説明

ポリスチレン系樹脂発泡シート

【課題】 シート厚さ方向への2次発泡性が高く、かつ成形時のシートの伸びが大きく、外観及び強度にすぐれた2次発泡成形体を得ることができるポリスチレン系樹脂発泡シートを提供することを課題とする。
【解決手段】 ポリフェニレンエーテル系樹脂を含有するポリスチレン系樹脂組成物を押出機からサーキュラーダイを通して押出発泡させて得られるポリスチレン系樹脂発泡シートにおいて、少なくとも片面より300μmの厚み部分に含まれる厚み方向一直線上の平均気泡数が5個以下、該発泡シートの厚さをtmmとした場合、シート表面から2t/5〜3t/5mmの範囲の気泡の、押出方向の寸法の平均値(X)、押出方向と直交する幅方向の寸法の平均値(Y)及び厚み方向の寸法の平均値(Z)が下記式(1)及び(2)
1.05≦X/Z≦1.5・・・(1)
1.5≦Y/Z・・・(2)
を満足することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリスチレン系樹脂発泡シート(以下PSFSと略記する)に関する。
【背景技術】
【0002】
PSFSは、2次発泡成形を施すのが容易であると共に、得られる成形品が椅麗でかつ軽量であり、しかも断熱性に優れ安価であることから、食品容器などに多量に使用されている。このPSFSは、一般にポリスチレン系樹脂、タルクなどの造核剤を押出機を用いて溶融混練し、ブタンなどの発泡剤を圧入した後、サーキュラーダイより押出発泡させ、得られた筒状の発泡シートを所定のシート巾に展開して冷却し、シート化することによって製造されている。このようにして製造されたPSFSは、真空成形機などで加熱されて軟化し、2次発泡された後、金型で付形されて所定の成形品に成形されている(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、2次発泡成形工程において、シートの厚さ方向への2次発泡性が低いと、得られる成形体の肉厚が薄くなり、強度の弱い成形体となってしまう。また、軟化、2次発泡した時点でシートの伸びが小さいと金型で付形される際にシートが破断してしまう。このため、成形機での加熱量を高めることにより、所定の2次発泡時の厚み、および所定のシートの伸びを得ることが行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−154571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、成形機での加熱量を高めるために成形機での加熱時間を長くすると、成形スピードが遅くなり、また、成形機のヒーター温度を高めると、熱エネルギーロスが多くなるため、成形効率が著しく低下してしまう。また、成形機での加熱量を過度に高めると、所定の2次発泡が起こる以前にシート表面部の気泡が脱泡してしまい、外観の悪い成形体となってしまうという問題点がある。
近年、ポリフェニレンエーテル系樹脂を含有させてポリスチレン系樹脂発泡シートの耐熱性の向上を図ることが検討されているが、特に、このようなポリスチレン系樹脂発泡シートに関しては、上記のような問題に対する検討が殆どなされていない。
【0006】
本発明は、従来のポリスチレン系樹脂発泡シートに見られる前記問題点を解決し、シート厚さ方向への2次発泡性が高く、かつ成形時のシートの伸びが大きく、外観及び強度にすぐれた2次発泡成形体を得ることができるポリスチレン系樹脂発泡シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリスチレン系樹脂発泡シートの気泡構造を特定のものにすることにより、前記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明によるポリスチレン系樹脂発泡シートは、ポリスチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂とを含有し、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂が、前記ポリスチレン系樹脂と前記ポリフェニレンエーテル系樹脂との合計100質量部に対して、10質量部以上50質量部以下となる割合で含有されているポリスチレン系樹脂組成物を押出機からサーキュラーダイを通して低圧域に連続押出発泡させ、その後切り開くことによって得られる厚み1.0〜5.0mm、坪量100〜300g/m2のポリスチレン系樹脂発泡シートにおいて、少なくとも片面より300μmの厚み部分に含まれる厚み方向一直線上の平均気泡数が5個以下であり、且つ該発泡シートの厚さをtmmとした場合、シート表面より厚さ方向に2t/5〜3t/5mmの範囲に存在する気泡の、押出方向の寸法の平均値(X)、押出方向と直交する幅方向の寸法の平均値(Y)及び厚み方向の寸法の平均値(Z)が下記式(1)及び(2)
