説明

ポリマー−金属接合ならびにそれに有用な化合物および組成物

少なくとも1つのアルコキシシラン部分;およびニトロソベンゼンまたはニトロソベンゼン前駆体およびこれらの組合せから選択される少なくとも1つの部分を含む化合物が提供され、ポリマー対金属、特にゴム対金属の接合に使用される。ニトロソベンゼン前駆体は、キノンジオキシムまたはキノンオキシムの少なくとも1つであってよい。本発明は、少なくとも1つのアルコキシシラン部分;および芳香族ニトロソまたは芳香族ニトロソ前駆体およびこれらの組合せから選択される少なくとも1つの部分を含む化合物も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
ポリマー対金属、例えば、ゴム対金属のようなエラストマー対金属接合(接着)の用途で使用するのに適した接着剤組成物が提供される。1つの態様は、そのような接着剤組成物のゴム対金属接合(接着)の用途で使用するのに適した化合物を提供する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の簡単な説明)
ポリマー対金属、特にゴム対金属接合は、長年にわたり実施されてきた。ポリマーまたはゴム対金属接合を達成する配合物に対して多くの用途がある。ゴム対金属接合は、異なった金属を天然または合成ゴムに接合するために広く使用されている。
ポリマー対金属接合は、多くの理由で実施されている。
【0003】
ゴム対金属接合の1つの態様は、金属の構造的強度とゴムの弾性特性とを組合わせることである。
【0004】
従って、金属およびゴムのようなポリマーは、衝撃吸収用途で相互に接合されることが多く、例えば、軸受、車輪、衝撃吸収材、移動アームなどがある。そのような構成部品は、例えばPC部品のような非常に小さなスケール、または、例えば橋および建物のような建設の非常に大きなスケールで使用されうる。また、雑音低減は、金属対ゴム接合を利用することによって達成される。共に接合された金属およびゴムを含むあらゆる部品によって、巨大な力を経験できることが認められている。従って、相当な力、例えば、圧縮圧力または外延圧力、さらには衝撃に対して、金属またはゴムを相互に分離させず耐えることができる金属対ゴム接合を提供することが望ましい。タイヤのための内部のワイヤー補強材がタイヤのゴムに接合されるタイヤ製造などを含め、ゴム対金属接合の用途が他にも多く存在する。
【0005】
一般に、接着剤配合物は、選択されたゴムを選択された金属基体に接合するために提供される。
【0006】
伝統的ゴム対金属接合の技術は、2−ステップシステムを組み込んだものであり、第1ステップでプライマーが塗布され、その後の第2ステップで接着剤が塗布される。プライマーは、通常、反応性基を含有する塩素化ゴムおよびフェノール樹脂の液剤または懸濁剤、およびまた、二酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラックなどの顔料からなる。プライマーは、一般に、グリットブラスト仕上げまたは化学仕上げされた部品を例とする処理スチール部品のような、処理された(洗浄された)金属部品の表面上に薄層として塗布される。
【0007】
接着剤は、通常、広範囲のゴム材料および架橋剤からなる。これらは、塩素化および臭素塩素化ゴム、架橋剤として芳香族ニトロソベンゼン化合物およびビスマレイミド、溶媒としてキシレン、ペルクロロエチレンおよびエチルベンゼン、ならびに一部の鉛または亜鉛塩も含むが、これらに限定されるものではない。接着剤層は、一般に、下塗りされた金属とゴムの間の接合である。
【0008】
ゴム対金属接合の技術で採用されてきた通常の架橋剤は、芳香族ニトロソ化合物、例えば、p−ジニトロソベンゼンである。
【0009】
ゴム対金属接合が採用される多くの分野で、中でも、接合強度および耐久性、試料製造および接着剤の塗布の容易性、単層対2層システム、低毒性および環境に対する改良された特性など、数タイプの問題に直面する多数の機会がある。
【0010】
ゴム対金属接合のための多くの配合物が存在する。例えばシランは、腐食防止剤およびゴム対金属接合の接着促進剤として使用されてきた。VOC(揮発性有機化合物)および経費の低下(例えば、特定のシステムでの接着促進剤として使用されるコバルト塩に伴うもの)は好ましいことであり、例えば、下記の米国特許出願公開2007/0056469A1および同2005/0079364A1、ならびに米国特許第6,756,079B2および同6,409,874各公報に詳しく説明されている。記載された具体的なシランは、ビス(トリメトキシプロピル)アミンおよびビス(トリエトキシプロピル)テトラスルフィドであり、通常はエタノール/水溶液中でそれぞれ1:3の比で共に使用される。従って、注目すべきは、これらのシランが金属に塗布される前に別々にまたは一緒に加水分解されることである。
【0011】
国際特許公開第WO2004/000851号公報(Qinetiq Ltd.)は、高度に制御してシランを加水分解する方法を記載している。この方法は、水および触媒の存在下、溶液中で実施される。国際(PCT)特許公開第WO2004/078867号公報(Lord Corporation)は、熱可塑性エラストマーを接合するために考案された、アルコキシシラン/ウレタン付加物および塩素化ポリマーを含有する単層・溶媒ベースの接着剤を記載している。この特許文献には、合成方法および配合が記載されている。米国特許第4,031,120号公報(Lord Corporation)は、
ポリイソシアネートおよび芳香族ニトロソ化合物との組合せでイソシアネート官能性有機シランを含む組成物を記載している。得られたシステムは、様々な弾性材料を金属および他の基体に接合するための単層接着剤として記載されている。
【0012】
一般に、接合が加硫ステップ、例えば、圧縮成形、トランスファー成形、射出成形およびオートクレーブ加熱(例えば、スチームまたは高温の空気による)の間に達成されることが好ましい。例えば、半−固体状ゴムを金型に射出することができる。次に、この半−固体状ゴムは完全に硬化されたゴムへと架橋され、同時に基体との接合が形成される。
【0013】
硬化システムのある種の要件は好ましい。これには、加工容易性、安定性(例えば、沈降の回避)、塗布容易性、高速乾燥(付着物のない操作を可能にする)、良好な湿潤特性および良好な硬化強度が挙げられる。硬化は、採用されるエラストマー(ゴム)の型とは関係なく、およびまた基体の型とは関係なく達成されなければならない。当然のことながら、一部のゴムはブレンド材料であり、従って、そのようなブレンド材料で良好な硬化が達成されることが好ましい。適切で一貫性のある硬化は、様々な加工パラメータの下で達成される。耐久性も好ましい。例えば、このゴム/金属接合は、比較的高い機械的応力下、例えば、高い圧力下、および厳しい雰囲気、例えば、オイルのような高温の液体に曝された場合でさえも耐久性がなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
現状技術にもかかわらず、消費者がより多くの選択の可能性を有することができるように、公知の欠陥の一部または全てを改善しおよび/または現存する技術の代替を提供する、ポリマー基体を金属基体に接合する化合物および組成物を提供することは好ましいと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
ゴム対金属の接合で使用するのに適した化合物が提供される。
【0016】
第1の態様では、
a)少なくとも1つのアルコキシシラン部分;および
b)芳香族ニトロソまたは芳香族ニトロソ前駆体およびこれらの組合せから選択される少なくとも1つの部分
を含む、化合物が提供される。
【0017】
前記化合物は、
a)少なくとも1つのアルコキシシラン部分;および
b)ニトロソベンゼンまたはニトロソベンゼン前駆体およびこれらの組合せから選択される少なくとも1つの部分
を含むことができる。
【0018】
この明細書の文脈内では、用語、芳香族ニトロソ部分とは、少なくとも1つのニトロソ基を有する芳香族部分を意味する。同様に、用語、芳香族ニトロソ前駆体部分とは、少なくとも1つのニトロソ基を有する芳香族ニトロソ部分に転換されることができる任意の化合物を意味する。用語、芳香族は、縮合および非−縮合芳香族環の両方を含む。例えば、本発明に包含された縮合および非−縮合芳香族ニトロソ部分の非限定的な選択は、以下に列挙されている。
【0019】
【化1】

