説明

ポリマー分散液の調製方法及びポリマー分散液

本発明は更にポリマー安定剤(B)及びポリマー補助安定剤(C)を含む反応混合物中に存在する一種以上の水溶性アニオンモノマー(m1)及び一種以上のノニオン性ビニルモノマー(m2)を重合することを特徴とするポリマー分散液の調製方法に関する。更に、本発明はポリマー分散液、ポリマー分散液の使用及び紙の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリマー分散液の調製方法に関する。本発明はまたポリマー分散液、ポリマー分散液の使用及び紙の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アニオンの荷電されたポリマーの水性分散液の重要な使用は製紙工業における歩留まり兼脱水助剤である。このようなポリマー分散液の更なる使用はそれらが、例えば、廃水を処理する場合に凝集剤として作用する種々の方法における助剤又は、例えば、金属工業、セラミック工業、印刷工業、バイオテクノロジー工業、及び製薬工業における、その他の固体-液体分離方法における助剤としてである。それらはまた、例えば、化学工業、バイオテクノロジー工業、製薬工業、及び化粧品工業における増粘剤並びに土壌改良剤として使用し得る。
【0003】
一般に、これらのポリマー分散液は分散されたポリマー及び分散剤を含み、その分散剤は通常ポリマー分散剤である。
【0004】
アニオンポリマー分散液は一般に塩の存在下で水溶性アニオンモノマー及びノニオン性モノマーの反応混合物を重合することにより調製される。完成ポリマーは塩水溶液から沈殿し、好適な分散剤を使用することにより、安定なポリマー分散液を生成するであろう。WO 01/18063、米国特許第5,837,776号及び米国特許第5,605,970号は塩を含む水性反応混合物中で水溶性モノマーを重合することを含む水溶性ポリマーの分散液の調製方法を開示している。
【0005】
考慮すべき因子は、例えば、プロセス粘度、活性含量、安定性、良好な歩留まり特性、及び安定剤を調製することを時々含むポリマー分散液を調製することの容易なことである。また、環境局面及び安全性局面の如き基準が重要である。
【0006】
前記ポリマー分散液が最終適用において良好な結果を与え、商業上重要であるために満足すべきである幾つかの基準がある。このような基準は、例えば、低製造コスト、迅速な性能発揮、有効な凝集又は脱水、及び長い貯蔵寿命である。
【0007】
記載された従来技術のアニオンポリマー分散液はかなりの量の塩(ポリマー分散液の重量の大部分を構成する)を含む。現在、環境上及び経済上の理由のためにポリマー分散液中の塩の使用を減少、又は完全に回避したいとの要望がある。
【0008】
前記ポリマー分散液を製造する時の反応混合物の粘度、“プロセス粘度”は低く保たれるべきであり、粘度ピークがポリマー分散液の製造中に、できるだけ多く避けられ、又は少なくとも減少されるべきである。
【0009】
前記分散液の貯蔵寿命、即ち、経時のポリマー分散液の安定性が、重要な性質である。有効な分散剤が沈降物として沈降しないで分散液中でポリマー粒子を安定に保つのに必要とされる。
【0010】
考慮すべき更なる因子は前記活性含量、即ち、前記ポリマー分散液中の分散されたポリマーの量である。高い活性含量は輸送コストを最小にし、最終適用時の一層容易な取扱を与える。有効な分散剤を使用することにより、高い活性含量を有する分散液が得られると同時に、粘度が低く保ち得る。しかしながら、或るレベルよりも上の活性含量の増大は抄紙方法における歩留まり兼脱水の改良された性能を常に与えるとは限らないかもしれない。
【0011】
ポリマー分散液の調製中に、ポリマーの沈着物が生成し、反応容器及び撹拌機に粘着することがある。これは時間の浪費、反応装置の洗浄操作をもたらす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は高い安定性及び高い活性含量を有する、好ましくは塩を含まない、水溶性のアニオンポリマー分散液を提供することである。また、このポリマー分散液は抄紙方法に使用される場合に良好な歩留まり兼脱水結果を与え、廃水処理の如きその他の方法において良好な凝集剤として作用し、化粧製剤の如き種々の適用において良好な増粘剤として作用し、また土壌改良方法で使用することができるべきである。更に、本発明の目的はプロセス粘度が、大きな粘度ピークを生じないで調製中に低く、かつ円滑に保たれ、また沈着物を生じない、好ましくは塩を含まない、水溶性のアニオンポリマー分散液の調製方法を提供することである。最後に、本発明の目的はポリマー分散液が使用される、紙の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
