説明

ポリスチレンと熱可塑性ポリウレタンとを含有する物品

化学的接着促進剤なしで付着結合する熱可塑性ポリウレタンとポリスチレンとを含有する物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学的接着促進剤なしで付着結合する熱可塑性ポリウレタン及びポリスチレンを含有する物品、有利にポリスチレン系の物品と付着結合する熱可塑性ポリウレタン系の物品とを含有する物品に関する。「化学的接着促進剤なし」とは、この場合に、熱可塑性ポリウレタンとポリスチレンとの間に他の成分(接着促進剤)、つまり、前記ポリスチレンと前記熱可塑性ポリウレタンとは異なる成分が存在しない、特に接着剤が存在しないことを意味する。本発明による物品の場合に、構成成分のポリスチレン及び熱可塑性ポリウレタンとは別々であるが、互いに付着結合して存在している。本発明による物品は、従って、ポリスチレンと熱可塑性ポリウレタンとを含有する混合物に基づいていない。さらに、本発明は、ポリスチレン物品の表面をプラズマ処理し、引き続き熱可塑性ポリウレタンを有利に溶融した状態で前記プラズマ処理された表面と接触させ、有利に射出成形法により射出する、熱可塑性ポリウレタンとポリスチレンとを含有する物品の製造方法に関する。さらに、本発明は、このようにして得られた、熱可塑性ポリウレタンとポリスチレンとを含有する物品に関する。一般的用語「ポリスチレン」とは、本願明細書において本来の標準ポリスチレン(GPPS)、ならびにHIPS及び公知のABS及びASAプラスチックであると解釈される。
【0002】
熱可塑性プラスチックは、この材料に対して加工及び適用のために典型的な温度範囲において繰り返し加熱及び冷却される場合に熱可塑性のままであるプラスチックである。熱可塑性とは、一般的な温度範囲において繰り返し加熱した場合に軟化しかつ冷却した場合に硬化し、軟化された状態で繰り返し流動によって成形品、押出品又は半製品のための変形品又は物体として成形することができるプラスチックの特性であると解釈される。熱可塑性プラスチックは工業的に広範囲に利用されていて、ファイバー、プレート、シート、成形品、ボトル、ケース、包装などの形態で存在している。
【0003】
多くの適用のために、異なる熱可塑性プラスチックを一つの物品に組み合わせることが望まれている。この理由は、表面に対して、例えば一方で触覚及び光学に関する及び他方で物品の強度又は剛性ならびに機能性(密閉性)に関する多様な要求により生じる。多様な熱可塑性プラスチックの付着する組合せのために、多成分射出成形、例えば二成分射出成形(≧2−C射出成形)において、異なる材料は、直接射出することにより互いに付着結合することは公知である。接着促進のために、DE-B 103 08 727、DE-A 103 08 989ならびにSimon Amesoeder et al.著, Kunststoffe 9/2003, 第124頁〜第129頁に、所定の材料組合せについて、一方の成分の表面がプラズマで処理され、引き続き他方の成分をこのプラズマ処理された表面に適用することが推奨されている。
【0004】
今まで公知の技術的教示の欠点は、多くの適用に対して不十分な材料の組合せである。固体の剛性でかつできる限りコストの安い支持体に、触覚、光学、機能及び有利に耐摩耗性に関して最適化された表面を設ける材料の組合せは、特に興味深くかつ望ましい組合せを生じさせる。
【0005】
従って、本発明の課題は、有利に極めて良好な機械的特性を有する、特に高い耐摩耗性を有する、できる限り有利な支持体を、極めて良好な触覚、光学及び有利に耐引掻性を提供する材料と付着結合させる、付着する材料の組合せを開発することであった。この場合、前記結合エレメントは有効でかつ効果的な製造によりならびにできる限り良好な付着により接着促進剤を使用せずに優れていることが好ましい。
【0006】
前記の課題は、冒頭に記載した物品により解決することができる。
【0007】
本発明による物品は、支持体材料として優れた適当な熱可塑性に加工可能なプラスチック、例えばポリスチレンを、光学的及び触覚的に極めて高級な熱可塑性プラスチック、この場合熱可塑性ポリウレタンと直接付着結合させることを特徴とする。ポリスチレンと熱可塑性ポリウレタンとのこの種の結合エレメントは今まで公知ではなく、特に化学的接着促進剤なしに行うことができなかった。この材料の組合せにより、まさに直接付着する結合によって、つまり化学的接着促進剤、溶剤、特に接着剤を使用せずに、多くの適用に対して、新規で、今までに公知ではない品質の改良の可能性が開ける。物品として本発明の場合に、密閉材を備えたカバー、密閉材を備えたケーシング、グリップ、スイッチレバー、射出成形されたがたつき音保護部を備えたカバー及びトリム、衝撃保護部材、衝突保護部材及び摩耗保護部材を備えたケーシング(衝突コーナー部材を備えた掃除機ケーシング、芝刈り機ケーシング)が有利である。この物品の場合にはまさに、本発明により、その機械的特性に関して支持体材料として極めて良好に適した熱可塑性プラスチックであるポリスチレンを、熱可塑性ポリウレタンで表面的に改良することができ、本発明の場合、化学的接着促進剤及び/又は溶剤を使用せずかつそれにより手間のかかる他の工程を使用しない。この場合、熱可塑性ポリウレタンは、高級な触覚の利点を提供し、この場合、さらに光学的に高価な表面を製造することができる、それというのもTPUは金型表面の極めて良好な再現性を有するためである。TPUは、さらに極めてわずかな表面汚れにより優れていて、色彩的に色濃度について広範囲に変えることができる。従って、熱可塑性ポリウレタンが目に見える表面を製造する、本発明による物品が有利である。
【0008】
