説明

ポリプロピレン系表面保護フィルムの装着方法

【課題】被着体への密着力と対比して粘着面同士の接着力が極めて高く、透明性、環境対応性、適度の柔軟性に優れた表面保護フィルムにて表面保護される被着体を挟み込み、周囲を包み込む形態を取ることで、真空包装やヒートシール包装の方法を採ることなく、被着体の全体を完全密封し、開封時における被着体への粘着層からの糊残り現象の懸念が無く、封止性・密閉性・信頼性の高い、被着体の表面保護を可能とならしめるポリプロピレン系表面保護フィルムの装着方法を提供する。
【解決手段】ポリプロピレン系表面保護フィルムの粘着面同士を貼合した際の引き剥がし時の剥離強度(単位:N/25mm)を(i)、粘着面と被着体を貼合した際の引き剥がし時の剥離強度(単位:N/25mm)を(ii)とした時、(i)値が5N/25mm以上であり、(i)値の(ii)値に対する比が3.0以上の関係にあるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン系表面保護フィルムの装着方法に関する。さらに詳細には、被着体への密着力と対比して粘着面同士の接着力が極めて高く、透明性、環境対応性、適度の柔軟性に優れたポリプロピレン系表面保護フィルムにて、当該被着体を双方から挟み込み、周囲を包み込む形態を採ることで、真空包装やヒートシール包装の方法を採ることなく、被着体の全体を完全密封化して、開封時での被着体への粘着層からの糊残り現象の懸念無く、封止性・密閉性・信頼性の高い被着体の表面保護を可能とならしめるポリプロピレン系表面保護フィルムの装着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平面状や曲面状に成形された樹脂体や金属体やセラミック体などの、長期保管時や輸送時における表面傷付き防止や耐候劣化防止、塵芥付着防止などを目的として、内面側に適度の粘着力を有する粘着層が設けられた粘着フィルムを表面保護フィルムと称して、表面保護対象物である被着体の表面側のみ、または表面側と裏面側の双方に対して、全面、または面の一部分に貼合する方法が取られている。図3に被着体1の一面のみに、基材層2及び粘着層3を有する表面保護フィルム4を貼合した例を示す。
【0003】
その場合、用いられる表面保護フィルムとしては、表面保護される被着体の材質や形状、或はその要求性能、その他によって該表面保護フィルムの組成や構成は異なるが、通常は、1)ポリエチレンテレフタレート(簡略してPET)や、可塑剤が配合されたポリ塩化ビニル(簡略して軟質PVC)、ポリオレフィン樹脂などで代表される熱可塑性樹脂の基材フィルムの片面に、粘着性能を発現するアクリル系共重合体や天然ゴム、変性天然ゴム、スチレン系ブロック共重合体、シリコーン系共重合体などの粘着剤成分を溶液法、またはエマルジョン法にて塗工・乾燥することで得られる塗布型粘着フィルム、或いは、2)基材を構成する熱可塑性樹脂と粘着層を構成する熱可塑性樹脂とを共押出法にて積層化して得られる、所謂、自己粘着性フィルムなどが広く採用されている(特許文献1〜6)。
【0004】
このとき、1)の塗布型粘着フィルムは、粘着剤成分を自由に設計・変性化して、用途に応じた適正粘着性能を得るための品質設計が比較的容易に行なえることから、これまで市場において広範に製品化され、多くの分野にて採用されてきた。しかし、その製造工程において、基材フィルムに粘着剤成分を塗布する際、塗布液として粘着剤を完全溶解させるための有機溶剤や、粘着剤をミクロ分散化させるための界面活性剤が添加された水系溶剤が用いられる。そのため、準備工程や塗布・乾燥工程の段階において、大気中や河川に該物質の一部が放出されて、地球環境に悪影響をもたらす懸念があり、近年、この課題が特に問題視されている。
【0005】
また、2)の自己粘着型フィルムの場合、基材層には通常、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・αオレフィン共重合体、ポリブテン、ポリヘキセンなどのポリオレフィン樹脂が採用される。また、粘着層には通常、別の種類の低密度のエチレン・αオレフィン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン樹脂や、スチレン系ブロック共重合体やシリコーン系共重合体などが採用され、これらの基材層樹脂と粘着層樹脂との各種の組み合わせで構成される。また、必要に応じて、粘着層に更なる粘着性や濡れ性を付与させるために、粘着付与樹脂と呼ばれる低分子量成分を添加したり、また、粘着層とは反対側の基材層上に表面層(最外層)として、別の熱可塑性樹脂からなる層を設けたり、基材層と同じ熱可塑性樹脂に、帯電防止剤や滑剤や離型剤や着色剤、その他の添加剤を配合した層を設けている。
前述のように自己粘着型フィルムでは、積層化のために樹脂成分を溶融押出する共押出法が採用されている。このため、各層の共押出適性や層間接着性やフィルム化の際の製膜適性を勘案すると、1)の塗布型粘着フィルムのような広範な性能設計をとることが困難であり、限られた粘着性能の組み合わせによる製品となってしまうのが実態である。
【0006】
また、上記構成1)や2)の表面保護フィルムには、従来公知の粘着性樹脂や粘着剤成分を採用しているため、粘着特性の設計にはおのずと限界がある。そのため、表面保護される被着体に対する粘着性能だけに着目した表面保護方法、即ち、被着体の表面側のみ、または表面側および裏面側の双方に対して、全面、又は面の一部分に該粘着フィルムを貼合する方法でしか用いられることがなく、形状が平面状や曲面状に成形された被着体の表面の傷付き防止や耐候劣化防止、塵芥付着防止などを主目的とした表面保護の使用方法に限定されている。また、被着体の全体を完全密封化する目的で、真空包装やヒートシール方法などに見られるような装着形態、すなわち、2枚の該表面保護フィルムを粘着面同士が相互に向き合うように重ね合わせ、または、1枚の該表面保護フィルムを粘着面同士が内面側になるように折り込んで、その間に表面保護される被着体を挟み込むようにし、表面保護フィルムの粘着面を貼合して周辺を包み込む形態を採った場合には、表面保護フィルム粘着面同士を貼合した時の剥離強度と、開封時の被着体からの粘着面の剥離強度とが、理想の粘着強度バランスを発現することができなかった。すなわち、開封時の被着体への粘着層からの糊残り現象の懸念が無く、封止性・密閉性・信頼性の高い被着体の表面保護を可能とならしめるには著しい困難があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3887402号公報
