説明

ポリプロピレン製造用触媒の内部供与体としての3および4原子架橋ジ炭酸エステル化合物

オレフィン類を重合させるのに有用な炭化水素不溶性の固体触媒成分であって、マグネシウム、チタン、およびハロゲンを含有し、さらに構造:[R−O−C(O)−O−](式中、Rは、それぞれの出現において独立して、1〜20個の炭素原子を含有する脂肪族もしくは芳香族炭化水素基または置換炭化水素基であり;xは2〜4であり;およびRは、1〜20個の炭素原子を含有する脂肪族もしくは芳香族炭化水素基、または置換炭化水素基であり、第一のR−O−C(O)−O−基と第二のR−O−C(O)−O−基とを連結する最も短い鎖に3〜4個の炭素が存在することを条件とする)を有する内部電子供与体を含有する前記炭化水素不溶性の固体触媒成分。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、「THREE AND FOUR ATOM BRIDGED DICARBONATE COMPOUNDS AS INTERNAL DONORS IN CATALYSTS FOR POLYPROPYLENE MANUFACTURE」という名称で、2009年12月2日付けで出願された米国仮特許出願第61/265,934号の優先権を主張する非仮出願であり、その教示は、以下に完全に再現されるかのように、本明細書において参照することにより組み込まれる。
【0002】
本発明は、ポリプロピレン重合触媒に有用な成分に関し、特にマグネシウム含有担持チタン含有触媒成分と組み合わせて使用する電子供与体成分に関する。
【背景技術】
【0003】
固体遷移金属系オレフィン重合触媒成分の使用は、金属酸化物、金属ハロゲン化物またはその他の金属塩に担持されたこのような固体成分、例えば広範囲にわたって記載されているマグネシウム含有ハロゲン化チタン系触媒成分を含め当該技術において周知である。このような触媒成分は、一般に「担持された(supported)」と呼ばれる。多数の重合法および共重合法ならびに触媒系が、α−オレフィンの重合または共重合のために記載されているが、得られるポリマーまたはコポリマー生成物について特定の一連の特性を得るように方法および触媒系を調整することは、有利である。例えば、ある特定の用途においては、許容できる高い活性、良好な形態、望ましい粒度分布、許容できる嵩密度などの組み合わせが、ポリマー特性、例えば立体特異性、分子量分布などと共に要求される。
【0004】
典型的には、プロピレンおよび高級α−オレフィンを重合させるのに有用な、ならびにプロピレンおよび高級オレフィンを少量のエチレンおよびその他のα−オレフィンと重合させるのに有用な担持触媒成分は、内部電子供与体成分を含有する。このような内部電子供与体は、固体担持触媒成分の必須部分であり、外部電子供与体成分(アルミニウムアルキル成分と共に、典型的に触媒系を構成する)と区別される。内部電子供与体が、固体担持成分の必須部分であるのに対し、外部電子供与体は、その組み合わせをオレフィンモノマーと接触させる直前にまたはオレフィンモノマーの存在下で、固体担持成分と組み合わせてもよい。外部電子供与体は、一般に選択性調節剤(または「SCA」)と呼ばれ、担持触媒成分は、一般にプロ触媒と呼ばれる。
【0005】
内部電子供与体の選択は、触媒性能、および触媒系から形成された得られるポリマーに影響を及ぼす。一般に、有機電子供与体は、立体特異的担持触媒成分、例えば酸素、窒素、硫黄、および/またはリンを含有する有機化合物の調製に有用であると記載されている。このような化合物としては、有機酸、有機酸無水物、有機酸エステル、アルコール、エーテル、アルデヒド、ケトン、アミン、アミン酸化物、アミド、チオール、種々のリン酸エステルおよびアミドなどが挙げられる。有機電子供与体の混合物は、担持触媒成分に組み込まれると有用であると記載されている。有機電子供与体の例としては、ジカルボン酸エステル、例えばフタル酸アルキルエステルおよびコハク酸アルキルエステルが挙げられる。
【0006】
現在の実務において、フタル酸アルキルエステルが、市販のポリプロピレン重合触媒系に内部電子供与体として一般に使用されている。しかし、ある環境問題が、ヒトとの接触が予測される用途でのフタル酸誘導体の連続使用に関して持ち上がっている。
【0007】
プロピレンポリマーの特定の使用は、ポリマーの物性、例えば分子量、粘度、強靭性、曲げ弾性率、および多分散性指数(分子量分布(Mw/Mn))に左右される。さらに、ポリマーまたはコポリマーの形態は、多くの場合に重要であり、典型的には触媒の形態に左右される。良好なポリマー形態は、一般に、粒度および形状の均一性、耐摩耗性ならびに許容できる高いかさ密度を含む。微小粒子(微細)の最小化は、典型的には、特に気相重合または共重合において移送または再循環ラインプラグゲージを避けるために重要である。
【0008】
当該技術では、現在、担持触媒成分に内部電子供与体として使用するのに適した限定された一連の化合物を認めている。オレフィン系ポリマーの用途の継続する多様化および高度化により、当該技術では、改善されたおよび多様な特性を有するオレフィン系ポリマーに対する必要性を認めている。重合中の強い触媒活性および高い水素応答に寄与する担持触媒成分の内部電子供与体が望ましいであろう。また、一般にキシレン可溶性画分(XS)および/または最終融解温度(TMF)として表される高いアイソタクチシティを有するプロピレン系ポリマーを生成する担持触媒成分の内部電子供与体が、望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここに記載の発明は、ポリプロピレン重合触媒成分の内部改質剤(内部電子供与体)であって少なくとも2個の炭酸エステル官能基を含む内部改質剤(内部電子供与体)の使用に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って、本発明の実施形態は、オレフィン類を重合させるのに有用な炭化水素不溶性の固体触媒成分であって、マグネシウム、チタン、およびハロゲンを含有し、さらに
構造:
[R−O−C(O)−O−]
(式中、Rは、それぞれの出現において独立して、1〜20個の炭素原子を含有する脂肪族もしくは芳香族炭化水素基、または置換炭化水素基であり;xは2〜4であり;およびRは、1〜20個の炭素原子を含有する脂肪族もしくは芳香族炭化水素基、または置換炭化水素基であり、第一のR−O−C(O)−O−基と第二のR−O−C(O)−O−基とを連結する最も短い鎖には3〜4個の原子が存在することを条件とする)
を有する化合物を含む内部電子供与体を含有する炭化水素不溶性の固体触媒成分である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
定義
本明細書の元素の周期律表に対する全ての言及は、CRC Press、Inc.によって2003年に刊行され、著作権保護されている元素の周期律表(the Periodic Table of the Elements)を指す。また、1つまたは複数の族に対する言及は、族に番号付与するためのIUPACシステムを使用してこの元素の周期律表に示されている1つまたは複数の族に対するものである。特にそれと反対に、文脈からの暗示について、または当該技術での慣習について明記しない限りは、全ての部および%は、重量に基づく。米国特許実務のために、本明細書において参照される特許、特許出願、または刊行物の内容は、特に合成法、定義(本明細書において提供される定義と矛盾しない範囲で)および当該技術での一般知識の開示に関して、これらの全体を参照することにより本明細書に組み込まれる(またはこれらの相当するUSバージョンが、参照することによりそのように組み込まれる)。
【0012】
用語「含む(comprising)」およびその派生語は、任意の追加の成分、工程または手順の存在を、これらが本明細書に開示されているか否かにかかわらず、除外することを意図するものではない。誤解を避けるために、用語「含む」の使用による本明細書において特許請求される組成物は全て、特にそれと反対に明記しない限りは、高分子物質であるか否かにかかわらす、追加の添加剤、補助剤、または化合物を含有していてもよい。これに比べて、用語「から本質的になる」は、その後に続く列挙の範囲から、実施可能性に不可欠ではないもの以外は、その他の成分、工程または手順を除外する。用語「のみからなる(consisting of)」は、具体的に記述または列記されない成分、工程または手順を除外する。用語「または(もしくは)」は、特に明記しない限りは、列記した構成要素を個々におよび任意の組み合わせで言及する。
【0013】
本明細書に列挙する数値範囲は、低い値と高い値の間に少なくとも2単位の隔たりがあることを条件として、1単位ずつの増加で低い値から高い値までの全ての値を含む。例として、成分の量、または組成的もしくは物理的特性の値、例えば、配合成分の量、軟化温度、メルトインデックスなどが、1〜100の間にあると記載される場合には、全ての個々の値(例えば、1、2、3など)、および全ての部分範囲(例えば、1〜20、55〜70、197〜100など)が、本明細書に明確に列挙されていることが意図される。1未満の値について、1単位は、必要に応じて0.0001,0.001,0.01または0.1であるとみなされる。
【0014】
本明細書で使用する用語「組成物」は、組成物を構成する材料の混合物、並びに該組成物の材料から形成される反応生成物および分解生成物の混合物を含む。
【0015】
本明細書で使用する用語「ブレンド」または「ポリマーブレンド」は、2種またはそれ以上のポリマーのブレンド(配合物)である。このようなブレンドは、混和性であってもよいしまたは混和性でなくてもよい(分子レベルで相分離していない)。このようなブレンドは、相分離していてもよいしまたは相分離していなくてもよい。このようなブレンドは、透過電子顕微鏡法、光散乱法、X線散乱法、および当該技術で公知のその他の方法で測定されるような1つまたはそれ以上のドメイン配置を含んでいてもよいしまたは含んでいなくてもよい。
【0016】