本発明による物品は、多成分射出成形品、有利に二成分射出成形品、つまり多成分射出成形で、有利に二成分射出成形で製造される物品であるのが有利である。二成分射出成形は異なる材料の組合せのために一般に公知であり、かつ多岐にわたり記載されている。通常では、第1の成分を金型中に射出し、引き続き第2の成分を射出する。第1の成分、有利にポリスチレン系の物品を金型中に挿入し、引き続きポリプロピレン物品のプラズマ処理された表面に射出することを交互に実施することができる。
【0009】
本発明による熱可塑性ポリウレタンとして、有利に、ショア硬度45A〜80A、DIN53504による引張強度15MPaより大きい、DIN53515による引裂強度30N/mmより大きい及びDIN53516による摩耗250mm3より小さい熱可塑性ポリウレタンが有利である。
【0010】
本発明による物品は、特にポリスチレン及び熱可塑性ポリウレタンとの間の優れた付着を特徴とする。従って、特にDIN EN1464による耐剥離性が少なくとも1N/mm、有利に少なくとも2N/mmである物品も有利である。
【0011】
他の課題は、冒頭に記載された物品を製造することができ、特に簡単な手段で付着結合を達成することができるような、できる限り有効でかつ効果的な方法を開発することであった。
【0012】
前記課題は、ポリスチレン物品の表面をプラズマ処理し、引き続き熱可塑性ポリウレタンを、有利に溶融した状態で、プラズマ処理された表面と接触させる、有利に射出成形により射出する、熱可塑性ポリウレタンとポリスチレンとを有する物品、有利に化学的接着促進剤なしに付着結合する熱可塑性ポリウレタンとポリスチレンとを有する物品を製造する方法により解決することができた。特に、第2の成分を射出成形により、第1の成分のプラズマ処理された表面上に設ける、特に射出するのが有利である。
【0013】
本発明による方法により初めて、化学的接着促進剤なしにポリスチレンと熱可塑性ポリウレタンとの付着結合を達成することができる。これは同時に有効でかつ効果的な方法を用いて達成されることが、付加的な利点である。この場合、本発明による方法は、つまりプラスチックの熱可塑性加工のために一般に公知の方法においてプラズマ処理を用いる接着促進が使用可能である。このプラズマ処理は、例えば押出成形されたプラスチックシートの表面に適用することができ、この表面上に引き続き他のプラスチックを押出成形するか、有利に射出成形により射出される。さらに、プラスチック、有利にポリスチレンを成形体として射出成形金型中に挿入し、プラズマで処理し、引き続き他のプラスチック、有利に熱可塑性ポリウレタンを、前記のプラズマ処理された表面に射出することも可能である。ポリスチレンの表面をプラズマ処理し、引き続き熱可塑性ポリウレタンを射出成形により、前記ポリスチレンのプラズマ処理された表面に設ける、有利に射出するのが有利である。
【0014】
二成分射出成形が特に有利であり、その際、二成分射出成形において、有利に唯一の射出成形金型中で、第1の工程でポリスチレンを用いて第1の射出成形体を製造し、引き続き前記の第1の射出成形対の表面をプラズマ処理し、その後で熱可塑性ポリウレタンを射出成形により、前記の第1の射出成形品のプラズマ処理された表面に設ける、有利に射出する。射出成形、同様に、直接法ならびに物品を射出成形金型中へ挿入する挿入法における多成分射出成形は、一般に公知である。
【0015】
このプラズマ処理は一般に公知であり、例えば冒頭に引用された文献において示されている。プラズマ処理のための装置は、例えばPlasmatreat GmbH社(Bisamweg 10, 33803 Steinhagen)ならびにTIGRES Dr. Gerstenberg GmbH社(Muehlenstrasse 12, 25462 Rellingen)により市販されている。
【0016】
プラズマ源中で、高電圧放電によりプラズマを生させるのが有利であり、前記プラズマは、プラズマノズルを用いて第1の成分、有利にポリスチレンの表面と接触し、前記プラズマ源は2mm〜25mmの間隔で0.1m/min〜400m/min、有利に0.1m/min〜200m/min、特に有利に0.2m/min〜50m/minの速度で、プラズマ処理される成分の表面に対して相対的に移動する。前記プラズマは、有利にガス流を通して放電区間に沿って、処理すべき熱可塑性プラスチックの表面上へ運ばれる。プラスチックの表面を付着のために準備するプラズマの活性化された粒子として、特にイオン、電子、ラジカル及びフォトンが挙げられる。このプラズマ処理は有利に1ms〜100s続けられる。ガスとして、酸素、窒素、二酸化炭素及び前記ガスからなる混合物、有利に空気、特に圧縮ガスを使用することができる。ガス流は、ノズル当たり2m3/hである。運転周波数は、10〜30kHzであることができる。励起電圧もしくは電極電圧は5〜10kVであることができる。静止する又は回転するプラズマノズルを挙げることができる。部材の表面温度は5℃〜250℃、有利に5℃〜200℃であることができる。
【0017】
熱可塑性プラスチックの射出成形は一般に公知であり、特にポリスチレン及び熱可塑性ポリウレタンについても多岐にわたり記載されている。二成分(2−K−)射出成形の原理は、Simon Amesoeder et al.著、Kunststoffe 9/2003,124〜129頁の図2に示されている。
【0018】
