0142】
次に、上述の製造方法で得られたペレットを120℃で5時間乾燥させた後、名機製作所社製のM150AII−SJ型射出成形機を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃の条件で射出成形し、平板状試験片(150mm×100mm×3mm厚)を成形した。
【0143】
また、同様に上述の製造方法で得られたペレットを120℃で5時間乾燥させた後、日本製鋼所製のJ50−EP型射出成形機を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃の条件で射出成形し、長さ125mm、幅13mm、厚さ2mmのUL試験用試験片を成形した。
評価結果を、表2〜表4に示す。
【0144】
【表2】

【0145】
【表3】

【0146】
【表4】

【0147】
実施例に記載の樹脂組成物は、比較例に比べて、溶融混練時の生産性が良好であり、かつ、成形品外観も良好であることがわかる。また、ポリカーボネート樹脂−TiOマスターバッチを用いた樹脂組成物は、マスターバッチを用いなかった例よりシルバーストリーク数が少なく成形品外観は良好であった。
【0148】
実施例1〜27および比較例1〜4の樹脂組成物の燃焼性(2mm厚)は、いずれもV−0であったが、その中でポリカーボネート樹脂−金属塩マスターバッチを用いた実施例17〜21、実施例23および実施例25は、燃焼性のバラツキが少なかった。難燃剤の分散性を高めた効果が現れていることがわかる。
【0149】
一方比較例4の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂−ポリテトラフルオロエチレンマスターバッチを用いているが、19℃を超える温度で保持したポリテトラフルオロエチレンを用いたため、2mm厚みでV−0であったものの、実施例に比べ燃焼性のバラツキは大きかった。なお、生産安定性は比較例1〜3よりは良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明の製造方法によれば、アルミナおよびオルガノシロキサンで表面処理が施された酸化チタン系難燃剤と、難燃助剤であるポリテトラフルオロエチレンとして、結晶構造が13/6らせん構造を有するポリフルオロエチレンを、配合時に用いることで、製造時の生産性が安定し、また、成形品中にはポリテトラフルオロエチレン凝集物に起因するシルバーストリーク等の表面欠陥の発生がなく、外観性に優れ、優れた耐衝撃性を有し、さらに、高反射性で難燃性のポリカーボネート樹脂組成物を製造することができるので、液晶表示装置のバックライト用光線反射板、光反射枠又は光反射シート、電気・電子機器、広告灯などの照明用装置、自動車用メーターパネルなどの自動車用機器などの、光反射部材として幅広く使用することができ、産業上の利用性は非常に高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂、アルミナおよびオルガノシロキサンで表面処理された酸化チタン系添加剤、難燃剤、および難燃助剤としてのポリテトラフルオロエチレンを含有するポリカーボネート樹脂組成物を製造する方法であって、ポリカーボネート樹脂にポリテトラフルオロエチレンを配合するに際し、結晶構造が13/6らせん構造のポリテトラフルオロエチレンを用いることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
結晶構造が13/6らせん構造のポリテトラフルオロエチレンを、比表面積が0.01〜5mm/gで、60〜95質量%が180〜1700μmの粒径を有するポリカーボネート樹脂粉粒体に配合したマスターバッチを混合してポリカーボネート樹脂組成物を得る工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
ポリテトラフルオロエチレンが、温度調整することにより結晶構造を13/6らせん構造とされることを特徴とする請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
ポリテトラフルオロエチレンを、19℃以下の温度下に保持することを特徴とする請求項3に記載のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
結晶構造が13/6らせん構造のポリテトラフルオロエチレン)を、比表面積が0.01〜5mm/gで、60〜95質量%が180〜1700μmの粒径を有するポリカーボネート樹脂粉粒体に配合したマスターバッチを混合して得られたポリカーボネート樹脂組成物を成形する際に、ポリテトラフルオロエチレンの結晶構造を15/7らせん構造にして成形することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
結晶構造が13/6らせん構造のポリテトラフルオロエチレンを、19℃以下の温度下で保持した前記ポリカーボネート樹脂粉粒体に配合することを特徴とする請求項5に記載のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
得られたマスターバッチを19℃以下の温度下で保持した後、ポリカーボネート樹脂と混合することを特徴とする請求項5または6に記載のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
酸化チタン系添加剤を、比表面積が0.01〜5mm/gで、60〜95質量%が180〜1700μmの粒径を有するポリカーボネート樹脂粉粒体に配合したマスターバッチを混合する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
難燃剤が、縮合リン酸エステル系難燃剤または金属塩系難燃剤から選ばれた少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
金属塩系難燃剤が、芳香族スルホン酸アルカリ(土類)金属塩であることを特徴とする請求項9に記載のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
芳香族スルホン酸アルカリ(土類)金属塩が、パラトルエンスルホン酸ナトリウムおよび/またはパラトルエンスルホン酸カリウムであることを特徴とする請求項10に記載のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
【請求項12】
金属塩系難燃剤を、比表面積が0.01〜5mm/gで、60〜95質量%が180〜1700μmの粒径を有するポリカーボネート樹脂粉粒体に配合したマスターバッチを混合する工程を含むことを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
【請求項13】
酸化チタン系添加剤の含有量が、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、3〜30質量部であることを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
【請求項14】
ポリテトラフルオロエチレンの含有量が、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.05〜0.9質量部であることを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
【請求項15】
縮合リン酸エステル系難燃剤の含有量が、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、2〜25質量部であることを特徴とする請求項9に記載のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
【請求項16】
金属塩系難燃剤の含有量が、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.01〜0.5質量部であることを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の製造方法で得られたポリカーボネート樹脂組成物を射出成形して得られた成形品。

【公開番号】特開2011−168682(P2011−168682A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33146(P2010−33146)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(594137579)三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 (609)
【Fターム(参考)】