用語「ポリマー」は、同じ種類または異なる種類のモノマーを重合させることによって調製される高分子化合物である。「ポリマー」は、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、インターポリマーなどを含む。用語「インターポリマー」は、少なくとも2種類のモノマーまたはコモノマーの重合によって調製されるポリマーを意味する。インターポリマーとしては、以下に限定されないが、コポリマー(これは、通常、2つの異なる種類のモノマーまたはコモノマーから調製されるポリマーを指す)、ターポリマー(これは、通常、3つの異なる種類のモノマーまたはコモノマーから調製されるポリマーを指す)、テトラポリマー(これは、通常、4つの異なる種類のモノマーまたはコモノマーから調製されるポリマーを指す)などが挙げられる。
【0017】
本明細書で使用する用語「インターポリマー」は、少なくとも2つの異なる種類のモノマーの重合によって調製されるポリマーを指す。したがって、総称インターポリマーは、コポリマー(通常、2つの異なるモノマーから調製されるポリマーを指すのに用いられる)、および3つ以上の異なる種類のモノマーから調製されるポリマーを含む。
【0018】
用語「オレフィン系ポリマー」は、重合した形で、ポリマーの全重量に基づいて、大部分を占める重量%の(majority weight percent)オレフィン、例えばエチレンまたはプロピレンを含有するポリマーである。オレフィン系ポリマーの非限定的な例としては、エチレン系ポリマーおよびプロピレン系ポリマーが挙げられる。
【0019】
本明細書で使用する用語「エチレン系ポリマー」は、大部分を占める重量%の重合したエチレンモノマー(重合性モノマーの全重量に基づく)を含むポリマーを指し、場合により少なくとも1つの重合したコモノマーを含んでもよい。
【0020】
本明細書で使用する用語「プロピレン系ポリマー」は、大部分を占める重量%の重合したプロピレンモノマー(重合性モノマーの全重量に基づく)を含むポリマーを指し、場合によって少なくとも1つの重合したコモノマーを含んでもよい。
【0021】
本明細書で使用する用語「ヒドロカルビル」および「炭化水素」は、分岐または非分岐の飽和または不飽和環状種、多環状種、縮合種、または非環状種、およびこれらの組み合わせを含め、水素原子と炭素原子のみを含有する置換基を指す。ヒドロカルビル基の非限定的な例として、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基、シクロアルケニル基、シクロアルカジエニル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基、およびアルキニル基が挙げられる。
【0022】
本明細書で使用する用語「置換ヒドロカルビル」および「置換炭化水素」は、1つまたはそれ以上の非ヒドロカルビル置換基で置換されているヒドロカルビル基を指す。非ヒドロカルビル置換基の非限定的な例は、ヘテロ原子である。本明細書で使用する「ヘテロ原子」とは、炭素または水素以外の原子を指す。ヘテロ原子は、周期律表のIV族、V族、VI族、およびVII族からの非炭素原子であることができる。ヘテロ原子の非限定的な例としては:ハロゲン(F、CI、Br、I)、N、O、P、B、S、およびSiが挙げられる。また、置換ヒドロカルビル基としては、ハロヒドロカルビル基およびケイ素含有ヒドロカルビル基が挙げられる。本明細書で使用する用語「ハロヒドロカルビル基」は、1個またはそれ以上のハロゲン原子で置換されているヒドロカルビル基を指す。
【0023】
本明細書で使用する用語「アルキル」は、分岐または非分岐の飽和または不飽和非環状炭化水素基を指す。好適なアルキル基の非限定的な例としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、2−プロペニル(またはアリル)、ビニル、n−ブチル、t−ブチル、i−ブチル(または2−メチルプロピル)などが挙げられる。前記アルキルは、1〜20個の炭素原子を有する。
【0024】
本明細書で使用する用語「置換アルキル」は、アルキルの任意の炭素に結合されている1個またはそれ以上の水素原子が、他の基、例えばハロゲン、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシ、アミノ、ホスフィド、アルコキシ、アミノ、チオ、ニトロ、その他のヘテロ原子含有基、およびこれらの組み合わせで置換されているいま述べたようなアルキルを指す。好適な置換アルキルとしては、例えば、ベンジル、トリフルオロメチルなどが挙げられる。
【0025】
本明細書で使用する用語「アリール」は、単一の芳香環であってもよいし、または共に縮合しているか、一般的な基、例えばメチレンまたはエチレン部分に共有的に結合されているか、または結合されている多数の芳香環であってもよい芳香族置換基を指す。芳香環としては、特にフェニル、ナフチル、アントラセニル、およびビフェニルが挙げられる。前記アリールは、6〜20個の炭素原子を有する。
【0026】
本明細書で使用する用語「炭酸エステル(carbonate)」は、3個の酸素原子(その1個は二重結合されている)に結合された炭素原子を含有する大きな分子内の官能基を指す。このような基は、有機炭酸エステルまたは炭酸エステルとしても公知である。
【0027】
本発明の担持触媒成分は、ジ炭酸エステル(dicarbonate)を含有する電子供与性置換基を含有する少なくとも1個の内部電子供与体を含有する。
【0028】
ジ炭酸エステルは、次の構造:
[R−O−C(O)−O−]
(式中、Rは、それぞれの出現において独立して、1〜20個の炭素原子を含有する脂肪族もしくは芳香族炭化水素基、または置換炭化水素基であり;xは2〜4であり;およびRは、1〜20個の炭素原子を含有する脂肪族もしくは芳香族炭化水素基、または置換炭化水素基であり、第一のR−O−C(O)−O−基と第二のR−O−C(O)−O−基とを連結する最も短い鎖には3〜4個の原子が存在することを条件とする)
に対応する化合物として定義される。
【0029】
xは2に等しいことが好ましく、その結果、本発明の最も広い意味において、用語「ジ炭酸エステル」は、3個またはさらには4個の炭酸エステル基を有する化合物が意図される場合であっても、これらの化合物を一般的に説明するのに使用される。
【0030】
多くの用途について、R基は、脂肪族炭化水素基であることが好ましい。また、このような脂肪族基は、比較的短い長さである、例えば1〜6個の炭素原子であることが好ましく、2個、3個、または4個の炭素原子が最も好ましい。
【0031】
本発明に有用なジ炭酸エステルのR基は、2つの炭酸エステル基の間の最も短い鎖に3〜4個の原子が存在するような基である。好ましくは、これらの連結原子は、炭素原子であるが、ヘテロ原子、例えば酸素、窒素、ケイ素、またはリンも使用し得る。前記の「3〜4個の連結原子」とは、炭酸エステル基同士の間の最も短い鎖の原子だけを指すことおよびR基は、炭酸エステル基を直接連結していない原子を含有するので、典型的にはずっと大きいことが理解されるべきである。好ましいR基としては、ビフェニル(この場合、連結原子は、フェニル環同士の間に架橋を含む)、およびナフタレン(この場合、連結原子は、縮合環の少なくとも1個の共有炭素原子を含む)が挙げられる。このようなビフェニルまたはナフタレンは、有利にはアルキル基またはその他の置換基を含有していてもよい。
【0032】
本発明に有用な炭化水素は、炭素または水素以外の原子で置換されていてもよい。例えば、本発明で使用するアルキル基は、ヘテロ原子、例えば窒素、酸素、リン、ケイ素、およびハロゲンを含有する適合性の基で置換されていてもよい。したがって、本発明で使用する炭化水素基は、例えばエーテル、アミン、アミド、クロロ、ブロモ、またはシリル基で置換されていてもよい。同様に、供与体化合物にRまたはR基の一部分として組み込み得る環状構造は、ヘテロ原子、例えば窒素、酸素、ケイ素、およびリンを含有していてもよい。
【0033】
本発明で使用する幾つかの具体的なジ炭酸エステルの非限定的な例としては、以下のジ炭酸エステル、およびこれらの置換誘導体が挙げられる:
【化1】

【0034】
本発明で内部電子供与体として使用するのに適したジ炭酸エステル物質は、当該技術で公知の方法にしたがって調製することができる。真のジ炭酸エステル(すなわち、x=2)を調製するための1つの適した方法は、ジオールを、少なくとも2モル当量の置換クロロギ酸エステルと反応させることを含む。したがって、反応は、以下のように記載することができるであろう:
(OH)+2Cl-C(O)-OR→[R-O-C(O)-O-]
(式中、RおよびRは、前記の通りである)。好適な塩基を、反応中に遊離される塩酸を補足するために存在させてもよい。この方法の好適な変化は、ジオールを好適な塩基と最初に反応させて部分的または完全な脱プロトン化を行い、次いで少なくとも2モル当量の置換クロロギ酸エステルで処理することにある。
【0035】
本発明のジ炭酸エステルは、ポリプロピレンの製造において一般的に使用される高活性担持チタン含有チーグラー・ナッタ触媒の内部電子供与体として有用である。
【0036】
本発明において有用な担持チタン含有成分は、一般に、炭化水素不溶性のマグネシウム含有化合物上に電子供与体化合物と組み合わせて担持される。このような担持チタン含有オレフィン重合触媒成分は、典型的にはハロゲン化チタン(IV)、有機電子供与体化合物およびマグネシウム含有化合物を反応させることによって形成される。場合により、このような担持チタン含有反応生成物は、追加の電子供与体またはルイス酸種を用いたさらなる化学処理によってさらに処理または修飾してもよい。また、得られる担持チタン含有成分は、「担持触媒成分」または「プロ触媒」と呼ばれる。
【0037】
好適なマグネシウム含有化合物としては、ハロゲン化マグネシウム;反応生成物であって、ハロゲン化マグネシウム、例えば塩化マグネシウムまたは臭化マグネシウムと、有機化合物、例えばアルコールまたは有機酸エステル、あるいはI〜III族の金属の有機金属化合物との反応生成物;マグネシウムアルコラート;混合ハロゲン化マグネシウム/チタンアルコラート;またはアルキルマグネシウムが挙げられる。
【0038】
