説明

ポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法

【課題】本発明は、押出発泡体中からの物理発泡剤の散逸を抑制し、熱伝導率が小さく長期に亘り断熱性に優れるポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法は、ポリスチレン系樹脂(A)と、メタキシリレンジアミンに由来する構成単位を含み、半結晶化時間が特定の値以上、または非晶性であり、溶融粘度が特定の範囲内であるポリアミド樹脂(B)とを基材樹脂とすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法、たとえば、建築物の壁、床、屋根等の断熱材や畳芯材、コンクリート型枠などとして使用され、特に優れた断熱性能を有するポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレン系樹脂押出発泡体は、優れた断熱性及び機械的強度を有することから、板状に成形されたものが断熱材等として広く使用されている。このような発泡体は、一般に押出機中でポリスチレン系樹脂を加熱溶融したのち、該溶融物に物理発泡剤を混練して得られる発泡性溶融混練物を、押出機先端に付設されたフラットダイなどから低圧域に押出発泡することにより製造されている。
【0003】
上記のようなポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造に使用される物理発泡剤は、従来は、ジクロロジフルオロメタン等の塩化フッ化炭化水素(以下、CFCという)が広く使用されてきたが、CFCはオゾン層を破壊する危険性が大きいことから、近年、オゾン破壊係数の小さい水素原子含有塩化フッ化炭化水素(以下、HCFCという)がCFCに替わって用いられてきた。しかしながら、HCFCもオゾン破壊係数が0(ゼロ)でないことから、オゾン層を破壊する危険性が全くないわけではない。そこで、オゾン層破壊係数が0(ゼロ)であり、分子中に塩素原子を持たないフッ化炭化水素(以下、HFCという)を発泡剤として使用することが検討されてきた。
【0004】
ところがこのHFCは地球温暖化係数が大きいため、地球環境保護の観点からは未だ改善の余地を残すものであった。このためオゾン破壊係数が0(ゼロ)であるとともに、地球温暖化係数も小さい環境にやさしい発泡剤を使用するポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造法が検討されている。物理発泡剤として、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、シクロペンタンやイソペンタンなど(以下、HCということがある)は、オゾン破壊係数が0(ゼロ)であり、地球温暖化係数も小さく、地球環境の観点からは好ましい発泡剤である。現状において、HCは上記フロン類の代替発泡剤として有力なものであり、ポリスチレン系樹脂に対する透過速度が空気よりも遅い。しかしながら、HCはフロン類と比べるとポリスチレン系樹脂に対する透過速度が相対的に速いことから、発泡体の熱伝導率も速く上昇する。
従って、物理発泡剤としてHCを使用して得られるポリスチレン系樹脂押出発泡体において、長期間に亘り断熱性を維持することは困難な課題である。
【0005】
一方、ブタン発泡剤を使用しポリスチレン系樹脂とポリアミド樹脂との混合物を押出発泡してなる発泡シート(特許文献1)や、イソブタンを含む発泡剤を使用しポリスチレン系樹脂にガスバリアー性樹脂として、ニトリル系樹脂、ビニルアルコール系樹脂を添加して押出発泡断熱板を製造する方法(特許文献2、3)が提案されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の発泡体は、容器等に成形される熱成形用の発泡シートにすぎず、発泡体の厚みが薄く、発泡倍率も小さなものであって本発明の長期の断熱性を維持することを目的とする高厚み、高発泡倍率のものではなく、ポリスチレン系樹脂とポリアミド樹脂を単に混合しても高厚み、高発泡倍率の良好な発泡成形体を得ること自体が困難であり、発泡体内に残存する物理発泡剤のポリスチレン樹脂に対する透過速度を抑制することにはできないものであった。
また、特許文献2、3に記載の発泡体は、ニトリル系樹脂、ビニルアルコール系樹脂をポリスチレン系樹脂に混合することにより、イソブタン等の熱伝導率の低い発泡剤の発泡体からの逸散を抑制させることにより押出発泡体の断熱性を維持させる効果については記載されているが、発泡体の基材樹脂としてポリスチレン系樹脂とポリアミド樹脂とを混合して使用することについては記載されておらず、ポリスチレン系樹脂にポリアミド樹脂を混練しても、上記の通り、断熱材として使用できる十分な厚みと発泡倍率を有する押出発泡体を得ること自体に困難性を有し、更に、ポリアミド樹脂をポリスチレン系樹脂中に十分に分散させ、発泡剤に対する高いガスバリアー性を発現させることも、困難性を伴うものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭63−142043号公報
【特許文献2】特開2006−131719号公報
【特許文献3】特開2006−131757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、オゾン破壊係数がゼロか又は極めて低く、地球温暖化係数も小さなHCなどの物理発泡剤を使用した場合にも、発泡体からの発泡剤の散逸を抑制し、熱伝導率が小さく長期に亘り断熱性に優れるポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題について種々の検討を重ねた結果、メタキシリレンジアミンに由来する構成単位を含有したポリアミドはポリスチレン系樹脂と比較的混練性に優れ、発泡体からのHC等の物理発泡剤の逸散を抑制できる可能性があるという知見、ポリスチレン系樹脂とポリアミド樹脂との混合物を基材樹脂とする押出発泡技術においてポリアミド樹脂の結晶化開始温度がポリスチレン系樹脂の発泡温度よりも高く、結晶化速度も速いことから押出機内にて基材樹脂を発泡温度まで冷却する前にポリアミド樹脂の結晶化が開始してしまうことが押出発泡成形性の悪化を招いていたという知見などを得、更に鋭意研究を重ねた結果、ポリスチレン系樹脂と、メタキシリレンジアミンに由来する構成単位を含み、半結晶化時間が特定の値以上または非晶性であり、溶融粘度が特定の範囲内であるポリアミド樹脂との混合物を基材樹脂とすることにより、成形性に優れ、フロン系発泡剤を使用しなくても長期間に亘り断熱性に優れるポリスチレン系樹脂押出発泡体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の(1)ないし(4)に記載する発明を要旨とする。
(1)物理発泡剤を含有する発泡性溶融樹脂を押出発泡する押出発泡体の製造方法であって、該発泡性溶融樹脂を構成する樹脂が、ポリスチレン系樹脂(A)と、メタキシリレンジアミンに由来するジアミン構成単位を有するポリアミドを20〜100重量%含むポリアミド樹脂(B)との混合物であり、該混合物は、該樹脂(A)100重量部に対して、該樹脂(B)が1〜100重量部の割合で配合されており、該樹脂(B)は、温度180℃、剪断速度100sec−1の条件下における溶融粘度が1000〜10000Pa・sであり、かつ、非晶性又は140℃における半結晶化時間が500秒以上であることを特徴とするポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
(2)前記混合物は、該樹脂(A)100重量部に対して、該樹脂(B)が3〜50重量部の割合で配合されたものであることを特徴とする前記(1)に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
(3)前記メタキシリレンジアミンに由来するジアミン構成単位を有するポリアミドが、ジアミン構成単位の70〜100モル%がメタキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸構成単位の70〜100モル%が、炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸とイソフタル酸のモル比率が50:50〜98:2のジカルボン酸に由来するポリアミドであることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
