説明

ポリマーの製造方法、電極のコーティング並びに関連ポリマー及び電極

2以上のアミド基を含むモノマーと、以下の式(a)のモノマーと、スルホン酸又は塩モノマーとを共重合することを含む方法を提供する。
【化1】


式中、R1はCH3又はHである。前記方法で製造されたポリマーを提供する。電極を準備し、ラジカル開始剤、2以上のアミド基を含むモノマー、以下の式(a)のモノマー及びスルホン酸又は塩モノマーの溶液を準備し、電極を前記溶液で濡らし、濡らした電極を加熱して、2以上のアミド基を含むモノマー、式(a)のモノマーと、スルホン酸又は塩モノマーとを共重合することを含む、電極の被覆方法を提供する。前記方法で被覆された電極を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーの製造方法、電極のコーティング並びに関連ポリマー及び電極に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン交換ポリマーは、多くの用途で、例えば、イオン分離プロセス用のイオン交換膜又はコーティングを製造する際に有用である。イオン交換ポリマーを製造するための一般的な技術は、非イオン性で非水溶性のジエチレン性架橋剤、例えばジビニルベンゼンを、ジエチルベンゼンのような非水性溶媒中でスチレンのようなモノマーと重合させることを含んでいる。得られる固体の、例えばシート又は膜形態のポリマーを、平衡化、すなわち二塩化エチレンのような溶媒で数回洗浄してジエチルベンゼン溶媒を除去し置換する。陽イオン交換膜が所望の場合には、膜を三酸化イオウ及び二塩化エチレンの溶液と反応させてスルホン酸基を形成する。このスルホン酸基をメタノールで洗浄し重炭酸ナトリウムで中和するとポリマーは強塩基性のイオン交換特性を示す。水不溶性モノマー及び重合反応並びにその後非水性溶媒中で行われる反応により、有機溶媒の損失を伴う化学薬品の処分の問題が生じる。
【0003】
上述の問題を克服するために水性溶媒系で重合可能な水溶性架橋剤が開発されている。ポリマーの架橋は2つのモノマーの縮合反応によって起こり、重合と同時に行われ、従ってジエチレン性モノマーは必要とされない。同時に、石油に由来する溶媒の費用及びその処分の問題がなくなる。
【0004】
しかしながら、現在入手可能な水溶性架橋剤は殆どが高価であり、環境に優しくない。一方、幾つかの用途では、例えばスーパーキャパシター電極では、低い抵抗、低い膨潤比及び良好なコーティング形態学を有し、かつエネルギー消費を低下させ電極の電流効率を増大するために被覆することができるポリマーが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5264249号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、水溶性で安くて環境に優しい材料から低い膨潤比のポリマーを製造する方法、及びそのポリマーで電極を被覆して抵抗を低減すると共にその電極の電流効率を増大する方法があれば望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に記載した実施形態では、2以上のアミド基を含むモノマー、以下の式(a)のモノマーと、スルホン酸又は塩モノマーとを共重合することを含んでなる方法を提供する。
【0008】
【化1】

式中、R1はCH3又はHである。
【0009】
本明細書に記載した実施形態では、上記方法で製造されたポリマー及びそのポリマーを含んでなる膜も提供される。
【0010】
本明細書に記載した実施形態では、電極の被覆方法であって、電極を準備し、フリーラジカル開始剤と、2以上のアミド基を含むモノマーと、以下の式(a)のモノマーと、スルホン酸又は塩モノマーとの溶液を準備し、その溶液で電極を濡らし、濡らした電極を加熱して、2以上のアミド基を含むモノマーと、以下の式(a)のモノマーと、スルホン酸又は塩モノマーとが共重合することを含む方法を提供する。
【0011】
【化2】