【0020】
当業者に理解されるように、上で開示されたニトロソ構造は、任意に例えば、C−C20アルキル、C−C20シクロアルキル、C−C20アルコキシ、C−C20アラルキル、C−C20アルカリール、C−C20アリールアミン、C−C20アリールニトロソ、シアノ、アミノ、ヒドロキシ、ハロゲンおよびこれらの組合せの少なくとも1つで1回以上置換されていてもよい。そのような置換は、前記組成物の有効な接合または硬化を妨害しない限り可能である。
【0021】
そのような化合物は、ゴム対金属接合の形成に役立つ。それらはゴムと金属の間の界面に容易に塗布され、硬化プロセスの間に強く耐久性のある接合を生み出すのに役立つ。
【0022】
そのように記載された化合物および配合物は、結果として多くの利点をもたらすことができる。例えば、1成分接着剤システムが形成されうる。そのようなシステムは、重宝で通常の技術、例えば、吹き付けまたは浸漬を用いて単一ステップで基体に容易に塗布される。そのように提供された化合物および配合物は、通常のジニトロソベンゼン配合物と比較して、毒性を低下しうる。また、そのように提供された化合物および配合物は、優れた接合強度を得ることができる。例えば、本発明の組成物の接合強度を決定するためのゴム対金属接合の試験において、85−100%のゴム破損を観察することができた。多くの実施例で、100%のゴム破損が認められた。さらに、本発明の硬化組成物は、耐高温水性および耐溶媒性を示す。ゴム破損は、接合が破損する前にゴムが破損することを意味する。すなわち、接合はゴム基体よりも強い。
【0023】
従来のシステムと対照的に、本発明の接着剤システムは、加硫および接合形成の前に未加硫ゴム(金属ではなく)に塗布することができ、その後の加硫によって接合が生じる。これは、この接着剤システムをゴムまたは金属基体のいずれかに塗布してもよいことを意味する。通常のシステムは、この方法で塗布された場合に接合を形成しない。
【0024】
前記芳香族ニトロソ前駆体部分は、任意の芳香族オキシム、芳香族ジオキシムおよびこれらの組合せを含むことができる。例えば、この芳香族ニトロソ前駆体部分は:
【0025】
【化2】

からなる群より選択される化合物のモノ−またはジオキシムであってよい。
【0026】
当業者によって分かるように、上に開示されたジケトン構造は、任意に、例えば、C−C20アルキル、C−C20シクロアルキル、C−C20アルコキシ、C−C20アラルキル、C−C20アルカリール、C−C20アリールアミン、C−C20アリールニトロソ、シアノ、アミノ、ヒドロキシ、ハロゲンおよびこれらの組合せの少なくとも1つで1回以上置換されてもよい。そのような置換は、前記組成物の有効な接合または硬化を妨害しない限り、例えば、イン・サイチューで芳香族ニトロソ化合物の生成を妨害しない限り可能である。
【0027】
本発明の化合物の芳香族ニトロソ部分は、ニトロソベンゼン部分を含んでいてよい。このニトロソベンゼン部分は、モノニトロソベンゼン、ジニトロソベンゼン、またはこれらの組合せであってもよい。同様に、本発明の組成物の芳香族ニトロソ前駆体部分は、ニトロソベンゼン部分前駆体を含んでいてもよい。このニトロソベンゼン前駆体は、モノニトロソベンゼン前駆体、ジニトロソベンゼン前駆体、またはこれらの組合せであってもよい。このニトロソベンゼン前駆体は、イン・サイチューでニトロソベンゼン構造を形成することが理解されよう。このニトロソベンゼン前駆体は、キノンジオキシムまたはキノンオキシムの少なくとも1つであってもよい。
そのような構造は、好ましい接合を形成するのに役立つことが判明した。
【0028】
当業者に理解されるように、ニトロソベンゼンおよびニトロソベンゼン前駆部分は、任意にC−C20アルキル、C−C20シクロアルキル、C−C20アルコキシ、C−C20アラルキル、C−C20アルカリール、C−C20アリールアミン、C−C20アリールニトロソ、シアノ、アミノ、ヒドロキシ、ハロゲンおよびこれらの組合せの少なくとも1つで1回以上置換されてもよいニトロソベンゼンおよびニトロソベンゼン前駆部分が挙げられる。そのような置換は、前記組成物の有効な接合または硬化を妨害しない限り可能である。例えば、イン・サイチューで芳香族ニトロソ化合物の生成を妨害しない限り可能である。
【0029】
前記シラン部分は、構造:
【0030】
【化3】

