説明

ポリビニルアセタール系粉体塗料を塗装したカート

【課題】 塗膜とカートとの接着性、塗膜の硬度、耐候性に優れたカートを得ること。
【解決手段】 アセタール化度40〜85モル%、ビニルエステル単位の含有率が0.1〜30モル%、ビニルアルコール単位の含有率が10〜50モル%および重合度が200〜1700であるポリビニルアセタール樹脂(A)を含有する粉体塗料を塗装したカート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリビニルアセタール系粉体塗料を塗装したカートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カートとして、ポリアミド系粉体塗料などを塗装したショッピング用カートが知られている(特許文献1)。しかしながら、ポリアミド系粉体塗料を塗装したカートでは、カート表面に形成された塗膜(以下、単に「塗膜」という)は、カートとの接着性を十分に確保するために、プライマーなどによるカート表面の前処理が必要である。さらにまた、ポリアミド系粉体塗料を塗装したカートは、一般に、塗膜の硬度に劣り、さらに耐候性も十分でない。そのために、使用時に常に激しくぶつかりあい、さらに天日に曝されることの多いショッピング用カートなどでは、塗膜とカートとの接着性、塗膜の硬度、および耐候性の向上が望まれている。
【0003】
【特許文献1】特許第2585075号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来のこのような欠点を解消したものであり、カートとの接着性、塗膜の硬度、耐候性に優れたカートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、上記目的は、アセタール化度40〜85モル%、ビニルエステル単位の含有率が0.1〜30モル%、ビニルアルコール単位の含有率が10〜50モル%および重合度が200〜1700であるポリビニルアセタール樹脂(A)を含有する粉体塗料を塗装したカートを提供することによって達成される。
【0006】
さらに、上記目的は、ポリビニルアセタール樹脂(A)を含有する粉体塗料が、さらに多価カルボン酸、無水多価カルボン酸、多価アルデヒド、多価イソシアネート化合物、多価エポキシ化合物およびこれらの化合物の誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)を含有することによって、より好適に達成される。
【0007】
さらにまた、上記目的は、ポリビニルアセタール樹脂(A)を含有する粉体塗料が、さらに無機化合物(C)を、前記(A)100重量部に対して0.0001〜2重量部含有することによって、さらに好適に達成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、塗膜とカートとの接着性、塗膜の硬度、耐候性に優れ、かつ、塗膜の光沢度が高いため、外観が良好なカートを得ることができる。また本発明のカートはポリアミドを使用したカートに比べ、光沢度が高い、高級感がある、みためが鮮やかであるという利点をも有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において、ポリビニルアセタール樹脂(A)のアセタール化度は、40〜85モル%であることが重要であり、好適には50〜85モル%である。
また、ポリビニルアセタールのビニルエステル単位の含有率は0.1〜30モル%であり、ビニルアルコール単位の含有率は10〜50モル%であることも重要であり、好適にはビニルエステル単位の含有率は0.5〜20モル%であり、ビニルアルコール単位の含有率は20〜40モル%である。
【0010】
上記アセタール化度、ビニルエステル単位の含有率、および、ビニルアルコール単位の含有率は、それぞれ、アセタール化度(X)、ビニルエステル単位の含有率(Y)、および、ビニルアルコール単位の含有率(Z)の合計(X+Y+Z)を100モル%としたときの値である。
【0011】
また、本発明において、ポリビニルアセタール樹脂(A)の重合度は200〜1700であることも重要であり、好適には300〜1300であり、最適には400〜1000である。なお、ここで、ポリビニルアセタールの重合度は、ポリビニルアセタールの原料であるポリビニルアルコールの重合度と同じである。
【0012】
このように本発明においては、上記アセタール化度、ビニルエステル単位の含有率、ビニルアルコール単位の含有率および重合度の条件をすべて満足することにより、本発明の目的とする、塗膜との接着性、塗膜の硬度、耐候性に優れたカートを得ることができ、さらにまた塗膜の耐衝撃性、塗膜の平滑性に優れたカートを得ることができる。
【0013】
本発明に使用するポリビニルアセタール樹脂(A)は、例えば、次に示す方法により得ることができる。