熱可塑性ポリウレタンを射出成形する際の温度は、この場合に有利に140〜250℃、特に有利に160〜230℃である。TPUは有利にできる限り穏和に加工される。この温度は硬度に応じて適合させることができる。可塑化装置における周速度は有利に0.2m/s以下であり、動圧は有利に30〜200barである。射出速度は、剪断応力を低く維持するためにできる限り低いのが有利である。冷却時間は有利に十分に長く選択することができ、その際、保持圧力は射出圧力の30〜80%である。金型は有利に30〜70℃に温度調節される。スプールは部材の最も強い箇所に選択するのが有利である。平面上の被覆射出成形の場合に、射出点−カスケードを使用することができる。
【0019】
ポリスチレンを射出成形する場合の温度は、有利に200〜280℃、特に有利に200〜260℃である。使用された機械温度は有利に210〜280℃であり、供給は有利に30〜50℃であることができる。射出圧力は通常では600〜1600barである。この保持圧力は有利に射出圧力の30〜60%に維持される。有利に、スクリューの1.3m/sまでの周速度で可塑化され、特に有利に、冷却時間の間に可塑化工程が完了する程度の速度で実施するのが特に有利である。使用すべき動圧は、有利に50〜150barであることができる。スプールは有利に部材の最も強い箇所に行うことができる。
【0020】
両方の成分のポリスチレンと熱可塑性ポリウレタンに対して、例えば次のことを述べることができる。
【0021】
一般的用語「ポリスチレン」とは、本願明細書において本来の標準ポリスチレン(GPPS)、ならびにHIPS及び公知のABS及びASAプラスチックであると解釈される。
【0022】
ポリスチレンとして、一般に公知のポリスチレンを使用することができる。ポリスチレンは、例えばRoempp Chemie Lexikon, 第9版, 第3570頁以降, Georg Thieme Verlag, Stuttgartに記載されている。この場合、特に、次の構造単位:−[CH(C65)−CH2n−を有するポリマーが挙げられ、その際、nは有利に前記ポリマーが、170000g/mol〜1000000g/molの分子量、有利に重量平均分子量を有するように選択される。
【0023】
いわゆる標準ポリスチレン(一般用ポリスチレン(general purpose polystyrene)又はGPPS)の他に、いわゆるハイインパクトポリスチレン(HIPS又は耐衝撃性ポリスチレン)、例えばポリスチレンがゴム成分、有利にポリブタジエン成分と組み合わせて存在するか又はポリスチレンがポリブタジエンの存在でのスチレンのラジカル又はアニオン重合により製造されているようなポリスチレンを挙げることができる。
【0024】
さらに、通常の、公知のABSプラスチックを挙げることができる。この場合、ABSはアクリルニトリル−ブタジエン−スチレン−コポリマーを表し、特にRoempp Chemie Lexikon, 第9版、第12頁, Georg Thieme Verlag, Stuttgartによるようなものを表す。
【0025】
さらに、通常の、公知のASAプラスチックを挙げることができる。この場合、ASAはアクリルニトリル−スチレン−アクリルエステル−コポリマーを表し、特にRoempp Chemie Lexikon, 第9版、第262頁, Georg Thieme Verlag, Stuttgartによるようなものを表す。
【0026】
さらに、ポリスチレンとして、ポリスチレンを例えば他の熱可塑性プラスチックと一緒に含有する混合物、有利にポリスチレン含有量が少なくとも50質量%、特に有利に少なくとも90質量%、殊に100質量%の混合物も挙げられる。
【0027】
ポリスチレンとして、次の構造単位:−[CH(C65)−CH2n−を有するポリマーが有利であり、その際、nは有利に前記ポリマーが、170000g/mol〜1000000g/molの分子量、有利に重量平均分子量を有するように選択される。
【0028】
熱可塑性ポリウレタン(この明細書中ではTPUともいわれる)、及びその製造方法は、一般に公知である。一般に、TPUは(a)イソシアナートと(b)通常では500〜10000、有利に500〜5000、特に有利に800〜3000の分子量(Mw)を有する、イソシアナートに対して反応性の化合物、及び(c)50〜499の分子量を有する鎖延長剤を、場合により(d)触媒及び/又は(e)通常の添加剤の存在で反応させることにより製造される。
【0029】
次に、例示的に出発成分及び有利なポリウレタンの製造方法を示す。ポリウレタンの製造の際に通常使用される成分(a)、(b)、(c)ならびに場合により(d)及び/又は(e)は、次に例示的に記載される:
a) 有機イソシアナート(a)として、一般に公知の脂肪族、環式脂肪族、芳香脂肪族及び/又は芳香族イソシアナート、例えばトリ−、テトラ−、ペンタ−、ヘキサ−、ヘプタ−及び/又はオクタメチレンジイソシアナート、2−メチル−ペンタメチレン−ジイソシアナート−1,5、2−エチル−ブチレン−ジイソシアナート−1,4、ペンタメチレン−ジイソシアナート−1,5、ブチレン−ジイソシアナート−1,4、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナト−メチル−シクロヘキサン(イソホロン−ジイソシアナート、IPDI)、1,4−及び/又は1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、1,4−シクロヘキサン−ジイソシアナート、1−メチル−2,4−及び/又は−2,6−シクロヘキサン−ジ−イソシアナート及び/又は4,4′−、2,4′−及び2,2′−ジシクロヘキシルメタン−ジイソシアナート、2,2′−、2,4′−及び/又は4,4′−ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアナート(NDI)、2,4−及び/又は2,6−トルイレンジイソシアナート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアナート、3,3′−ジメチル−ジフェニル−ジイソシアナート、1,2−ジフェニルエタンジイソシアナート及び/又はフェニレンジイソシアナートを使用することができる。