担持触媒成分の例は、塩化マグネシウム、アルコキシマグネシウムクロリドまたはアリールオキシマグネシウムクロリド、あるいは混合マグネシウム/チタンハライドアルコラートを、ハロゲン化チタン、例えば四塩化チタンと反応させ、さらに電子供与体化合物を組み込むことによって調製される。好ましい調製において、マグネシウム含有化合物は、好適な触媒成分粒子を生成するために、溶解されるか、または混和性液状媒体、例えば炭化水素またはハロゲン化炭化水素中のスラリーである。
【0039】
前記に列記した可能な担持触媒成分は、本発明で有用なおよび当該技術で公知の多数の可能な固体のマグネシウム含有ハロゲン化チタン系の炭化水素不溶性触媒成分の単なる例示である。本発明は、特定の担持触媒成分に限定されない。
【0040】
当該技術で公知の担持触媒成分は、本発明の記載の内部供与体と共に使用してもよい。典型的には、本発明の内部電子供与体物質は、このような成分の形成中に固体担持触媒成分に組み込まれる。典型的には、このような電子供与体物質は、好適なチタン源、例えばチタン(IV)化合物を用いた固体マグネシウム含有物質の処理中に、添加されるかまたは別個の工程で添加される。このようなマグネシウム含有物質は、典型的には、離散粒子の形態であり、その他の物質、例えば遷移金属および有機化合物を含有していてもよい。また、塩化マグネシウム、四塩化チタンおよび内部供与体の混合物は、ボールミルで担持触媒成分に形成してもよい。
【0041】
マグネシウム源
マグネシウム源は、例えば、米国特許第4,540,679号;同4,612,299号;同第4,866,022号;同第4,946,816号;同第5,034,361号;同第5,066,737号;同第5,082,907号;同第5,106,806号;同第5,146,028号;同第5,151,399号;同第5,229,342および同第7,491,781号各明細書に記載されている手順のいずれかにしたがって調製される担持触媒成分前駆物質の形態であることが好ましい。また、マグネシウム源は、マグネシウムハライド、アルキル、アリール、アルカリール、アルコキシド、アルカリールオキシドまたはアリールオキシド、そのアルコール付加物、その炭酸エステル化誘導体、あるいはスルホン化誘導体であってもよいが、好ましくはハロゲン化マグネシウムのアルコール付加物、マグネシウムジアルコキシド、炭酸化マグネシウムジアルコキシド、炭酸化マグネシウムジアリールオキシド、または混合マグネシウム/チタンハライドアルコラートである。1個のアルコキシド基および1個のアリールオキシド基を含有するマグネシウム化合物、および1個のアルコキシド基、アルカリールオキシド基、またはアリールオキシド基の他にハロゲンを含有するマグネシウム化合物も、用いることができる。アルコキシド基は、存在する場合には、もっとも好適には1〜8個の炭素、好ましくは2〜6個の炭素原子を含有する。アリールオキシド基は、存在する場合には、もっとも好適には1〜8個の炭素原子を含有する。ハロゲンが存在する場合には、好ましくは塩素である。
【0042】
用いることができるマグネシウムジアルコキシドおよびジアリールオキシドの中に、式Mg(OC(O)OR(OR2−a(式中、RおよびRは、アルキル基、アルカリール基、またはアリール基であり、およびaは、約0.1〜約2である)のマグネシウムジアルコキシドおよびジアリールオキシドがある。炭酸エステル基を含有する最も好ましいマグネシウム化合物は、炭酸マグネシウムジエトキシド(CMEO)、すなわちMg(OC(O)OEt)である。場合により、マグネシウムは、四価チタン源との接触の前に、さらなるハロゲン化剤、例えば塩化チオニルまたはアルキルクロロシランを用いてハロゲン化されていてもよい。
【0043】
幾分異なるタイプのマグネシウム源は、一般式Mg(OR(ROH)10A(式中、それぞれのRまたはRは、最大4個までの炭素原子を含む低級アルキルであり、およびAは、−2の総電荷を有する1個またはそれ以上の陰イオンである)で説明される。このマグネシウム源の製造は、参照することにより本明細書に組み込まれるJobの米国特許第4,710,482号明細書に開示されている。
【0044】
別の特に好ましいマグネシウム源は、マグネシウム部分およびチタン部分およびおそらくは、ハライド、アルコキシド、およびフェノール化合物の少なくとも幾つかの部分を含有するマグネシウム源である。このような錯体プロ触媒前駆物質は、マグネシウムアルコキシド、チタンアルコキシド、ハロゲン化チタン、フェノール化合物、およびアルカノールを接触させることによって製造される。参照することにより本明細書に組み込まれるJobの米国特許第5,077,357号明細書参照。
【0045】
別の有用なマグネシウム源は、混合マグネシウム/チタン化合物(「MagTi」)である。「MagTi前駆物質」は、式MgTi(OR(式中、Rは、1〜14個の炭素原子を有する脂肪族または芳香族炭化水素基であるかまたはCORであり、Rは、1〜14個の炭素原子を有する脂肪族または芳香族炭化水素基であり;それぞれのOR基は、同一であるかまたは異なり;Xは、独立して塩素、臭素またはヨウ素、好ましくは塩素であり;bは、0.5〜56または2〜4であり;cは、2〜116または5〜15であり;およびdは、0.5〜116または1〜3である)を有する。これらの前駆物質は、その調製で使用した反応混合物からアルコールを除去することによって制御される沈殿によって調製される。そのようなものとして、反応媒体は、芳香族液体、特に塩素化芳香族化合物、最も特別にはクロロベンゼンと、アルカノール、特にエタノールとの混合物を含む。好適なハロゲン化剤としては、四臭化チタン、四塩化チタンまたは三塩化チタンが挙げられ、特に四塩化チタンが挙げられる。ハロゲン化に使用した溶液からアルカノールを除去すると、特に望ましい形態および表面積を有する固体前駆物質の沈殿を生じる。また、得られる前駆物質は、粒度が特に均一である。
【0046】
さらなる有用なマグネシウム源は、安息香酸エステル(benzoate)含有塩化マグネシウム物質(「BenMag」)である。本明細書で使用するように、「安息香酸エステル含有塩化マグネシウム」(「BenMag」)は、安息香酸エステル内部電子供与体を含有する担持触媒成分(すなわち、ハロゲン化担持触媒成分前駆物質)であることができる。また、BenMag物質は、チタン部分、例えばハロゲン化チタンも含有していてもよい。安息香酸エステル内部供与体は、不安定であり、担持触媒成分および/または触媒の合成中に他の電子供与体で置換することができる。好適な安息香酸エステル基の非限定的な例として、安息香酸エチル、安息香酸メチル、p−メトキシ安息香酸エチル、p−エトキシ安息香酸メチル、p−エトキシ安息香酸エチル、p−cクロロ安息香酸エチルが挙げられる。好ましい安息香酸エステル基は、安息香酸エチルである。好適なBenMagプロ触媒前駆物質の非限定的な例としては、Dow Chemical Company、Midland、Michiganから入手可能な商品名SHAC(商標)103およびSHAC(商標)310の触媒が挙げられる。BenMag担持触媒成分前駆物質は、安息香酸エステル化合物の存在下での担持触媒成分前駆物質(例えば、マグネシウムジアルコキシド、炭酸エステル化マグネシウムジアルコキシド、またはMagTi前駆物質)のハロゲン化の生成物であってもよい。
【0047】
チタン源
担持触媒成分のチタン源は、好ましくは、少なくとも2個のハロゲン原子を含有する四価チタン、好ましくは4個のハロゲン原子を含有する四価チタン、例えばTi(OR4−e(式中、Rは、炭化水素であり、Xは、ハライドであり、およびeは、0〜2である)である。最も好ましくは、これらのハロゲン原子は、塩素原子である。最大2個までのアルコキシ基、アルカリールオキシ基またはアリールオキシ基を含有するチタン化合物を用いることができる。アルコキシ基は、存在する場合には、最も好適には、1〜8個の炭素原子、好ましくは2〜6個の炭素原子を含有する。アリールオキシ基またはアルカリールオキシ基は、存在する場合には、最も好適には、6〜12個の炭素原子、好ましくは6〜10個の炭素原子を含有する。好適なアルコキシおよびアリールオキシチタンハライドの例としては、ジエトキシチタンジブロミド、イソプロポキシチタントリヨージド、ジへキシオキシチタンジクロリド、およびフェノキシチタントリクロリドが挙げられる。最も好ましいチタン源は、TiClである。
【0048】
担持触媒成分の製造
マグネシウム化合物は、好ましくは、内部電子供与体および場合によりハロ炭化水素の存在下で、四価チタンのハロゲン化物と反応させる(すなわち、ハロゲン化させる)。場合により、不活性炭化水素希釈剤または溶媒も存在させてもよい。担持触媒成分を調製する種々の方法が、当該技術で公知である。これらの方法の幾つかは、例えば、米国特許第4,442,276号;同第4,460,701号;同第4,547,476号;同第4,816,433号;同第4,829,037号;同第4,927,797号;同第4,990,479号;同第5,066,738号;同第5,028,671号;同第5,153,158号;同第5,247,031号および同第5,247,032号各明細書に記載されている。形成方法とは関係なく、本発明の担持触媒成分としては、本発明において記載される内部電子供与体物質が挙げられる。
【0049】
場合により用いる場合には、使用するハロ炭化水素は、芳香族、脂肪族、または脂環式ハロ炭化水素であってもよい。最も好ましくは、ハロ炭化水素のハロゲンは、塩素である。芳香族ハロ炭化水素、特に6〜12個の炭素原子、好ましくは6〜10個の炭素原子を含有する芳香族ハロ炭化水素が好ましい、好ましくは、このようなハロ炭化水素は、1個または2個のハロゲン原子を含有するが、より多くのハロゲン原子を必要に応じて存在させてもよい。好適な芳香族ハロ炭化水素としては、以下に限定されないが、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロジブロモベンゼン、クロロトルエン、ジクロロトルエン、およびクロロナフタレンが挙げられる。脂肪族ハロ炭化水素は、1〜12個の炭素原子、好ましくは1〜9個の炭素原子と少なくとも2個のハロゲン原子を含有する。好適な脂肪族ハロ炭化水素としては、以下に限定されないが、ジブロモメタン、トリクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロフルオロエタン、ヘキサクロロエタン、トリクロロプロパン、クロロブタン、ジクロロブタン、クロロペンタン、トリクロロフルオロオクタン、テトラクロロイソオクタン、ジブロモジフルオロデカン、四塩化炭素、およびトリクロロエタンが挙げられる。用いることができる脂環式ハロ炭化水素は、3〜12個の炭素原子、好ましくは3〜9個の炭素原子と、少なくとも2個のハロゲン原子を含有する。好適な脂環式ハロ炭化水素としては、ジブロモシクロブタン、およびトリクロロシクロヘキサンが挙げられる。