“安定剤”はその機能が分散されたポリマー粒子/液滴を分散液中に保つことであるポリマーを本明細書で意味する。
【0014】
“補助安定剤”はその機能が一種以上のモノマーの重合から生成されたポリマーを溶液から固体粒子又は液滴へと沈殿させることであるポリマーを本明細書で意味する。
【0015】
本発明によれば、驚くことに、分散されたポリマーの高い活性含量及び低いプロセス粘度を有する高度に安定なポリマー分散液がポリマー安定剤(B)及びポリマー補助安定剤(C)を更に含む反応混合物中に存在する一種以上のアニオンモノマー(m1)及び一種以上のノニオン性ビニルモノマー(m2)を重合することにより得られることがわかった。
【0016】
更に、本発明は一種以上のアニオンモノマー(m1)及び一種以上のノニオン性ビニルモノマー(m2)の分散されたポリマー(A)、ポリマー安定剤(B)、並びにポリマー補助安定剤(C)を含むポリマー分散液を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
反応媒体は水性媒体であることが好適である。前記ポリマー分散液は水性ポリマー分散液であることが好適である。このポリマー分散液は水溶性であることが好適である。前記ポリマー粒子/液滴は約25μmまで、また好適には約0.01μmから約25μmまで、好ましくは約0.05μmから約15μmまで、最も好ましくは約0.2μmから約10μmまでの平均サイズ(厚さ)を有することが好適である。
【0018】
前記ポリマー安定剤(B)は有機ポリマーであることが好適である。このポリマー安定剤(B)はアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸(AMPS)、2-アクリルアミド-2-メチル-1-ブタンスルホン酸(AMBS)、アクリロイルオキシエチルスルホン酸、メタクリロイルオキシエチルスルホン酸、アクリロイルオキシプロピルスルホン酸、メタクリロイルオキシプロピルスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、マレイン酸、マレアミド酸、及び/又はビニルホスホン酸の群に属する一種以上のモノマーのポリマーであることが好ましい。その他の好適なポリマー安定剤は夫々、マレイン酸又はマレアミド酸と、スチレンもしくはビニルエーテル、又はα-オレフィンのコポリマー(これらは付加的なコモノマーを含んでもよい)である。このポリマー安定剤(B)はアクリル酸又はメタクリル酸と更にはリストされたモノマー、好ましくは2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸(AMPS)のコポリマーであることが好ましい。
【0019】
前記ポリマー安定剤(B)の重量平均分子量は好適には約5,000g/モルから約5,000,000g/モルまで、好ましくは約10,000g/モルから約1,000,000g/モルまで、更に好ましくは約20,000g/モルから約1000,000g/モルまで、最も好ましくは約35,000g/モルから約500,000g/モルまでである。
【0020】
前記ポリマー分散液は分散液又は反応混合物の合計重量を基準として約0.2重量%から約5重量%まで、好ましくは約0.5重量%から約3重量%まで、最も好ましくは約0.8重量%から約1.5重量%までのポリマー安定剤(B)を含むことが好適である。
【0021】
前記ポリマー補助安定剤(C)は有機ポリマーであることが好適である。このポリマー補助安定剤(C)はアクリル酸、メタクリル酸、ビニルスルホネート、スチレンスルホン酸、イタコン酸、ビニルホスホン酸、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸(AMPS)、2-アクリルアミド-2-メチル-1-ブタンスルホン酸(AMBS)、アクリロイルオキシエチルスルホン酸、メタクリロイルオキシエチルスルホン酸、アクリロイルオキシプロピルスルホン酸、及びメタクリロイルオキシプロピルスルホン酸の群に属する一種以上のモノマーのポリマーであることが好ましい。
【0022】
2種以上の補助安定剤(C)が前記反応混合物及びポリマー分散液中に存在することが好ましい。
【0023】