式中、R1はCH3又はHである。
【0012】
本明細書に記載した実施形態では、上記方法で被覆された電極を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書及び特許請求の範囲を通じて本発明に関連して使用する場合、概算を示す言語は、関連する基本的な機能に変化を来すことなく変わることが許され得るあらゆる定量的表示を修飾するために適用し得る。従って、「約」又は「実質的に」のような用語により修飾された値は特定された明確な値に限定されない。場合によっては、概算を示す言語はその値を測定するための機器の精度に相当し得る。
【0014】
本明細書に記載した実施形態では、2以上のアミド基を含むモノマーと、以下の式(a)のモノマーと、スルホン酸又は塩モノマーとを共重合することを含んでなる方法を提供する。
【0015】
【化3】

式中、R1はCH3又はHである。
【0016】
別の態様では、前記方法で製造されたポリマー、及びそのポリマーを含んでなる膜を提供する。
【0017】
本明細書に記載した実施形態では、電極を被覆する方法であって、電極を準備し、ラジカル開始剤、2以上のアミド基を含むモノマー、以下の式(a)のモノマー及びスルホン酸又は塩モノマーの溶液を準備し、その溶液で電極を濡らし、濡らした電極を加熱することを含んでなり、それにより2以上のアミド基を含むモノマーと、以下の式(a)のモノマーと、スルホン酸又は塩モノマーとが共重合する方法を提供する。
【0018】
【化4】

式中、R1はCH3又はHである。
【0019】
本明細書に記載した実施形態では、上記方法で被覆された電極を提供する。
【0020】
式(a)の適切なモノマー単位は、例えば、ラジカル重合することができ、N−メチロール基(−NH−CH2OH)又はそのエーテル化誘導体(−NH−CH2OR、ここでR=C1〜C6アルキルである)を含有する水溶性のエチレン性不飽和化合物である。好ましいモノマー単位はN−メチロールアクリルアミド(N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、NMA)、N−メチロールメタクリルアミド(NMMA)、N−(イソブトキシメチル)−アクリルアミド(IBMA)、N−(イソブトキシメチル)−メタクリルアミド及びN−(n−ブトキシメチル)−アクリルアミド(NBMA)である。特に好ましいモノマー単位はN−メチロールアクリルアミド及びN−(イソブトキシメチル)−アクリルアミドである。
【0021】
幾つかの実施形態では、スルホン酸又は塩モノマーは次式(b)のものである。
【0022】
【化5】

式中、R2はCH3又はHであり、XはNH又はOであり、Yはアルキルである。適切なスルホン酸又は塩モノマーは、例えば、ラジカル重合することができ、スルホン酸又はスルホン酸塩基−SO3Mを含有する水溶性のエチレン性不飽和化合物である。ここで、M=H又はアルカリ金属、アンモニウム若しくはアルカリ土類金属イオンである。好ましいモノマー単位は、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホアルキル(メタ)−アクリレート、スルホアルキルイタコネート(好ましくは各々の場合にC1〜C6アルキル基を有する)、及びビニルスルホン酸並びにこれらのアンモニウム、アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩である。特に好ましいモノマー単位は2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、p−スチレンスルホン酸、スルホプロピルアクリレート、スルホプロピルイタコネート及びビニルスルホン酸並びにこれらのアンモニウム、ナトリウム、カリウム及びカルシウム塩である。
【0023】
本明細書で使用する場合、用語「アルキル」は飽和の炭化水素基を指す。適切なアルキル基の例には、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘプチル、iso−ブチル、t−ブチル、及びiso−ペンチルが含まれる。
【0024】
幾つかの実施形態では、2以上のアミド基を含むモノマーはカルボニルジアミン及び次式(c)の化合物から選択される。
【0025】
【化6】