ポリビニルアセタールは、ビニルアルコール系重合体(例えば、ポリビニルアルコール(PVA))を原料として、当該原料をアセタール化して製造すればよい。上記ビニルアルコール系重合体は、公知の方法、例えば、ビニルエステル系単量体を重合して得たビニルエステル系重合体をけん化することにより得ることができる。ビニルエステル系単量体を重合する方法としては、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法など、公知の方法を適用できる。その際、重合開始剤として、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤などを、重合方法に応じて適宜選択すればよい。けん化は、公知の方法である、アルカリ触媒または酸触媒を用いた加アルコール分解、加水分解などを適用でき、なかでも、溶剤としてメタノールを、触媒として苛性ソーダ(NaOH)を用いる方法が簡便であるため、好ましい。
【0014】
ビニルエステル系単量体としては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オレイン酸ビニル、安息香酸ビニルなどを用いればよく、なかでも、酢酸ビニルを用いることが好ましい。
【0015】
ビニルエステル系重合体をけん化して得たビニルアルコール系重合体は、けん化度によりそれぞれの単位の含有率は異なるが、ビニルアルコール単位と、上記ビニルエステル系単量体に対応するビニルエステル単位とを含んでいる。例えば、ビニルエステル系単量体として酢酸ビニルを用いた場合、上記製造方法により得られたビニルアルコール系重合体は、ビニルアルコール単位と酢酸ビニル単位とを含む。
【0016】
上記ビニルエステル系単量体を重合する際に、本発明の主旨を損なわない範囲で他の単量体を共重合させてもよい。これら他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブチレンなどのα−オレフィン;アクリル酸またはその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシルなどのアクリル酸エステル類;メタクリル酸およびその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシルなどのメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩ならびにその4級塩、N−メチロールアクリルアミドおよびその誘導体などのアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩ならびにその4級塩、N−メチロールメタクリルアミドおよびその誘導体などのメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル類;塩化ビニル、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン;酢酸アリル、塩化アリルなどのアリル化合物;マレイン酸およびその塩ならびにそのエステルおよびその無水物;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニルなどを用いてもよい。これらの単量体は、ビニルエステル系単量体に対して、通常、10モル%未満の割合で用いられる。
【0017】
ビニルアルコール系重合体のアセタール化は、公知の方法に基づいて行えばよく、例えば、酸触媒の存在下においてビニルアルコール系重合体とアルデヒドとを混合すればよい。酸触媒は特に限定されず、有機酸および無機酸のいずれを使用してもよく、例えば、酢酸、パラトルエンスルホン酸、硝酸、硫酸、塩酸などを用いればよい。なかでも、塩酸、硫酸、硝酸を用いる方法が一般的であり、特に塩酸を用いることが好ましい。
【0018】
ポリビニルアセタール樹脂(A)は、ビニルアルコール系重合体を炭素数4〜6のアルデヒドによりアセタール化して得たポリビニルアセタールであることが好ましい。アルデヒドの炭素数が4より小さい場合、得られたポリビニルアセタールの溶融粘度が増大するため、粉体塗料とした場合に、塗膜の表面平滑性や塗装時の流動性が低下することがある。アルデヒドの炭素数が6より大きい場合、ビニルアルコール系重合体とのアセタール化反応が進みにくい。炭素数4〜6のアルデヒドとしては、例えば、n−ブチルアルデヒド、i−ブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒドなどを用いればよく、これらのアルデヒドは単独で、あるいは、2以上の種類を用いてもよい。なかでも、n−ブチルアルデヒドを用いることが好ましく、この場合、ビニルアルコール系重合体のアセタール化によりポリビニルブチラールを得ることができる。即ち、ポリビニルアセタール樹脂(A)が、ポリビニルブチラール樹脂であることが好ましい。
【0019】
また、ポリビニルアセタール樹脂(A)は、その分子内に、カルボキシル基、一級水酸基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基などの官能基を有していてもよい。これらの官能基は、例えば、以下の(1)〜(3)に示す方法により導入できる。