1.05≦X/Z≦1.5・・・(1)
1.5≦Y/Z・・・(2)
を満足することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリスチレン系樹脂発泡シートは、2次発抱成形時の2次発抱性およびシートの伸びが優れているため、その成形効率において著しく改良されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のPSFSを得るための装置の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のPSFSについて詳細に説明する。PSFSを成形して得られる成形体の外観(白さ)は、厚さ方向の気泡数によって決定されるため、従来のPSFSは、成形体に求められる外観に応じて、PSFSの厚さ方向の気泡数が一般に10〜30個の範囲で任意に決定されて製造されている。また、従来のPSFSは、成形体の種類にもよるが、一般には、1〜2.5mmの厚さで、シート化され、成形機の加熱部で厚さ方向に2〜3倍に2次発泡させて成形されている。
【0012】
このように、厚さ方向の気泡数及び厚みが任意に決定されたPSFSにおいては、少なくとも一方のシート表面より300μmのシート厚み部分に含まれる厚さ方向の平均気泡数が5個よりも多くなると、2次発泡性が著しく低下すると共に伸びも良くない。また、2次発泡性を高めるために成形機の加熱量を高めた場合には、シート表面部の気泡が脱泡し易くなる他、成形時のシートの伸びが低下し、付形される際にシートが破断し易くなる。さらに、浅絞り成形の場合、シートの破断は起らないものの金型通りの成形体形状が得られにくくなる。
【0013】
これらの原因は不明であるが、シート表面付近の気泡数が多くなると、成形機でシートが加熱される際にシートが受ける幅射熱の大部分がシート表面付近の気泡膜を通過する際に表面付近の熱に変換されてしまうため、シート表面部の温度が過度に高くなり、同部分の気泡が脱泡し易くなる。その反面、シート厚み方向中央部付近の気泡膜の温度は高くなりにくいため、2次発泡性及びシートの伸びが低下するものと考えられる。
【0014】
本発明のPSFSは、前記のような問題点の解決されたものである。本発明のPSFSにおいて、前記式(1)及び(2)におけるX/Zが1.05より小さく、またY/Zが1.5より小さくなると、成形機の加熱部でシートが2次発泡する際に、厚さ方向にほぼ2倍の2次発泡が起こる以前にシートの流れ方向及び/又はシートの巾方向に2次発泡の膨張が起こって軟化し、自重で成形機内にシートが垂れ下がってしまうため、シートを成形機に通すことが困難となってしまう。この原因としては、シートの流れ方向又は巾方向の気泡の歪が小さすぎるため、成形機の加熱部でシートが2次発泡するのと同時に気泡の歪み回復が小さくなることによるものと考えられる。
【0015】
一方、X/Zが1.5よりも大きくなると、シートの流れ方向の気泡の歪が大きすぎるため、成形機の加熱部でのシートの流れ方向収縮が大きくなる。このために、付形部で付形されて未だ十分に冷却されていない状態の成形体に、その収縮力が作用して成形体が変形してしまう。
【0016】
本発明のPSFSを得るための方法としては、ポリスチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂とを含有するポリスチレン系樹脂組成物に発抱剤を含浸した後、造核剤などの添加剤を混合して、押出機に投入し、ポリスチレン系樹脂組成物を溶融後に押出す方法や、前記ポリスチレン系樹脂組成物と造核剤などの添加剤を混合した後、押出機に投入し、前記ポリスチレン系樹脂組成物を溶融した後に発泡剤を圧入して押出す方法があるが、これらの方法に限定されるものではない。
【0017】
本発明に示した前記PSFSの気泡構造は、前記した発泡体の製造方法において、サーキュラーダイの口径からシート巾までの展開倍率、押出温度、サーキュラーダイから吐出された後のシート冷却条件、造核剤の添加量を調整することにより得ることが出来る。本発明では、図1に示すように、サーキュラーダイ1から得られる筒状の押出し発泡シート2において、その押出し直後の発泡シート2の外周面に抵抗リング4を接触させて押圧することによって所望の気泡構造を容易に得ることができる。
【0018】
即ち、このようにして、サーキュラーダイ1の出口付近に抵抗リング4を設け、これによりシート厚さ方向に押圧する時には、(a)抵抗リング4に接触した時点で表面付近の気泡が集合して気泡数が減少し、(b)抵抗リング4によりシートの流れ方向に対して抵抗が作用するためにシート厚み方向中央部付近の気泡がシートの流れ方向に歪み、(c)抵抗リング4に接した時点で発泡が厚さ方向に向かうため、抵抗リング4を基点としてシートが巾方向に展開される際にシートが巾方向に歪む等の理由から本発明のシートをより効果的に得ることができる。なお、図1において、3は冷却ドラムを示す。