前記ポリマー補助安定剤(C)の重量平均分子量は好適には約100g/モルから約50,000g/モルまで、好ましくは約500g/モルから約30,000g/モルまで、更に好ましくは約1,000g/モルから約20,000g/モルまで、更に好ましくは約1,000g/モルから約15,000g/モルまで、最も好ましくは約1,000g/モルから約10,000g/モルまでである。
【0024】
前記ポリマー分散液は前記分散液又は反応混合物の合計重量を基準として約2重量%から約50重量%まで、好ましくは約3重量%から約25重量%まで、最も好ましくは約5重量%から約15重量%までの一種以上の前記ポリマー補助安定剤(C)を含むことが好適である。
【0025】
前記反応混合物又はポリマー分散液中の前記ポリマー安定剤(B)及びポリマー補助安定剤(C)は異なるモノマーから構成されることが好ましく、又は、それらが同じモノマーから構成される場合には、異なるモノマー比を含む。
【0026】
前記ポリマー安定剤(B)又はポリマー補助安定剤(C)はデキストリン又はデキストリン誘導体ではないことが好適である。
【0027】
前記一種以上のアニオンモノマー(m1)はアクリル酸、メタクリル酸、(スチレンスルホン酸)、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸(AMPS)、2-アクリルアミド-2-メチル-1-ブタンスルホン酸(AMBS)、アクリロイルオキシエチルスルホン酸、メタクリロイルオキシエチルスルホン酸、アクリロイルオキシプロピルスルホン酸、メタクリロイルオキシプロピルスルホン酸、ビニルスルホン酸、及びそれらのアルカリ塩、アルカリ土類塩又はアンモニウム塩の群に属することが好適である。
【0028】
前記一種以上のノニオン性モノマー(m2)はアクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-t-ブチルアクリルアミド、N-t-ブチルメタクリルアミド、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-(トリス-(ヒドロキシメチル)-メチル)-アクリルアミド、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、C2-C4アルキルを有するヒドロキシアルキルアクリレート又はヒドロキシアルキルメタクリレート、C1-C4アルキルを有するアルキルアクリレート又はアルキルメタクリレート、ベンジルアクリレート又はベンジルメタクリレート、アクリル酸又はメタクリル酸と1-20のエチレンオキサイド単位を有するジヒドロキシ-(ポリエチレンオキサイド)のエステル、或いはアクリル酸又はメタクリル酸と1-20のエチレンオキサイド単位を有するモノメトキシヒドロキシ-(ポリエチレンオキサイド)のエステルの群に属することが好適である。この一種以上のノニオン性モノマー(m2)はアクリルアミド、アクリレートエステル又はメタクリレートエステルの群に属することが好ましい。
【0029】
前記アニオンモノマー(m1)とノニオン性モノマー(m2)のモル比は好適には約1:99から約25:75まで、好ましくは約3:97から約20:80まで、最も好ましくは約5:95から約15:85までである。
【0030】
前記分散されたポリマー(A)の重量平均分子量は好適には約1,000,000g/モルから約15,000,000g/モルまで、好ましくは約1,500,000g/モルから約10,000,000g/モルまで、最も好ましくは約2,000,000g/モルから約8,000,000g/モルまでである。
【0031】
前記重合は遊離基重合であることが好適である。開始剤は好適にはラジカル生成剤、好ましくは水溶性アゾ開始剤、水溶性過酸化物、又は水溶性レドックス開始剤である。好ましい開始剤として、2,2’-アゾビス-(アミジノプロパン)塩酸塩、2,2’-アゾビス-(2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド、4,4’-アゾビス-(4-シアノ吉草酸)並びにそのアルカリ塩及びアンモニウム塩、t-ブチル過酸化水素、ペルヒドロール、ペルオキシジスルフェート、又は還元剤、例えば、メタ重亜硫酸ナトリウムもしくは第一鉄塩と組み合わせた前記過酸化物が挙げられる。
【0032】
前記ポリマー分散液は前記分散液の合計重量を基準として約5重量%から約40重量%まで、好ましくは約10重量%から約30重量%まで、最も好ましくは約12重量%から約25重量%までの前記分散されたポリマー(A)を含むことが好適である。
【0033】