【特許文献2】特開2001−301024号公報
【特許文献3】特開平7−1681号公報
【特許文献4】特開平5−98224号公報
【特許文献5】特開平8−323942号公報
【特許文献6】特開平8−253744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、被着体への密着力と対比して、粘着面同士の接着力が極めて高く、透明性、環境対応性、適度の柔軟性に優れたポリプロピレン系表面保護フィルムにて、表面保護される被着体を双方から挟み込み、周囲を包み込む形態を取ることで、真空包装やヒートシール包装の方法を採ることなく、被着体の全体を完全密封し、開封時における被着体への粘着層からの糊残り現象の懸念が無く、封止性・密閉性・信頼性の高い、被着体の表面保護を可能とならしめるポリプロピレン系表面保護フィルムの装着方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を鑑み、鋭意検討した結果、ある特定組成の樹脂構成からなる自己粘着性能を有する表面保護フィルムを用いた装着方法を採ることにより上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、表面保護フィルムの貼合にて表面保護される被着体の装着形態が、2枚のポリプロピレン系表面保護フィルムを粘着面同士が相互に向き合うように重ね合わせ、または、1枚のポリプロピレン系表面保護フィルムを粘着面同士が内面側になるように折り込んで、前記粘着面同士の間に表面保護される被着体を挟み込み、前記ポリプロピレン系表面保護フィルムの粘着面同士を貼合して前記被着体の周辺を包み込む形態を採るポリプロピレン系表面保護フィルムの装着方法であり、前記ポリプロピレン系表面保護フィルムの粘着面同士を貼合した際の引き剥がし時の剥離強度(単位:N/25mm)を(i)、粘着面と被着体とを貼合した際の引き剥がし時の剥離強度(単位:N/25mm)を(ii)とした時、(i)値が5N/25mm以上で、(i)値の(ii)値に対する比が3.0以上の関係にあるポリプロピレン系表面保護フィルムの装着方法に関する。
更には、前記ポリプロピレン系表面保護フィルムの装着方法において、前記ポリプロピレン系表面保護フィルムの構成が、基材層および粘着層の少なくとも2層からなり、前記基材層がポリプロピレンを主成分とする樹脂からなり、前記粘着層がプロピレン由来の構成単位を50〜90モル%、エチレン由来の構成単位を6〜23モル%、炭素数4〜10のαオレフィン由来の構成単位を4〜27モル%(ここで、プロピレン由来の構成単位とエチレン由来の構成単位と炭素数4〜10のαオレフィン由来の構成単位との合計を100モル%とする)含有するプロピレン・エチレン・αオレフィン共重合体(A)とポリプロピレン(B)との樹脂から構成され、前記プロピレン・エチレン・αオレフィン共重合体(A)とポリプロピレン(B)との配合比率が98/2〜70/30重量%の範囲にあることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリプロピレン系表面保護フィルムの装着方法は、被着体への密着力と対比して粘着面同士の接着力が極めて高く、透明性、環境対応性、適度の柔軟性に優れたポリプロピレン系表面保護フィルムにて表面保護される被着体を双方から挟み込んで周囲を包み込む形態を採ることで、真空包装やヒートシール包装などにみられる密閉化のための大掛かりな特定装置が必要な包装形態を採る必要がない。また、ある特定の粘着特性を有するポリプロピレン系表面保護フィルムを採用することで、被着体の全体を完全密封化して、開封時での被着体への粘着層からの糊残り現象の懸念が無く、封止性・密閉性・信頼性の高い被着体の表面保護が可能な装着方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例及び比較例におけるポリプロピレン系表面保護フィルムの装着方法を説明するための概略断面図であり、2枚のポリプロピレン系表面保護フィルムにより被着体を包み込む態様を示す。
【図2】本発明の実施例及び比較例におけるポリプロピレン系表面保護フィルムの装着方法を説明するための概略断面図であり、1枚のポリプロピレン系表面保護フィルムにより被着体を包み込む態様を示す。
【図3】従来のポリプロピレン系保護フィルムの貼合方法を説明するための概略断面図であり、被着体の片面のみにポリプロピレン系表面保護フィルムを貼合した態様を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明について詳細に説明する。
本発明のポリプロピレン系表面保護フィルムの装着方法は、ポリプロピレン系表面保護フィルムの貼合にて表面保護される被着体の装着形態として、2枚の該表面保護フィルムを粘着面同士が相互に向き合うように重ね合わせ、または、1枚の該表面保護フィルムを粘着面同士が内面側になるように折り込んで、その粘着面の間に表面保護される被着体を挟み込み、該表面保護フィルムの粘着面同士を貼合して周辺を包み込む形態を採る。
【0014】