【0050】
任意の不活性炭化水素希釈剤は、脂肪族、芳香族または脂環式の不活性炭化水素希釈剤であってもよい。幾つかの典型的な希釈剤は、イソペンタン、n−オクタン、イソオクタン、キシレン、またはトルエンである。
【0051】
ハロゲン化された四価チタンハロゲン化物によるマグネシウム化合物のハロゲン化は、過剰のハロゲン化チタンを用いて行なう。マグネシウム化合物のモル当たり少なくとも2モルのハロゲン化チタンを用いるべきである。好ましくはマグネシウム化合物のモル当たり約4モル〜約100モルのハロゲン化チタンを用い、最も好ましくはマグネシウム化合物のモル当たり約4モル〜約20モルのハロゲン化チタンを用いる。
【0052】
場合により用いる場合には、ハロ炭化水素は、ハロゲン化チタンおよび内部電子供与体を溶解し、マグネシウム化合物を適切に分散させるのに十分な量で使用する。通常、分散物は、ハロ炭化水素のモル当たり約0.005〜約2.0モルの固体マグネシウム化合物を含有し、好ましくはハロ炭化水素のモル当たり約0.01〜約1.0モルの固体マグネシウム化合物を含有する。内部電子供与体は、前記化合物:ハロゲン化チタンのモル比約0.0005:1〜約2.0:1、好ましくは約0.001:1〜約0.1:1を提供するのに十分な量で用いる。容量で約1:100〜100:1のハロ炭化水素と任意の希釈剤を使用してもよい。
【0053】
ハロゲン化は、最大約150℃までの温度、好ましくは約80℃〜約140℃の温度で行なうことができる。通常、反応は、0.1〜6時間、好ましくは約0.5〜約3.5時間にわたって進行させる。便宜上、ハロゲン化は、通常、周囲圧力で行なうが、例えば、0.5気圧(50,700Pa)〜5気圧(507,000Pa)の圧力の範囲を用いることができる。ハロゲン化生成物は、出発マグネシウム化合物と同様に、固体物質であり、液状反応媒体から乾燥、濾過、傾瀉、蒸発、蒸留または任意の好適な方法により単離することができる。
【0054】
分離後に、ハロゲン化生成物(ハロゲン化に関して担持触媒成分ともいう)は、追加の四価チタンのハロゲン化物を用いて1回またはそれ以上の回数処理して残存アルコキシ基および/またはアリールオキシ基を除去し、触媒活性またはその他の所望の特性を最大化させてもよい。好ましくは、ハロゲン化生成物は、四価チタンのハロゲン化物の別個の部分を用いて少なくとも2回処理する。一般に、ハロゲン化生成物をチタンハロゲン化物で処理するのに用いる反応条件は、マグネシウム化合物の初期ハロゲン化中に用いる反応条件と同じであるかまたは同様であり、内部電子供与体は、処理(1回または複数回)中に存在させてもよいし、または存在させなくてもよい。場合により用いる場合には、ハロ炭化水素は、典型的には、チタンハロゲン化物を溶解し、固体のハロゲン化生成物を分散させるために使用する。必要に応じて、ハロゲン化生成物は、2回のためのチタン化合物で処理する前または後に、酸ハロゲン化物で処理してもよい。5ミリモル〜200ミリモルの酸ハロゲン化物が、一般にハロゲン化生成物(すなわち、担持触媒成分)中のマグネシウムのモル当たりにつき用いられる。好適な酸ハロゲン化物としては、塩化ベンゾイル、フタロイルジクロリド、2,3−ナフタレンジカルボン酸ジクロリド、エンド−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸ジクロリド、マレイン酸ジクロリド、シトラコン酸ジクロリドなどが挙げられる。酸ハロゲン化物によるハロゲン化生成物の処理に有用な手順は、米国特許第6,825,146号明細書に記載されている。
【0055】
担持触媒成分は、さらなる四価チタンのハロゲン化物で1回またはそれ以上処理した後に、液状反応媒体から分離し、好ましくは不活性炭化水素、例えばイソペンタン、イソオクタン、イソヘキサン、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、またはオクタンで洗浄して未反応チタン化合物またはその他の不純物を除去する。次いで、担持触媒成分は、乾燥することができるし、またはさらなる貯蔵または使用のために炭化水素、特に比較的重質の炭化水素、例えば鉱油にスラリー化してもよい。乾燥する場合には、乾燥法は、濾過、蒸発、加熱または当該技術で公知のその他の方法によるものであってもよい。
【0056】
特定の理論によって縛られることを望まないが、(1)予め形成された担持触媒成分を、ハロゲン化チタン化合物、特にそのハロ炭化水素希釈剤溶液と接触させることによってさらにハロゲン化すること、および/または(2)予め形成された担持触媒成分を、ハロ炭化水素で温度を上昇させて(100℃〜150℃)さらに洗浄することは、おそらくは前述の希釈剤に溶解する特定の不活性金属化合物の除去によって、担持触媒成分の望ましい改質をもたらすと考えられる。したがって、担持触媒成分は、単離または回収に先立って、ハロゲン化剤、例えばハロゲン化チタンおよびハロ炭化水素希釈剤、例えばTiClおよびクロロベンゼンの混合物と、1回またはそれ以上接触させてもよい。同様に、担持触媒成分は、単離または回収に先立って、100℃〜150℃の間の温度でハロ炭化水素、例えばクロロベンゼンまたはo−クロルトルエンで1回またはそれ以上洗浄してもよい。
【0057】
最終担持触媒成分生成物は、約0.5重量%〜約6.0重量%、または約1.0重量%〜約5.0重量%のチタン含有量を有することが好適である。固体担持触媒成分中のチタンとマグネシウムの重量比は、約1:3〜約1:160の間、または約1:4〜約1:50の間、または約1:6〜1:30の間にあることが好適である。内部電子供与体は、担持触媒成分中に内部電子供与体:マグネシウムが約0.001:1〜約10.0:1,または約0.01:1〜約0.4:1モル比で存在する。重量%は、担持触媒組成物の全重量に基づく。
【0058】
本発明において有用な内部電子供与体物質は、さらなる内部電子供与体、例えばエーテル、エステル、アミン、イミン、ニトリル、ホスフィン、スチビン、アルシン、ポリヒドロカルビルホスホネート、ホスフィネート、ジアルキルフタレート、ホスホネートまたはホスフィンオキシド、またはアルキルアラルキルフタレート(この場合のアルキル部分は、1〜10個、好ましくは2〜6個の炭素原子を含有し、およびアラルキル部分は、7〜10個、好ましくは7〜8個の炭素原子を含有する)、または芳香族モノカルボン酸のアルキルエステル(この場合のモノカルボン酸部分は、6〜10個の炭素原子を含有し、およびアルキル部分は、1〜6個の炭素原子を含有する)と組み合わせてもよい。このようなさらなる内部電子供与体の組み合わせまたは組み込みは、チタン化合物を用いる工程のいずれかで起こり得る。
【0059】
また、本発明の触媒または担持触媒成分のプレポリマー化(prepolymerization)または封入(encapsulation)は、α−オレフィン類の重合または共重合で使用される前に行なってもよい。特に有用なプレポリマー化手順は、米国特許第4,579,836号明細書(これは、参照することにより本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0060】
触媒
オレフィン重合触媒(または「触媒組成物」)としては、前記の担持触媒成分、助触媒、および場合により選択性調節剤(「SCA」、「外部供与体」、または「外部電子供与体」としても公知である)、および場合により活性抑制剤(または「ALA」)が挙げられる。
【0061】
助触媒
助触媒は、オレフィン重合触媒系の公知活性化剤のいずれかから選択してもよいが、有機アルミニウム化合物が好ましい。このような助触媒は、単独でまたはその組み合わせで用いてもよい。好適な有機アルミニウム助触媒は、式Al(R10(式中:Xは、F、Cl、Br、I、またはOR10であり、およびR10は、1〜14個の炭素原子を有する飽和炭化水素基であり、この基は、同一であってもよいしまたは異なっていてもよく、必要に応じて、重合中に用いる反応条件下で不活性である任意の置換基で置換されていてもよく、fは1〜3であり、gは0〜2であり、hは0または1であり、およびf+g+h=3である)を有する。トリアルキルアンモニウム化合物、特にアルキル基のそれぞれが1〜6個の炭素原子を含有するトリアルキルアンモニウム化合物、例えばAl(CH、Al(C、Al(i−C、およびAl(C13が、特に好ましい。
【0062】
SCA
特定の理論に縛られないが、触媒組成物中への1つまたはそれ以上のSCA(選択性調節剤)の提供は、フォルマント(formant)ポリマーの次の特性:すなわち立体規則性(すなわち、キシレン可溶性物質)のレベル、分子量(すなわち、メルトフロー)、分子量分布(MWD)、融点、および/またはオリゴマー量に影響を及ぼすと考えられる。本発明で使用するSCA(外部供与体または外部電子供与体としても知られている)は、典型的には当該技術で公知のSCAである。当該技術で公知のSCAとしては、以下に限定されないが、ケイ素化合物、カルボン酸のエステル(特にジエステル)、モノエーテル、ジエーテル(例えば、1,3−ジメトキシプロパンまたは2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン)、およびアミン(例えば、テトラメチルピペリジン)が挙げられる。
【0063】