式中、R3はNH、脂肪族基又はエーテル単位である。
【0026】
本明細書で使用する場合、用語「脂肪族基」は、環状ではない線状又は枝分れ原子配列からなる1以上の原子価を有する有機基を指す。脂肪族基は炭素原子数1以上のものと定義される。脂肪族基を含む原子配列は窒素、イオウ、ケイ素、セレン及び酸素のようなヘテロ原子を含んでいてもよいし、又は炭素と水素のみから構成されていてもよい。便宜上、用語「脂肪族基」は、本明細書では、「環状ではない線状又は枝分れ原子配列」の一部として、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えばエステル及びアミドのようなカルボン酸誘導体)、アミン基、ニトロ基などの広範囲の官能基で置換された有機基を包含するものとして定義される。例えば、4−メチルペント−1−イル基はメチル基を含むC6脂肪族基であり、このメチル基はアルキル基という官能基である。同様に、4−ニトロブト−1−イル基はニトロ基を含むC4脂肪族基であり、このニトロ基は官能基である。脂肪族基は、同一又は異なる1以上のハロゲン原子を含むハロアルキル基であってもよい。ハロゲン原子には、例えばフッ素、塩素、臭素、及びヨウ素が含まれる。1以上のハロゲン原子を含む脂肪族基には、アルキルハライド、トリフルオロメチル、ブロモジフルオロメチル、クロロジフルオロメチル、ヘキサフルオロイソプロピリデン、クロロメチル、ジフルオロビニリデン、トリクロロメチル、ブロモジクロロメチル、ブロモエチル、2−ブロモトリメチレン(例えば−CH2CHBrCH2−)などが含まれる。脂肪族基の別の例として、アリル、アミノカルボニル(すなわち、−CONH2)、カルボニル、2,2−ジシアノイソプロピリデン(すなわち、−CH2C(CN)2CH2−)、メチル(すなわち、−CH3)、メチレン(すなわち、−CH2−)、エチル、エチレン、ホルミル(すなわち−CHO)、ヘキシル、ヘキサメチレン、ヒドロキシメチル(すなわち−CH2OH)、メルカプトメチル(すなわち、−CH2SH)、メチルチオ(すなわち、−SCH3)、メチルチオメチル(すなわち、−CH2SCH3)、メトキシ、メトキシカルボニル(すなわち、CH3OCO−)、ニトロメチル(すなわち、−CH2NO2)、チオカルボニル、トリメチルシリル(すなわち、(CH33Si−)、t−ブチルジメチルシリル、3−トリメトキシシリルプロピル(すなわち、(CH3O)3SiCH2CH2CH2−)、ビニル、ビニリデンなどがある。さらに別の例として、C1〜C10脂肪族基は炭素原子数1以上10以下のものである。メチル基(すなわち、CH3−)はC1脂肪族基の一例である。デシル基(すなわち、CH3(CH29−)はC10脂肪族基の一例である。
【0027】
本明細書で使用する場合、用語「エーテル単位」とは、酸素と結合した置換又は非置換のアルキレン部分をいい、一般に式−C(R42−C(R42−O−に対応する。式中のR4は各々別々に水素、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、C1-20ヒドロカルビル基又は1以上の以下の基で置換されたC1-20ヒドロカルビル基である。ハロ、シアノ、ニトロ、チオアルキル、tert−アミノ、アルコキシ、アリールオキシ、アラルコキシ、カルボニルジオキシアルキル、カルボニルジオキシアリール、カルボニルジオキシアラルキル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アラルコキシカルボニル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アラルキルカルボニル、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、アラルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、又はアラルキルスルホニル基。
【0028】
本明細書で使用する場合、用語「アミド基」は−R5CONH2基をいい、ここでR5は水素又はアルキルである。
【0029】
幾つかの実施形態では、2以上のアミド基を含むモノマーはビウレット及びスクシンアミドから選択される。
【0030】
ここで水溶性とは、一般に、23℃の水に対する溶解度が少なくとも10重量%であることを意味する。
【0031】
本発明によるコポリマーの製造は、好ましくは40℃〜80℃の反応温度における水溶液中でラジカル重合によって行うのが好ましい。重合は、初めに反応混合物の全て又は個々の構成成分を反応容器に導入するか、又は最初に成分の一部を導入し、その後反応混合物の構成成分又は個々の構成成分を添加することによって行うことができる。
【0032】