図1に、2枚の表面保護フィルム4及び4’を粘着面(粘着層3及び3’)同士が相互に向き合うように重ね合わせ、粘着面(粘着層3及び3’)同士の間に表面保護される被着体1を挟み込み、粘着面(粘着層3及び3’)同士を貼合して被着体1の周辺を包み込む形態を採った表面保護フィルムの装着方法を示す。また図2に、1枚の表面保護フィルム4を粘着面(粘着層3)同士が内面側になるように折り込んで、粘着面(粘着層3)同士の間に表面保護される被着体1を挟み込み、粘着面(粘着層3)同士を貼合して被着体1の周辺を包み込む形態を採った表面保護フィルムの装着方法を示す。
【0015】
本発明のポリプロピレン系表面保護フィルムの装着方法に関して、その被着体となる材質は、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂などの公知の樹脂体、鉄、ステンレス、銅、アルミニウムなどの金属体や金属酸化物、金属メッキ塗装体、ガラスや陶器・磁器、半導体材料などの酸化珪素化合物やシリコーン化合物、その他のセラミック体など、具体的な材質は不問である。また、その形状や表面状態も、平面状や曲面状や不定形に成形されたもの、表面平滑状のものや凹凸状のものを含め、特に限定されるものではない。
【0016】
本発明のポリプロピレン系表面保護フィルムの装着方法での大きな特徴は、該表面保護フィルムにおいて、粘着面同士を貼合した際の引き剥がし時の剥離強度(単位:N/25mm)を(i)、粘着面と被着体とを貼合した際の引き剥がし時の剥離強度(単位:N/25mm)を(ii)とした時、(i)値が5N/25mm以上、好ましくは6N/25mm以上で、(i)値の(ii)値に対する比が3.0以上、好ましくは3.5以上の関係にあることである。(なお、このときの剥離強度の測定は、JIS Z0237に準拠して被着体に該表面保護フィルムの粘着面を貼合、或は該表面保護フィルムの粘着面同士を貼合し、23℃×50%RH環境条件下で1日放置し、同環境条件下で引張強度測定装置を用いて計測評価を実施する。その際、(i)値の測定では90度剥離法、(ii)値の測定の場合は180度剥離法となる。このときの引張剥離速度は300mm/分である。)
またこのとき、(ii)値は30N/25mm以下であることが好ましい。この値を超えると、ポリプロピレン系表面保護フィルムを被着体から剥離する際に、著しい糊残り現象が生じる可能性がある。
【0017】
なお、本発明のポリプロピレン系表面保護フィルムの装着方法では、種類の異なる2枚のポリプロピレン系表面保護フィルムを用い、これらの粘着面の間に被着体を挟み込み、前記被着体の周囲を包み込む形態とすることも可能である。この場合、上記の(i)値は、これら2種のポリプロピレン系表面保護フィルムの粘着面同士を貼合した際の引き剥がし時の剥離強度であり、上記の(ii)値は、各ポリプロピレン系表面保護フィルムと被着体とを貼合した際に引き剥がし時の剥離強度とする。この場合、(i)値が5N/25mm以上、好ましくは6N/25mm以上であり、それぞれの(ii)値に対する(i)値の比が3.0以上、好ましくは3.5以上の関係にある。
これにより、表面保護される被着体を双方から挟み込んで周囲を包み込む形態を採ることで、被着体の全体を完全密封化でき、開封時の被着体への粘着層からの糊残り現象の懸念が無く、封止性・密閉性・信頼性の高い被着体の表面保護が可能な装着方法を提供することができる。
【0018】
更に詳細には、本発明に用いられるポリプロピレン系表面保護フィルムは、以下のような基材層と粘着層との少なくとも2層からなるフィルム構成形態を採る。
この場合、基材層はポリプロピレンを主成分とする樹脂からなり、その際、ポリプロピレンの製造方法としては、特に限定されるものではなく、チーグラー・ナッタ触媒、メタロセン系触媒などの公知の触媒を用いて製造することができる。本発明に用いるポリプロピレンのメルトフローレート(MFR(JIS K7210に準じて、230℃、2.16kg荷重の測定条件下))は、通常0.1〜50g/10分、好ましくは0.5〜30g/10分であり、また、密度(JIS K7112に準拠)は、通常895〜915kg/m、好ましくは897〜912kg/mである。
また、その組成としては、プロピレン成分だけで重合されたホモ構造のポリプロピレン、またはプロピレンを主体にエチレンやその他のαオレフィンが一部共重合された所謂、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレンの何れの構造組成の樹脂でもよく、また、アイソタクティック構造やシンジオタクティック構造の何れの骨格構造の樹脂でもよい。基材層にポリプロピレンを主成分として採用することで、透明性、低フィッシュアイ性、適度の柔軟性、機械強度を発現することができる。なかでも、アイソタクティック構造のランダムポリプロピレンを採用することが、特に透明性、適度の柔軟性、製膜性のバランスの観点から、より好ましい。
【0019】
なお、その際、目的とするポリプロピレン系表面保護フィルムの透明性や適度の柔軟性を損なわない範囲内で、基材層を構成するポリプロピレン樹脂に他の樹脂成分、具体的には、低密度ポリエチレン、中高密度ポリエチレン、ポリブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、エチレン・αオレフィン共重合体などのポリオレフィン樹脂をポリプロピレン樹脂に適宜添加してもかまわない。また、ポリプロピレン樹脂に滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候剤、着色剤、結晶核剤、遮光剤、遮熱剤などの各種添加剤を、その目的や用途に応じて適宜添加配合することができる。
【0020】
また、粘着層は、プロピレンを主体とする以下のプロピレン・エチレン・αオレフィン共重合体(A)とポリプロピレン(B)との樹脂から構成されるのが好ましい。