前記ポリマー分散液中の一種以上の無機塩の量は前記分散液又は反応混合物の合計重量を基準として好適には0重量%から約1.9重量%まで、好ましくは0重量%から約1重量%まで、更に好ましくは0重量%から約0.5重量%まで、最も好ましくは0重量%から約0.1重量%までであり、又は実質的に塩を含まない。
【0034】
“無機塩”は好適にはあらゆる無機塩、好ましくは無機アルカリ金属、アルカリ土類金属又はアンモニウムのハロゲン化物、硫酸塩及びリン酸塩の群に属する塩を本明細書で意味する。
【0035】
前記ポリマー分散液はまた付加的な物質、例えば、架橋剤及び分岐剤を含んでもよい。
【0036】
重合温度は、例えば、どのモノマー及び重合開始剤が使用されているのかに応じて変化してもよい。好適には、この重合温度は約30℃から約90℃まで、好ましくは約35℃から約70℃までである。その方法は好適には半回分式方法であり、即ち、前記モノマーm1及びm2が両方とも重合方法の開始時に存在し、後の段階で、反応中の時間の期間にわたって1回以上に分けて、又は連続的に更に添加される。前記反応混合物はその方法に適した撹拌速度で重合方法中に撹拌されることが好適である。この撹拌速度は約100rpmから約1000rpmまでであることが好適である。
【0037】
本発明は更に紙製造のための歩留まり兼脱水助剤として、増粘剤として、土壌改良剤として、かつ/又は紙の乾燥強度を増大するための添加剤としてのポリマー分散液の使用を含む。本発明のポリマー分散液は一層詳しくは種々の方法における助剤として、例えば、廃水を処理する際の凝集剤として、又は、例えば、金属工業、セラミック工業、印刷工業、バイオテクノロジー工業及び製薬工業におけるその他の固体-液体分離方法における助剤として使用し得る。該ポリマー分散液はまた、例えば、化学工業、バイオテクノロジー工業、製薬工業、及び化粧品工業における増粘剤として使用し得る。
【0038】
最後に、本発明はセルロース繊維、及び任意のてん料を含む水性懸濁液からの紙の製造方法であって、その懸濁液に本発明のポリマー分散液を添加し、ワイヤ上で懸濁液を地合構成し、脱水することを特徴とする紙の製造方法を含む。
【0039】
抄紙方法において、本発明のポリマー分散液を使用する場合、該分散液は、とりわけ、成分の型及び数、完成紙料の型、てん料含量、てん料の型、添加の時点、等に応じて広い制限内で変化し得る量で脱水すべき、セルロース繊維、及び任意のてん料の懸濁液に添加される。分散されたポリマーは脱水すべき原料中の乾燥物質を基準として、通常少なくとも0.001重量%、しばしば少なくとも0.005重量%の量で添加され、その上限は通常3重量%、好適には1.5重量%である。本発明のポリマー分散液はそれをセルロース懸濁液に添加する前に希釈されることが好適である。抄紙に通常である更なる添加剤、例えば、シリカをベースとするゾル、乾燥強度増強剤、湿潤強度増強剤、蛍光増白剤、染料、サイジング剤、例えば、ロジンをベースとするサイジング剤及びセルロース反応性サイジング剤、例えば、アルキルケテン二量体及びアルケニルケテン二量体、アルキルケテン多量体及びアルケニルケテン多量体、並びに無水コハク酸等が本発明のポリマー分散液と組み合わせて勿論使用し得る。前記セルロース懸濁液、又は原料はまた通常の型の鉱物てん料、例えば、カオリン、チャイナクレー、二酸化チタン、石膏、タルク並びに天然及び合成の炭酸カルシウム、例えば、チョーク、粉砕大理石及び沈降炭酸カルシウムを含み得る。本明細書に使用される“紙”という用語は紙及びその製品だけでなく、その他のセルロース繊維含有シート又はウェブのような製品、例えば、板紙及びペーパーボード、並びにこれらの製品を含む。その方法はセルロース含有繊維の懸濁液の異なる型からの紙の製造に使用でき、その懸濁液は乾燥物質を基準として、好適には少なくとも25重量%、好ましくは少なくとも50重量%のこのような繊維を含むべきである。前記懸濁液は広葉樹及び針葉樹の両方からの、ケミカルパルプ、例えば、硫酸パルプ、亜硫酸パルプ及び有機溶媒パルプ、メカニカルパルプ、例えば、サーモメカニカルパルプ、ケモ-サーモメカニカルパルプ、リファイナパルプ及び砕木パルプをベースとすることができ、また、必要により脱インキパルプから、リサイクルされた繊維、及びこれらの混合物をベースとすることができる。
【0040】
本発明が今下記の実施例に関して更に記載されるが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものと解されるべきではない。
【実施例】
【0041】
実施例1:
80:20のモル比のメタクリル酸(MAA)及び2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸(AMPS)からつくられる安定剤を調製した。超純粋な水85g、AMPS(固体)8.24g、MAA16.62g及びNaOH(50%)11.5gの混合物をNaOH(50%)によりpH7に調節した。EDTA(固体)0.02gをその混合物に与えた。更に超純粋な水を添加して127gの合計質量に達した。これを固定撹拌機、窒素入口、還流冷却器及びボトム弁を備えた2重壁の150mlのガラス反応器に充填した。その混合物を150/分で撹拌し、窒素でパージした。その反応器内容物を45℃まで加熱した。V-50(2,2’-アゾビス-(2-アミジノプロパン)二塩酸塩)0.05gを添加した。60分後に、温度を50℃まで上昇させた。その混合物を72時間にわたって50℃で150/分で重合させた。この安定剤を精製し、限外濾過及び凍結乾燥により単離した。この重量平均分子量は約15,000g/モルであった。
【0042】
実施例2−7:
ポリマー安定剤及びポリマー補助安定剤の存在下でアクリルアミド及びアクリル酸を含むモノマー混合物を重合することによりポリマー分散液を調製した。
【0043】
水30g、補助安定剤ポリアクリル酸(45%、シグマ-アルドリッチ、Mw 1,200)24.3g、安定剤ポリ(MAA-共-AMPS)(80:20)コポリマー(実施例1による、Mw 15,000)1.2g、アクリルアミド(50重量%)28.1g、アクリル酸1.07g、ギ酸ナトリウム0.04g、EDTA0.03g、及びNaOH(50重量%)1.17gの混合物を撹拌し、そのpHを7に調節した。水を100gまで添加し、8時間の間にアゾ開始剤VA-044(4%)(2,2’-アゾビス-(N,N’-ジメチレンイソブチルアミジン)二塩酸塩、和光)を添加した(工程中で0.5g)。その温度を35℃に保った。16時間後に、撹拌を停止した。
【0044】
上記と同じ操作を使用したが、ノニオン性モノマーとアニオンモノマーの比を変えて、分散されたポリマー中に第二のノニオン性モノマーを使用し、また幾つかの場合に補助安定剤としてポリアクリル酸とポリメタクリル酸の組み合わせを使用して、5種の更なるポリマー分散液を調製した。安定剤として、80:20のモル比の1.2重量%のポリ-(MMA-共-AMPS)を使用した。安定剤中の活性含量(ポリマー含量)は15重量%付近であった。11重量%の補助安定剤を使用した。
【0045】
表1中、下記の略号を使用する。
AAm=アクリルアミド
AA=アクリル酸
MMA=メチルメタクリレート
t-BuA=t-ブチルアクリレート
n-BuA=n-ブチルアクリレート
PAA=ポリアクリル酸
PMAA=ポリメタクリル酸
【0046】
【表1】

プロセス粘度は全ての分散液について低かった(約2000mPasより低かった)。
【0047】
実施例8:
実施例2-4で調製されたポリマー分散液を動的脱水分析装置(DDA)(アクリビ、スウェーデンから入手し得る)により抄紙方法における歩留まり及び脱水性能について試験した。使用した完成紙料は60重量%の80/20漂白カバ-マツパルプ及び40重量%の炭酸カルシウムをベースとしていた。この原料容積は800mlであり、パルプ濃度は5g/Lであり、導電率は1.5mS/cmであった。この原料を1500rpmの速度で撹拌し、その間に下記の成分を原料に添加した:アニオンくずキャッチャ(0.5kg/t)、ポリマー分散液(1.0kg/t)そして最後にアニオン無機粒子(0.5kg/t)。この温度は22.5℃であった。0.35バールの真空を分析のために使用した。この保持時間(秒)及び濁度(NTU)を測定した。
【0048】
【表2】

本発明の分散液は歩留まり兼脱水助剤において良く機能すると結論される。
【0049】
実施例9:
沈降安定性として測定される、貯蔵寿命を実施例2−7の分散液について試験した。夫々の分散液のサンプル10gを30分間にわたって3000rpmで遠心分離した。ポリマー沈降の量を夫々のサンプルについて測定した。サンプルはポリマー沈降を生じなかった。
【0050】
こうして、長い貯蔵寿命を有するポリマー分散液が、また高い活性含量で、本発明により得られると結論される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応混合物中に存在する一種以上の水溶性アニオンモノマー(m1)及び一種以上のノニオン性ビニルモノマー(m2)を重合することを含むポリマー分散液の調製方法であって、更にポリマー安定剤(B)及びポリマー補助安定剤(C)を含むことを特徴とするポリマー分散液の調製方法。
【請求項2】