(構造中、’a’は1−3であってよく、および’b’は0−2であってよく;しかし、a=3の場合、b=0であり;またはa=2の場合、b=1であり;それによって少なくとも1つのアルコキシ基が存在し;
は、H、C−C24アルキル、C−C24アシルから、好ましくはC−Cアルキルからなる群より選択されてよく;ここで、a≧1の場合、少なくとも1つのRは水素ではなく;および
は、C−C24アルキルおよびC−C24アシルから、好ましくはC−Cアルキルから選択されてよい)
で表されるものであることができる。
【0031】
1つの実施形態では、aは3であり、およびRはC−C24アルキルである。RはC−Cアルキルであってよく、およびaは3であってよい。
【0032】
これらの化合物は、イソシアネートまたはイソチオシアネートと、活性水素化合物{例えば、−NH(ここで、x=1または2である)、−SH、または−OH}とから誘導された反応生成物であってよい。このようにして、従って前に記載された化合物は:
【0033】
【化4】

[構造中、XはSまたはOであってよく、Yとしては、−NH(ここで、x=1または2である)、−S、または−Oが挙げられる]
によって記載される少なくとも1つの連結を含んでいなければならない。
【0034】
これらの化合物に対する一般構造は下に示されており:
【0035】
【化5】

構造中、’a’は1−3であってよく、および’b’は0−2であってよく;しかし、a=3の場合、b=0であり;またはa=2の場合、b=1であり;それによって、少なくとも1つのアルコキシ基が存在し;
は、H、C−C24アルキル、C−C24から、好ましくはC−Cアルキルからなる群より選択されてよく、および、ここで、a≧1の場合、少なくとも1つのRは水素ではなく;および
は、C−C24アルキルおよびC−C24アシルから、好ましくはC−Cアルキルから選択されてよく;
nは1−5であってよく;
XはOまたはSであってよく;
Yは−O、−S、または−NHx(ここで、x=1または2である)であってよく;および
は、ニトロソベンゼン、キノンジオキシムまたはキノンオキシムを含む部分である。
【0036】
は、本明細書で定義されたニトロソ芳香族、またはニトロソ芳香族前駆体を含む部分であってもよい。
【0037】
は、C−C24アルキル、C−C24アシルからなる群より選択されてよい。Rは、C−C24アルキル、C−C24アシルからなる群より選択されてよく、および’a’は3であってよい。XはOであってもよい。YはOまたは−NH(ここで、x=1である)であってよい。Rは、C−Cアルキルから選択されてよく、XはOであってよく、および’a’は3であってよい。Rは、C−Cアルキルから選択されてよく、XはOであってよく、YはOであってよく、および’a’は3であってよい。Rは、C−Cアルキルから選択されてよく、XはOであってよく、Yは−NH(ここで、x=1である)であってよく、および’a’は3であってよい。Rは、C−Cアルキルから選択されてよく、XはOであってよく、YはOであってよく、’a’は3であってよく、およびRはニトロソベンゼンを含む部分であってよい。
【0038】
に対する構造としては(’Y’を介した連結を示す):
【0039】
【化6】

(構造中、Zは、上記構造の環が任意に、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アラルキル、アルカリール、アリールアミン、アリールニトロソ、アミノ、ヒドロキシ、ハロゲンおよびこれらの組合せからなる基で、モノ−、ジ−、トリ−またはテトラ置換されていてもよいことを示し、さらに構造中、前記置換基は、環の各炭素原子上で同じものであっても、異なったものでもよい)
を挙げることができる。そのような置換は、組成物の有効な接合または硬化を妨害しない限り可能である。例えば、イン・サイチューでニトロソベンゼン化合物の生成を妨害しない限り可能である。
【0040】
本発明の化合物は、一般構造:
【0041】
【化7】

(構造中、nは1−5であってよく;
’a’は1−3であってよく、および’b’は0−2であってよく;しかし、a=3の場合、bは0であり;またはa=2の場合、b=1であり;それによって、少なくとも1つのアルコキシ基が存在し;
は、H、C−C24アルキル、C−C24から、好ましくはC−Cアルキルからなる群より選択されてよく、および、ここで、a≧1の場合、少なくとも1つのRは水素ではなく;および
は、C−C24アルキルおよびC−C24アシルから、好ましくはC−Cアルキルから選択されてよい。XはOまたはSであってよく;Yは−O、−S、または−NH(ここで、x=1または2である)であってよい。)を有することができる。
【0042】
は、C−C24アルキル、C−C24アシルからなる群より選択されてよい。Rは、C−C24アルキル、C−C24アシルからなる群より選択されてよく、および’a’は3であってよい。XはOであってよい。YはOまたは−NH(ここで、x=1である)であってよい。Rは、C−Cアルキルから選択されてよく、XはOであってもよく、’a’は3である。Rは、C−Cアルキルから選択されてよく、XはOであってよく、YはOであってよく、および’a’は3であってよい。Rは、C−Cアルキルから選択されてもよく、XはOであってよく、Yは−NH(ここで、x=1である)であってよく、および’a’は3であってよい。Rは、C−Cアルキルから選択されてよく、XはOであってよく、YはOであってよく、nは3であってよく、および’a’は3であってよい。
【0043】
さらなる態様では、本発明は、
a)少なくとも1つのアルコキシシラン部分;および
b)芳香族ニトロソまたは芳香族ニトロソ前駆体およびこれらの組合せから選択される少なくとも1つの部分を含むモノマーから構成される、オリゴマーおよびコ−オリゴマー化合物を提供し、ここで、コ−オリゴマー化合物は異なったモノマーから構成される。
【0044】
前記オリゴマーおよびコ−オリゴマー化合物は、
a)少なくとも1つのアルコキシシラン部分;および
b)ニトロソベンゼンまたはニトロソベンゼン前駆体およびこれらの組合せから選択される少なくとも1つの部分を含むモノマーから構成されていてよい。
【0045】
そのようなオリゴマー状およびコ−オリゴマー状の化合物は、一般式:
【0046】
【化8】