有利に4,4′−MDIが使用される。パウダースラッシュ適用のために、冒頭に記載されたように、脂肪族イソシアナートも有利であり、特に1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナト−メチル−シクロヘキサン(イソホロン−ジイソシアナート、IPDI)及び/又はヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)が有利であり、殊にヘキサメチレンジイソシアナートが有利である。既に冒頭に記載されたように、イソシアナート(a)として遊離イソシアナート基を有するプレポリマーも使用することができる。このプレポリマーのNCO含有量は、有利に10〜25%である。このプレポリマーは、プレポリマーの製造の際の前反応に基づきTPUの製造の際にわずかな反応時間を必要とするという利点を提供することができる。
【0030】
b) イソシアナートに対して反応性の化合物(b)として一般に公知のイソシアナートに対して反応性の化合物、例えばポリエステロール、ポリエーテロール及び/又はポリカルボナートジオールを使用することができ、これらの化合物は通常では「ポリオール」の概念でまとめることもでき、500〜8000、有利に600〜6000、殊に800〜3000未満の分子量を有し、かつ1.8〜2.3、有利に1.9〜2.2、殊に2のイソシアナートに対する平均官能性を有する。有利にポリエーテルポリオール、例えば一般に公知の出発物質及び通常のアルキレンオキシド、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドをベースとするもの、有利にプロピレンオキシド−1,2とエチレンオキシドをベースとするポリエーテロール、及び特にポリオキシテトラメチレングリコールが使用される。このポリエーテロールは、ポリエステロールよりも高い加水分解安定性を有するという利点を示す。
【0031】
さらに、ポリエーテロールとしていわゆる低い不飽和のポリエーテロールを使用することができる。低い不飽和のポリオールとは、本発明の範囲内で、特に不飽和化合物の含有量が0.02meg/gより低い、有利に0.01meg/gより低いポリエーテルアルコールであると解釈される。
【0032】
この種のポリエーテルアルコールは、大抵は、アルキレンオキシド、特にエチレンオキシド、プロピレンオキシド及びこれらの混合物を上記のジオール又はトリオールに、高活性触媒の存在で付加することにより製造される。この種の高活性触媒は、例えば水酸化セシウム及び複合金属シアン化物触媒(DMC触媒ともいわれる)である。頻繁に使用されるDMC触媒は、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛である。このDMC触媒は、反応後にポリエーテルアルコール中に放置することができ、通常ではこの触媒は例えば堆積又は濾過により除去される。
【0033】
さらに、500〜10000g/mol、有利に1000〜5000g/mol、殊に2000〜3000g/molの分子量を有するポリブタジエンジオールを使用することができる。前記のポリオールを使用しながら製造することができたTPUは、熱可塑性加工の後に放射線架橋することができる。これにより、例えばより良好な燃焼挙動が達成される。
【0034】
1種のポリオールの代わりに、異なるポリオールの混合物を使用することもできる。
【0035】
c) 鎖延長剤(c)として一般に公知の、50〜499の分子量を有する脂肪族、芳香脂肪族、芳香族及び/又は環式脂肪族の化合物、有利に2官能性化合物、例えばアルキレン基中で2〜10個のC原子を有するジアミン及び/又はアルカンジオール、特に1,3−プロパンジオール、ブタンジオール−1,4、ヘキサンジオール−1,6及び/又は3〜8個の炭素原子を有するジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−、ヘキサ−、ヘプタ−、オクタ−、ノナ−及び/又はデカアルキレングリコール、有利に相応するオリゴ−及び/又はポリプロピレングリコールを使用することができ、その際、前記の鎖延長剤の混合物を使用することもできる。
【0036】
成分a)〜c)は、二官能性化合物、つまりジイソシアナート(a)、二官能性ポリオール、有利にポリエーテロール(b)及び二官能性鎖延長剤、有利にジオールであるのが特に有利である。
【0037】
d) 特にジイソシアナート(a)のNCO基と構成成分(b)及び(c)のヒドロキシル基との間の反応を促進する適当な触媒は、先行技術により公知でかつ通常の第三アミン、例えばトリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N,N′−ジメチルピペラジン、2−(ジメチルアミノエトキシ)−エタノール、ジアザビシクロ−(2,2,2)−オクタンなど、ならびに特別な有機金属化合物、例えばチタン酸エステル、鉄化合物、例えば鉄(III)−アセチルアセトナート、スズ化合物、例えば二酢酸スズ、ジオクタン酸スズ、ジラウリン酸スズ又は脂肪族カルボン酸のスズジアルキル塩、例えばジブチルスズジアセタート、ジブチルスズジラウラートなどである。前記触媒は、通常ではポリヒドロキシル化合物(b)100質量部当たり、0.0001〜0.1質量部の量で使用される。
【0038】