好ましくは、SCAとして用いるケイ素化合物は、少なくとも1個のケイ素−酸素−炭素結合を含有する。好適なケイ素化合物としては、式R11SiY(式中:R11は、1〜20個の炭素原子を含有する炭化水素基であり、Yは−OR12または−OCOR12であり、R12は、1〜20個の炭素原子を含有する炭化水素基であり、Xは、水素またはハロゲンであり、iは、0〜3の値を有する整数であり、jは、1〜4の値を有する整数であり、kは、0〜1の値を有する整数、好ましくは0であり、およびi+j+k=4である)を有するケイ素化合物が挙げられる。好ましくは、R11およびR12は、C〜C10のアルキル、アリールまたはアルカリールリガンドである。それぞれのR11およびR12は、同一であってもよいしまたは異なってもよく、必要に応じて、重合中に用いる反応条件下で不活性である任意の置換基で置換されていてもよい。好ましくは、R12は、脂肪族基である場合には1〜10個の炭素原子を含有し、立体障害型であってもよいしまたは脂環式であってもよく、芳香族基である場合には6〜10個の炭素原子を含有する。
【0064】
11の例としては、シクロペンチル、t−ブチル、イソプロピル、シクロヘキシルまたはメチルシクロヘキシルが挙げられる。R12の例としては、メチル、エチル、ブチル、イソプロピル、フェニル、ベンジルおよびt−ブチルが挙げられる。Xの例は、ClおよびHである。好ましいケイ素SCAは、アルキルアルコキシシラン類、例えばジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、またはジシクロペンチルジメトキシシランである。
【0065】
2個またはそれ以上のケイ素原子が互いに酸素原子によって連結されているケイ素化合物、すなわちシロキサン類またはポリシロキサン類も、必要なケイ素−酸素−炭素結合も存在することを条件として用いてもよい。他の好ましいSCAは、芳香族モノカルボン酸またはジカルボン酸のエステル、特にアルキルエステル、例えばPEEB、DIBP、およびパラトルイル酸メチルである。
【0066】
SCAは、プロ触媒中のチタンのモル当たり約0.01モル〜約100モルを提供するのに十分な量で提供される。SCAは、プロ触媒中のチタンのモル当たり約0.5モル〜約70モルを提供するのに十分な量で提供されることが好ましく、約8モル〜約50モルがさらに好ましい。
【0067】
SCA用の好適なケイ素化合物の非限定的な例としては、米国特許第7,491,670号、国際公開第WO2009/029486号、または同第WO2009/029487号各明細書およびこれらの任意の組み合わせに述べられているケイ素化合物が挙げられる。
【0068】
SCAは、少なくとも2種類のケイ素化合物の混合物(すなわち、混合SCA、または混合外部電子供与体、すなわち「MEED」)であることができる。MEEDは、前述のSCA化合物のいずれかの2つまたはそれ以上を含んでもよい。好ましい混合物は、ジシクロペンチルジメトキシシランとメチルシクロヘキシルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシランとテトラエトキシシラン、またはジシクロペンチルジメトキシシランとn−プロピルトリエトキシシランであることができる。
【0069】
ALA
触媒組成物は、活性抑制剤(ALA)も含有していてもよい。本明細書で使用する「活性抑制剤」(「ALA」)とは、温度を上昇させて(すなわち、約85℃を超える温度で)触媒活性を低下させる物質である。ALAは、重合反応器の異常を抑制または防止し、重合プロセスの連続性を確保する。典型的には、チーグラー・ナッタ触媒の活性は、反応器温度の上昇と共に増大する。チーグラー・ナッタ触媒はまた、典型的には、生成するポリマーの融点温度付近で高活性を維持する。発熱重合反応によって生成した熱は、ポリマー粒子に凝集塊を形成させるかもしれないし、最終的にポリマー製造プロセスの連続性の破壊につながるかもしれない。ALAは、上昇した温度で触媒活性を低下させ、それによって反応器の異常を防止し、粒子の凝集を減少(または防止)し、重合プロセスの連続性を確保する。
【0070】
ALAは、SCAおよび/またはMEEDの成分であってもなくてもよい。活性抑制剤は、カルボン酸エステル、ジエーテル、ポリ(アルケングリコール)、ジオールエステル、およびこれらの組み合わせであってもよい。カルボン酸エステルは、脂肪族または芳香族モノまたはポリカルボン酸のエステルであることができる。好適なモノカルボン酸エステルの非限定的な例として、安息香酸エチルおよびメチル、p−メトキシ安息香酸エチル、p−エトキシ安息香酸メチル、p−エトキシ安息香酸エチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、酢酸エチル、p−クロロ安息香酸エチル、p−アミノ安息香酸ヘキシル、ナフテン酸イソプロピル、トルイル酸n−アミル、シクロヘキサン酸エチルおよびピバリン酸プロピルが挙げられる。
【0071】
好適なALAの非限定的な例としては、国際公開第WO2009/085649号、同第WO2009/029487号、同第WO2009/029447号、または同第WO2005/030815号各明細書、およびこれらの組み合わせに記載されているALAが挙げられる。
【0072】
SCAおよび/またはALAは、反応器に別々に加えることができる。あるいは、SCAとALAは、予め共に混合し、次いで混合物として触媒組成物および/または反応器に加えることができる。混合物に、2種以上のSCAまたは2種以上のALAを使用できる。好ましい混合物は、ジシクロペンチルジメトキシシランとミリスチン酸イソプロピル、ジシクロペンチルジメトキシシランとポリ(エチレングリコール)ラウレート、ジシクロペンチルジメトキシシランとミリスチン酸イソプロピルとポリ(エチレングリコール)ジオレエート、メチルシクロヘキシルジメトキシシランとミリスチン酸イソプロピル、n−プロピルトリメトキシシランとミリスチン酸イソプロピル、ジメチルジメトキシシランとメチルシクロヘキシルジメトキシシランとミリスチン酸イソプロピル、ジシクロペンチルジメトキシシランとn−プロピルトリエトキシシランとミリスチン酸イソプロピル、およびジシクロペンチルジメトキシシランとテトラエトキシシランとミリスチン酸イソプロピルエステル、ならびにこれらの組み合わせである。
【0073】
触媒組成物は、前述のSCAまたはMEEDのいずれかを、前述の活性抑制剤(またはALA)のいずれかと組み合わせて含有していてもよい。
【0074】
触媒または触媒組成物の調製
オレフィン重合触媒の諸成分は、オレフィンを重合させるべき系外の好適な反応器で混合することによって接触させることができ、それによって製造された触媒を、その後に重合反応器に導入することができる。予備混合成分は、接触後に乾燥してもよいし、接触溶媒中に残してもよい。しかし、別法として、触媒成分は、別々に重合反応器に導入してもよい。他の代替として、触媒成分の2つまたはそれ以上は、重合反応器に導入する前に、相互に部分的にまたは完全に混合してもよい(例えば、SCAと助触媒を予備混合する、またはSCAとALAを予備混合する)。別の代替は、担持触媒成分を、その他の触媒成分と反応させる前に、有機アルミニウム化合物と接触させることである。異なる代替は、少量のオレフィンを触媒成分と予備重合するかまたは触媒成分のいずれかを支持体(例えば、シリカまたは非反応性ポリマー)上に置くことである。
【0075】
重合
1つまたはそれ以上のオレフィンモノマーを、重合反応器に導入して触媒と反応させ、ポリマー、またはポリマー粒子の流動層を形成することができる。好適なオレフィンモノマーの非限定的な例としては、エチレン、プロピレン、C4−20α−オレフィン、例えば1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなど;C4−20ジオレフィン、例えば1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、ノルボルナジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、およびジシクロペンタジエン;C8−40ビニル芳香族化合物、例えばスチレン、o−、m−、およびp−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン;ならびにハロゲン置換C8−40ビニル芳香族化合物、例えばクロロスチレンおよびフルオロスチレンが挙げられる。
【0076】
本明細書で使用する「重合条件」は、望ましいポリマーを形成するために触媒組成物とオレフィンの間の重合を促進するのに好適な重合反応器内の温度および圧力パラメーターである。重合法は、1つの重合反応器、または2つ以上の重合反応器で操作する気相重合法、スラリー重合法、またはバルク重合法であってもよい。従って、重合反応器は、気相重合反応器、液相重合反応器、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0077】
重合反応器への水素の提供は、重合条件の1つの構成要素である。重合中、水素は、連鎖移動剤であり、得られるポリマーの分子量(および同様にメルトフローレート)に影響を及ぼす。
【0078】
重合は、気相重合によって起こり得る。本明細書で使用する「気相重合」とは、上昇流動媒体の通過であり、前記流動媒体は、流動媒体によって流動状態で維持されたポリマー粒子の流動層を通る触媒の存在下で、1つまたはそれ以上のモノマーを含有する。「流動化」、「流動化された」または「流動する」とは、微細ポリマー粒子の層が気体の上昇ガス流によって持ち上げられ、攪拌される気体−固体接触プロセスである。流動化は、粒子の層の細隙を通る流体の上昇流が、粒子の重量を上回る圧力差および摩擦抵抗の増大を獲得した場合に粒子の層で生じる。したがって、「流動層」とは、流動媒体の流れによって流動状態で懸濁された複数のポリマー粒子である。「流動媒体」は、1つまたはそれ以上のオレフィンガス、場合によりキャリアガス(例えば、HまたはN)、および場合により気相反応器を通って上昇する液体(例えば、炭化水素)である。
【0079】
典型的な気相重合反応器(または気相反応器)は、容器(すなわち、反応器)、流動層、分配板、出口および入口配管、コンプレッサー、循環ガス冷却器または熱交換器、ならびに生成物排出系を含む。容器は、反応帯域と速度低下帯域を含み、それぞれは分配板上に配置される。流動層は、反応帯域に配置される。1つの実施形態において、流動媒体として、プロピレンガス、および少なくとも1つのその他のガス、例えばオレフィンおよび/またはキャリアガス、例えば水素または窒素が挙げられる。
【0080】