【0019】
本発明におけるポリスチレン系樹脂としては、スチレンやそのベンゼン核をアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン等の置換基で置換したスチレン誘導体が用いられる。
【0020】
また、本発明におけるポリフェニレンエーテル系樹脂は、耐熱性の付与に有効なものであり、ポリスチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂との合計100質量部に対して、10質量部以上50質量部以下となる割合で含有される。
なお、ポリフェニレンエーテル系樹脂は、通常、次の一般式で表される。
【化1】

【0021】
ここでR1及びR2は、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子を示し、nは、重合度を表す正の整数である。
例示すれば、ポリ(2,6−ジメチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2,6−ジエチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2,6−ジクロルフェニレン−1,4−エーテル)等が本実施形態において用いられ得る。
また、重合度nは、通常10〜5000の範囲内である。
【0022】
このようなポリフェニレンエーテル系樹脂は、耐熱性の向上に有効なものではあるが、ポリフェニレンエーテル系樹脂を、ポリスチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂との合計100質量部に対して、10質量部以上50質量部以下となる割合で含有させることが好ましいのは、上記範囲未満では、ポリフェニレンエーテル系樹脂の添加効果が十分に発揮されないおそれを有し、逆に上記範囲を超えてポリフェニレンエーテル系樹脂を含有させても、それ以上にポリフェニレンエーテル系樹脂の添加効果が発揮されないおそれを有するためである。
また、一般的にはポリスチレン系樹脂に比べて高価であるために上記範囲を超えてポリフェニレンエーテル系樹脂を含有させると材料コストの観点においても問題を生じさせるおそれを有する。
【0023】
通常、ポリスチレン系樹脂のビカット軟化温度(JIS K7206、B法、50℃/h)は、102℃程度であるが、上記のようなポリフェニレンエーテル系樹脂を含有させることにより、ビカット軟化温度を110〜155℃の範囲に向上させることができ、該ポリフェニレンエーテル系樹脂を含んだポリスチレン系樹脂組成物を使用することで、得られるポリスチレン系樹脂発泡シートや該ポリスチレン系樹脂発泡シートを2次加工した製品などの耐熱性向上を図り得る。
【0024】
一般にポリスチレン系樹脂組成物が用いられてなる製品に耐熱性が求められる場合には、スチレンホモポリマーよりもビカット軟化温度の高いスチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−マレイミド共重合体、ポリパラメチルスチレン樹脂などのコポリマーをその形成材料に採用することが行われている。
一方で、上記のようにポリフェニレンエーテル系樹脂をブレンドする方法は、単に製品に耐熱性を付与することができるばかりでなく、優れた靱性を付与することができる点においても優れている。
【0025】
したがって、ポリフェニレンエーテル系樹脂を含んだポリスチレン系樹脂組成物を使用して発泡トレーなどを形成させた場合には、急激な変形が加えられても割れたりすることのない発泡トレーを形成させ得る。
【0026】
ただし、ポリフェニレンエーテル系樹脂は、特有の臭いを有していることから、特に臭気を嫌う用途などにおいては消臭のための成分を含有させることが好ましい。
この消臭成分としては、ゼオライト系やリン酸ジルコニウム系の無機物粒子が挙げられる。
なかでも、消臭効果の点においては、リン酸ジルコニウム系の成分を採用することが好ましい。
【0027】
また、発泡剤や造核剤としては、従来公知のものが用いられ、その種類は特に制約されるものではない。本発明のPSFSにおいて、その厚さは、通常、1.0〜2.5mm程度であり、その坪量は、100〜250g/m2程度である。
【実施例】
【0028】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0029】
<実施例1>