(4)前記ポリアミド樹脂(B)がメタキシリレンジアミンに由来するジアミン構成単位を有するポリアミド(b−1)と、脂肪族ポリアミドおよび非晶性ポリアミドから選択される1以上のポリアミド(b−2)とからなり、(b−1)成分と(b−2)成分の合計重量100重量%に対して(b−1)成分が30〜98重量%であることを特徴とする、前記(1)ないし(3)のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の押出発泡体の製造方法によれば、ポリスチレン系樹脂にポリアミド樹脂が配合された混合樹脂からなるものであるにもかかわらず、発泡体表面に波うちがなく押出発泡時の生産安定性に優れ、十分な厚みおよび発泡倍率の良好なポリスチレン系樹脂押出発泡体を得ることができる。そして、本発明の製造方法にて得られる押出発泡体は、ポリスチレン系樹脂中にポリアミド樹脂が良好に分散していることからHC等の物理発泡剤の発泡体からの逸散を抑制することができるため、低い熱伝導率が長期に亘って維持され優れた断熱性能を保持するもので、特に建築、土木用断熱材として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1で得られたポリスチレン系樹脂押出発泡体の気泡膜断面の走査透過型電子顕微鏡写真である。
【図2】比較例2で得られたポリスチレン系樹脂押出発泡体の断面拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、ポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法について説明する。
なお、本明細書においてはポリスチレン系樹脂押出発泡体を「押出発泡体」ということがある。
〔1〕ポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法
本発明のポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法は、物理発泡剤を含有する発泡性溶融混合樹脂を押出発泡する混合樹脂押出発泡体の製造方法であって、該発泡性溶融混合樹脂を構成する混合樹脂が、ポリスチレン系樹脂(A)100重量部に対し、少なくともメタキシリレンジアミンに由来するジアミン構成単位を有するポリアミドを20重量%以上(100重量%も含む)含むポリアミド樹脂(B)が1〜100重量部配合されたものであり、該ポリアミド樹脂(B)が、温度180℃、剪断速度100sec−1の条件下における溶融粘度(η)が1000〜10000Pa・sであり、かつ、非晶性又は140℃における半結晶化時間が500秒以上であることを特徴とする。
【0014】
(1)基材樹脂について
ポリスチレン系樹脂押出発泡体の基材樹脂には、ポリスチレン系樹脂(A)と、メタキシリレンジアミンに由来するジアミン構成単位を有するポリアミドを含む後述する特定のポリアミド樹脂(B)が含まれる。基材樹脂中のポリスチレン系樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)の合計含有量は、少なくとも50重量%、好ましくは70〜100重量%である。
ポリスチレン系樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)を含む基材樹脂を使用することにより、ポリアミド樹脂(B)の結晶化によるポリスチレン系樹脂の発泡への悪影響を抑制できる上に、ポリスチレン系樹脂(A)中にポリアミド樹脂(B)を分散させることができるため、目的とする高いガスバリアー性を効率よく達成することができる。なお、ポリスチレン系樹脂(A)中のポリアミド樹脂(B)の分散状態としては、押出発泡体の気泡膜内に引き伸ばされた状態で存在することが好ましく、更に、気泡膜内にて層状に分散していることが好ましい。
【0015】
(i)ポリスチレン系樹脂(A)
本発明において使用されるポリスチレン系樹脂(A)としては、例えばスチレンホモポリマーやスチレンを主成分とするスチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ポニフェニレンエーテル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレンアクリレート共重合体、スチレン−メチルスチレン共重合体、スチレン−ジメチルスチレン共重合体、スチレン−エチルスチレン共重合体、スチレン−ジエチルスチレン共重合体、ハイインパクトポリスチレン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して使用される。なお、上記スチレン系共重合体におけるスチレン成分含有量は50モル%以上が好ましく、特に好ましくは80モル%以上である。
前記ポリスチレン系樹脂の中でも、スチレンホモポリマー、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ポニフェニレンエーテル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−メチルスチレン共重合体が好ましく、なかでも、スチレン単独重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体が好適である。
本発明において用いるポリスチレン系樹脂(A)は、温度180℃、剪断速度100sec−1の条件下における溶融粘度(η)が500〜10000Pa・s、より好ましくは700〜8000Pa・sの範囲のものを用いることが好ましく、更に1000〜6000Pa・sのものを用いると、押出発泡体を製造する際の押出成形性に優れると共に、得られる押出発泡体が機械的強度に優れるものとなるのでより好ましい。
【0016】
(ii)ポリアミド樹脂(B)
ポリアミド樹脂(B)は、少なくともメタキシリレンジアミンに由来するジアミン構成単位を有するポリアミドを20重量%以上(100重量%も含む)含むポリアミド樹脂で、温度180℃、剪断速度100sec−1の条件下における溶融粘度(η)が1000〜10000Pa・sであり、かつ、非晶性又は140℃における半結晶化時間が500秒以上である。
すなわち、ポリアミド樹脂(B)として、芳香環を有するメタキシリレンジアミンに由来するジアミン構成単位を有するポリアミド成分を使用することにより、ポリスチレン系樹脂(A)との親和性が向上するので、ポリアミド樹脂(B)のポリスチレン系樹脂(A)中への分散性が向上する。更に、ポリスチレン系樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)に物理発泡剤を含有させて押出発泡成形する際に、該成形が可能な温度である約140℃でのポリアミド樹脂(B)の半結晶化時間が500秒以上または非晶性であると、押出機内および押出発泡成形時のポリアミド樹脂(B)の結晶化度が低く抑えられるため、安定して押出発泡成形を行うことが可能となる。上記観点から、ポリアミド樹脂(B)は、半結晶化時間が1000秒以上、または非晶性であることが好ましい。
なお、ポリアミド樹脂(B)の半結晶化時間は、脱偏光強度法による定温結晶化により、ポリアミド樹脂(B)のガラス転移温度以上、融点未満で測定される。
【0017】
前記脱偏光強度法は、結晶化により樹脂を透過する光が複屈折を起こす現象を利用して樹脂の結晶化の進行度を測定する方法である。直交した1対の偏光板の間で非晶または溶融状態の樹脂を結晶化させると、結晶化の進行度に比例して偏光板を透過する光量が増加するので、該透過光量(透過光強度)は受光素子により測定することが可能である。また定温結晶化とは、非晶状態または溶融状態の樹脂を融点未満且つガラス転移温度以上の任意の温度(本発明においては140℃)で等温的に結晶化させることをいう。半結晶化時間とは、樹脂を非晶状態または溶融状態にした後、透過光強度が(I−I)/2(Iは非晶状態または溶融状態のときの透過光強度、Iは一定値に達したときの透過光強度を表す)に達するまでの時間、すなわち結晶化が半分進行する迄にかかる時間をいい、結晶化速度の指標となる値である。
