説明

ポリカーボネート窓ガラス用途のためのフォトクロマティック作用

フォトクロマティック特性を有する窓組立体(14)が述べられる。窓組立体(14)は、皮膜(44)に隣接する基材(32)を含む。フォトクロマティック膜(38)は、基材(32)と皮膜(44)との間に配置され、それにより、フォトクロマティック膜(38)は、窓組立体(14)が紫外光にさらされると暗くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、自動車及び他の構造物において使用するための透明プラスチックパネルに関し、より詳細には、同じ用途のための窓組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート(PC)及びポリメチルメタクリレート(PMMA)などのプラスチック材料は、Bピラー(B−pillar)、ヘッドランプ、及びサンルーフなどの、数多くの自動車部品及びコンポーネントの製造において現在使用されている。設計(styling/design)、重量節約、及び安全性(safety/security)の領域において種々の利点があるため、自動車窓モジュールは、これらのプラスチック材料について新たな用途を提示する。より具体的には、プラスチック材料は、機能コンポーネントを、成形されたプラスチックモジュールに一体化することによって窓組立体の複雑さを低減すると共に、全体の設計及び形状の複雑さを増大することによって自らの車両を競争相手の車両から差別化する能力を自動車製造業者に提供する。軽量プラスチック窓モジュールの使用は、車両についての低い重心と燃料経済性の改善の両方を容易にする可能性がある。さらに、プラスチック窓モジュールは、転覆事故の最中における搭乗者の保持を向上させることによって、車両全体の安全性を高める。
【0003】
しかし、プラスチック窓モジュールは、ガラス窓モジュールのように、車内(occupant compartment)にかなりの量の太陽エネルギーが入る可能性がある。いずれの形態の冷却も無い状態で、長い時間が経過する場合、車内は、居心地が悪くなる可能性がある。さらに、車内を冷却するために、冷却システムが設けられたとしても、冷却システムの使用は、車両に対する負荷を増大させ、おそらく、自動車の燃料経済性を低下させる。
【0004】
車両の乗客室内への太陽エネルギーの導入を制限する1つの方法は、窓モジュールを着色し、それにより、太陽光線の一部分だけが窓モジュールを通過することを可能にすることである。しかし、日当りが良くない日では、着色された窓モジュールは、車内を過剰に暗くするという欠点を持ち、また、搭乗者が窓モジュールを通して物体を明瞭に見る能力を妨げる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、日当りが良くない日に搭乗者の視覚を妨げることなく、車内へ導入される太陽エネルギーを制限することが可能なプラスチック窓モジュールを提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従来技術の欠点及び制限を克服する上で、本発明は、フォトクロマティック特性を有する窓組立体を提供する。窓組立体は、上部(又は外側)面及び底部(又は内側)面を有する基材と、基材を覆おう第1コーティングと、基材の上部面と第1コーティングとの間に配設されたフォトクロマティック膜とを含む。フォトクロマティック膜は、ポリカーボネート(PC)膜と、PC膜に付着したフォトクロマティック層とを含む。フォトクロマティック層は、PC膜と基材との間に配設され、それにより、PC膜と基材との間にフォトクロマティック層を封じ込める。第1コーティング層は、耐候層(weathering layer)及びプラズマ層(plasma layer)を含んでもよい。耐候性層は、アクリル、ポリウレタン、シロキサンという基本化学物質、又はその組合せを含む材料で作られてもよい。さらに、第1コーティングと同じ材料で作られた第2コーティングを、基材の底部面に設けてもよい。プラズマ層は、耐候性層上に置かれた「ガラス様」コーティングである。
【0007】
別の実施形態では、機能層は、基材の上部面とフォトクロマティック膜との間に配設されてもよい。機能層は、特定の機能を窓組立体内に組み込んでもよい。さらに、機能層は、これらの機能を達成するために複数の層を有してもよい。
【0008】
本発明のさらなる目的、特徴、及び利点は、本明細書に添付され、且つ、本明細書の一部を形成する、図面及び特許請求の範囲を参照して、以下の説明を検討すれば当業者に容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】フォトクロマティック特性を有する、本発明の原理を実施する窓組立体を有する自動車の斜視図である。
【図2】本発明の原理を実施する窓組立体の上面図である。
【図3】本発明の原理を実施する窓組立体の別の実施形態の上面図である。
【図4A】図2のライン4−4に沿って全体が切り取られた窓組立体の一部分の断面図である。
【図4B】窓組立体の両面にコーティング層を有する窓組立体の図4Aと同様の断面図である。
【図4C】機能層を組み込む窓組立体の図4Aと同様の断面図である。