[式中、mは1−100であってよく;nは1−5であってよく;pは1−5であってよく;qは0−50であってよく;およびq=0の場合、m≧2であり;
は、H、C−C24アルキル、C−C24アシルから、好ましくはC−C24アルキルからなる群より選択されてよく;
は、OR、C−C24アルキルおよびC−C24アシルからなる群より選択されてよく、および、ここで、R=ORの場合、少なくとも1つのRは水素ではなく;
は、アクリレート、アルデヒド、アミノ、無水物、アジド、マレイミド、カルボキシレート、スルホネート、エポキシド、エステル官能基、ハロゲン、ヒドロキシル、イソシアネートまたはブロック化イソシアネート、硫黄官能基、ビニルおよびオレフィン官能基、またはポリマー構造からなる群より選択されてよく;
XはOまたはSであってよく;
Yは−O、−S、または−NH(ここで、x=1または2である)であってよく;および
は、ニトロソベンゼン、キノンジオキシムまたはキノンオキシムを含む部分である]
で表される化合物であってよい。
【0047】
は、本明細書で定義されるニトロソ芳香族、またはニトロソ芳香族前駆体を含む部分であってもよい。
【0048】
は、C−C24アルキル、C−C24アシルからなる群より選択されてよい。Rは、C−C24アルキル、C−C24アシルからなる群より選択されてよく、およびRはORであってもよい。XはOであってよい。YはOまたは−NH(ここで、x=1である)であってよい。Rは、C−Cアルキルから選択されてよく、XはOであってよく、およびRはORであってよい。Rは、C−Cアルキルから選択されてよく、XはOであってよく、YはOであってよく、およびRはORであってよい。Rは、C−Cアルキルから選択されてよく、XはOであってよく、Yは−NH(ここで、x=1である)であってよく、およびRはORであってよい。Rは、C−Cアルキルから選択されてよく、XはOであってよく、YはOであってよく、nは3であってよく、RはORであってよく、およびRはニトロソベンゼンを含む部分であってよい。Rは、C−Cアルキルから選択されてよく、XはOであってよく、YはOであってよく、nは3であってよく、RはORであってよく、Rはニトロソベンゼンを含む部分であってよく、qは0であってよく、およびmは≧2であってよい。Rは、C−Cアルキルから選択されてよく、XはOであってもよく、YはOであってもよく、nは3であってもよく、RはORであってよく、Rはニトロソベンゼンを含む部分であってよく、qは0であってよく、mは≧2であってよく、およびRはビニルまたはエステルであってよい。
【0049】
本発明の化合物の具体例としては、下記の:
【0050】
【化9】

が挙げられる。
【0051】
(A)の合成のための反応スキームは、下に示されている(全ての化合物は、類似の方法で製造される)。
【0052】
【化10】

【0053】
金属対ゴム接合に適した組成物は、前に記載された1種以上の化合物の適当量を使用して配合されることが理解されよう。
【0054】
従って、また、
(i)a)少なくとも1つのアルコキシシラン部分;および
b)芳香族ニトロソまたは芳香族ニトロソ前駆体およびこれらの組合せから選択される少なくとも1つの部分
を含む少なくとも1種の化合物;および
(ii)前記化合物のための適した担体媒体(carrier vehicle)
を含む、基体を共に接合するための組成物が提供される。任意の適した担体媒体が使用されることが理解されよう。好ましくは、この担体媒体は環境に優しくなければならない。そのような組成物は、金属基体のような基体を天然または合成ゴムに接合するため使用するのに適している。
【0055】
基体を共に接合するための前記組成物は、
(i)a)少なくとも1つのアルコキシシラン部分;および
b)ニトロソベンゼンまたはニトロソベンゼン前駆体およびこれらの組合せから選択される少なくとも1つの部分
を含む少なくとも1種の化合物 ;および
(ii)前記化合物のための適した担体媒体
を含んでいてよい。
【0056】
前記少なくとも1つのアルコキシシラン部分および芳香族ニトロソまたは芳香族ニトロソ前駆体から選択される少なくとも1つの部分を含む化合物は、全組成物の1から20重量%の量で存在してよい。適切には、前記少なくとも1種の芳香族ニトロソ化合物前駆体は、1から15重量%、例えば、4から12重量%の量で存在してよい。この少なくとも1種の芳香族ニトロソ化合物前駆体は、全組成物の6重量%で存在してよい。
【0057】
本発明の組成物は、イン−サイチュで芳香族ニトロソ部分を形成するのが好ましいあらゆる用途において使用される。同様に、本発明の組成物は、イン−サイチュで芳香族ジニトロソ部分を形成するのが好ましいあらゆる用途において使用される。これらの組成物中で前記化合物をイン−サイチュで反応させてニトロソベンゼン部分を形成することができることが理解されよう。また、この化合物をイン−サイチュで反応させてジニトロソベンゼン部分を形成できることが意図される。例えば、特に良好な接合のためには、好ましくはパラ−ニトロソフェノール部分を形成するために化合物をイン−サイチュで反応させることが望ましい。
【0058】
本発明の組成物は、1パート(1液型)組成物であってもよい。本発明の組成物は、2パート(2液型)組成物であってもよい。
【0059】
また、前に記載された組成物を前記基体の少なくとも1つの接合表面に塗布するステップおよび前記基体の接合表面を一緒にするステップを含む、2つの基体を共に接合するプロセスも提供される。例えば、第1の基体は、他の基体に接合させるために天然または合成ゴムから構成されてよい。他のまたは第2の基体は金属基体であってよい。一般的に、前記化合物のアルコキシシラン部分は金属表面に固定されうる。芳香族ニトロソまたは芳香族ニトロソ前駆体から選択される部分は、一般にゴムに固定されるようになると考えられる。同様に、ニトロソベンゼンまたはニトロソベンゼン前駆体から選択される部分は、一般にゴムに固定されるようになると考えられる。従って、分子の各末端は官能基化され、強力で耐久性のある接合でもって材料を共に接合するのに役立つ。
【0060】
すなわち、接着剤組成物で覆われた金属上に未硬化状態のポリマー材料を塗布すること、およびこの金属にポリマー材料を接合させるために金属上のポリマー材料を硬化することによって、前に記載された接着剤組成物で覆われた金属は、例えば、ゴム組成物のようなポリマー材料に接着される。ゴムポリマー材料の場合は、この未硬化ゴムは、ゴムが硬化する時間に渡って、熱および圧力を介して加硫処理することができ、結果としてゴム対金属接合が生じる。
【0061】
そのような金属に対する接合は、ポリマー、特にアルケン/アリル官能基をポリマー鎖中に有するポリマーと反応させることができるニトロソ基によって達成される。例えば、ポリマー鎖中にジエンまたはアリル官能基を有するものである。そのような反応は、様々な架橋を、例えば、ニトロソ基とゴム材料の間で生成する。ニトロソ基は分子構造中に存在するので、本発明の材料は、フリーニトロソ基を減少すると考えられる。ニトロソおよびシランの反応では、ニトロソは天然ゴム内のアルケン官能基と反応し、一方、シランは金属と接合を形成する。
【0062】
ジニトロソベンゼンは、接着剤配合物において非常に有効な架橋剤として公知であり、高い恒久的強度および活性媒体に対する高い耐性によって特徴付けられる接合が生じることが多い。しかしながら、ジニトロソベンゼンのような未反応のフリーニトロソ材料は、その後の組成物の加熱処理のときに加硫を継続して引起すことができ、その結果、望まれていない接合の脆化が生じる。ジニトロソベンゼンの放出をもたらさない本発明の実施形態に対しては、ニトロソおよびシランの反応生成物はジニトロソベンゼンのようなフリーニトロソ材料を含んでおらず、すなわち、自由にさらなる加硫を引起こさないと考えられる事実から、最後の問題は緩和される。通常のシステムに付随する障害を低下することも重要である。
【0063】
シランの組合せを、本発明で採用してもよい。例えば、1種以上の追加シランが本発明の組成物内に含まれてもよい。これらのシランは、通常、次式:
【0064】
【化11】