この場合、プロピレン・エチレン・αオレフィン共重合体(A)は、プロピレン由来の構成単位を50〜90モル%、好ましくは55〜88モル%、エチレン由来の構成単位を6〜23モル%、好ましくは7〜20モル%、炭素数4〜10、好ましくは炭素数4〜8のαオレフィン由来の構成単位を4〜27モル%、好ましくは5〜25モル%(ここで、プロピレン由来の構成単位とエチレン由来の構成単位と炭素数4〜10のαオレフィン由来の構成単位との合計を100モル%とする)含有する組成の共重合体である。このとき、プロピレン・エチレン・αオレフィン共重合体(A)において、プロピレン由来の構成単位が50モル%未満、または90モル%を越える領域の組成では、ポリプロピレン(B)と配合した際に、その相溶性が十分でなく、目的とする透明性、適度の粘弾性が得られず、被着体を表面保護するに当たって、十分な封止性・密閉性・信頼性を発現することが出来ない。同様に、エチレン由来の構成単位が6モル%未満、または23モル%を越える領域の組成、また、炭素数4〜10のαオレフィン由来の構成単位が4モル%未満、または27モル%を越える領域の組成では、ポリプロピレン(B)と配合した際に、その相溶性が十分でなく、目的とする透明性、適度の粘弾性が得られず、被着体を表面保護するに当たって、十分な封止性・密閉性・信頼性を発現することが出来ない。
【0021】
プロピレン・エチレン・αオレフィン共重合体(A)の製造方法としては、特に限定されるものではなく、チーグラー・ナッタ触媒、メタロセン系触媒などの公知の触媒を用いて製造することができる。なかでも、特に、メタロセン系触媒を用いることで、各モノマー組成分布および分子量分布をより規則的に制御が可能となり、これにより配合されるポリプロピレン(B)との一層の良好な相溶性の達成が可能となり、ポリプロピレン系表面保護フィルムの粘着層の主体樹脂として採用した際に、透明性、耐糊残り性の良好な性能を発現することができる。なお、上記プロピレン・エチレン・αオレフィン共重合体(A)のMFR(JIS 7210に準じて、230℃、2.16kg荷重の測定条件下)は、通常0.1〜50g/10分、好ましくは0.5〜30g/10分であり、この範囲を外れる場合、ポリプロピレン(B)との相溶性が不良となり、また、製膜性や耐糊残り性などのバランスの観点から好ましくない。
【0022】
一方、粘着層を構成するもう一方の樹脂であるポリプロプレン(B)は、先に説明した基材層を構成するポリプロピレンと同一系の樹脂であり、そのポリプロピレンの製造方法としては、特に限定されるものではなく、チーグラー・ナッタ触媒、メタロセン系触媒などの公知の触媒を用いて製造することができる。ポリプロピレン(B)のMFR(JIS K7210に準じて、230℃、2.16kg荷重の測定条件下)は、通常0.1〜50g/10分、好ましくは0.5〜30g/10分である。この範囲を外れる場合、プロピレン・エチレン・αオレフィン共重合体(A)との相溶性が不良となり、また、製膜性や耐糊残り性などのバランスの観点から好ましくない。また、その密度(JIS K7112に準拠)は、通常895〜915kg/m、好ましくは897〜912kg/mであり、この範囲を外れる場合、下記に示すプロピレン・エチレン・αオレフィン共重合体(A)との極めて均一な良相溶のモルフォロジーのバランスが保てなくなり、耐糊残り性や適度の剥離強度のバランスの観点から好ましくない。また、その組成としては、プロピレン成分だけで重合されたホモ構造のポリプロピレン、又はプロピレンを主体にエチレンやその他のαオレフィンが一部共重合された所謂、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレンの何れの構造組成の樹脂でもよく、また、アイソタクティック構造やシンジオタクティック構造の何れの骨格構造の樹脂でもよい。なかでも、特に、アイソタクティック構造を有するホモポリプロピレン、またはアイソタクティック構造を有するランダムポリプロピレンがプロピレン・エチレン・αオレフィン共重合体(A)との相溶性や適度の粘着性の点で良好であり、製膜性や耐糊残り性などのバランスの観点からも好ましい。
【0023】
なお、粘着層を構成する上記の組成および構造を有するプロピレン・エチレン・αオレフィン共重合体(A)とポリプロピレン(B)との配合比率は98/2〜70/30、好ましくは95/5〜75/25の範囲である。両者の溶融混合製膜化により、プロピレン・エチレン・αオレフィン共重合体(A)(主に非晶構造)とポリプロピレン(B)(主に結晶構造)とがナノ単位レベルで制御された極めて均一で良相溶のモルフォロジーを達成することができ、これにより、ポリプロピレン系表面保護フィルムの粘着層樹脂として採用した場合に、優れた透明性、適度の柔軟性、適度の粘着性、耐糊残り性を発現することができる。
【0024】
また、その際、目的とするポリプロピレン系表面保護フィルムの透明性や適度の柔軟性や適度の粘着性を損なわない範囲内で、粘着層を構成する上記の組成および構造を有するプロピレン・エチレン・αオレフィン共重合体(A)及びポリプロピレン(B)に他の樹脂成分、具体的には、低密度ポリエチレン、中高密度ポリエチレン、ポリブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、エチレン・αオレフィン共重合体などのポリオレフィン樹脂やスチレン系ブロック共重合体樹脂などを適宜添加してもかまわない。また、粘着層を構成する上記樹脂に帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候剤、着色剤、結晶核剤、遮光剤、遮熱剤などの各種添加剤を、その目的や用途に応じて適宜添加配合することができる。
【0025】
本発明のポリプロピレン系表面保護フィルムは少なくとも上記の基材層と粘着層との2層からなり、その厚みは、基材層としては、通常、15〜200μm、好ましくは20〜150μmであり、粘着層としては、通常、5〜100μm、好ましくは5〜50μmである。また該表面保護フィルムの総厚としては、20〜300μm、好ましくは25〜200μmである。また、その際、目的とする該表面保護フィルムの透明性や適度の柔軟性を損なわない範囲内で、必要に応じて、基材層の粘着層とは反対面側に、表面層として別の機能を有するポリオレフィン系樹脂を主体とした最外層としての樹脂層を設けた構造を有してもかまわない。