(1)ビニルアルコール系重合体の水溶液中において、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなど、カルボキシル基あるいは一級水酸基を有するエチレン性不飽和単量体を重合させることにより、上記不飽和単量体および/またはその重合体をビニルアルコール系重合体にグラフトさせた後に、全体をアセタール化する。
(2)カルボキシル基を有するビニルアルコール系重合体、または、アミノ基を有するビニルアルコール系重合体をアセタール化する。
(3)ビニルアルコール系重合体を、グリオキシル酸など、カルボキシル基を有するアルデヒドによりアセタール化する。
【0020】
ポリビニルアセタール樹脂(A)の粉体は、例えば、以下の方法により形成できる。
最初に、ビニルアルコール系重合体の水溶液(濃度3〜15重量%)を、80〜100℃程度の温度範囲に調整した後に、当該水溶液の温度を、−10〜30℃程度の温度範囲に徐々に(通常、10〜60分程度で)低下させる。次に、アセタール化に用いるアルデヒド、および、酸触媒などのアセタール化触媒と、−10〜30℃程度の温度範囲にある当該水溶液とを混合し、温度を一定に保持しながら30〜300分程度アセタール化反応を進行させた後、さらに30〜200分かけて40〜80℃程度の温度範囲まで昇温させ、この温度範囲において1〜3時間程度保持する。次に、全体を好適には室温まで冷却し、洗浄およびアルカリなどの中和剤添加を行った後、乾燥すれば、上述したポリビニルアセタール樹脂(A)の粉体を得ることができる。なお、この方法では、粒子径が250μmを超える集合粒子はほとんど形成されないが、粒子径が250μmを超える集合粒子が形成された場合は、フィルター、篩などを用いて当該集合粒子を除去すればよい。上記洗浄には、例えば、水あるいは水/アルコール混合溶液などを用いればよい。
【0021】
ポリビニルアセタール樹脂(A)の粉体は、ポリビニルアセタールの1次粒子が集合した集合粒子からなっていてもよく、この場合、1次粒子の平均粒子径が5μm以下、かつ、1次粒子の最大粒子径が10μmである。また、集合粒子の平均粒子径、即ち、ポリビニルアセタール粉体の平均粒子径が150μm以下で、かつ、集合粒子の最大粒子径、即ち、粉体の最大粒子径が250μmであることが好ましい。集合粒子の平均粒子径は、130μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましい。また平均粒子径の下限値については、好適には5μm以上、最適には10μm以上である。集合粒子の平均粒子径が、この範囲を満足するとき、基材との接着性、塗装時の流動性、塗膜厚均一性、塗膜の硬度などにより優れる粉体塗料とすることができる。
【0022】
集合粒子の平均粒子径、即ち、粉体の平均粒子径は、レーザー回折法により測定すればよく、測定には、例えば、市販のレーザー回折粒度分布測定装置を用いればよい。集合粒子の最大粒子径、即ち、粉体の最大粒子径は、上記測定により得られた粒度分布の最大値側の終点値から求めることができる。
【0023】
1次粒子の平均粒子径は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)により、倍率1000倍程度で ポリビニルアセタール樹脂の粉体の写真を3カ所、即ち、それぞれ異なる場所を3枚撮影し、それぞれの写真において判定可能な1次粒子径を測定して、その平均値から求めればよい。この方法では、SEM写真1枚に対し、少なくとも50点の1次粒子径を測定することとし、1次粒子径は1次粒子の長径とする。1次粒子の最大粒子径は、SEM写真から判別できる1次粒子径の最大値とすればよい。
【0024】
ポリビニルアセタール樹脂(A)の水分量は、2.5重量%以下であることが好ましく、この場合、塗膜表面の平滑性を向上できる。粉体の水分量は、例えば、水あるいは水/アルコール混合溶液を用いた上記洗浄後における乾燥の方法、温度、時間などを適宜設定することにより制御できる。粉体の水分量は、2重量%以下がより好ましい。
【0025】
ポリビニルアセタール樹脂(A)における、アセタール化に用いたアルデヒドの残存量は、150ppm以下であることが好ましく、この場合、着色の少ない塗膜を形成できる。アルデヒド残存量は、水あるいは水/アルコール混合溶液を用いた上記洗浄の方法、回数などを適宜設定することにより制御できる。アルデヒド残存量は120ppm以下が好ましく、100ppm以下がより好ましい。
【0026】
本発明の粉体塗料は、ポリビニルアセタールの種類など、その構成が異なるポリビニルアセタール樹脂を2種以上含んでもよい。
【0027】