脱偏光強度法は、例えば、高分子化学 (Kobunshi Kagaku), Vol. 29, No. 323, pp. 139-143 (Mar., 1972)、または、高分子化学 (Kobunshi Kagaku), Vol. 29, No. 325, pp. 336-341 (May, 1972)に記載の方法に準じて実施することができる。
本発明におけるポリアミド樹脂(B)の半結晶化時間は、試料溶融温度:260℃、試料溶融時間:5分、結晶化浴温度:140℃の条件化において脱偏光光度法により測定するものとし、ポリマー結晶化速度測定装置は、(株)コタキ製作所製、型式:MK701により測定される。本発明では上述した方法において透過光強度が一定値に達するまでの時間が86400秒以上であるものも、非晶性であるとする。なお、本発明における半結晶化時間には、ポリスチレン系樹脂の発泡温度が125℃〜143℃であることから、140℃において定温結晶化させた時の値を採用した。
本明細書におけるガラス転移温度(Tg)および融点(Tm)の測定方法は、以下の通りである。
JIS K7121−1987の熱流束示差走査熱量測定により、重合体粒子2〜4mgを試験片としてJIS K7121−1987の3.試験片の状態調節(3)記載の条件(但し、冷却速度は10℃/min)を採用して前処理を行なった後、40℃から300℃まで10℃/分の昇温速度で加熱することによってDSC曲線を得る。得られたDSC曲線の中間点ガラス転移温度として求められる値をガラス転移温度とする。得られたDSC曲線の融解ピークの頂点温度を融点とする。尚、融解ピークが2つ以上現れる場合は、最も面積の大きな融解ピークの頂点温度を融点とする。
【0018】
本発明のメタキシリレンジアミンに由来するジアミン構成単位を有するポリアミド(b−1)は、ジアミン構成単位の70モル%以上(100モル%も含む)がメタキシリレンジアミンに由来することが好ましく、また、ジカルボン酸構成単位の70モル%以上(100モル%も含む)が、炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸とイソフタル酸のモル比率が50:50〜98:2のジカルボン酸に由来するポリアミドであることが好ましく、該モル比率が75:25〜97:3がより好ましく、80:20〜96:4が更に好ましい。
ジカルボン酸構成単位にイソフタル酸に由来する構成単位が含まれると、発泡剤のバリアー性が向上するばかりでなく、ポリスチレン系樹脂(A)との混練性も向上する。
また、炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸のみの場合に比べ、得られるポリアミド樹脂の融点が低下し、結晶化速度が遅延されるため、ポリスチレン系樹脂とポリアミド樹脂との混合物を基材樹脂として押出発泡成形する際に、ポリアミド樹脂の溶融粘度が高すぎたり、結晶化が開始してしまったりすることによる押出発泡成形性の悪化を防止することができる。
なお、ジカルボン酸構成単位にイソフタル酸に由来する構成単位が多すぎると安定した押出発泡成形が困難となる虞がある。
【0019】
(ii−1)ジカルボン酸成分
本発明において、アジピン酸およびイソフタル酸以外の、上記炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸として、例えばコハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸が挙げられ、これらのジカルボン酸成分以外のジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、オルソフタル酸等のフタル酸化合物;1,2−ナフタレンジカルボン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、1,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸といった異性体等のナフタレンジカルボン酸;安息香酸、プロピオン酸、酪酸等のモノカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸等の多価カルボン酸;無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等のカルボン酸無水物等が例示できる。これらは全ジカルボン酸成分の30モル%以下の範囲で使用してもよい。
【0020】
(ii―2)ジアミン成分
本発明において、メタキシリレンジアミンに由来するジアミン構成単位を有するポリアミド(b−1)に使用するメタキシリレンジアミン以外のジアミン成分としては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、等の脂肪族ジアミン;1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン(構造異性体を含む。)、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン(構造異性体を含む。)等の脂環族ジアミン;ビス(4−アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、パラキシリレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン(構造異性体を含む。)等の芳香環を有するジアミン類等を例示することができる。これらは全ジアミン成分中に30モル%以下の範囲で使用することができる。
【0021】
(ii−3)他のモノマー成分
重縮合により前記メタキシリレンジアミンに由来するジアミン構成単位を有するポリアミド(b−1)を得る際には、重縮合反応系に、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム、ω−エナントラクタムなどのラクタム類、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、9−アミノノナン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸などを、性能を損なわない範囲で加えても良い。
【0022】
(ii−4)脂肪族ポリアミドおよび/または非晶性ポリアミド(b−2)
本発明において、脂肪族ポリアミドおよび/または非晶性ポリアミド(b−2)としては、ナイロン−4、ナイロン−6、ナイロン−12、ナイロン−66、ナイロン−46、ナイロン−610、ナイロン−612、ナイロン666等の脂肪族ポリアミドやナイロン−6I、ナイロン−6T、ナイロン−6IT等の非晶性ポリアミドを、例えば押出機などを用いて混合させたものを用いることが好ましい。
この場合、ポリアミド系樹脂(B)は、メタキシリレン基含有ポリアミド30〜98重量%と脂肪族ポリアミドおよび/または非晶性ポリアミド2〜70重量%からなる(両者の合計は100重量%)ことが好ましい。より好ましくは、メタキシリレン基含有ポリアミド40〜98重量%と脂肪族ポリアミドおよび/または非晶性ポリアミド2〜60重量%、さらに好ましくは、メタキシリレン基含有ポリアミド50〜98重量%と脂肪族ポリアミドおよび/または非晶性ポリアミド2〜50重量%、特に好ましくはメタキシリレン基含有ポリアミド60〜98重量%と脂肪族ポリアミドおよび/または非晶性ポリアミド2〜40重量%である。なお、脂肪族ポリアミドと非晶性ポリアミドの混合割合は任意である。
【0023】
(ii−5)ポリアミド樹脂(B)の溶融粘度
前記ポリアミド樹脂(B)の温度180℃、剪断速度100sec−1の条件下における溶融粘度(η)は、好ましくは1000〜10000Pa・s、より好ましくは1500〜6000Pa・sである。
前記ポリアミド樹脂(B)の溶融粘度がポリスチレン系樹脂(A)の溶融粘度と比較して低すぎる場合は、発泡時に気泡の膨張力にポリアミド樹脂(B)が耐え切れず気泡が破壊し、発泡体内部に巨大気泡や大きな空間部が形成されたり、気泡構造の均一性が失われたりして、目的の高いガスバリアー性、高発泡倍率と高独立気泡率を兼ね備えた押出発泡体を安定的に得ることが難しくなる虞がある。一方、前記ポリアミド樹脂(B)の溶融粘度がポリスチレン系樹脂(A)の溶融粘度と比較して高すぎる場合は、溶融混練時のポリアミド樹脂(B)の粘度がポリスチレン系樹脂(A)と比較して高すぎるため、分散性が低下し、ポリアミド樹脂がポリスチレン系樹脂中に均一に微分散できないため、ポリアミド樹脂のガスバリアー性が十分に発揮されず、高いガスバリアー性を有する押出発泡体を得ることが困難になる虞がある。