【0026】
なお、本発明のポリプロピレン系表面保護フィルムは、公知の溶融押出多層製膜装置、具体的には、2種2層、または3種3層の溶融押出多層構造を組み込んだキャスト製膜装置を用いて、例えば、成形温度200〜250℃の範囲で共押出製膜化を行うことで得ることができる。また、必要に応じて、ポリプロピレン系表面保護フィルム製膜時に、粘着層面側にセパレーターと称される表面にシリコーン塗布処理されたPET離型フィルム、またはシリコーン離型処理剥離紙などを貼合することもできる。
【0027】
これに対して、従来公知の表面保護フィルム、例えば、前述の1)基材フィルムがPETや軟質PVCやポリオレフィン樹脂などで代表される熱可塑性樹脂フィルムの片面に、粘着性能を発現するアクリル系共重合体や天然ゴム、変性天然ゴム、スチレン系ブロック共重合体、シリコーン系共重合体などの粘着剤成分を溶液法、またはエマルジョン法にて塗工・乾燥することで得られる塗布型粘着フィルム、或いは、2)ポリオレフィン系樹脂で代表される基材を構成する熱可塑性樹脂とスチレン系ブロック共重合体、シリコーン系共重合体、エチレン・αオレフィン共重合体、非晶性ポリプロピレン、非晶性プロピレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、または、これら樹脂に粘着付与樹脂などを配合した粘着層を構成する熱可塑性樹脂を共押出法にて積層化して得られる、所謂、自己粘着性フィルムと呼ばれるものにおいては、通常、粘着面と被着体とを貼合した際の引き剥がし時の剥離強度(ii)は、粘着層を構成する粘着剤成分や粘着性樹脂の選定によって、比較的自由に設計・変性化させて、用途や目的に応じて適宜調整は可能である。しかし粘着面同士を貼合した際の引き剥がし時の剥離強度(i)は、粘着面と被着体とを貼合した際の引き剥がし時の剥離強度(ii)に近似の値となる傾向にあり、具体的には、(i)値と(ii)値の比は概ね0.3〜2.0の範囲の関係にあるのが実態である。
【0028】
このため、従来の該表面保護フィルムにおいて、表面保護される被着体の装着形態として、2枚の該表面保護フィルムを粘着面同士が相互に向き合うように重ね合わせ、または、1枚の該表面保護フィルムを粘着層同士が内面側になるように折り込んで、その間に表面保護される被着体を挟み込みようにして表面保護フィルムで貼合して周辺を包み込む形態を採ろうとすると、ヒートシール方法なみの封止性・密閉性・信頼性を重要視するあまり、結果として、被着体に対する剥離強度が高くなる傾向にある。そのため、剥離の際に被着体表面への表面保護フィルム粘着層からの成分転写による汚染(所謂、糊残り)を呈する原因となる。
【0029】
これに対して、本発明でのポリプロピレン系表面保護フィルムの装着方法においては、粘着層を構成する上記の組成および構造を有するプロピレン・エチレン・αオレフィン共重合体(A)とポリプロピレン(B)との適正配合比率を取ることで、両者がナノ単位レベルで制御された極めて均一で良相溶のモルフォロジーを達成することができ、樹脂体や金属体やセラミック体などの被着体に貼合した際に、適度の粘着特性を発現する。一方で、これらの粘着面同士を貼合した際には、プロピレン・エチレン・αオレフィン共重合体(A)とポリプロピレン(B)との両者で形成される均一で特異的なモルフォロジーの両粘着層界面が複雑に相互に絡み合って、結果として、強力な剥離強度を発現するものと考えられる。
なお、該現象は従来の表面保護フィルムでの粘着層を構成する公知の粘着性樹脂、例えば、アクリル系共重合体、天然ゴム、変性天然ゴム、スチレン系ブロック共重合体、シリコーン系共重合体、エチレン・αオレフィン共重合体、非晶性ポリプロピレン、非晶性プロピレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、または、これら樹脂に粘着付与樹脂などを配合した粘着性樹脂組成物の類では発現が困難である。
【0030】
本発明のポリプロピレン系表面保護フィルムの装着方法によって、これまで成し得なかった粘着面同士が貼合された際の引き剥がし時の剥離強度(i)を大幅に高めることができ、その結果、表面保護される被着体を双方から挟み込んで周囲を包み込む形態を採ることで、ヒートシールの方法を取ることなく封止性・密閉性・信頼性の高い被着体の表面保護を可能とならしめる表面保護の装着方法を達成できる。また開封時における被着体への粘着層からの糊残り現象の懸念が無く、適度の被着体への粘着性を維持したままの表面保護が発現化される。
【0031】
また、この本発明のポリプロピレン系表面保護フィルムの装着方法を活用して、新たな分野への展開として、単なる被着体の表面の傷付き防止や耐候劣化防止や塵芥付着防止の目的だけでなく、高度の耐水性や耐湿性の表面保護の目的でも活用が可能となる。更には、該表面保護フィルムの基材層表面側に、例えば、特定の金属化合物の蒸着や特定の無機化合物の塗布を行なうことで、ガスバリヤー機能付与や、遮光性・遮熱性の付与を達成することができる。また、粘着層樹脂に、例えば、気化性防錆剤を溶融混合添加することで高度の防錆性の付与などの新たな機能を付加させることができる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例により詳細説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[評価法]
光学特性
JIS K7105に準拠し、基材面側から光線を照射してヘイズおよび全光線透過率を測定した。
機械特性
JIS K7161に準拠し、引張弾性率を測定した。
試料フィルムの粘着面同士の剥離強度
JIS Z0237に準拠し、23℃×50%RH環境条件下で、試料フィルムの粘着面同士が向き合うように重ね合わせて貼合して、1日放置後、同じく23℃×50%RH環境条件下で、引張試験測定装置を用いて、300mm/分の引張速度にて剥離(90度剥離)を行い、25mm幅あたりの剥離強度(i)値を測定した。