また、本発明の粉体塗料が、さらに多価カルボン酸、無水多価カルボン酸、多価アルデヒド、多価イソシアネート化合物、多価エポキシ化合物およびこれらの化合物の誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)を含有することは、耐候性(耐衝撃性)をさらに向上させ、さらに耐溶剤性を付与することから好適である。
【0028】
ここで、(無水)多価カルボン酸としては、無水マレイン酸、マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水フタール酸、フタール酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などが例示される。
また、多価アルデヒドとしては、アルデヒド基を2個以上有する脂肪族または芳香族化合物をいう。脂肪族アルデヒドとしては、例えば、プロパンジアルデヒド、スクシンアルデヒド、グリオキザール、アジパルデヒド、フタルアルデヒド、4−ベンゼンジアセトアルデヒド、4,4'(エチレンジオキシ)ジベンズアルデヒド、2−ヒドロキシヘキサンジアルデヒドなどが例示される。
【0029】
また、多価エポキシ化合物としては、エポキシ基を2個以上有する化合物、またはエポキシ樹脂を言う。エポキシ化合物としては、例えば、グリシジル型エポキサイド(ビスフェノール系エポキサイド、フェノール系エポキサイド、ポリグリコール系エポキサイド、エステル系エポキサイドなど)が挙げられる。ここで、フェノール系エポキサイドとしては、ノボラック系エポキサイド、アルキルフェノールジグリシジルエーテル、芳香族ポリグリシジル、フェノールフタレインエポキサイド、レゾルシンエポキサイドが例示される。また、ポリグリコール系エポキサイドとしては、グリセリントリグリシジル、グリコールビスフェノール共縮合物が例示される。また、エステル系エポキサイドとしては、ダイマー酸ジグリシジルエステル、メタクリル酸グリシジルエステルおよびその重合物が例示される。さらに、他のエポキシ化合物としては、非グリシジル型エポキサイド(環状脂肪酸族エポキサイド、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化グリセリド)が例示される。これらのエポキシ樹脂は単独で用いてもよく、また2種以上が併用されてもよい。
これらのうち、多価カルボン酸又はその無水物が好適であり、とくに、無水マレイン酸、マレイン酸、無水コハク酸、コハク酸が好適である。
【0030】
化合物(B)は、化合物を内部又は表面に含む樹脂粉体(化合物マスターバッチ)として使用することもできる。化合物マスターバッチに使用される樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂が好適である。化合物マスターバッチは、化合物とマスターバッチ用の樹脂とを溶融混練し、これを粉砕することにより得られる。化合物の含有量は、マスターバッチ用樹脂に対して0.5〜95重量%、好ましくは1〜80重量%、さらに好適は5〜70重量%、最適には10〜60重量%である。化合物マスターバッチを使用することは、本発明の目的を達成する上で好ましいことが多い。
【0031】
化合物(B)の含有量は、ポリビニルアセタール樹脂(A)100重量部に対して、0.1〜50重量部であることが好適である。この条件を満足する場合に、耐溶剤性により優れた硬化物が得られ、基材とのより優れた接着性、より優れた塗膜硬度が付与される。さらに好適には、1〜30重量部であり、最適には1.5〜25重量部である。なお、ここで、化合物(B)を化合物マスターバッチとして使用する場合は、化合物(B)の重量には、マスターバッチ用樹脂の重量は含まない。
【0032】
化合物(B)が粉体であり、その平均粒子径が2〜150μmを満足することも好適な態様である。
化合物(B)の粉体がこの条件を満足する場合は、耐溶剤性がより優れた塗膜を付与することができる。化合物(B)を、化合物マスターバッチの粉砕物として使用する場合は、その平均粒子径が2〜150μmを満足することが好適である。平均粒子径は、好適には130μm以下であり、最適には100μm以下である。また平均粒子径の下限値については、好適には5μm以上、最適には10μm以上である。最大粒子径は250μmであることが好適である。
【0033】
さらに、本発明においては、粉体塗料が無機化合物(C)を含有することも、カートとの接着性、塗膜の硬度などをより向上させることができることから好適である。
【0034】
無機化合物(C)の種類は特に限定されないが、例えば、シリカ粒子、酸化アルミニウム粒子などが好適である。
【0035】
本発明の粉体塗料が無機化合物(C)をさらに含む場合、無機化合物(C)の含有量は、ポリビニルアセタール樹脂(A)100重量部に対して、通常、0.0001〜2重量部の範囲であり、0.001〜1重量部の範囲が好ましい。
【0036】
無機化合物(C)の粒子径は特に限定されないが、その平均粒子径が1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.1μm以下がさらに好ましい。
【0037】