e) 触媒(d)の他に、構成成分(a)〜(c)に通常の助剤及び/又は添加剤(e)を添加することもできる。例えば、発泡剤、界面活性物質、充填物、成核剤、滑剤及び離型助剤、染料及び顔料、酸化防止剤、例えば加水分解、光、熱又は変色に対する酸化防止剤、無機及び/又は有機充填物、防炎剤、補強材及び可塑剤、金属失活剤が適している。有利な実施態様の場合に、成分(e)には加水分解保護剤、例えばポリマーの及び低分子量のカルボジイミドも該当する。熱可塑性ポリウレタンは本発明による材料の場合に、防炎剤として作用するメラミンシアヌラートを含有するのが特に有利である。有利に、メラミンシアヌラートは、TPUの全質量に対してそれぞれ0.1〜60質量%、特に有利に5〜40質量%、殊に15〜25質量%の量で使用される。有利に、熱可塑性ポリウレタンはトリアゾール及び/又はトリアゾール誘導体及び酸化防止剤を、熱可塑性ポリウレタンの全質量に対して0.1〜5質量%の量で含有する。酸化防止剤として、一般に保護すべきプラスチックにおいて不所望な酸化プロセスを抑制又は防止する物質が適している。一般に、酸化防止剤は市販されている。酸化防止剤の例は、立体障害フェノール、芳香族アミン、チオ相乗剤、三価リンの有機リン化合物、及びヒンダードアミン光安定剤である。立体障害フェノールの例は、Plastics Additive Handbook, 第5版、H. Zweifel編、Hanser Publishers, Muenchen, 2001 ([1]), 第98〜107頁及び第116〜121頁に記載されている。芳香族アミンの例は、[1]の第107〜108頁に記載されている。チオ相乗剤(Thiosynergist)の例は、[1]の第104〜105頁及び第112〜113頁に記載されている。ホスファイトの例は、[1]の第109〜112に記載されている。ヒンダードアミン光安定剤の例は、[1]の第123〜136頁に記載されている。使用のために、有利にフェノール系の酸化防止剤が適している。有利な実施態様の場合に、酸化防止剤、特にフェノール系酸化防止剤は、350g/molより大きい、特に有利に700g/molより大きい分子量を有し、最大分子量<10000g/mol、有利に<3000g/molを有する。さらに、この酸化防止剤は、有利に180℃より低い融点を有する。さらに、非晶質又は液状の酸化防止剤を使用するのが有利である。同様に、成分(i)として、2種以上の酸化防止剤の混合物を使用することもできる。
【0039】
前記成分a)、b)及びc)及び場合によりd)及びe)の他に、通常では31〜3000の分子量を有する鎖長調節剤を使用することもできる。このような鎖長調節剤は、単に1つの、イソシアナートに対して反応性の官能基を有する化合物、例えば単官能性アルコール、単官能性アミン及び/又は単官能性ポリオールである。このような鎖長調節剤によって、特にTPUの場合に、流動特性を適切に調節することができる。鎖長調節剤は、一般に、成分b)100質量部に対して0〜5、有利に0.1〜1質量部の量で使用され、定義的には成分(c)に該当する。
【0040】
本願明細書中に述べられた全ての分子量は、単位[g/mol]を有する。
【0041】
TPUの硬度の調節のために、構成成分(b)及び(c)は比較的広いモル比において変えることができる。成分(b)対全体として使用すべき鎖延長剤(c)のモル比は、10:1〜1:10、特に1:1〜1:4であるのが有利であり、その際、TPUの硬度は(c)の含有量が増加すると共に上昇する。
【0042】
熱可塑性ポリウレタンとして、有利に90ショアAまでの硬度を有する、軟質の可塑剤不含の熱可塑性ポリウレタンを、特に触覚及び光学的領域に適用するために使用するのが有利である。摩耗保護の用途及び衝突保護の用途で、80ショアDまでの全てのTPUが挙げられる。加水分解に敏感な用途の場合にエーテル−TPUが有利である。特に光に曝される用途の場合に脂肪族TPUが有利である。熱可塑性ポリウレタンは、有利に少なくとも40000g/mol、特に有利に少なくとも80000g/mol、殊に少なくとも120000g/molの数平均分子量を有する。
【0043】
熱可塑性ポリウレタンは、45A〜80Aのショア硬度、15MPaより大きいDIN53504による引張強度、30N/mmより大きいDIN53515による引裂強度及び250mm3より小さいDIN53516による摩耗を有するのが特に有利である。
【0044】
その特に良好な付着に基づき、WO 03/014179によるTPUが有利である。次の実施態様から実施例にまでこの特に有利なTPUに関する。このTPUは特に良好に付着する、それというのもこの加工温度は、比較可能な硬度を有する他の「典型的な」TPUの場合と比較して高く、この条件下で最良の接着強さが達成されるためである。この特に有利なTPUは、有利に(a)イソシアナートを(b1)150℃より高い融点を有するポリエステルジオール、(b2)それぞれ150℃より低い融点及び501〜8000g/molの分子量を有するポリエーテルジオール及び/又はポリエステルジオールならびに(c)場合により分子量62g/mol〜500g/molの分子量を有するジオールを反応させることにより得られる。この場合、62g/mol〜500g/molの分子量を有するジオール(c)と成分(b2)とのモル比が0.2より小さい、特に有利に0.1〜0.01である熱可塑性ポリウレタンが特に有利である。有利に1000g/mol〜5000g/molの分子量を有するポリエステルジオール(b1)が次の構造単位(I):
【化1】

を有する熱可塑性ポリウレタンが特に有利であり、その際、R1、R2及びXは次の意味を有する:
1: 2〜15個の炭素原子を有する炭素骨核、有利に2〜15個の炭素原子を有するアルキレン基及び/又は6〜15個の炭素原子を有する、特に有利に6〜12個の炭素原子を有する二価の芳香族基、
2: 2〜8個の炭素原子、有利に2〜6個の炭素原子、特に有利に2〜4個の炭素原子を有する場合により分枝鎖のアルキレン基、特に−CH2−CH2−及び/又は−CH2−CH2−CH2−CH2−、
3: 2〜8個の炭素原子、有利に2〜6個の炭素原子、特に有利に2〜4個の炭素原子を有する場合により分枝鎖のアルキレン基、特に−CH2−CH2−及び/又は−CH2−CH2−CH2−CH2−、
X: 5〜30の範囲からなる整数。冒頭に記載した有利な融点及び/又は有利な分子量は、この有利な実施態様の場合に示された構造単位(I)に関する。
【0045】
「融点」の表現は、本願明細書中で、市販のDSC装置(例えばDSC 7/Perkin-Elmer社)で測定された加熱曲線の溶融ピークの最大値であると解釈される。
【0046】
本願明細書中に記載された分子量は、[g/mol]で表される数平均分子量である。
【0047】
この特に有利な熱可塑性ポリウレタンは、有利に高分子量の、有利に部分結晶性の熱可塑性ポリエステルを、ジール(c)と反応させ、引き続き(b1)150℃より高い融点を有するポリエステルジオールならびに場合により(c)ジオールを有する(i)からの反応生成物を(b2)それぞれ150℃より低い融点及び501〜8000g/molの分子量を有するポリエーテルジオール及び/又はポリエステルジオールならびに場合により他の(c)62〜500g/molの分子量を有するジオールと一緒に、場合により(d)触媒及び/又は(e)助剤の存在で、(a)イソシアナートと反応させることにより製造することができる。
【0048】
反応(ii)の場合に、62g/mol〜500g/molの分子量を有するジオール(c)と成分(b2)とのモル比が0.2より小さい、特に有利に0.1〜0.01であるのが有利である。
【0049】
工程(i)により硬質相が工程(i)において使用されたポリエステルにより最終生成物に提供され、工程(ii)中での成分(b2)の使用により軟質相の構築が行われる。この有利な技術的教示は、優れた、良好に結晶化する硬質相構造を有するポリエステルを有利に反応押出機中で溶融させ、低分子量のジオールでまず遊離ヒドロキシル末端基を有する比較的短いポリエステルに分解させることにある。この場合にこのポリエステルの当初の高い結晶化傾向は維持され、引き続き、これは迅速に進行する反応で有利な特性、つまり高い引張強さ値、低い摩耗値及び高くかつ狭い溶融範囲による高い熱形状安定性及び低い圧縮永久ひずみを有するTPUを得るために利用される。従って、有利な方法により、有利に高分子量の、部分結晶性の熱可塑性ポリエステルを低分子量のジオール(c)で適当な条件下で短い反応時間で急速に結晶化するポリエステルジオール(b1)に分解させ、これを次いで他のポリエステルジオール及び/又はポリエーテルジオール及びジイソシアナートで高分子量のポリマー鎖中に組み込む。
【0050】
この場合、使用された熱可塑性ポリエステルは、つまりジオール(c)との反応(i)の前に、有利に15000g/mol〜40000g/molの分子量ならびに有利に160℃より高い融点、特に有利に170℃〜260℃の融点を有する。
【0051】
工程(i)中で有利に溶融した状態で、特に有利に230℃〜280℃の温度で、有利に0.1min〜4min、特に有利に0.3min〜1minの期間で、1つ又は複数のジオール(c)と反応される出発生成物として、つまりポリエステルとして、一般に公知の、有利に高分子量の、有利に部分結晶性の熱可塑性ポリエステルを、例えば顆粒の形で使用することができる。適当なポリエステルは、例えば脂肪族、環式脂肪族、芳香脂肪族及び/又は芳香族ジカルボン酸、例えば乳酸及び/又はテレフタル酸ならびに脂肪族、環式脂肪族、芳香脂肪族及び/又は芳香族ジアルコール、例えばエタンジオール−1,2、ブタンジオール−1,4及び/又はヘキサンジオール−1,6をベースとする。
【0052】
特にポリエステルとして次のものを使用するのが有利である:ポリ−L−乳酸及び/又はポリアルキレンテレフタラート、例えばポリエチレンテレフタラート、ポリプロピレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、特にポリブチレンテレフタラート。
【0053】
前記出発物質からの前記エステルの製造は当業者に一般に公知であり、多岐にわたり記載されている。適当なポリエステルはさらに市販されている。
【0054】
熱可塑性ポリエステルは、有利に180〜270℃の温度で溶融する。ジオール(c)との反応(i)は、有利に230℃〜280℃、有利に240℃〜280℃の温度で実施される。
【0055】
ジオール(c)として工程(i)において熱可塑性ポリエステルとの反応のために、及び場合により工程(ii)において、一般に公知の62〜500g/molの分子量を有するジオール、例えば後記に挙げるエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、有利にブタン−1,4−ジオール及び/又はエタン−1,2−ジオールを使用することができる。
【0056】
工程(i)において熱可塑性ポリエステルとジオール(c)との質量比は、100:1.0〜100:10、有利に100:1.5〜100:8.0である。
【0057】
反応工程(i)における熱可塑性ポリエステルとジオール(c)との反応は、有利に通常の触媒、例えば後記した触媒の存在で実施される。この反応のために、金属をベースとする触媒を使用するのが有利である。工程(i)における反応は、ジオール(c)の質量に対して、触媒0.1〜2質量%の存在で実施するのが有利である。この種の触媒の存在での反応は、有利に、反応器、例えば反応押出機中で提供される短い滞留時間で反応を実施するために有利である。