【図4D】窓組立体の両面にコーティング層を有する窓組立体の図4Cと同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1を参照すると、本発明を組み込む自動車10が示されている。自動車10は、自動車10の内側にある車室(occupant compartment)12と、サンルーフ又はムーンルーフとしてフレーム16を介して自動車10に搭載された窓組立体14とを含む。
【0011】
この説明では、サンルーフ又はムーンルーフとして窓組立体14を使用することを述べるが、本発明は、自動車10の他の領域に同様に適用可能である。たとえば、窓組立体14は、運転者側窓、乗客側窓、リア窓、フロントウィンドシールド、及び/又は自動車10が有してもよい任意の他の窓として使用されるように適切な位置に配設し、または適切な大きさにすることができる。
【0012】
図2を参照すると、窓組立体14のより詳細な図が示されている。図2に示すように、窓組立体14は、透明視野領域(transparent viewing area)20及びフォトクロマティック領域22を有する。代替法では、フォトクロマティック領域22は、窓組立体14全体を覆ってもよい。透明視野領域20は、光が車室12を通過し、車内12に入ることが可能な点で、従来の窓組立体と同様である。フォトクロマティック領域22は、透明領域20と同様である。しかし、フォトクロマティック領域は、UV光が無い状態で透明であり、直接の太陽光線の場合と同様に、UV光にさらされると暗くなり、車内12へのUV光の透過を防止する。
【0013】
窓組立体14の別の実施形態が図3に示されている。この配置では、窓組立体14は、フォトクロマティック領域28によって囲まれ、且つ、分離された2つの透明領域24、26を有する。先の実施形態と同様に、透明領域24は従来の窓組立体と同様であり、一方、フォトクロマティック領域28は、車内12への光の透過を防止する。明らかに、フォトクロマティック領域28は、任意の数のパターンで所望に応じて配置されてよい。たとえば、フォトクロマティック領域28は、窓組立体14全体を覆ってもよい。
【0014】
図4Aを参照すると、図2のライン4−4に沿って全体が切り取られた断面が示されている。窓組立体14は、上部面34(自動車10の外側に向くことを意図される)及び底部面36(自動車10の内側に向くことを意図される)を有する基材32を含む。基材32は、好ましくは、剛性の透明パネルであり、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエステルブレンド、ガラス及びガラス繊維、並びにそれらの任意の組合せから作られてもよい。好ましくは、基材32は透明である。
【0015】
基材32の上部面34の上には、フォトクロマティック膜38がある。フォトクロマティック膜38は、UV光が無い状態で透明であり、直接の太陽光線の場合と同様に、UV光にさらされると暗くなり、図1に最もよく示される車内12へのUV光の透過を制限する。フォトクロマティック膜38は、膜挿入成形(film insert molding)(FIM)プロセス又は積層プロセスによって基材32に設けてよい。
【0016】
非剛性であり、且つ、基材32の形状に合致するように形作られるフォトクロマティック膜38は、フォトクロマティック層42に結合したPC膜層40を含み、それにより、PC膜層40と基材30の上部面34との間にフォトクロマティック層42を封入する。PC膜層40は、PC、PMMA、又はそれらの任意の組合せから作られてもよい。フォトクロマティック層42は、金属ハロゲン化物又は有機材料から作られてもよい。金属ハロゲン化物は、塩化銀(AgCl)若しくは臭化銀(AgBr)、又はそれらの組合せであってよい。有機材料は、フォトクロマティック染料、立体異性体、多環芳香族炭化水素、又はそれらの組合せであってよい。有機材料におけるフォトクロミズムは、ヘテロリシス的及びホモリシス的開裂、シストランス異性化及び互変異性化に関連する。
【0017】
フォトクロマティック層38の上には、コーティング44が配設される。コーティング44は、耐候性層46及びプラズマ層48を含む。耐候性層52は、アクリル、ポリウレタン、シロキサンという基本化学物質、又はこれらの材料の組合せを含み、長期の耐候性及び高い紫外線保護を提供する材料である。さらに、耐候性層52は、また、イオノマー化学物質又は同様の材料を有する材料を含んでもよい。さらに、本発明の別の実施形態では、シリコン/ナノ粒子が、耐候性層52の材料にブレンドされてもよく、又は、シロキサンコポリマが、重合によって耐候性層52を形成してもよい。プラズマ層54は、プラズマ強化化学気相堆積(PECVD)プロセスなどによって耐候性層52上に堆積された「ガラス様」コーティングである。プラズマ層54は、本発明のある実施形態では、多層プラズマコーティングであり、フロー法、ディップ法、及びスプレー法のうちの1つの方法によって塗布されたシリコーンコーティングであってよい。
【0018】
図4Bを参照すると、窓組立体14の代替の実施形態が示されている。この実施形態は、図4Aに示す実施形態と類似する。しかし、この実施形態は、基材32の底部面36に結合した、耐候性層52’及びプラズマ層54’を有する第2コーティング層50’を有する点で異なる。
【0019】