重合開始はフリーラジカルを形成する慣用の水溶性物質によって行われ、この水溶性物質はモノマーの総重量に基づいて0.01〜3.0重量%の量で使用するのが好ましい。これらの例は、過硫酸アンモニウム及びカリウム、2,2’−(アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、過酸化水素、並びにペルオキソ二リン酸カリウム、ナトリウム及びアンモニウムである。適切であれば、上記ラジカル開始剤はまた、公知の方法でモノマーの総重量に基づいて0.01〜1.0重量%の還元剤とも組み合わされ、この場合重合をより低い温度で行うことが可能である。例えば、アルカリ金属ホルムアルデヒドスルホキシル酸塩及びアスコルビン酸が適している。
【実施例】
【0033】
当業者に本発明を実施する際の追加の指針を提供するために以下の実施例を例示する。従って、これらの実施例は後記特許請求の範囲に定義される本発明を限定することはない。
【0034】
モノマー溶液の調製
2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸(20g、Sigma−Aldrich(登録商標)から入手)、28gのN−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド及び8.3gの尿素(カルボニルジアミン)を、強く掻き混ぜながら44gの脱イオン水と共に混合した。モノマーがよく溶けた後、1gの2,2’−(アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩を溶液中に加え、2,2’−(アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩が溶解するまで溶液を撹拌した。
【0035】
2,2’−(アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩はSigma−Aldrich(登録商標)から入手した。N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミドと尿素はSinopharm Chemical Reagent Co,Ltd.,Shanghai,Chinaから入手した。
【0036】
電極の被覆
カレンダー加工した活性炭シートをTiメッシュ上にプレスすることにより調製され、2枚のポリ(エチレンテレフタレート)(PET)フィルム(16cm×32cm)の間にサンドイッチ状に挟まれた炭素電極(16cm×32cm×1.0mm)を、熱可塑性プラスチック袋中にシールしたが、熱可塑性プラスチック袋上の3つの小さい開口(直径10mm)は開放されたままにしておいた。調製された溶液を開口を通して熱可塑性プラスチック袋に添加した。次いで、熱可塑性プラスチック袋全体を2枚のガラスプレート(24cm×40cm)の間に挟み、U字型のゴムガスケット(17cm×34cm)を熱可塑性プラスチック袋とガラスプレートとの間に配置して、電極表面全体を確実に溶液中に浸した。こうして組み立てたアセンブリを真空キャビネット中に入れ、6分間脱ガスして溶液による電極の湿潤を促進した。その後、アセンブリを真空キャビネットから取り出し、U字型ガスケットを取り外した。過剰の溶液を熱可塑性プラスチック袋から押し出し、クランプを用いて2枚のガラスプレートを互いに対して締め付けた。この新しいアセンブリを80℃のオーブン中に2.5時間入れた。
【0037】
新しいアセンブリが冷えた後、この被覆された電極を取り出し、その厚さを測定したところ、被覆されてない裸電極の1.0mmに対して1.1mmであった。幾つかの乾燥ポリマースクラップ試料を熱可塑性プラスチック袋から採り、ポリマーの膨潤比と−SO3-密度を試験した。電極の抵抗と電流効率を組み立てたセルで試験した。
【0038】
膨潤比
乾燥ポリマー試料(0.327g)を小さいボトル中に入れ、1.129gの蒸留水をこのボトルに加えた。24時間後、膨潤した試料を低磁場NMRで試験した。2種類のプロトンシグナルが低磁場NMRスペクトルに見られた。1つは吸着した水(膨潤した水)であり、他方は遊離の水である。遊離の水シグナルは遊離の水プロトン強度と直線関係があり、すなわち、水で飽和したポリマー試料の水の総量を変化させることにより、対応する遊離の水シグナル強度の変化を得た。こうして、遊離の水の量と遊離の水プロトン強度の回帰関数を得た。遊離の水の量は遊離の水プロトン強度から回帰関数によって0.669gと計算された。吸着した水の量は、吸着水=合計水−遊離水=1.129g−0.669g=0.46gと計算された。膨潤比(重量)=(吸着水/乾燥ポリマー)×100%=0.46/0.327×100%=140%。