無機化合物(C)は、例えば、対応する無機物を粉砕して形成すればよく、その平均粒子径は粉砕方法を適宜選択することにより制御できる。無機化合物(C)の平均粒子径は、上述したポリビニルアセタール樹脂(A)の粉体の平均粒子径と同様の方法により求めることができる。
【0038】
さらに、本発明においては、顔料粉体を配合することもできる。顔料粉体としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、べんがら、カーボンブラック、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、ジアゾ系イエロー、キナクリドン、アルミニウム金属、パール顔料、雲母、光拡散剤(ガラスビーズ、シリコーン、ポリメチルメタクリレートなど)、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、クレー、タルクなどの顔料粉体が挙げられ、これらの少なくとも1種の粉体が用いられる。これらの中で好ましくは、酸化チタン、酸化鉄、べんがら、カーボンブラック、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、ジアゾ系イエロー、キナクリドン、アルミニウム金属、パール顔料および雲母から選ばれる少なくとも1種の粉体であり、さらに好ましくは、酸化鉄、カーボンブラックおよびパール顔料から選ばれる少なくとも1種の粉体である。
【0039】
顔料粉体の平均粒子径は2〜150μm、最大粒子径が250μm以下であることが好適である。顔料粉体がこの条件を満足する場合、塗膜により優れた着色性を付与することができ、さらにより優れた流動性を付与することができる。平均粒子径は、さらに好適には130μm以下であり、最適には100μm以下である。また平均粒子径の下限については、好適には5μm以上、最適には10μm以上である。顔料粉体の平均粒子径および最大粒子径は、前記したポリビニルアセタール樹脂(A)の粉体の平均粒子径および最大粒子径と同様の方法で求めることができる。
【0040】
顔料粉体の含有量は、ポリビニルアセタール樹脂(A)100重量部に対して、1〜50重量部であることが好適であり、さらに好適は、1〜30重量部であり、最適には1.5〜25重量部である。
【0041】
本発明の粉体塗料は、ポリビニルアセタール樹脂(A)と化合物(B)、またはポリビニルアセタール樹脂(A)、化合物(B)および無機化合物(C)、またはこれらと顔料粉体をドライブレンドして得ることが好適であり、ドライブレンドする方法としては、両者が均一に混ざるような方法、たとえばドライブレンダー、ヘンシエルミキサー、ボールミルなどによる方法があげられる。このようにドライブレンドして得られる粉体は粉体塗料として好適である。
【0042】
また、本発明においては、化合物(B)と無機化合物(C)とを、化合物と顔料粉体を一緒にマスターバッチ用樹脂に配合し、溶融混練し、粉砕し、これを化合物−顔料マスターバッチとして使用することもできる。化合物−顔料マスターバッチの粉砕物として使用する場合は、この粉砕物の粒子径は、平均粒子径2〜150μmを満足することが好適である。
【0043】
本発明の粉体塗料をカートに塗装する方法としては、例えば、流動浸漬法、静電塗装法、溶射法など、様々な粉体塗装法が挙げられる。塗装温度は、塗装方法や、ポリビニルアセタールのアセタール化度、けん化度、重合度などにより多少異なるが、通常、100〜300℃の範囲である。
【0044】
カートとしては、鋼管、鋼板、銅管、銅板などの金属からなるカート、さらには、陶器、セラミック、ガラス、プラスチックなどのカートが挙げられるが、金属製のカートが好適である。金属製カートの表面に上記粉体塗料を塗装する場合、カートとの接着性、あるいは、塗膜の耐食性、外観などを改善するために、必要に応じて、当該表面を脱脂処理、リン酸塩処理、メッキ処理、エポキシ樹脂などのプライマー塗布処理を行ってもよい。
【0045】
また、上記粉体塗料を、カートの表面に塗装することにより、塗膜を多層構造とすることもできる。ここで、多層化を行う方法としては、例えば、上記粉体塗料を複数回塗布する方法、上記粉体塗料と、他の粉体塗料との塗装を、所定のパターンで、例えば交互に、複数回行う方法などが挙げられる。
【0046】
カートは、金属管、金属板などのフレーム、ハンドル、カゴ保持枠などから構成されるものである。カートとしては、たとえば、ショッピングカート、空港の荷物運搬用カート、ゴルフ用カートなどがあげられるが、本発明のカートは、とくにショッピング用カートとして有用である。カートは全箇所に上記粉体塗料を塗装するのが好適であるが、フレーム、ハンドル、カゴ保持枠の一部に上記粉体塗料を塗装することもできる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されない。なお、以降の実施例において、「%」および「部」は、特に記載がない限り、それぞれ「重量%」および「重量部」を意味する。