なお、本明細書において溶融粘度の測定は、温度180℃、剪断速度100sec−1の条件下において測定するものとし、株式会社東洋精機製作所製のキャピログラフ1Dによって測定される。具体的には、シリンダー径9.55mm、長さ350mmのシリンダーと、ノズル径1.0mm、長さ10.0mmのオリフィスを用い、シリンダー及びオリフィスの設定温度を200℃にし、熱風循環式乾燥機によりガラス転移温度より10℃低い温度で十分に乾燥させたポリアミド樹脂(B)を該シリンダー内に入れ、4分間放置してから測定し、そこで得られた溶融粘度(Pa・s)を採用する。なお、測定の際にオリフィスから押出されるストランドには気泡ができるだけ混入しないようにする。
【0024】
(iii)基材樹脂の組成
本発明のポリスチレン系樹脂押出発泡体の基材樹脂にけるポリアミド樹脂(B)の配合量は、ポリスチレン系樹脂(A)100重量部に対し1〜100重量部、好ましくは、3〜50重量部、特に好ましくは、5〜20重量部である。
前記ポリアミド樹脂(B)の配合量が少なすぎると発泡体のガスバリアー性を向上させる効果が小さくなる。一方、ポリアミド樹脂(B)の配合量が多すぎるとポリスチレン系樹脂混合物の溶融張力が低下して発泡成形が困難になり、高発泡倍率と高独立気泡率とを兼ね備えた発泡体が得られないおそれがある。
本発明では、本発明の目的を阻害しない範囲内で、基材樹脂中に、ポリオレフィン樹脂やスチレン系エラストマーやポリフェニレンエーテル樹脂のような他の(共)重合体を更に混合して使用することもできるが、そのような他の(共)重合体の使用量は、基材樹脂中に、30重量%を上限とすることが好ましく、0〜20重量%であることが更に好ましく、0〜10重量%であることが特に好ましい。
【0025】
(2)物理発泡剤(C)
本発明おいて、ポリスチレン系樹脂押出発泡体を発泡成形する際に使用する物理発泡剤(C)は特に限定されるものではないが、オゾン破壊係数がゼロか又は極めて低く、且つ温暖化係数の低い物理発泡剤を使用することが好ましい。一方、物理発泡剤として、押出発泡体の長期断熱性を考慮すると、押出発泡体の中に残存し易い物理発泡剤を10モル%以上(100モル%も含む)、更に好ましくは20モル%以上(100モル%も含む)含有されていることが好ましい。押出発泡体の中に残存し易い物理発泡剤としては、ポリスチレン系樹脂に対してガス透過性が比較的遅いものが好適に使用できる。なお、本発明における基材樹脂はポリアミド樹脂(B)によりガスバリアー性が向上されているので基材樹脂に対するガス透過性は一層遅くなり、その結果断熱性を一層向上する。
ガス透過性が比較的遅い炭化水素系発泡剤(C1)の具体例としては、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン等の炭素原子数3〜5の脂肪族炭化水素、;シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等の炭素原子数3〜6の脂環式炭化水素が挙げられる。これらの中でも、ガス透過性が遅く発泡剤として好適な、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタンがより好ましく、イソブタンが特に好ましい。
【0026】
一方、該ガス透過性が比較的速い発泡剤(C2)としては、例えば、塩化アルキル、アルコール類、エーテル類、ケトン類、蟻酸メチル、二酸化炭素、水等が挙げられる。これらの発泡剤の中でも炭素原子数1〜3の塩化アルキル、炭素原子数1〜4の脂肪族アルコール、アルキル鎖の炭素原子数が1〜3のエーテル類、二酸化炭素、水等が物理発泡剤として好適なものである。炭素原子数1〜3の塩化アルキルとしては、例えば塩化メチル、塩化エチル等が挙げられる。炭素原子数1〜4の脂肪族アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、アリールアルコール、クロチルアルコール、プロパギルアルコール等が挙げられる。アルキル鎖の炭素原子数が1〜3のエーテル類としては例えばジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチレンジメチルエーテル等が挙げられる。特に、発泡倍率向上効果などが期待でできるものとして、塩化メチル、ジメチルエーテル、メタノール、エタノール、二酸化炭素、水が挙げられる。これらの物理発泡剤は単独または2種以上を併用することもできる。
上記の物理発泡剤は優れた発泡剤であることから、得られる押出発泡板の見掛け密度を低下させる効果があると共に、ポリスチレンに対するガス透過性が高いため押出発泡板から早期に逸散して発泡板の断熱性能及び難燃性能を早期に安定化させるのに効果的である。また、二酸化炭素を使用すると、得られる発泡板の気泡を小さくする効果があるので気泡調整剤の添加量を減らすことができる効果や断熱性能を向上させる効果が期待できるので好ましい。
【0027】
更に、得られる押出発泡体の製造時の安全性や押出発泡体の難燃性の点から、物理発泡剤として、上記のガス透過性が比較的遅い炭化水素系発泡剤(C1)と、上記のガス透過性が比較的速い発泡剤(C2)とを併用した混合発泡剤を使用することが好ましい。このような混合発泡剤を使用することにより、発泡剤(C1)の添加量を削減でき、かつ発泡剤(C2)は発泡直後に発泡体中からそのほとんどが散逸してしまうために、得られる押出発泡体は十分な発泡倍率を確保でき、発泡体中の可燃性ガス(発泡剤(C1))残存量を少なくすることができるため基材樹脂中に難燃剤を添加することにより、ポリスチレン系樹脂押出発泡体に所望の難燃性を付与することができる。なお、発泡体中の可燃性ガス(発泡剤(C1))残存量を少なすぎても断熱性能低下に繋がってしまう。
これら物理発泡剤の基材樹脂に対する添加量は所望する発泡倍率との関連で適宜選択され、見かけ密度が20〜60kg/cmの発泡体を得るには、通常、基材樹脂1kg当たり、混合発泡剤として0.5〜3モル添加され、好ましくは0.6〜2.5モルが添加される。
【0028】
(3)難燃剤
本発明により得られるポリスチレン系樹脂発泡体は主に建築用断熱板として使用されるので、JIS A9511(2006年)5・13・1に規定される、「測定方法A」に記載の押出ポリスチレンフォーム保温板を対象とする燃焼性規格を満足する高度な難燃性が要求されると想定される。さらに、本発明により得られるポリスチレン系樹脂発泡体は、JIS A9511(2006年)4.2で規定される熱伝導率の規格を満足することが望ましい。したがって、本発明における物理発泡剤としての前記炭化水素の添加は、難燃性と熱伝導率が両立するように行われ、発泡体中に前記炭化水素が上記難燃性と上記熱伝導率の規格を両立する残存量に調整されることが好ましい。さらに、前記の比較的ガス透過性の速い発泡剤は、所望の見掛け密度を達成するために、前記炭化水素の量に応じて適宜決定される。
【0029】