触媒とオレフィンの接触は、触媒組成物を重合反応器に供給し、この重合反応器にオレフィンを導入することによって生じる。担持触媒成分を重合反応器に導入する前に、助触媒を担持触媒成分(プレミックス)と混合することができる。また、助触媒は、担持触媒成分と関係なく重合反応器に加えてもよい。重合反応器への助触媒の独立した導入は、担持触媒成分の供給と同時に、または実質的に同時に生じることができる。
【0081】
重合法は、予備重合工程を含んでいてもよい。予備重合は、担持触媒成分を助触媒ならびにSCAおよび/または活性抑制剤と接触させた後に、少量のオレフィンをプロ触媒組成物と接触させることを含む。次いで、得られる予備活性化触媒流を、重合反応帯域に導入し、重合させるべきオレフィンモノマーの残部、ならびに場合により1つまたはそれ以上のSCA成分および/または活性抑制剤成分と接触させる。予備重合は、助触媒ならびにSCAおよび/または活性抑制剤と組み合わせられる担持触媒成分をもたらし、この組み合わせは、フォルマントポリマーのマトリックスに分散される。場合により、追加量のSCAおよび/または活性抑制剤を添加してもよい。
【0082】
重合法は、予備活性化工程を含んでいてもよい。予備活性化は、担持触媒成分を、助触媒ならびにSCAおよび/または活性抑制剤と接触させることを含む。得られる予備活性化触媒流は、その後に重合反応帯域に導入し、重合させるべきオレフィンモノマー、および場合により1つまたはそれ以上のSCA成分と接触させる。予備活性化は、助触媒ならびにSCAおよび/または活性抑制剤と組み合わせられる担持触媒成分をもたらす。場合により、追加量のSCAおよび/または活性抑制剤を添加してもよい。
【0083】
前記方法は、SCA(および場合により活性抑制剤)を担持触媒成分と混合することを含んでいてもよい。SCAは、触媒組成物とオレフィンを接触させる前に、助触媒と錯体を形成させ、担持触媒成分(プレミックス)と混合することができる。SCAおよび/または活性抑制剤は、独立して重合反応器に加えることができる。好ましいSCAとしては、ジシクロペンチルジメトキシシランまたはn−プロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0084】
好ましい触媒組成物は、SCA、例えばジシクロペンチルジメトキシシランおよび/またはn−プロピルトリメトキシシランおよび/またはメチルシクロヘキシルジメトキシシラン、ならびに活性抑制剤、例えばミリスチン酸イソプロピルを含有する。
【0085】
オレフィンは、プロピレンであってもよく、この場合には前記方法は、約0.01g/10分〜約800g/10分、または約0.1g/10分〜約200g/10分、または約0.5g/10分〜約150g/10分のメルトフローレート(MFR)を有するプロピレン系ポリマーを形成することを含む。また、プロピレン系ポリマーは、ポリプロピレンホモポリマーである。
【0086】
オレフィンは、プロピレンであってもよく、この場合には前記方法は、約0.5%〜約10%、または約1%〜約8%、または約1%〜約4%のキシレン可溶分を有するプロピレン系ポリマーを形成することを含む。また、プロピレン系ポリマーは、ポリプロピレンホモポリマーである。
【0087】
本開示は、オレフィン系ポリマーの別の製造方法を提供する。オレフィンは、プロピレンであってもよいし、少なくとも1つのその他の好適なオレフィンコモノマーの混合物であってもよく、この場合には前記方法は、プロピレン系インターポリマーを形成することを含む。好ましいコモノマーは、エチレンおよび/または1−ブテンであり、フォルマントインターポリマーは、約0.01g/10分〜約200g/10分、または約0.1g/10分〜約100g/10分、または約0.5g/10分〜約70g/10分のメルトフローレート(MFR)を有する。また、好ましいプロピレン系インターポリマーは、ランダムコポリマーである。
【0088】
オレフィンは、プロピレンであってもよいし、少なくとも1つのその他の好適なオレフィンコモノマーの混合物であってもよく、この場合には前記方法は、プロピレン系インターポリマーを形成することを含む。好ましいコモノマーは、エチレンおよび/または1−ブテンであり、フォルマントインターポリマーは、約0.5%〜約40%、または約1%〜約30%、または約1%〜約20%のキシレン可溶分を有する。また、好ましいプロピレン系ポリマーは、ランダムコポリマーである。
【0089】
オレフィンは、プロピレンであってもよいし、少なくとも1つのその他の好適なオレフィンコモノマーの混合物であってもよく、この場合には前記方法は、プロピレン系インターポリマーを形成することを含む。好ましいコモノマーは、エチレンおよび/または1−ブテンであり、フォルマントインターポリマーは、プロピレンに対する重量%で約0.001%〜約20%、または約0.01%〜約15%、または約0.1%〜約10%のコモノマー含有量を有する。また、好ましいプロピレン系ポリマーは、ランダムコポリマーである。
【0090】
本開示は、オレフィン系ポリマーの別の製造方法を提供する。オレフィン系ポリマーの製造方法であって、プロピレンを、ジ炭酸エステルを含有する触媒組成物と接触させてプロピレン系ポリマーを形成することを含むオレフィン系ポリマーの製造方法が提供される。プロピレンと触媒組成物の間の接触は、重合条件下での第一の重合反応で生じる。この方法は、さらに、エチレンと場合により少なくとも1つのその他のオレフィンを、プロピレン系ポリマーの存在下で接触させることを含む。エチレン、前記オレフィン、およびプロピレン系ポリマーの間の接触は、第二の重合反応器で、重合条件下で生じ、プロピレンインパクトコポリマーを形成する。
【0091】
第一の反応器および第二の反応器は、直列で操作してもよく、それによって第一の反応器の流出液(すなわち、プロピレン系ポリマー)が第二の反応器に装填される。追加オレフィンモノマーが、重合を継続するために第二の重合反応器に加えられる。追加触媒組成物(および/または個々の触媒成分−すなわち、担持触媒成分、助触媒、EEDまたはMEED、ALAの任意の組み合わせ)を、第二の重合反応器に加えてもよい。第二の反応器に加えられる追加触媒組成物/成分は、第一の反応器に導入される触媒組成物/成分と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0092】
第一の反応器で製造されるプロピレン系ポリマーは、プロピレンホモポリマーである。プロピレンホモポリマーは、第二の反応器に装填され、そこでエチレンとプロピレンが、互いにプロピレンホモポリマーの存在下で接触する。これにより、プロピレンホモポリマー連続(またはマトリックス)相とプロピレン系コポリマー(すなわち、プロピレン/エチレンコポリマー)またはエチレン系コポリマー(すなわち、エチレン/プロピレンコポリマー)から選択される不連続相(またはゴム相)を有するプロピレンインパクトコポリマーが形成される。前記不連続相は、前記連続相に分散している。
【0093】
プロピレンインパクトコポリマーは、約1重量%〜約50重量%、または約10重量%〜約40重量%、または約20重量%〜約30重量%のFc値を有し得る。本明細書で使用する「コポリマー分率」(「Fc)」とは、異相コポリマーに存在する不連続相の重量%である。Fc値は、プロピレンインパクトコポリマーの全重量に基づく。
【0094】
プロピレンインパクトコポリマーは、約1重量%〜約100重量%、または約20重量%〜約90重量%、または約30重量%〜約80重量%、または約40重量%〜約60重量%のEc値を有し得る。本明細書で使用する「エチレン含有量」(「Ec」)とは、プロピレンインパクトコポリマーの不連続相に存在するエチレンの重量%である。Ec値は、不連続(またはゴム)相の全重量に基づく。
【0095】
試験方法
多分散性指数(PDI)は、Zeichner GR,Patel P.D.(1981)「A comprehensive Study of Polypropylene Melt Rheology」,Proc.of the 2nd World Congress of Chemical Eng.,Montreal,Canadaにしたがった方法を使用してTA Instrumentsによって製造された応力制御型動的分光計であるAR−G2流量計で測定される。ETCオーブンを使用して、温度を180℃±0.1℃に制御する。プラント窒素をオーブン内部にパージして、試料を酸素や水分によって分解しないように保護した。一組の直径25mmのコーンとプレート試料ホルダーを使用する。試料を、50mm×100mm×2mmのプラックに圧縮成形する。試料を、19mm角に切断し、底部プレートの中心に配置する。上部コーンの形状は、(1)コーン角:5:42:20(度:分:秒);(2)直径:25mm;(3)切断ギャップ:149ミクロンである。底部プレートの形状は、25mm円筒である。試験手順:
(i)コーンとプレート試料ホルダーを、ETCオーブン内で、180℃で2時間加熱する。次いで、前記ギャップを、窒素ガス雰囲気下でゼロに設定する。
(ii)コーンを、2.5mmまで持ち上げ、試料を底部プレートの上部に載せる。
(iii)2分間の計時を開始する。
(iv)上部コーンを直ちに下ろして、法線力を観察することによって試料の上部にわずかに静止させる。
(v)2分後に、上部コーンを下げることによって、試料を165ミクロンのギャップまで圧搾する。
(vi)法線力が<0.05ニュートンまで低下した時に法線力を観察し、過剰の試料をコーンの端部およびプレート試料ホルダーからスパチュラで取り除く。
(vii)上部コーンを、149ミクロンの切断ギャップまで再び下ろす。
(viii)振動性周波数掃引試験を、以下の条件下で行なう。
・180℃で5分間遅らせた試験。
・周波数:628.3r/s〜0.1r/s
・データ取得率:5ポイント/周波数10
・歪み:10%
(ix)試験が完了したときに、交差弾性率(Gc)を、TA Instrumentsによって提供されるRheology Advantage Data Analysisプログラムで検出する。
(x)PDI=100,000÷Gc(Pa単位)
【0096】
メルトフローレート(MFR)または「メルトフロー」は、ASTM D1238−01試験法にしたがって、プロピレン系ポリマーについて230℃で2.16kgの重量で測定する。