一種以上の水溶性アニオンモノマー(m1)及び一種以上のノニオン性ビニルモノマー(m2)の分散されたポリマー(A)、ポリマー安定剤(B)、及びポリマー補助安定剤(C)を含むことを特徴とするポリマー分散液。
【請求項3】
前記反応混合物が水性媒体であり、かつ前記ポリマー分散液が水性ポリマー分散液である、請求項1記載の方法、又は請求項2記載のポリマー分散液。
【請求項4】
ポリマー補助安定剤(C)がアクリル酸、メタクリル酸、ビニルスルホネート、スチレンスルホン酸、イタコン酸、ビニルホスホン酸、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸(AMPS)、2-アクリルアミド-2-メチル-1-ブタンスルホン酸(AMBS)、アクリロイルオキシエチルスルホン酸、メタクリロイルオキシエチルスルホン酸、アクリロイルオキシプロピルスルホン酸、及びメタクリロイルオキシプロピルスルホン酸の群に属する一種以上のモノマーのポリマーである、請求項1又は3のいずれか1項記載の方法、或いは請求項2から3のいずれか1項記載のポリマー分散液。
【請求項5】
2種以上の補助安定剤(C)が前記反応混合物及び前記ポリマー分散液中に存在する、請求項1又は3から4のいずれか1項記載の方法、或いは請求項2から4のいずれか1項記載のポリマー分散液。
【請求項6】
前記ポリマー補助安定剤(C)の重量平均分子量が約500g/モルから約30,000g/モルまでである、請求項1又は3から5のいずれか1項記載の方法、或いは請求項2から5のいずれか1項記載のポリマー分散液。
【請求項7】
前記ポリマー補助安定剤(C)の重量平均分子量が約1,000g/モルから約15,000g/モルまでである、請求項1又は3から6のいずれか1項記載の方法、或いは請求項2から6のいずれか1項記載のポリマー分散液。
【請求項8】
前記ポリマー安定剤(B)がアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸(AMPS)、2-アクリルアミド-2-メチル-1-ブタンスルホン酸(AMBS)、アクリロイルオキシエチルスルホン酸、メタクリロイルオキシエチルスルホン酸、アクリロイルオキシプロピルスルホン酸、メタクリロイルオキシプロピルスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、マレイン酸、マレアミド酸、及び/又はビニルホスホン酸の群に属する一種以上のモノマーのポリマーである、請求項1又は3から7のいずれか1項記載の方法、或いは請求項2から7のいずれか1項記載のポリマー分散液。
【請求項9】
前記ポリマー安定剤(B)が夫々、マレイン酸又はマレアミド酸と、スチレンもしくはビニルエーテル、又はα-オレフィンのコポリマーの群に属する、請求項1又は3から7のいずれか1項記載の方法、或いは請求項2から7のいずれか1項記載のポリマー分散液。
【請求項10】
前記ポリマー安定剤(B)の重量平均分子量が約10,000g/モルから約1,000,000g/モルまでである、請求項1又は3から9のいずれか1項記載の方法、或いは請求項2から9のいずれか1項記載のポリマー分散液。
【請求項11】
前記ポリマー安定剤(B)の重量平均分子量が約35,000g/モルから約500,000g/モルまでである、請求項1又は3から10のいずれか1項記載の方法、或いは請求項2から10のいずれか1項記載のポリマー分散液。
【請求項12】
前記ポリマー安定剤(B)及び前記ポリマー補助安定剤(C)が異なるモノマーから構成される、請求項1又は3から11のいずれか1項記載の方法、或いは請求項2から11のいずれか1項記載のポリマー分散液。
【請求項13】
前記アニオンモノマー(m1)が好適にはアクリル酸、メタクリル酸、(スチレンスルホン酸)、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸(AMPS)、2-アクリルアミド-2-メチル-1-ブタンスルホン酸(AMBS)、アクリロイルオキシエチルスルホン酸、メタクリロイルオキシエチルスルホン酸、アクリロイルオキシプロピルスルホン酸、メタクリロイルオキシプロピルスルホン酸、ビニルスルホン酸、及びそれらのアルカリ塩、アルカリ土類塩又はアンモニウム塩の群に属する、請求項1又は3から12のいずれか1項記載の方法、或いは請求項2から12のいずれか1項記載のポリマー分散液。
【請求項14】