ポリスチレン系樹脂(DIC社製GPPS(スチレンホモポリマー)、商品名「XC−515」)、及び、ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリスチレン系樹脂との混合樹脂(サビック社製、商品名「ノリルEFN4230」、PPE/PS=70/30)との合計100質量部に対して前記混合樹脂(ノリルEFN4230)が30質量部となる割合で含有されているポリスチレン系樹脂組成物に、造核剤としてタルク(東洋スチレン社製、商品名「40%練込みマスターバッチ DSM1401A」)を1.0質量部、消臭成分としてリン酸ジルコニウム系消臭剤(東亜合成社製、商品名「ケスモンNS−10」)を0.5質量部ブレンドし、115mmの押出機に投入して溶融、混練した。その後、発泡剤としてブタンを3.5質量部の割合で押出機に圧入し、ポリスチレン系樹脂組成物と発泡剤とを混合して混合物とした。
【0030】
次に接続された150mmの押出機にて、混合物の温度を175℃まで冷却した後、180℃に温調された185mm径のサーキュラーダイを通して混合物を押出し発泡した。そして、図1に示す抵抗リング4を使用して、坪量(目付け)が150g/m2、厚さが1.80mm、厚さ方向の全気泡数が19〜21個のPSFSを得た。
【0031】
<実施例2>
タルクマスターバッチを0.8質量部とし、樹脂温度を174℃としたこと以外は、実施例1と同様にして実験を行い、坪量(目付け)が150g/m2、厚さが1.8mm、厚さ方向の全気泡数が16〜18個のPSFSを得た。
【0032】
<実施例3>
発泡剤を3.7質量部とし、サーキューダイの温度を165℃とした以外は、実施例1と同様にして実験を行い、坪量(目付け)が150g/m2、厚さが1.8mm、厚さ方向の全気泡数が19〜21個のPSFSを得た。
【0033】
<比較例1>
抵抗リングを使用せず、ブタンを3.5質量部とし、サーキュラーダイの温度を165℃とした以外は、実施例1と同様にして実験を行い、坪量(目付け)が150g/m2、厚さが1.8mm、厚さ方向の全気泡数が23〜25個のPSFSを得た。
【0034】
<比較例2>
抵抗リングを使用せず、ブタンを3.0質量部とし、混合物の温度を179℃とした以外は、実施例1と同様にして実験を行い、坪量(目付け)が150g/m2、厚さが1.8mm、厚さ方向の全気泡数が18〜20個のPSFSを得た。
【0035】
<比較例3>
抵抗リングを使用せず、サーキュラーダイの径を205mm、混合物の温度を178℃とした以外は、実施例2と同様にして実験を行い、坪量(目付け)が150g/m2、厚さが1.8mm、厚さ方向の全気泡数が14〜16個のPSFSを得た。
【0036】
次に、前記実施例および比較例で得られたPSFSの気泡構造を次のように測定した。
【0037】
=表面部気泡数=
PSFSを断面方向に約50μmの厚さにスライスし、50倍率の顕微鏡で断面写真を撮影した。この写真を用いてシートの表面より300μmの位置にシート表面に対して平行線を引いた。次いでシート表面に対して垂線を引き、この垂線が先に示した平行線と交わる部分までにこの垂線とぶつかる気泡の数を測定した。このようにして測定された平均気泡数を表1に示す。
【0038】
=気泡寸法の測定=
PSFSを流れ方向、巾方向の断面方向に約50μmの厚さにスライスし、50倍率の顕微鏡で各々の断面写真を撮影した。この写真を用いてシートの厚さ(tmm)を測定し、シートの一方の表面より2t/5mm及び3t/5mmの位置にシート表面に対して平行な2本の線を引いた。次いで、シート表面から2mm間隔で2本の垂線を引いた。これら4本の直線内に気泡の全体が含まれる気泡について、その厚さ方向の気泡寸法(Zmm)、シート流れ方向の気泡寸法(Xmm)、シート巾方向の気泡寸法(Ymm)を測定した。こうして側定された寸法の各平均値からX/Z及びY/Zを算出し、表1に示した。
【0039】
次に、前記実施例および比較例で得られたPSFSについて、押出後の経過日数に対する残存発泡剤量を測定し、残存発泡剤量が2.8〜2.9wt%となった時点で各々のPSFSの2次発泡性を真空成形機を用いて下記のようにして評価した。
【0040】
=2次発泡性=
成形機のヒーター温度を250℃とし、加熱部で12秒間加熱したときの2次発泡後のシート厚みを測定した。加熱部でシートが垂れ下がり、成形機を通すことが出来ないシートはこの時点で評価を中断した。
【0041】
=シートの伸び=
上記2次発泡の加熱条件で、10cm×19cm、深さ3.0cmのトレーを成形し、金型形状通りの成形体を得られるか否か、およびシートの破断を調べた。
○:成形体が全ての場所で金型通りの形状が得られたもの
△:主に外周部で金型形状と差があったもの
×:成形体に割れが発生し、成形体が得られなかったもの
【0042】
【表1】

【0043】
以上の結果より、本発明のPSFSは、2次発泡成形時の2次発泡性およびシートの伸びが優れていることが判る。