対アクリルおよび対ステンレス剥離強度
JIS Z0237に準拠し、23℃×50%RH環境条件下で、アクリル板(幅50mm×長76mm×厚1mm)およびステンレス板(SUS304、表面仕上げBA品番、幅50mm×長100mm×厚1mm)に試料フィルムを貼合して、1日放置後、同じく23℃×50%RH環境条件下で、引張試験測定装置を用いて、300mm/分の引張速度にて剥離(180度剥離)を行い、それぞれ25mm幅あたりの剥離強度(ii)値((ii)-1:対アクリル)、(ii)-2:対ステンレス)を測定した。(その際、併せて、剥離後のアクリル板界面およびステンテス板界面での粘着剤の糊残り具合の目視観察を行なった。)
【0033】
ステンレスを上面と下面の双方から挟み込んでの装着密封試験
JIS Z0237に準拠し、ステンレス板(SUS304、表面仕上げBA品番、幅50mm×長100mm×厚10mm)に試料フィルム(幅100mm×長150mm)を図1のように、2枚の試料フィルム4によって上面と下面の双方から挟み込むように貼合して、四方の粘着面(粘着層3及び3’)同士の貼合重ね合わせ部(約20mm幅)からの隙間が無いよう完全密封を施した。その後、赤く色付けした水に5分間浸漬して水浸透が無いことを確認した。次に、該サンプルを段ボール箱(縦150mm×横200mm×高100mm)に入れて上下の揺すり振動試験(揺すり速度:2往復/秒、全500往復)を施した後、先程と同様に、改めて該サンプルを赤く色付けした水に5分間浸漬して、振動試験後での装着密封度の保持具合を確認した。また、試料フィルムをステンレス板から剥離除去して、ステンレス板界面での接着剤の糊残り具合の目視観察を行なった。
【0034】
[採用樹脂]
以下に、実施例または比較例で使用する樹脂であるプロピレン・エチレン・αオレフィン共重合体の合成方法を示す。
(合成例1:プロピレン・エチレン・αオレフィン共重合体(A) PEBR−1の製造)
充分に窒素置換した2000mlの重合装置に、833mlの乾燥ヘキサン、100gの1−ブテン、および1.0mmolのトリイソブチルアルミニウムを常温で仕込んだ後、重合装置内の温度を40℃に昇温して、プロピレンで系内の圧力を0.76MPaになるように加圧した。次いで、重合装置内の圧力を、エチレンで0.8MPaに調整した。次いで、0.001mmolのジメチルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロライドと、アルミニウム換算で0.3mmolのメチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製)とを接触させたトルエン溶液を、重合装置内に添加し、内温40℃、エチレンで系内圧力を0.8MPaに保ちながら20分間重合させた後、20mlのメタノールを添加して重合反応を停止させた。脱圧後、2Lのメタノール中で重合溶液からポリマーを析出させて、真空下130℃で12時間乾燥させて、36.4gのプロピレン・エチレン・αオレフィン共重合体(A)PEBR−1を得た。
【0035】
(合成例2〜5)
プロピレン・エチレン・αオレフィン共重合体(A)におけるプロピレン、エチレンおよび1−ブテンの共重合比を表1に示すように変更した以外は、合成例1と同様にしてプロピレン・エチレン・αオレフィン共重合体またはプロピレン・エチレン共重合体を得た。合成例1〜5で得られたプロピレン・エチレン・αオレフィン共重合体PEBR−1〜4またはプロピレン・エチレン共重合体EPR−1の組成を表にまとめた。その結果を表1に示す。なお表1中の組成は、各モノマー成分のモル%で示している。
【0036】
【表1】

また以下、表2に、実施例または比較例で使用した樹脂の組成についてまとめて示す。なお各樹脂については、表1または表2中の樹脂記号で示すこともある。
【0037】
【表2】

【0038】
[試料フィルムの作成方法]
基材層樹脂を40mmφ単軸押出機(L/D=28)から230℃にて押出し、また、粘着層樹脂を30mmφ単軸押出機(L/D=28)にて180℃にて押出し、双方の溶融樹脂をマルチマニホールド仕様のT型ダイ(600mm幅)に供給(共押出温度230℃)して、引取速度4m/分にてキャスト製膜装置にて粘着層面側が冷却ロール(梨地仕様、冷却設定温度10℃)に接するように引巻取を行い、基材層/粘着層=65/15μm構成の2層フィルムを作成した。なお、巻取装置の直前でシリコーン離型塗布処理された厚さ30μmのPETフィルムを離型処理面が先の2層フィルムの粘着層に重なるように繰り出し貼合して巻取を行い、最終的に、セパレーター付きの試料フィルムを作成した。
【0039】
[市販の表面保護フィルム]
以下の表3に、比較例として評価を行った市販のフィルムについて、組成等を示す。
【表3】

表3中の市販フィルムの基材層/粘着層の厚み構成は、市販フィルム−1では75/15μm、市販フィルム−2では、50/15μm、市販フィルム−3では80/10μmである。また市販フィルム−1、市販フィルム−2、及び市販フィルム−3共に、フィルム粘着層側に離型処理されたセパレーターが付帯貼合されている。
【0040】
[実施例1]
PEBR-1を80重量%、PP−1を20重量%の割合で、200℃で2軸押出機(L/D=28)にて溶融混練して粘着層用の樹脂を作成した。次に、基材層樹脂としてPP−1を用い、先に作成した粘着層用の樹脂(PEBR−1/PP−1=80/20重量%)と組み合わせて、Tダイキャスト製膜装置にて基材層/粘着層=65μm/15μm構成の試料フィルム−1を作成した。
【0041】
このとき、得られた試料フィルム−1(表面保護フィルム)を用いて、セパレーターを除去した形態で、光学特性、機械特性、粘着面同士の剥離強度、対アクリルおよび対ステンレス剥離強度の測定を実施した。また、試料フィルム−1を図1のようにステンレス板の上面と下面の双方から挟み込んで四方を密封した後に装着密封試験を施した。結果を表4に示す。
【0042】
[実施例2]