[式中、nは1または2のいずれかであり;
Y=(2−n)であり;
各Rは、C−C24アルキルまたはC−C24アシルから選択されてよく;
各Rは、C−C30脂肪族基、置換C−C30芳香族基、または未置換C−C30芳香族基から選択されてよく;
は、水素、C−C10アルキレン、1つ以上のアミノ基で置換されたC−C10アルキレン、1つ以上のアミノ基で置換されたC−C10アルケニレン、C−C10アリーレン、またはC−C20アルキルアリーレンから選択されてよく;
Xは任意であり、かつ:
【0065】
【化12】

(ここで、
各Rは、水素、C−C30脂肪族基、またはC−C30芳香族基から選択されてよく;および
は、C−C30脂肪族基、またはC−C30芳香族基から選択されてよい)
のいずれかであり;および、
ここで、n=1の場合、前記Rおよび前記Rの少なくとも1つは水素ではない]で表される。
【0066】
1つの実施形態では、Xは存在する。理解されるように、Xが存在しない場合は、前記シランは一般式:
【0067】
【化13】

で表されてもよい。
【0068】
好ましいシランとしては、ビス−シリルシラン、例えば、2つの3置換シリル基を有するものが挙げられる。この置換基は、C−C20アルコキシ、C−C30アリールオキシおよびC−C30アシルオキシから個別に選択されてよい。本発明の範囲内で使用するのに適したビス−シリルシランとしては:
【0069】
【化14】

[式中、各Rは、C−C24アルキルまたはC−C24アシルから選択されてよく;
各Rは、C−C20脂肪族基、またはC−C30芳香族基からなる群より選択されてよく;
Xは任意であり、かつ:
【0070】
【化15】

(ここで、
各Rは、水素、C−C30脂肪族基、またはC−C30芳香族基から選択されてよく;および
は、C−C20脂肪族基、またはC−C30芳香族基から選択されてよい)
のいずれかである]
が挙げられる。
【0071】
1つの実施形態では、Xは存在する。理解されるように、Xが存在しない場合は、前記ビス−シランは一般式:
【0072】
【化16】