【0097】
キシレン可溶分(XS)は、以下の手順にしたがって測定する。0.4gのポリマーの全部を、20mlのキシレンに130℃で30分間攪拌しながら溶解する。次いで、この溶液を25℃まで冷却し、30分後に不溶性ポリマー画分を濾過して除去する。得られる濾液を、Viscotek ViscoGEL H−100−3078カラムを使用して、THF移動相を1.0ml/分で流して、フロー・インジェクション・ポリマー分析により分析する。カラムは、45℃で操作する光散乱検出器、粘度計検出器および屈折計検出器を有するViscotek Model 302トリプル検出器アレイに接続する。装置の較正は、Viscotek PolyCAL(商標)ポリスチレン標準を用いて維持した。
【0098】
最終融点TMFまたは(「TMF」)は、試料中の最も完全な結晶を溶融するための温度であり、アイソタクチシティおよび固有ポリマー結晶性についての尺度とみなされる。試験は、TA Q100示差走査熱量計を使用して行なう。試料を、0℃から240℃まで80℃/分の速度で加熱し、同じ速度でで0℃に冷却し、次いで再度同じ速度で150℃まで加熱し、150℃で5分間保ち、150℃から180℃まで1.25℃/分で加熱する。TMFは、この最後のサイクルから、加熱曲線の終点でのベースラインの始まりを計算することによって決定する。TMFの試験手順:
(1)装置を、高純度インジウムを標準として用いて較正する。
(2)装置のヘッド/セルを、50ml/分の一定流速の窒素で絶え間なくパージする。
(3)サンプル調製:1.5gの粉末試料を、30−G302H−18−CX Wabash Compression Molder(30トン)を使用して圧縮成形する:(a)混合物を接触させて230℃で2分間加熱する;(b)試料を、同じ温度で20トンの圧力で1分間圧縮する;(c)試料を45°Fに冷却し、2分間20トンの圧力で保つ;(d)プラックをほぼ同じサイズの4つに切断し、これらを共に積み重ね、工程(a)〜(c)を繰り返して試料を均一にする。
(4)試料プラックから1片の試料(好ましくは5〜8mg)を秤量し、それを標準アルミニウム製試料皿に密封する。試料を入れてある密封皿を装置のヘッド/セルの試料側に置き、空の密封皿を参照側に置く。自動サンプラーを使用する場合には、数個の異なる試料試験片を秤量し、装置を設定する。
(5)測定:
(i)データ記憶:オフ
(ii)240.00℃まで80.00℃/分の勾配
(iii)1.00分間の等温
(iv)0.00℃まで80.00℃/分の勾配
(v)1.00分間の等温
(vi)150.00℃まで80.00℃/分の勾配
(vii)5.00分間の等温
(viii)データ記憶:オン
(ix)180.00℃まで1.25℃/分の勾配
(x)方法の終了
(6)計算:TMFは、2つの線の交点によって決定する。1本の線を、高温のベースラインから引く。別の線を、高温側の曲線の終点に近い曲線の偏りの中から引く。
【0099】
以下の実施例は、本発明を例証するのに役立つものであるが、特許請求の範囲によって定義されるような発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0100】
ナフタレン−1,8−ジイルジ炭酸ジメチル(ID−1)、ナフタレン−1,8−ジイルジ炭酸ジエチル(ID−2)、ナフタレン−1,8−ジイルジ炭酸ジプロピル(ID−3)、およびナフタレン−1,8−ジイルジ炭酸ジブチル(ID−4)の一般的な調製手順:丸底フラスコに、ナフタレン−1,8−ジオール(4.0g、25ミリモル)、ピリジン(4.0g、50ミリモル)、および無水塩化メチレン(50ml)を装填する。このフラスコを氷水浴に浸し、好適なクロロギ酸エステル(50ミリモル)を滴加する。この混合物を、室温まで上昇させ、一夜攪拌する。この混合物を追加の塩化メチレンで希釈し、濾過した後に共にした有機物を水、飽和NHClまたは1N HCl溶液(水性)、水、飽和炭酸水素ナトリウム(水性)、および食塩水で連続的に洗浄し、次いで硫酸マグネシウムで乾燥する。濾過した後に、濾液を濃縮し、残留物を、メタノールまたはエタノールからの再結晶によって精製するか、またはシリカゲルでのフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製する。
【0101】
ナフタレン−1,8−ジイルジ炭酸ジメチル(ID−1):クロロギ酸メチルを使用して調製した;メタノールから再結晶により精製して生成物を褐色結晶として得た(58.0%)。H NMR(400MHz,CDCl,ppm)δ7.80(dd,2H,J=1.2, 8.4Hz),7.48(dd,2H,J=7.6, 8.4Hz),7.26(d,2H,J=1.2, 7.6Hz),3.95(s,6H)。
【0102】
ナフタレン−1,8−ジイルジ炭酸ジエチル(ID−2):クロロギ酸エチルを使用して調製した;エタノールから再結晶により精製して生成物をわずかに着色した固体として得た(60.5%)。H HNMR(500MHz,CDCl,ppm)δ7.79(d,2H,J=8.0Hz),7.47(dd,2H,J=7.5, 8.0Hz),7.26(d,2H,J=7.5Hz),4.36(q,4H,J=7.5Hz),1.43(t,6H,J=7.5Hz)。
【0103】
ナフタレン−1,8−ジイルジ炭酸ジプロピル(ID−3):クロロギ酸プロピルを使用して調製した;シリカゲルを用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製して生成物を白色固体として得た(90%);H HNMR(500MHz,CDCl)δ7.80(dd,J=0.5, 8.0Hz,2H),7.48(dd,J=7.5, 8.0Hz,2H),7.27(dd,J=0.5, 7.5,2H),4.26(t,J=6.8Hz,4H),1.82(hex,J=7.3Hz,4H),1.04(t,J=7.5Hz,6H)。
【0104】
ナフタレン−1,8−ジイルジ炭酸ジブチル(ID−4):クロロギ酸ブチルを使用して調製した;シリカゲルを用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製して生成物を白色固体として得た(85%);H HNMR(500MHz,CDCl)δ7.80(d,J=9.0Hz,2H),7.48(t,J=8.0Hz,2H),7.27(d,J=7.5,2H),4.31(t,J=6.8Hz,4H),1.82(pent,J=5.8Hz,4H),1.82(hex,J=7.5Hz,4H),1.04(t,J=7.5Hz,6H)。
【0105】
ナフタレン−1,8−ジイルジ炭酸ジイソブチル(ID−5)の調製:丸底フラスコに、ナフタレン−1,8−ジオール(4.0g、25ミリモル)と、無水DMF(50ml)を装填する。このフラスコを氷水浴に浸し、鉱油中60%水素化ナトリウム(2.4g、60ミリモル)を少しずつ加える。この混合物を、1時間攪拌する。クロロギ酸イソブチル(8.2g、60ミリモル)を滴加する。徐々に室温まで温めた後に、混合物を一夜攪拌する。この混合物を、氷冷水に注入し、エーテルで3回抽出する。共にしたエーテル抽出物を、水、次いで食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥する。濾過した後に、濾液を濃縮し、残留物を、シリカゲルを用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製して2.8g(31%)の生成物を薄灰色固体として得る。H HNMR(400MHz,CDCl,ppm)δ7.79(dd,2H,J=1.2, 8.0Hz),7.47(dd,2H,J=7.6, 8.0Hz),7.26(dd,2H,J=1.2, 7.6Hz),4.07(d,4H,J=6.8Hz),2.07(m,2H),1.00(d,12H,J=6.8Hz)。
【0106】
ビフェニル−2、2´−ジイルジ炭酸ジエチル(ID−6)の調製:丸底フラスコに、ビフェニル−2,2´−ジオール(7.45g、40ミリモル)と、ピリジン(50mL)を装填する。このフラスコを氷水浴に浸し、クロロギ酸エチル(9.48mL、100ミリモル)を滴加する。この混合物を、徐々に室温まで温めた後に、一夜攪拌する。揮発物を真空中で除去し、残留物を100mLの酢酸エチルに懸濁する。濾過後に、濾液を濃縮し、フラッシュクロマトグラフィーで精製する。生成物が無色油状物として得られる。収量:5.0g;H HNMR(500MHz,CDCl,ppm)δ7.23−7.44(m,8H),4.13(q,4H),1.19(t,6H)。
【0107】
市販の内部供与体(フタル酸ジイソブチルおよび炭酸ジエチル)、または本明細書に記載のようにして調製した内部供与体の構造を、表1に示す。
【表1】

【0108】
担持触媒成分の調製
窒素下で、3.0gのMagTi(混合マグネシウム/チタンハライドアルコラート;CAS#173994−66−6米国特許第5,077,357号明細書参照)、以下の表2に示した量の内部電子供与体、および60mLの四塩化チタンとクロロベンゼンの50/50(容量/容量)混合物を、一体型フィルターを取り付けた容器に装填する。115℃で60分間加熱しながら攪拌した後に、混合物を濾過する。固形分を、追加の60mLの新しい50/50(容量/容量)混合四塩化物チタン/クロロベンゼン、および場合により(以下の表2に示すような)、第二の装填量の内部電子供与体で、115℃で30分間攪拌しながら処理する。混合物を濾過する。固形分を、再度、60mLの新しい50/50(容量/容量)混合四塩化物チタン/クロロベンゼンで、115℃で30分間攪拌しながら処理する。この混合物を濾過する。周囲温度で、固形分を70mLのイソオクタンで3回洗浄し、次いで窒素の流れの下で乾燥する。固体触媒成分を粉末として収集し、一部分を鉱油と混合して5.4重量%スラリーを得る。使用した内部電子供与体の素性、その量、添加の時間を以下に詳述する(表2)。
【表2】

【0109】
活性重合触媒の作製
不活性雰囲気グローブボックス中で、表3〜5に示した量の外部供与体(存在する場合に)、トリエチルアルミニウム(0.28M溶液として)、担持触媒成分(5.4%鉱油スラリーとして)、および5〜10mLのイソオクタン希釈剤(任意)を20分間予備混合することによって、活性触媒混合物を調製する。調製後におよび空気に曝すことなく、活性触媒混合物を、以下に記載のように重合反応器に注入する。