【0048】
[ポリビニルアセタール樹脂(A)、化合物(B)および無機化合物(C)の物性測定方法]
本実施例で作製した各粉体塗料サンプルを構成するポリビニルアセタール樹脂(A)、化合物(B)および無機化合物(C)の諸物性の測定は、以下の方法に従った。
【0049】
[ポリビニルアセタール樹脂(A)の重合度]
JIS K6728:1977の規定に基づき測定した。
【0050】
[ポリビニルアセタール樹脂(A)における酢酸ビニル(ビニルエステル)単位の含有率]
JIS K6728:1977の規定に基づき測定した。
【0051】
[ポリビニルアセタール樹脂(A)におけるビニルアルコール単位の含有率]
JIS K6728:1977の規定に基づき測定した。
【0052】
[ポリビニルアセタール樹脂(A)の水分量]
ポリビニルアセタール樹脂(A)を、乾燥機により105℃で3時間乾燥させ、式[{乾燥前の(A)の重量}−乾燥後の(A)の重量]/{乾燥前の(A)の重量}×100(%)]により算出した。
【0053】
[ポリビニルアセタール樹脂(A)のアルデヒド残存量]
島津製作所製ヘッドスペースガスクロマトグラフィーGC−14B、カラムはGL Science Inc製TC−1(内径0.25mm、長さ30m)を用いて測定した。
【0054】
[ポリビニルアセタール樹脂(A)の粉体における1次粒子の平均粒子径および最大粒子径]
SEMにより、倍率1000倍でポリビニルアセタール樹脂(A)の写真を3カ所撮影し、それぞれの写真において判定可能な1次粒子径を測定して、その平均値から求めた。このとき、SEM写真1枚に対し50点の1次粒子径を測定し、1次粒子の長径を1次粒子径とした。また、撮影したSEM写真から判別できる1次粒子径の最大値を最大粒子径とした。
【0055】
[ポリビニルアセタール樹脂(A)、化合物(B)および無機化合物(C)の平均粒子径]
(株)島津製作所製レーザー回折粒度分布測定装置SALD2200を用いて測定した。
【0056】
[ポリビニルアセタール樹脂(A)および化合物(B)の最大粒子径]
(株)島津製作所製、レーザー回折粒度分布測定装置SALD2200を用いて測定した粒度分布における最大値側の終点値を最大粒子径とした。
【0057】
実施例1
(ポリビニルアセタール樹脂(A)の調製)
還流冷却器、温度計およびイカリ型攪拌翼を備えた内容積2リットルのガラス製容器に、イオン交換水1295gと、ポリビニルアルコール(PVA−1:重合度600、けん化度98モル%)105gとを仕込み、全体を95℃に昇温してPVAを完全に溶解させ、PVA水溶液(濃度7.5重量%)を形成した。形成したPVA水溶液を、回転速度120rpmにて攪拌し続けながら、約30分かけて10℃まで徐々に冷却した後、当該水溶液に、ブチルアルデヒド66g、および、ブチラール化触媒である酸触媒として濃度20重量%の塩酸90mlとを添加して、PVAのブチラール化を開始した。ブチラール化を150分間行った後、60分かけて全体を50℃まで昇温し、50℃にて120分間保持した後に、室温まで冷却した。冷却によって析出した樹脂をろ過後、イオン交換水(樹脂に対して100倍量のイオン交換水)で洗浄した後、中和のために0.3重量%水酸化ナトリウム溶液を加え、40℃で10時間保持した後、さらに100倍量のイオン交換水で再洗浄し、脱水したのち、40℃、減圧下で18時間乾燥し、ポリビニルブチラール樹脂(PVB−1:水分含有量1.0%)を得た。
得られたポリビニルブチラール樹脂(PVB−1)は、ブチラール化度が68モル%、酢酸ビニル単位の含有率が2モル%、ビニルアルコール単位の含有率が30モル%であった。また、PVB−1の水分量は0.7%、ブチルアルデヒドの残存量は80ppmであった。
【0058】
(ポリビニルアセタール樹脂(A)の粉体の調製)
上記のようにして作製したポリビニルブチラール樹脂(PVB−1)を、60メッシュ(目開き250μm)の金網を用いて篩にかけ、粒子径が250μm以上の粉体を除去して、ポリビニルブチラール粉体(A−1)を得た。粉体(A−1)における1次粒子の平均粒子径は3.5μm、粉体(A−1)の平均粒子径は80μmであった。
(粉体塗料の調製)
上記で得られた粉体(A−1)100部に対し、顔料{東海カーボン(株)製の「トーカカーボン#7100F」(カーボンブラック)、平均粒子径42μm}5部添加し、ドライブレンダーにより混合し、粉体塗料1を得た。
【0059】
実施例2
PVA−1に代わって、ポリビニルアルコール(PVA−2:重合度300、けん化度98モル%)を用いた以外は実施例1と同様にして、ポリビニルブチラール樹脂(PVB−2)を得た。PVB−2のブチラール化度は75モル%、酢酸ビニル単位の含有率は5モル%、ビニルアルコール単位の含有率は20モル%であった。PVB−2の水分量は0.8%、ブチルアルデヒド残存量は100ppmであった。
【0060】