実施例1において、粘着層用の樹脂をPEBR−1/PP−2=85/15重量%の配合組成に替えて、実施例1と同様の条件にて試料フィルム−2(表面保護フィルム)を作成し、セパレーターを除去した形態で、光学特性、機械特性、粘着面同士の剥離強度、対アクリルおよび対ステンレス剥離強度の測定を実施した。また、試料フィルム−2を図1のようにステンレス板の上面と下面の双方から挟み込んで四方を密封した後に装着密封試験を施した。結果を表4に示す。
【0043】
[実施例3]
実施例2において、基材層/粘着層の厚み構成を120μm/20μmに替えて、実施例2と同様の条件にて試料フィルム−3(表面保護フィルム)を作成し、セパレーターを除去した形態で、光学特性、機械特性、粘着面同士の剥離強度、対アクリルおよび対ステンレス剥離強度の測定を実施した。また、試料フィルム−3を図1のようにステンレス板の上面と下面の双方から挟み込んで四方を密封した後に装着密封試験を施した。結果を表4に示す。
【0044】
[実施例4]
実施例1において、粘着層用の樹脂をPEBR−1/PP−2=78/22重量%の配合組成に替えて、実施例1と同様の条件にて試料フィルム−4(表面保護フィルム)を作成し、セパレーターを除去した形態で、光学特性、機械特性、粘着面同士の剥離強度、対アクリルおよび対ステンレス剥離強度の測定を実施した。また、試料フィルム−4を図1のようにステンレス板の上面と下面の双方から挟み込んで四方を密封した後に装着密封試験を施した。結果を表5に示す。
【0045】
[実施例5]
実施例1において、粘着層用の樹脂をPEBR−2/PP−2=90/10重量%の配合組成に替えて、実施例1と同様の条件にて試料フィルム−5(表面保護フィルム)を作成し、セパレーターを除去した形態で、光学特性、機械特性、粘着面同士の剥離強度、対アクリルおよび対ステンレス剥離強度の測定を実施した。また、試料フィルム−5を図1のようにステンレス板の上面と下面の双方から挟み込んで四方を密封した後に装着密封試験を施した。結果を表5に示す。
【0046】
[比較例1]
実施例1において、粘着層用の樹脂をPEBR−3/PP−2=85/15重量%の配合組成に替えて、実施例1と同様の条件にて試料フィルム−6(表面保護フィルム)を作成し、セパレーターを除去した形態で、光学特性、機械特性、粘着面同士の剥離強度、対アクリルおよび対ステンレス剥離強度の測定を実施した。また、試料フィルム−6を図1のようにステンレル板の上面と下面の双方から挟み込んで四方を密封した後に装着密封試験を施した。結果を表5に示す。
【0047】
[比較例2]
実施例1において、粘着層用の樹脂をPEBR−4/PP−2=85/15重量%の配合組成に替えて、実施例1と同様の条件にて試料フィルム−7(表面保護フィルム)を作成し、セパレーターを除去した形態で、光学特性、機械特性、粘着面同士の剥離強度、対アクリルおよび対ステンレス剥離強度の測定を実施した。また、試料フィルム−7を図1のようにステンレス板の上面と下面の双方から挟み込んで四方を密封した後に装着密封試験を施した。結果を表6に示す。
【0048】
[比較例3]
実施例1において、粘着層用の樹脂をEPR−1/PP−2=85/15重量%の配合組成に替えて、実施例1と同様の条件にて試料フィルム−8(表面保護フィルム)を作成し、セパレーターを除去した形態で、光学特性、機械特性、粘着面同士の剥離強度、対アクリルおよび対ステンレス剥離強度の測定を実施した。また、試料フィルム−8を図1のようにステンレス板の上面と下面の双方から挟み込んで四方を密封した後に装着密封試験を施した。結果を表6に示す。
【0049】
[参考例1]
実施例1において、試料フィルム−1(表面保護フィルム)を市販フィルム−1に替えて、光学特性、機械特性、粘着面同士の剥離強度、対アクリルおよび対ステンレス剥離強度の測定を実施した。また、市販フィルム−1を図1のようにステンレス板の上面と下面の双方から挟み込んで四方を密封した後に装着密封試験を施した。結果を表7に示す。
【0050】
[参考例2]
実施例1において、試料フィルム−1(表面保護フィルム)を市販フィルム−2に替えて、光学特性、機械特性、粘着面同士の剥離強度、対アクリルおよび対ステンレス剥離強度の測定を実施した。また、市販フィルム−2を図1のようにステンレス板の上面と下面の双方から挟み込んで四方を密封した後に装着密封試験を施した。結果を表7に示す。
【0051】
[参考例3]
実施例1において、試料フィルム−1(表面保護フィルム)を市販フィルム−3に替えて、光学特性、機械特性、粘着面同士の剥離強度、対アクリルおよび対ステンレス剥離強度の測定を実施した。また、市販フィルム−3を図1のようにステンレス板の上面と下面の双方から挟み込んで四方を密封した後に装着密封試験を施した。結果を表7に示す。
【0052】
[実施例6]
実施例1において、粘着面同士の剥離強度の測定に関して、粘着面の組み合わせを、試料フィルム−1と試料フィルム−5との異種間の組み合わせに替えて貼合を行い、剥離強度の測定を実施した。また、同様に、試料フィルム−1同士を用いてステンレス板の上面と下面の双方から挟み込んで四方を密封する代わりに、試料フィルム−1(上面)と試料フィルム−5(下面)との組み合わせに替えてステンレス板の上面と下面の双方から挟み込んで四方を密封して、その後に装着密封試験を施した。結果を表8に示す。
【0053】
[比較例4]
実施例1において、粘着面同士の剥離強度の測定に関して、粘着面の組み合わせを、試料フィルム−1と試料フィルム−8との異種間の組み合わせに替えて貼合を行い、剥離強度の測定を実施した。また、同様に、試料フィルム−1同士を用いてステンレス板の上面と下面の双方から挟み込んで四方を密封する代わりに、試料フィルム−1(上面)と試料フィルム−8(下面)との組み合わせに替えてステンレス板の上面と下面の双方から挟み込んで四方を密封して、その後に装着密封試験を施した。結果を表8に示す。
【0054】
[比較例5]