前記JIS A9511(2006年)5・13・1に規定される、「測定方法A」に記載の押出ポリスチレンフォーム保温板を対象とする燃焼性規格を満足する高度な断熱性能が要求されるポリスチレン系樹脂押出発泡体は、前記炭化水素の含有量の調整に加えて、難燃剤を添加することにより達成される。ポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造において使用できる難燃剤としては、臭素系難燃剤が好ましく使用される。臭素系難燃剤としては、例えば、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAビス(2−ブロモエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAビス(アリルエーテル)、2,2−ビス[4−(2,3−ジブロモ−2−メチルプロポキシ)−3,5−ジブロモフェニル]プロパン、テトラブロモビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールS−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、ヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモシクロオクタン、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、トリブロモフェノール、デカブロモジフェニルオキサイド、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、N,2−3−ジブロモプロピル−4,5−ジブロモヘキサヒドロフタルイミド、臭素化ビスフェノールエーテル誘導体などが挙げられる。これらの化合物は単独又は2種以上を混合して使用できる。上記の臭素系難燃剤の中でも、その熱安定性が高く、高い難燃効果が得られることから、ヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモシクロオクタン、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、2,2−ビス[4−(2,3−ジブロモ−2−メチルプロポキシ)−3,5−ジブロモフェニル]プロパン、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートが特に好ましい。
ポリスチレン系樹脂押出発泡体中における難燃剤の含有量は、難燃性を向上させるとともに、発泡性の低下および機械的物性の低下を抑制するうえで、基材樹脂100重量部当たり1〜10重量部が好ましく、1.5〜7重量部がより好ましく、2〜5重量部が更に好ましい。
【0030】
さらに、本発明おいては、押出発泡体の難燃性をさらに向上させることを目的として、難燃助剤を上記臭素系難燃剤と併用して使用することができる。難燃助剤としては、例えば2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、2,3−ジエチル−2,3−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、3,4−ジエチル−3,4−ジフェニルヘキサン、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、2,4−ジフェニル−4−エチル−1−ペンテン等のジフェニルアルカンやジフェニルアルケン、ポリ−1,4−ジイソプロピルベンゼン等のポリアルキル化芳香族化合物、トリフェニルホスフェート、クレジルジ2,6−キシレニルホスフェート、三酸化アンチモン、五酸化二アンチモン、硫酸アンモニウム、すず酸亜鉛、シアヌル酸、イソシアヌル酸、トリアリルイソシアヌレート、メラミンシアヌレート、メラミン、メラム、メレム等の窒素含有環状化合物、シリコーン系化合物、酸化ホウ素、ホウ酸亜鉛、硫化亜鉛などの無機化合物、赤リン系、ポリリン酸アンモニウム、フォスファゼン、次亜リン酸塩等のリン系化合物等が挙げられる。これらの化合物は単独又は2種以上を混合して使用できる。
【0031】
(4)断熱性向上剤
本発明においては基材樹脂に、断熱性向上剤を添加してさらに断熱性を向上することができる。断熱性向上剤としては、例えば、酸化チタン等の金属酸化物、アルミ等の金属、セラミック、カーボンブラック、黒鉛等の微粉末、赤外線遮蔽顔料、ハイドロタルサイトなどが例示される。これらは1種又は2種以上を使用することができる。断熱性向上剤の添加量は基材樹脂100重量部に対し、0.5〜5重量部、好ましくは1〜4重量部の範囲で使用される。
【0032】
(5)その他の添加剤
また、本発明においては基材樹脂に、必要に応じて、気泡調整剤、顔料、染料等の着色剤、熱安定剤、その他充填剤等の各種の添加剤を適宜添加することができる。前記気泡調整剤として、例えば、タルク、カオリン、マイカ、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、クレー、ベントナイト、ケイソウ土等の無機物粉末;アゾジカルボジアミド等の従来公知の化学発泡剤などを用いることができる。なかでも難燃性を阻害することがなく気泡径を調整することが容易であるタルクが好適である。特にJIS Z8901(2006年)に規定される粒径が0.1〜20μmの大きさの細かいタルクが好ましく、0.5〜15μmの大きさのものが好ましい。気泡調整剤の添加量は、該調整剤の種類、目的とする気泡径等によって異なるが、タルクを使用する場合は基材樹脂100重量部に対し、0.01〜8重量部が好ましく、0.01〜5重量部がさらに好ましく、0.05〜3重量部が特に好ましい。
気泡調整剤も他の添加剤と同様にポリスチレン系樹脂をベースレジンとするマスターバッチを調製して使用することが添加剤の分散性の点から好ましい。気泡調製剤のマスターバッチの調製は、例えば、気泡調整剤としてタルクを使用した場合、基材樹脂に対してタルクの含有量が20〜80重量%となるように調製されることが好ましく、30〜70重量%となるように調整されることがより好ましい。
【0033】
(6)ポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法
ポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法は、前記のポリスチレン系樹脂(A)と前記ポリアミド樹脂(B)を含む上記の基材樹脂を使用することが主な特徴であり、該基材樹脂に気泡調整剤などの添加剤を必要に応じて添加し、押出機内にて溶融混練して、ついで押出機中に物理発泡剤を圧入して溶融樹脂に発泡剤を溶解させ、物理発泡剤を含有する溶融樹脂の温度を調整して発泡性溶融樹脂を得、該発泡性溶融樹脂を押出機先端に取付けたフラットダイから低圧域に押出して発泡体を得ると同時にダイ下流側に付設された賦形装置を通過させることにより板状のポリスチレン系樹脂押出発泡体を得ることができる。
【0034】
発泡性溶融樹脂に使用する基材樹脂、難燃剤、発泡剤、断熱性向上剤、その他の添加剤、及びこれらの配合量は、前記した通りである。
なお、難燃剤を押出機に供給する場合には、所定量の難燃剤を基材樹脂等とドライブレンドしたものを押出機に供給する方法、難燃剤とポリスチレン系樹脂(A)等とをニーダー等により混練した溶融混練物を押出機に供給する方法、予め加熱溶融させた液状の難燃剤を押出機内に供給する方法や難燃剤マスターバッチを作製して押出機に供給する方法を採用することができる。特に、分散性の点から難燃剤マスターバッチを作製して押出機に供給する方法を採用することが好ましい。
また、前記断熱性向上剤を押出機に供給する場合には、所定量の断熱性向上剤を基材樹脂等とドライブレンドして、このブレンド物を押出機上流に設けられた供給部から押出機に供給し、混練して溶融ポリスチレン系樹脂混合物中に配合することができる。また、予め高濃度の前記断熱性向上剤をポリスチレン系樹脂(A)等に配合したマスターバッチを作製し、これを押出機に供給する方法を採用することができる。特に分散性の点からマスターバッチ方式を採用することが好ましい。前記断熱性向上剤のマスターバッチの調製はポリスチレン系樹脂中に前記断熱性向上剤が10〜80重量%、好ましくは20〜70重量%、さらには30〜60重量%含有されるように調整することが好ましい。
【0035】
本発明方法においては、押出機内で基材樹脂、物理発泡剤、添加剤等が溶融混練された溶融樹脂を発泡適性温度に調整した後、ダイリップを通して連続的に高圧域から低圧域に押出して発泡性溶融樹脂を発泡させつつ板状等の発泡体に賦形する。具体的には、まず発泡性溶融樹脂混合物を発泡させながら、特定構造の通路を通過させることにより、発泡途上の発泡性溶融樹脂混合物を圧縮しつつ賦形装置を通過させながら板状に賦形する。前記賦形装置としては、例えば上下一対のポリテトラフルオロエチレン製の板で構成される賦形具の使用が好ましい。
上記発泡適性温度とは、発泡剤を含有する溶融樹脂が発泡に適した溶融粘度を示す範囲の温度を意味し、使用する基材樹脂の種類、流動性向上剤の添加の有無(添加する場合、その種類や量)、更には混合発泡剤の添加量や混合発泡剤の成分等によっても異なる。
【0036】
〔2〕本発明により得られるポリスチレン系樹脂押出発泡体