【0058】
触媒として、例えば前記反応工程(i)のために次のものが挙げられる:テトラブチルオルトチタナート及び/又はスズ(II)ジオクトアート、有利にスズジオクトアート。
【0059】
(i)からの反応生成物としてのポリエステルジオール(b1)は、有利に1000g/mol〜5000g/molの分子量を有する。(i)からの反応生成物としてのポリエステルジオールの融点は、150℃〜260℃、特に165〜245℃であり、つまり工程(i)で熱可塑性ポリエステルとジオール(c)との反応生成物は、前記の融点を有する化合物を含有し、これを引き続く工程(ii)で使用する。
【0060】
工程(i)での熱可塑性ポリエステルとジオール(c)との反応により、ポリエステルのポリマー鎖はジオール(c)によってエステル交換により分解される。TPUの反応生成物は、従って、遊離ヒドロキシル末端基を有し、次の工程(ii)において本来の生成物、TPUにさらに加工される。
【0061】
工程(i)からの反応生成物の工程(ii)での反応は、有利にa)イソシアナート(a)ならびに(b2)それぞれ150℃より低い融点及び501〜8000g/molの分子量を有するポリエーテルジオール及び/又はポリエステルジオールならびに場合による62〜500の分子量を有する他のジオール(c)、(d)触媒及び/又は(e)助剤を、(i)からの反応生成物に添加することにより行う。反応生成物とイソシアナートとの反応は、工程(i)において生じるヒドロキシル末端基を介して行われる。工程(ii)での反応は、有利に190〜250℃の温度で、0.5〜5min、特に有利に0.5〜2minの期間で、有利に反応押出機中で、特に有利に、工程(i)を実施したのと同じ反応押出機中で行われる。例えば、工程(i)の反応は、通常の反応押出機の最初のケーシング中で行うことができ、後の箇所で、つまり後のケーシングで、成分(a)及び(b2)の添加の後に、工程(ii)の相応する反応を実施することができる。例えば、反応押出機の長さの最初の30〜50%を工程(i)のために使用し、残りの50%〜70%を工程(ii)のために使用することができる。
【0062】
工程(ii)中での反応は、イソシアナートに対して反応性の基に対してイソシアナート基が過剰の場合に有利に行われる。有利に、反応(ii)において、イソシアナート基対ヒドロキシル基の比率は1:1〜1.2:1、特に有利に1.02:1〜1.2:1である。
【0063】
有利に、反応(i)及び(ii)は一般に公知の1つの反応押出機中で実施される。この種の反応押出機は、例えばWerner & Pfleiderer社の企業刊行物又はDE-A 2 302 564に記載されている。
【0064】
この有利な方法は、有利に反応押出機の最初のケーシング中に少なくとも1つの熱可塑性ポリエステル、例えばポリブチレンテレフタラートを供給し、かつ有利に180℃〜270℃、有利に240℃〜270℃の温度で溶融させ、次のケーシング中でジオール(c)、例えばブタンジオール及び有利にエステル交換触媒を添加し、240℃〜280℃の温度で前記ポリエステルをジオール(c)により1000〜5000g/molの分子量を有するヒドロキシル末端基を有するポリエステルオリゴマーに分解し、次のケーシング中にイソシアナート(a)と(b2)イソシアナートに対して反応性の501〜8000g/molの分子量を有する化合物ならびに(c)62〜500の分子量を有するジオール、(d)触媒及び/又は(e)助剤を供給し、引き続き190〜250℃の温度で有利に熱可塑性ポリウレタンの構築を行うように実施される。
【0065】
有利に、工程(ii)において、(i)の反応生成物中に含まれる(c)62〜500の分子量を有するジオールを除いて、(c)62〜500の分子量を有するジオールは供給されない。
【0066】
この反応押出機は、熱可塑性ポリエステルを溶融させる領域中で、有利に中立の及び/又は逆方向に運ぶ混練ブロック及び逆方向に運ぶエレメントを有し、ならびに熱可塑性ポリエステルとジオールとを反応させる領域中には、有利にスクリュー混合エレメント、歯付きディスク及び/又は歯付き混合エレメントを逆方向に運ぶエレメントと組み合わせて有している。
【0067】
反応押出機の後方で、透明な溶融物は通常では歯車ポンプを用いて水中造粒に供給されかつ顆粒化される。
【0068】
この特に有利な熱可塑性ポリウレタンは、光学的に透明で単相の溶融物を示し、前記溶融物は急速に凝固し、部分結晶性ポリエステル硬質相によってわずかに濁った乃至白色−不透過性の成形体を形成する。この急速な凝固挙動は、熱可塑性ポリウレタンのための公知の配合及び製造方法のために決定的な利点である。この急速な凝固挙動は、50〜60ショアAの硬度を有する生成物でさえ射出成形において35sより短いサイクル時間で加工可能であることに現れている。押出機中でも、例えばインフレーションフィルム製造の場合に、TPUに典型的な問題、例えばフィルム又はチューブの接着又は粘結が生じない。
【0069】
最終生成物、つまり熱可塑性ポリウレタン中の熱可塑性ポリエステルの割合は、有利に5〜75質量%である。有利な熱可塑性ポリウレタンは、(i)からの反応生成物10〜70質量%、(b2)10〜80質量%及び(a)10〜20質量%を有する混合物の反応生成物であり、その際、前記質量の記載は、(a)、(b2)、(d)、(e)及び(i)からの反応生成物を有する混合物の全質量に対する。
【0070】