で表されてもよい。
【0073】
本発明に包含される一部のビス−シリルアミノシランの例としては:ビス−(トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス−(トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス−(トリエトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N−[2−(ビニルベンジルアミノ)エチル]−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、およびアミノエチル−アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。そのような追加のシランは、本発明の化合物に対して1:3から3:1の範囲で含まれていてもよい。そのような混合によって、優れたゴム対金属接合を生じさせることができる。
【0074】
特に、ニトロソシランに加えてアミノビス(プロピルトリメトキシシラン)を含めると、ゴム対金属接合の強度は著しく増強される。このアミノビス(プロピルトリメトキシシラン)は配合物内で複数の機能を有すると考えられる。これには、金属表面のフィルム形成の補助および「湿潤」などが含まれる。
【0075】
シランは、全組成物の1から10重量%の量で存在してよい。適切には、このシランは、1から5重量%の量、例えば、1から3重量%の量で存在してもよい。このシランは、全組成物の3重量%で存在してもよい。
【0076】
本発明と先行技術との有意な違いとして、本発明ではシランが「著しく、加水分解されていない」ものでありうることである、それらは加水分解されていない状態で使用されることを意味している。このことが生じるのは、材料をニート(生のまま)にておよび/またはいかなる水分も存在させずに塗布することができるからである。
【0077】
前記アミノシラン(単数または複数)およびニトロソシラン(単数または複数)は、最終シラン溶液を形成するために、独立して加水分解され、および/または混合されそして加水分解される。5%の水溶液は、通常、シランを有効に加水分解するのに十分である。あるいは、これらのシランは、加水分解を意図的に促進するための水を付加することなく、そのままの純粋の溶媒に添加されてもよい。
【0078】
一般的に、金属基体に塗布される最終シラン溶液は、シラン濃度および比(アミノシラン対ニトロソシラン)が広範囲で変わってもよく、それでも有利な結果をもたらすことができる。この最終溶液は、全シラン濃度(すなわち、最終溶液中のアミノシランおよびニトロソシランの組合せ濃度)が少なくとも約0.1体積%であるべきである。シラン濃度が約0.1%と約10体積%の間である溶液は、通常、高価なシランを無駄に消費せずに強い接合をもたらす。
【0079】
ポリマー材料、例えば、ゴム組成物と金属との間の優れた接着力は、前に記載された化合物および組成物の使用により、シラン溶液の無駄な消費を最小限にして実現されうる。それらの接着剤用途での使用に関して、本発明の組成物は、通常、ゴム対金属接合のための従来型接着剤システムに存在する組成物よりも粘度が低く、性能特性におけるいかなる損失もない。組成物の厚さは、ニトロソとシランとの反応生成物の濃度によって決定されてもよく、0.1から12μmの範囲、より好ましくは0.5から10μmの範囲にある。
【0080】
多くの異なった金属は、本発明に記載された組成物で処理されることができ、ポリマー材料に接合されることができる。これらの金属としては、これらに限定されるものではないが、亜鉛ならびに亜鉛−ニッケルおよび亜鉛−コバルト合金のような亜鉛合金、亜鉛−含有被膜を有する金属基体、スチールならびに特に冷延および炭素鋼板、アルミニウムおよびアルミニウム合金、銅および真鍮のような銅合金、ならびに錫および錫合金さらに錫−含有被膜を有する金属基体が挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0081】
(発明の詳細な説明)
【0082】
本発明に記載された方法を使ったゴム対金属接合にかかわるゴム組成物は、さらにゴム組成物に共通する他の公知の添加物を含んでいてもよい。これらとしては、強化カーボンブラック;炭酸カルシウム、白墨、タルク、または金属酸化物のような不活性フィラー;促進剤システム;加硫遅延剤;酸化亜鉛またはステアリン酸のような促進剤;芳香族系、パラフィン系、ナフテン系および合成鉱油のような可塑剤;劣化、光−防護、オゾン−防護、疲労、着色および加工補助剤;および硫黄が挙げられる。通常、これらの添加物は、ゴム組成物の重量で100部当たり約0.1から約80部の量で存在してもよい。
【0083】
加水分解、シラノール基(すなわち、SiOH)の形成は、通常、pHが3−7の範囲で有効に起こりうる。この範囲よりも上または下では、シラノールが自己−縮合してシロキサンを形成するプロセスによってシランの縮合が起こりうる。このプロセスの間に隣接する分子のヒドロキシル分子が互いに反応し、水分子を脱離して−Si−O−Si−O−Si−官能基を含有する架橋シロキサン構造を形成する。
【0084】
加水分解ステップの間、シラン加水分解を加速し、かつシラン縮合を抑制するために、シラン溶液のpHは約7より低く、好ましくは約4から6.5の緩やかに酸性範囲で維持されてもよい(特に、ビス−シリルアミノシランの加水分解に対しては)。これは、1種以上のより相溶性のある酸の添加によって達成されうる。酢酸、シュウ酸、蟻酸、プロピオン酸のような有機酸は、pHを調節するために加水分解溶液に添加されてもよい。また、水酸化ナトリウム、または他の相溶性のある塩基は、必要な場合、シラン溶液のpHを上げるために使用されてもよい。一部のシランは、水と混合された場合、緩やかに酸性pH溶液を与え、加水分解を加速するためのpH調節が必要でないこともある。シラン−加水分解溶液を製造することに関して、上記考察されたpH範囲は、金属基体に塗布される最終シラン溶液のpHと混同されてはいけない。
【0085】
加水分解シラン溶液は、さらに、1種以上の相溶性溶媒を含んでいてもよい。アルコールがシランの可溶化および加水分解のために通常使用される。適したアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、およびもっと長鎖の脂肪族アルコールが挙げられ、これらに限定されることはない。加水分解されたシラン溶液での溶媒に対する水の比(金属基体に塗布されるとき、体積基準で)は、約1:99から約99:1の間、好ましくは1:1から1:20の間であってもよい。
【0086】
前記シラン溶液を塗布する前に、被覆される金属表面は、より優れた接着を可能にするために洗浄されてもよい。例えば、溶媒またはアルカリ材料での洗浄である。次いで塗布は様々な方法によって実施され、例えば金属上へ溶液を浸漬塗り、吹き付け塗り、はけ塗りまたは拭き塗りなどする。ゴム接着力を改善するために、被膜は加硫の前に部分的に架橋されていることが提案されてきた。このために、通常、被膜は室温で空気乾燥される。なぜなら、加熱乾燥は過度の架橋を起こすことができ、それはゴムと金属表面との間の接着力が劣ることになりうる。
【0087】
本発明の化合物は、下に説明するように製造された:
【実施例】
【0088】
化合物A、B、CおよびD(上の)を、下記の実験手順に従い、上の反応スキームで例示されている通り合成した。
【0089】
反応(1)(上記参照)を、 J.J.D’Amico、C.C.TungおよびL.A.WalkerらのJ.Am.Chem.Soc.,5957(1959)に概要が説明されている通り実施した。
【0090】
反応(2):γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン(GE Bayerシリコーン A−1310)(2.35g、9.5mmol)を50mLの丸底フラスコ中の10mLの無水THFに溶解した。この反応フラスコを窒素で置換し、N,N−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−4−ニトロソ−アニリン(2g、9.5mmol)を加え、その後、触媒量のジブチルスズジラウレート(1.5μmol)を加えた。この反応液をさらに2時間窒素下で還流した。イソシアネート(2275cm−1)の消費を赤外線分光法でモニターした。溶媒を減圧下で除去し、生成物を定量的収率で得た。
【0091】
【化17】

【0092】
反応3:γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン(ABCR GmbH)(1.5g、7.3mmol)を50mLの丸底フラスコ中の8mLの無水THFに溶解した。この反応フラスコを窒素で置換し、N,N−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−4−ニトロソ−アニリン(1.53g、7.3mmol)を加え、その後、触媒量のジブチルスズジラウレート(1μmol)を加えた。この反応液をさらに2時間窒素下で還流した。イソシアネート(2275cm−1)の消費を赤外線分光法でモニターした。溶媒を減圧下で除去し、生成物を定量的収率で得た。
【0093】
【化18】

【0094】
反応4:γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン(GE Bayerシリコーン A−1310)(2.35g、9.5mmol)を50mLの丸底フラスコ中の10mLの無水THFに溶解した。この反応フラスコを窒素で置換し、N,N−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−4−ニトロソ−アニリン(1g、4.75mmol)を加え、その後、触媒量のジブチルスズジラウレート(1.5μmol)を加えた。この反応液をさらに5時間窒素下で還流した。イソシアネート(2275cm−1)の消費を赤外線分光法でモニターした。溶媒を減圧下で除去し、生成物を定量的収率で得た。
【0095】
【化19】