本発明のポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法で得られるポリスチレン系樹脂押出発泡体は、気泡膜が、連続相であるポリスチレン系樹脂(A)と、該ポリスチレン系樹脂(A)中に分散している非連続相であるメタキシリレンジアミンに由来するジアミン構成単位を有するポリアミドを20〜100重量%含むポリアミド樹脂(B)からなり、該ポリアミド樹脂(B)相が気泡膜の厚み方向と直行する方向に引き伸ばされた状態で存在していることが所期の目的を達成する上で望ましい。
すなわち、ポリスチレン系樹脂押出発泡体を構成している気泡膜がポリアミド樹脂(B)を島とする海島構造を有していることが好ましく、特にポリアミド樹脂(B)が多数の層状に分散していることが好ましい。なお、図1において海部分はポリスチレン系樹脂(A)からなる連続相部分であり、島部分はポリアミド樹脂(B)からなる非連続相部分である海島構造である。
このようにして形成された好ましいポリスチレン系樹脂押出発泡体は、図1のポリスチレン系樹脂押出発泡体の気泡膜断面の走査透過型電子顕微鏡写真に示されるように、該発泡体の気泡膜が、ポリスチレン系樹脂からなる連続相と、該連続相中にポリアミド樹脂が分散してなる非連続相(図1中、右上から左下に向かっている筋状の相)とから構成され、該非連続相が気泡膜の厚み方向と直交する方向に引き伸ばされた状態となっている。
図1に示されるように、前記ポリアミド樹脂組成物(B)を気泡膜内に延伸状態で分散させるためには、発泡成形時におけるポリスチレン系樹脂(A)とポリアミド樹脂組成物(B)の溶融粘度を調整することにより得ることができる。本発明のポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法においては、ポリスチレン系樹脂(A)の溶融粘度との関係において、ポリアミド樹脂(B)が、温度180℃、剪断速度100sec−1の条件下における溶融粘度1000〜10000Pa・sの条件を満足することにより上記海島構造を形成することができる。なお、ポリスチレン系樹脂(A)は、前述の通り、温度180℃、剪断速度100sec−1の条件下における溶融粘度が500〜10000Pa・s、であることが好ましい。また、ポリスチレン系樹脂(A)とポリアミド樹脂組成物(B)の溶融粘度比(樹脂(A)の溶融粘度/樹脂(B)の溶融粘度)は0.1〜10であることが好ましく、0.25〜5であることが好ましく、更に0.5〜2であることが好ましい。
【0037】
(i)ポリスチレン系樹脂押出発泡体の厚み
ポリスチレン系樹脂押出発泡体は、その使用目的から厚みが10〜150mmのものが好ましい。厚みが薄すぎる場合は、断熱材として使用する場合に要求される断熱性が不十分となる虞がある。一方、押出機の大きさにもよるが、厚みが厚すぎる場合には発泡成形が難しくなる虞がある。なお、厚みは15mm〜120mmのものがより好ましい。
【0038】
(ii)ポリスチレン系樹脂押出発泡体の見かけ密度
ポリスチレン系樹脂押出発泡体の見かけ密度は、20〜60kg/cmのものが好ましい。見かけ密度が小さすぎる場合は、押出発泡体を製造すること自体かなり困難であり、用途によっては機械的強度が不十分なものとなる。一方、見かけ密度が大きすぎる場合は、押出発泡体の厚みを相当厚くしない限り、充分な断熱性を発揮させることが困難であり、また軽量性の点からも好ましくない。
【0039】
(iii)平均気泡径
ポリスチレン系樹脂押出発泡体の厚み方向平均気泡径は、好ましくは0.05〜2mmであり、より好ましくは0.06〜0.8mmであり、さらに好ましくは0.07〜0.3mmである。平均気泡径が上記範囲内にあることにより、機械的強度に優れ、より高い断熱性を有する押出発泡板を得ることができる。該気泡径が小さすぎると、厚みが厚く、低い見掛け密度の押出発泡体を得ること自体が難しくなるばかりか、気泡膜が薄くなりすぎるために赤外線を透過しやすくなり発泡体の断熱性が悪化する虞がある。一方、大きすぎるものは、目的とする断熱性を有する押出発泡体を得ることができない虞がある。
本明細書における平均気泡径の測定方法は次の通りである。
押出発泡体厚み方向の平均気泡径(D:mm)及び押出発泡体幅方向の平均気泡径(D:mm)は押出発泡体の幅方向垂直断面(押出発泡板の押出方向と直交する垂直断面)を、押出発泡体押出方向の平均気泡径(D:mm)は押出発泡板の押出方向垂直断面(押出発泡体の押出方向に平行に、幅方向の中央部で二等分した垂直断面)の顕微鏡拡大写真を得る。次いで、該拡大写真上において測定しようとする方向に直線を引き、その直線と交差する気泡の数を計数し、直線の長さ(当然のことながら、この長さは拡大写真上の直線の長さではなく、写真の拡大率を考慮した直線の長さを指す。)を計数された気泡の数で割ることによって、各々の方向における平均気泡径を求める。
【0040】
平均気泡径の測定方法について詳述すると、厚み方向の平均気泡径(D:mm)の測定は幅方向垂直断面の中央部及び両端部の計3箇所の顕微鏡拡大写真を得、各々の写真上において、厚み方向に押出発泡体の全厚みに亘る直線を引き各々の直線の長さと該直線と交差する気泡の数から各直線上に存在する気泡の平均径(直線の長さ/該直線と交差する気泡の数)を求め、求められた3箇所の平均径の算術平均値を厚み方向の平均気泡径(D:mm)とする。
幅方向の平均気泡径(D:mm)は幅方向垂直断面の、中央部及び両端部の計3箇所の顕微鏡拡大写真を得、各々の写真上において、押出発泡体を厚み方向に二等分する位置に、3mmに拡大率を乗じた長さの直線を幅方向に引き、該直線と該直線と交差する気泡の数から、各直線上に存在する気泡の平均径を式(3mm/(該直線と交差する気泡の数−1))にて求め、求められた3箇所の平均径の算術平均値を幅方向の平均気泡径(D:mm)とする。
【0041】
押出方向の平均気泡径(D:mm)は、押出発泡体の幅方向を二等分する位置で、押出発泡体を押出方向に切断して得られた押出方向垂直断面の、中央部及び両端部の計3箇所の顕微鏡拡大写真を得、各々の写真上において、押出発泡体を厚み方向に二等分する位置に、3mmに拡大率を乗じた長さの直線を押出方向に引き、該直線と該直線と交差する気泡の数から、各直線上に存在する気泡の平均径を式(3mm/(該直線と交差する気泡の数−1))にて求め、求められた3箇所の平均径の算術平均値を押出方向の平均気泡径(D:mm)とする。また、押出発泡板の水平方向の平均気泡径(D:mm)は、DとDの相加平均値とする。
【0042】
(iv)平均気泡変形率
更にポリスチレン系樹脂押出発泡体においては、気泡変形率が0.7〜2.0であることが好ましい。気泡変形率とは、上記測定方法により求められたDをDで除すことにより算出される値(D/D)であり、該気泡変形率が1よりも小さいほど気泡は扁平であり、1よりも大きいほど縦長である。気泡変形率が小さすぎる場合は、気泡が扁平なので圧縮強度が低下する虞れがあり、扁平な気泡は球形に戻ろうとする傾向が強いので、押出発泡体の寸法安定性も低下する虞がある。気泡変形率が大きすぎる場合は、厚み方向における気泡数が少なくなるので、気泡形状による断熱性向上効果が小さくなる。そのような観点から、上記気泡変形率は、0.8〜1.5であることが好ましく、0.8〜1.2であることがより好ましい。気泡変形率が上記範囲内にあることにより、機械的強度に優れ、かつ更に高い断熱性を有するポリスチレン系樹脂押出発泡体となる。
【0043】
(v)独立気泡率
ポリスチレン系樹脂押出発泡体の独立気泡率は90%以上であることが好ましく、93%以上であることがより好ましい。独立気泡率が高い程、高い断熱性能を維持することができる。独立気泡率S(%)は、ASTM−D2856−70の手順Cに従って、空気比較式比重計(例えば、東芝ベックマン(株)製、空気比較式比重計、型式:930型)を使用して測定された押出発泡体の真の体積Vxを用い、下記式(1)により算出される。
測定試料は、押出発泡体において中央部および幅方向両端部付近の計3箇所からカットサンプルを切り出して各々のカットサンプルについて独立気泡率を測定し、3箇所の独立気泡率の算術平均値を押出発泡体の独立気泡率とする。なお、カットサンプルは押出発泡体から縦25mm×横25mm×厚み20mmの大きさに切断された、押出発泡体表皮を有しないサンプルとし、厚みが薄く厚み方向に20mmのサンプルが切り出せない場合には、例えば縦25mm×横25mm×厚み10mmの大きさに切断された試料(カットサンプル)を2枚重ねて測定する。