この有利な熱可塑性ポリウレタンは、有利にショア45A〜ショア78D、特に有利に50A〜75Dの硬度を有する。
【0071】
有利な熱可塑性ポリウレタンは、次の構造単位(II):
【化2】

を有するのが有利であり、その際、R1、R2、R3及びXについて次の意味を有する:
1: 2〜15個の炭素原子を有する炭素骨核、有利に2〜15個の炭素原子を有するアルキレン基及び/又は6〜15個の炭素原子を有する芳香族基、
2: 2〜8個の炭素原子、有利に2〜6個の炭素原子、特に有利に2〜4個の炭素原子を有する場合により分枝鎖のアルキレン基、特に−CH2−CH2−及び/又は−CH2−CH2−CH2−CH2−、
3: (b2)としてそれぞれ501g/mol〜8000g/molの分子量を有するポリエーテルジオール及び/又はポリエステルジオールの使用により又はジイソシアナートとの反応のための2〜12個の炭素原子を有するアルカンジオールの使用により生じる基、
X: 5〜30の範囲からなる整数、
n、m: 5〜20の範囲からなる整数。
【0072】
基R1は使用されたイソシアナートにより定義され、基R2は熱可塑性ポリエステルと(i)中のジオール(c)との反応生成物により定義され、基R3はTPUの製造の際の出発成分(b2)と場合による(c)とにより定義される。
【0073】
実施例:
二成分射出成形においてBASF Aktiengesellschaft社のポリスチレンPS 143Eを、Elastollan(R) C 65 A 15 HPMと互いに結合させた。この結合は、わずかな付着を示すか、付着を示さなかった。第2の試験において、PS143E部材を、Elastollan(R) TPUを用いた射出の前にプラズマ処理にかけ、その後に、直接前記のTPUを射出した。プラズマ処理された面の付着は、持続的にこれらの成分が互いに破壊されることなしに分離できないほど高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学的接着促進剤なしで付着結合する熱可塑性ポリウレタンとポリスチレンとを含有する物品。
【請求項2】
物品が二成分射出成形品であることを特徴とする、請求項1記載の物品。
【請求項3】
熱可塑性ポリウレタンが95より低いショアA硬度を有し、かつ可塑剤を含有しないことを特徴とする、請求項1記載の物品。
【請求項4】
熱可塑性ポリウレタンが目に見える表面を製造することを特徴とする、請求項1記載の物品。
【請求項5】
熱可塑性ポリウレタンは、45A〜80Aのショア硬度、15MPaより大きいDIN53504による引張強度、30N/mmより大きいDIN53515による引裂強度及び250mm3より小さいDIN53516による摩耗を有することを特徴とする、請求項1記載の物品。
【請求項6】
DIN EN1464による耐剥離性が少なくとも1N/mm、有利に少なくとも2N/mmであることを特徴とする、請求項1記載の物品。
【請求項7】
ポリスチレン物品の表面をプラズマ処理し、引き続き熱可塑性ポリウレタンをプラズマ処理された表面と接触させることを特徴とする、熱可塑性ポリウレタンとポリスチレンとを含有する物品の製造方法。
【請求項8】
熱可塑性ポリウレタンをポリスチレンのプラズマ処理された表面に射出成形により設けることを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
多成分射出成形において、有利に二成分射出成形において、第1の工程でポリスチレンを用いて第1の射出成形品を製造し、引き続き前記第1の射出成形品の表面をプラズマ処理し、その後で熱可塑性ポリウレタンを前記第1の射出成形品のプラズマ処理された表面に射出成形により設けることを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項10】
プラズマ源中に高電圧放電によりプラズマを生じさせ、前記プラズマをプラズマノズルで一方の成分、有利にポリスチレンの表面と接触させ、前記プラズマ源を2mm〜25mmの間隔で0.1m/min〜400m/minの速度でプラズマ処理される前記成分の表面に対して相対的に動かすことを特徴とする、請求項9記載の方法。
【請求項11】
プラズマ処理を1ms〜100sの間続けることを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項12】
熱可塑性ポリウレタンが95より低いショアA硬度を有し、かつ可塑剤を含有しないことを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項13】
熱可塑性ポリウレタンは、45A〜80Aのショア硬度、15MPaより大きいDIN53504による引張強度、30N/mmより大きいDIN53515による引裂強度及び250mm3より小さいDIN53516による摩耗を有することを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項14】
請求項7から13までのいずれか1項記載の方法により得られた、熱可塑性ポリウレタンとポリスチレンとを含有する物品。

【公表番号】特表2008−531330(P2008−531330A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556594(P2007−556594)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【国際出願番号】PCT/EP2006/060147
【国際公開番号】WO2006/089892
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】