【0039】
−SO3-密度
乾燥ポリマー(1.32g)をHCl溶液(200ml、1N)に24時間浸した。この浸したポリマーを脱イオン水でろ液が中性になるまで濯いだ。次に、ポリマーをNaCl溶液(100ml、1N)中に入れ、24時間平衡化させた。平衡化した溶液10mlを取り出し、この10mlの平衡化した溶液をNaOH溶液(0.01N)で滴定した。−SO3-密度=DVNaOH×0.01N×10/乾燥ポリマー=(23.5×0.01×10)/1.32=1.78ミリモル/グラム乾燥ポリマー。
【0040】
抵抗
被覆した電極を対極の裸炭素電極と共に組み立て、この際、ポリマーメッシュをエチレン酢酸ビニル(EVA)ポリマーフィルム中に熱プレスして流路を形成することにより調製されたポリマーフロースペーサー(大きさ:16cm×24cm、厚さ:0.7mm)を2つの電極間にサンドイッチ状に挟み、その抵抗を1600ppmのNaCl溶液中で試験した。この試験には、Wuhan Jinnuo Electronics Co.,Ltd.,Wuhan,ChinaのLandバッテリーテスターCT2001B及びCT2001Dを用い、充電電流は1250mAであった。
【0041】
被覆した電極の抵抗は、抵抗=セル抵抗−溶液抵抗−対極抵抗として計算した。セル抵抗は、LandバッテリーテスターCT2001B及びCT2001Dから得た(セル抵抗=Δ電圧/電流=0.125/1.25=0.10ーム)。溶液抵抗は、溶液導電率から計算した(溶液抵抗=1/導電率×厚さ=1/3.2×0.07=0.02オーム)。対極抵抗は、被覆された電極の場合と同じ試験方法を用いて2つの同じ裸炭素電極のセルで予め試験した。この際、セル抵抗=0.12オームであり、溶液抵抗は0.02オームであった。対極抵抗=(0.12−0.02)/2=0.05オーム。従って、被覆した電極の抵抗=0.10−0.02−0.05=0.03オーム。
【0042】
比較研究のために、慣用のIX膜で改変された炭素電極、すなわち、1枚のIX膜(CR−67、GE Water & Process Technologies,Watertown,MA,US)を裸炭素電極上に付けた電極を裸の炭素電極と共に組み立て、この際、ポリマーフロースペーサー(大きさ:16cm×24cm、厚さ:0.7mm)を2つの電極間にサンドイッチ状に挟み、その抵抗を1600ppmのNaCl溶液中で試験した。LandバッテリーテスターCT2001B及びCT2001Dを使用し、充電電流は1250mAであった。
【0043】
IX膜で改変された炭素電極抵抗=セル抵抗−溶液抵抗−対極抵抗。セル抵抗=Δ電圧/電流=0.24/1.25=0.19オーム。溶液抵抗=1/導電率×厚さ=1/3.2×0.07=0.02オーム。対極抵抗=(0.12−0.02)/2=0.05オーム。従って、IX膜で改変された炭素電極抵抗=0.19−0.02−0.05=0.12オーム。
【0044】
被覆した電極抵抗は15.36オーム・cm2(0.03オーム×512cm2)であり、これに比べてIX膜で改変された炭素電極は61.44オーム・cm2(0.12×500cm2)であった。
【0045】
電流効率
電流効率も、2つの電極のセルで1600ppmのNaCl中で試験した。電流効率=(除去された塩のモル数×96500クーロン/モル)/(充電に使用した全電荷クーロン)。除去された塩のモル数は供給溶液から希薄溶液での溶液の導電率変化の計算から4.4mmolであった。充電に使用した全電荷はLandバッテリーテスターCT2001B及びCT2001Dから読み取り、450クーロンであった。従って、電流効率=(除去された塩のモル数×96500クーロン/モル)/(充電に使用した全電荷クーロン)=(4.4×96500×0.001/450)×100%=94.4%。
【0046】
本明細書に記載した実施形態は、特許請求の範囲に記載した本発明の要素に対応する要素を有する組成物、構造、系、及び方法の例である。本明細書の記載は、特許請求の範囲に記載した本発明の要素に同様に対応する代わりの要素を有する実施形態を当業者が作り使用することを可能にし得る。従って、本発明の範囲は、特許請求の範囲の文言そのものと異ならない組成物、構造、系及び方法を含み、さらに特許請求の範囲の文言と実質的に異ならない構造、系及び方法を包含する。本明細書では特定の特徴及び実施形態についてのみ例示し説明して来たが、当業者には多くの改変及び変更が可能であろう。後記特許請求の範囲はかかる改変及び変更を全て包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上のアミド基を含むモノマーと、以下の式(a)のモノマーと、スルホン酸又は塩モノマーとを共重合することを含む方法。
【化1】