前記一種以上のノニオン性モノマー(m2)がアクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-t-ブチルアクリルアミド、N-t-ブチルメタクリルアミド、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-(トリス-(ヒドロキシメチル)-メチル)-アクリルアミド、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、C2-C4アルキルを有するヒドロキシアルキルアクリレート又はヒドロキシアルキルメタクリレート、C1-C4アルキルを有するアルキルアクリレート又はアルキルメタクリレート、ベンジルアクリレート又はベンジルメタクリレート、アクリル酸又はメタクリル酸と1-20のエチレンオキサイド単位を有するジヒドロキシ-(ポリエチレンオキサイド)のエステル、或いはアクリル酸又はメタクリル酸と1-20のエチレンオキサイド単位を有するモノメトキシヒドロキシ-(ポリエチレンオキサイド)のエステルの群に属する、請求項1又は3から13のいずれか1項記載の方法、或いは請求項2から13のいずれか1項記載のポリマー分散液。
【請求項15】
前記一種以上のモノマー(m2)がアクリルアミド、アクリレートエステル又はメタクリレートエステルの群に属する、請求項1又は3から14のいずれか1項記載の方法、或いは請求項2から14のいずれか1項記載のポリマー分散液。
【請求項16】
無機塩の量が分散液又は反応混合物の合計重量を基準として0重量%から約1.9重量%までである、請求項1又は3から15のいずれか1項記載の方法、或いは請求項2から15のいずれか1項記載のポリマー分散液。
【請求項17】
一種以上の無機塩の量が分散液又は反応混合物の合計重量を基準として0重量%から約0.5重量%までである、請求項1又は3から16のいずれか1項記載の方法、或いは請求項2から16のいずれか1項記載のポリマー分散液。
【請求項18】
前記反応混合物が約3モル%から約20モル%までの一種以上の水溶性アニオンモノマー(m1)を含む、請求項1又は3から17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
前記反応混合物が約80モル%から約97モル%までの一種以上のノニオン性ビニルモノマー(m2)を含む、請求項1又は3から18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
前記反応混合物が約0.5重量%から約3重量%までのポリマー安定剤(B)を含む、請求項1又は3から19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
前記反応混合物が約3重量%から約25重量%までのポリマー補助安定剤(C)を含む、請求項1又は3から20のいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
約10重量%から約30重量%までの分散されたポリマー(A)を含む、請求項2から17のいずれか1項記載のポリマー分散液。
【請求項23】
約0.5重量%から約3重量%までのポリマー安定剤(B)を含む、請求項2から17又は22のいずれか1項記載のポリマー分散液。
【請求項24】
約3重量%から約25重量%までのポリマー補助安定剤(C)を含む、請求項2から17又は22から23のいずれか1項記載のポリマー分散液。
【請求項25】
紙製造のための歩留まり兼脱水助剤として、紙の乾燥強度を増大するための添加剤として、増粘剤として、かつ/又は土壌改良剤としての請求項2から17又は22から24のいずれか1項記載のポリマー分散液の使用。
【請求項26】
セルロース繊維、及び任意のてん料を含む水性懸濁液からの紙の製造方法であって、その懸濁液に請求項2から17又は22から24のいずれか1項記載のポリマー分散液を添加し、ワイヤ上で懸濁液を地合構成し、脱水することを特徴とする紙の製造方法。

【公表番号】特表2008−540796(P2008−540796A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512247(P2008−512247)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【国際出願番号】PCT/SE2006/050112
【国際公開番号】WO2006/123993
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(595024087)アクゾ ノーベル エヌ.ブイ. (38)
【出願人】(507383552)フラウンフォファー−ゲゼルシャフト ツーア フォルデルング デア アンゲヴァンデン フォルシュング エー.ファウ. (3)
【Fターム(参考)】