【0096】
反応5:γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン(GE Bayerシリコーン A−1310)(10.68g、43.18mmol)を100mLの丸底フラスコ中の30mLの無水THFに溶解した。この反応フラスコを窒素で置換し、P−ベンゾキノンジオキシム(Sigma−Aldrich)(3g、21.72mmol)を加え、その後、触媒量のジブチルスズジラウレートを加えた。この反応液をさらに5時間窒素下で還流した。イソシアネート(2275cm−1)の消費を赤外線分光法でモニターした。溶媒を減圧下で除去し、生成物を定量的収率で得た。
【0097】
本発明の化合物を含む配合物を、下に詳しく説明しているように製造した。ここで、化合物AからCは、上の「本発明の概要」で詳しく説明している通りの本発明の化合物である。化合物Eは、Sigma Aldrichから市販品が入手可能なビス(トリメトキシシリルプロピル)アミンである。化合物Eは、式:
【0098】
【化20】

を有する。
【0099】
天然ゴム組成物
下記の組成の天然ゴムを使用して試験を実施した:
【0100】
【表1】

【0101】
EPDMゴム組成物
下記の組成のEPDMゴムを使用して試験を実施した:
【0102】
【表2】

【0103】
天然ゴム対金属接合に使用の組成物
【0104】
【表3】

【0105】
EPDMゴム対金属接合で使用した組成物
【0106】
【表4】

【0107】
試験
【0108】
金属表面へのゴムの接合において、本発明の接着剤システムの効果を評価するために、角度45°に調節されたASTM 429−B標準に従って一連の試験を実施した。金属基体[2.54cm(1インチ)幅、10.16cm(4インチ)長さのパネルまたは切取り試片]を接着剤で被覆し、加硫プロセスで天然ゴムに接着した。この天然ゴム組成物は、配合表で説明した通り硫黄−硬化組成物である。
【0109】
前記金属基体を、自動水溶性アルカリ洗浄剤中で超音波処理で洗浄し、脱イオン水で濯ぎ、ドライヤーを使って高温の空気で乾燥した。また、この基体を適した研磨剤を使ってグリットブラスト処理を行なってもよい。
【0110】
接着剤を塗布する前に、金属の切取り試片の両末端上に2.54cm(1インチ)長さで2.54cm(1インチ)幅をマスクすることでその領域をゴムとの接合に利用できなくし、2.54cm(1インチ)幅で5.08cm(2インチ)長さの中心領域をゴムとの接合に利用できるように残した。
【0111】
本発明の接合する操作では、好ましくは基体を洗浄してから、確実に均一に被覆するために、浸漬、吹き付けまたははけ塗り方法のいずれかで金属基体に組成物を塗布する。
【0112】
環境条件下、すなわち室温で乾燥を実施してもよい。加熱、強制空気または両方によって、溶媒蒸発速度を高めることができる。
【0113】
次いで、未硬化ゴム層を各切取り試片上に配置し、ゴムの硬化プロファイルによって特定されている時間の間、標準油圧加硫プレス内で硬化させた。本発明の接合プロセスにおいて天然ゴムを使用する場合、接合する表面と接着剤を確実に密接に接触させるために、このゴムを20−30トンの圧力下、150℃で20分間硬化した。
【0114】
硬化の後、試験に掛けて裂け目パターンを検証する前に、接合試料を室温で24時間熟成した。Instron試験装置(Instron 試験機、モデルNo.5500R)を使用して、角度45°修正したASTM 429−B標準によって、分当り50mmの定常の荷重速度で分離が完結するまで、各試料を試験した。
【0115】
「ゴム被覆率」は、剥離試験の後、接合した金属基体上に残っているゴム%である。100%ゴム破損は、金属表面から剥離しているゴム部分がないほどにゴムが完全に破損したことを意味する(100%ゴム破損と一致する)。
【0116】
通常、金属対ゴム接合が破損する前に、ゴム基体が破損することが好ましい。この結果を、上で詳しく説明した通りの特定の配合物で得る。
【0117】
本発明に関して本明細書で使用される場合、用語「を含む/を含んでいる」および用語「を有する/を含んでいる」は、述べられた特徴、整数、ステップまたは成分の存在を特定化するために使用され、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、成分、またはこれらの群の存在または追加は除外されない。
【0118】
また、本発明のいくつかの特徴は明確にするために別々の実施形態との関連で記載されているが、単一の実施形態において組合せで提供されてもよいことが理解される。また、逆に、簡潔さのために単一の実施形態との関連で記載されている本発明の様々な特徴は、別々にまたは任意の適した準組合せで提供されてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1つのアルコキシシラン部分;および
(b)芳香族ニトロソまたは芳香族ニトロソ前駆体およびこれらの組合せから選択される少なくとも1つの部分
を含む、化合物。
【請求項2】
a)少なくとも1つのアルコキシシラン部分;および
b)ニトロソベンゼンまたはニトロソベンゼン前駆体およびこれらの組合せから選択される少なくとも1つの部分
を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記ニトロソベンゼン前駆体が、キノンジオキシムまたはキノンオキシムの少なくとも1つである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
前記アルコキシシラン部分が以下の構造:
【化1】

(式中、’a’は1−3であってもよく、および’b’は0−2であってもよく;しかし、a=3の場合、b=0であり;またはa=2の場合、b=1であり;そのために少なくとも1つのアルコキシ基が存在し;
は、H、C−C24アルキル、C−C24アシルから、好ましくはC−Cアルキルからなる群より選択されてもよく、および、ここで、a≧1の場合、少なくとも1つのRは水素ではなく;
は、C−C24アルキルおよびC−C24アシルから、好ましくはC−Cアルキルから選択されてもよい。)
で表される、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項5】
前記化合物が、イソシアネートまたはイソチオシアネートと活性水素化合物との反応生成物の形態を取る、任意の先行する請求項に記載の化合物。
【請求項6】
一般構造:
【化2】

[式中、nは1−5であってもよく;’a’は1−3であってもよく、および’b’は0−2であってもよく;しかし、a=3の場合、b=0であり;またはa=2の場合、b=1であり;それによって、少なくとも1つのアルコキシ基が存在し;
は、H、C−C24アルキル、C−C24アシルから、好ましくはC−Cアルキルからなる群より選択されてもよく、および、ここで、a≧1の場合、少なくとも1つのRは水素ではなく;
は、C−C24アルキルおよびC−C24アシルから、好ましくはC−Cアルキルから選択されてもよく;
XはOまたはSであってもよく;
Yは、−O、−S、または−N(R)であってもよく;および
は、ニトロソベンゼン、キノンジオキシムまたはキノンオキシムを含む部分である]
によって包含される、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
前記式中、Rが、ニトロソ芳香族、またはニトロソ芳香族前駆体を含む部分である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
(Yによる連結を示す)が:
【化3】