次に、得られたPVB−2を実施例1と同様に篩にかけ、粒子径が250μm以上の粉体を除去して、ポリビニルブチラール粉体(A−2)を得た。粉体(A−2)における1次粒子の平均粒子径は3.2μm、粉体(A−2)の平均粒子径は60μmであった。
【0061】
次に、粉体(A−1)の代わりに上記作製した粉体(A−2)を用いた以外は実施例1と同様にして、粉体塗料2を得た。
【0062】
実施例3
PVA−1に代わって、ポリビニルアルコール(PVA−3:重合度1000、けん化度98モル%)を用いた以外は実施例1と同様にして、ポリビニルブチラール樹脂(PVB−3)を得た。PVB−3のブチラール化度は78モル%、酢酸ビニル単位の含有率は2モル%、ビニルアルコール単位の含有率は20モル%であった。PVB−3の水分量は0.9%、ブチルアルデヒド残存量は100ppmであった。
【0063】
次に、得られたPVB−3を実施例1と同様に篩にかけ、粒子径が250μm以上の粉体を除去して、ポリビニルブチラール粉体(A−3)を得た。粉体(A−3)における1次粒子の平均粒子径は3μm、粉体(A−3)の平均粒子径は80μmであった。
【0064】
次に、粉体(A−1)の代わりに上記作製した粉体(A−3)を用いた以外は実施例1と同様にして、粉体塗料3を得た。
【0065】
実施例4
PVA−1に代わって、ポリビニルアルコール(PVA−4:重合度200、けん化度98モル%)を用いた以外は実施例1と同様にして、ポリビニルブチラール樹脂(PVB−4)を得た。PVB−4のブチラール化度は78モル%、酢酸ビニル単位の含有率は2モル%、ビニルアルコール単位の含有率は20モル%であった。PVB−4の水分量は0.7%、ブチルアルデヒド残存量は90ppmであった。
【0066】
次に、得られたPVB−4を実施例1と同様に篩にかけ、粒子径が250μm以上の粉体を除去して、ポリビニルブチラール粉体(A−4)を得た。粉体(A−4)における1次粒子の平均粒子径は3μm、粉体(A−4)の平均粒子径は80μmであった。
【0067】
次に、粉体(A−1)の代わりに上記作製した粉体(A−4)を用いた以外は実施例1と同様にして、粉体塗料4を得た。
【0068】
実施例5
実施例1で得られた粉体(A−1)100部に対し、無水マレイン酸10部、顔料{東海カーボン(株)製の「トーカカーボン#7100F」(カーボンブラック)、平均粒子径42μm}5部添加し、ドライブレンダーにより混合し、粉体塗料5を得た。
【0069】
実施例6
実施例1で得られた粉体(A−1)100重量部に対して、シリカ粒子(日本アエロジル社製、アエロジルR972:平均粒子径16nm)0.1重量部をさらに加えた以外は、実施例1と同様にして、粉体塗料6を得た。
【0070】
実施例7
実施例1の粉体塗料の調製で、顔料を添加しなかった以外は実施例1と同様にして、粉体塗料7を得た。
【0071】
比較例1
PVA−1に代わって、ポリビニルアルコール(PVA−7:重合度150、けん化度98モル%)を用いた以外は実施例1と同様にして、ポリビニルブチラール樹脂(PVB−5)を得た。PVB−5のブチラール化度は68モル%、酢酸ビニル単位の含有率は2モル%、ビニルアルコール単位の含有率は30モル%であった。
【0072】
次に、得られたPVB−5を実施例1と同様に篩にかけ、粒子径が250μm以上の粉体を除去して、ポリビニルブチラール粉体(A−5)を得た。粉体(A−5)における1次粒子の平均粒子径は7μm、粉体(A−5)の平均粒子径は70μmであった。
【0073】
次に、粉体(A−1)の代わりに上記作製した粉体(A−5)を用いた以外は実施例1と同様にして、粉体塗料8を得た。
【0074】
比較例2
PVA−1に代わって、ポリビニルアルコール(PVA−8:重合度2000、けん化度98モル%)を用いた以外は実施例1と同様にして、ポリビニルブチラール樹脂(PVB−6)の粉体を得た。PVB−6のブチラール化度は68モル%、酢酸ビニル単位の含有率は2モル%、ビニルアルコール単位の含有率は30モル%であった。
【0075】
次に、得られたPVB−6を実施例1と同様に篩にかけ、粒子径が250μm以上の粉体を除去して、ポリビニルブチラール粉体(A−6)を得た。粉体(A−6)における1次粒子の平均粒子径は2.8μm、粉体(A−6)の平均粒子径は75μmであった。
【0076】
次に、粉体(A−1)の代わりに上記作製した粉体(A−6)を用いた以外は実施例1と同様にして、粉体塗料9を得た。
【0077】
比較例3
PVA−1に代わって、ナイロン11(平均粒子径140μm)を使用した以外は実施例1と同様にして、粉体塗料10を得た。
【0078】
[各粉体塗料の塗装評価]
このようにして作製した実施例および比較例の粉体塗料を用いて、以下のようにして塗装評価を行った。
【0079】
(粉体塗料を用いた鉄板の塗装)