【0044】
<参考例>
以下に、樹脂成分がスチレン系樹脂単体のポリスチレン系樹脂組成物で作製したポリスチレン系樹脂発泡シートと、ポリフェニレンエーテル系樹脂を含有させたポリスチレン系樹脂組成物で作製したポリスチレン系樹脂発泡シートとにおいて割れ難さを評価した事例を示す。
【0045】
(シート1)
ポリスチレン系樹脂(DIC社製GPPS(スチレンホモポリマー)、商品名「XC−515」)70質量%、及び、ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE)とポリスチレン系樹脂(PS)との混合樹脂(サビック社製、商品名「ノリルEFN4230」、PPE/PS=70/30)30質量%からなる樹脂成分100質量部に対して、消臭成分として東亜合成社製のリン酸ジルコニウム系消臭剤(商品名「ケスモンNS−10」)を0.5質量部含有する樹脂組成物を押出し発泡して、厚み2.0mm、目付け(坪量)180g/m2の発泡シートを作製した。
【0046】
(シート2)
GPPS、PPE、及び、消臭成分を含む樹脂組成物に代えてアクリル系モノマーとスチレンモノマーとの共重合体(耐熱性ポリスチレン)を押出し発泡してシート1と同じ厚みで同じ目付けのポリスチレン系樹脂発泡シート(シート2)を作製した。
【0047】
(シート3)
GPPS、PPE、及び、消臭成分を含む樹脂組成物に代えてGPPSのみを押出し発泡してシート1と同じ厚みで同じ目付けのポリスチレン系樹脂発泡シート(シート3)を作製した。
【0048】
(耐熱性評価:示差走査熱量測定)
上記シートから6.5±0.5mgのサンプルを採取し、JIS K7121に基づいて示差走査熱量測定を実施した(使用装置:エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、示差走査熱量計装置、型名「DSC6220」)。
その結果、シート1、シート2のサンプルにおいては、JIS K7121 9.3(1)に記載の「中間点ガラス転移温度(Tmg)」が120℃付近に観察され、シート3のサンプルでは、106℃に観察された。
【0049】
(靱性評価:ダイナタップ衝撃試験)
上記シート1〜3から、100×100mmのテストピースを採取して、該テストピースに対して、ASTM D3763に基づくダイナタップ衝撃試験を実施した(使用装置:General Research Corp.社製、ダイナタップ衝撃試験装置、型名「GRC8250」)。
その結果、シート2のテストピースについては、最大点変位3.2mm、最大荷重29Nという結果となり、シート3のテストピースについては、最大点変位4.0mm、最大荷重36Nという結果となった。
一方でシート1のテストピースについては、最大点変位4.4mm、最大荷重42Nという結果となった。
このことからもシート1は、PPE系樹脂が含有されることによって変位と荷重が大きな割れ難い状態となっていることがわかる。
【符号の説明】
【0050】
1…サーキュラーダイ、2…押出し発抱シート、3…冷却ドラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂とを含有し、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂が、前記ポリスチレン系樹脂と前記ポリフェニレンエーテル系樹脂との合計100質量部に対して、10質量部以上50質量部以下となる割合で含有されているポリスチレン系樹脂組成物を押出機からサーキュラーダイを通して低圧域に連続押出発泡させ、その後切り開くことによって得られる厚み1.0〜5.0mm、坪量100〜300g/m2のポリスチレン系樹脂発泡シートにおいて、少なくとも片面より300μmの厚み部分に含まれる厚み方向一直線上の平均気泡数が5個以下であり、且つ該発泡シートの厚さをtmmとした場合、シート表面より厚さ方向に2t/5〜3t/5mmの範囲に存在する気泡の、押出方向の寸法の平均値(X)、押出方向と直交する幅方向の寸法の平均値(Y)及び厚み方向の寸法の平均値(Z)が下記式(1)及び(2)
1.05≦X/Z≦1.5・・・(1)
1.5≦Y/Z・・・(2)
を満足することを特徴とするポリスチレン系樹脂発泡シート。

【図1】
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【公開番号】特開2012−11638(P2012−11638A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149543(P2010−149543)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】