(式中、Zは、上の構造の環が、任意に、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アラルキル、アルカリール、アリールアミン、アリールニトロソ、アミノ、ヒドロキシ、ハロゲンおよびこれらの組合せからなる群でモノ−、ジ−、トリ−またはテトラ置換されていてもよいことを示し、および、さらにここで、前記置換基は前記環の各炭素原子上で同じであっても、または異なっていてもよい)
を含む群より選択される、請求項6に記載の化合物。
【請求項9】
一般構造:
【化4】

(式中、nは1−5であってもよく;
’a’は1−3であってもよく、および’b’は0−2であってもよく;しかし、a=3の場合、b=0であり;またはa=2の場合、b=1であり;それによって、少なくとも1つのアルコキシ基が存在し;
は、H、C−C24アルキル、C−C24アシルから、好ましくはC−Cアルキルからなる群より選択されてもよく、および、ここで、a≧1の場合、少なくとも1つのRは水素ではなく;
は、C−C24アルキルおよびC−C24アシルから、好ましくはC−Cアルキルから選択されてもよく;
XはOまたはSであってもよく;
Yは、−O、−S、または−NHxであってもよく、ここで、x=は1または2である)
で表される、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
請求項1に記載の化合物のオリゴマーまたはコ−オリゴマー。
【請求項11】
一般構造式:
【化5】

[式中、mは1−100であってもよく;nは1−5であってもよく;pは1−5であってもよく;qは0−50であってもよく;およびq=0の場合、m≧2であり;
は、H、C−C24アルキル、C−C24アシルから、好ましくはC−Cアルキルからなる群より選択されてもよく;
は、OR、C−C24アルキルおよびC−C24アシルからなる群より選択されてもよく、および、ここで、R=ORの場合、少なくとも1つのRは水素でなく;
は、アクリレート、アルデヒド、アミノ、無水物、アジド、マレイミド、カルボキシレート、スルホネート、エポキシド、エステル官能基、ハロゲン、ヒドロキシル、イソシアネートまたはブロック化イソシアネート、硫黄官能基、ビニルおよびオレフィン官能基、またはポリマー状構造
からなる群より選択されてもよく;
XはOまたはSであってもよく;
Yは−O、−S、または−NHx(ここで、xは1または2)であってもよく;および
は、ニトロソベンゼン、キノンジオキシムまたはキノンオキシムを含む部分である]
を有する、請求項10に記載のオリゴマーまたはコ−オリゴマー。
【請求項12】
前記式中、Rが、ニトロソ芳香族、またはニトロソ芳香族前駆体を含む部分である、請求項11に記載のオリゴマーまたはコ−オリゴマー。
【請求項13】
i)a)少なくとも1つのアルコキシシラン部分;
b)芳香族ニトロソまたは芳香族ニトロソ前駆体およびこれらの組合せから選択される少なくとも1つの部分を含む少なくとも1種の化合物;および
ii)前記化合物のための適した担体媒体を含む、基体を共に接合するための組成物。
【請求項14】
i)a)少なくとも1つのアルコキシシラン部分;
b)ニトロソベンゼンまたはニトロソベンゼン前駆体およびこれらの組合せから選択される少なくとも1つの部分を含む少なくとも1種の化合物;および
ii)前記化合物のための適した担体媒体を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
基体を天然または合成ゴムに接合するために使用される、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
金属を天然または合成ゴムに接合するために使用される、請求項13に記載の組成物。
【請求項17】
前記化合物が、ニトロソベンゼン部分、ジニトロソベンゼン部分、またはパラ−ニトロソフェノール部分の1つを形成するためにイン−サイチュで反応することができる、請求項13に記載の組成物。
【請求項18】
さらにシランを含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項19】
前記シランは、アミノシランである、請求項19に記載の組成物。
【請求項20】
2つの基体を共に接合するための方法であって、
a)少なくとも1つのアルコキシシラン部分;および
b)芳香族ニトロソまたは芳香族ニトロソ前駆体およびこれらの組合せから選択される少なくとも1つの部分を含む組成物を、前記基体の少なくとも1つに塗布するステップ、および前記基体を一緒に合わせるステップを含む、方法。
【請求項21】
a)少なくとも1つのアルコキシシラン部分;および
b)ニトロソベンゼンまたはニトロソベンゼン前駆体およびこれらの組合せから選択される少なくとも1つの部分を含む組成物を、前記基体の少なくとも1つに塗布するステップ、および前記基体を一緒に合わせるステップを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
第1の基体が、他の基体に接合される天然または合成ゴムを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
第1の基体が、第2の基体に接合される天然または合成ゴムを含み、かつ前記第2の基体が金属基体である、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
ニトロソベンゼンまたはニトロソベンゼン前駆体から選択される前記部分が、前記ゴムに固定されることになる、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記ゴム基体が、前記金属表面に接合する前に加硫処理または架橋される、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記ゴムが、前記金属表面に接合すると共に加硫処理または架橋される、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
少なくとも1つのアルコキシシラン部分;および
芳香族ニトロソまたは芳香族ニトロソ前駆体およびこれらの組合せから選択される少なくとも1つの部分を含む接着剤組成物によって共に接合した、少なくとも2つの基体の組合せ。
【請求項28】
前記接着剤組成物が、少なくとも1つのアルコキシシラン部分;および
ニトロソベンゼンまたはニトロソベンゼン前駆体およびこれらの組合せから選択される少なくとも1つの部分を含む請求項27に記載の接着剤組成物によって共に接合した、少なくとも2つの基体の組合せ。
【請求項29】
基体と、
少なくとも1つのアルコキシシラン部分;および
芳香族ニトロソまたは芳香族ニトロソ前駆体およびこれらの組合せから選択される少なくとも1つの部分を含む組成物と
を含む硬化生成物。

【公表番号】特表2011−517671(P2011−517671A)
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501175(P2011−501175)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【国際出願番号】PCT/EP2009/053098
【国際公開番号】WO2009/118255
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(501194879)ロックタイト (アール アンド ディー) リミテッド (25)
【氏名又は名称原語表記】LOCTITE (R & D) LIMITED
【Fターム(参考)】