実施例1において、粘着面同士の剥離強度の測定に関して、粘着面の組み合わせを、試料フィルム−1と市販フィルム−1との異種間の組み合わせに替えて貼合を行い、剥離強度の測定を実施した。また、同様に、試料フィルム−1同士を用いてステンレス板の上面と下面の双方から挟み込んで四方を密封する代わりに、試料フィルム−1(上面)と市販フィルム−1(下面)との組み合わせに替えてステンレス板の上面と下面の双方から挟み込んで四方を密封して、その後に装着密封試験を施した。結果を表8に示す。
【0055】
【表4】

【0056】
【表5】

【0057】
【表6】

【0058】
【表7】

【0059】
【表8】

【0060】
ポリプロピレン系表面保護フィルムの粘着面同士を貼合した際の引き剥がし時の剥離強度(単位:N/25mm)を(i)、粘着面と被着体を貼合した際の引き剥がし時の剥離強度(単位:N/25mm)を(ii)とした時、(i)値が5N/25mm以上であり、(i)値の(ii)値に対する比が3.0以上の関係にある、実施例1〜6では、装着密封試験の値に優れ、いずれも水浸透がなく、封止性・密封性が高く、さらに糊残りが見られなかった。また、プロピレン・エチレン・αオレフィン共重合体において、プロピレン由来の構成単位を50〜90モル%、エチレン由来の構成単位を6〜23モル%、炭素数4〜10のαオレフィン由来の構成単位を4〜27モル%(ここで、プロピレン由来の構成単位とエチレン由来の構成単位と炭素数4〜10のαオレフィン由来の構成単位との合計を100モル%とする)とすることにより、ヘイズや全光線透過率も良好であった(実施例1〜6)。一方、プロピレン・エチレン・α−オレフィンの比率が上記範囲外である、PEBR−3、及びEPR−1を用いた比較例1及び3では、(i)値が低く、装着密封性が不十分であり、さらに光学特性(ヘイズ及び全光線透過率)も十分ではなかった。
また、プロピレン・エチレン・α−オレフィンの比率が上記範囲外であるPEBR−4を用いた比較例2では、(i)値の(ii)値に対する比が少なく、糊残りが生じた。
さらに、市販フィルムを用いた場合には、いずれも、(i)値と(ii)値が同等である、もしくは(i)値より(ii)値が高いものとなり、(i)値が低い場合には、装着密封性に劣り、(ii)値が高すぎる場合には、糊残りが生じた。
さらに、2枚の異なるポリプロピレン系表面保護フィルムを用いた場合であっても、(i)値が低い、比較例4及び比較例5では装着密封性が不十分であった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の表面保護フィルムの装着方法は、被着体への密着力と対比して粘着面同士の接着力が極めて高く、透明性、環境対応性、適度の柔軟性に優れたポリプロピレン系表面保護フィルムにて、表面保護される被着体を挟み込んで周囲を包み込む形態を採ることで、真空包装やヒートシール包装などにみられる密閉化のための大掛かりな特定装置が必要な包装形態を採ることがない。また、ある特定の粘着特性を有する表面保護フィルムを採用することで、被着体の全体を完全密封化して、開封時での被着体への粘着層からの糊残り現象の懸念が無く、封止性・密閉性・信頼性の高い被着体の表面保護を可能とならしめる。これにより、該装着方法の新たな分野への展開として、単なる被着体の表面の傷付き防止や耐候劣化防止や塵芥付着防止の目的だけでなく、高度の耐水性や耐湿性の表面保護の目的でも活用が可能となり、光学材料、自動車部品材料、建築部品材料、日用品材料、半導体部品材料など、広範な用途での表面保護フィルムとして産業上の利用価値は極めて高い。
【符号の説明】
【0062】
1 被着体
2、2’ 基材層
3、3’ 粘着層
4、4’ 表面保護フィルム



【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面保護フィルムの貼合にて表面保護される被着体の装着形態が、
2枚のポリプロピレン系表面保護フィルムを粘着面同士が相互に向き合うように重ね合わせ、または、1枚の前記ポリプロピレン系表面保護フィルムを粘着面同士が内面側になるように折り込んで、前記粘着面同士の間に表面保護される被着体を挟み込み、前記ポリプロピレン系表面保護フィルムの粘着面同士を貼合して前記被着体の周辺を包み込む形態を採るポリプロピレン系表面保護フィルムの装着方法であり、
前記ポリプロピレン系表面保護フィルムの粘着面同士を貼合した際の引き剥がし時の剥離強度(単位:N/25mm)を(i)、粘着面と被着体とを貼合した際の引き剥がし時の剥離強度(単位:N/25mm)を(ii)とした時、(i)値が5N/25mm以上であり、(i)値の(ii)値に対する比が3.0以上の関係にあるポリプロピレン系表面保護フィルムの装着方法。
【請求項2】
請求項1において、前記ポリプロピレン系表面保護フィルムの構成が、基材層および粘着層の少なくとも2層からなり、前記基材層がポリプロピレンを主成分とする樹脂からなり、前記粘着層がプロピレン由来の構成単位を50〜90モル%、エチレン由来の構成単位を6〜23モル%、炭素数4〜10のαオレフィン由来の構成単位を4〜27モル%(ここで、プロピレン由来の構成単位とエチレン由来の構成単位と炭素数4〜10のαオレフィン由来の構成単位との合計を100モル%とする)含有するプロピレン・エチレン・αオレフィン共重合体(A)とポリプロピレン(B)との樹脂から構成され、前記プロピレン・エチレン・αオレフィン共重合体(A)とポリプロピレン(B)との配合比率が98/2〜70/30重量%の範囲にあるポリプロピレン系表面保護フィルムの装着方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−188462(P2012−188462A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50589(P2011−50589)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】