式中、R1はCH3又はHである。
【請求項2】
前記スルホン酸又は塩モノマーが次式(b)のものである、請求項1記載の方法。
【化2】

式中、R2はCH3又はHであり、XはNH又はOであり、Yはアルキルである。
【請求項3】
前記スルホン酸又は塩モノマーが2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記スルホン酸又は塩モノマーが2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホアルキル(メタ)−アクリレート(C1〜C6アルキル基を有する)、スルホアルキルイタコネート(C1〜C6アルキル基を有する)、又はビニルスルホン酸及びこれらのアンモニウム、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属塩である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記スルホン酸又は塩モノマーが2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、p−スチレンスルホン酸、スルホプロピルアクリレート、スルホプロピルイタコネート又はビニルスルホン酸並びにこれらのアンモニウム、ナトリウム、カリウム及びカルシウム塩である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
式(a)のモノマーがN−メチロールアクリルアミド(N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、NMA)、N−メチロールメタクリルアミド(NMMA)、N−(イソブトキシメチル)−アクリルアミド(IBMA)、N−(イソブトキシメチル)−メタクリルアミド又はN−(n−ブトキシメチル)−アクリルアミド(NBMA)である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記2以上のアミド基を含むモノマーがカルボニルジアミン及び次式(c)の化合物から選択される、請求項1記載の方法。
【化3】

式中、R3はNH、脂肪族基又はエーテル単位である。
【請求項8】
前記2以上のアミド基を含むモノマーがビウレット及びスクシンアミドから選択される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
さらに、ラジカル開始剤の存在下で共重合することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記ラジカル開始剤がアンモニウム若しくはカリウムの過硫酸塩、2,2’−(アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、過酸化水素、又はカリウム、ナトリウム若しくはアンモニウムのペルオキソ二リン酸塩からなる、請求項9記載の方法。
【請求項11】
請求項1記載の方法で製造されたポリマー。
【請求項12】
請求項11記載のポリマーを含んでなる膜。
【請求項13】
電極を被覆する方法であって、
電極を準備し、
ラジカル開始剤、2以上のアミド基を含むモノマー、以下の式(a)のモノマー及びスルホン酸又は塩モノマーの溶液を準備し、
電極を前記溶液で濡らし、
濡らした電極を加熱し、
もって、2以上のアミド基を含むモノマー、以下の式(a)のモノマーと、スルホン酸又は塩モノマーとを共重合する
ことを含む方法。
【化4】

式中、R1はCH3又はHである。
【請求項14】
前記スルホン酸又は塩モノマーが以下の式(b)のものである、請求項13記載の方法。
【化5】

式中、R2はCH3又はHであり、XはNH又はOであり、Yはアルキルである。
【請求項15】
前記スルホン酸又は塩モノマーが2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記スルホン酸又は塩モノマーがp−スチレンスルホン酸である、請求項13記載の方法。
【請求項17】
式(a)のモノマーがN−(ヒドロキシメチル)アクリルアミドである、請求項13記載の方法。
【請求項18】
前記ラジカル開始剤が2,2’−(アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、アンモニウム過硫酸塩、又はカリウム過硫酸塩である、請求項13記載の方法。
【請求項19】
前記2以上のアミド基を含むモノマーがカルボニルジアミンである、請求項13記載の方法。
【請求項20】
請求項13記載の方法で被覆された電極。

【公表番号】特表2013−503244(P2013−503244A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526829(P2012−526829)
【出願日】平成22年8月13日(2010.8.13)
【国際出願番号】PCT/US2010/045480
【国際公開番号】WO2011/025678
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】