図4Cを参照すると、窓組立体14の代替の実施形態が示される。この実施形態は、図4Aに示す実施形態と類似する。差は、この実施形態が、フォトクロマティック膜38と基材32の上部面34との間に配設された機能層50を有することである。機能層50は、特定の機能を窓組立体14内に組み込むことができる層である。たとえば、機能層50は、(窓組立体14の所定部分を不透明にするための)ブラックアウトインク層、エレクトロルミネセント層、光放出層、又は除霜層であってよい。さらに、機能層50は、これらの機能及び他の機能を達成するために複数の層を有してもよい。
【0020】
図4Dを参照すると、窓組立体14の代替の実施形態が示されている。この実施形態は、図4Cに示す実施形態と類似する。差は、この実施形態が、基材32の底部面36に結合した、耐候性層52’及びプラズマ層54’を有する第2コーティング層50’を有することである。
【0021】
当業者が容易に理解することになるように、上記説明は、本発明の原理の実施態様の例証として意図される。本説明は、本発明が、添付特許請求の範囲に規定される本発明の精神から逸脱することなく、修正、変形、及び変更を受けるため、本発明の範囲又は用途を制限することを意図されない。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトクロマティック特性を有する窓組立体(14)であって、
第1面(34)及び第2面(36)を有する基材(32)と、
前記基材(32)の前記第1面(34)に隣接して配設された第1コーティング(44)と、
前記基材(32)の前記第1面(34)と前記第1コーティング(44)との間に配設されたフォトクロマティック膜(38)とを含む、窓組立体(14)。
【請求項2】
前記基材(32)は、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエステルブレンド、ガラス繊維、及びそれらの組合せを含む群から選択される材料から作られる、請求項1に記載の窓組立体(14)。
【請求項3】
前記基材(32)は透明である請求項1に記載の窓組立体(14)。
【請求項4】
前記フォトクロマティック膜(38)は、ポリカーボネート膜(40)と、フォトクロマティック層(42)とを含み、
前記フォトクロマティック層(42)は、前記基材(32)の前記第1面(34)と前記ポリカーボネート膜(40)との間に配設される、請求項1に記載の窓組立体(14)。
【請求項5】
前記ポリカーボネート膜(42)は、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、及びそれらの組合せから作られる、請求項4に記載の窓組立体(14)。
【請求項6】
前記フォトクロマティック層(42)は、金属ハロゲン化物材料、フォトクロマティック有機材料及びそれらの組合せから作られる、請求項4に記載の窓組立体(14)。
【請求項7】
前記金属ハロゲン化物材料は、塩化銀、臭化銀、及びその組合せから作られる、請求項6に記載の窓組立体(14)。
【請求項8】
前記フォトクロマティック有機材料は、フォトクロマティック染料、立体異性体、多環芳香族炭化水素、及びそれらの組合せから作られる、請求項6に記載の窓組立体(14)。
【請求項9】
前記第1コーティング(44)は、耐候性層(46)及びプラズマ層(48)をさらに含み、前記耐候性層(46)は、前記フォトクロマティック膜(38)と前記プラズマ層(48)との間に配設される、請求項1に記載の窓組立体(14)。
【請求項10】
前記耐候性層(46)は、アクリル、ポリウレタン、シロキサン、及びそれらの組合せのうちの少なくとも1つから作られる、請求項9に記載の窓組立体(14)。
【請求項11】
耐候性層に付着したプラズマ層をさらに含む請求項7に記載の窓組立体(14)。
【請求項12】
前記フォトクロマティック膜(38)と前記基材(32)の前記第1面との間に配設された機能層(50)をさらに含む、請求項1に記載の窓組立体(14)。
【請求項13】
前記機能層(50)は、除霜層、エレクトロルミネセント層、及びブラックアウトインク層のうちの少なくとも1つである、請求項11に記載の窓組立体(14)。
【請求項14】
前記基材(32)の前記第2面(36)に付着した第2コーティング(50’)をさらに含む、請求項1に記載の窓組立体(14)。
【請求項15】
前記第2コーティング(50’)は、耐候性層(52’)及びプラズマ層(54’)をさらに含み、前記耐候性層(52’)は、前記基材(32)の前記第2面(36)と前記プラズマ層(54)との間に配設される、請求項14に記載の窓組立体(14)。
【請求項16】
前記耐候性層(52’)は、アクリル、ポリウレタン、シロキサン、及びそれらの組合せのうちの少なくとも1つから作られる、請求項15に記載の窓組立体(14)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【公表番号】特表2009−539662(P2009−539662A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513371(P2009−513371)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際出願番号】PCT/US2007/069133
【国際公開番号】WO2007/143359
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(505365404)エクスアテック、エル.エル.シー. (51)
【Fターム(参考)】