【0044】
S(%)=(Vx−W/ρ)×100/(VA−W/ρ) (1)
ただし、Vx:上記空気比較式比重計による測定により求められるカットサンプルの真の体積(cm)(押出発泡体のカットサンプルを構成する樹脂の容積と、カットサンプル内の独立気泡部分の気泡全容積との和に相当する。)
VA:測定に使用されたカットサンプルの外寸法から算出されたカットサンプルの見かけ上の体積(cm
W:測定に使用されたカットサンプル全重量(g)
ρ:押出発泡体を構成する樹脂の密度(g/cm
【0045】
(vi)ポリスチレン系樹脂押出発泡体の熱伝導率
ポリスチレン系樹脂押出発泡体の熱伝導率は、0.029W/m・K以下であるが望ましい。
本発明において熱伝導率は、押出発泡体から縦200mm×横200mm×厚み25mmの押出発泡体表皮が存在しない試験片を切り出し、該試験片についてJIS A 1412−2(1999年)記載の平板熱流計法(熱流計2枚方式、高温側38℃、低温側8℃、平均温度23℃)に基づいて測定される。なお、厚み25mmの試験片を切り出せない場合は複数枚(できるだけ少ない枚数)の厚みの薄い試験片を積層して厚み25mmの試験片とする。
【0046】
(vii)残存物理発泡剤
本発明おいて、発泡体の中に残存する物理発泡剤(C)としては、オゾン破壊係数がゼロか又は極めて低く、かつスチレン系樹脂に対するガス透過性が比較的遅い観点から、炭化水素系発泡剤が好ましい。本発明における基材樹脂はポリアミド樹脂(B)を含むことによりガスバリアー性が向上されているので基材樹脂に対するガス透過性は一層遅くなり、その結果断熱性を一層向上することが可能になる。
【0047】
ガス透過性が比較的遅い炭化水素系発泡剤(C1)としては、炭素原子数3〜5の脂肪族炭化水素、具体的には、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン等が挙げられ、炭素原子数3〜6の脂環式炭化水素、具体的には、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。これらの中でも、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタンがより好ましく、ガス透過性が低く、発泡剤適性に優れることに加えて取り扱い性に優れることからイソブタンが特に好ましい。上記発泡剤は、単独または2種以上を併用して使用することができる。
本発明のポリスチレン系樹脂押出発泡体においては、優れた断熱性および難燃性を得るために、発泡体中の炭素原子数3〜5の炭化水素系発泡剤の残存量は、押出発泡体1kg当たり0.1〜0.9モルであることが好ましく、0.4〜0.9モルであることがより好ましい。本明細書における発泡体中の発泡剤の残存量はガスクロマトグラフを用いて測定することができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(1)実施例及び比較例で基材樹脂に使用した原材料を以下に示す。
(i)基材樹脂
基材樹脂を構成する市販の樹脂を表1に、ポリアミド樹脂を表2に示す。
【0049】
下記表1に示す樹脂は下記(イ)〜(ニ)の通りである。
(イ)MSは、樹脂中のスチレンとメタクリル酸メチルの構成単位(スチレン/メタクリル酸メチル)重量比は40/60である。
(ロ)耐熱PSは、樹脂中のスチレンとメタクリル酸の構成単位(スチレン/メタクリル酸)重量比は93/7である。
(ハ)MXD5は、メタキシリレンジアミンとアジピン酸の縮合反応により得られるポリメタキシリレンアジパミドである。
(ニ)非晶ナイロンは、6I/6Tの縮合反応により得られる半芳香族ポリアミドである。なお、上記「I」はイソフタル酸成分、「T」はテレフタル酸成分を示す。
【0050】
【表1】

【0051】
下記表2に示すポリアミドは下記の(イ)〜(ホ)の通りである。
(イ)MXD1
攪拌機、分縮器、冷却器、滴下槽、および窒素ガス導入管を備えたジャケット付きの50L反応缶にアジピン酸14.2kg(97.1mol)とイソフタル酸1.0kg(6.2mol)秤量して仕込み、十分窒素置換し、さらに少量の窒素気流下に160℃で溶融アジピン酸とイソフタル酸からなる均一なスラリーにした。これに、メタキシリレンジアミン14.0kg(102.6mol)を撹拌下に1時間を要して滴下した。この間、内温は連続的に247℃まで上昇させた。メタキシリレンジアミンの滴下とともに留出する水は、分縮器および冷却器を通して系外に除いた。メタキシリレンジアミン滴下終了後、内温を260℃まで昇温し、1時間反応を継続した。得られたポリマーは反応缶下部のノズルからストランドとして取り出し、水冷した後ペレット形状に切断し、ポリアミド1を
得た。
次いで、該ポリアミド1を40重量%と、非晶性ナイロン(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、非晶性ナイロン、商品名:ノバミッドX21)40重量%と、ナイロン6(宇部興産(株)製、商品名:UBEナイロン 1015B)20重量%を混合した後、滞留部を有する37mm二軸押出機に供給した。シリンダー温度310℃、スクリュー回転数100回転、吐出量6kg/hrで溶融混練を行い、溶融ストランドを冷却エアーにて冷却、固化した後、ペレタイズ化し、MXD1を得た。
(ロ)MXD2
前記ポリアミド1を30重量%と、非晶性ナイロン(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、非晶性ナイロン、商品名:ノバミッドX21)30重量%と、ナイロン666(宇部興産(株)製、商品名:UBEナイロン 5013B)40重量%を混合した後、MXD1と同様にペレタイズ化し、MXD2を得た。
【0052】
(ハ)MXD3
アジピン酸11.9kg(81.65mol)とイソフタル酸3.4kg(20.73mol)秤量して仕込み、十分窒素置換し、さらに少量の窒素気流下に160℃で均一なスラリーにした。これに、メタキシリレンジアミン13.7kg(100.739mol)を撹拌下に160分を要して滴下した以外は、ポリアミド1と同様にペレット形状に切断しMXD3 を得た。
(ニ)MXD4
前記ポリアミド1を40重量%と、非晶性ナイロン(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、非晶性ナイロン、商品名:ノバミッドX21)30重量%と、ナイロン6(宇部興産(株)製、商品名:UBEナイロン 1015B)30重量%を混合した後、MXD1と同様にペレタイズ化し、ポリアミド2を得た。
次いで、該ポリアミド2を95重量%と、変性ポリエチレン(三洋化成工業(株)製、変性ポリエチレン、商品名:ユーメックス2000)5重量%を混合した後、シリンダー温度を220℃とした以外はMXD1と同様に、ペレタイズ化し、MXD4を得た。
(ホ)MXD5、及び非晶ナイロン
MXD5、及び非晶ナイロンは表1に記載した通りである。
【0053】
【表2】

【0054】
(ii)マスターバッチ
気泡調整剤マスターバッチ:ポリスチレン樹脂をベースレジンとし、タルク(松村産業(株)製、商品名:ハイフィラー#12)60重量%を含有するタルクマスターバッチを用いた。
難燃剤マスターバッチ:ヘキサブロモシクロドデカン93重量%を含有する難燃剤マスターバッチを用いた。
【0055】
(2)以下に評価方法を記載する。
尚、独立気泡径、厚み方向平均気泡径、平均気泡変形率、及び熱伝導率は、前述の「〔2〕本発明により得られるポリスチレン系樹脂押出発泡体」の項に記載した評価方法を採用した。
(i)発泡成形性
表3〜5における発泡成形性の評価は、下記評価基準により評価した。
○:発泡状態が良好であり、表面に波うちなどがない良好な板状押出発泡体が安定して得られる。
×:発泡状態が悪く、表面に波うちなどが発生し良好な板状押出発泡体が得られない。
(ii)見掛け密度
見掛け密度の測定は、JIS K 6767(1999年)に準拠して行なう。試料は、押出発泡体の幅方向中央部および幅方向両端部付近の計3箇所から厚みが全厚みの直方体のサンプルを切り出して各々のサンプルについて見掛け密度を測定し、3箇所の測定値の相加平均値を見掛け密度とする。