【0110】
バッチ反応器ポリプロピレン重合(ホモポリマー):
重合を、攪拌型3.8Lステンレス鋼オートクレーブで行なう。温度調節は、循環水を使用して一体型反応器ジャケットを加熱または冷却することによって維持する。反応器の上部は、揮発分をベントした後に内容物を空にできるように各操作後に開けられる。重合または触媒調製に使用した全ての化学薬品は、精製カラムに通して操作して不純物を除去する。プロピレンおよび溶媒は、2つのカラムに通す〔第一のカラムは、アルミナを含有し、第二のカラムは、精製反応剤(Engelhard Corporationから入手可能なQ5(商標))を含有する〕。窒素ガスおよび水素ガスを、Q5(商標)反応剤を含有する単一カラムに通す。
【0111】
反応器のヘッドを本体に取り付けた後に、反応器に窒素をパージし、同時に140℃に加熱し、次いで約30℃に冷却する。次いで、反応器に塩化ジエチルアルミニウムのイソオクタン溶液(1重量%)を満たし、15分間攪拌する。次いで、このスカベンジャー溶液を回収缶に洗い流し、反応器を〜1375gのプロピレンで満たす。適量の水素を、質量流量計を使用して加え(表3〜5参照)、反応器を62℃にする。活性触媒混合物を、油中または炭化水素中スラリーとして注入し、インジェクターをイソオクタンで3回洗い流して完全な送達を確実にした。触媒の注入後に、反応器の温度を、5分間にわたって67℃まで上昇させるか、または多量の発熱の場合には冷却することによって67℃に維持する。1時間の操作時間後に、反応器を周囲温度まで冷却し、ベントし、内容物を空にする。換気ドラフトチャンバー中で一夜乾燥するかまたは一定重量まで乾燥した後に、ポリマー重量を測定する。
【表3】

表3のデータの分析は、以下を表す:
A.発明供与体(ID−2)を用いる触媒から得られるポリマーのTMFは、比較触媒を使用する場合よりも高い。
B.外部供与体を使用すると、発明供与体(ID−2)を用いる触媒から得られるポリマーのXSは、比較触媒を使用する場合よりも低い。
C.外部供与体が存在しない場合でも、発明供与体(ID−2)を用いる触媒から得られるポリマーのXSは、比較触媒を外部供与体と組み合わせて使用して調製したポリマーと同等である。
D.発明供与体(ID−2)を用いる触媒から得られるポリマーのPDIは、比較触媒を使用する場合よりも狭く、多様な外部供与体を用いる場合の変化に対して比較的鈍感である。
E.発明触媒の効果は、強い(>20kgPP/g触媒)。
【表4】

表4のデータの分析は、以下を表す:
A.発明ジ炭酸エステル供与体のいずれかを用いる触媒から得られるポリマーのXSは、モノ炭酸エステル比較触媒(比較2)を使用する場合よりもはるかに低い。
B.発明供与体(ID−2、ID−3、またはID−4)を用いる触媒から得られるポリマーのTMFは、比較触媒(比較1b)を使用する場合よりも高い。
C.発明供与体(ID−1、ID−2、ID−3、またはID−4)を用いる触媒から得られるポリマーのXSは、比較触媒(比較1bまたは比較2)を使用する場合よりも低い。
D.発明供与体(ID−1、ID−2、ID−3、またはID−4)を用いる触媒から得られるポリマーのPDIは、比較触媒(比較1b)を使用する場合よりも狭く、多様な外部供与体を用いる場合の変化に対して比較的鈍感である。
E.発明供与体(ID−5)を用いる触媒から得られるポリマーのPDIは、比較触媒(比較1b)を使用する場合よりも幅広い。
F.発明供与体(ID−6)を用いる触媒から得られるポリマーのMFおよびPDIは、比較触媒(比較1bまたは比較2)を使用する場合よりも高い。
G.Rが>2個の非分岐炭素原子を有する発明触媒(ID−3、ID−4)のMFは、Rが<3個の炭素原子を有する実施例(ID−1、ID−2)のMFよりも低い。
H.発明触媒の効果は、強い(15kgPP/g触媒)。
【表5】

表5のデータの分析は、以下を表す:
A.発明供与体(ID−2)を用いる触媒から得られるポリマーのTMFは、比較触媒を使用する場合よりも高い。
B.発明供与体(ID−2、ID−3、およびID−4)を用いる触媒から得られるポリマーのXSは、比較触媒を使用する場合よりも低い。
C.発明供与体(ID−2、ID−3、およびID−4)を用いる触媒から得られるポリマーのPDIは、比較触媒を使用する場合よりも狭い。
D.発明供与体(ID−1、ID−2、ID−3、およびID−5)を用いる触媒から得られるポリマーのMFは、比較触媒を使用する場合よりも高い。
E.Rが>2個の炭素原子を有する発明触媒(ID−3、ID−4、ID−5)のMFは、Rが<3個の炭素原子を有する実施例(ID−1、ID−2)のMFよりも低い。
F.Rが>2個の非分岐炭素原子を有する発明触媒(ID−3、ID−4)の効果は、Rが<3個の炭素原子を有する実施例(ID−1、ID−2)の効果よりも高い。
G.発明供与体(ID−1またはID−2)を用いる触媒から得られるポリマーのMFの増大は、比較触媒を使用する場合と比べて相当な増大である。したがって、高いMFのポリマー樹脂を、亀裂を生じさせずに調製できる。
H.発明触媒の効果は、強い(15kgPP/g触媒)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン類を重合させるのに有用な炭化水素不溶性の固体触媒成分であって、マグネシウム、チタン、およびハロゲンを含有し、さらに
構造:
[R−O−C(O)−O−]
(式中、Rは、それぞれの出現において独立して、1〜20個の炭素原子を含有する脂肪族もしくは芳香族炭化水素基、または置換炭化水素基であり;xは2〜4であり;およびRは、1〜20個の炭素原子を含有する脂肪族もしくは芳香族炭化水素基、または置換炭化水素基であり、第一のR−O−C(O)−O−基と第二のR−O−C(O)−O−基とを連結する最も短い鎖には3〜4個の原子が存在することを条件とする)
を有する内部電子供与体を含有する炭化水素不溶性の固体触媒成分。
【請求項2】
x=2である、請求項1に記載の触媒成分。
【請求項3】
それぞれのRが、脂肪族炭化水素である、請求項1に記載の触媒成分。
【請求項4】
それぞれのRが、芳香族炭化水素である、請求項1に記載の触媒成分。
【請求項5】
が、1,8−ジ置換ナフチレン部分である、請求項1に記載の触媒成分。
【請求項6】
が、2,2´−ジ置換ビフェニル部分である、請求項1に記載の触媒成分。
【請求項7】
が、直鎖または分岐アルキル部分であり、第一のR−O−C(O)−O−基と第二のR−O−C(O)−O−基とを連結する最も短い鎖には3〜4個の原子が存在することを条件とする、請求項1に記載の触媒成分。
【請求項8】
それぞれのRが、脂肪族炭化水素である、請求項5から7のいずれかに記載の触媒成分。
【請求項9】
それぞれのRが、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはイソブチルである、請求項5から7のいずれかに記載の触媒成分。
【請求項10】
前記内部電子供与体が、次の化合物:すなわちナフタレン−1,8−ジイルジ炭酸ジメチル;ナフタレン−1,8−ジイルジ炭酸ジエチル;ナフタレン−1,8−ジイルジ炭酸ジプロピル;ナフタレン−1,8−ジイルジ炭酸ジブチル;ナフタレン−1,8−ジイルジ炭酸ジイソブチル;またはビフェニル−2、2´−ジイルジ炭酸ジエチルの1つを含む、請求項1に記載の触媒成分。
【請求項11】
前記内部電子供与体が、次の化合物:すなわちナフタレン−1,8−ジイルジ炭酸ジエチル;ナフタレン−1,8−ジイルジ炭酸ジプロピル;またはナフタレン−1,8−ジイルジ炭酸ジブチルの1つを含む、請求項1に記載の触媒成分。
【請求項12】
場合により、単一成分SCA、混合成分SCA、または活性抑制剤と組み合わせられる、請求項1から11のいずれかに記載の触媒成分。
【請求項13】
前記混合成分SCAが、活性抑制剤または有機エステルを成分として含有する、請求項12に記載の触媒成分。
【請求項14】
場合により有機アルミニウム化合物と組み合わせられる、請求項13に記載の触媒成分。
【請求項15】
オレフィンの重合方法であって、前記オレフィンを、触媒成分であってマグネシウム、チタン、およびハロゲンを含有し、さらに構造:
[R−O−C(O)−O−]
(式中、Rは、それぞれの出現において独立して、1〜20個の炭素原子を含有する脂肪族もしくは芳香族炭化水素基、または置換炭化水素基であり;xは2〜4であり;およびRは、1〜20個の炭素原子を含有する脂肪族もしくは芳香族炭化水素基、または置換炭化水素基であり、第一のR−O−C(O)−O−基と第二のR−O−C(O)−O−基とを連結する最も短い鎖には3〜4個の原子が存在することを条件とする)
を有する内部電子供与体を含有する触媒成分と接触させることを含む、オレフィンの重合方法。
【請求項16】
オレフィンを請求項2から14のいずれかに記載の触媒成分と接触させることを含む、オレフィンの重合方法。
【請求項17】
内部電子供与体として使用するのに好適な化合物であって、構造:
[R−O−C(O)−O−]
(式中、Rは、それぞれの出現において独立して、3〜20個の炭素原子を含有する脂肪族もしくは芳香族炭化水素基、または置換炭化水素基であり;xは2〜4であり;およびRは、1〜20個の炭素原子を含有する脂肪族もしくは芳香族炭化水素基、または置換炭化水素基であり、第一のR−O−C(O)−O−基と第二のR−O−C(O)−O−基とを連結する最も短い鎖には3〜4個の原子が存在することを条件とする)
を有する化合物。
【請求項18】
少なくとも1つのR基が、非分岐炭素鎖である、請求項17に記載の化合物。

【公表番号】特表2013−512996(P2013−512996A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542126(P2012−542126)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/058273
【国際公開番号】WO2011/068775
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】