0.2mm(厚)×50mm×100mm鉄板の表面を洗剤を用いて洗浄して脱脂した後、イオン交換水で十分に洗浄して基材とした。この基材表面に、上記各粉体塗料を用い、流動浸漬法により塗装を行った。塗装は、微細多孔板を低部に有する円筒状の塗装室(流動室)(高さ50Cm、直径30Cm)を備えた容器に粉体塗料を投入し、上記微細多孔板の下部から、当該多孔板を通じて塗装室に空気を吹き込み、ポリビニルブチラール粉体を流動させた。前記ステンレス板からなる基材を予熱し(温度230℃、10分間)、これをポリビニルブチラール粉体の流動層中に懸垂し、10秒経過した後に取り出し、230℃の温度条件で10分間加熱して塗装物を得た。
(粉体塗料を用いたカートの塗装方法)
鉄製のカートを準備し、カート表面を洗剤により脱脂した後に、イオン交換水により洗浄して基材とした。この基材表面に、上記各粉体塗料を用い、流動浸漬法により塗装を行った。塗装は、微細多孔板を底部に有する円筒状の塗装室(流動室:高さ200cm×幅300cm×奥行き200cm)に粉体塗料を投入し、上記微細多孔板の下部から、当該多孔板を通じて塗装室に空気を吹き込み、吹き込んだ空気により各粉体塗料を流動させて流動層を形成し、当該流動層中に上記鉄板を懸垂して塗装を行った。流動浸漬条件を以下に示す。
・基材の予熱:温度350℃、時間5分
・浸漬時間:10秒
・後加熱:温度200℃、時間5分
【0080】
(耐衝撃性:ボール落下試験)
各粉体塗料を塗装した鉄板を、塗膜が上になるように床面に静置し、その垂直上方2mの高さから重量2kgの鉄球を自由落下させ、塗膜に衝突させた。衝突後の塗膜の状態を目視により観察して、塗膜の耐衝撃性を評価した。評価基準を以下に示す。
「A」:塗膜の衝突部に、剥離・ひび割れがともに見られない。
「B」:塗膜の衝突部に、ひび割れが見られるが剥離は見られない。
「C」:塗膜の衝突部に、ひび割れ・剥離がともに見られる。
【0081】
(塗膜と鉄板との接着性)
塗膜の接着性を、JIS K 5600−5−6:1999(塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第6節:付着性:クロスカット法)に規定の方法に従い、同JIS規格に記載の試験結果の分類に従って分類した。「分類0」が、接着性が最も高く、「分類5」が、接着性が最も低い状態を示す。
【0082】
(塗膜の硬度:鉛筆硬度)
塗膜の硬度を、JIS K 5600−5−4:1999(塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第4節:引っかき硬度:鉛筆法)に規定に基づき評価した。H、F、HB、Bおよび2Bの順に、塗膜の硬度が小さくなる。
【0083】
(塗膜厚の均一性)
基材の表面に形成された塗膜の厚みの均一性を以下の方法にしたがって評価した。
1サンプルについて、塗膜の厚みを5点測定して、その平均値を求め、その平均値に対する最大値と最小値の差を%で示した。値が小さいほど塗膜の厚みの均一性が高い。
○:20%未満
×:20%以上
【0084】
(塗膜の耐候性)
塗装したカートを屋外に暴露し、1年間放置した後の、カート表面の状態を観察した。
○:変化なし。
×:チョーキングが見られる。
【0085】
塗装評価の結果を、以下の表1に示す。
【0086】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明のポリビニルアセタール系粉体塗料を塗装したカートは、塗膜とカートとの接着性、塗膜の硬度、耐候性が優れていることから、各種用途に使用できる。たとえば、ショッピングカート、空港用運搬カート、台車に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセタール化度40〜85モル%、ビニルエステル単位の含有率が0.1〜30モル%、ビニルアルコール単位の含有率が10〜50モル%および重合度が200〜1700であるポリビニルアセタール樹脂(A)を含有する粉体塗料を塗装したカート。
【請求項2】
カートが、ショッピング用カートである請求項1記載のカート。
【請求項3】
ポリビニルアセタール樹脂(A)が、ポリビニルブチラール樹脂である請求項1または2記載のカート。
【請求項4】
粉体塗料が、さらに多価カルボン酸、無水多価カルボン酸、多価アルデヒド、多価イソシアネート化合物、多価エポキシ化合物およびこれらの化合物の誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のカート。
【請求項5】
粉体塗料が、さらに無機化合物(C)を、前記(A)100重量部に対して0.0001〜2重量部含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載のカート。

【公開番号】特開2009−23472(P2009−23472A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−187741(P2007−187741)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【出願人】(501278836)株式会社横浜樹脂コート (6)
【Fターム(参考)】