(iii)断面積
ポリスチレン系樹脂押出発泡体の断面積は、押出発泡板の押出方向と直交する垂直断面(幅方向垂直断面)の断面積とする。
(iv)厚み
ポリスチレン系樹脂押出発泡体の厚みは、押出発泡板の幅方向垂直断面の幅方向の端から他方の端までを6等分して両端を除く5箇所に測定点を定め、続いて、前記5箇所の測定点における押出発泡板の厚みをそれぞれ測定し、5箇所の測定値の相加平均値とする。
【0056】
(v)熱伝導率の比
熱伝導率低下率とは、実施例及び比較例で得られた押出発泡体の熱伝導率の値を、比較例1にて得られた押出発泡体の熱伝導率の値で除した値である。
(vi)気泡内の空気分圧
気泡内圧力は、製造直後の押出発泡体から縦200mm×横200mm×厚み25mmの発泡成形体表皮が存在しない試験片を切り出し、該試験片を23℃、湿度50%の雰囲気下に保存した、製造後100日後に該試験片を用いて以下の方法で測定する。まず、押出発泡体の中央部より、縦90mm×横25mm×厚み15mmのサンプルを抜き加工により採取する。次に、エタノールを満たした容器中にサンプルを入れ、容器内の空気を排出する。次に、空気が混入しないようにトルエンを容器内に入れ、サンプルをトルエンに溶解させ、気泡中の空気の体積を測定し、気泡内の空気分圧を求める。
なお、独立気泡率、厚み方向平均気泡径、平均気泡変形率、熱伝導率の測定方法は前述の通りである。
【0057】
[実施例1〜5]
内径65mmの第1押出機と内径90mmの第2押出機と内径150mmの第3押出機が直列に連結されており、発泡剤注入口が第1押出機の終端付近に設けられており、間隙1mm×幅90mmの幅方向断面が長方形の樹脂排出口(ダイリップ)を備えたフラットダイが第3押出機の出口に連結された製造装置を用いた。
更にフラットダイの樹脂出口にはこれと平行するように設置された上下一対のポリテトラフルオロエチレン樹脂からなる板により構成された賦形装置(ガイダー)が付設されている。実施例1〜5において、表3に示す配合量となるように樹脂、難燃剤及び気泡調整剤を、前記第1押出機に供給し、220℃まで加熱し、これらを溶融、混練し、第1押出機の先端付近に設けられた発泡剤注入口から表3に示す配合組成の物理発泡剤を表3に示す割合で溶融物に供給し溶融混練した溶融樹脂組成物を、続く第2押出機及び第3押出機に供給して樹脂温度を表3に示すような発泡適性温度(表3では発泡樹脂温度と表記した。この発泡温度は押出機とダイとの接合部の位置で測定された発泡性溶融樹脂組成物の温度である)に調整した後、吐出量50kg/hrでダイリップからガイダー内に押出し、発泡させながら押出発泡体の厚み方向に28mmの間隙で平行に配置されたガイダー内を通過させることにより板状に成形(賦形)し板状ポリスチレン系樹脂押出発泡体を製造した。評価結果を表3にまとめて示す。
なお、実施例1におけるポリスチレン系樹脂押出発泡体の気泡膜断面の走査透過型電子顕微鏡写真(倍率:15000倍)を図1に示す。ポリスチレン系樹脂中へのMXD1の分散性は良好であり、ポリアミド相が気泡膜の厚み方向と直行する方向に引き伸ばされた状態で存在していることが観察される。
【0058】
【表3】

【0059】
[比較例1〜5]
表4に示す通り、比較例1においてポリアミドを基材樹脂として配合せず、比較例2〜5においては表4に示すポリアミドとその添加量とした以外は実施例1に記載したと同様に板状ポリスチレン系樹脂押出発泡体を製造した。
なお、比較例2におけるポリスチレン系樹脂押出発泡体のマイクロスコープによる断面顕微鏡写真(倍率:1000倍)を図2に示す。ポリスチレン系樹脂中へのMXD4の分散性は低く、ポリアミド樹脂が塊状状態で存在していることが観察される。
【0060】
【表4】

【0061】
[実施例6〜9、比較例6、7]
実施例6〜9、及び比較例6、7において、基材樹脂として、PSとMXD1を表5に示す割合で配合したした以外は実施例1に記載したと同様に板状ポリスチレン系樹脂押出発泡体を製造した。
評価結果を表5にまとめて示す。
【0062】
【表5】

【0063】
[評価結果]
実施例1〜3は、本発明のポリアミド樹脂(B)に該当するポリアミドの種類を変えて行なった実験である。熱伝導率はいずれも低く、優れた断熱性を有していた。
実施例4では、基材樹脂として、実施例1におけるポリスチレン系樹脂のみをPS/MS=7/3(重量比)に変更した実施例である。MSの断熱性向上効果との相加効果により、最も熱伝導率の低いポリスチレン系樹脂押出発泡体が得られた。
実施例5では、実施例1におけるポリスチレン系樹脂のみを耐熱PSに変更した実施例である。熱伝導率は実施例1とほぼ同程度であった。
比較例1は、基材樹脂にポリアミド樹脂(B)を含まない例である。比較例2〜5は基材樹脂に本発明のポリアミド樹脂(B)以外のポリアミドを使用した例である。いずれも本発明の実施例のものよりも熱伝導率の高いポリスチレン系樹脂押出発泡体であった。
実施例6〜9は、実施例1と同種のポリスチレン系樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)を使用し、両者の配合比率を変えた実施例である。ポリアミド樹脂(B)の配合量が30重量%で最も熱伝導率の低いポリスチレン系樹脂押出発泡体が得られた。
比較例6、7では、実施例1に対して基材樹脂中のポリアミド樹脂(B)の配合量を変更して本発明の範囲外とした例である。MXD1の配合量が60重量%では成形性が悪くなり、一方、MXD1の配合量が0.5重量%では添加の効果が殆ど見られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理発泡剤を含有する発泡性溶融樹脂を押出発泡する押出発泡体の製造方法であって、該発泡性溶融樹脂を構成する樹脂が、ポリスチレン系樹脂(A)と、メタキシリレンジアミンに由来するジアミン構成単位を有するポリアミドを20〜100重量%含むポリアミド樹脂(B)との混合物であり、該混合物は、該樹脂(A)100重量部に対して、該樹脂(B)が1〜100重量部の割合で配合されており、該樹脂(B)は、温度180℃、剪断速度100sec−1の条件下における溶融粘度が1000〜10000Pa・sであり、かつ、非晶性又は140℃における半結晶化時間が500秒以上であることを特徴とするポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
【請求項2】
前記混合物は、該樹脂(A)100重量部に対して、該樹脂(B)が3〜50重量部の割合で配合されたものであることを特徴とする請求項1に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
【請求項3】
前記メタキシリレンジアミンに由来するジアミン構成単位を有するポリアミドが、ジアミン構成単位の70〜100モル%がメタキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸構成単位の70〜100モル%が、炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸とイソフタル酸のモル比率が50:50〜98:2のジカルボン酸に由来するポリアミドであることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
【請求項4】
前記ポリアミド樹脂(B)がメタキシリレンジアミンに由来するジアミン構成単位を有するポリアミド(b−1)と、脂肪族ポリアミドおよび非晶性ポリアミドから選択される1以上のポリアミド(b−2)とからなり、(b−1)成分と(b−2)成分の合計重量100重量%に対して(b−1)成分が30〜98重量%であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−215836(P2010−215836A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65937(P2009−65937)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000131810)株式会社ジェイエスピー (245)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】